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事件 平成 16年 (ワ) 12489号 商標権侵害差止等請求事件
原告株式会社ビジョンメガネ
訴訟代理人弁護士 松村信夫佐古祐二塩田千恵子鬼追明夫
訴訟代理人弁理士 岡田全啓
被告株式会社日本オプティカル
訴訟代理人弁護士 川村和夫積木潤
補佐人弁理士 下出隆史石川崇朗
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2005/10/27
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は,眼鏡,コンタクトレンズ及びこれに付属する商品につき,別紙各被告標章目録記載の各標章を使用してはならない。
2 被告は,別紙各被告標章目録記載の各標章を付したカタログ及びパンフレットを展示し,頒布し,又はこれらを内容とする情報に別紙各被告標章目録記載の各標章を付して電磁的方法による提供をしてはならない。
3 被告は,その営業上の施設又は活動に別紙各被告標章目録記載の各標章を使用してはならない。
4 被告は,その所有に係る看板,広告,インターネットのホームページその他の物件から別紙各被告標章目録記載の各標章を抹消せよ。
5 被告は,別紙各被告標章目録記載の各標章を付したカタログ及びパンフレットを廃棄せよ。
6 被告は,原告に対して,9900万円及びこれに対する平成16年11月17日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,眼鏡等の小売業を営み,後記商標権を有する原告が,後記各標章を被告が開設した店舗の看板等に使用する等している被告に対し, (1) 被告の後記各標章は原告の有する同商標権に係る登録商標に類似し,その使用は商標法2条3項各号所定の登録商標の「使用」に該当し,上記商標権を侵害する, (2) 被告の後記各標章の使用行為等が原告の著名又は周知な商品等表示である@ビジョンメガネ,Aビジョン,BVISION OPTIC,CVISION OPT,DVISION(これら五つの商品等表示を併せて,以下「原告商品等表示」という。)と同一若しくは類似の商品等表示の使用に該当し,原告の商品ないし営業との混同を生じさせる不正競争防止法2条1項1号又は2号の不正競争行為に当たる と主張して,商標法36条又は不正競争防止法3条に基づき,被告の後記各標章の使用の差止め等を求めるとともに,民法709条又は不正競争防止法4条に基づき,商標権侵害ないし営業上の利益を害されたことによる損害賠償(訴状送達の日の翌日以降の遅延損害金を含む。)を請求している事案である。
1 当事者間に争いのない事実等(末尾に証拠の掲記のない事実は当事者間に争いがない。) (1) 当事者 ア 原告 原告は,昭和51年の創業以来メガネ,コンタクトレンズ及び上記商品の付属品(以下「メガネ,コンタクトレンズ等」という)の小売販売を行い,昭和54年に株式会社となり,以来,全国30余の都府県に直営店259店舗,フランチャイズチェーン店10店舗の269店舗を展開している(平成16年8月現在。
甲10,11,弁論の全趣旨)。
イ 被告 被告は,平成4年に設立された,メガネ,コンタクトレンズ等の小売販売を業とする株式会社である。
(2) 原告の有する商標権(以下の4つの商標権を併せて「本件商標権」といい,その登録商標を併せて「原告商標」という。) ア 原告は,下記の商標権(以下「第1商標権」といい,その登録商標を「原告商標1」という。)を有する。
@ 登録番号 第4147869号 A 登録日 平成10年5月22日 B 商品区分及び指定商品 第9類 コンタクトレンズ,サングラス,水中マスク,水中眼鏡,鼻眼鏡,普通眼鏡,防じん眼鏡,コンタクトレンズ用容器,つる,鼻眼鏡のマウント,鼻眼鏡用鎖,鼻眼鏡用ひも,眼鏡ケース,眼鏡ふき,レンズ,枠,紫外線透過ガラス,赤外線吸収ガラス,レンズ用ガラス C 登録商標 「VISION」(別紙原告商標目録1記載のとおり) イ 原告は下記の商標権(以下「第2商標権」といい,その登録商標を「原告商標2」という。)を有する。
@ 登録番号 第4147868号 A 登録日 平成10年5月22日 B 商品区分及び指定商品 上記アに同じ C 登録商標 「ビジョン」(別紙原告商標目録2記載のとおり) ウ 原告は下記の商標権(以下「第3商標権」といい,その登録商標を「原告商標3」という。)を有する。
@ 登録番号 第4217994号 A 登録日 平成10年12月4日 B 役務の区分及び指定役務 第42類 視力の測定,視力の検査,視力回復 他 C 登録商標 「VISION」(別紙原告商標目録1記載のとおり) エ 原告は下記の商標権(以下「第4商標権」といい,その登録商標を「原告商標4」という。)を有する。
@ 登録番号 第4217993号 A 登録日 平成10年12月4日 B 役務の区分及び指定役務 上記ウに同じ C 登録商標 「ビジョン」(別紙原告商標目録2記載のとおり) (3) 原告の商品等表示 原告は,その経営する店舗において,「VISION」,「VISION OPTIC」,「VISION OPT」,「ビジョンメガネ」なる表示をした看板,その他の営業表示を使用するほか,その店舗内において「VISION」,「VISION OPTIC」,「VISION OPT」等を店内の吊り広告,商品の価格表示や購入したメガネ,コンタクトレンズ等を包装する手提げ袋等に表示し,もって,商品表示としても使用している。
(4) 被告の行為 ア 被告は,平成16年2月21日,大阪府高槻市において,眼鏡,コンタクトレンズ等の販売及びこれに付随して視力の測定等の業務を行う店舗(以下「被告店舗」という。)を開設した。被告は,被告店舗内及び付属施設において,眼鏡,コンタクトレンズの調整のため,視力の測定,視力検査,視力回復等の役務を提供している(甲27,28)。
イ 被告は,平成16年2月以降,被告店舗入口の看板,立て看板,電飾看板,駅看板に,別紙被告標章目録1(A)の標章(以下「被告標章1(A)」という。)を使用し,眼鏡,コンタクトレンズ等の宣伝,広告のためのチラシ,パンフレット,ホームページに被告標章1(A),及び別紙被告標章目録2(A)目録の標章(以下「被告標章2(A)」という。)を使用していた。その使用開始日及び使用終了日は,別紙「被告標章使用状況」のとおりであり,遅くとも平成16年12月11日までには,被告標章1(A)及び2(A)の標章の使用を中止している(弁論の全趣旨)。
