関連ワード | 役務の提供 / 指定役務 / 権利能力 / 債務不履行 / 警告 / 差止 / 継続 / |
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事件 |
平成
14年
(ワ)
17216号
損害賠償等請求事件
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原告 特定非営利活動法人家庭教師派遣業自主規制委員会 原告 株式会社日本家庭教師センター学院 被告A 訴訟代理人弁護士 三好徹 同 吉田哲 同 根本雄一 同 渡辺昇一 同 藤川浩一 同 高久尚彦 同 岩本 康一郎 同 石田央子 同 西尾政行 同 宮下正臣 同 中山素子 同 井川 真由美 訴訟復代理人弁護士 津田直和 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2003/06/05 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告らの負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求の趣旨
1 原告特定非営利活動法人家庭教師派遣業自主規制委員会(以下「原告自主規制委員会」という。)の請求 (1) 被告は,原告自主規制委員会に対し,43万1000円及びこれに対する平成13年11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(本判決末尾添付の平成14年11月11日付け原告ら第二準備書面写し第1(2)@請求の趣旨1ア)。 (2) 原告自主規制委員会と被告との間において,被告は,同原告に対してAAA審査の審査料・認定料として支払った2万円の返還請求権を有しないことの確認を求める(前同D請求の趣旨2d及び第5回弁論準備手続調書)。 (3) 原告自主規制委員会は,被告に対し,「家庭教師優良業者全国ネットワーク」名称中の“優良業者”の削除又は解散,及び関連マーク等の削除,使用禁止を求める(前同B請求の趣旨2b)。 (4) 原告自主規制委員会は,被告に対し,「岐阜県家庭教師協会」名称中の“県”の削除又は名称の変更,解散を求める(前同C請求の趣旨2c)。 2 原告株式会社日本家庭教師センター学院(以下「原告センター学院」という。)の請求 被告は,原告センター学院に対し,50万円及びこれに対する平成13年11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(前同@請求の趣旨1イ)。 3 原告自主規制委員会及び原告センター学院の請求 原告自主規制委員会及び原告センター学院は,被告に対し,商標「家庭教師派遣業自主規制委員会」(登録番号第3366762号)の表示禁止,別紙謝罪広告文記載どおりの謝罪広告の掲載を求める(前同A請求の趣旨2a及び第2回弁論準備手続調書)。 |
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当事者の主張
1 請求の原因 (原告自主規制委員会の主張) (1) 請求の趣旨1(1)に係る請求原因 本判決末尾添付の訴状写し「紛争の要点(請求の原因)」4,7各記載のとおり。 原告自主規制委員会の主張を善解すると,同原告は,被告は「家庭教師優良業者全国ネットワーク」(以下「全国ネットワーク」という。)の会員であるところ,訴外B(以下「B」という。)及び訴外C(以下「C」という。)ら他の全国ネットワーク会員と共に,平成13年11月29日から平成14年1月24日までの間に,インターネット上[www.aozora.com/kzi]で,また文書でも,同原告に対する誹謗中傷行為や名誉毀損行為を行い,よって,同原告に信用失墜などの損害を被らせたものであるとして,被告の上記行為が不法行為に当たる旨を主張し,損害賠償を請求しているものと解される。 (2) 請求の趣旨1(2)に係る請求原因 本判決末尾添付の訴状写し「紛争の要点(請求の原因)」3記載のとおり。 後記のとおり,被告は,原告自主規制委員会が被告に対し,AAA審査の審査料・認定料2万円を返還する義務を負う旨主張しているところ,同原告は,被告の同審査辞退の意思表示は一方的なものであり,上記の返還義務は存在しないとして,被告の上記主張を争っている。 (3) 請求の趣旨1(3)に係る請求原因 本判決末尾添付の訴状写し「紛争の要点(請求の原因)」1,5各記載のとおり。 原告自主規制委員会の主張を善解すると,同原告は,被告が「家庭教師優良業者全国ネットワーク」の名称を使用する行為は,誇大広告を禁じる特定商取引法43条に違反するとして,同条及び同法47条等を根拠に,上記「家庭教師優良業者全国ネットワーク」から「優良業者」の文字を削除することなどを求めているものと解される。 (4) 請求の趣旨1(4)に係る請求原因 本判決末尾添付の訴状写し「紛争の要点(請求の原因)」1記載のとおり。 原告自主規制委員会の主張を善解すると,同原告は,被告が「岐阜県家庭教師協会」の名称を使用する行為は,特定商取引法に違反するとして,同法43条及び47条等を根拠に,上記「岐阜県家庭教師協会」から「県」の文字を削除することなどを求めているものと解される。 (原告センター学院の主張) (5) 請求の趣旨2に係る請求原因 本判決末尾添付の訴状写し「紛争の要点(請求の原因)」1記載のとおり。 原告センター学院の主張を善解すると,同原告は,被告が商標「家庭教師派遣業自主規制委員会」を使用する行為は,同原告が有する下記商標権(以下「本件商標権」といい,下記登録商標を「本件商標」という。)を侵害する行為に当たると主張して,商標権の侵害を理由に,50万円の損害賠償金の支払を求めているものと解される。 登録番号 第3366762号 出願年月日 平成6年(1994)6月7日 登録年月日 平成9年(1997)12月19日 商品及び役務の区分 第41類 指定役務 技芸・スポーツ又は知識の教授 登録商標 「家庭教師派遣業自主規制委員会」 (原告自主規制委員会及び原告センター学院の主張) (6) 請求の趣旨3に係る請求原因 本判決末尾添付の訴状写し「紛争の要点(請求の原因)」1記載のとおり。 原告らの主張を善解すると,原告らは,上記(3)及び(4)各記載の特定商取引法違反及び同(5)記載の商標権侵害を理由に,特定商取引法43条,47条,商標法78条等に基づき,被告に対し,本件商標の使用の差止及び謝罪広告の掲載などを求めているものと解される。 2 被告の認否及び反論 (1) 請求の趣旨1(1)に係る請求原因について 被告がインターネット上で原告自主規制委員会を誹謗中傷したという点については,否認する。また,被告が文書により同原告の名誉を毀損したという点についても,否認する。被告は,同原告の名誉を毀損するようなインターネット上の書き込みや文書の配布を一切していないので,同原告に対し損害賠償責任を負ういわれはない。 (2) 請求の趣旨1(2)に係る請求原因について 被告は,被告が原告自主規制委員会に対し,AAA審査の審査料・認定料として支払った2万円の返還請求権を有することにつき,以下のとおり主張する。 ア AAA審査の経緯 (ア) 原告自主規制委員会は,家庭教師のプロ化及び地位向上並びに家庭教師派遣業の自主規制の確立を目指す特定非営利活動法人であるが,家庭教師派遣業に関するサービス評価の格付け制度(前記AAA審査)を立ち上げようと考え,副理事長のCをAAA審査委員長に任命し,審査制度の調査,実施等を同人に一任するとともに,無料の一次審査と有料の二次審査を実施することを決定した。 (イ) 上記一次審査は,全国の家庭教師派遣業者に対し,審査の案内(乙2)とサービス評価に関するアンケート調査用紙(甲5)を送付し,返送されたアンケートに基づいて,当該業者が特定商取引法等の関係法令を遵守しているかどうかを検討し,遵守していると評価できる業者を一次審査合格とする,という内容のものであった。 一次審査の案内書とアンケート用紙は,平成12年1月8日,全国206の業者に対し発送され,同年1月15日から翌年5月28日の間に,合計23の業者からアンケート用紙が返送された。被告も,平成12年3月3日に,アンケート用紙をCあてに返送した。 (ウ) 原告自主規制委員会は,平成13年9月8日,被告を含む23の業者すべてに対し,一次審査の合格通知と二次審査の案内を兼ねた文書(甲4)を送付した。 