関連審決 | 無効2001-35400 |
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関連ワード | 識別力 / 出所表示機能 / 識別機能 / 指定商品 / 周知性 / 混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) / 広義の混同 / 4条1項15号 / 顧客吸引力(グッドウィル) / ただ乗り(フリーライド) / 希釈化(ダイリュージョン) / 類似性(類否判断) / 結合商標 / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 取引の実情 / 継続 / |
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事件 |
平成
14年
(行ケ)
612号
審決取消請求事件
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原告 有限会社グッド・エンタープライズ 同訴訟代理人弁護士 安江邦治 被告 ザ ポロ/ローレンカンパニー リミテッド パート ナーシップ 同訴訟代理人弁理士 曾我道照 同 黒岩徹夫 同 岡田 稔 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2003/05/12 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 特許庁が無効2001-35400号事件について平成14年11月12日にした審決を取り消す。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告 主文と同旨 |
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当事者間に争いがない事実
1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は,「POLOCOUNTRY」の欧文字を横書きしてなり,商標法施行令(以下「法施行令」という。)1条別表の「商品及び役務の区分」第17類の「被服(運動用特殊被服を除く),布製身回品(他の類に属するものを除く),寝具類(寝台を除く)」を指定商品とする登録第2723627号商標(平成元年7月5日登録出願。平成9年11月21日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。 (2) 被告は,平成13年9月12日,原告を被請求人として,本件商標の登録を無効とすることを求めて特許庁に審判を請求した。 (3) 特許庁は,被告の請求を無効2001-35400号事件として審理を行った上,平成14年11月12日,「登録第2723627号の登録を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,同月22日にその謄本を原告に送達した。 2 本件審決の理由の要点 本件審決の理由は,要するに,@被告のラルフ・ローレンのデザインに係る商品,すなわち被服,眼鏡等の一群の商品には,横長四角形中に記載された「Polo」の文字,「Polo by RALPH LAUREN」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の各商標が用いられ,これらは「ポロ」の略称でも呼ばれている(以下,これらの各商標及びその略称である「ポロ」を「引用商標」ともいう。)ところ,引用商標は,被告の業務に係る被服類及び眼鏡等の商標として,本件商標の登録出願時には我が国において取引者及び需要者の間に広く認識されていたものと認められる,A本件商標は,「POLOCOUNTRY」の文字よりなるところ,その構成は,「POLO」と「COUNTRY」とを結合したものと容易に理解されるものであり,また,全体として一体不可分の既成の観念を有するものとしてよく知られているとは認められない,Bそうすると,本件商標は,これをその指定商品に使用した場合には,「POLO」の文字部分が特に印象付けられ,「POLO」の文字部分に着目して取引に当たる場合も少なくないというべきであるから,本件商標に接する取引者及び需要者は,引用商標を想起し,被告の業務に係る商品,もしくは,同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといわなければならない,C以上のとおり,本件商標の登録は商標法4条1項15号(以下「本号」という。)に違反して登録されたものであり,同法46条1項1号により,その登録は無効とすべきである,というものである。 |