ウ 被告は,被告商標1(A)の標章に関して,平成16年3月24日に国際分類9類「眼鏡,眼鏡の部品,コンタクトレンズ,眼鏡,コンタクトレンズの付属品」を指定商品とし,国際分類44類「視力の測定,視力の検査,眼鏡・コンタクトレンズの装用に関する指導,視力に関する相談・カウンセリング」を指定役務として各々商標登録出願を行い,さらに,別紙被告商標目録1(B)の標章(以下「被告標章1(B)」という。)及び別紙被告標章目録2(B)の標章(以下「被告標章2(B)」という。)についても,前同日に上記商品及び役務を指定して,商標登録出願を行ったところ,平成17年2月18日付けで商標登録された(乙10ないし12)。
なお,被告は,被告標章1(B)については,若干字体は異なるものの,平成16年9月21日時点で,被告店舗を紹介するホームページにおいて使用していた(甲28。以下,被告標章1(A)と同1(B)を総称する場合には「被告標章1」といい,被告標章2(A)と同2(B)を総称する場合には「被告標章2」といい,被告標章全てを総称する場合には「被告標章」という。)。
2 争点 (1) 商標権に基づく請求について ア 被告標章は商標として使用されているものであるか。
イ 被告標章は原告商標に類似するか。
(2) 不正競争防止法に基づく請求について ア 被告標章は被告の「商品等表示」として使用されているか。
イ 原告商品等表示は不正競争防止法2条1項1号,2号の周知・著名性を取得したか。
ウ 被告標章は原告商品等表示と類似し原告表示との混同のおそれがあるか。
(3) 原告の被った損害額について
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)ア(商標的使用の有無)について 【原告の主張】 (1) 被告が被告標章1(A)及び同2(A)を被告店舗入口の看板,立て看板,電飾看板等に使用し,あるいは上記各被告標章を付して眼鏡,コンタクトレンズ等のチラシ,パンフレット等を展示又は頒布する行為は,商標法2条3項1号若しくは8号の「使用」に該当し,被告商品又はその広告等を掲載したインターネットのホームページ上に被告標章を表示する行為は,同法2条3項2号若しくは8号の「使用」に該当する。
また,被告が被告標章1(A)及び同2(A)を,視力の測定,検査等の役務の提供に当たり,その検査等に使用する物や,検査等の際に顧客に提供され又はその利用に供する物等に使用する行為は,同法2条3項3号ないし6号の「使用」に該当し,また同標章を係る役務の広告宣伝に使用する行為は同項8号の「使用」に該当する。
なお,被告が今後被告標章1(B)(ただし,同被告標章と若干字体が異なっている標章がホームページ上で使用されている。)及び同2(B)を上記のような方法で使用すれば,上記各法条の「使用」に該当する。
(2) 被告は,被告店舗は被告の開設した複数の店舗が集合した複合型店舗であって,被告標章の命名の経緯からして,被告標章が単に「多数の店舗が集合している場所」という場所的概念としての意味を持つにすぎず,およそ特定の商品,役務の出所を識別する機能を果たしていないから,商標としての「使用」には当たらない旨主張する。
しかし,被告の営業形態は,従来から存在する他の店舗と何ら異ならないものであり,いわゆる複合型店舗とはいえないから,これを前提とする被告の上記主張は失当である。
すなわち,被告は,購買者層の年齢,性別等に合わせた「コンセプトショップ」を1つの場所に集めて開設したものであるとするが,被告店舗は,被告のいうところの「コンセプトショップ」ごとに明確に壁や天井まで続くパーテーションで区切られたものではなく,1つのオープンスペースである。また,会計の決済場所も被告のいうところの「コンセプトショップ」内それぞれには存在せず,全体としての被告店舗内に1つあるにすぎない。さらに,どの「コンセプトショップ」で購入したとしても同じ被告標章「ビジョンスクエア」が表示された領収証(甲29),会員カード(甲30)を受け取ることになる。加えて,店員も各「コンセプトショップ」内に独立した店員が存在するわけではなく,被告店舗内を行き交っている状況にある。
このような営業実態からすれば,被告のいうところの「コンセプトショップ」は,取引主体としての独立性を有するものではない。被告の営業形態は,単に,例えば,若い女性向け,若い男性向け,中年男性向けの商品等その購買者層の特性に応じてディスプレイの場所,売り場を分けたにすぎず,従来のメガネ,コンタクトショップが行っている一般的営業形態と何ら異ならない。
このことは,被告のホームページ上で,被告自身が「VISION SQUAREは株式会社日本オプティカルのお店です。」(甲28,乙7)との記載をし,被告店舗内の看板や壁に「VISION SQUARE」と大きな表示を掲げ(乙1,2の1,3の1,4の1及び2,5の1,6の1),被告のいうところの「コンセプトショップ」は被告の営業の一部である売り場として表示しているにすぎない(乙1,7)。このような被告の広告の使用態様からすれば,被告標章が,単なる場所の表示ではなく,独立的取引主体としての被告の業務に係るものであることを表示していることは明らかである。
上記のような外観を総合的に評価する限り,少なくとも需要者(一般消費者)は,それぞれの販売スペース(コンセプトショップ)がそれぞれ独立した営業主体によって商品の販売若しくは役務の提供を行っていると認識することはできないのであり,被告標章が上記のような独立した店舗群が集合した複合的店舗スペースを表す「場所的表示」であるという被告の主張は失当である。
(3) 仮に,被告店舗が複合型店舗であるとしても,いずれも被告が開設しているものであり,独立的取引主体は被告であることから,被告標章が,単なる場所の表示ではなく,独立的取引主体としての被告の業務に係るものであることを表示しているという結論は異ならない。
