関連審決 | 無効2002-35296 |
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関連ワード | 指定商品 / 4条1項11号 / 結合商標 / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 要部観察 / 取引の実情 / 存続期間 / 無効審判 / 更新登録 / 類似商標 / 非類似 / |
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事件 |
平成
15年
(行ケ)
136号
審決取消請求事件
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原告 平和堂貿易株式会社 訴訟代理人弁理士 三嶋景治 被告 株式会社アイボリー |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2003/07/17 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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原告の求めた裁判
「特許庁が無効2002-35296号事件について平成15年3月4日にした審決を取り消す。」との判決。 |
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事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 (1) 本件商標 被告が商標権者である本件登録第3332881号商標(本件商標)は,下記のとおり「QUEEN」の欧文字を横書きしてなり,平成5年4月21日登録出願,第14類「銀,人工ダイヤモンド,人工真珠,その他の人工宝石,本真珠,身飾品」を指定商品として,同9年7月18日に設定登録されたものである。 (2) 本件無効審判請求 原告は,平成14年7月1日,被告を被請求人として,本件商標登録の無効審判請求をし,無効2002-35296号事件として審理されたが,平成15年3月4日,「本件審判請求は,成り立たない。」との審決があり,その謄本は同月14日原告に送達された。 2 審判における原告(請求人)の主張 本件商標は,以下の引用商標1〜4との関係において,商標法4条1項11号に該当する。 (1) 引用商標1(登録第463958号の2商標): 次の構成よりなり,昭和29年8月20日登録出願,第36類「帯止,ズボン釣,ガーター及び腕止,手巾類,釦鈕,装身用ピン」を指定商品として,昭和30年4月5日に設定登録され,その後,3回にわたり商標権存続期間の更新登録がされ,現に有効に存続している。 (2) 引用商標2(登録第463959号の2商標): 次の構成よりなり,昭和29年8月20日登録出願,第36類「帯止,ズボン釣,ガーター及び腕止,手巾類,釦鈕,装身用ピン」を指定商品として,昭和30年4月5日に設定登録され,その後,3回にわたり商標権存続期間の更新登録がされ,現に有効に存続している。 (3) 引用商標3(登録第2207971号商標): 「QUEEN GALLERY」の欧文字を横書きしてなり,昭和62年10月20日登録出願,第21類「装身具,ボタン類,かばん類,袋物,宝玉及びその模造品,造花,化粧用具」を指定商品として,平成2年1月30日に設定登録され,その後,平成12年4月4日に商標権存続期間の更新登録がされ,現に有効に存続している。 (4) 引用商標4(登録第2477047号商標): 次の構成よりなり,平成2年11月19日登録出願,第21類「装身具,ボタン類,かばん類,袋物,宝玉及びその模造品,造花,化粧用具」を指定商品として,同4年11月30日に設定登録され,その後,平成14年12月3日に商標権存続期間の更新登録がされ,現に有効に存続している。 3 審決の理由の要点 (1) 本件商標について 本件商標は,「QUEEN」の文字を書してなるものであるから,該文字に相応して「クイーン」の称呼及び「女王」の観念が生ずる。 (2) 引用各商標について (2)-1 引用商標1は,「Queen’s Diamond」の文字を書してなるものであるところ,該文字は,同一の書体をもって外観上一体的に表されているばかりでなく,その構成中の「Queen」,「’s」及び「Diamond」の各語は,それぞれ「女王」,所有格を表す記号と文字,及び「ダイヤモンド」の意味を有するものとして,わが国において一般によく知られている平易な英語といえるから,これより「女王のダイヤモンド」なる観念が無理なく生ずるものである。 また,引用商標1全体を称呼した場合の「クイーンズダイヤモンド」の称呼は,さほど冗長にわたるものではなく,むしろ構成文字全体から1つの観念が生ずることを考えると,自然の称呼というのが相当である。 してみると,引用商標1は,これを構成する「Queen’s Diamond」の文字の不可分一体性は強いものというべきであって,これに接する取引者,需要者は,その構成中の「Queen’s」若しくは「Queen」の文字部分のみに着目し,これより生ずる「クイーンズ」若しくは「クイーン」の称呼,観念をもって商品の取引に当たるものとはみられない。 