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当事者の主張
1 原告の主張 次に述べるとおり,本件商標が本号に違反して登録されたものであるとした本件審決の認定判断は誤りであり,本件審決は取り消されるべきである。 (1) 「POLO」,「ポロ」は,騎乗競技を表す普通名詞であり,この語自体は,何ら商品の出所表示機能を有するものではない。 被告は,「POLO」等の語が普通名詞であるところから,のように,横長方形の枠で「POLO」の文字を囲んでロゴ化したの標章, とby RALPH LAURENとを組み合わせた標章,ポロ競技者の図形と及び「by LALPH LAUREN」(又は「by Ralph Lauren)を組み合わせた標章を自らのブランドとしたものである。そして,被告の業務に係る被服類及び眼鏡等の商標として,本件商標の登録出願時に我が国において取引者及び需要者に広く認識されていたのは,上記ロゴ化したの標章及びこれを一部に含む上記各標章であって,商標「POLO」ではない。 したがって,仮に,被告の上記ロゴ化した標章及びこれを一部に含む上記各標章が,本件商標の登録出願時に周知性を獲得していたとしても,文字標章の「POLO」が被告の商品を表す標章として周知性を獲得していたということにはならない。 (2) 本件商標は,「POLOCOUNTRY」の欧文字を一体的に構成してなる造語商標であり,平成元年から今日に至るまで原告の商標として現に使用されてきたものであり,したがって,これを敢えて「POLO」と「COUNTRY」に分解して読まなければならない必然性は全くない。また,本件商標は,既に,14年余の間,原告のオリジナル商品のスウェット,トレーナー,オーバーシャツなどのスポーツウェア及びメンズカジュアルウェアに付し,新聞雑誌等で広告宣伝したほか,展示会などでも定期的に陳列し,販売を行ってきたことから,現在では,原告の商標として,取引者及び需要者に広く認識されており,被告との関連性を問われたことは1度もない。 このことに,「Royal Polo Club」,「POLO FAMOUS」,「POLO HOUSE」,「POLO WESTERN」等,「POLO」の文字をその構成の一部に含む登録商標が何十,何百と存在していることをも考え併せれば,本件商標の「POLOCOUNTRY」の文字が,被告の上記ロゴ化した標章及びこれを一部に含む上記各標章と強い結び付きを生じ,商品の出所についての混同を生ずるおそれなどあり得ないことである。 2 被告の主張 本件商標の登録が本号に違反するものであるとした本件審決の認定判断に誤りはなく,原告が取消事由として主張するところは理由がない。 (1) ラルフ・ローレンのデザインに係わる商品を表示する商標として,被告の使用する横長四角形中に記載された「Polo」の文字,「by RALPH LAUREN」の文字,馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形からなる標章が,我が国において「ポロ」,「POLO」(「Polo」)などと略称され,「ポロ」,「POLO」などの略称を含めこれらの一連標章が,本件商標の登録出願時までに,既に,我が国の取引者及び需要者の間に広く認識されるに至っていたことは明らかである。 (2) 我が国においてよく使用されている小学館発行の「ランダムハウス英和大辞典」,研究社発行の「新英和大辞典」等の英和辞典には,「POLO」及び「COUNTRY」の語は記載されているが,「POLOCOUNTRY」の記載はない。また,「COUNTRY」の語は,中学程度で習得すべき基本的な学習語とされており,我が国で一般によく知られた英語と言い得るものである。 上記の点のほか,「Polo」,「POLO」が,ラルフ・ローレンのデザインに係る商品に付される商標として周知,著名であることからすれば,本件商標を付した商品に接した取引者及び需要者は,「POLOCOUNTRY」の欧文字を一体不可分のものとしてではなく,「POLO」と「COUNTRY」を結合したものと認識するとともに,本件商標のうち被告の商品に係る標章として著名な「POLO」の部分に特に注意を引かれ,当該商品がラルフ・ローレンあるいはその関連会社に係る商品であると認識することは必定というべきである。 (3) 原告は,本件商標は,平成元年から使用して周知になっていると主張するが,そのような事実は認められない。のみならず,仮に,本件商標が周知になっていたとしても,そのことと,本件商標をその指定商品に使用した場合に,被告の上記(1)の各標章又はその略称と混同の蓋然性があるかどうかとは別異のことである。 また,原告は,「POLO」の文字をその構成の一部に含む登録商標が本件商標以外に多数存在している旨主張するが,本件商標が本号に該当するか否かは,本件商標の登録出願時及び審決時における引用商標の周知著名性等取引の実情を踏まえて個別具体的に審理判断されるべきであり,その審理判断に当たって,先登録の事例に拘束されるべきものではない。 |
