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関連審決 審判1999-30783
関連ワード 独占的使用 /  包装 /  指定商品 /  指定役務 /  立体的形状 /  通常使用権 /  専用使用権 /  国内 /  商標権の移転 /  存続期間 /  更新登録 /  正当な理由 /  継続 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 356号 審決取消請求事件
原告A
原告B
原告C
上記3名訴訟代理人弁護士 中村勝彦
同訴訟復代理人弁護士 勝浦敦嗣
同訴訟代理人弁理士 稲葉良幸
同 内田 佐江子
被告 プリンチペ・エッセ・ピ・ア
同訴訟代理人弁護士 佐藤雅巳
同 古木睦美
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/07/07
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告ら (1) 特許庁が平成11年審判第30783号事件について平成14年3月5日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文第1,2項と同旨
争いがない事実等(証拠を掲げたもの以外は当事者間に争いがない。)
1 特許庁における手続の経緯 (1) プリンチぺ ソシエタ ペル アツチオーニ(その後平成6年11月13日,フラッシュ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータと名称を変更した。以下「プリンチペ社」という。)は,「PRINCIPE」の欧文字を横書きしてなり,商標法施行令(平成3年政令第299号による改正前のもの。)1条別表第17類の「被服,布製身回品,寝具類」を指定商品とする登録第2108864号商標(昭和55年9月9日登録出願。平成元年1月23日設定登録。平成9年8月25日に上記名称変更につき表示更正の登録。平成11年2月16日存続期間更新登録。以下「本件商標」という。)の商標権を有していた。原告らは,平成9年7月ころ,プリンチペ社から本件商標の商標権の譲渡を受け(原告A及び原告Bの持分各25%,原告Cの持分50%),同年8月25日にその旨の移転登録を経由した(甲4,5,乙1)。
(2) 被告は,平成11年6月21日,原告らを被請求人として,本件商標の登録を商標法50条1項の規定により取り消すことについて特許庁に審判を請求し,同請求の予告登録が同年7月14日にされた。
(3) 特許庁は,被告の上記請求について,平成11年審判第30783号事件として審理を行った上,平成14年3月5日,「登録第2108864号商標の商標登録は取り消す。」との審決(以下「本件審決」という。)をした。特許庁は,同月15日にその謄本を原告らに送達した(弁論の全趣旨)。
2 本件審決の理由の要点(甲1) 本件審決の理由は,要するに,被請求人である原告らは,本件審判請求の登録(平成11年7月14日)前3年以内に,日本国内において,本件商標をその指定商品について使用していなかったというべきであり,かつ,これを使用しなかったことについて正当な理由があるものとは認められないから,商標法50条の規定により,本件商標の登録を取り消すべきである,というものである。
当事者の主張
1 原告らの主張 次に述べるとおり,本件商標の通常使用権者は,本件審判請求の登録前3年以内に,日本国において,本件商標をその指定商品に使用していたものであり,この点に関する本件審決の認定判断は誤りである。
(1) プリンチペ社から株式会社パートナー社(以下「パートナー社」という。)に対する本件商標の使用権の再許諾権付き許諾 プリンチペ社は,1993年(平成5年)12月1日付けで,パートナー社との間で,契約期間を同日から2004年(平成16年)12月1日までの間とし,プリンチペ社はパートナー社に対し,日本国等において,被服等に関し,本件商標を独占的に使用する権利を許諾する,パートナー社は,プリンチペ社の承認を得て,本件商標の使用権を第三者に再許諾する権利を有することなどを内容とする契約(以下「本件契約」という。)を締結した。