これによると,二次審査については2万円の審査料がかかり,大学教授・弁護士などが審査員となって,当該業者の業務が特定商取引法等に適合しているかどうか審査した上,審査結果を10月末に通知するとのことであった。そして,審査に合格した場合には,「優良業者AAA」の認定証を交付するとともに,原告自主規制委員会のホームページに業者名を掲載し(ホームページ管理料は年間5000円),不合格の場合には,審査料の半額の1万円が返金になるとのことであった。 上記内容の二次審査案内に基づき,被告は原告自主規制委員会に対して,同年9月18日,審査料2万円を支払うとともに,審査に必要とされる書類一式を同原告に送付した。 (エ) ところが,同年10月末日を過ぎても原告自主規制委員会から審査結果の連絡はなく,同年11月20日になって,突然,同原告から被告あてに,「経済産業省ガイドライン サービス評価審査システム 優良AAA業者認定登録証交付のご案内」と題する書面が送られてきた。 これによれば,前記二次審査は,同原告の理事会が一次審査の再審査という形で既に行ったとのことであり,優良AAA業者としての認定を受けるためには,さらに,大学教授・弁護士等が審査員となる「最終審査」に合格する必要があるとともに,「最終審査」自体は無料であるが,合格した場合は,認定料・登録料・交付料として15万円が必要とのことであった。 AAA認定を受けるために15万円もの費用がかかることについて,審査を申し込む前に一切説明はなかったため,被告は,同原告に対し,審査をキャンセルする旨通知し,支払済みの審査料2万円の返還を求めた(乙4)。そして,同年11月末日までには,ほぼ全ての業者が,被告と同様,同原告に対し,審査をキャンセルして2万円を返還することを求めた。 (オ) 上記最終審査は,同年12月5日,私学会館アルカディアで開催されたが,開始後間もなく,座長のD慶應義塾大学教授から,審査体制そのものに大きな問題がある旨の指摘がされ,結局,個別の審査には至らず,全ての業者につき,合否は保留という扱いになった。 (カ) 同年12月13日,Cから,被告を含む複数の業者に通知が届くとともに,二次審査のために提出した資料が返送されてきた。 この通知によれば,Cは原告自主規制委員会に対して,審査料を返還するように働きかけているとのことであったが,その後,同月25日になって,同原告から被告あてに,「審査結果通知状」と題する書面(甲10)が送付されてきた。同書面には,被告に関する審査結果が不合格であったこと,及び,審査料の返還には応じないことが記載されていた。 なお,同様の書面が被告以外の業者にも送付されており,すべての業者について,審査結果は不合格とされていた。 (キ) 被告は,その後も,原告自主規制委員会に対して審査のキャンセルと2万円の返還を求めたが,同原告からの返金はないまま,現在に至っている。 イ 被告の返還請求権について (ア) 原告自主規制委員会は,平成13年9月8日,被告に対し,一次審査の合格通知と二次審査の案内を兼ねた文書を送付したが(前記ア(ウ)),これは,対価を2万円とする第二次審査契約の申し込みの意思表示と評価できる。しかし,上記送付行為は,原告代表者理事長であるE(以下「E」という。)の承認なくされたものであり(甲39参照),原告の法律行為であるとは認められない。 それにもかかわらず,被告が2万円を支払い,第二次審査を申し込んだのは(前記ア(ウ)),法的には,新たな申し込みと評価される。しかるに,同原告は,この新たな申し込みに対し,最終審査の認定料・登録料・交付料として15万円の支払を求めたのであるから,申し込みに合致した承諾の意思表示がされていない。 そうすると,同原告主張に係るAAA審査契約は,そもそも成立していないというべきであり,同原告は,法律上の原因なくして,被告が支払った上記2万円を利得したことになる。したがって,被告は,同原告に対し,2万円の不当利得返還請求権を有している。 (イ) 仮に,平成13年9月18日に,原告自主規制委員会と被告の間に,AAA審査に関する契約が成立していたとしても,それは,下記@〜Eのような内容のものであった(以下,かかる内容の契約を「本件審査契約」という。)。 @ 被告は,原告自主規制委員会に対し,審査料として2万円を支払う。 