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事件 |
平成
12年
(ワ)
8646号
商標権侵害差止請求事件
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原告A 訴訟代理人弁護士 濱崎憲史 同 濱崎千恵子 被告 株式会社アザレインターナショナル 訴訟代理人弁護士 野邊寛太郎 同 楠眞佐雄 同 本郷誠 同 田中正和 上記野邊寛太郎訴訟復代理人弁護士 村岡みち代 上記楠眞佐雄訴訟復代理人弁護士 小西輝明 被告株式会社アザレインターナショナル補助参加人 X 同 Y 上記補助参加人ら訴訟代理人弁護士 川島清嘉 同 川島志保 同 関本和臣 同 中田祐児 同 島尾大次 被告 日本コルマー株式会社 訴訟代理人弁護士 井上隆晴 同 細見孝二 同 井上卓哉 |
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裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2003/05/01 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨 (1) 被告日本コルマー株式会社は、別紙商標目録1ないし8、10ないし12記載の登録商標を、石けん類、香料類、化粧品、歯みがき粉又はその包装に付してはならない。 (2) 被告株式会社アザレインターナショナルは、石けん類、香料類、化粧品、 歯みがき粉又はその包装に別紙商標目録1ないし8、10ないし12記載の登録商標を付したものを販売してはならない。 (3) 被告らは、別紙商標目録1ないし8、10ないし12記載の登録商標を付した石けん類、香料類、化粧品、歯みがき粉、その半製品及びその外箱、梱包材又は容器を廃棄せよ。 (4) 被告らは、各自、原告に対し、平成12年8月1日から、被告株式会社アザレインターナショナルが、石けん類、香料類、化粧品、歯みがき粉又はその包装に別紙商標目録1ないし8、10ないし12記載の登録商標を付したものの販売をやめるまで、毎月末日限り2300万円宛て及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (5) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (6) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁 (被告株式会社アザレインターナショナル) (1) 原告の被告株式会社アザレインターナショナルに対する請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 (被告日本コルマー株式会社) (1) 原告の被告日本コルマー株式会社に対する請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 |
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当事者の主張
1 請求原因 (1)(商標権) 原告の夫であったBは、別紙商標目録5記載の商標権を昭和57年7月12日に、同目録2記載の商標権を昭和58年11月28日にそれぞれ取得し、また、同目録1、3、4、6ないし8、10ないし12記載の商標権を、同目録記載の各登録日に各登録と同時に取得した(以上の別紙商標目録1ないし8、10ないし12記載の商標権をBが取得した日は、別紙「Bの本件商標権取得年月日」記載のとおりである。また、以上の商標権を一括して「本件各商標権」、登録商標を一括して「本件各登録商標」という。)。Bは、平成9年11月4日、死亡し、原告は、本件各商標権を、Bから相続によって取得した。 (2)(使用許諾契約) Bは、本件各登録商標につき、それぞれ、別紙「Bの本件商標権取得年月日」記載の日ころ、被告株式会社アザレインターナショナル(以下「被告インターナショナル」という。)との間で、Bが被告インターナショナルに対してその使用を許諾し、被告インターナショナルがB又は同人の指定する者に対して、当事者間で合意した金額を「商標使用料」名目で支払う旨の使用許諾契約を締結した。原告は、相続により、この各使用許諾契約上の地位も承継した(以下、本件各登録商標についてBが被告インターナショナルとの間で締結した各使用許諾契約を「本件各使用許諾契約」という。)。 (3)(債務不履行1) ア 本件各使用許諾契約は、アザレ化粧品の創始者であるB又はその相続人である原告を中心とし、アザレプロダクツ株式会社(以下「アザレプロダクツ」という。)が製造を担当し、被告インターナショナルが販売を担当し、有限会社ワンダフル(以下「ワンダフル」という。)が資産管理を担当することによって構成されている、いわばアザレグループという共同体を出所として表示するために用いる限りにおいて使用を許諾するという合意を含むものであった。 イ しかし、被告インターナショナルは、平成12年4月ころから、被告日本コルマー株式会社(以下「被告日本コルマー」という。)に、新たな化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品又はその包装に、本件各登録商標を付したものを販売している。また、被告日本コルマーは、被告インターナショナルの依頼を受け、化粧品を製造し、その製造する化粧品又はその包装に、本件各登録商標を付している。 ウ @被告日本コルマーが製造した化粧品により、従前アザレプロダクツが製造した化粧品を使っていた者に皮膚トラブルが多発していることから、被告日本コルマーが製造し、被告インターナショナルが販売している化粧品は、従前アザレプロダクツが製造し、被告インターナショナルが販売してきた化粧品と、同一の化粧品とはいえず、別の化粧品であること、A被告インターナショナルは、自らが販売する本件各登録商標を付した化粧品の製造者を、原告及びアザレプロダクツの承諾なくして、アザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したこと、B被告インターナショナルが化粧品の製造者をアザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したことにより、従前アザレプロダクツが製造したアザレ化粧品が自然派化粧品として高い評価を獲得したことによって築かれてきた本件各登録商標に対する消費者の信用が急速に失われつつあること、C被告インターナショナルは、アザレプロダクツの製造する本件各登録商標を付した化粧品を、偽物であると宣伝していること、D被告インターナショナルが、アザレプロダクツに対して、別紙商標目録4、 6、7記載の登録商標の使用差止めを求める仮処分を申し立てたことからすると、被告インターナショナルは、平成12年4月ころ、アザレグループを離脱したものであり、被告日本コルマーが製造し、被告インターナショナルが販売する化粧品は、アザレグループを出所とするものとはいえなくなった。 それにもかかわらず、被告インターナショナルは、被告日本コルマーの製造した化粧品又はその包装に本件各登録商標を付したものを販売している。これは、アザレグループを出所として表示するために用いる限りにおいて使用を許諾するという、本件各使用許諾契約に含まれた合意に違反し、債務不履行に当たる。 (4)(債務不履行2) ア 一般に商標の使用許諾契約において、使用者は、商標権者に対して、背信行為を行わないという信義則上の義務を負っており、使用者が、商標権者に対して著しい背信行為を行った場合には、信義則違反として、債務不履行となる。 イ(ア) 被告インターナショナルの代表取締役であるJは、同被告を代表して、自分の経営する有限会社コスモと取引を行うことによって、同被告に損害を与え、そのことを是正しようとしたKを同被告の取締役から排除した。 (イ) 被告インターナショナルは、Bの子である被告インターナショナル補助参加人(以下「補助参加人」という。)らを抱き込み、弁護士費用や担保となる保証金を負担して、原告、アザレプロダクツ及び原告が代表取締役を務めるワンダフルに対し、次のような仮処分を申し立てた。 a 事件番号 福岡地方裁判所平成11年(ヨ)第928号 債権者 補助参加人ら 債務者 原告 申立て 遺留分減殺請求による本件各商標権の持分権移転登録請求権を被保全権利として、本件各商標権につき、被告インターナショナルに対する処分を除き処分を禁止する仮処分を求めた。 決 定 債権者らが債務者のために各5000万円を供託する方法の担保を立てさせて認容 b 事件番号 福岡地方裁判所平成12年(ヨ)第117号 債権者 補助参加人ら 債務者 ワンダフル 申立て 遺留分減殺請求による本件各商標権の持分権に基づき、 本件各商標権を被告インターナショナル以外の者に使用させることの差止めを求めるとともに、本件各登録商標の使用料相当額についての不当利得返還請求として、 各債権者に対し、毎月560万円の仮払を求めた。 決 定 認容 c 事件番号 大阪地方裁判所平成12年(ヨ)第20015号 債権者 被告インターナショナル 債務者 アザレプロダクツ 申立て 債権者が、別紙商標目録4、6、7記載の登録商標は、 債権者の商品表示として周知性及び著名性を有しているとして、不正競争防止法2条1項1号及び2号に基づいて、これらの登録商標を使用した化粧品等の製造販売等の差止めを求めた。 決 定 却下 |
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追加 | |
債権者補助参加人Y債務者原告、ワンダフル、M、N申立て債権者はワンダフルの持分600口を有する社員であるところ、同会社の臨時社員総会議事録及び商業登記簿によると、平成10年2月26日臨時社員総会が開催され、債務者原告を同会社の取締役に選任する旨の決議がされたとの記載及び登記、同年11月7日臨時社員総会が開催され、債務者Mを取締役に、債務者Nを監査役に、債務者原告を代表取締役に選任する旨の決議がされたとの記載及び登記が存在するが、債権者に対しては臨時社員総会開催の招集通知は一度もされておらず招集手続に著しい瑕疵が存在し、各臨時社員総会は存在しないものとして、債務者原告は取締役兼代表取締役の、債務者Mは取締役の、債務者Nは監査役の各職務を執行してはならない旨の職務執行停止、職務代行者選任などを求めた。 決定債権者に債務者らのために各50万円を供託する方法による担保を立てさせて認容e事件番号福岡地方裁判所平成12年(ヨ)第316号債権者補助参加人ら債務者アザレプロダクツ申立て遺留分減殺請求による本件各商標権の持分権に基づき、 債務者に対して、本件各登録商標を使用した化粧品の製造販売等の差止めを求めた。 決定却下(ウ)被告インターナショナルは、本件各登録商標は、同被告による使用以外は使用を禁止されているという虚偽の宣伝を繰り返し、原告を中傷した。 (エ)被告インターナショナルは、アザレプロダクツの製造する本件各登録商標を付した化粧品を、偽物であると宣伝し、原告を中傷した。 (オ)前記(3)イのとおり、被告インターナショナルは、平成12年4月ころから、被告日本コルマーに、新たな化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品又はその包装に本件各登録商標を付したものを販売している。