関連審決 | 無効2001-35560 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成15ワ11661商標権侵害差止等請求事件 | 判例 | 商標 |
平成10ワ9655商標法違反差止等請求事件 | 判例 | 商標 |
平成17行ケ10764審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成1行ケ55 | 判例 | 商標 |
平成17行ケ10763審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 指定商品 / 混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) / 4条1項11号 / 4条1項15号 / 類似性(類否判断) / 商品の類似 / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 取引の実情 / 商標権の分割 / 非類似 / |
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事件 |
平成
14年
(行ケ)
555号
審決取消請求事件
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原告 株式会社加美乃素本舗 訴訟代理人弁理士 萼経夫 同 館石光雄 同 村越祐輔 被告 日本エンザイム工業株式会社 訴訟代理人弁理士 吉村公一 同 小泉勝義 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2003/05/22 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
特許庁が無効2001−35560号事件について平成14年9月26日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告 主文同旨 2 被告 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は,「カミゲン」の片仮名文字と「加美源」の漢字とを上下二段に横書きして成り,平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表(以下「旧別表」という。)第32類「加工食料品,その他本類に属する商品」を指定商品とする,商標登録第2724371号商標(平成3年1月14日登録出願(以下「本件出願」という。),平成12年5月19日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。 原告は,平成13年12月27日,本件商標の商標登録を無効にすることについて審判を請求した。 特許庁は,これを無効2001-35560号事件として審理し,その結果,平成14年9月26日に,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を,平成14年10月8日,原告に送達した。 2 審決の理由 審決は,別紙審決書の写しのとおり, (1) 商標法(以下「法」という。)4条1項11号に係る無効理由については, @ 本件商標と,登録第2256847号商標(「髪之素」の漢字を横書きにして成り,旧別表第32類「食肉,卵,食用水産物,野菜,果実,加工食料品(他の類に属するものを除く。)」を指定商品とする商標(昭和59年10月5日登録出願,平成2年8月30日設定登録)。以下,審決と同様に「引用C商標」という。),及び,登録第2320430号商標(「加美乃素」の漢字と「カミノモト」の片仮名文字と「KAMINOMOTO」の欧文字を3段に横書きして成り,旧別表第32類「食肉,卵,食用水産物,野菜,果実,加工食料品(他の類に属するものを除く。)」を指定商品とする商標(昭和60年1月29日登録出願,平成3年7月31日設定登録)。以下,審決と同様に「引用D商標」という。)とは,いずれも称呼を異にし,非類似の商標である, A 本件商標の指定商品と,登録第2050726号商標(「カミゲン」の片仮名文字と「かみげん」の平仮名文字と「髪源」の漢字とを3段に横書きして成り,旧別表第1類「薬剤」を指定商品とする商標(昭和59年12月28日登録出願,昭和63年5月26日設定登録)。以下,審決と同様に「引用A商標」という。)