また,仮に,「VISION SQUARE」(被告標章1(A))が場所的概念という側面を有しているからといって直ちに商標としての「使用」に当たらないとはいえない。なぜなら,場所的概念を有する標章であっても独立的取引主体を示す出所表示機能をも有し得るからである。「VISION SQUARE」について,被告は,原告の指摘を受けて甲第28号証の表記に変更する前のホームページ(甲31)において,「VISION広場」「About VISION」と記載していたことからすると,被告は,元来,「VISION SQUARE」を「VISION広場」という観念を有するものとして使用しており,また,「About」は「・・・について」という意味であるから,「VISIONについて」というコンテンツを掲げていると理解することができる。かかる標章の使用の場合,仮に「VISION SQUARE」が場所的概念としての意味を有していたとしても,同時に,同標章を自己の商品若しくは営業の出所を表示する自他商品識別標識としても使用しており,商標としての「使用」に当たるというべきである。
(4) 衣料雑貨店や家電専門店等,限定された分野の商品しか扱わない小売店の店舗に関しては,チラシ等の店舗名や店舗の看板に付した標章は,その小売店が扱う主力商品に関しても使用されていると評価すべきであり,商品や役務を販売,提供する店舗名や店舗の看板に標章を用いる行為は商標権侵害に該当するとされている。本件においても,コンタクトレンズ,眼鏡といった限定された分野の商品しか扱わず,また,視力の検査等限定された役務しか行わない小売店である被告店舗において,被告標章は,まさにホームページ,チラシ等の広告媒体における店舗名,店舗の看板に付されている。したがって,被告が被告標章を店舗名や店舗の看板に用いる行為は,商標の「使用」に該当することは明らかである。
(5) 仮に,被告標章のうち,被告店舗の入口や看板に表示されている「VISION SQUARE」(被告標章1(A))が,被告店舗等の場所若しくは営業を示す表示として使用されているとしても,同標章の使用態様の全てが常に商標(商品商標)の使用に該当しないというわけではない。前記のように,顧客がメガネ,コンタクトレンズ等の商品購入の際に使用している顧客カードや上記商品の広告宣伝のために作成されたパンフレットやホームページに被告標章を使用する行為は,少なくとも当該商品に関する「広告」,「取引書類」,「これらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(同法2条1項8号)に該当することは明らかである。
さらに,被告店舗の入口や看板に表示されている「VISION SQUARE」(被告標章1(A))も,当該店舗の営業とともに同店舗で販売する商品の出所表示機能はもとより,品質保証機能及び宣伝,広告宣伝機能を営んでいるのである。
【被告の主張】 (1)ア 被告は,近時,眼鏡,コンタクトレンズが単なる視力矯正のための道具としての役割を超えてファッションの一部としても利用されていることに着目し,購買者層の年齢・性別・感性・ライフスタイル等に合わせたコンセプトショップを開設しようと,複合型店舗である被告店舗の開設以前より,そのコンセプト別に「OOPS(ウップス)」,「BLACK is BLACK(ブラックイズブラック)」,「Ans(アンス)」,「B♭(ビーフラット)」,「Flap(フラップ)」 なる店舗を開設し,それぞれ経営していた。そして,被告は,この店舗経営の延長として,これらの多様なコンセプトショップを集合させ1つの場所に開設することにより,購買者に多様な選択肢を用意し,そのあらゆるニーズに応えることのできる,いわゆる複合型店舗である被告店舗を開設する計画を持つに至った。
イ 従来,眼鏡,コンタクトレンズに関し,このような多店舗が集合した複合型店舗という斬新なビジネスモデルは存在していなかったため,被告は,この複合型店舗である被告店舗の呼称について,斬新なビジネスモデルに相応しい名称,すなわち,そこへ行けば多種多様なニーズに応える眼鏡,コンタクトレンズが店舗別に提供されていることが直ちに理解される名称を,との観点から検討を重ねた。
その結果,被告は,「VISION」と「SQUARE」とからなる造語として「VISION SQUARE」を創出し,命名した。すなわち,眼鏡,コンタクト等の基本性能に関連する「視力」「視覚」等の意味を持つ「VISION」と,場所的な概念である「広場」を意味する「SQUARE」を合体させることにより,「VISION SQUARE」という名称に「眼鏡,コンタクトレンズを提供する者とこれを求める者とが出会う広場」というイメージを持たせたのである。具体的には,「VISION SQUARE」「ビジョンスクエア」は「眼鏡,コンタクトレンズに関し様々なコンセプトを持つ多数の店舗が集合している場所」という場所的概念としての意味を持つ。
なお,「ビジョンスクエア」は,この「VISION SQUARE」の片仮名表記である。
ウ 被告店舗内の各コンセプトショップは,それぞれ他地域において独立の店舗として存在し,それぞれの店舗の商品の購入を期待する客層に応じて,取扱商品,壁面の色彩,什器,商品陳列棚等,各コンセプトショップごとに全く異なるものを採用している。
そして,被告店舗内の各コンセプトショップは,取扱商品,壁面の色彩,什器,商品陳列棚等について,これらの既に存在する各コンセプトショップと同じものや同じイメージを持つものを採用している。
すなわち,被告店舗内の各コンセプトショップは,外観上全く異なるものとしてそれぞれ存在するのである。
(2) 被告標章の使用態様は,商標法37条1号ないし6号,2条3項にいう「使用」には該当しない。
ア 商標法の目的は,その出所の混同を抑止するところにあるから,問題とされた標章の使用態様が自他商品,役務の識別表示として機能しない使用態様である場合には,出所の混同を生じず,同法2条3項にいう「使用」には当たらないと解すべきである。
イ 前記のように,「VISION SQUARE」「ビジョンスクエア」は,「眼鏡,コンタクトレンズに関し様々なコンセプトを持つ多数の店舗が集合している場所」を示す場所的概念として機能していたのであって,およそ特定の商品,役務の出所を識別する機能を果たしていないのであるから,商標としての「使用」には当たらない。
(3) 原告は,被告店舗内の各店舗間のパーテーションの一部が天井にまで達していないことや,会計の決済場所が1つであること等を理由に被告店舗内の各店舗の営業形態に独立性は認められず,上記のような外観を総合的に評価する限り,少なくとも需要者(一般消費者)は,それぞれの販売スペースがそれぞれ独立した営業主体によって商品の販売若しくは役務の提供を行っていると認識することはできないのであり,被告標章が上記のような独立した店舗群が集合した複合的店舗スペースを表す「場所的表示」であるとはいえないと主張する。