(2)ア プリンチペ社の本件契約上の地位の原告らによる承継 原告らは,1997年(平成9年)7月ころ,プリンチペ社から本件商標の商標権の譲渡を受け(原告A及び原告Bの持分各25%,原告Cの持分50%),同年8月25日にその旨の移転登録を経由した。
イ 原告らは,本件商標の商標権を取得するとともに,パートナー社の承諾の下に,プリンチペ社から本件契約上の本件商標の使用権許諾者の地位を承継した。
(3) パートナー社から株式会社ハタ・コーポレーション(以下「ハタ社」という。)への本件商標の使用権の許諾とハタ社による本件商標の使用 ア パートナー社は,本件契約により取得した本件商標の使用権の再許諾権に基づいて,1994年(平成6年)1月1日付けで,株式会社エトアールマルゼン(以下「エトアールマルゼン社」という。)との間で,本件商標の使用権を許諾する旨の契約(パートナー社・エトアールマルゼン社間契約」という。)を締結し,また,エトアールマルゼン社は,1995年(平成7年)1月1日付けで,ハタ社との間で,同日から1997年(平成9年)12月31日までの間,本件商標の使用権をハタ社に許諾する旨の契約(以下「エトアールマルゼン社・ハタ社間契約」という。)を締結した。その後,パートナー社とハタ社は,エトアールマルゼン社の承諾を得て,1996年(平成8年)5月1日付け「「PRNCIPE」商標使用契約書」に関する契約内容変更の覚書」により,上記契約の内容を変更し,パートナー社が直接ハタ社に本件商標の使用権を再許諾する旨の合意をした。
イ ハタ社は,上記覚書に基づき,本件審判請求の登録(平成11年7月14日)前3年以内に,本件商標を指定商品である被服について使用していた。
(4) パートナー社から本件商標の使用権の許諾を受けたフレックスジャパン株式会社(以下「フレックス社」という。)による本件商標の使用 ア パートナー社は,1997年(平成9年)12月1日付けで,フレックス社との間で,契約期間を同日から2001年(平成13年)2月末日までの間とし,シャツ類全般(ドレス,カジュアル)に関し,フレックス社に対し本件商標の使用権を許諾する旨の契約(以下「パートナー社・フレックス社間契約」という。)を締結した。上記契約は,同契約8条に基づき,その後も更新されて継続している。
イ フレックス社は,準備期間を経て,1999年(平成11年)初め以降,本件商標を付したシャツを東武百貨店などに販売し,今日に至っている。
2 被告の主張 (1) 原告らの主張(1)の事実は否認する。
本件契約に係る契約書であるとして原告らが提出した証拠(甲6)は,同契約日当時プリンチペ社の代表権限を有していた「D」(社長)及び「E」(専務取締役)又はその者から代理権限を授与されたものにより作成されたものではない。したがって,甲6の契約書は無効なものである。
上記契約書が有効なものであるとしても,上記契約書は,プリンチぺ社がパートナー社に対しデザインの供給とプリンチペ社がイタリアにおいて所有する「PRINCIPE」なる商標の使用権の許諾を内容とするものであり,プリンチペ社がパートナー社に本件商標の使用権を許諾する内容のものではないし,まして,原告らがパートナー社に本件商標の使用権を許諾する内容のものでもない。
(2)ア 原告らの主張(2)アの事実うち,本件商標権についてプリンチペ社から原告らへの権利移転の登録がされていることは認め,その余の事実は否認する。
イ 同(2)イの事実は否認する。
原告らの主張によれば,1997年(平成9年)7月ころ,プリンチペ社から原告らに対し,本件契約上の本件商標の使用権許諾者の地位の譲渡がなされたことになるが,プリンチペ社から原告らに対する本件商標権の移転登録の申請がされた1997年7月2日当時,プリンチペ社は既に清算に入っていたのであるから,上記地位の譲渡があったとすれば,清算人と原告らとの間で当然上記地位の譲渡に関する契約書が取り交わされたはずである。しかるに,かかる契約書は存在しない。また,原告らが本件契約に係る契約書であると主張する甲6には,プリンチペ社が上記本件商標の使用権許諾者の地位を原告らに譲渡するについては,事前にパートナー社の書面による承諾を得なければならない旨の定めが記載されている(10条)ところ,かかる事前の承諾はない。
プリンチペ社から本件契約上の本件商標の使用権許諾者の地位の譲渡を受けたとする原告らの主張は全く理由がない。
(3)ア 原告らの主張(3)アの事実は否認する。