の指定商品,及び,登録第2362794号商標(「カミゲン」の片仮名文字を横書きして成り,旧別表第1類「化学品(他の類に属するものを除く。)薬剤,医療補助品」を指定商品とする商標(平成1年3月6日登録出願,平成3年12月25日設定登録)。以下,審決と同様に「引用B商標」という。)の指定商品とは,いずれも非類似である, (2) 法4条1項15号に係る無効理由については, @ 本件商標と,引用C商標及び引用D商標とは,互いに非類似であり,他に混同を生ずるとすべき格別の事情も認められない, A 引用E商標が,「頭髪用化粧品」について,原告の商標として需要者の間に広く認識されていたと認められるとしても,本件商標の指定商品と「頭髪用化粧品」とは非類似であり,かつ,本件商標と引用E商標とは非類似であるから,被告が本件商標をその指定商品に使用したとしても,商品の出所について混同を生ずるおそれはない, と認定判断して,原告主張の無効理由をすべて排斥した。 |
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原告主張の審決取消事由の要点
審決は,(1)法4条1項11号に係る無効理由については,@本件商標は,引用C商標とも引用D商標とも類似するのに,いずれとも類似しないと誤って判断し(取消事由1及び2),A本件商標の指定商品は,引用A商標の指定商品とも引用B商標の指定商品とも類似するのに,いずれとも類似しないと誤って判断し(取消事由3及び4),(2)法4条1項15号に係る無効理由については,引用E商標と本件商標とが類似し,頭髪用化粧品と本件商標の指定商品とが類似し,かつ,引用E商標が原告の頭髪用化粧品を示すものとして周知となっているため,被告が本件商標をその指定商品に使用した場合においては,原告又は原告と組織的,経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるように商品の出所について混同が生じるおそれがあるにもかかわらず,これらの商品及び商標の類似性の各判断を誤り,その結果,上記おそれはないと誤って判断したものであり(取消事由5),これらの誤りがそれぞれ結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法として取り消されるべきである。 1 取消事由1(本件商標と引用C商標との類否についての判断の誤り)及び取消事由2(本件商標と引用D商標との類否についての判断の誤り) 審決は,「本件商標は,上記したとおり「カミゲン」「加美源」の文字よりなるところ,その構成中の片仮名文字部分が漢字部分の読みを特定したものといえるから,これよりは「カミゲン」の称呼を生ずるとみるのが自然であり,また,本件商標より特定の観念を生ずるものということはできない。そうとすれば,本件商標は,その構成文字に相応し,「カミゲン」の称呼のみを生ずるものといわざるを得ない。他方,引用C商標及び引用D商標は,その構成文字に相応し,「カミノモト」の称呼を生ずるものと認められる。しかして,本件商標より生ずる「カミゲン」の称呼と引用C商標及び引用D商標より生ずる「カミノモト」の称呼とを比較すると,両称呼は,その音構成及び音数に明らかな差異が認められるから,容易に区別し得るものである。そして,本件商標と引用C商標及び引用D商標とは,その外観,観念が紛らわしいものともいえないから,非類似の商標といわざるを得ない。」(審決書12頁下から3行ないし13頁11行)と認定判断した。しかし,この認定判断は誤りである。 (1) 本件商標において自他商品の識別標識としての機能を果たす主要部を形成するのは,「加美源」の漢字部分である。この「加美源」中の「加美」は,「カミ」と発音され,「源」は,「ゲン」,「ミナモト」と発音され,「モト」とも発音される。そして,「加美源」の文字が一体として称呼されるときは,「カミゲン」のほか,例えば,「八戸」,「石巻」,「上山」が,それぞれ,「ハチノヘ」,「イシノマキ」,「カミノヤマ」と発音されることもあるのと同じように,「加美」と「源」の間に「ノ」を入れて,「カミノミナモト」,「カミノモト」とも称呼されるものである。このように,本件商標は,その主要部を形成する漢字部分の「加美源」の文字に相応し,「カミゲン」のほか,「カミノミナモト」,「カミノモト」の称呼をも生ずるものである。 これに対し,引用C商標は,「髪之素」の漢字を横書きして成り,その構成文字に相応して「カミノモト」の称呼を生ずるものである。