A 同原告は,被告から提出された資料をもとに,被告の業務が特定商取引法などの関連法規や家庭教師派遣業自主規制規約に適合しているかどうか,更に審査を行う。 B 審査は,大学教授・弁護士・消費者コンサルタント等,第三者の専門家が行う。 C 審査結果が「合格」の場合,同原告は被告を「優良業者AAA」と認定し,認証番号を記載した認定証を付与する。また,被告が同原告に対し管理料として5000円を支払えば,同原告は自己のホームページに被告の名前を掲載し,被告のホームページへのリンクを貼る。なお,認定期間は1年間であり,翌年以後の継続審査料とホームページ管理料として,合計1万円が必要である。 D 審査結果が「不合格」の場合,同原告は被告に対し,上記審査料の半金に当たる1万円を返金する。 E 合否の結果は,平成13年10月末日までに被告あてに通知する。 (ウ) しかるに,原告自主規制委員会は,平成13年10月末日までに被告に対して合否の通知をせず,前記ア(エ)記載のとおり,同年11月20日になって,同原告の理事会において一次審査の見直しという形で二次審査を既に行った旨,及び,「優良業者AAA」の認定を受けるためには「認定料・登録料・交付料」として更に15万円の支払が必要である旨を被告に通知した。さらに同年12月25日には,同月5日の審査会で実質的な審査が全くされておらず,審査員が「合否留保」の結論を下したにもかかわらず,被告を「不合格」とする旨の通知を送付した。 かかる同原告の所為は,本件審査契約の前記(イ)A,B,C及びEについての債務不履行と評価することができ,同原告の債務は既に履行不能となっている。 そうすると,被告が再三にわたり同原告に対してなした「審査をキャンセルする」旨の意思表示は,本件審査契約の債務不履行解除を意味するものというべきである(被告は,かかる解除の意思表示は有効なものであると考えるが,念のため,平成14年11月11日付け被告準備書面1をもって,同原告の上記債務不履行に基づき本件審査契約を解除する旨を通知する。)。 以上によれば,原告自主規制委員会は,被告に対し,契約解除に基づき,審査料2万円の返還義務を負っている。 (エ) また,仮に,原告自主規制委員会が「優良業者AAA」の「認定料・登録料・交付料」として別途15万円が必要になることを秘匿し,被告に2万円を支払わせたということであれば,かかる同原告の行為は詐欺に該当するから,被告は,本件審査契約について詐欺取消(民法96条1項)を主張する。 また,契約の重要な部分に錯誤があったことになるので,本件審査契約は錯誤により無効(民法95条)である旨も,併せて主張する。 (3) 請求の趣旨1(3)に係る請求原因について この点に関する原告自主規制委員会の前記主張(第2,1(3))は,それ自体失当である。 被告は,「家庭教師優良業者全国ネットワーク」の会員であるから,係る名称を用いることに何ら問題はない。 (4) 請求の趣旨1(4)に係る請求原因について この点に関する原告自主規制委員会の前記主張(第2,1(4))は,それ自体失当である。 被告は,「岐阜県家庭教師協会」の会員であるから,係る名称を用いることに何ら問題はない。 (5) 請求の趣旨2に係る請求原因について そもそも,被告が印刷物等に本件商標「家庭教師派遣業自主規制委員会」を付して使用している事実はない。したがって,商標権侵害の問題は生じない。 (6) 請求の趣旨3に係る請求原因について (5)で前述したとおり,本件商標権の侵害は問題にならない。また,(3)及び(4)で前述したとおり,特定商取引法を根拠とする原告の主張は,それ自体失当である。 したがって,原告らの前記主張(第2,1(6))は,理由がない。 |
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当裁判所の判断