(ア) パートナー社・エトアールマルゼン社間契約に係る契約書であるとし て原告らが提出した証拠(甲7)の作成日は1994年(平成6年)1月1日であるが,その当時,エトアールマルゼン社は,プリンチペ社との間の契約により,同社が有する「日本における「PRINCIPE」商標」の使用権を許諾されていたものであり,甲7の契約書における「日本における「PRINCIPE」商標」が本件商標を指すことは明らかである。
しかして,甲7の契約書の内容は,パートナー社がエトアールマルゼン社に対し,エトアールマルゼン社がプリンチペ社から許諾を受けて有する専用使用権に係るブランド「PRINCIPE」に関して,サブライセンシーの開拓,企画,コーディネート及び管理業務のサービスを提供するというものである。
パートナー社が,プリンチペ社から本件商標の使用権の許諾を受けていないことは前記(1)に記載のとおりであり,甲7の契約書が,パートナー社がエトアールマルゼン社に対し,本件商標の使用権を再許諾する内容の契約書でないことは明らかである。
(イ) エトアールマルゼン社・ハタ社間契約に係る契約書であるとして原告らが提出した証拠(甲8)の内容は,エトアールマルゼン社が同社の専用使用ブランド「PRINCIPE」の使用権をハタ社に許諾するというものであるが,エトアールマルゼン社がパートナー社から本件商標の使用権の許諾を受けた事実がないことは上記(ア)に記載のとおりである。
甲8の契約書記載のエトアールマルゼン社の「専用使用ブランド「PRINNCIPE」」が,エトアールマルゼン社がプリンチペ社から許諾を受けて有していた専用使用権に係るブランドを指すものであることは上記(ア)に 述べたとおりである。
(ウ) 仮に,プリンチペ社がパートナー社に本件商標の独占的使用権を再許諾権付きで許諾し,また,パートナー社がエトアールマルゼン社ないしハタ社に対し,本件商標の使用権を再許諾したものとしても,上記再許諾をするについては,プリンチペ社の事前の書面による承諾を得なければならない旨の定めが甲6の契約書に記載されている(7条)ところ,かかる事前の承諾はないから,上記再許諾は無効である。
(エ) したがって,本件審判請求の登録(平成11年7月14日)前3年以内に,ハタ社が本件商標の使用権を有していたということはできない。
イ 同(3)イの事実は否認する。
ハタ社が,本件審判請求の登録(平成11年7月14日)前3年以内に,本件商標をその指定商品である被服について使用した事実はない。
(4)ア 原告らの主張(4)アの事実は否認する。
(ア) 原告らは,パートナー社がフレックス社に対し本件商標の使用権を再 許諾した旨主張するが,パートナー社がプリンチペ社から本件商標の使用権の許諾を受けた事実のないことは前記(1)記載のとおりであり,したがって,パートナー社がフレックス社に対し,本件商標の使用権の再許諾をしたということはあり得ない。
(イ) パートナー社・フレックス社間契約に係る契約書であるとして原告が提出した証拠(甲22)には,パートナー社はイタリアン・プレス・サービス・カンパニー.H.K.リミテッドの保有する商標第25類の「PRINCIPE(プリンチペ)」の独占的製造,販売権を取得し,これに基づき,フレックス社に同商標の使用権を許諾する旨の記載があるが,イタリアン・プレス・サービス・カンパニー.H.K.リミテッドは本件商標の商標権者ではない。また,甲22の契約書1条には,「パートナー社はフレックス社に対し,パートナー社が専用使用権を有する商標「PRINNCIPE(プリンチペ)(以下「本商標」という)に関し,第3条に定める商品について独占使用権を許諾する。」旨定められているが,一方,上記契約書2条は,「フレックス社は,販売方法,販売場所,宣伝広告,その他いかなる点においても,「本商標」(「本商標」と結合される図柄を含む)のブランドイメージを毀損するような使用をしてはならない。」旨定め,「本商標」が図形を含むものであることを明らかにしているから,上記契約書にいう「商標「PRINNCIPE(プリンチペ)」」が本件商標とは異なるものであることは明らかである。