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当裁判所の判断
1 原告は,本件商標の登録が本号に違反するものであるとした本件審決の認定判断は誤りである旨主張する。 ところで,本号の規定は,周知表示又は著名表示へのただ乗り及び当該表示の希釈化を防止し,商標の自他識別機能を保護することによって,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護することを目的とするものであるから,本号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定商品等に使用したときに,当該商品等が他人の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該商品等が上記の他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品提供事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ,すなわち,広義の混同を生ずるおそれがある商標を含むものと解するのが相当である。そして,この場合,本号にいう「混同を生ずるおそれ」があるかどうかは,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし,当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断すべきである。 そこで,上記の観点から,本件商標の登録が本号に違反するものであるか否かについて,以下検討する。 2(1) 引用商標の周知著名性について ア 当事者間に争いがない事実に証拠(甲5,6,8ないし11,乙1ないし4,9,10ないし18)及び弁論の全趣旨を併せれば,次の事実が認められる。 (ア) 被告は,米国ニューヨーク州所在のリミテッド パートナーシップで ある。被告は,その主要な構成員である世界的に著名なデザイナーであるラルフ・ローレンがデザインした被服,眼鏡,フレグランスその他のファッション関連商品を関連会社やライセンシー等を通じて世界的な規模で製造,販売している。現在,ラルフ・ローレンのデザインに係るファッション関連商品には,「Polo」の文字を横長四角形中に記載してロゴ化したの標章, と「by RALPH LAUREN」とを組み合わせた標章,ポロ競技者の図形と及び「by RALPH LAUREN」(又は「by Ralph Lauren)を組み合わせた標章が付されている(この事実は当事者間に争いがない。)。 (イ) 昭和53年7月20日講談社発行の「男の一流品大図鑑」(甲5,乙1)には,ラルフ・ローレンのデザインに係る引用商標を掲げた「ラルフ・ローレン」ブランドの紹介がされており,それには「1974年の映画「華麗なるギャツビー」は,現代アメリカの混迷と退廃に対する痛烈な警鐘にもなっていた。この映画で主演したロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したのが,ポロ社の創業者であり,アメリカのファッションデザイン界の旗手ラルフ・ローレンである」,「30歳になるかならぬかで一流デザイナーの仲間いりをはたし,わずか10年で,ポロ・ブランドを,しかもファッションデザイン後進国アメリカのブランドを,世界に通用させた」との記載があり,昭和55年5月25日講談社発行の「世界の一流品大図鑑」(’80年版。甲11,乙13)には,紳士服の項に「「POLO」ポロ(アメリカ)」として,「アメリカン・トラディショナル・ファッションの総本山ブルックス・ブラザーズで独自の服飾感覚をみがきながら,ニューヨーク大学に学んだラルフ・ローレン。知性と感性が躍動する都会的デザインが,シェイプ・アップされたからだに,フィットします。」との記載が,また,眼鏡の項目には,「「POLO」ポロ(アメリカ)」として,「ニュートラディショナルの旗手ラルフ・ローレンのデザインフレーム」,「はば広く愛されているニューヨークファッション,その旗手ラルフ・ローレンはポロ社の創業者でもあります」との記載がある。 