しかし,被告店舗内の各店舗間のパーテーションの一部が天井にまで達していないことについては,パーテーションを天井まで作ると消防法の規制により新たな防火設備を作る必要が生じるのでそのようにしているにすぎない。また,会計の決済場所が被告店舗内に1か所であることについても,被告店舗を設計するに当たり,空間の合理的な利用という観点からこれを1つにすることとしたものである。
被告店舗内の各店舗間のパーテーションの一部が天井にまで達していないことや各コンセプトショップごとに会計場所を設けていないことは,各店舗の独立性に影響を与えるものではない(例えば,百貨店内における各ブランドスペース)。また,独立した店舗として需要者等に認識されるか否かにとって最も重要なのは,取扱商品,店舗の内装,外観(店名,ロゴを含む)であり,原告の指摘はその他の点も含めて各コンセプトショップの独立性に影響を及ぼすようなものではない。また,被告標章の使用が商標としての「使用」かどうかは法律問題であり,需要者(一般消費者)の認識によって判断される性質の事柄ではない。
2 争点(1)イ(被告標章の原告商標との類否)について 【原告の主張】 (1) 商標の類否判断の一般的基準 商標の類否は,同一又は類似の商品に使用された商標が外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,かつ,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである(最判平成9年3月11日民集51巻3号1055頁。「小僧寿し」事件)。
したがって,単に字体や字の大きさといった形式的な面,標章を有する者の主観的に意図する観念を重視して類似性を判断すべきではなく,メガネ,コンタクトレンズの小売の具体的取引における,本件各商標の周知・著名性も踏まえた上での取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,判断すべきである。
また,商標の類否観察の方法として,特に標章が結合標章である場合は,商標の出所識別機能を有する部分である要部を抽出し,その部分から外観,称呼,観念を引き出して比較することになる(要部観察)。その際は,取引者,需要者に対して出所識別機能を有する部分がどの部分に当たるかについて,標章の周知・著名性や,標章が一般的,普遍的な文字であるか,付加的な文字であるか等を考慮して判断すべきである。
(2) 原告商標の周知・著名性 原告の商号,商号商標である「株式会社ビジョンメガネ」,「ビジョンメガネ」の要部及び略称である「VISION」「ビジョン」は,次のとおり,我が国においては,原告の営業又は商品の出所表示として既にメガネ,コンタクトレンズ等の取引者,需要者の間において周知又は著名となったものであり,強い顧客吸引力がある。このことは,被告標章との類否判断において考慮されるべきである。
ア 原告は,「VISION」,「ビジョンメガネ」,「VISION OPTIC」,「VISION OPT」等の表示につき,後記4(原告の商品等表示の周知・著名性)で主張するとおり,テレビ,ラジオや,新聞,折込みチラシ等様々な宣伝媒体を通して,強力な広告宣伝を長年にわたって行ってきている。
イ 例えば,原告は,被告標章が使用される以前から,長年にわたって「good eye comunication ビジョンメガネ」,「探さなきゃみつからないあなたの眼鏡」という独特の節を付けて,「ビジョンメガネ」という大きな標章が表示されるテレビコマーシャルを繰り返し流している(甲36ないし47)。かかるコマーシャルは,その独特の節の音響効果とあいまって,需要者に強い印象を与え,その記憶に定着させ,眼鏡,コンタクトレンズに関して「ビジョン」と言えば,原告の店舗であるとの連想を生じさせるものである。
また,原告は,FNNのニュースフラッシュというニュース番組において,「ビジョンメガネ」という標章を付し,ニュース提供のコマーシャルも行っている(甲48,49)。これにより,幅広い需要者層にその宣伝効果が浸透しているといえる。
さらに,平成16年7月25日のテレビ大阪の「エスタブリッシュメント ジャパン」という番組や,平成4年2月22日のテレビ大阪の「関西のジャンプ企業」という番組において原告が紹介され,原告の社長がインタビューされる等している(甲50,51,59,60)。かかるテレビ番組における原告の紹介は,原告の知名度を高め,「ビジョンメガネ」の名を関西における取引業者,需要者において知れ渡る状況にさせるものである。
加えて,平成7年には,阪神淡路大震災に際して,原告が被災地で1万本の老眼鏡を無料で提供したボランティア活動は,NHKをはじめ各テレビ局で一斉に報道され(甲26),それまでも全国的に周知・著名であった「ビジョンメガネ」は,テレビの映像を通して,全国の視聴者に一気に強く印象付けられることとなった。
ウ また,「VISION」のみの独立した表示については,同表示を多数反復する形で地模様に印刷している割引優待券が全国的に展開している店舗で繰り返し多数頒布されている(甲52)ほか,それらの店舗の看板やポスター(甲53)や新聞チラシ(甲54)においても同表示が使用され,また,商品を購入した顧客に手渡す手提げ袋(甲25)とその袋を閉じるための粘着テープにも同表示が使用されている(甲67)。
エ また,「ビジョンメガネ」の構成中「メガネ」の部分については,単に原告が取り扱う商品の普通名詞を表すから,需要者や取引者が「ビジョンメガネ」を称呼する場合においては,取り扱う商品が暗黙の認識として「メガネ,コンタクトレンズ」であることを互いに理解しあっている。そうすると,需要者及び取引者間において他社商品との商品識別機能を有する出所表示の機能を発揮する部分は,「ビジョン」であって,これによって他社商品との識別ができるのである。それゆえ,「ビジョンメガネ」からは「ビジョンメガネ」のみならず,「ビジョン」の称呼が生ずるのである。
事実,原告の取引先の多くから,原告のことを単に「ビジョンさん」あるいは「ビジョン」と称されることは極めて頻繁であるし,日経産業新聞においても,その記事内で「ビジョン」という略称の表示がなされていることからしても,「ビジョン」の略称は取引先,ビジネス界,一般消費者において周知である。
