関連ワード | 指定役務 / 権利濫用(権利の濫用) / 差止 / 信義則 / |
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事件 |
平成
14年
(ワ)
16724号
損害賠償等請求事件
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原告 特定非営利活動法人家庭教師派遣業自主規制委員会 原告 株式会社日本家庭教師センター学院 被告 イクス有限会社 訴訟代理人弁護士 三好徹 同 吉田哲 同 根本雄一 同 渡辺昇一 同 藤川浩一 同 高久尚彦 同 岩本 康一郎 同 石田央子 同 西尾政行 同 宮下正臣 同 中山素子 同 井川 真由美 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2003/06/05 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告らの負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求の趣旨
1 原告特定非営利活動法人家庭教師派遣業自主規制委員会(以下「原告自主規制委員会」という。)の請求 (1) 被告は,原告自主規制委員会に対し,17万3000円及びこれに対する平成13年11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(本判決末尾添付の平成14年9月30日付け原告ら第一準備書面写し(2)@請求の趣旨1ア1)。 (2) 被告は,原告自主規制委員会に対し,50万円及びこれに対する平成13年11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(前同@請求の趣旨1ア2)。 (3) 被告は,原告自主規制委員会に対し,12万5825円及びこれに対する平成13年11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(前同@請求の趣旨1ア3)。 (4) 被告は,原告自主規制委員会に対し,2万4000円を支払え(同準備書面写し(3))。 (5) 原告自主規制委員会は,被告に対し,「家庭教師優良業者全国ネットワーク」名称中の“優良業者”の削除又は解散,及び関連マーク等の削除,使用禁止を求める(同準備書面写し(2)B請求の趣旨2b)。 (6) 原告自主規制委員会は,被告に対し,「家庭教師優良業者全国ネットワーク認定“優良AAA業者”」及び関連マーク等の削除,使用禁止を求める(前同C請求の趣旨2c)。 2 原告株式会社日本家庭教師センター学院(以下「原告センター学院」という。)の請求 被告は,原告センター学院に対し,50万円及びこれに対する平成13年11月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払え(前同@請求の趣旨1イ)。 3 原告自主規制委員会及び原告センター学院の請求 原告自主規制委員会及び原告センター学院は,被告に対し,「家庭教師派遣業自主規制委員会」(登録番号第3366762号)の表示禁止,別紙謝罪広告文記載どおりの謝罪広告の掲載を求める(前同A請求の趣旨2a及び第2回弁論準備手続調書)。 |
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当事者の主張
1 請求の原因 (原告自主規制委員会の主張) (1) 請求の趣旨1(1)に係る請求原因 本判決末尾添付の訴状写し「紛争の要点(請求の原因)」1記載のとおり。 原告自主規制委員会の主張を善解すると,同原告は,同原告が実施しようとした家庭教師派遣業者格付けためのAAA審査(以下「AAA審査」という。)に関し,同審査に混乱を生じさせた責任は訴外A(以下「A」という。)にあるとした上,被告がAの審査方法を支持し,被告やAの所属する「家庭教師優良業者全国ネットワーク」(以下「全国ネットワーク」という。)の会員に有利な審査を推し進めた結果,AAA審査の評価をおとしめ,よって,同原告に信用失墜などの損害を被らせたものであるとして,被告の上記行為が不法行為に当たる旨を主張し,損害賠償を請求しているものと解される。 (2) 請求の趣旨1(2)に係る請求原因 本判決末尾添付の訴状写し「紛争の要点(請求の原因)」5記載のとおり。 原告自主規制委員会の主張を善解すると,同原告は,被告がA,訴外B(以下「B」という。),訴外C(以下「C」という。)