引用D商標も,「加美乃素」との漢字及び「カミノモト」との片仮名及び「KAMINOMOTO」との欧文字を三段に横書きして成るから,「カミノモト」の称呼を生ずる。 (2) 本件商標は,上記のとおり,「加美源」の漢字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たす主要部を形成するものであるから,その観念も,「加美」の漢字部分から「美を加える」又は「美しくする」との意味が生じ,「根源」の意味合いを有する「源」の漢字との組み合わせから,全体として「美を加える根源」との観念が取引者・需要者間に生ずる。 これに対し,引用D商標は,「加美乃素」の漢字が自他商品の識別標識としての機能を果たす主要部を形成するものであるから,「加美」と「乃素」の漢字の組み合わせにより,全体として「美を加える根源」との観念が取引者・需要者間に生ずる。 (3) 本件商標と引用C商標とは,上記のとおり,「カミノモト」の称呼を共通にするものであるから,類似するというべきである。 本件商標と引用D商標とも,上記のとおり,「カミノモト」の称呼を共通にし,「美を加える根源」との観念をも共通にするものであるから,類似するというべきである。また,本件商標と引用D商標とに共通する「加美」の部分は,辞書にない特異な漢字であるため,強く看者の注意を引くのに対し,「源」と「素」の漢字は,商品の品質に関連し,品質を表現する語としてしばしば商標の構成に採択されて用いられることが多く,印象が弱く看取されるものであることからも,両商標が類似することは明らかである。 2 取消事由3(本件商標の指定商品と引用A商標の指定商品との類否についての判断の誤り)及び取消事由4(本件商標の指定商品と引用B商標の指定商品との類否についての判断の誤り) 審決は,「本件商標の指定商品「加工食料品,その他本類に属する商品」は,引用A商標の指定商品「薬剤」及び引用B商標の指定商品「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤,医療補助品」とは,その生産部門,販売部門,品質及び用途等が一致していないから,請求人の主張するごとく,第32類の指定商品中に「健康を維持し,健康体にする目的の加工食品」が包含されるとしても,両者は互いに非類似の商品といわざるを得ない。してみれば,本件商標と引用A商標及び引用B商標とは,商標の類否について判断するまでもなく,使用する商品が類似するものでない。」(審決書13頁12行〜19行)と認定判断した。しかし,この判断は誤りである。 本件商標の指定商品に属する旧別表第32類「加工食料品」と引用A商標及び引用B商標の指定商品に属する旧別表第1類「薬剤」とは,商品の品質,用途,販売方法,取引者等において密接な関連性を有する商品である。 旧別表第32類の「加工食料品」には,食材そのもの,あるいは,明らかに食べ物の形をしたもの以外に,ビタミン又はカルシウムを主とする液状,粉末状,錠剤状,顆粒状,ゼリー状等の加工食品,すなわち,体に良いとされる栄養素や成分を抽出して濃縮し,粉末,液体,カプセル,錠剤等にし,外見が薬にそっくりであったり,健康上の効果をそれとなく伝えたりする商品も包含されており,これらは,「健康食品」,「栄養補助食品」,「サプリメント」あるいは「健康補助食品」などと称されている。 このような健康食品として一般に発表されているものの中には,体細胞を活発化し,毛根細胞の働きを活発化させ,脱毛を防止させる効果を有する栄養補助食品も含まれている。 そして,これら「健康食品」の大部分は,医薬品を販売する薬局,薬品店及びドラッグストアで販売されているのが実情である。 これに対し,引用A商標及び引用B商標の指定商品である旧別表第1類の「薬剤」の中には,健康増進を目的とする「ビタミン剤」及び滋養強壮変質剤としての「カルシウム剤」,「薬用育毛剤」等が包含されている。 このような「ビタミン剤」及び滋養強壮変質剤としての「カルシウム剤」等の医薬品たる保健薬(以下「保健薬」という。)は,健康を目的として栄養素を補給する「健康食品」(人の体に良い栄養素又は成分を抽出・濃縮し,粉末,液体,カプセル,錠剤等に加工したもの)と商品の品質・効能・用途等を同じくするものである。 しかも,平成11年3月12日付け厚生省告示31号により,厚生労働大臣が指定する医薬部外品として,「肉体疲労時,中高年期のビタミン又はカルシウムの補給が目的とされている物」及び「滋養強壮,虚弱体質の改善及び栄養補給が目的とされている物」が新たに指定されている。