オ このように,原告商標「ビジョンメガネ」は,登録されてから今日にいたるまで,実際の商取引に供され,多くの需要者及び取引者において使用された結果,原告の今日の繁栄を築いてきた。原告の成長を示すものとしては,会社案内(甲9),会社プロフィール(甲10)及びインターネットのホームページ(甲11)に示すとおりである。また,原告の商標「ビジョンメガネ」の価値を示すものとして経済産業省による「ブランド価値評価研究会報告書」のブランド価値評価モデルによって,「知的資産評価研究所」が試算した「ブランド価値評価額ランキング上位1000社」(甲117)によれば,原告の商標「ビジョンメガネ」は,上位1000社中230位にランクされ,「ビジョンメガネ」のブランド価値は479億9200万円と評価されている。ちなみに,同報告書において,被告の会社名を表す「日本オプティカル」は,283位にランクされ,ブランド価値は355億4500万円と評価されている。
これに比べて,被告標章は,被告が使用する商標群の中では,前記「ブランド価値評価額ランキング上位1000社」に掲載の「日本オプティカル」ほどの評価がされているとは考えられず,単に1店舗において使用する標章にすぎない。
以上のことから,原告の商標である「ビジョンメガネ」及びこの略称としての「ビジョン」は,前記「ブランド価値評価額ランキング上位1000社」に示されるだけの社会的価値と社会的影響力を内に秘めた商標であることが容易に推認できる。
カ 他方,被告標章は,平成16年に初めて使用され,乙第10号証ないし同第12号証の各商標については出願されてから1年にすぎない。このような商標同士を比較する場合において,互いの商標のこれまでの歴史,社会的背景,社会的影響力を無視することはできない。被告は,原告商標が周知・著名ではないと主張するが,原告は,当業界におけるリーディングカンパニーとして,同業者のみならず需要者及び取引者に対して,これまでにない種々の販売手法によって多大な影響を与え続けてきたことは紛れもない事実である。この結果を表すもののひとつとして,原告の「ビジョンメガネ」が前記「ブランド価値評価ランキング上位1000社」の上位の230位にランクされたものと考えられる。
(3) 被告標章について ア 被告標章1(A)は,分かち書きされた英語の「VISION」と「SQUARE」の2語からなる標章であり,また,被告標章1(B)は「VISION」と「SQUARE」が続けて一連のものとして表記されている標章であるが,日本人の平均的な英語力を標準とする限り,被告標章1(A)と同じく「VISION」と「SQUARE」の2語からなる標章であることが容易に理解し得る。そうすると,このうち「SQUARE」の部分は,日本人の平均的な英語能力を前提としても,既に「外来語」として一般に使用されている「スクエア」に相当し,「四角」「広場」「街区」等の観念が生じるので,格別識別力を有するものとはいえない。
また,被告は,その開設した店舗紹介のためのインターネットのホームページにおいても,左肩に「VISION広場」なる記述をしているほか,「About Vision」(「ビジョンについて」の意)なる記述をしており(ただし,原告から指摘を受けた後被告はこれを削除,変更している),甲第28号証のホームページでは,その右肩に「VISION」と比較的大きな表示をしていることからも明らかなとおり,被告自身,被告標章の「VISION SQUARE」の要部が「VISION」であると認識しているものであって,同被告標章に接する需要者及び取引者も,「VISION SQUARE」を店舗名称としての「VISION」と「広場」「街区」を表す英語の普通名詞の結合と認識し,全体として「VISIONの店舗」という意味で印象記憶することは明らかである。
イ 他方,被告は,被告標章からは「眼鏡,コンタクトレンズを提供する者とこれを求める者とが出会う広場」なる観念が生じると主張するが,これは誤りである。すなわち,「VISION」の語は,「視力」「視覚」を意味することはあるが,「眼鏡,コンタクトレンズ」を意味することはない。また,上記(2)で主張した原告商標の周知・著名性からすれば,需要者及び取引者が被告の「VISION SQUARE」「ビジョンスクエア」という商標に接する場合には,一体不可分の商標であると直感することはなく,商号商標「ビジョンメガネ」の要部及び略称でもある「VISION」若しくは「ビジョン」に注目することは明らかである。
これらの事情を考慮すれば,被告標章からは,被告が主張するような「眼鏡,コンタクトレンズを提供する者とこれを求める者とが出会う広場」なる観念は生じず,仮に「視力」「視覚」という意味から「VISION」が「眼鏡,コンタクトレンズ」を連想することがないわけではないとしても,それは稀であるというべきであり,少なくともそのような観念を一義的に生じさせるとは到底いえない(あえていえば,被告標章からは『「VISION」「ビジョン」の商品を売っている広場』なる観念が生じるとも考えられる。)。
ウ 上記(2)のとおり,「VISION」「ビジョン」なる商標,表示は,我が国においては原告の営業又は商品の出所表示として既にメガネ,コンタクトレンズ等の取引者,需要者の間において周知又は著名となった結果,被告標章を眼鏡,コンタクトレンズ等の商品の商標及び視力の測定,視力の検査,眼鏡,コンタクトレンズの装用に関する指導,視力に関する相談,カウンセリング等の役務の商標として使用する限り,原告の周知・著名商品等表示として取引者,需要者に対して強い顧客吸引力がある「VISION」の部分は「SQUARE」よりも強い自他識別力を有している。したがって,被告標章1の要部は「VISION」である。
これに対し,被告は,別紙「ビジョン関連商標データ」のとおり,「VISION」「ビジョン」を含む商標が多数登録されていること(乙8)を理由に,「VISION」,「ビジョン」が被告標章の要部であることを否定する。しかし,これらの他の商標は,「VISION」「ビジョン」と結合された言葉が,被告標章「SQUARE」,「スクエア」とは異なっているところ,「VISION」と結合された言葉がどのようなものかによって,商標全体を不可分一体のものとしてみるべきか否か,商標のどの部分が自他商品の識別機能を果たすとみるべきかに関する判断は全く異なってくるものであって,上記登録例は,いずれも,本件とはそれぞれ事実が異なり,それぞれの事実関係に即して個々別々に判断されたものと考えられ,原告商標と被告標章の類否判断において参酌されるべきものではない。