及び全国ネットワーク会員と共に,平成13年11月29日から平成14年1月24日までの間に,インターネット上[www.aozora.com/kzi]で,また文書でも,同原告に対する誹謗中傷行為や名誉毀損行為を行い,よって,同原告に信用失墜などの損害を被らせたものであるとして,被告の上記行為が不法行為に当たる旨を主張し,損害賠償を請求しているものと解される。 (3) 請求の趣旨1(3)に係る請求原因 本判決末尾添付の訴状写し「紛争の要点(請求の原因)」6記載のとおり。 原告自主規制委員会の主張を善解すると,同原告は,被告が同原告の理事であることを前提に,平成13年11月8日に開催された第4回理事会及び平成13年12月20日に開催された第3回臨時総会において,当時の理事がそれぞれ12万5825円を理事負担金という名目で負担し,これを同原告に支払う旨の決議が有効に成立したと主張して,被告に対して上記理事負担金の支払を求めているものと解される。 (4) 請求の趣旨1(4)に係る請求原因 原告自主規制委員会は,同原告の会員には会費納入の義務があることを前提に,被告は現在も同原告の会員であるとして,被告に対し,未払いの平成14年度年会費2万4000円の支払を求めている(本判決末尾添付の前記原告ら第一準備書面(3))。 (5) 請求の趣旨1(5)に係る請求原因 本判決末尾添付の訴状写し「紛争の要点(請求の原因)」2,4各記載のとおり。 原告自主規制委員会の主張を善解すると,同原告は,被告が「家庭教師優良業者全国ネットワーク」の名称を使用する行為は,誇大広告を禁じる特定商取引法43条に違反するとして,同条及び同法47条等を根拠に,上記「家庭教師優良業者全国ネットワーク」から「優良業者」の文字を削除することなどを求めているものと解される。 (6) 請求の趣旨1(6)に係る請求原因 本判決末尾添付の訴状写し「紛争の要点(請求の原因)」2,4各記載のとおり。 原告自主規制委員会の主張を善解すると,同原告は,前記(5)と同様,誇大広告を禁じる特定商取引法43条及び47条等を根拠に,「家庭教師優良業者全国ネットワーク認定“優良AAA業者”」の表示及び関連マークを削除することなどを求めているものと解される。 (原告センター学院の主張) (7) 請求の趣旨2に係る請求原因 本判決末尾添付の訴状写し「紛争の要点(請求の原因)」3記載のとおり。 原告センター学院の主張を善解すると,同原告は,被告が商標「家庭教師派遣業自主規制委員会」を使用する行為は,同原告が有する下記商標権(以下「本件商標権」といい,下記登録商標を「本件商標」という。)を侵害する行為に当たると主張して,同商標権の侵害を理由に,50万円の損害賠償金の支払を求めているものと解される。 登録番号 第3366762号 出願年月日 平成6年(1994)6月7日 登録年月日 平成9年(1997)12月19日 商品及び役務の区分 第41類 指定役務 技芸・スポーツ又は知識の教授 登録商標 「家庭教師派遣業自主規制委員会」 (原告自主規制委員会及び原告センター学院の主張) (8) 請求の趣旨3に係る請求原因 本判決末尾添付の訴状写し「紛争の要点(請求の原因)」2,3各記載のとおり。 原告らの主張を善解すると,原告らは,上記(5)及び(6)各記載の特定商取引法違反及び同(7)記載の商標権侵害を根拠に,特定商取引法43条,47条,商標法78条等に基づき,被告に対し,本件商標の使用の差止及び謝罪広告の掲載などを求めているものと解される。 2 被告の認否及び反論 (1) 請求の趣旨1(1)に係る請求原因について 原告自主規制委員会の前記主張(第2,1(1))は,争う。 同原告は,被告がAAA審査に関わっていたかのような言い方をしているが,被告が同審査に関与したことは一切ない。 (2) 請求の趣旨1(2)に係る請求原因について 被告は,インターネット上においても,また,文書によっても,原告自主規制委員会が主張するような名誉毀損行為(誹謗中傷行為)をしたことはない。 (3) 請求の趣旨1(3)に係る請求原因について 原告自主規制委員会が主張する理事負担金は,法的には,理事の立場にある者から同原告への贈与としか評価のしようのないものであるが,言うまでもなく贈与は契約であり,贈与者本人の意思に基づくものでなければならず,同原告が主張するように,理事会あるいは総会の決議により一方的にその支払を強制できるものではない。 しかるところ,被告は,理事負担金という名目の下,原告自主規制委員会に対して12万5825円を支払う旨承諾したことは一切ないのであるから,被告に理事負担金の支払義務などないことは,明らかである。 (4) 請求の趣旨1(4)に係る請求原因について ア 被告は,平成13年12月6日付けの文書(乙1)をもって,原告自主規制委員会に対して同委員会の理事を辞任する旨の意思表示をしており,理事の辞任とともに同委員会を退会したから,平成14年度の会費を支払う義務はない。 イ 仮に,上記退会の意思表示が明示のものでないとしても,被告は,上記の文書を送付した後,同委員会との関係を絶っており,会員であるとの意識は全くなかった。会費を支払わないこと自体が退会することの意思表示であるともいえ,法的に言えば,平成13年12月6日ころに,被告による黙示の退会の意思表示がされたということなる。したがって,やはり被告に平成14年度の会費を支払う義務はない。 ウ さらに百歩譲って,退会の事実が認められないとしても,上記文書を送付した後,同原告から被告に対して総会案内等の書類が送られてきたことは一切なく,同原告自身が,被告を会員として扱ってこなかった。しかも,原告自主規制委員会は,組織として正常に機能しておらず,もはや,会としての実態を失っている。このように形骸化した会が,会員として遇してもいない者に対して,会費のみを請求するのは,信義則に反する(あるいは権利の濫用に当たる)というべきである。 エ よって,いずれにせよ,原告の上記会費請求には理由がない。 (5) 請求の趣旨1(5)に係る請求原因について 原告自主規制委員会は,全国ネットワークの解散や,「家庭教師派遣優良業者全国ネットワーク」の名称から「優良業者」の表示を削除することなどを求めているようであるが,同原告にそのようなことを請求する権利ないし法的根拠はない。 (6) 請求の趣旨1(6)に係る請求原因について 原告自主規制委員会は,全国ネットワーク(ないし被告)が「優良AAA業者」関連のマークを使用することの禁止,削除などを求めているようであるが,同原告にそのようなことを請求する権利ないし法的根拠はない。 なお,念のため申し添えると,そもそも被告は全国ネットワークを主宰しているわけではなく,その代表者でもないから,同原告が求めているような措置を講じる権限を持たない。 (7) 請求の趣旨2に係る請求原因について 被告は,「家庭教師派遣業自主規制委員会」の名称(本件商標)を,いかなる方法・態様においても使用したことはない。 被告は,全国ネットワークの主宰者でも代表者でもないし,また,原告自主規制委員会が主張するような,偽造文書を用いてネットワークの会員を募集するといったことをしたこともない。 (8) 請求の趣旨3に係る請求原因について 前記(7)で述べたとおり,被告は本件商標を使用していないから,本件商標権の侵害は問題にならない。 また,前記(5),(6)で述べたとおり,原告は,特定商取引法を根拠に,被告に対して何らかの私法上の請求をする立場にないから,同法上の問題も何ら生じない。 |
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当裁判所の判断
1 請求の趣旨1(1)の請求について 前記のとおり,原告自主規制委員会の主張するところは,被告がAのAAA審査方法を支持し,被告やAの所属する全国ネットワークの会員に有利な審査を推し進めた結果,AAA審査の評価をおとしめ,よって,同原告に信用失墜などの損害を被らせたものであるとして,被告の上記行為が不法行為に当たる旨をいうものと善解することができる(第2,1(1))。 しかしながら,本件で提出されたすべての証拠によっても,被告が上記のような行為をした事実を認めることはできない。 したがって,その余の点につき判断するまでもなく,上記請求には理由がない。 2 請求の趣旨1(2)の請求について 前記のとおり,原告自主規制委員会の主張するところは,被告がA,B,C及び全国ネットワーク会員と共に,平成13年11月29日から平成14年1月24日までの間に,インターネットのホームページ[www.aozora.com/kzi]上で,また文書によって,同原告に対する誹謗中傷行為や名誉毀損行為を行い,同原告に信用失墜などの損害を被らせたとして,被告の上記行為が不法行為に当たる旨をいうものと善解することができる(第2,1(2))。 しかしながら,本件で提出されたすべての証拠によっても,被告ないし被告代表者D(以下「D」という。)に関するものとしては,上記インターネットのホームページにおいて,2002年(平成14年)6月20日付けで,Cが松山簡易裁判所に提訴した関連事件(後に松山地方裁判所に移送。同庁平成14年(ワ)第541号。甲39〜41及び乙4参照)の経過にふれた上で,「E氏が先行し,F氏,G氏がD氏と合流して8月には行動されるそうで,6月13日(木)に力強いエールを聞きました。」