本件契約が有効に成立したものとしても,その契約期間は,1993年(平成5年)12月1日から1998年(平成10年)12月1日までであり,同契約は更新されていない。1998年当時,プリンチペ社は清算中であり,本件契約の更新などするはずはない。これに対し,甲22の契約書の契約期間は,1997年(平成9年)12月1日から2001年(平成13年)2月末日までであり,その基礎となるべき本件契約の契約期間を超えており,プリンチペ社がかかる契約を承諾するはずがない。
したがって,甲22の契約書は,パートナー社がフレックス社に対し,本件商標の使用権を許諾したものではない。
イ 同(4)イの事実は否認する。
フレックス社が,本件審判請求の登録(平成11年7月14日)前3年以内に,本件商標をその指定商品である被服について使用した事実はない。
当裁判所の判断
1 商標法50条によれば,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは,何人も,その指定商品等に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができ,同審判請求があった場合においては,その審判請求に係る指定商品等についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにした場合を除き,上記審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者等のいずれかがその請求に係る指定商品等のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り,その指定商品等に係る商標登録の取消しを免れないとされている。
なお,商標とは,標章,すなわち文字,図形,記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩の結合であって,業として商品を生産し,証明し,又は譲渡する者がその商品について使用をするもの等をいい(商標法2条1項),また,商標法で標章について「使用」とは,商品又は商品の包装に標章を付する行為,商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,又は輸入する行為,商品又は役務に関する広告,定価表又は取引書類に標章を付して展示し,又は頒布する行為等をいう(同条3項(平成14年法律第24号による改正前のもの))とされている。
本件の争点は,ハタ社又はフレックス社が,本件商標の通常使用権を有していたか否か,ハタ社又はフレックス社が,本件審判請求の登録(平成11年7月14日)前3年以内に本件商標をその指定商品に使用していたと認められるか否かである。そこで,以下この点に関して判断する。
2 ハタ社が本件審判請求の登録(平成11年7月14日)前3年以内に本件商標の通常使用権を有していたか否か,また,その期間内に本件商標をその指定商品に使用していたか否かについて (1)ア プリンチペ社からパートナー社に対する本件商標の使用権の再許諾権付き許諾の有無について (ア) 原告らは,プリンチペ社は1993年(平成5年)12月1日付けで パートナー社との間で,契約期間を同日から2004年(平成16年)12月1日までとする本件契約を締結した旨主張し,同契約に係る契約書であるとして証拠(甲6)を提出する。
しかしながら,甲6の契約書の冒頭部分には,各契約条項の前提をなすと解される事項として,「本会社(判決注:プリンチペ社)は,イタリアにおける「PRINCIPE」の商標の所有者であり,かつ,イタリアにおいて当該商標の下に,日本の商標法における商品分類の第17類,20類,21類,22類,25類及び26類に属する全ての商品の製造者及び販売者としてビジネスに従事している。本会社は,独占的に,イタリアにおける本会社のデザイン及び創作に基づき製造された本製品(判決注:被服等)について「PRINCIPE」の商標をイタリアにおいて使用し,かつ他の者,商会又は会社に対して上記商標を使用する許可を付与する権限を有している。パートナー社は,本契約において定めるとおり,本会社のデザイン及び創作に基づく様々な種類の製品を本領域(判決注:日本国等)において製造及び販売することを望んでいる。」との記載があり,上記契約書4条には,パートナー社は,被服等に関連し,日本国等において,「PRINCIPE」の商標及びプリンチペ社の名称を使用する独占的権利を有する旨の定めが,同契約書7条には,パートナー社は,他の者,商会又は会社に対し,日本国等において,上記商標等を付した被服等を製造及び販売することを許可する権利を有する旨,但し,パートナー社は,まずプリンチペ社の書面による承認を取得しているものとする旨の定めがそれぞれ記載されていることが認められる。