1 請求の趣旨1(1)の請求について 前記のとおり,原告自主規制委員会の主張するところは,被告がB,C及び全国ネットワーク会員と共に,平成13年11月29日から平成14年1月24日までの間に,インターネットのホームページ[www.aozora.com/kzi]上で,また文書によって,同原告に対する誹謗中傷行為や名誉毀損行為を行い,同原告に信用失墜などの損害を被らせたとして,被告の上記行為が不法行為に当たる旨をいうものと善解することができる(第2,1(1))。 しかしながら,本件で提出されたすべての証拠によっても,被告が,上記ホームページ上で,あるいは文書によって,同原告の名誉を毀損する行為や,信用を失墜させる行為をした事実を認めることはできない。 なお,同原告は,上記ホームページへの書き込みは同原告に対する誹謗中傷に当たるところ,被告は,係る書き込みに対して注意・警告をした様子もなく,逆にこれに同調しており,そのこと自体が同原告に対する誹謗中傷に当たる旨を主張するかのようである(平成14年12月19日付け原告ら第四準備書面,第1,2)。 しかしながら,証拠上,同原告主張に係る上記の事実を認めることはできないし,仮にこのような事実が存在したとしても,本件において,被告がそのことにつき不法行為責任を負担すべき具体的な根拠事実は,主張・立証されていない。 以上によれば,その余の点につき判断するまでもなく,上記請求には理由がない。 2 請求の趣旨1(2)に係る請求原因について (1) 証拠(甲1,5〜7,12の1,15,39,乙1〜4)及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。 ア 原告自主規制委員会の理事長であり,かつ,原告センター学院の代表者でもあるEは,家庭教師派遣業の草分け的存在の一人とされ,「ふくろう博士」の通称で知られている。 他方,被告は,岐阜県岐阜市において,「あかね学院」なる名称で家庭教師派遣業を営んでいる。 イ Eは,通商産業省(当時)が継続的役務提供業務の適正化に乗り出したことをきっかけに,同省からの依頼を受け,継続的役務適正化研究会の委員に就任した。同人は,平成6年ころに初めて作成された「家庭教師派遣業自主規制規約」の取りまとめに際し,中心的な役割を果たしたが,そのころから,自らを「家庭教師派遣業自主規制委員会」と称するようになった(なお,原告自主規制委員会は,平成12年12月15日に,経済企画庁から特定非営利活動法人(NPO)として認証を受け,同月28日に法人格を取得したものであるが,法人格取得の前から権利能力なき社団として存在したものと認められるので,以下,法人格取得の前後を問わず,「原告自主規制委員会」と表記する。)。 Eが代表者代表取締役を務める原告センター学院は,平成6年6月7日,本件商標「家庭教師派遣業自主規制委員会」を商標登録出願し,同商標は,平成9年12月19日に登録された。 ウ やがて,CやBらが原告委員会に加わり,平成10年ころには,以前からの構成員であった訴外F(以下「F」という。)を会長とし,C及びBらを副会長として,家庭教師優良業者全国ネットワーク(前記「全国ネットワーク」)が結成された。 上記全国ネットワークは,本来,家庭教師派遣業者による任意の勉強会的な集まりであり,F,B及びCら,その主要な構成員は原告自主規制委員会の委員でもあるが,Fらの呼びかけに応じて同ネットワークに参加しただけで,同原告と特に関わりを持たない構成員もいる。 エ 平成11年10月に,訪問販売法(現特定商取引法)が改正され,家庭教師派遣業が継続的役務に指定されて,家庭教師派遣業に関する契約や勧誘が法的規制の対象となった。 これをきっかけに,原告自主規制委員会においても,もともと金融機関を対象に使われていた格付け評価(AAA評価)を,家庭教師派遣業者を対象に実施することを検討するようになり,Cを中心に,AAA審査に関する研究,調査及び実施に着手した。 オ 原告自主規制委員会は,平成12年1月8日ころ,被告を含む全国200余の家庭教師派遣業者に対し,「安心度AAA評価アンケート調査 家庭教師派遣業サービス評価委員会」と題する書面(乙2)を送付した。 同書面には,上記アンケート調査は,「法を遵守し消費者保護と良質な役務の提供がなされているか」を調査するものであり,返送されたアンケート結果と契約書その他の書類を審査して,回答者の提供するサービスを評価する(AAA審査)ことなどが記載されていたが,それに要する費用等については記載されていなかった。 カ 被告は,上記AAA審査の趣旨に賛同し,平成12年3月3日,上記アンケートの回答(甲5)を原告自主規制委員会に返送した。これに対し,同原告は,平成13年9月8日,被告がAAA審査の第一次審査に合格したことなどを通知する書面(甲4。