との書き込みがされた事実が認められるにとどまる(甲26。なお,上記「D氏」とは,被告代表者のDのことを指すものと思われる。)。 文面や前後の文脈からして,この書き込みがDによってされたものでないことは明らかであるし,そもそも,上記の内容が名誉毀損や誹謗中傷に当たるものではないことも明らかである。その他に,被告に具体的に関連するインターネット上の書き込みあるいは配布文書は存在せず,原告自主規制委員会が主張するように,被告が,上記ホームページ上で,あるいは文書によって,同原告の名誉を毀損する行為や,信用を失墜させる行為をした事実を認めることはできない。 よって,その余の点につき判断するまでもなく,同原告の上記請求には理由がない。 3 請求の趣旨1(3)の請求について 前記のとおり,原告自主規制委員会は,被告が同原告の理事であったことを前提に,平成13年11月8日に開催された第4回理事会及び平成13年12月20日に開催された第3回臨時総会において,理事が12万5825円を負担する旨の決議がされたことを根拠に,被告に対して上記金員の支払を求めているものと解される(第2,1(3))。 しかしながら,被告が同原告の理事であったことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,証拠(甲3,甲14の2及び乙3)及び弁論の全趣旨によれば,同原告の理事であったのは被告代表者のDであると認められるから,原告の上記主張は,そもそも,その前提を欠いている(ちなみに,同原告は,平成14年9月30日付け原告ら第一準備書面(1)において,被告をイクス有限会社と特定する旨明確に主張している。)。 また,上記の点をさておいても,本件で提出されたすべての証拠によっても,同原告主張に係る決議が有効に成立した事実を認めることはできない。すなわち,同原告は,例えば,「特定非営利活動法人家庭教師派遣業自主規制委員会 第4回理事会の報告事項と議決事項」と題する書面を甲19号証の1として,「臨時総会(通算3回)決議事項」と題する書面を甲19号証の2として,さらに,「第4回理事会議事発言内容詳細」と題する書面を甲30号証としてそれぞれ提出しているが,これらの書面はその成立の経緯が一切不明であるばかりか,作成名義人や記載内容に照らし,いわば原告らの認識のみに基づいて作成された文書であることが明らかであるから,これらの書面をもって,前記金員を各理事が負担する旨の具体的な決議ないし意思表示の合致が存在した事実を認めることはできない。 よって,この点に関する同原告の請求には理由がない。 4 請求の趣旨1(4)に係る請求原因について 証拠(甲14の2,甲23)及び弁論の全趣旨によれば,原告自主規制委員会の会員は同原告に対して会費を支払う義務を負うこと,平成14年度の法人年会費は2万4000円であること,少なくとも平成13年12月6日ころまでは,被告代表者のDは同原告の理事であり,被告は同原告の会員であったことが認められ,他方,被告が平成14年度の会費を支払ったことは認められない。 しかるところ,被告は,@平成13年12月6日付けの文書(乙1)をもって,原告自主規制委員会に対し,同委員会の理事を辞任する旨の意思表示をすると共に,同委員会を退会した,A仮に,退会の意思表示が明示のものでないとしても,被告は,上記文書の送付後,同委員会との関係を完全に絶っており,平成13年12月6日ころに,被告による黙示の退会の意思表示がされたと評価することができる,Bさらに百歩譲って,退会の事実が認められないとしても,上記文書の送付後,同原告自身が被告を会員として扱ってこなかったばかりか,今や,原告自主規制委員会は会としての実態を失っており,このように形骸化した会が,会員として遇してもいない者に対して,会費のみを請求するのは,信義則に反する(あるいは権利の濫用に当たる)というべきであるなどと主張して,同原告の会費請求を拒んでいる。 そこで検討すると,証拠(甲14の2,乙3,5等)及び弁論の全趣旨によると,原告自主規制委員会においては,会員として個人会員のほか法人会員が予定されており,被告をはじめ法人も会員になることはできたものであるが,理事については,特定非営利活動法人というその性質上,営利を目的とする法人が理事になることはできなかったことから,Dをはじめ,有力な法人会員の代表者が理事に就任していたものである。被告については,被告が同原告の法人会員であるとともに,代表者のDが同原告の理事の職にあったものであるが,Dにおいては,被告が法人会員であることからその代表者として同原告の理事に就任していたものの,それ以外に個人として同原告の活動に関与すべき理由は何ら存在しなかった。