次に,昭和58年9月28日サンケイマーケティング発行の「舶来ブランド事典「’84ザ・ブランド」」(甲6,乙2)には,ラルフ・ローレンに係るポロ標章を掲げた「ポロ」ブランドの紹介がされており,それには「今や名実ともにニューヨークのトップデザイナーの代表格として君臨するラルフ・ローレンの商標。ニュートラディショナル・デザイナーの第一人者として高い評価を受け,世界中にファンが多い」,「マークの由来 ヨーロッパ上流階級のスポーツのポロ競技をデザイン化して使っている。彼のファッションイメージとぴったり一致するため彼のトレードマークとして使用しているもの」との記載があり,昭和55年4月15日洋品界発行の「月刊「アパレルファッション店」別冊1980年版「海外ファッション・ブランド総覧」」(甲8,乙9)には,「ポロ・バイ・ラルフローレン」について,「若々しさと格調が微妙な調和を見せるメンズウェア「ポロ」ブランドの創立者。栄誉あるファッション賞“コティ賞”をはじめ彼の得た賞は数知れず,その実力をレディス・ウェアにも発揮。新しい伝統をテーマに一貫しておとなの感覚が目立つ。アメリカ・ファッション界の颯爽とした担い手」との紹介が記載されているほか,「〈販路〉西武百貨店,全国展開 〈導入企業〉叶シ武百貨店 〈発売開始〉51年(注 紳士靴につき「52年」)」等の記載がある。 昭和55年11月20日講談社発行の「男の一流品大図鑑’81年版」(乙15),昭和56年5月25日同社発行の「世界の一流品大図鑑’81年版」(乙14),昭和59年1月婦人画報社発行の「MEN’S CLUB1984年1月号」(乙3), 昭和60年5月25日講談社発行の「流行ブランド図鑑」(乙4)にも上記各記載と同趣旨の記載がある。 (ウ) 昭和59年9月25日発行のボイス情報発行の「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」(甲9,乙10)には,被告がポロ・バイ・ラルフローレンのブランドを我が国において株式会社西武百貨店(以下「西武百貨店」という。)にライセンスしていること,ライセンス開始年度は昭和51年であることが記載されている。西武百貨店は,ラルフ・ローレンのデザインに係る商品及びこれに付す引用商標の周知を図るべく新聞広告するなどして,積極的に上記商品の販売発動を行った。 また,昭和62年7月24日発行の繊研新聞(乙11)には,「西武百貨店とアメリカのラルフ・ローレンとのビジネスが日本市場で順調に拡大している。・・・西武は「ポロ」「ラルフ・ローレン」を中心にしたライセンスビジネスをさらに発展させるため,これまでの百貨店インショップ主体から大型の路面店にも積極的に売り場をオープンさせる」との記載が,昭和63年10月29日発行の日経流通新聞(甲10,乙12)には,「西武百貨店は,商品事業本部で展開してきたポロ・ラルフローレン事業を分離・独立させ,100%子会社,ポロ・ラルフローレンジャパンを設立した。新会社を軸にファッション製品に加え,来年秋からハンカチ,ナイトウエアなど新しい商品群を導入してポロ・ラルフローレンブランドのライセンス事業をトータル展開する」との記載がされている。 (エ) 平成元年5月19日付け朝日新聞夕刊(乙18)には,「昨年2月ご ろから,米国の「ザ・ローレン・カンパニー」社の・・・「Polo」の商標と,乗馬の人がポロ競技をしているマークをつけたポロシャツ,トレーナーなど1万4000枚を全国の1万人に売っていた疑い」との記事が,平成11年9月9日付け日本経済新聞朝刊(乙19)には,「渋谷区神宮前の同社店舗で,団体職員の女性(27)に「ポロ」ブランドの偽物セーター1枚を2900円で販売したほか,・・・同区内の会社事務所と同店内に同ブランドの偽物ベストなど計約1900枚を販売目的で所持していた疑い」との記載がある。 イ 上記認定の事実及び弁論の全趣旨によれば,被告が使用する,「Polo」の文字を横長四角形中に記載してロゴ化したの標章, と「by RALPH LAUREN」とを組み合わせた標章,ポロ競技者の図形と及び「by RALPH LAUREN」(又は「by Ralph Lauren)を組み合わせた標章は,アメリカのファッションデザイナーとして世界的に著名なラルフ・ローレンのデザインに係るファッション関連商品を表示するものとして,我が国においては,昭和51年ころから使用されるようになり,遅くとも昭和50年代半ばまでには取引者及び需要者間に広く認識されるに至っていたこと(同商標の周知性については当事者間に争いがない。),その当時から,上記標章及びこれを付した商品ブランドは「ポロ」,「POLO」(「Polo」)と略称されることもあり,ラルフ・ローレンの「ポロ」,「Polo」ないし「POLO」として著名になり,強い自他商品識別力及び顧客吸引力を獲得していたものであり,その周知著名性は,その後本件審決時を経て今日に至るまで継続していることが認められる。 