(イ) 他方,証拠(乙2)及び弁論の全趣旨によれば,プリンチペ社はエトアールマルゼン社との間で,1989年(平成元年)6月1日発効し,契約期間を5年間とする商標使用権の許諾に関する契約を締結したこと,同契約に係る契約書の冒頭には,各契約条項の前提をなす事項として,「Company(判決注:プリンチペ社)は,日本及びイタリアにおいての「PRINCIPE」の商標の権利者であり,日本の商標の法に基づく商品区分,17類,20類,21類,22類及び25類の関連商品(判決:衣料全般等)の製造及び販売を営む。Companyは,他の者,商会又は会社に対し,商標「PRINCIPE」をCompanyのデザイン及びクリエーションの製品に使用する許可を与え,また,イタリア及び日本において独占的な使用を承認する。EM(判決注:エトアールマルゼン社)は,次に定義付ける領域内(判決注:日本国等)においてCompanyがデザイン及びクリエートした様々な種類の製品の製造と販売を希望している。」との記載があり,上記契約書4条aには,エトアールマルゼン社は「PRINCIPE」の商標及びプリンチペ社の名称を衣料全般等に日本国等において使用する権利を独占的に有する旨の定めが,上記契約書5条には,同契約は1989年(平成元年)6月1日に効力を発し,5年間継続するものとし,両者合意の上で文書にて追加年の更新をすることができる旨の定めが,上記契約書7条には,エトアールマルゼン社は,他の者,商会又は会社に対し,日本国等において,上記の商標等を付した製品の製造及び販売の許可を与える権利を有する旨,但し,エトアールマルゼン社は,まずプリンチペ社の書面による承認を取得しているものとする旨の定めがそれぞれ記載されている。
(ウ) 上記認定の事実によれば,プリンチペ社は,1989年(平成元年)6月1日に発効した契約により,エトアールマルゼン社に対し,プリンチペ社が有する日本においての商標「PRINCIPE」,すなわち本件商標の独占的な使用権を付与したことが認められる。プリンチペ社が,エトアールマルゼン社に対し本件商標の独占的な使用権を許諾しながら,同時に,パートナー社に対し本件商標の独占的使用権を許諾することは考えにくいことであり,このことに加え,甲6の契約書では,契約条項の前提をなす事項として,プリンチぺ社がイタリアにおける「PRINCIPE」の商標の所有者である旨の記載がされているにとどまり,乙2の契約書のように,プリンチぺ社が日本及びイタリアにおいての「PRINCIPE」の商標の権利者であることの記載はないことを考慮すれば,甲6の契約書は,プリンチペ社がパートナー社に対し,イタリアにおける「PRINCIPE」の商標の独占的な使用権を許諾したにとどまるものであると解する のが相当であり,上記契約書が,プリンチペ社がパートナー社に対し,本件商標の独占的な使用権を許諾する内容のものであると認めることはできない。
したがって,証拠(甲6)が権限を有する者により作成されたものかどうかの点はさておき,それは,プリンチペ社がパートナー社との間で本件契約が成立したことを証するものとはいえない。
イ パートナー社からハタ社に対する本件商標の使用権の許諾の有無について (ア) 原告らは,パートナー社はエトアールマルゼン社との間で,本件契約 により取得した本件商標使用の再許諾権に基づいてエトアールマルゼン社に対し本件商標の使用権を許諾する旨の契約(パートナー社・エトアールマルゼン社間契約)を締結し,また,エトアールマルゼン社はハタ社との間で,本件商標の使用権をハタ社に許諾する旨の契約(エトアールマルゼン社・ハタ社間契約)をし,その後,パートナー社及びハタ社の2社は,エトアールマルゼン社の承諾の下に,1996年(平成8年)5月1日付けで,上記契約の内容を変更し,パートナー社が直接ハタ社に本件商標の使用権を再許諾するものとする合意をした旨主張する。