証拠(甲42,乙1)によれば,平成13年12月4日ころから同月6日ころにかけて,Dが同原告に対し,文書をもって,理事を辞任する旨の意思表示をしたことが認められるところ,これらの文書(甲42,乙1)には,被告が同原告から退会する旨の記載は存在しないが,上記のとおり,そもそもDは,被告が同原告の法人会員であったことから,被告の代表者として同原告の理事に就任していたもので,それ以外の個人的事情から理事の職にあったものではないこと,Dは同原告の理事を辞任した後も被告代表者の地位にとどまっており,同人に代わって他の取締役等が同原告の理事に就任したわけでもないこと, これらの文書が到達した後,被告が同原告に対する会費の支払いを中止した一方で,同原告も被告に対して総会等の案内をしなかったことなどに照らせば,被告と同原告の間では,当時,Dが同原告の理事を辞任することにより,同時に,被告も同原告の会員たる地位を離脱したという共通の認識が存在したものと認めることができる(乙3,5)。したがって,平成13年12月に上記文書が同原告に到達したことにより,被告は原告の会員たる地位を失ったものというべきである。 以上によれば,平成14年度の年会費として2万4000円の支払を求める原告自主規制委員会の請求は,理由がない。 5 請求の趣旨1(5)に係る請求原因について 前記のとおり,原告自主規制委員会の請求は,被告が「家庭教師優良業者全国ネットワーク」の名称を使用する行為は,誇大広告を禁じる特定商取引法43条に違反するとした上,主務大臣の業務停止権限等を規定する同法47条を根拠に,上記「家庭教師優良業者全国ネットワーク」から「優良業者」の文字を削除することなどを求めているものと善解することができる(第2,1(5))。 しかしながら,特定商取引法は,43条で役務提供業者等の誇大広告等を禁止する旨を規定し,47条で主務大臣の業務停止権限等を規定しているが,役務提供者等に同法43条に違反する行為があったとしても,私人が同法の規定に基づき当該業者等に対して業務の停止や違反行為の差止等を求める権利を有するものでないことは,同法の規定から明らかであるから,原告自主規制委員会の上記主張は,それ自体失当というほかない。その他,同原告が被告に対して上記のような請求をなし得る法律上の根拠については,同原告から何らの主張も立証もない。 したがって,この点に関する同原告の請求には理由がない。 6 請求の趣旨1(6)に係る請求原因について ここでも,原告自主規制委員会は,特定商取引法43条,47条等を根拠に,被告が使用する「家庭教師優良業者全国ネットワーク認定“優良AAA業者”」の表示及び関連マークを削除することなどを求めているものと解されるが,私人である原告自主規制委員会が,同法の規定に基づき,役務を提供する業者に対して違反行為の差止等を求める私法上の権利を有するものでないことは,前項5で述べたとおりである。 よって,この点に関する同原告の請求には理由がない。 7 請求の趣旨2に係る請求原因について 本件で提出されたすべての証拠を精査しても,被告が本件商標「家庭教師派遣業自主規制委員会」及びその類似の範囲にある商標を使用している事実を認めるに足りる証拠は存在しない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件商標権の侵害を根拠とする原告センター学院の損害賠償請求には,理由がない。 8 請求の趣旨3記載に係る請求原因について 前項7で判示したとおり,本件商標権の侵害を根拠とする原告センター学院の差止請求には理由がなく,まして,商標権者でない原告自主規制委員会の同請求に理由がないことは明らかである。 また,前記5及び6で判示したところなどに照らし,その他の点(例えば,「NPO法人家庭教師派遣業自主規制委員会認定・優良AAA認定業者」の表示が虚偽であったことを表示し,謝罪広告せよとの点)については,そもそも,原告らが被告に対し,このような謝罪広告を求め得る実体法上の根拠が存在しない。 したがって,この点に関する原告らの請求には理由がない。 |
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結論
以上によれば,原告らの請求は,いずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 三村量一 |
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裁判官 | 青木孝之 |
裁判官 | 吉川泉 |