以下「第一次審査合格通知書」という。)を被告に送付した。 同書面には,被告が第一次審査に合格したことのほか,第二次審査は,大学教授,弁護士,消費者コンサルタント等を審査員として厳正に実施すること,第二次審査に合格した業者を「優良業者AAA」と認定すること,「優良業者AAA」については,認証番号を記載した認定書を付与し,同原告のホームページに掲載すること,第二次審査を希望する場合には,審査料・認定料2万円を同年9月30日までに指定口座に振込送金する必要があるが,不合格の場合はその半額を返還すること,第二次審査の結果は,同年10月末に連絡すること,ホームページに掲載する場合には,管理料として年間5000円が別途必要になることなどが記載されていた。 キ 被告は,平成13年9月21日,第一次審査合格通知書で指定された口座に2万円を振込送金した(乙3)。 ク 原告自主規制委員会は,平成13年11月20日,被告に対し,「経済産業省ガイドライン『サービス評価』審査システム『優良AAA業者』認定登録証交付のご案内」(甲6)及び「家庭教師派遣業者・個別指導教室『サービス評価』認定審査委員会規約」(甲7)と題する各書面等を送付した。 これらの書面には,第二次審査は第一次審査の再審査という形で既に終了したこと,第二次審査の合格者を対象に,同年12月5日,学識者,弁護士,弁理士等による第三次審査(最終審査)を実施し,その結果に基づいてAAAの認定をすること,第三次審査に合格した場合には,AAA認定料・登録料・交付料15万円の納付が必要であることなどが記載されていた。 ケ 被告は,平成13年11月27日付け文書(乙4)をもって,原告自主規制委員会に対して抗議の意思を表明し,第二次審査の申込みを撤回すると共に前記審査料2万円の返還を求めた。 コ 平成13年12月13日,Cを通じて,原告自主規制委員会から被告に対し,第二次審査のために提出した資料が返送されたが,同月25日になって,同原告から被告あてに,「審査結果通知状」と題する書面(甲10)が送付されてきた。 同書面には,被告の審査結果は不合格であったこと,及び,認定審査に必要な審査料・認定料・登録料・交付料等の諸費用は,理由のいかんにかかわらず返還しないことが記載されていた。 サ 原告自主規制委員会は,同じころ,Bらに対しても,上記同様の「審査結果通知状」と題する書面を送付したが,同原告のかかる対応に立腹したBは,平成14年4月17日,同原告に対し,同人が清算人を務める有限会社家庭教師紹介センターを原告として,AAA審査料2万円の返還等を求める訴えを松山簡易裁判所に提起した(同事件は,後に松山地方裁判所に移送された。同庁平成14年(ワ)第541号。甲33〜36参照)。 これに対し,原告らは,被告を相手として,平成14年8月7日,上記2万円の返還請求権が存在しないことの確認等を求める本件訴えを提起するともに,時期を相前後して,Cら全国ネットワークの有力な会員を相手に,同様の訴え |
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(2)上記のとおり,原告自主規制委員会は,被告に対し,平成13年9月8日,第一次審査合格通知書をもって,同原告が実施する第二次審査に合格すれば「優良業者AAA」と認定することなどを説明した上,同審査を希望する場合には,同年9月30日までに,審査料・認定料2万円を指定口座に振込送金するよう通知した((1)カ)。上記通知書の体裁や記載内容に照らせば,通常人であるならば,審査料・認定料として2万円を支払えば,同通知書に記載されたとおりの内容で,最終審査としての第二次審査を受けることができると理解するものと考えられる。しかるに,同原告は,同通知書の記載のとおりに,同年10月末までに第二次審査を実施してその結果を被告に通知することをせず,かえって,同年11月20日,被告に対し,最終審査として第三次審査を同年12月5日に実施する予定であること,及び,第三次審査に合格してAAA認定を受けるための費用として15万円が必要である旨を通知した((1)ク)。 被告は,第二次審査を希望して,審査料・認定料2万円を同原告の指定する口座に振込送金したのであるから,これにより,第一次審査合格通知書に記載されたとおりの内容でAAA審査の第二次審査を受ける旨の申し込みの意思表示をしたものと認められる。