(イ) しかしながら,パートナー社が,プリンチペ社から本件商標の使用権の許諾を受けていないことは上記アに説示したとおりであり,原告らがパートナー社・エトアールマルゼン社間契約に係る契約書であるとして提出した証拠(甲7)は,エトアールマルゼン社がパートナー社に対し,エトアールマルゼン社の専用使用ブランド「PRNCIPE」のサブライセンシーの開拓業務,企画,コーディネート及び管理業務を委託することを内容とする契約であり,原告らが主張するような内容の契約の成立を証するものでないことはその記載内容に照らして明らかである。
(ウ) 上記ア認定の事実並びに証拠(甲8)及び弁論の全趣旨によれば,エトアールマルゼン社は,1995年(平成7年)1月1日付けで,ハタ社との間で,契約期間を同日から1997年(平成9年)12月末日までとして,エトアールマルゼン社がハタ社に対し,エトアールマルゼン社の専用使用ブランド「PRINCIPE」の商標を使用した被服等の製造,販売権を許諾する旨の契約を締結したこと,上記エトアールマルゼン社の専用使用ブランド「PRINCIPE」の商標は,前記ア(イ)の契約により,エトアールマルゼン社がプリンチペ社から独占的な使用権の許諾を受けた本件商標を指すものであることが認められる。
しかしながら,エトアールマルゼン社とハタ社間の上記契約に関しては,パートナー社とハタ社の間で交わされたと認められる1996年(平成8年)5月1日付け「「PRNCIPE 商標使用契約書」に関する契約内容変更の覚書」(甲9)により,パートナー社が直接ハタ社に本件商標の使用権を再許諾するものとする旨,上記契約内容を変更する合意がされている。このことは,上記契約が何らかの理由により契約期間が満了する前の上記覚書作成時点において終了したことを示すものと認めるほかない。そして,パートナー社が,プリンチペ社から本件商標の使用権の許諾を受けていないことは前記アに説示したとおりであるから,上記覚書により,ハタ社が本件商標の使用権を取得するいわれはない。
したがって,証拠(甲8,9)をもって,ハタ社がエトアールマルゼン社ないしパートナー社から本件審判請求の登録(平成11年7月14日)前3年以内の期間において本件商標の使用権の許諾を受けていたと認めることはできない。
ウ 原告らの上記ア(ア)及びイ(ア)の主張に沿う証拠(甲17,19,21,3 0,31)のうち上記認定に反する部分はたやすく信用することができず,他に,上記原告ら主張事実を認めるに足りる証拠はない。
(2) のみならず,原告らが提出した証拠(甲10,12ないし16,18)は,次に説示するとおり,いずれも,ハタ社が本件審判請求の登録(平成11年7月14日)前3年以内に本件商標をその指定商品に使用したとの原告ら主張事実を証するものとはいえず,また,同原告ら主張事実に沿う証拠(甲17,19)もたやすく信用することができず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 ア 甲10は,ハタ社が,1995年(平成7年)5月16日及び17日に開催した1995年から1996年(平成8年)秋冬コレクション発表会の案内状であり,また,甲12は,ハタ社が,1995年(平成7年)11月1日及び2日に開催した1996年(平成8年)春夏コレクション発表会の案内状であると認められるが,各案内状にはいずれも本件商標の指定商品が何ら表示されていないばかりでなく,上記各コレクション発表会が本件審判請求の登録(平成11年7月14日)前3年以内にされたものでないことは明らかである。なお,上記各証拠がハタ社により上記各コレクションに係る商品が販売されたことを証するものでないことはいうまでもない。
イ 証拠(甲13)は,ハタ社が作成した1997年(平成9年)春夏物ネクタイの商品リストであると認められるが,これらが広告,定価表又は取引書類として展示され,又は各販売先に頒布されたことを認めるに足りる証拠はなく,まして,上記商品リストをもって,ハタ社により同リスト記載の商品が販売されたことを証するものとはいえない。
また,原告らがエトアールマルゼン社・ハタ社間契約に係る契約書であるとする甲8には,エトアールマルゼン社はハタ社に対し,専用使用ブランド「PRINCIPE」の商標を付した指定商品,すなわち「旧第17類,現第25類 被服(但し,メンズのスーツ,ジャケットに限る)」を製造し,日本国において販売する使用権を許諾する旨の約定しかなく,ハタ社に対しネクタイについて上記商標の使用権を許諾する旨の約定はないから,仮に,上記商品リストが展示,頒布されたものとしても,これをもって,ハタ社が本件商標の使用権者として本件商標をその指定商品に使用したということはできない。