また、前記(3)ウ@、Aのとおり、被告日本コルマーが製造し、被告インターナショナルが販売している化粧品は、従前アザレプロダクツが製造し、被告インターナショナルが販売してきた化粧品とは別の化粧品であって、被告インターナショナルは、 自らが販売する本件各登録商標を付した化粧品の製造者を、原告及びアザレプロダクツの承諾なくして、アザレプロダクツから被告日本コルマーに変更した。 (カ)被告インターナショナルは、平成8年4月6日及び同月8日、別紙商標目録5記載の登録商標と類似の標章(別紙商標目録21、22、25及び26記載の登録商標)及び別紙商標目録4記載の登録商標と同一の標章(別紙商標目録15ないし20、23及び24記載の登録商標)につき、アザレ化粧品の販促品又は新商品が該当する可能性のある商品区分及び指定商品を指定して、B及び原告に告げずに密かに商標登録出願した(これらの出願は、その後、別紙商標目録15ないし26のとおり商標登録された)。 ウこれら(ア)ないし(カ)の行為は、被告インターナショナルの原告に対する著しい背信行為であり、信義則に反し、債務不履行に当たる。 (5)(解除の意思表示1)原告は、被告インターナショナルに対し、内容証明郵便をもって、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をし、同内容証明郵便は、平成12年7月18日、被告インターナショナルに到達した。 この意思表示は、前記(3)又は(4)の債務不履行に基づく解除として有効である。 (6)ア(債務不履行3)被告インターナショナルは、従前は、本件各登録商標の使用料を、ワンダフルに対して支払っていた。 原告は、被告インターナショナルに対し、本件各登録商標の使用料を、 平成12年11月分から原告に直接支払うように内容証明郵便をもって催告し、同内容証明郵便は、同年10月23日、同被告に到達した。しかし、同被告は、原告に対し、同年11月分以降の本件各登録商標の使用料を支払わない。 イ(解除の意思表示2)原告は、被告インターナショナルに対し、平成12年12月25日の本件口頭弁論期日において、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をした。 この意思表示は、前記アの債務不履行に基づく解除として有効である。 (7)ア(債務不履行4)被告インターナショナルは、本件各使用許諾契約に基づき、原告に対し、アザレプロダクツ以外の者に化粧品の製造を委託してはならないという義務を負っていた。 また、本件各使用許諾契約は、アザレプロダクツが製造する化粧品についてのみ本件各登録商標の使用を許諾するとの合意を含むものであった。 それにもかかわらず、前記(3)イのとおり、被告インターナショナルは、 平成12年4月ころから、被告日本コルマーに新たな化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品又はその包装に本件各登録商標を付したものを販売している。これは、被告インターナショナルが本件各使用許諾契約に基づいて原告に対して負う、アザレプロダクツ以外の者に化粧品の製造を委託してはならないという義務に違反し、債務不履行に当たる。また、アザレプロダクツが製造する化粧品についてのみ本件各登録商標の使用を許諾するという、本件各使用許諾契約に含まれた合意に違反し、債務不履行に当たる。 イ(解除の意思表示3)原告は、被告インターナショナルに対し、平成13年6月4日の本件口頭弁論期日において、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をした。 この意思表示は、前記アの債務不履行に基づく解除として有効である。 (8)(侵害行為)被告らは、平成12年8月1日以降、本件各登録商標を付した化粧品を製造販売し、1か月当たり合計2300万円以上の利益を上げている。 (9)よって、原告は、本件各商標権に基づき、被告日本コルマーに対し、本件各登録商標を、石けん類、香料類、化粧品、歯みがき粉又はその包装に付することの差止め、被告インターナショナルに対し、石けん類、香料類、化粧品、歯みがき粉又はその包装に本件各登録商標を付したものを販売することの差止めを求め、被告らに対し、本件各登録商標を付した石けん類、香料類、化粧品、歯みがき粉、その半製品及びその外箱、梱包材若しくは容器の廃棄を求めるとともに、被告らに対し、損害賠償として、各自、平成12年8月1日から、被告インターナショナルが、石けん類、香料類、化粧品、歯みがき粉又はその包装に本件各登録商標を付したものの販売をやめるまで、毎月末日限り2300万円宛て及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2請求原因に対する認否(被告インターナショナル)(1)請求原因(1)の事実のうち、原告の夫であったBが、本件各商標権をそれぞれ別紙「Bの本件商標権取得年月日」記載の日に取得したこと、Bが、平成9年11月4日、死亡したことは認めるが、原告が本件各商標権をBから相続によって単独で取得したことは否認する。 Bは、原告のみに財産を相続させる旨の遺言をしたが、補助参加人らがそれぞれ遺留分減殺請求権を行使したため、これらの商標権は、原告、補助参加人らの共有状態にある。これらの商標権の移転登録は、遺産分割協議に基づき行われたが、この遺産分割協議は詐欺により取り消され又は錯誤により無効であるから、この移転登録も効力がない。共有に係る商標権に基づく差止請求は、共同者全員によってのみ請求し得るから、共有者のうちの1人にすぎない原告は、単独で、共有に係る商標権に基づく差止めを請求することができない。 (2)請求原因(2)の事実は否認する。 ワンダフルは、本件各登録商標については、それぞれ別紙「Bの本件商標権取得年月日」記載の日ころ、被告インターナショナルとの間で、ワンダフルが被告インターナショナルに対して本件各登録商標の使用を許諾し、被告インターナショナルがワンダフルに対して、当事者間で合意した金額を「商標使用料」名目で支払う旨の使用許諾契約を締結した。 仮に、Bが被告インターナショナルと本件各使用許諾契約を締結したとしても、原告が相続により本件各使用許諾契約上の地位を単独で承継したことは否認する。本件各使用許諾契約上の地位は、原告と補助参加人両名が共同相続した。 (3)ア請求原因(3)アの事実は否認する。 原告の主張する「アザレグループ」というものは存在せず、原告の主張はその前提を欠く。仮に「アザレ関係者」という意味で「アザレグループ」というものを考えるとしても、法律行為の内容の確定性に照らし、このような外延を画し得ない漠然とした概念をもって、合意の構成要素と解釈することは許されない。しかも、「アザレグループ」というものから離脱したのは、被告インターナショナルではなく、原告であるから、アザレグループからの離脱という事実は、権利濫用の評価根拠事実として本件訴訟の抗弁事実となりこそすれ、本件各使用許諾契約の解除原因として請求原因事実とはなり得ない。 イ請求原因(3)イの事実のうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していることは認めるが、その余は否認する。 ウ(ア)請求原因(3)ウのうち、被告インターナショナルが、自らが販売する本件各登録商標を付した化粧品の製造者を、原告及びアザレプロダクツの承諾なくして、アザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したこと(A)、被告インターナショナルが、アザレプロダクツに対して、別紙商標目録4、6、7記載の登録商標の使用差止めを求める仮処分を申し立てたこと(D)は認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。 被告日本コルマーが製造した化粧品により皮膚トラブルが多発している事実はない。被告日本コルマーは、被告インターナショナルから化粧品の製造を依頼された際、アザレプロダクツが製造していた化粧品の品質を再現してほしいという要請を受けたため、アザレプロダクツが製造していた化粧品の処方をもとに現在の処方を開発したものであり、その内容成分については、アザレプロダクツが製造していた化粧品とほぼ同様のものを使用している。被告日本コルマーは、その製造する化粧品について、パッチテスト等を実施したが、その結果に特に問題はなかった。平成13年春には、アザレ化粧品以外の化粧品についても、皮膚トラブルが多発していたが、それは、平成12年から平成13年にかけて寒さが長引き空気が極度に乾燥していたことにより皮膚のバリア機能が低下して引き起こされた知覚過敏によるものと考えられ、被告日本コルマーが製造し被告インターナショナルが販売した化粧品に特有の問題ではなかった。 (イ)商標使用許諾契約において解除権を行使するためには、取引関係を継続し難い不信行為の存在などやむを得ない事由があることが必要である。 しかし、@本件紛争の背景には、原告らによるアザレ化粧品の乗っ取りの動きがあること、A原告が、別件訴訟において、本件各登録商標を自己使用してアザレ化粧品の製造販売を行っていると主張していること、B本件各登録商標は被告インターナショナルが専ら使用するものとして考案され、同被告が使用の対価として莫大な商標使用料を支払ってきたこと、C原告が本件各使用許諾契約の解除の通知後も「商標使用料相当損害金として商標権者Aの下記口座に送金してお支払い下さい」という通知をしていること、DEは、アザレ化粧品の製造販売において自らを有利にするために、被告インターナショナルの代表者を被告として株主代表訴訟を提起していることから、原告が本件各使用許諾契約を解除するについてやむを得ない事由がないことは明らかである。 (4)ア請求原因(4)アの主張は争う。 一般に、給付義務と区別される信義則上の付随的義務は、本来的な給付義務と無関係に恣意的に発生するものではない。仮に商標の使用許諾契約との関係で、商標使用者の商標権者に対する著しい背信行為を行ってはならない旨の付随的義務を観念するとしても、ここでいう背信行為は、商標の使用又は使用料の支払と関連するものでなければならず、商標権者が商標使用者に対して一方的に主観的かつ個人的な反発をする原因となったにすぎない事実は、背信行為には当たらない。 イ(ア)請求原因(4)イ(ア)の事実は否認する。 Kは、被告インターナショナルの取締役に就任しながら何ら建設的な提案を行わなかったことから、取締役に再任されなかったにすぎない。 (イ)請求原因(4)イ(イ)の事実は否認する。 被告インターナショナルは、同被告補助参加人らを抱き込んだことはなく、同被告補助参加人らから原告らに対して申し立てられた仮処分の実質的主体が被告インターナショナルであったことはない。 補助参加人らは、各自の利益を原告から侵害されるおそれがあったことから、自らの利益を保全するために、仮処分に及んだ。 (ウ)請求原因(4)イ(ウ)の事実は否認し、主張は争う。 (エ)請求原因(4)イ(エ)の事実は否認し、主張は争う。 (オ)請求原因(4)イ(オ)のうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していること、被告インターナショナルが、自らが販売する本件各登録商標を付した化粧品の製造者を、原告及びアザレプロダクツの承諾なくして、アザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したことは認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。 (カ)請求原因(4)イ(カ)のうち、被告インターナショナルが、平成8年4月6日、別紙商標目録21、26記載の登録商標について、同月8日、別紙商標目録15ないし20、22ないし25記載の登録商標について商標登録出願したことは認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。 ウ(ア)請求原因(4)ウの主張は争う。 請求原因(4)イ(ア)ないし(エ)の事実、(オ)のうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していること以外の事実及び主張、(カ)の事実及び主張は、いずれも、本件各登録商標の使用ないし使用料の支払とは関連しないものであり、事実関係の有無を問題とするまでもなく、本件各使用許諾契約との関係では、信義則に反する背信行為となるものではない。請求原因(4)イ(オ)のうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していることは、本件各登録商標の使用と密接に関連するが、これはアザレ化粧品の本質を実現することでありこそすれ、アザレ化粧品の本質に何ら反しないから、背信行為には当たらない。 (イ)一般に、給付義務とは区別される付随的義務に違反があっても、その付随的義務が当該契約の目的達成のために必要不可欠な意義を有するものでなければ、契約の解除は認められない。原告の主張する請求原因(4)イ(ア)ないし(カ)の事実は、いずれも本件各使用許諾契約の目的達成に不可欠な意義を有するものではないから、解除権を発生させることはない。 また、商標使用許諾契約において解除権を行使するためには、取引関係を継続し難い不信行為の存在などやむを得ない事由があることが必要であるが、 前記(3)ウ(イ)のとおり、原告が本件各使用許諾契約を解除するについてやむを得ない事由がないことは明らかである。 (5)請求原因(5)のうち、原告が、被告インターナショナルに対し、内容証明郵便をもって、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をし、同内容証明郵便が、平成12年7月18日、被告インターナショナルに到達したことは認めるが、 その意思表示が、請求原因(3)又は(4)の債務不履行に基づく解除として有効であることは争う。 (6)ア請求原因(6)アのうち、被告インターナショナルが、従前、本件各登録商標の使用料を、ワンダフルに対して支払っていたこと、原告が、被告インターナショナルに対し、本件各登録商標の使用料を、平成12年11月分から原告に直接支払うように内容証明郵便をもって催告し、同内容証明郵便が、同年10月23日、同被告に到達したこと、同被告が、原告に対し、同年11月分以降の本件各登録商標の使用料を直接支払っていないことは認めるが、これが債務不履行に当たるという主張は争う。 債務の履行場所は、第一次的には債権者と債務者の間の合意によって定まるところ、被告インターナショナルは、Bとの間で、ワンダフルを本件各登録商標の商標使用料の窓口とすることに合意したのであるから、その変更に合意しない限り、ワンダフル宛に商標使用料を支払えば足りるし、現にワンダフル宛の支払を継続している。 イ請求原因(6)イのうち、原告が、被告インターナショナルに対し、平成12年12月25日の本件口頭弁論期日において、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をしたことは認めるが、その意思表示が債務不履行に基づく解除として有効であることは争う。 原告は、本件各使用許諾契約上の地位を単独で有するものではないから、単独で本件各使用許諾契約を解除することはできない。 (7)ア請求原因(7)アのうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していることは認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。 アザレプロダクツは被告インターナショナルのOEM業者として化粧品を製造していたにすぎず、Bも化粧品の製造委託先をアザレプロダクツから被告日本コルマーに変更することを考慮していたことに鑑みれば、被告インターナショナルが、原告に対して、アザレプロダクツ以外の者に化粧品の製造を委託してはならないという義務を負っていなかったことは、明らかである。 イ請求原因(7)イのうち、原告が、被告インターナショナルに対し、平成13年6月4日の本件口頭弁論期日において、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をしたことは認めるが、その意思表示が債務不履行に基づく解除として有効であることは争う。 原告は、本件各使用許諾契約上の地位を単独で有するものではないから、単独で本件各使用許諾契約を解除することはできない。 (8)請求原因(8)のうち、被告らが、平成12年8月1日以降、本件各登録商標を付した化粧品を製造販売し、1か月当たり合計2300万円以上の利益を上げていることは認めるが、そのことが本件各商標権を侵害しているという主張は争う。 (9)請求原因(9)は争う。 (被告日本コルマー)(1)請求原因(1)の事実のうち、Bが、本件各商標権をそれぞれ別紙「Bの本件商標権取得年月日」記載の日に取得したことは認めるが、その余は不知。 (2)請求原因(2)の事実は不知。 (3)ア請求原因(3)アの事実は不知。 イ請求原因(3)イの事実は不知。 ウ請求原因(3)ウのうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していることは認めるが、被告日本コルマーが製造した化粧品により、従前アザレプロダクツが製造した化粧品を使っていた者に皮膚トラブルが多発していることから、被告日本コルマーが製造し、被告インターナショナルが販売している化粧品は、従前アザレプロダクツが製造し、被告インターナショナルが販売してきた化粧品と、同一の化粧品とはいえず、別の化粧品であること(@)、被告インターナショナルが化粧品の製造者をアザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したことにより、従前アザレプロダクツが製造したアザレ化粧品が自然派化粧品として高い評価を獲得したことによって築かれてきた本件各登録商標に対する消費者の信用が急速に失われつつあること(B)は否認し、その余の事実は不知であり、主張は争う。 被告インターナショナルが被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していることは、債務不履行に当たらない。 (4)ア請求原因(4)アの主張は争う。 イ請求原因(4)イ(ア)ないし(カ)の事実は不知であり、主張は争う。 ウ請求原因(4)ウの主張は争う。 (5)請求原因(5)の事実は不知であり、主張は争う。 (6)ア請求原因(6)アの事実は不知。 イ請求原因(6)イの事実は不知であり、主張は争う。 (7)ア請求原因(7)アのうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品に本件各登録商標を付したものを販売していることは認めるが、その余の事実は不知であり、主張は争う。 イ請求原因(7)イの事実は不知であり、主張は争う。 (8)請求原因(8)の事実は不知。 (9)請求原因(9)は争う。 3抗弁(被告ら)原告は、被告インターナショナルの乗っ取り行為を行い、それに失敗すると、本件各登録商標によって出所の表示される主体が被告インターナショナルのみであるにもかかわらず、アザレプロダクツに本件各登録商標の使用を許諾して化粧品の製造販売を行わせ、被告インターナショナルに損害を与えており、原告による本件各商標権の行使及びアザレプロダクツに対する使用許諾は権利濫用である。また、仮に原告に債務不履行による本件各使用許諾契約の解除権が発生しているとしても、その行使は権利濫用である。 4抗弁に対する認否抗弁の事実は否認し、主張は争う。 被告インターナショナルが被告日本コルマーの製造した化粧品を販売したこと、被告インターナショナル及び同被告補助参加人らが多くの訴訟等を提起したことにより、「アザレ化粧品」の信用は失墜した。 理由第1当事者間に争いのない事実1請求原因のうち、次の事実は、原告と被告インターナショナルとの間で争いがない。 (1)請求原因(1)の事実のうち、原告の夫であったBが、本件各商標権をそれぞれ別紙「Bの本件商標権取得年月日」記載の日に取得したこと、Bが、平成9年11月4日、死亡したこと(2)請求原因(3)イの事実のうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していること(3)請求原因(3)ウのうち、被告インターナショナルが、自らが販売する本件各登録商標を付した化粧品の製造者を、原告及びアザレプロダクツの承諾なくして、アザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したこと、被告インターナショナルが、アザレプロダクツに対して、別紙商標目録4、6、7記載の登録商標の使用差止めを求める仮処分を申し立てたこと(4)請求原因(4)イ(オ)のうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していること、被告インターナショナルが、自らが販売する本件各登録商標を付した化粧品の製造者を、原告及びアザレプロダクツの承諾なくして、アザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したこと(5)請求原因(4)イ(カ)のうち、被告インターナショナルが、平成8年4月6日、別紙商標目録21、26記載の登録商標について、同月8日、別紙商標目録15ないし20、22ないし25記載の登録商標について商標登録出願したこと(6)請求原因(5)のうち、原告が、被告インターナショナルに対し、内容証明郵便をもって、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をし、同内容証明郵便が、平成12年7月18日、被告インターナショナルに到達したこと(7)請求原因(6)アのうち、被告インターナショナルが、従前、本件各登録商標の使用料を、ワンダフルに対して支払っていたこと、原告が、被告インターナショナルに対し、本件各登録商標の使用料を、平成12年11月分から原告に直接支払うように内容証明郵便をもって催告し、同内容証明郵便が、同年10月23日、 同被告に到達したこと、同被告が、原告に対し、同年11月分以降の本件各登録商標の使用料を直接支払っていないこと(8)請求原因(6)イのうち、原告が、被告インターナショナルに対し、平成12年12月25日の本件口頭弁論期日において、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をしたこと(9)請求原因(7)アのうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していること(10)請求原因(7)イのうち、原告が、被告インターナショナルに対し、平成13年6月4日の本件口頭弁論期日において、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をしたこと(11)請求原因(8)のうち、被告らが、平成12年8月1日以降、本件各登録商標を付した化粧品を製造販売し、1か月当たり合計2300万円以上の利益を上げていること2請求原因のうち、次の事実は、原告と被告日本コルマーとの間で争いがない。 (1)請求原因(1)の事実のうち、Bが、本件各商標権をそれぞれ別紙「Bの本件商標権取得年月日」記載の日に取得したこと(2)請求原因(3)ウのうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していること(3)請求原因(7)アのうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品に本件各登録商標を付したものを販売していること第2事実の経過(以下、書証の枝番のすべてを含む場合は、枝番の記載を省略する。)上記第1の当事者間に争いのない事実に、証人Eの証言、原告及び被告インターナショナル代表者各本人尋問の結果及び後掲各書証並びに弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。 1アザレ化粧品の販売に至る経緯(1)Bは、昭和40年ころ、東京都葛飾区に所在したヴァロー化粧品という化粧品会社に専務取締役として勤務しており、被告インターナショナル代表者も、夫と共に同社に勤務していたが、そのころ、Bとヴァロー化粧品代表者の間に意見の食い違いがあったことから、Bは、福岡に事務所を新設してヴァロー化粧品を販売することとし、そのころ夫を亡くした被告インターナショナル代表者もこれに従って福岡に移り、Bの事業に従事した。 (2)ところが、「ヴァロー」という商標は、フランスの化粧品会社が既に商標を有しており、日本ではCなる人物がその商標権を有していたことから、Bは、昭和45年ころ、新たに有限会社ジュポンファーイースト(以下「ジュポン社」という。)を設立し、「ルールジュポン」という商標権を取得して、化粧品の製造販売を行うようになった。この会社の代表者はBであったが、被告インターナショナル代表者も常務取締役として、その事業に従事していた。 この時代に販売されていた化粧品に「エレガンスカラー」という水性ファンデーションがあり(写真が乙第11号証)、当時は化粧品の副作用が社会問題となっていたことから、「公害性のない化粧品」、「肌に負担をかけない」、「植物性」、「スキンケアとメイクが同時にできるワンタッチカラー」という売り文句で販売された。Bは、同商品の製造については、永田美研工業に中身の製造を、他の業者に化粧瓶や外箱の製造を委託し、ジュポン社において製品として完成させた上で、各地の業者に販売していた。 (3)ところが、中身の製造を行っていた永田美研工業が、ジュポン社とは無関係に同様の化粧品を製品化して販売するという事態が生じたため、昭和48年ころ、ジュポン社は永田美研工業との契約を解除し、化粧瓶の製造を担当していたD美術の紹介で、後にアザレプロダクツ代表者となるEが代表取締役を務める共和化粧品工業株式会社(以下「共和化粧品」という。)と新たに「製造請負契約」を締結した。 上記契約には、次のような条項が置かれていた(乙第10号証は上記契約に係る契約書の草稿である。)。 @ジュポン社は、共和化粧品にジュポンエレガンススペシャル等の製造を請け負わせるものとして、それに必要な資材の容器、化粧箱、段ボール箱はジュポン社が支給し、内容製造原料は共和化粧品が負担する。 A共和化粧品がジュポン社から供給を受けた材料は、すべてジュポン社の所有であり、共和化粧品はこれを処分したり担保に供したりしてはならない。 B共和化粧品は、ジュポン社の取引先等より問い合わせや注文があった場合は、直ちにジュポン社に連絡して、ジュポン社の指示に従いジュポン社及びジュポン社の取引先の営業権を擁護し、ジュポン商標や他のブランドの製品を理由の如何を問わずまた直接、間接にても取引することは決してできないこととする。 C共和化粧品は、ジュポン社が製造を委託したジュポンエレガンススペシャル等の3種類の製品と同一様式の水溶性ファンデーションの製造は、ジュポン社以外の業者から請け負えないこととする。 Dジュポン社は、共和化粧品以外の業者に対しては、ジュポンエレガンススペシャル等と同一様式製品の製造を委託できないこととする。 (4)しかし、昭和50年ころ、「ルールジュポン」の商標について、アメリカの化学メーカーであるデュポン社の名称と類似するのではないかが問題となり紛争が生じたこと、「ルールジュポン」商標には手違いで化粧品が指定商品とされていなかったことから、Bは、ジュポン化粧品の事業を総代理店のFに譲渡し、Bと被告インターナショナル代表者は福岡に戻った。 2アザレ化粧品の創業(1)しかし、化粧品業から身を引いたBに対しては、再び化粧品業界に戻るよう次のような要請がなされた。 ア一つは、ジュポン化粧品の元販売先からであった。従前のジュポン化粧品の事業は総代理店のFが引き継ぎ、静岡に工場を新設して製造を開始したが、トラブルが続いたため、元販売先(特に徳島のG、山口のH)から化粧品製造の再開を要請された。 イ他はEからであり、同人は、化粧品事業に対するBの卓抜した見識と才能を評価していたことから、化粧品事業の再開を要請した(甲第44号証)。 (2)そこで、Bは、当時化粧品公害が社会問題となっていたことから、ジュポン社の時代に引き続き、植物を始めとする天然原料を使用した「自然派化粧品」の理念の下に、新たに化粧品事業を興すこととしたが、そのために、本件各登録商標につき商標登録出願をし(これらの商標の登録出願はBの妻であったI名義でされたものもあるが、その後いずれの商標権もBに帰属した。)、別紙「Bの本件商標権取得年月日」記載のとおり取得した。 (3)アザレ化粧品の販売は昭和52年10月から開始されたが、当初は、「アザレインターナショナル」の商号の、後に被告インターナショナル代表者となるJを代表者とする個人企業として行われた。その後、昭和53年3月に有限会社アザレインターナショナルに法人化され、同社もいったん解散した上で、昭和57年1月に被告インターナショナルが設立されて販売を行うようになった。 被告インターナショナルの設立の際の発起人は、J(全2万株中1万株)、B(2800株)、E(2000株)らが名を連ねており、代表取締役にJ、取締役にB、Eらが就任した(乙第31号証)。 Jは、昭和52年10月に化粧品の販売を開始したときから、本件各登録商標又はそれと同様の標章を化粧品の販売に使用し、有限会社アザレインターナショナル及び被告インターナショナルは、各設立時から、それらを化粧品の販売に使用している。 (4)他方、「アザレ化粧品」の製造は、ジュポン時代に引き続いて共和化粧品が行い、「アザレインターナショナル」と共和化粧品の間で製品取引契約が締結され、被告インターナショナルが設立された後、改めて、被告インターナショナルと共和化粧品との間で同内容の「製品取引契約書」(乙第12号証)が締結された。 そこには、次の条項が置かれていた。 @被告インターナショナルは製品を完成するのに必要な外装用資材を共和化粧品に供給し、共和化粧品は製品中身の製造に必要な原料を仕入れ、加工完成して被告インターナショナルの販売機構である各県の販売指定店に被告インターナショナルの指示に基づいて送付し、納品することとする。 A被告インターナショナルは共和化粧品に対して被告インターナショナルの営業活動により設置する販売店全部の住所氏名を共和化粧品に通知し、共和化粧品はこの名簿により出荷するものとする。共和化粧品は、これにより被告インターナショナルの販売経路や販売方法等の詳細を知る立場を利用して、被告インターナショナルの経営を阻害する行為を行ってはならない。 B被告インターナショナルが共和化粧品に支払うべき製品の代価は、共和化粧品の見積書を被告インターナショナルが承認して決定するものとする。 C共和化粧品は被告インターナショナルの主たる商品であるメイクアップ料を水溶液中に保留した通称水彩カラーと称するアザレグレイスカラーと同一様式の製品を被告インターナショナル以外の第三者より受注してはならないこととする。 D被告インターナショナルは、アザレの商標を使用する製品のすべてを共和化粧品以外の第三者に発注してはならないこととする。 E共和化粧品は、被告インターナショナルの販売機構内の販売指定店等から被告インターナショナルの商品と異なる種類の製品でも受注してはならないこととする。 F製品の内容処方や成分については共和化粧品が決定して製造し、被告インターナショナルは共和化粧品の製品内容に準じてこれを販売することとする。 G被告インターナショナルの考案による容器デザインや広告文案等については被告インターナショナルの創作権を認めて、他の品種や被告インターナショナル以外の業者の製品に使用してはならないこととする。 このように、アザレ化粧品の製造については、化粧瓶や外箱は被告インターナショナルが供給し、共和化粧品は中身の製造を行った上で製品を完成させ、全国の販売店に出荷するという体制が採られていた。この体制は、後にアザレプロダクツが設立された後も引き続いて採られるが、平成9年から11年において被告インターナショナルが支払ったアザレ化粧品の製造原価のうち、アザレプロダクツに支払われた分は、35%程度であった。 (5)アザレ化粧品の販売は、全国に「本舗」と呼ばれる販売指定店を設け、 「アザレ札幌本舗」等の名称を使用して、本舗の販売員が顧客先を訪問して化粧品の使用方法等を指導するという訪問販売方式によって販売され、カタログ等には、 「アザレ製品は、正規のアドバイザーが、消費者を訪問して直接対面し、使用する製品を選んだり、使用方法を細かく指導したり、さらに再訪問して使用結果を検討して使用方法を再指導するなどのアフターサービスを行い、製品の安定性の保持や効能効果について細かいアドバイスを行い、このように製品内容に合致した訪問・直接対面販売制度でのみ販売している。」旨記載されていた。 それらの本舗の販売店契約は、すべて被告インターナショナルとの販売指定店契約としてなされている。これらの本舗の開拓は、BがJとEを同行して行った。これらの販売指定店契約書のうち、昭和53年ころのものには被告インターナショナル及び各本舗の記名(署名)押印のほか、B及び共和化粧品が立会人として記名(署名)押印しており、昭和57年から平成2年ころまでのものには、共和化粧品又はアザレプロダクツが立会人として記名押印している(甲第60号証)。本舗は、全国の都道府県ごとに、最終的には55店置かれた。 3アザレプロダクツの設立(1)アザレプロダクツは、昭和60年7月に設立された。その発起人は、共和化粧品の代表取締役でもあったE(全100株中54株)、同人の親類と思われる者3人(計38株)、被告インターナショナル代表者(2株)、B(2株)であり、Eが代表取締役となり、被告インターナショナル代表者が取締役に就任した。 (2)それまで共和化粧品は、アザレ化粧品以外の化粧品も取り扱っていたが、 アザレプロダクツは、アザレ化粧品以外の製造を行わないものとして設立された。 このように、共和化粧品とは別にアザレプロダクツが設立されるに至った理由については、Bが、ジュポン社の時代に製造者によって直接製品を製造販売されたことがあったことから、そのようなことが生じないように、専門の製造会社を設立させておくという意図の下に、Eに要請したことによるものであった。 このような事実からすれば、アザレプロダクツは、従前の共和化粧品のアザレ化粧品製造部門を分社化したものとみられる。 アザレ化粧品の化粧瓶や外箱は、前記2(4)の共和化粧品のときと同様に、 被告インターナショナルがアザレプロダクツに提供することとされていたが、被告インターナショナルがそれらの製造を発注していた取引先は、アザレ化粧品専門の企業ではなく、企業名にも「アザレ」の名は付されていなかった。 (3)アザレプロダクツの設立後、平成元年に被告インターナショナルとアザレプロダクツとの契約が改定された(甲第43号証、乙第14号証)。その契約書では、名称を「委託製造取引契約書」とし、次の定めが置かれていた。 @被告インターナショナルは製品を完成するのに必要な外装用資材を自己資金で作り、アザレプロダクツに預けてアザレプロダクツは製品中身の製造に必要な原料を仕入れ、加工完成して被告インターナショナルの販売機構である各県の販売指定店に被告インターナショナルの指示に基づいて送付し、納品することとする。 A被告インターナショナルはアザレプロダクツに対して被告インターナショナルの営業活動により設置する販売店全部の住所氏名をアザレプロダクツに通知し、アザレプロダクツはこの名簿により出荷するものとする。アザレプロダクツは、これにより被告インターナショナルの販売経路や販売方法等の詳細を知る立場を利用して、被告インターナショナルが開発した取引先と直接談合したり、アザレプロダクツが別に経営する共和化粧品と被告インターナショナルの得意先と取引したりして信頼に背き、被告インターナショナルの経営を阻害する行為を行ってはならない。 B被告インターナショナルがアザレプロダクツに支払うべき製品の代価は、アザレプロダクツの見積書を被告インターナショナルが承認して決定するものとする。 Cアザレプロダクツは、アザレの商標を使用する製品を被告インターナショナルの指示する所以外に、如何なる理由でも出荷してはならないこととする。 D被告インターナショナルは、アザレの商標を使用する化粧品の製造をアザレプロダクツ以外の下請業者に発注してはならないこととする。但し、医薬品及び医薬部外品は除外することとする。 Eアザレプロダクツは、被告インターナショナルの販売機構内の販売指定店等から被告インターナショナルの商品と異なる種類の製品でも受注してはならないこととする。 F製品の内容処方や成分については被告インターナショナルとアザレプロダクツが協議の上決定して製造することとして被告インターナショナルの承諾なく変更してはならないこととする。 G被告インターナショナルの考案による容器デザインや広告文案等については被告インターナショナルの創作権を認めて、他の品種や被告インターナショナル以外の業者の製品に使用してはならないこととする。 (4)アザレプロダクツの財務状況平成10年5月期決算におけるアザレプロダクツの決算報告書(乙第15号証)中の貸借対照表によれば、アザレプロダクツが保有する固定資産額は約590万円であり、その全額は保険積立金である。また、同損益計算書によると、売上高は約13億9189万円であるが、売上原価のうちの総仕入高もこれと同額で、 仕入割戻高が約1億0925万円あり、その分だけ売上総利益が計上されている。 他方、販管費内訳では、人件費に約5400万円程度が計上されているが、その大部分はEの役員報酬である(乙第2号証)。 なお、共和化粧品は、昭和54年に大阪府八尾市に工場を新設し、さらに昭和60年には、アザレ化粧品専用の工場を建設し、また平成元年には同工場を拡張して、アザレ化粧品の製造に当たっていた(甲第44号証)。これらの工場は共和化粧品の所有であり、アザレプロダクツは、アザレ化粧品の製造のための工場を共和化粧品から借用して使用し、アザレ化粧品の製造作業も共和化粧品の従業員が行っている。 4アザレ化粧品の売上実績と宣伝広告等(1)被告インターナショナルの設立以降の売上の推移は、別紙「売上高・営業利益・商標使用料比較一覧表」の売上高欄記載のとおりであり、平成10年度では67億円超となっている。被告インターナショナルの平成11年度の売上高は約63億円であり、同年度の申告所得は約9億6200万円であった。(乙第40号証の1、2、第41号証)(2)アザレ化粧品には、本件各登録商標が付され、そのパッケージには、「発売元」として被告インターナショナルが記載され、薬事法に基づき、「製造元」としてアザレプロダクツが記載されていた。 (3)アザレ化粧品用のパンフレットやチラシは、いずれも被告インターナショナルが作成し、同被告の名前のみが記載されているものもあれば、「全国アザレグループ」と記載されているものもあった。 (4)前記2(5)のカタログ等と同様の記載をした広告は、全国四大紙に掲載されたが、そこには、被告インターナショナルの名のみが記載されていた。雑誌広告も、被告インターナショナルの名前で掲載された。 各種ファッション雑誌の化粧品の記事で他の化粧品と並んでアザレ化粧品が取り上げられることもあったが、そこでは、アザレ化粧品は概ね植物性の自然派化粧品として紹介されており、出所としては被告インターナショナルが記載されていた。 (5)被告インターナショナルは、博多どんたく祭りへの出演、全国の販売店コンクールの開催及び毎月の「アザレリポート」の発行等による各販売店への連絡や指導を行っていた。 さらに、被告インターナショナルは、各本舗用に、同被告代表者が代表者を務める有限会社コスモから仕入れた多種類の販売促進品を配布した。 (6)このような被告インターナショナルの販売、宣伝広告により、本件各登録商標は、需要者の間で周知となった。 5アザレ化粧品の製品開発(1)化粧瓶及び外箱について前記3(2)のとおり、アザレ化粧品の化粧瓶及び外箱については被告インターナショナルがアザレプロダクツに供給することとされており、また、各種化粧瓶の意匠については、Bを創作者として意匠登録出願がされ、被告インターナショナルが意匠権を取得している。 (2)内容処方及び成分等についてア前記2(4)の被告インターナショナルと共和化粧品の間の契約、前記3(3)の被告インターナショナルとアザレプロダクツの間の契約において、共和化粧品時代は共和化粧品が処方を決めるとされていたが(前記2(4)F)、アザレプロダクツ時代は両者が協議するとされていた(前記3(3)F)。 イ被告インターナショナルの前身である有限会社アザレインターナショナルは、昭和54年12月に、財団法人日本食品分析センターにアサレグレイスカラー3の試験を依頼したことがあった。 また、被告インターナショナルは、研究所を有し、少なくとも平成4年以降は、社団法人福岡県製薬工業協会の正会員であり、平成10年には化粧品製造業許可を、平成12年には医薬部外品製造業許可をいずれも福岡県知事から受けた。被告インターナショナルでは、平成8年ころからPL法相談室を設け、全国の消費者からの苦情や相談に応じる体制をとっていた。 ウアザレ化粧品は、その発祥の経緯に鑑みれば、Bの思想とアイディアに基づいており、Bがいなければ誕生しなかった化粧品であると認められるが、他方、化粧品を製造するためには、成分の具体的な処方が必要であり、また成分処方が同一であっても具体的な製造方法によって製品の品質に差異が生じ得るものであるとも認められるから、Bが考え方を示せば、直ちに具体的な製品化ができるというものでもなかったと考えられる。このことと前記ア、イの事実を総合すれば、アザレ化粧品の基本的な使用成分やコンセプトはBが考え、平成4年ころからは被告インターナショナルの研究所においてサンプルを作成するなどもしていたが、化粧品製造技術をもってBのアイデアを現実に量産できる化粧品として具体化していったのは、アザレプロダクツであったと推認される。 (3)アザレ化粧品の種類被告インターナショナルとアザレプロダクツとが前記3(3)の委託製造取引契約を維持していた最終時点でのアザレ化粧品の商品は約38種類であり、これらのうち2種の商品は医薬部外品であるがアザレプロダクツにおいて製造し、他方、 口紅及び石けんについては、アザレプロダクツに製造設備がなかったため、平成元年以降、他社が製造を担当していた。 6商標権(1)本件各商標権は、前記2(2)のとおり、B個人が保有していた。 (2)Bは、本件各登録商標につき、それぞれ別紙「Bの本件商標権取得年月日」記載の日ころ、被告インターナショナルとの間で、Bが被告インターナショナルに対してこれらの登録商標の使用を許諾し、被告インターナショナルがB又は同人の指定する者に対して、当事者間で合意した金額の商標使用料を支払う旨の本件各使用許諾契約を締結した。商標使用料は、被告インターナショナルから、当初はBに対して、昭和57年3月以後は、Bが設立したワンダフルに対して、別紙「売上高・営業利益・商標使用料比較一覧表」の商標使用料欄記載のとおり支払われていた(甲第36号証)。ワンダフルは、Bが昭和57年3月に設立した有限会社であり、主として、被告インターナショナルから支払われる本件各登録商標の使用料を収受し、これを管理することを目的とする会社であって、Bが節税目的で設立したものと推認される。ワンダフルの設立に際し(日付はいずれも設立前の昭和57年1月5日付け)、ワンダフル(代表取締役B)とBの間の「協定書」(乙第7号証)及び被告インターナショナル(代表取締役J)とワンダフル(代表取締役B)の間の「商標使用契約書」(乙第6号証)が作成されており、前者の協定書には「甲・有限会社ワンダフルは乙・B個人所有の商標使用権の無償貸与を受けるのを条件として、乙の商標登録に関する一切の費用を負担することを認めることとする。」と記載され、後者の商標使用契約書には、「(一)甲(被告インターナショナル)は乙(ワンダフル)の商標である『アザレ』を使用することとする。」、「(三)甲は乙に対して使用料として、当該商標を使用した製品の出荷高に対して末端小売定価の2%を、支払うこととする。」等と記載されている。このように、ワンダフルが設立された後は、形式上は、Bがワンダフルにアザレ化粧品に関する商標の使用を無償で許諾し、ワンダフルから被告インターナショナルに対し同商標の再使用許諾をして、被告インターナショナルはワンダフルに商標使用料を支払うものとされており、Bは、ワンダフルから役員報酬の形で、実質的には商標使用料に当たる金員を得ていた。以上の事実からすれば、実質的にみれば、本件各商標権の商標権者であるBが被告インターナショナルに本件各登録商標の使用許諾をした上で、商標使用料の支払方法としてワンダフルに支払うこととされたものというべきである。 (3)被告インターナショナルは、平成8年4月6日、別紙商標目録21、26記載の登録商標について、同月8日、別紙商標目録15ないし20、22ないし25記載の登録商標について商標登録出願した(甲第47号証)。 7紛争の経緯(1)アBは、平成9年11月4日に死亡し、妻である原告と、Bの先妻の子である補助参加人両名が相続した。 Bの死後、アザレプロダクツ代表者のE、東京本舗(アザレコーポレーション)のK、佐賀本舗のL及び原告は、被告インターナショナル代表者が、同人が代表取締役を勤める有限会社コスモに対して不正に利益を横流ししている、被告インターナショナルはBが使用しないようにしていた薬事法表示指定成分を含む新処方をアザレプロダクツに指示してきた等と主張して、被告インターナショナルと対立するようになった(乙第26号証)。 イ平成11年2月19日、被告インターナショナルの株主総会で、Kは取締役に再任されず、E、L及び原告は、これに反発して、被告インターナショナルの取締役として再任されることを拒否した。 ウアザレプロダクツは、被告インターナショナルに対して平成11年11月4日付けの催告書を送付し、被告インターナショナルの姿勢にはBによるアザレ化粧品の理念に反するとの疑問を抱かざるを得ないとして、新商品の開発及び販売のルールを確認することなどを要求し、納得できる説明がなければ3か月の経過により前記3(3)の委託製造取引契約の解約する旨を申し入れ(乙第16号証)、被告インターナショナルも平成12年2月2日付けの内容証明郵便で同解約に同意して、両者の契約は同月5日限りで合意解除された。 (2)上記解除後の平成12年4月ころから、被告インターナショナルは、被告日本コルマーを新たな製造元として、本件各登録商標を付した化粧品の製造販売を開始した。被告日本コルマーは、化粧品受託生産会社であるコルマーラボラトリーズ社と業務提携を行っているコルマーグループの一員であり、我が国の化粧品受託生産のトップメーカーで、多くの企業に受託生産(OEM)による化粧品製品を供給している(乙第1号証)。 被告日本コルマーは、被告インターナショナルの依頼を受け、化粧品を製造し、その製造する化粧品又はその包装に、本件各登録商標を付している。 他方、アザレプロダクツも、独自に、本件各登録商標の付された化粧品の製造販売を開始した。 (3)被告インターナショナル及びアザレプロダクツは、それぞれの立場から全国の本舗に対して説明会を開催し、経過説明をした。そのため、平成12年4月から5月ころには、約18の本舗が被告インターナショナルとの間の販売指定店契約を解除し(乙第18号証)、アザレプロダクツの化粧品を取り扱うようになった。 それらの本舗が被告インターナショナルとの間の販売指定店契約を解除した理由は、Bの化粧品理念を最もよく理解しているのはアザレプロダクツであり、アザレプロダクツが製造する製品であるからアザレ化粧品の品質に何ら疑念も持つことなく安心して取引をしてきたが、被告インターナショナルがアザレプロダクツ製造の製品を供給できなくなった以上、契約は履行不能になったという点にあった。 他方、被告インターナショナルは、各本舗に対し、アザレプロダクツらはアザレ化粧品を支配しようと目論んでいたこと、アザレプロダクツ製造のままでは2001年(平成13年)4月に予定されている化粧品の全成分表示に対応できないおそれもあったこと、日本コルマーは業界でトップクラスの生産技術と生産能力を擁していること等を説明した。 (4)女性雑誌「VERY」の平成12年7月号の記事には、被告インターナショナルのアザレ化粧品の化粧水「ブランツ」が、愛用化粧水ランキング第4位と紹介されているが、そこにおいて、「ブランツ」は、被告インターナショナルの製品として記載されていた。 (5)Bは、死亡に際して全財産を妻である原告に相続させる旨の遺言を残していたため、本件各商標権は、いったんは相続により原告に承継されたものとされたが、原告は、アザレプロダクツの製造する化粧品こそがBの考えていたアザレ化粧品であるとの立場から、被告インターナショナルに対し、内容証明郵便をもって、 本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をなし、同内容証明郵便は、平成12年7月18日、被告インターナショナルに到達した(甲第23号証。もっとも被告インターナショナルはこの解除の効力を争っている。)。原告は、他方で、アザレプロダクツに対して本件各登録商標を使用して化粧品を製造販売することを許諾した。なお、原告は、Bの死後、ワンダフルの代表取締役に就任したが、ワンダフルからも、平成11年12月13日付け(書面到達後6か月の経過により商標使用契約を解約するというもの)及び平成12年2月10日付け(商標使用契約を直ちに解約するというもの)で被告インターナショナルに対し内容証明郵便を送付し、本件各登録商標の使用契約を解除するとの通知をしている(乙第17号証)。 一方、補助参加人らは、Bとその先妻であるIとの間の子であるが、原告に対する本件各商標権の遺贈を対象として、遺留分減殺請求権を行使して、共有持分移転登録請求権を被保全権利とする処分禁止の仮処分を福岡地方裁判所に申し立て(同裁判所平成11年(ヨ)第928号)、平成11年12月10日に、補助参加人らが原告のために各5000万円を供託する方法の担保を立てさせて認容する旨の決定を受け(甲第3号証の2)、さらに保全異議手続でも同仮処分決定が認可された。また、補助参加人らは、ワンダフルに対しても、被告インターナショナル以外の者に本件各登録商標等を使用させることの差止めを求めるとともに、本件各登録商標等の使用料相当額についての不当利得返還請求として、補助参加人らそれぞれに対し、毎月560万円の仮払を求める仮処分を申し立て(福岡地方裁判所平成12年(ヨ)第117号)、平成12年3月31日に認容決定を得た(甲第4号証)。 補助参加人らが原告を相手にして、遺産分割協議の無効確認や遺留分減殺請求権に基づく本件各商標権の持分移転登録請求を含む財産上の請求をした訴訟(福岡地方裁判所平成11年(ワ)第3714号)において、平成12年9月5日に言い渡された第一審判決では、原告から主張された遺留分減殺請求権行使に対する価額弁償の抗弁が認められ、原告が補助参加人らに一人当たり約2億6000万円を支払うことによって、本件各商標権を完全に保有できることとされ(甲第12号証の1)、原告はその金額をいったん供託したが、平成13年7月9日、補助参加人Xに対する供託金を取り戻し、同月13日、補助参加人Yに対する供託金を取り戻した(甲第26号証、丙第2、第3号証)。この第一審判決に対しては控訴がされ、現在控訴審が係属中である。 (6)さらに、補助参加人らは、原告、アザレプロダクツ、ワンダフル等を債務者として、次のとおり仮処分を申し立てた。 ア事件番号福岡地方裁判所平成12年(ヨ)第33号債権者補助参加人Y債務者原告、ワンダフル、M、N申立て債権者はワンダフルの持分600口を有する社員であるところ、同会社の臨時社員総会議事録及び商業登記簿によると、平成10年2月26日臨時社員総会が開催され、債務者原告を同会社の取締役に選任する旨の決議がされたとの記載及び登記、同年11月7日臨時社員総会が開催され、債務者Mを取締役に、債務者Nを監査役に、債務者原告を代表取締役に選任する旨の決議がされたとの記載及び登記が存在するが、債権者に対しては臨時社員総会開催の招集通知は一度もされておらず招集手続に著しい瑕疵が存在し、各臨時社員総会は存在しないものとして、債務者原告は取締役兼代表取締役の、債務者Mは取締役の、債務者Nは監査役の各職務を執行してはならない旨の職務執行停止、職務代行者選任などを求めた。 決定債権者に債務者らのために各50万円を供託する方法による担保を立てさせて認容(平成12年4月27日。甲第5号証)イ事件番号福岡地方裁判所平成12年(ヨ)第316号債権者補助参加人ら債務者アザレプロダクツ申立て遺留分減殺請求による本件各商標権の持分権に基づき、債務者に対して、本件各登録商標等を使用した化粧品の製造販売等の差止めを求めた。 決定却下(平成12年10月26日。甲第8号証)(7)被告インターナショナルは、本件各登録商標の使用料をワンダフルに対して支払っていたが、原告は、被告インターナショナルに対し、同使用料を、平成12年11月分から原告に直接支払うように同年10月20日付け内容証明郵便をもって催告し、同内容証明郵便は、同年10月23日、同被告に到達した(甲第24号証)。しかし、同被告は、原告に対し、同年11月分以降の本件各登録商標の使用料を直接支払っていない。 (8)被告インターナショナルは、平成12年3月13日、当庁に、アザレプロダクツを債務者として、別紙商標目録4、6、7記載の登録商標は、被告インターナショナルの商品表示として周知性及び著名性を有しているとして、不正競争防止法2条1項1号及び2号、3条に基づいて、これらの登録商標を使用した化粧品等の製造販売等の差止めを求める仮処分(当庁平成12年(ヨ)第20015号)を申し立て、当庁は、同年12月7日、その申立てを却下する旨の決定をした(甲第35号証)。これに対し、被告インターナショナルは、大阪高等裁判所に即時抗告(同高等裁判所平成13年(ラ)第20号)をしたが、同高等裁判所は、平成13年9月3日、抗告棄却の決定をした(甲第48号証)。 (9)原告は、被告インターナショナルに対し、平成12年12月25日及び平成13年6月4日の本件口頭弁論期日において、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をした。 第3被告インターナショナル及びアザレプロダクツの役割について1前記第2の認定事実からすると、従前のアザレ化粧品の製造販売体制は、@製造面では、中身の製造は被告インターナショナルとアザレプロダクツとの間で委託製造取引契約が締結され、化粧瓶及び外箱については被告インターナショナルが他社から調達してアザレプロダクツに供給しており、A販売面では、被告インターナショナルが全国の本舗と販売指定店契約を締結して、種々のパンフレットを作成したり、本舗への指導・連絡を行うなどし、併せて宣伝広告を行っており、B商標使用の面では、被告インターナショナルがBと本件各使用許諾契約を締結し、多額の使用料を支払ってきたものであって、これらの法的関係からすれば、被告インターナショナルは、アザレ化粧品の製造販売体制における中心的存在であったものというべきである。 2しかし他方、アザレプロダクツを単なる化粧品の中身の下請製造業者又はOEM製造メーカーにすぎなかったとみることもできない。 (1)まず、需要者たる消費者からすれば、昭和60年にアザレプロダクツが設立されて以降は、化粧品のパッケージには製造元としてアザレの名を冠したアザレプロダクツの名が、販売元として同じくアザレの名を冠した被告インターナショナルの名が記載されており、しかも前記第2、2(5)認定のような販売方法からすると、消費者はアザレの名の付された本舗の販売員による訪問販売を受けていたのであるから、消費者としては、商品名と同じ「アザレ」の名の付されたこれらの企業が一つのグループを形成し、そのアザレグループをもってアザレ化粧品の出所であると認識していたものと考えられ、特に被告インターナショナルとアザレプロダクツを区別していなかったと推認するのが合理的である。 前記第2、4(3)、(4)のとおり、各種の広告やカタログには、被告インターナショナルの名が記載されていることも見られるが、被告インターナショナル、 アザレプロダクツ、本舗のいずれにも「アザレ」の名が冠されている以上、広告やカタログに被告インターナショナルの記載があったからといって、上記認定は左右されない。 (2)前記第2の認定事実によれば、アザレ化粧品はいわゆる自然派化粧品として世に広く認められており、その製品理念と現実の製品の使用感の良さが世に受け入れられ、全国的販売組織の整備と相まって、売上げを飛躍的に増大させていったものというべきであるから、アザレ化粧品が周知性を獲得し、消費者からの信頼を受けるに当たっては、販売組織の整備及び指導や宣伝広告と並んで、製品内容も大きな比重を占めているというべきである。 そして、アザレ化粧品を開発するに当たっては、Bが基本的な使用成分やコンセプトを考え、平成4年ころからは被告インターナショナルの研究所においてサンプルを作成するなどもしていたが、化粧品製造技術をもってBのアイデアを現実に量産できる化粧品として具体化していったのは、アザレプロダクツであったと推認されることは前記第2、5(2)ウのとおりである。そして、化粧品の製造においては、成分内容や処方が同一であっても、製造方法によって品質に差が生じると考えられるから、共和化粧品とそこから実質的に分社化されたアザレプロダクツが、 アザレ化粧品の創始以来、一貫してその製造を行ってきたことも、アザレ化粧品の周知性獲得に当たって無視できない寄与をしてきたものというべきである。 