そのため,旧別表第1類「薬剤」に属する医薬部外品については,その製造業の許可を得た事業者であれば,これら商品の製造承認を得て製造することができるのであり,販売についても自由に販売することができるのである。また,経済の発展に伴う経営の多角化により,現在においては,食品メーカーが医薬部外品等の製造・販売を行い,医薬品メーカーが健康食品の製造・販売を行うことが珍しくはないのである。 以上のとおり,本件商標の指定商品である「加工食料品」に含まれるビタミンその他の栄養補給のための健康食品と,引用A商標及び引用B商標の指定商品である「薬剤」に含まれるビタミン剤,滋養強壮変質剤とは,商品の品質,効能及び用途のみならず,商品の販売方法,取引者等を同じくする類似の商品である。 3 取消事由5(原告又は原告と関連する者の業務に係る商品との混同を生ずるおそれについての判断の誤り) 審決は,「引用E商標が本件商標の登録出願時には請求人の業務に係る商品「頭髪用化粧品」の商標として需要者の間に広く認識されていたものと認められるとしても,本件商標の指定商品「加工食料品,その他本類に属する商品」は,請求人の業務に係る商品「頭髪用化粧品」とは,その生産部門,販売部門,品質及び用途等を異にするものといわざるを得ず,しかも,本件商標は,上記のとおり,引用E商標とは非類似のものであるから,被請求人が本件商標をその指定商品に使用した場合,取引者,需要者が引用E商標を連想・想起したり,その商品が請求人又は請求人と組織的,経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく,商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。」(審決書13頁24行〜33行)と認定判断した。しかし,この認定判断は誤りである。 原告が引用E商標の「加美乃素」を,「頭髪用化粧品」,「毛髪用剤」及び自然頭髪食品である「健康食品」に使用した結果,引用E商標の「加美乃素」は,本件出願当時,既に,育毛剤の取引者・需要者の間において広く知られ,著名なものとなっていた。 本件商標の指定商品に含まれる「加工食品」に属する「健康食品」と育毛剤等は,共に薬局,薬品店及びドラッグストアを中心に販売される商品であることから,その取引者・需要者は,健康食品を含む「加工食料品」と,育毛剤等とを,関連性のある類似の商品として認識し理解する。 上記各状況の下で,被告が本件商標をその指定商品に使用するときは,その商品があたかも原告又は原告と関連する者による業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生じさせるおそれがあることが,明らかである。 |
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被告の反論の要点
1 取消事由1(本件商標と引用C商標との類否についての判断の誤り)及び取消事由2(本件商標と引用D商標との類否についての判断の誤り)について (1) 本件商標の構成文字中の「源」の文字は,音読みでは「ゲン」,訓読みでは「ミナモト」と発音されるものである。「モト」と読まれることもあることはあるものの,それは,人名として用いられる場合に限ってのことである。 本件商標は,人名を表示したものではない。人名を表示したと理解され,認識されるものでもない。 したがって,本件商標中の「源」の文字部分が「モト」と称呼されることはない。 本件商標中の漢字部分は,通常の漢字熟語の読みに従えば,その上段に書された「カミゲン」の片仮名文字と同じく,「カミゲン」と称呼されるしかないのである。 (2) 原告が,本件商標から生ずる観念であると主張している「美を加える根源」は,どのような意味の観念であるのか,その意味が不明である。 本件商標の構成中の「源」の文字は,「水流の発するところ,物事の始,もと,根本」(修訂増補詳解漢和大字典・1143頁,乙第1号証)等の語義を有するものであり,引用C商標及び引用D商標の構成中の「素」の文字は,「しろ色のきぎぬ。生絹。しろし。きぢ。飾らぬもの。どだい,下地,本質。もと,もとより。あらかじめす。つね。物質のおほもと」(同1444頁)等の語義を有するものである。「もと」の意味のところは両文字に共通するものの,上で述べたとおり,両文字は,本来的な意味合いが異なることから,それぞれを置き換えることはできない。