ウ 原告らは,証拠(甲14)は,ハタ社が1997年(平成9年)に販売していた「PRINCIPE」ブランドの商品(メンズパンツ)に使用されていた下げ札であると主張するが,上記下げ札げ自体は,本件商標がその指定商品に使用され,その指定商品が販売のため展示されていたことを示すものということはできない。
エ 証拠(甲15)は,1995年(平成7年)2月2日付けの繊研新聞であり,同新聞には,「ハタ・コーポレーションは,今秋冬物からイタリア・フィレンツェの専門店「プリンチペ」(1930年創業)ブランドのメンズ重衣料を日本国内でライセンス生産し,専門店ルートで販売する。プリンチペと提携関係にある専門店のエトワールマルゼン(本社富山市)との3年契約で,3年後,小売りベースで10億円の売上高を見込んでいる。」との記載があるが,この記載は,ハタ社が,本件審判請求の登録(平成11年7月14日)前3年以内に,本件商標をその指定商品について使用したことを示すものではない。
オ 弁論の全趣旨も併せてみれば,証拠(甲16)は,ハタ社が,上記新聞にあるとおり,専門店「プリンチペ」(1930年創業)ブランドのメンズ重衣料を日本国内でライセンス生産し,専門店ルートで販売するに当たり,今後のブランド展開のスケジュールを詳述した1995年(平成7年)1月作成の企画書であると認められ,また,証拠(甲18)は,パートナー社がハタ社宛てに提出した1998年(平成10年)秋冬物の企画書である(同企画書には「principe」の文字及び本件商標の指定商品に含まれる各種商品が表示されている。)。
しかしながら,一般的に,企画書は,商品開発,販売計画を記載した会社内の内部文書というべきものであり,これをもって,本件商標が本件指定商品について使用されたことを示すものということはできず,さらに,前者についていえば,その内容は,本件審判請求の登録(平成11年7月14日)前3年以内に関するものではなく,ハタ社が同期間内に本件商標をその指定商品について使用したことを示すものでないことは明らかである。
3 フレックス社が,本件審判請求の登録(平成11年7月14日)前3年以内に本件商標の通常使用権を有していたか否か,また,その期間内に本件商標をその指定商品に使用していたか否かについて (1)ア 原告らは,パートナー社がプリンチペ社から本件商標の独占的使用権を再許諾権付きで許諾を受けたことを前提に,フレックス社がパートナー社から本件商標の使用権の再許諾を受けた旨主張するが,パートナー社がプリンチペ社から本件商標の独占的使用権の許諾を受けたと認められないことは,前記2(1)アに説示したとおりである。
原告らは,パートナー社・フレックス社間契約に係る契約書であるとして証拠(甲22)を提出する。しかしながら,甲22の契約書には,パートナー社はイタリアン・プレス・サービス・カンパニー.H.K.リミテッドの保有する商標第25類の「PRINCIPE(プリンチペ)」の独占的製造,販売権を取得し,これに基づき,フレックス社に同商標の使用権を許諾する旨記載されているところ,イタリアン・プレス・サービス・カンパニー.H.K.リミテッドは本件商標の商標権者ではなく,上記契約書にいう同社が保有する商標第25類の「PRINCIPE(プリンチペ)」と本件商標とは別の商標を意味するものと解するのが相当である。
したがって,証拠(甲22)をもって,フレックス社がパートナー社から本件商標の使用権の許諾を受けたとの事実を認めることはできない。
イ 原告らの上記アの主張に沿う証拠(甲19,29,30)はたやすく信用することができず,他に上記原告ら主張事実を認めるに足りる証拠はない。
(2) そうすると,仮に,フレックス社が本件審判請求の登録(平成11年7月14日)前3年以内に「PRINCIPE」の商標をその指定商品について使用した事実があるとしても,それは本件商標の使用権者としての本件商標の使用には該当しない。
4 以上の次第で,原告らが本件審決の取消事由として主張するところは,その余の点について判断するまでもなく理由がなく,他に本件審決を取り消すべき瑕疵は見あたらない。
よって,原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 北山元章
裁判官 青蜉]
裁判官 沖中康人