また、前記第2、2(5)認定のようなアザレ化粧品の販売方法からすると、 その販売網(本舗)の整備も、アザレ化粧品の周知性・著名性獲得に当たって重要な要素を占めていたといえるが、前記第2、2(5)のとおり、アザレ化粧品の創始から平成2年ころまでの販売指定店契約書には共和化粧品又はアザレプロダクツが立会人として記名押印しているのであって、販売網の整備に当たっても、共和化粧品又はアザレプロダクツが、相応の寄与をしてきたことが推認される。 (3)これらの点からすれば、従前のアザレグループ内において、アザレプロダクツは、被告インターナショナルには劣るものの、創業以来の製造担当者(及びその実質的承継人)として、消費者の観点からしても、グループ内部の観点からしても、重要な地位を占めていたものというべきである。そして、このような事情があったからこそ、製造側ではアザレプロダクツのみに「アザレ」の名を冠した商号の使用が許され、少なくない本舗が被告インターナショナルとの永年の契約を解除して、新たにアザレプロダクツの製品を取り扱うようになり、本件各商標権を承継した(紛争中ではあるが)原告も、被告インターナショナルに本件各商標権の使用許諾契約を解除する通知をして、逆にアザレプロダクツに使用許諾をするに至ったものと考えられる。 (4)前記第2、3(4)のとおり、アザレプロダクツは独自の生産施設や従業員を有していないと考えられる(アザレプロダクツの決算書類からも裏付けられる。)。しかし、アザレプロダクツは、アザレ化粧品の商品パッケージに製造元として記載されているのであり、化粧品の製造業を行うについては、薬事法上、製造承認が必要である上、前記第2、4(1)に認定した売上に相当する量のアザレ化粧品の製造をアザレプロダクツは一手に行っていたのであるから、アザレプロダクツに何らの製造設備や従業員の手当てもなかったとは考え難いところである(アザレプロダクツの生産作業に従事する従業員については、共和化粧品の従業員が兼務ないし出向の形を採っていたものと推認される。)。アザレ化粧品の生産設備はアザレプロダクツではなく共和化粧品が有しており、実際のアザレ化粧品の製造も共和化粧品が行っていたものであるとしても、前記第2、3(2)のとおり、アザレプロダクツは共和化粧品からアザレ化粧品の製造部門を分社化したものであるにすぎず、被告インターナショナルも従来はアザレプロダクツをアザレ化粧品の製造元として承認していた以上、アザレプロダクツを単なるトンネル会社にすぎないとして、従前のアザレグループ内での地位を過小評価することはできない。 3このように、本件各登録商標が出所を表示する主体は、従前は、Bを中心とした、被告インターナショナル、アザレプロダクツ及び全国の本舗を包括するアザレグループとして需要者の間に認識されていたと考えられる。本件では、Bの死後、それらのうち、被告インターナショナルとアザレプロダクツが分裂し、さらに全国の本舗も被告インターナショナル側とアザレプロダクツ側に分裂して、互いに別個の化粧品を製造販売するに至ったものである。 第4本訴請求について1(1)請求原因(1)についてアBは、前記第2、6(1)のとおり本件各商標権を保有していたが、前記第2、7(1)アのとおり、平成9年11月4日、死亡した。 イ前記第2、7(5)のとおり、平成12年9月5日に言い渡された補助参加人らと原告の間の本案訴訟の第一審判決では、原告から主張された遺留分減殺請求権行使に対する価額弁償の抗弁が認められ、原告が補助参加人らに一人当たり約2億6000万円を支払うことによって、本件各商標権を完全に保有できることとされ、原告はその金額をいったん供託したが、平成13年7月9日、補助参加人Xに対する供託金を取り戻し、同月13日、補助参加人Yに対する供託金を取り戻し、 この判決に対しては控訴がされ、現在控訴審が係属中である。したがって、本件各商標権は、原告が持分4分の3、被告補助参加人らがそれぞれ持分8分の1の共有状態にあるものと認められる。 (2)請求原因(2)について前記第2、6(2)のとおり、Bは被告インターナショナルと本件各使用許諾契約を締結したものであるが、原告と補助参加人らとの間の遺産の共有状態は前記(1)イのとおりであり、本件各使用許諾契約の当事者たる地位は、原告が持分4分の3、被告補助参加人らがそれぞれ持分8分の1の共有状態にあるものと認められる。 商標使用許諾契約の当事者たる地位が共有状態にある場合、その商標使用許諾契約の解除は管理行為(民法252条)に当たり、持分の価格に従ってその過半数をもって決することができるというべきであるから、仮に債務不履行など解除の要件があるとすれば、本件各使用許諾契約の解除は、持分4分の3を有するAが決することができるというべきである。 (3)請求原因(3)(債務不履行1)についてア前記第2で認定された事実の経過及び前記第2、2(3)、4(2)に認定された本件各登録商標の使用態様に鑑みれば、本件各使用許諾契約は、Bを中心とした、被告インターナショナル、アザレプロダクツ及び全国の本舗を包括する「アザレグループ」を出所として表示するために用いる限りにおいて使用を許諾するという合意を含むものであったと認められる。 イ前記第3、3のとおり、本件各登録商標が出所を表示する主体は、従前は、上記アザレグループとして需要者の間に認識されていたと考えられ、本件では、Bの死後、それらのうち、被告インターナショナルとアザレプロダクツが分裂し、さらに全国の本舗も被告インターナショナル側とアザレプロダクツ側に分裂して、互いに別個の化粧品を製造販売するに至ったものである。 被告インターナショナルは、アザレプロダクツと同様に、従前からアザレグループを構成していた者であり、アザレグループで中心的な役割を果たしていたこと、及びアザレグループの分裂の経緯に鑑みれば、分裂によって、被告インターナショナルについて、本件各登録商標が出所を表示する主体の一員であることが否定されることはないものというべきである。そうであるとすれば、被告インターナショナルが被告日本コルマーの製造した本件各登録商標を付した化粧品を販売することは、前記アの本件各使用許諾契約に含まれる合意に反することはないものというべきである。 ウ(ア)原告は、@被告日本コルマーが製造した化粧品により、従前アザレプロダクツが製造した化粧品を使っていた者に皮膚トラブルが多発していることから、被告日本コルマーが製造し、被告インターナショナルが販売している化粧品は、従前アザレプロダクツが製造し、被告インターナショナルが販売してきた化粧品と、同一の化粧品とはいえず、別の化粧品であること、A被告インターナショナルは、自らが販売する本件各登録商標を付した化粧品の製造者を、原告及びアザレプロダクツの承諾なくして、アザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したこと、B被告インターナショナルが化粧品の製造者をアザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したことにより、従前アザレプロダクツが製造したアザレ化粧品が自然派化粧品として高い評価を獲得したことによって築かれてきた本件各登録商標に対する消費者の信用が急速に失われつつあること、C被告インターナショナルは、アザレプロダクツの製造する本件各登録商標を付した化粧品を、偽物であると宣伝していること、D被告インターナショナルが、アザレプロダクツに対して、別紙商標目録4、6、7記載の登録商標の使用差止めを求める仮処分を申し立てたことからすると、被告インターナショナルは、平成12年4月ころ、アザレグループを離脱したものであり、被告日本コルマーが製造し、被告インターナショナルが販売する化粧品は、アザレグループを出所とするものとはいえなくなった旨主張する。 (イ)甲第41号証、第49、第50号証によれば、被告日本コルマーが製造し被告インターナショナルが販売した化粧品を使用した者の中に皮膚トラブルを生じた者のあったことが認められる。しかし、甲第49号証の2及び弁論の全趣旨によれば、これらの皮膚トラブルの原因は、体調不良や気候など他の原因に起因する場合もあり、他の化粧品にも皮膚トラブルのあることが認められ、必ずしも被告インターナショナルの販売する化粧品がアザレプロダクツ製から被告日本コルマー製に変わったことが原因であるとは断定できない。また、前記第2、7(2)のとおり、被告日本コルマーは、化粧品の受託生産を広く行っている企業であることに加え、乙第1、第2号証及び弁論の全趣旨によれば、被告日本コルマーの製造に係る化粧品は、従前のアザレプロダクツの製造した化粧品とほぼ同様の内容成分を使用しており、従前のアザレプロダクツの製造した化粧品よりも石油系成分を低減させるなどの改良を加えた製品もあることが認められ、自然派化粧品として人気を集めた従前のアザレ化粧品のイメージに反するものではないと認められる。そして、アザレグループの分裂後、被告インターナショナル側に付いた各本舗によって、消費者に対して被告日本コルマー製の化粧品の販売が継続されている。これらの事実に、前記第2、7のアザレグループの分裂の経緯を合わせ考えると、前記(ア)@ないしBに関する原告の主張は、採用することができない。 甲第20ないし第22号証、第32号証によれば、被告インターナショナル又は同被告側に付いた本舗が、アザレプロダクツ側の化粧品が正規のアザレ化粧品ではなく、類似品である旨記載したちらしなどを配布したことが認められ、 また、前記第2、7(8)のとおり、被告インターナショナルは、アザレプロダクツに対して、別紙商標目録4、6、7記載の登録商標の使用差止めを求める仮処分を申し立てた。しかし、アザレグループの分裂に至る経緯、並びに分裂後、被告インターナショナルとアザレプロダクツ及びそれぞれの側に付いた本舗の間で、いずれの側もが、Bの生前のアザレグループの承継者である旨主張して厳しい対立が続いていることに鑑みれば、これらの事実は、そのような対立関係をめぐる紛争の一環というべきであり、このような事実があるからといって、それによって、被告インターナショナルがアザレグループを離脱したとはいえないし、同被告の販売する化粧品がアザレグループを出所とするものといえなくなったということはできない。したがって、前記(ア)C、Dに関する原告の主張は、採用することができない。 そして、以上に述べたところによれば、原告の主張する上記(ア)@ないしDの事実のうち当事者間に争いのない事実及び証拠によって認定される事実を併せ考えても、被告インターナショナルがアザレグループを離脱したということはできないし、被告日本コルマーが製造し被告インターナショナルが販売する化粧品がアザレグループを出所とするものといえないとも認められない。 エしたがって、請求原因(3)の債務不履行の主張は、理由がない。 (4)請求原因(4)(債務不履行2)についてア商標の使用許諾契約において、使用者が商標権者に対して著しい背信行為を行った場合、信義則違反として債務不履行とされる場合があることは否定し得ないが、本件において、著しい背信行為があったかどうかについて、以下検討する。 イ(ア)前記第2、7(1)イのとおり、平成11年2月19日、被告インターナショナルの株主総会で、Kは取締役に再任されず、E、L及び原告は、これに反発して、被告インターナショナルの取締役として再任されることを拒否したものである。その背景には、被告インターナショナル代表者を中心とするグループとアザレプロダクツ代表者であるE、K、L及び原告を中心とするグループの対立が深まっていたという事情があったことは否定し得ない。