例えば,「源流」,「起源」,「根源」が「素流」,「起素」,「根素」と置き換えられることはなく,また,「素質」,「素材」,「スープの素」が「源質」,「源材」,「スープの源」と置き換えられることはない。両者が,それぞれ別意の文字として使用されていることからすれば,本件商標の「加美源」と引用商標の「加美乃素」とが同一の観念のものとして認識されることはないというべきである。 本件商標の「加美源」と引用D商標の「加美乃素」の構成文字は,いずれも全体としてまとまりよく一体的に構成されているものであって,両者における「源」と「乃素」の両文字がそれぞれの構成において印象が弱いと看取されることはない。その文字部分の差異によって,両者を構成上明確に区別し得るものであることは,明白である。 2 取消事由3(本件商標の指定商品と引用A商標の指定商品との類否についての判断の誤り)及び取消事由4(本件商標の指定商品と引用B商標の指定商品との類否についての判断の誤り)について 引用A商標及び引用B商標の指定商品である第1類「薬剤」に属する商品は,治療を目的とする商品で,薬事法により認可され,医薬品メーカーにより製造され,病院で使用され,薬局,薬品店でのみ販売される商品である。これに対して,本件商標の指定商品である旧別表第32類に属するいわゆる健康食品と称される商品は,あくまでも食品であって,食品メーカー等により製造され,通常,食料品店,健康用品店,通信販売等で販売される商品であり,栄養の補給等を目的とするものであるとしても,薬事法で規制されているため,薬効を表示することはできないものである。このように,両商品は,その生産部門,販売部門,品質及び用途のすべてを異にする商品である。 本件商標の指定商品に包含される健康食品(ビタミン又はカルシウムを主とする液状,粉末状,錠剤状,顆粒状,ゼリー状等の加工食品,あるいは,人の体に良い栄養素又は成分を抽出・濃縮し,粉末,液体,カプセル,錠剤等にした加工食品)と,引用A商標及び引用B商標の指定商品である「薬剤」中の「ビタミン剤」,「滋養強壮変質剤(カルシウム剤等)」等の医薬品(保険薬)とは,商品の品質,目的,効能,用途,販売方法及び取引者等を異にする非類似の商品である。 近年,食品分野における科学技術の進歩に伴い,食品及び食品成分と健康とのかかわり合いについて様々な知見が明らかになり,食生活においてもこれらの知見に基づいたある種の効果が期待される食品が出現してきている。このような食品が科学的な評価を受けることなく流通し,販売された場合,人の食生活をゆがめ健康上の弊害をもたらすといった事態も生じ得る。そこで,これらの食品については,特定保健用食品,健康食品として位置づけられ,栄養改善法施行規則,栄養表示基準が設けられ,行政上の通知として,例えば,「フェオホルバイド等クロロフィル分解物を含有するクロレラによる衛生上の危害防止について」,「ゲルマニウムを含有させた食品の取扱いについて」,「健康食品の摂取量及び摂取方法の表示に関する指針について」,「健康食品の摂取量及び摂取方法の表示に関する指針等について」,「健康食品の表示等に関する指針について」,「アミノ酸を含有する健康食品の取扱いについて」,「妊娠3か月以内又は妊娠を希望する女性におけるビタミンA摂取の留意点等について」等の多くの通知がなされ,財団法人日本健康・栄養食品協会においては,「健康食品規格基準」を定め,「健康食品の摂取量,摂取方法表示の手引」を定めるなど,人の食生活をゆがめ健康上の弊害をもたらすといった事態が生じないように様々な施策,措置がなされているところである。 食品衛生法においても,人の食生活をゆがめ健康上の弊害をもたらすといった事態が生じないよう法改正がなされている。 薬事法においても,いわゆる健康食品と医薬品との混同が問題となり,行政上の通知として,例えば,「薬効を標ぼうする食品について」,「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」,「医薬品の範囲に関する基準の一部改正について」,「無承認無許可医薬品の指導取締りの徹底について」,「痩身効果等を標ぼうするいわゆる健康食品の広告等について」,「無承認無許可医薬品の販売にかかる指導取締りについて」,「無承認無許可医薬品の監視指導について」,「ビタミンの取扱いについて」等の多くの通知がなされ,いわゆる健康食品と医薬品との混同が生じたり,人の食生活をゆがめ健康上の弊害をもたらすといった事態が生じたりしないよう,様々な施策,措置がなされているところである。 