エ また,被告標章2は,「ビジョンスクエア」が一連として記載されているが,「ビジョン」と「スクエア」に分離して観念することができ,「ビジョン」は上記「VISION」,「スクエア」は上記「SQUARE」と同義であると容易に理解することができるから,上記アないしウと同様の理由により「ビジョン」がその要部となる。これに対し,「SQUARE」,「スクエア」は,「四角」,「広場」,「街区」を表す一般的,普遍的な文字であり,それだけでは自他識別力が弱い。被告が主張する「単なる場所的概念にすぎない」とする点は,この「SQUARE」,「スクエア」に限っていえば,当たっているというべきであり,このことは,「SQUARE」,「スクエア」の自他識別力が弱いことを示している。
(4) 原告商標と被告標章の類否 ア 被告標章1の要部「VISION」は,原告商標1及び3とその称呼,観念が同一であるほか,外観も文字の形状が若干異なる以外ほぼ同一である。
また,被告標章1の要部「VISION」は,原告商標2及び4とその称呼,観念が同一であるか,あるいは極めて類似している。
よって,被告標章1は原告商標1ないし4と類似している。
イ 被告標章2の要部「ビジョン」は,原告商標2及び4とその称呼,観念が同一であるほか,外観も文字の形状が若干異なるほかほぼ同一である。
また,被告標章2の要部「ビジョン」は,原告商標1及び3とその称呼,観念が同一であるか,あるいは極めて類似している。
よって,被告標章2は原告商標1ないし4と類似している。
ウ 被告は,原告商標と被告標章の字体や字の大きさ,被告の意図する観念等を理由に,原告商標との類否判断の基礎となるのは,一体としての「VISION SQUARE」,「ビジョンスクエア」であり,外観,称呼,観念が異なるとして,類似性を否定する。
しかし,商標の類否は,同一又は類似の商品に使用された商標が外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,かつ,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものであって,単に字体や字の大きさといった形式的な面,標章を有する者の主観的に意図する観念を重視して類似性を判断すべきではなく,眼鏡,コンタクトレンズの小売の具体的取引における,上記(2)で主張した原告商標の周知・著名性も踏まえた上での取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して判断すべきである。
さらに,標章が結合標章である場合は,商標の出所表示機能を有する部分である要部を抽出し,その部分から外観,称呼,観念を引き出して比較することになる(要部観察)が,その際は,取引者,需要者に対して出所識別機能を有する部分がどの部分に当たるかについて,標章の周知・著名性や,標章が一般的,普遍的な文字であるか,付加的な文字であるか等を考慮して判断すべきであり,前述したところによれば,本件においては,被告が指摘する字体の差異等によって上記結論は左右されない。
【被告の主張】 (1) 原告商標について ア 原告商標は,「VISON」「ビジョン」の文字を,被告標章の字体とは異なる丸みを帯びた特徴的な字体で表したものである。そして,原告商標は,英語の「VISON」及びその日本語読みである「ビジョン」という一般的によく知られた平易な単語であり,「ビジョン」という称呼のみを生じる。また,原告商標は,眼鏡,コンタクトレンズの基本性能に関連する「視力」「視覚」等の観念を生じる。
イ このように,原告商標は,丸みを帯びた特徴的な字体で表した「VISION」「ビジョン」として自他商品識別力を有するものであり,その自他商品識別力は,他の文字部分と同じ字体,大きさで一体的に結合した「VISION」「ビジョン」にまで及ぶものではない。したがって,「VISION」「ビジョン」は自他商品識別力を有することは明らかであるとする原告の主張は誤りである。現に,別紙「ビジョン関連商標データ」のとおり,「VISION」「ビジョン」を構成の一部とする登録商標が多数存在する。さらに,「VISION SQUARE」「ビションスクエア」に関する商標登録出願である商願2004-027405号,商願2004-027406号,商願2004-027408号の全ては,原告から特許庁に対して原告商標が周知・著名である旨の情報提供がなされたにもかからわず,何ら拒絶理由の通知を受けることなく,平成16年12月18日付けで登録査定を受けている。
ウ 原告は,原告の商号,商号商標である「株式会社ビジョンメガネ」,「ビジョンメガネ」の要部及び略称である「VISION」「ビジョン」は,我が国においては,原告の営業又は商品の出所表示として既にメガネ,コンタクトレンズ等の取引者,需要者の間において周知又は著名となったものであり,強い顧客吸引力がある旨主張する。
しかし,以下のとおり,「VISION」「ビジョン」は,原告の識別標識として周知・著名性を有していないことが明らかであり,「ビジョンメガネ」全体が原告の識別標識となっているというべきである。
(ア) 原告のテレビコマーシャル(甲36ないし49)は,丸みを帯びた特徴的な字体で一体的に表された「ビジョンメガネ」という大きな標章を原告の識別標識として使用するものであって,単独の「VISION」「ビジョン」を原告の識別標識として使用するものではない。
したがって,仮に,眼鏡,コンタクトレンズに関して,「ビジョンメガネ」が原告の店舗であるとの連想を生じさせることがあったとしても,眼鏡,コンタクトレンズに関して,「VISION」「ビジョン」が原告の店舗であるとの連想を生じさせることはあり得ない。
(イ) 原告を紹介するテレビ番組(甲50,51,59,60)は,原告を「ビジョンメガネ」として紹介するものにすぎず,原告を「VISION」「ビジョン」として紹介するものではない。さらに,そのテレビ番組は,平成4年2月22日及び平成16年7月25日にそれぞれ1回のみ放送されたにすぎない。
したがって,原告を紹介するテレビ番組は,原告を「VISION」「ビジョン」として関西における取引業者,需要者において知れ渡る状況にさせるものではない。