しかし、Kは、本件各登録商標の商標権者でも本件各使用許諾契約の当事者でもないし、Kを取締役に再任しないことは、被告インターナショナルの株主総会で議決されたことであるから、Kが取締役に再任されなかったことをもって、被告インターナショナルの背信行為ということはできない。 (イ)前記第2、7(5)、(6)のとおり、補助参加人らは、原告、アザレプロダクツ、ワンダフル等を債務者として、原告主張の仮処分(福岡地方裁判所平成11年(ヨ)第928号、平成12年(ヨ)第117号、同年(ヨ)第33号、同年(ヨ)第316号)を申し立てた。しかし、補助参加人らは、原告に対して遺留分減殺請求権を有しており、また、補助参加人Yがワンダフルの社員であることからすれば、これらの仮処分は、補助参加人らがその利益を守るために申し立てたものと認められ、かつ、これらの行為は、本件各使用許諾契約上の義務やアザレ化粧品の信用性等には関わりのない事柄であるから、これらの仮処分の申立てをもって、被告インターナショナルの背信行為と認めることはできない。また、甲第64号証によれば、被告インターナショナル代表者が代表者を務める有限会社コスモと補助参加人らとの間で、遺留分減殺請求権の行使やワンダフルにおける社員としての権利行使に必要な費用等を有限会社コスモが立て替える契約が締結されたことが認められるが、補助参加人らがその利益を守るために上記のような仮処分申立てをする理由があるのであるから、そのことを援助するような行為を被告インターナショナル代表者がすることをもって、背信行為に当たるとすることはできない。 また、被告インターナショナルがアザレプロダクツを債務者として申し立てた仮処分(当庁平成12年(ヨ)第20015号)は、本件各商標権の持分を有する原告を債務者とするものではないし、アザレグループが被告インターナショナル側とアザレプロダクツ側に分裂した後、双方の対立関係をめぐる紛争の一環として申し立てられたものであることからすれば、これをもって、被告インターナショナルの著しい背信行為ということはできない。 (ウ)甲第13ないし第18号証によれば、アザレグループの分裂後被告インターナショナル側に付いた本舗が配布した文書の中には、アザレ化粧品の商標を被告インターナショナル側だけが使用することができるとも受け取り得る記載があったことが認められ、また、甲第20ないし第22号証、第32号証によれば、 被告インターナショナル又は同被告側に付いた本舗が、アザレプロダクツ側の化粧品が正規のアザレ化粧品ではなく類似品である旨記載したちらしなどを配布したことが認められる。 しかし、前記第2、7(5)のとおり、補助参加人らは、原告に対する本件各商標権の遺贈を対象として遺留分減殺請求権を行使し、共有持分移転登録請求権を被保全権利とする処分禁止の仮処分を福岡地方裁判所に申し立て(同裁判所平成11年(ヨ)第928号)、平成11年12月10日に、補助参加人らが原告のために各5000万円を供託する方法の担保を立てさせて認容する旨の決定を受けたものであり(甲第3号証の2)、同決定は、原告に対し、本件各商標権等について被告インターナショナルを除き、譲渡、質権、専用使用権の設定、通常使用権の許諾その他一切の処分をしてはならない旨を命ずるものであった。そして、保全異議手続でも同仮処分決定が認可され、さらに、同仮処分決定に基づく不作為義務について間接強制を命ずる認容決定がされ(平成12年10月2日。福岡地方裁判所平成12年(ヲ)第348号。甲第9号証の3。)、同認容決定に基づき、原告が禁止事項に違反したとして違反金の支払の執行を求める執行文付与の訴えは、控訴審において、アザレプロダクツが原告の許諾を受けて本件各登録商標を使用していることが前記間接強制認容決定に違反すると判断されて、請求が認容された(平成14年10月1日。福岡高等裁判所平成13年(ネ)第972号。乙第52号証)。これらの事実に鑑みると、被告インターナショナル側の配布した文書の中に、アザレ化粧品の商標を被告インターナショナル側だけが使用することができるとも受け取り得る記載があったとしても、それは全く根拠を欠くものとはいえない。また、アザレグループの分裂に至る経緯、並びに分裂後、被告インターナショナルとアザレプロダクツ及びそれぞれの側に付いた本舗の間で厳しい対立が続いていることに鑑みれば、前記認定の事実は、そのような対立関係をめぐる紛争の一環というべきであり、このような事実をもって、一方的に被告インターナショナルの背信行為とするのは相当でない。 (エ)前記第2、7のアザレグループの分裂の経緯に鑑みれば、被告インターナショナルが化粧品の製造者を原告及びアザレプロダクツの承諾なくしてアザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したことをもって、被告インターナショナルの著しい背信行為ということはできない。 (オ)前記第2、6(3)のとおり、被告インターナショナルは、別紙商標目録15ないし26記載の登録商標について商標登録出願し、これらは商標登録された。 これらの商標は、被告インターナショナルやアザレプロダクツが製造販売していた化粧品とは異なる商品の区分、指定商品のものであって、被告インターナショナルがアザレグループにおいて重要な位置を占めており、各本舗に対して多種類の販売促進品の配布なども行っていたことに鑑みれば、これらの商標を被告インターナショナルが出願したとしても、その事実をもって、被告インターナショナルの著しい背信行為ということはできない。 (カ)そして、以上に述べたところによれば、原告の主張する請求原因(4)イ(ア)ないし(カ)の事実のうち当事者間に争いのない事実及び証拠によって認定される事実を併せ考えても、それらの事実をもって、被告インターナショナルの原告に対する著しい背信行為ということはできない。 ウしたがって、請求原因(4)の債務不履行の主張は、理由がない。 (5)前記(3)エ、(4)ウのとおり、請求原因(3)、(4)の債務不履行の主張は、いずれも理由がないから、請求原因(5)の解除の意思表示は、解除の効力を生じないというべきである。 (6)ア被告インターナショナルは、前記第2、6(2)のとおり、昭和57年3月以降、商標使用料をワンダフルに支払っていたものであるところ、第2、7(7)のとおり、原告は、被告インターナショナルに対し、商標使用料を、平成12年11月分から原告に直接支払うように同年10月20日付け内容証明郵便をもって催告したものである。 しかしながら、前記第2、6(2)のとおり、ワンダフルが設立された後は、形式上は、Bはワンダフルに対して本件各登録商標の使用許諾をし、ワンダフルが被告インターナショナルに対して再使用許諾をして商標使用料を収受してきたものであるから、原告が個人の立場で、商標使用料をワンダフルではなく原告に直接支払うよう被告インターナショナルに対し求める権限はない。しかも、原告は、 前記第2、7(6)のとおり、平成12年4月27日の福岡地方裁判所の仮処分決定により、ワンダフルの取締役兼代表取締役の職務の執行を停止されていたのであるから、ワンダフルの代表者の立場で上記のような支払方法の変更を求めることはできず、原告の行動は上記仮処分決定を潜脱するものにほかならない。なお、実質的にみれば、本件各使用許諾契約は、商標権者であったBと被告インターナショナルの間で締結されたものであり、商標使用料の支払方法として、被告インターナショナルがワンダフルに支払うこととされてきたものであるが、この観点からみても、支払方法の変更は、使用許諾契約の当事者の合意によって決められるべきであり、一方当事者の意思表示によって直ちに変更できるところではないと考えられる。また、本件各使用許諾契約において、商標権者のみの意思表示によって支払先を指定することができるという合意があったとしても、前記第4、1(2)のとおり、本件各使用許諾契約の当事者たる地位は、原告に4分の3、補助参加人らに各8分の1の持分割合により帰属していると認められ、このような状況の下で、商標使用料の支払先を、原告と補助参加人Yが社員であるワンダフルから、共有者の一人にとどまる原告に変更することは、商標使用料を共有者の一人が独占し、他の共有者が収受し得ないことにもつながりかねず、本件各使用許諾契約の当事者たる地位に重大な影響を与え、その地位に変更を加える行為(民法251条)に当たり、 共有者全員の合意がない限り行い得ない行為というべきである。 以上によれば、いずれにしても、原告が、補助参加人らの合意を得ることなく、被告インターナショナルに対して、本件各登録商標の使用料を平成12年11月分から原告に直接支払うように催告したとしても、それによって本件各登録商標の使用料の支払先が変更されることはなく、被告インターナショナルには、本件各登録商標の使用料全額を原告に直接支払う義務は生じないというべきである。 したがって、被告インターナショナルが原告に対し、平成12年11月分以降の商標使用料を直接支払わなかったとしても、本件各使用許諾契約に違反することはなく、請求原因(6)アの債務不履行の主張は理由がない。 イしたがって、請求原因(6)イの解除の意思表示は、解除の効力を生じないというべきである。 (7)アアザレ化粧品の創設から本件各使用許諾契約の締結、アザレプロダクツの設立に至る経緯に鑑みれば、本件各使用許諾契約は、アザレグループの存在を前提として、アザレグループに属さない者に化粧品の製造を委託してはならないという合意、又はアザレグループに属する者が製造する化粧品についてのみ本件各登録商標の使用を許諾するという合意を含むものであったと認めるのが相当である。 しかるところ、被告インターナショナルが、アザレプロダクツと同様に、従前からアザレグループを構成していた者であり、アザレグループで中心的な役割を果たしていたこと、アザレグループの分裂の経緯、そして、前記(3)ウ(イ)のとおり、被告インターナショナルが被告日本コルマーに製造を委託している化粧品が、自然派化粧品のイメージに反するものでないことに鑑みれば、分裂後、被告インターナショナルが、自らが販売する化粧品の製造をアザレプロダクツではなく被告日本コルマーに委託し、その化粧品を販売したとしても、上記合意に反することはないというべきである。 したがって、請求原因(7)アの債務不履行の主張は、理由がない。 イしたがって、請求原因(7)イの解除の意思表示は、解除の効力を生じないというべきである。 2よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の本訴請求はいずれも理由がないから、これを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条、66条を適用して、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部裁判長裁判官小松一雄裁判官中平健裁判官田中秀幸商標目録(商標目録1ないし8、10ないし12、15ないし26)(商標目録9、13、14は欠番)商標目録1商標目録2商標目録3商標目録4商標目録5商標目録6商標目録7商標目録8商標目録10商標目録11商標目録12商標目録15商標目録16商標目録17商標目録18商標目録19商標目録20商標目録21商標目録22商標目録23商標目録24商標目録25商標目録26Bの本件商標権取得年月日商標目録1の商標権平成4年2月28日同2の商標権昭和58年1月28日同3の商標権昭和61年9月29日同4の商標権平成9年3月12日同5の商標権昭和52年5月12日同6の商標権平成9年5月16日同7の商標権平成9年5月16日同8の商標権平成9年5月16日同10の商標権昭和62年8月19日同11の商標権平成9年10月3日同12の商標権平成9年10月3日 |