これらの施策,措置に共通していることは,いわゆる健康食品と医薬品とを混同することが原因となって,人の食生活をゆがめ健康上の弊害をもたらすといった事態が生じることを,食品には明確に「食品」の表示をすることにより防ぐ,ということである。 薬事法施行規則は,医薬品と他の薬品とが混同されることのないように,「薬局の管理者は,医薬品を他の薬品と区別して貯蔵し,又は陳列しなければならない。」と規定している。このこともあって,薬局,薬品店においては,いわゆる健康食品を陳列して販売するに際しても,医薬品と健康食品とは区別して貯蔵され,陳列されている,というのが,取引における実情である。 このように,実際に商品を販売している薬品店等においては,医薬品と健康食品とは,陳列棚を分けて陳列し,販売している。医薬品は,商品上に「医薬品」と明確に表示され,医薬部外品は,商品上に「医薬部外品」と明確に表示され,健康食品は,商品上に「甜茶加工食品」,「ビタミン含有食品」,「保健機能食品(栄養機能食品)」のように「食品」であることが明確に表示されて,販売されているのである。 医薬品と健康食品とが混同され,人の食生活がゆがめられ,健康上の弊害をもたらすといった事態が生じないように法律改正がなされ,各種施策,措置がなされ,基準が設けられ,多くの通知がなされ,保険薬としての医薬品,医薬部外品には,商品上に「医薬品」,「医薬部外品」と明確に表示され,健康食品には「食品」であることが明確に表示され,かつ販売場所においても陳列,販売場所が明確に区別されているとの上記取引の実情からすれば,医薬品中の「ビタミン剤」,「滋養強壮変質剤(カルシウム剤等)」等の医薬品(保険薬)と,健康を目的として栄養を補給する等の目的を有するいわゆる健康食品とが,その品質・原材料において多少似通っているところがあり,同一の製造業者によって製造され,同一の店舗において販売されることがあるとしても,これに接する取引者はもとより,これに接する一般需用者も,医薬品中の「ビタミン剤」,「滋養強壮変質剤(カルシウム剤等)」等の医薬品(保険薬)と,健康を目的として栄養を補給する等の目的を有するいわゆる健康食品とは,その品質・目的・効能・用途が全く異なる商品であるものとして理解し,認識しているのである。 したがって,本件商標の指定商品の「加工食料品」に含まれる健康食品(ビタミン又はカルシウムを主とする液状,粉末状,錠剤状,顆粒状,ゼリー状等の加工食品,人の体に良い栄養素又は成分を抽出・濃縮し,粉末,液体,カプセル,錠剤等にした加工食品)と引用C商標及び引用D商標の指定商品の「薬剤」に含まれる「ビタミン剤」及び「滋養強壮変質剤(カルシウム剤等)」等の医薬品(保険薬)とは,商品の品質,目的・効能,用途,販売方法等を異にする非類似の関係にある商品というべきである。 3 取消事由5(原告又は原告と関連する者の業務に係る商品との混同を生ずるおそれについての判断の誤り)について 本件商標の「加美源」と引用E商標の「加美乃素」とは,本件商標と引用D商標との類否について述べたのと同様の理由により,その称呼,観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 本件商標の指定商品の「加工食料品」に包含される健康食品(ビタミン又はカルシウムを主とする液状,粉末状,錠剤状,顆粒状,ゼリー状等の加工食品,あるいは,人の体に良い栄養素又は成分を抽出・濃縮し,粉末,液体,カプセル,錠剤等にした加工食品)と,引用E商標の指定商品の「髪油及び髪液」とは,商品の品質,目的,効能,用途,販売方法,取引者等を異にする非類似の商品である。 本件出願時において,引用E商標「加美乃素」が原告の業務に係る商品である「頭髪用化粧品」の商標として需要者の間に広く認識されていたものと認め得るとしても,両者は,上記のとおり,指定商品及び商標において非類似のものであるから,被告が本件商標をその指定商品に使用した場合,取引者・需要者が引用E商標を連想・想起したり,その商品が原告又は原告と組織的,経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるとの混同を生ずるおそれはない。 |
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当裁判所の判断