(ウ) 原告が主張するテレビ報道は,原告を「ビジョンメガネ」として報道するものにすぎず,原告を「VISION」「ビジョン」として報道するものではない。さらに,そのテレビ報道は,平成7年の一時期に放送されたにすぎない。
したがって,原告のテレビ報道は,原告を「VISION」「ビジョン」として全国の視聴者に印象付けるものではない。
(エ) 原告の割引優待券(甲52)は,他の文字よりも薄く小さな認識し難い文字による「VISION」を地模様として有し,その地模様の上に丸みを帯びた特徴的な字体で一体的に表された「ビジョンメガネ」という大きな標章を付したものである。
したがって,原告の識別標識は,「ビジョンメガネ」全体であり,「VISION」の部分ではない。
(オ) 原告の看板,ポスター(甲53),袋(甲25),粘着テープ(甲67)は,丸みを帯びた特徴的な字体で一体的に表された「ビジョンメガネ」という大きな標章を掲げた店舗において使用されるものである(甲12ないし24)。
これらの「VISION」の文字は,店舗の「ビジョンメガネ」の文字と比較して,その文字は小さく,使用されている数も圧倒的に少ない。
したがって,原告の識別標識は「ビジョンメガネ」全体であり,「VISION」の部分ではない。
(カ) 原告の新聞チラシ(甲54)は,丸みを帯びた特徴的な字体で一体的に表された「ビジョンメガネ」という大きな標章とともに,「ビジョンメガネ」よりも小さな文字で「VISION」を表したものである。
したがって,原告の識別標識は,「ビジョンメガネ」全体であり,「VISION」の部分ではない。
(キ) 原告は,「ブランド価値評価額ランキング上位1000社」上の順位に基づき,原告商標「ビジョンメガネ」と被告標章の置かれた地位の違いがあると主張するが,そもそも同ランキングは登記商号単位のブランド価値に関するものであって,商標のそれに関するものではないから,登記商号ではない原告商標及び被告標章の価値が示されたものではなく,それらの社会的価値及び社会的影響力を個別に判断できるものではない。
(2) 被告標章について ア 被告標章は,「VISION SQUARE」「ビションスクエア」であり,「VISION」「ビション」の文字と「SQUARE」「スクエア」の文字とが結合してなる結合標章であり,全ての文字が同じ字体,大きさのアルファベット又は片仮名でまとまりよく一体的に表された標章である。また,「VISION」「ビション」と「SQUARE」「スクエア」との2つの単語を組み合わせた造語であり,音韻数からみて冗長にわたるとはいえない「ビジョンスクエア」という称呼を生じ,「視力,視覚に関するものが集う場所」,さらには「眼鏡,コンタクトレンズに関し様々なコンセプトを持つ多数の店舗が集合している場所」という全体として特別な観念を生じる。
したがって,被告標章における「VISION」「ビション」と,「SQUARE」「スクエア」との結合力は強い。
イ 他方,前記(1)のとおり,仮に「ビジョンメガネ」が原告の識別標識として認識されるようなことはあっても,「VISION」「ビション」が原告の識別標識として認識されることはない。そして,「VISION」「ビション」の言葉は,その意味から,眼鏡,コンタクトレンズに関係の深いものであり,実際,眼鏡,コンタクトレンズに関連する商標には,「VISION」「ビション」の文字を含む結合商標が多数存在する(乙8)上,「VISION SQUARE」「ビションスクエア」に関する商標登録出願である商願2004-027405号,商願2004-027406号,商願2004-027408号の全ては,原告から特許庁に対して原告商標が周知・著名である旨の情報提供がなされたにもかかわらず,何ら拒絶理由の通知を受けることなく,平成16年12月18日付けで登録査定を受けている。
これらの事実によれば,眼鏡,コンタクトレンズに関連する営業に関して「VISION」「ビション」の文字を含む結合商標が用いられている場合には,「VISION」「ビション」の文字部分は,一般的に識別力が弱いものというべきである。
ウ 商標の類否判断は,対比する商標の全体を観察してなされるべきであり,その上で全体としての「一体性」が弱く,「付加的」と認められる部分があるときは,これを除いた要部について観察してなされるべきである。したがって,「特に商標が結合標章である場合は,商標の出所表示機能を有する部分である要部を抽出し,その部分から外観,称呼,観念を引き出して比較することになる(要部観察)。」との原告の主張は失当である。
上記ア,イの事情に照らせば,被告標章と原告商標との類否判断に当たって,被告標章から「VISION」「ビション」を取り出すような特段の事情はない。
なお,原告は,被告標章は観念の点においても分離され,なおかつ「SQUARE」「スクエア」は出所表示機能を有しないか若しくはその機能の極めて弱い場所的概念を示す部分として捨象されることから,被告標章の要部は「VISION」「ビジョン」であると主張するが,仮に「SQUARE」「スクエア」のみでは高い出所表示機能を持たないとしても,直ちに「VISION」「ビジョン」の部分のみを抽出しなければならないことにはならないのであって,かかる理解は独自のものである。被告標章はあくまでも一体としての「VISION SQUARE」「ビジョンスクエア」として出所表示機能を有するのである。
また,原告の指摘する甲第28号証のホームページは,「VISION SQUARE」の表示のうち「SQUARE」の部分で途切れるように右端を削除して印刷されたものであり,このことは甲第28号証の2枚目中段右端の写真が途切れていることからも明らかである。したがって,被告の上記ホームページは,被告自身が被告標章の要部を「VISION」として認識していることを証するものではない。
エ 以上によれば,被告標章の一体的構成の一部である「VISON」「ビジョン」を取り出すような特段の事情は存在せず,被告標章のうち「VISON」「ビジョン」の部分を要部と認定すべきであるという原告の主張は失当であって,被告標章は「VISON」「ビジョン」の文字部分のみに基づく外観,称呼,観念は生じない。