しかしながら,被告は,上記2万円のほかに,これに比して格段に高額な15万円の費用が別途必要になることを知らなかったのであり,仮にこれを知っていれば上記申込みをすることはなかったと考えられるから,被告のした上記申込みの意思表示には,要素の錯誤が存在するものと認められる。したがって,被告の上記意思表示は無効というべきである。 そうすると,原告自主規制委員会は,法律上の原因なく,被告から前記審査料・認定料2万円の振込入金を受けたことになる。したがって,同原告は,被告に対し,不当利得として前記2万円を返還する義務があるというべきである。 以上によれば,被告が原告自主規制委員会に対してAAA審査の審査料・認定料として支払った2万円の返還請求権を有しないことの確認を求める同原告の請求には,理由がない。 3請求の趣旨1(3)に係る請求原因について前記のとおり,原告自主規制委員会の請求は,被告が「家庭教師優良業者全国ネットワーク」の名称を使用する行為は,誇大広告を禁じる特定商取引法43条に違反するとした上,主務大臣の業務停止権限等を規定する同法47条を根拠に,上記「家庭教師優良業者全国ネットワーク」から「優良業者」の文字を削除することなどを求めているものと善解することができる(第2,1(3))。 しかしながら,特定商取引法は,43条で役務提供業者等の誇大広告等を禁止する旨を規定し,47条で主務大臣の業務停止権限等を規定しているが,役務提供業者等に同法43条に違反する行為があったとしても,私人が同法の規定に基づき当該業者等に対して業務の停止や違反行為の差止等を求める私法上の権利を有するものでないことは,同法の規定から明らかであるから,原告自主規制委員会の上記主張は,それ自体失当というほかない。その他,同原告が被告に対して上記のような請求をなし得る法律上の根拠については,何らの主張も立証もない。 したがって,この点に関する同原告の請求には理由がない。 4請求の趣旨1(4)に係る請求原因について前記のとおり,原告自主規制委員会の請求は,被告が「岐阜県家庭教師協会」の名称を使用する行為は,特定商取引法43条に違反するとして,同条,同法47条等を根拠に,上記「岐阜県家庭教師協会」から「県」の文字を削除することなどを求めているものと善解することができる(第2,1(4))。 しかしながら,そもそも,被告が「岐阜県家庭教師協会」の名称を用いることが,誇大広告等を禁じる特定商取引法43条に違反するものであるのか,疑問である上に,私人である原告自主規制委員会が,被告に対し,特定商取引法等を根拠に差止等を求める私法上の権利を有するものでないことは,前項3で述べたとおりである。 よって,この点に関する同原告の請求もまた,理由がない。 5請求の趣旨2に係る請求原因について前記のとおり,原告センター学院は,被告が本件商標「家庭教師派遣業自主規制委員会」を使用する行為は,本件商標権を侵害する行為に当たると主張して,同商標権の侵害を理由に,50万円の損害賠償金の支払を求めているものと善解することができる(第2,1(5))。 しかしながら,本件で提出されたすべての証拠を精査しても,被告が本件商標及びその類似の範囲にある商標を使用している事実を認めることはできない。 よって,その余の点につき判断するまでもなく,原告センター学院の上記請求には理由がない。 6請求の趣旨3に係る請求原因について前記のとおり,原告らは,特定商取引法違反及び商標権侵害を理由に,特定商取引法43条,47条,商標法78条等に基づき,被告に対し,本件商標の使用の差止及び謝罪広告の掲載などを求めているものと善解することができる(第2,1(6))。 しかしながら,特定商取引法違反を根拠とする請求に理由のないことは,前記3及び4で述べたとおりであるし,本件商標権の侵害を根拠とする請求に理由のないことは,前記5で述べたとおりである。 したがって,その余の点につき判断するまでもなく,原告らの上記請求には理由がない。 第4結論以上によれば,原告らの請求は,いずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事46部裁判長裁判官三村量一裁判官青木孝之裁判官吉川泉 |