したがって,引用商標1は,その構成文字に相応して「クイーンズダイヤモンド」の一連の称呼のみを生ずるものであって,「女王のダイヤモンド」なる観念を生ずるものといわなければならない。 (2)-2 引用商標2は,「Queen’s Dia」の文字を書してなるものであるところ,該文字は,同一の書体をもって外観上一体的に表されているばかりでなく,その構成中の「Queen」,「’s」の各語は,それぞれ「女王」,所有格を表す記号と文字を表す英語として,また,「Dia」の語は,「ダイヤモンド」の略語を表す語として,わが国において一般によく知られているものといえるから,これより「女王のダイヤモンド」なる観念が無理なく生ずるものである。また,引用商標2全体を称呼した場合の「クイーンズダイヤ」の称呼は,さほど冗長にわたるものではなく,むしろ構成文字全体から1つの観念が生ずることを考えると,自然の称呼というのが相当である。 してみると,引用商標2は,これを構成する「Queen’s Dia」の文字の不可分一体性は強いものというべきであって,これに接する取引者,需要者は,その構成中の「Queen’s」若しくは「Queen」の文字部分のみに着目し,これより生ずる「クイーンズ」若しくは「クイーン」の称呼,観念をもって商品の取引に当たるものとはみられない。 したがって,引用商標2は,その構成文字に相応して「クイーンズダイヤ」の一連の称呼のみを生ずるものであって,「女王のダイヤモンド」なる観念を生ずるものといわなければならない。 (2)-3 引用商標3は,「QUEEN GALLERY」の文字を書してなるものであるところ,該文字は,同一の書体をもって外観上一体的に表されている。 また,引用商標3の観念についてみるに,その構成中の「QUEEN」は「女王」を意味する英語としてわが国でよく知られているものである。一方,「GALLERY」は,「回廊,画廊,美術品を展示する部屋,ゴルフ試合などの観客」等を意味する語としてわが国において普通に使用されているものであるところ,前半部分の「QUEEN」との関係からみれば,「画廊,美術品を展示する部屋」の意味を理解させるものであって,引用商標3全体として「女王の画廊,美術品を展示する部屋」なる観念が生ずるものというのが相当である。 さらに,引用商標3は,その構成文字全体から生ずる「クイーンギャラリー」の称呼は,さほど冗長にわたるものではなく,むしろ構成文字全体から1つの観念が生ずることを考えると,自然の称呼というのが相当である。 してみると,引用商標3は,これを構成する「QUEEN GALLERY」の文字の不可分一体性は強いものというべきであって,これに接する取引者,需要者は,その構成中の「QUEEN」の文字部分のみに着目し,これより生ずる「クイーン」の称呼,観念をもって商品の取引に当たるものとはみられない。 したがって,引用商標3は,その構成文字に相応して「クイーンギャラリー」の一連の称呼のみを生ずるものであって,「女王の画廊,美術品を展示する部屋」なる観念を生ずるものといわなければならない。 (2)-4 引用商標4は,「The Queen」の文字,及び該「Queen」の文字中の「n」の右縦線をその左縦線の2倍程度下に長く伸ばし,該右縦線を二分するように同縦線の中間部にほぼ直角に交差するように長い横線を引き,「n」の右縦線と該長い横線とが交差したすぐ右下に「GALLERY」の文字をやや小さく書してなるものであるところ,「The Queen」の文字と「GALLERY」の文字は,文字の態様を異にするものであるとしても,その構成全体は,外観上まとまりよく一体的に表されている。 また,引用商標4は,引用商標3と同様の理由により,全体として「女王の画廊,美術品を展示する部屋」の観念が生ずるものであって,その構成文字全体から生ずる「ザクイーンギャラリー」の称呼,若しくは定冠詞「The」を省略した場合の「クイーンギャラリー」の称呼は,自然の称呼というのが相当である。 したがって,引用商標4は,その構成文字に相応して「ザクイーンギャラリー」の称呼,又は「クイーンギャラリー」の称呼を生ずるものであって,「女王の画廊,美術品を展示する部屋」なる観念を生ずるものといわなければならない。 (3) 対比 本件商標と引用各商標は,それぞれ前記した構成よりみて,外観上明らかに区別し得る差異を有する。 また,本件商標より生ずる「クイーン」の称呼と引用各商標より生ずる「クイーンズダイヤモンド」,「クイーンズダイヤ」,「クイーンギャラリー」及び「ザクイーンギャラリー」の称呼は,構成する音数等の差異により明らかに聴別し得る差異を有する。 さらに,本件商標と引用各商標は,それぞれ前記のとおりの観念を生ずるものであるから,観念において相紛れるおそれはない。 そうすると,本件商標と引用各商標は,外観,称呼及び観念のいずれの点においても非類似の商標というべきである。 したがって,引用各商標から単に「クイーンズ」若しくは「クイーン」の称呼,及び「女王の」若しくは「女王」の観念をも生ずることを前提に,本件商標と引用各商標とが称呼及び観念において類似するとする請求人(原告)の主張は理由がない。 (4) 審決のむすび 以上のとおり,本件商標は,商標法4条1項11号に違反して登録されたものではないから,同法46条1項の規定により,その登録を無効とすることはできない。 |