1 取消事由3(本件商標と引用A商標の各指定商品の類否判断の誤り)について (1) 本件商標の指定商品は,旧別表第32類「加工食料品,その他本類に属する商品」であるのに対し,引用A商標の指定商品は,旧別表第1類「薬剤」である。 本件商標の指定商品に属する旧別表第32類の「加工食料品」には,いわゆる健康食品あるいは栄養補助食品(サプリメント),すなわち,ビタミン,カルシウム,クロレラその他の栄養素を補給するための粉末状,錠剤状,顆粒状,ゼリー状,ペースト状,液状その他の加工食品が含まれる(甲第15号証)。また,引用A商標の指定商品である旧別表第1類「薬剤」には,ビタミンA剤ないしビタミンD剤,総合ビタミン剤及び肝油ドロップ等の「ビタミン剤」,及び,カルシウム剤,タンパクアミノ酸製剤や薬用酒等の「滋養強壮変質剤」等が含まれる(甲第16号証)。 取引の実際においては,カルシウム補給用の商品の中には,旧別表第1類「薬剤」に含まれる肝油ドロップやカルシウム製剤と,旧別表第32類「加工食料品」に含まれるいわゆる健康食品ないし栄養補助食品(サプリメント)に当たるカルシウム補給剤とが,同様の機能を持つ商品として新聞等で多数広告されており,また,ビタミン補給用の商品についても,旧別表第1類「薬剤」に含まれるビタミン剤のほかに,ビタミン補給用の健康食品ないし栄養補助食品(サプリメント)に当たる,極めて多くの種類の商品が新聞等で広告され,薬品店,ドラッグストア,薬局等で販売されている(甲第18号証の1ないし3,乙第4号証)。また,多数の有力な製薬会社が,平成8年後半から平成12年4月5日(本件商標の登録を認めた審決がなされた日(弁論の全趣旨)。以下「本件登録審決日」ということがある。)までの間だけでも,いわゆる健康食品あるいは栄養補助食品を指定商品に含む多数の登録商標出願をし,その登録を得るなどしており(甲第38号証の1ないし111),このことから,本件商標の登録を認めた上記審決時までに,多数の有力な製薬会社が,いわゆる健康食品あるいは栄養補助食品の分野に進出してきていることが優に認められる。 上記の状況の下では,これらの健康食品あるいは栄養補助食品(サプリメント)と,医薬品としてのビタミン剤あるいは滋養強壮変質剤とは,いずれも薬品店,ドラッグストア,薬局等において,多数の種類のものが販売されていること,その商品の内容,用途が類似していること及び販売店舗ないし販売方法が類似していることから,本件登録審決当時,既に,一般の需要者にとってその区別が付きにくく,紛らわしい商品群になっていたことが,明らかである。 このように,本件商標の指定商品に属する旧別表第32類「加工食料品」に含まれる健康食品や栄養補助食品(サプリメント)と,引用A商標の指定商品である旧別表第1類「薬剤」中のビタミン剤や滋養強壮変質剤とは,本件登録審決日当時,既に,その商品の内容,用途,及び,販売店舗,販売方法が共通しており,商品として類似しているものであった,ということができる。 (2) 被告は,引用A商標の指定商品である旧別表第1類「薬剤」に属する商品は,治療を目的とする商品で,薬事法により認可され,医薬品メーカーで製造され,病院で使用され,薬局,薬品店でのみ販売される商品である,これに対して,本件商標の指定商品に属する旧別表第32類に属するいわゆる健康食品と称される商品は,あくまでも食品であって,食品メーカー等により,製造され,通常食料品店,健康用品店,通信販売等で販売される商品であり,栄養の補給等を目的とするものであるとしても,薬事法で規制されているため薬効を表示することはできないものである,健康食品については,食生活をゆがめ,健康上の弊害をもたらさないように,栄養改善法施行規則,栄養表示基準が設けられ,行政上の種々の通知がなされ,食品衛生法の改正も行われており,また,薬事法においても,健康食品と医薬品との混同が生じないように,多くの行政上の通知がなされ,薬局においても,医薬品と健康食品とを区別して貯蔵し,陳列することが義務付けられており,商品にも,「医薬品」,「医薬部外品」及び「食品」であることが明確に表示されている,などと主張する。 確かに,被告が主張するように,医薬品あるいは医薬部外品と健康食品とを比較すると,前者は,その製造等について,厚生労働省により,後者に比べてより厳格な管理がなされ,商品には,「医薬品」あるいは「医薬部外品」であること,及び,「食品」であることがそれぞれ明りょうに表示され,同じ薬局や薬品店及びドラッグストアにおいて販売される場合でも,陳列され,販売される場所が区別されている(乙第2ないし第5号証)。