原告は,被告の業務に係る被服類及び眼鏡等の商標として,本件商標の登録出願時に我が国において取引者及び需要者に広く認識されていたのは,上記ロゴ化したの標章及びこれを一部に含む上記各標章であって,商標「POLO」ではない旨主張するが,被告がラルフ・ローレンのデザインに係る商品に付する前記各標章及びこれを付した商品ブランドが「ポロ」,「POLO」(「Polo」)と略称されることもあり,ラルフ・ローレンの「ポロ」,「POLO」などとして著名になり,強い自他商品識別力及び顧客吸引力を獲得していたことは,上記認定のとおりであって,原告のこの点の主張は採用することができない。 (2) 商品の出所混同のおそれについて ア 本件商標は,その外観上,2個の英語からなるものであり,引用商標の構成部分ないし引用商標のうち被告の前記各標章の略称として周知著名性を有する「POLO」の語と,「COUNTRY」の語とを組み合わせた結合商標である。 そして,我が国において一般に使用されている英和辞典類には,「POLO」及び「COUNTRY」の語は記載されているが,「POLOCOUNTRY」の記載はなく,本件商標は,全体として一個不可分の既成の観念を示すものとは認められない。 原告は,本件商標は,「POLOCOUNTRY」の欧文字を一体的に構成してなる商標であり,平成元年から今日に至るまで原告の商標として現に使用されてきたものであるから,これを敢えて「POLO」と「COUNTRY」に分解して読まなければならない必然性は全くない旨主張する。しかし,我が国においては「COUNTRY」の語は,「国,本国」等を表す基本的な学習英語として一般によく知られているのであって,本件商標に接する取引者及び需要者は,これを上記2個の語が結合した商標であると認識するのが通常であると考えられる。 イ 前記認定のとおり,引用標章は,ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等のファッション関連商品を示すものとして,我が国における取引者及び需要者の間に広く認識されているものであって,周知著名性の程度が高い標章である。 「POLO」,「ポロ」の語は,元来乗馬した競技者により行われるスポーツ競技の名称であり,「ポロシャツ」の語は被服の種類を表す語として普通名詞となっているものであるから,引用商標の独創性の程度が造語による商標と比較して低いことは否めない。しかし,本件商標の指定商品は,法施行令1条別表の「商品及び役務の区分」第17類の「被服(運動用特殊被服を除く),布製身回品(他の類に属するものを除く),寝具類(寝台を除く)」であって,引用商標が現に使用されている商品と同一であるか又はこれと関連性の程度が極めて高いものであり,また,このことから,両者の商品の取引者及び需要者が共通することも明らかである。加えて,本件商標の指定商品が日常的に使用される性質の商品であることや,同指定商品の需要者も通常は特別の専門知識を有するものでない一般消費者であることからすれば,その需要者がこれを購入する際に払う注意力はさほど高くないと認めるのが相当である。したがって,前記の「混同を生ずるおそれの有無」の判断に当たって,引用商標の独創性が低いことを重視するのは相当ではない。 ウ 本件商標が結合商標であるとはいえ,「POLO」の語と「COUNTRY」の語を間隙をおくことなく一体として表示していることから,これに接する取引者及び需要者においてこれを一つの造語標章として認識する可能性がないとはいえない。しかし,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合していると認められない商標は,必ずしもその構成部分全体の名称によって称呼,観念されず,しばしば,その一部の構成部分だけによって簡略に称呼,観念され,1個の商標から2個以上の称呼,観念を生ずることは経験則の示すところである。本件の場合,既に認定した引用商標の周知著名性の程度の高さ,本件商標と引用商標との間の共通性及び両者の取引者及び需要者の共通性等に照らしてみれば,本件商標がその指定商品に使用されたときには,その各構成中の「POLO」の部分がこれに接する取引者及び需要者の注意を特に強く引くであろうと予想され,したがって,本件商標は,「POLO」,「COUNTRY」の各語に分離して称呼,観念され得るものと考えられるし,そのように称呼,観念しても不自然とはいえない。したがって,本件商標は,「POLO」の観念とともに,ラルフ・ローレンもしくはその経営する会社又はこれらと密接な関係にある営業主の業務に係る商品であるとの観念をも生じさせるものといえる。 (3)ア 上記のとおり,引用商標は被告が関連会社及びライセンシー等を通じて販売するラルフ・ローレンのデザインに係るファッション関連商品を表示するものとして周知著名性の程度が極めて高いところ,本件商標は,被告の著名標章である「POLO」をその構成部分に含む商標で,その構成部分がその余の部分から分離して認識され得るものであり,引用商標と称呼,外観,観念上類似していると認められる。また,前記認定のとおり,本件商標の指定商品と引用商標が使用されている商品とは重複し,両者の取引者及び需要者も共通しており,その需要者は通常は特別の専門知識を有するものでない一般消費者である。加えて,ファッション関連の企業は複数のブランドを展開している場合が少なくなく,一般需要者もそのことを認識していることは公知の事実である。これらの事情を総合的に勘案すれば,本件商標をその指定商品に使用するときには,これに接した取引者及び需要者に対し,引用商標を想起させて,その商品が上記ラルフ・ローレンのデザインに係る商品であるかのように,その出所につき誤認を生じさせるおそれがあり,本件商標の登録を維持した場合には,引用商標の有する顧客吸引力へのただ乗りやその有する自他識別機能の希釈化,ひいては被告の業務上の信用の低下という結果を招来しかねないと考えられる。 そうすると,本件商標は,本号にいう「混同を生ずるおそれのある商標」に該当すると判断するのが相当である。 イ 原告は,本件商標の登録出願当時において,既に,本件商標は原告のオリジナル商品を表示する商標として,取引者及び需要者に広く認識されており,被告の上記ロゴ化した標章及びこれを一部に含む前記各標章を付したラルフ・ローレンのデザインの商品との間で誤認混同を生ずるおそれなどない旨主張するところ,上記争いのない事実等に証拠(甲20,23ないし27,28の1,2,29ないし32,乙20ないし29)及び弁論の全趣旨を併せれば,原告は,平成元年に本件商標の登録出願をした後,平成9年の本件商標の設定登録を経て今日に至るまで,原告のオリジナル商品に本件商標を付して販売するほか,平成3年ころから,他社に対し本件商標をその指定商品である被服等に使用することを許諾し,当該他社はその製造販売した衣服等に本件商標を付してこれを販売していたこと,平成10年6月3日発行のセンイ・ジャアナル(甲20)には,「カジュアルブランド「ポロ・カントリー」を展開するグッドエンタープライズ(判決注*原告)・・・は,今秋冬物から本格的なコーディネート企画の商品政策を採用するなど,同ブランドでコーナー展開を軸としたトータル販売に本腰を入れる。また,他社へのライセンス供与によって扱いアイテムを拡大,ライフスタイル提案型のブランドに育成する方針だ。」等の記載がされていることが認められる。 しかし,本件商標が付された商品がどの地域で販売され,販売実績がどの程度であったのかを明らかにする証拠はなく,上記の事実のみから,本件商標が,我が国において,ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示する引用商標とは無関係の,原告又はそのライセンシーの商品を表示する出所識別標章として,周知著名性を獲得していたと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 ウ 原告は,「Royal Polo Club」,「POLO FAMOUS」,「POLO HOUSE」,「POLO WESTERN」等,「POLO」の文字をその構成の一部に含む登録商標が何十,何百と存在しているのに,本件商標の「POLOCOUNTRY」の文字のみが,被告の上記ロゴ化した標章及びこれを一部に含む前記各標章と強い結び付きを生じ,商品の出所についての混同を生ずるおそれがあるなどということはできない旨主張する。 しかしながら,特定の登録商標が本号に違反して登録されたものであるかどうかは,前示のとおり,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし,個別具体的に判断されるべきものであるから,本件商標以外に「Polo」ないし「POLO」の文字をその構成の一部に含む登録商標が多数存在しているとしても,そのことは,上記アの判断を左右するものではない。 3 以上によれば,原告が取消事由として主張するところはいずれも理由がなく,その他本件審決にこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 北山元章 |
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裁判官 | 青蜉] |
裁判官 | 絹川泰毅 |