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原告主張の審決取消事由
以下に述べるとおり,引用各商標における要部観察に基づくと,称呼は「クイーンズ」あるいは「クイーン」として,また観念は「女王の」「女王」あるいは「クイーン」として取引に供されるから,本件商標と誤認混同する取引が生ずるおそれが多分に認められる。これを否定した審決の認定は誤りである。 1 引用商標1,2は「Queen’s Diamond」及び「Queen’s Dia」の2語の結合商標であり,大文字で「Q」と「D」が表現されており,「D」の前には半字分の間隔が空いて構成されている。引用商標1,2につき,「同一の書体をもって外観上一体的に表されている」とした審決の認定は誤りである。 構成音数は,引用商標1が10で,引用商標2が7であるから,簡易迅速が要請され好まれ,電話等の口頭取引にあっては,これら引用商標に接した取引者・需要者は,商品との関係からして,日本語化されて多用される「クイーン」が分離略称しての取引が生じることを否定できない。 取引の実情からしても,「宝石,身飾品,装身具」等の取扱業界において,「ダイヤモンド」(Diamond),「ダイヤ」(Dia)の文字は,当該商品名であり,当該商品の原材料,品質等表示と認められる。引用商標1,2に接する取引者・需要者にとって,商品「ダイヤモンド」あるいは「ダイヤモンドからなる装身具や身飾品等」に付され使用されたとき,引用商標1,2で自他商品を識別する機能を果たすのは「Queeen’s」であることは明らかである。審決は,この取引実情について触れるところはなく,無視している。 2 引用商標3も,「QUEEN」と「GALLERY」の2語の結合商標であり(引用商標4はこれに「The」が付されている。),2語は大文字で半字分の間隔がある。引用商標3は構成音数6であり,引用商標4は構成音数7であるから,電話等口頭取引にあっては,冗長感を抱かないとされる理由はない。2語がまとまりのある1語として熟語を形成しているとはいえない。「QUEEN」の語が日常会話でも頻繁に多用され日本語化されている事情からすると,2語には軽重の差が認められる。そこで,引用商標3及び4においては,前半の「QUEEN」に分離略称されて取引が生ずることが否定されるものではない。 「宝石,身飾品,装身具」等の取扱業界において,取引者・需要者を対象として新製品発表会,在庫一掃の販売会等が定期的に有名ホテル等で行われる。「GALLERY」(ギャラリー)の文字は,展示場,展示会等の意味合いで認識看取し使用されており,「宝石,身飾品,装身具」等の販売・展示場所を表示する接尾語的な用法として,多用されている。 そうすると,引用商標3,4に接する取引者・需要者において,自他商品を識別する機能を果たす部分は「QUEEN」「The Queen」であり,この部分が要部である。 3 以上のとおりであり,本件商標と引用各商標とが同一又は類似商品に使用されたときには,既に日本語化され好んで多用されている「QUEEN」「Queen’s」に世人の注意が及び,両者は称呼,観念において誤認混同の生ずるおそれが多分に認められる類似商標である。 |
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当裁判所の判断
原告の主張の基調は,引用商標1,2から「クイーン」の称呼に係る部分が分離略称される取引が生じることの可能性を述べ,また,引用商標3,4における自他商品を識別する機能を果たす部分は「QUEEN」「The Queen」であるという点にある。しかしながら,引用各商標は,その構成文字に相応して,「クイーン」の称呼に係る部分以外の文字と連なってそれぞれの一連の称呼のみを生ずるものであり,「女王」に付加する観念を生じるものであることは,審決が引用各商標について認定判断しているとおりであり,当裁判所としても,理由付けを含めこれを優に支持するものである。 原告主張のように,「QUEEN」あるいは「Queen’s」が日本語化されているものであるとしても,引用各商標を構成する他の部分もまたわが国において普通に使用されているものであることは審決の認定するとおりであるから,原告主張のこの点をもってしても,引用各商標においては一連の称呼のみを生ずるものであるとした審決の認定判断に誤りがあるとすることはできない。 引用各商標についての審決の上記認定判断に誤りがない以上,本件商標と引用各商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても非類似であるとした審決の判断に誤りがあるということはできない。 |
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結論
よって,原告主張の審決取消事由は理由がないので,原告の請求は棄却されるべきである。 |
裁判長裁判官 | 塚原朋一 |
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裁判官 | 塩月秀平 |
裁判官 | 田中昌利 |