しかし,食品メーカーだけでなく,多数の有力な製薬会社が健康食品あるいは栄養補助食品の分野に進出してきていることは前記のとおりであり,実際の取引の場においても,薬局,薬品店,ドラッグストア等の経営者やその従業員は,医薬部外品と健康食品とを区別して,これらを貯蔵し,陳列しているとしても,一般の需要者は,医薬品,医薬部外品,健康食品から化粧品及び洗剤その他の種々雑多な生活用品を陳列し販売している薬品店,ドラッグストア等において,例えば,同一又は類似の商標を付したビタミン剤とビタミン補給用の栄養補助食品,あるいは,同一又は類似の商標を付した育毛剤と育毛関連の栄養補助食品とがあったときに,ビタミン剤とビタミン補給用の栄養補助食品との区別を正確に把握しないままに,あるいは,育毛剤と育毛関連の栄養補助食品との区別はしつつも,同一又は類似の商標の付されたこれらを出所を同じくする姉妹商品であるかのように理解したままに購入に至るおそれがあることは,明らかである。また,被告が主張するように,健康食品が,通常の食料品店,健康用品店,通信販売等でも販売され得るとしても,ビタミン剤及び滋養強壮変質剤についても,平成11年3月12日告示により,厚生労働大臣が「肉体疲労時,中高年期等のビタミン又はカルシウムの補給が目的とされている物」及び「滋養強壮,虚弱体質の改善及び栄養補給が目的とされている物」を,医薬品から医薬部外品に指定したため,これらの商品の販売については,化粧品等と同様に一般に自由な販売が認められたものであるから(甲第34号証),そのころ以降は,それらの商品の販売形態についても,薬局,薬品店,ドラッグストア等に限定されることはないのであり,被告が主張するような差異はみられない。また,医薬品,医薬部外品とさまざまな健康食品について,被告が主張するように,幾つかの法規による規制がなされ,様々な行政上の通知がなされているということは,両者が商品の内容,用途,販売店舗,販売方法において紛らわしく,混同されやすいものであるためであり,このような様々な法的規制がなされていること自体,むしろ,逆に,両商品の類似性を裏付けるものというべきである。 以上のとおり,医薬品ないし医薬部外品中のビタミン剤,滋養強壮変質剤あるいは育毛剤と,健康食品ないし栄養補助食品(サプリメント)とは,商品の内容が類似し,あるいは関連性を有し,また,その販売店ないし販売方法も同種のものであるということができるのであるから,類似の商品であるというべきである。 被告の上記主張は,理由がない。 (3) 本件商標の指定商品第32類「加工食料品」は,健康食品や栄養補助食品(サプリメント)のほかに,「肉製品,加工水産物,加工穀物,加工野菜および加工果実,その他の加工食料品」に該当するその他の多くの種類の食料品を包含するものである。しかし,本件商標の指定商品と引用A商標の指定商品における,類似する商品群は上記認定のとおりであり,昨今の健康食品ブーム(甲第14号証)を考慮すると,その指定商品中において占める割合を決してわずかなものということはできない。また,本件商標の商標権者である被告は,その商業登記簿上の目的を,「1,医薬品,医薬部外品,化粧品の製造販売,2,清涼飲料水及び滋養食品の製造販売,3,菓子,調味料,食料品及び飼料の製造販売」等とする会社であり,その営業目的からすれば,本件商標をその指定商品である第32類「加工食料品」中の健康食品あるいは栄養補助食品に専ら使用する蓋然性が極めて高いことは明らかである。さらに,被告には,もし,「肉製品,加工水産物,加工穀物,加工野菜および加工果実,その他の加工食料品」中,健康食品や栄養補助食品でない商品についてのみ,本件商標を使用するつもりであるならば,商標権の分割によりそれを可能にする方法も与えられている(法24条)。これらのことからすれば,本件商標の指定商品である「加工食料品」中に,健康食品ないし栄養補助食品(サプリメント)以外の商品が含まれることを理由として,引用A商標の指定商品「薬剤」との類似性を否定することが相当ではないことは明らかというべきである。 2 結論 以上に検討したところによれば,原告の主張する取消事由3は理由がある。 そこで,原告の本訴請求を認容することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 山下和明 |
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裁判官 | 設樂隆一 |
裁判官 | 阿部正幸 |