したがって,被告標章は,「ビジョンスクエア」という称呼のみを生じ,また,「ビジョンスクエア」という称呼からのみ観念を生じ,「視力,視覚に関するものが集う場所」等の観念を生じる。原告は,被告標章からは『「VISION」「ビジョン」の商品を売っている広場』なる観念が生じるとも考えられる旨主張する。しかし,原告は,「HOYA」「Nikon」等の他者の商標が付された商品を小売販売しているが(甲52),原告商標が付された商品を小売販売しているわけではないから,原告主張のような観念を生じることはない。
(3) 類否判断 原告商標は,被告標章の字体とは異なり,「VISION」「ビジョン」の文字を丸みを帯びた特徴的な字体で表したものである。
また,原告商標「VISION」「ビジョン」と,被告標章「VISION SQUARE」「ビジョンスクエア」とは,「SQUARE」「スクエア」部分の有無に相違がある。したがって,両者は明らかに外観,称呼が異なる。
原告商標から認識されるものは,従来からの眼鏡,コンタクトレンズの販売形態である単独店舗による販売であるのに対し,被告標章から認識されるものは,場所的概念としての「眼鏡,コンタクトレンズに関し様々なコンセプトを持つ多数の店舗が集合している場所」であり,観念も異なる。
したがって,原告商標と被告標章との間に類似性がないことは明らかである。
3 争点(2)ア(商品等表示的使用の有無)について 【原告の主張】 前記1(商標的使用の有無)【原告の主張】で主張したとおり,被告標章は,単なる場所的概念として機能しているのではなく,独立的取引主体としての被告の商品若しくは営業に係ることを示している。したがって,被告標章は「商品等表示」に該当する。
【被告の主張】 前記1(商標的使用の有無)【被告の主張】で主張したとおり,被告標章は場所的概念として機能しているのであって,商品識別機能を有していないから,「商品等表示」には当たらない。
4 争点(2)イ(原告商品等表示の周知・著名性)について 【原告の主張】 (1) 原告商品等表示の著名性又は周知性 ア 原告は,昭和51年以来「ビジョンメガネ」等の商品等表示を使用して眼鏡,コンタクトレンズ等の小売販売を開始し,平成16年8月当時には全国30余の都府県に直営店259店舗,フランチャイズチェーン店10店舗の269店舗を展開している。
イ 原告は,これまで,テレビやラジオのコマーシャル放送や新聞広告,折込みチラシ等の多様な媒体を通じて「ビジョンメガネ」等の商品等表示を使用し,その商品及び営業の広告宣伝に努めてきた。その詳細は,前記2において主張したとおりである。さらに原告は,「ネットで視力測定,どこでもメガネショッピング」というプロジェクトを行い,「JAPAN SHOP SYSTEM AWARDS 2003」において奨励賞にて表彰されている。その他,福祉団体等に多額の寄付を行う等の活動もしている。平成15年には原告の女性社長就任に伴い新聞等で多く紹介され,平成16年度期には,最高益更新や中途採用に関する新聞記事その他雑誌等でも紹介される等している。これらの原告の積極的な社会的活動とこれが社会的にも非常に高く評価されていることから,「ビジョンメガネ」は周知・著名となっているが,このことはその略称及び要部としての「ビジョン」「VISION」の周知性を強く裏付けるものである。
ウ さらに,原告が広告代理店に委託して大阪府下の一般消費者100人にインターネットにおいて行ったアンケートによれば,テレビCMや広告,店舗等を媒体として97%の人が「ビジョンメガネ」を知っており,しかも被告が設立されるかなり以前の昭和62年頃から多数の人に知られていることが明らかである。
また,眼鏡業界における「ビジョン」「VISION」と聞いた際の連想について,72%の人が原告を連想すると答えており,原告の商号のみならず,その要部,略称としての「ビジョン」「VISION」が周知であることを顕著に示すものである。
エ また,原告は,上記全国各地の店舗において,「VISION」,「VISION OPTIC」,「VISION OPT」,「ビジョンメガネ」なる表示をした看板,その他を営業表示として使用するほか,その店舗内において「VISION」,「VISION OPTIC」,「VISION OPT」等を店内の吊り広告,商品の価格表示や購入した眼鏡,コンタクトレンズ等を包装する手提げ袋等に表示し,もって,商品表示としても使用している。さらに,「VISION」のみ独立して表示したものについては,同表示を多数反復する形で地模様に印刷している割引優待券が全国的に展開している店舗で繰り返し多数頒布されているほか,それらの店舗の看板やポスター,折込みチラシにおいても同表示が使用され,また,商品を購入した顧客に手渡す袋とその袋を閉じるための粘着テープにも同表示が使用されている。
したがって,原告の商品等表示としての「ビジョンメガネ」及びその略称である「ビジョン」は,相当以前から原告の商品若しくは営業を表示する「商品等表示」として我が国において著名であり,また,「VISION OPTIC」「VISION OPT」及び「VISION」も少なくとも被告が被告標章の使用を開始するようになった平成16年以前には,原告の商品若しくは営業を表示する「商品等表示」として全国的に著名となっていた。
(2) 被告は,商標の一部として「VISION」「ビジョン」を使用するものが多いことを理由として「VISION」及び「ビジョン」は自他商品識別機能が弱く,商品等表示としての周知性を有するといえないと主張する。しかし,他の商標における「VISION」「ビジョン」と結合された文字標章が本件とは異なること,その結合された文字標章によって,商標全体が不可分か否か,また商標のどの部分が自他商品の識別機能を果たすとみるべきかに関する判断が異なることからすれば,それによって直ちに「VISION」「ビジョン」の自他商品識別機能が弱くなるものではない。
また被告は,「VISION OPTIC」及び「VISION OPT」について,表示の小さい店内広告であり,店外の広告も「ビジョンメガネ」という相対的に大きな表示とともに表示されているとして,これらの原告商品等表示の周知性を否定する。しかし,店内広告は天井の至るところに,多数,大きな垂れ幕となって設置されており,目につく場所にある。しかも赤字に白の文字で表示されて目立っているので大きな宣伝効果がある。周知・著名である「ビジョンメガネ」とともに表示されることは,かえって需要者が「ビジョンメガネ」を英文字表記したものであることを認識し,周知性を増すという効果もある。さらに,これらの表示の中で店外において大きく掲示されているものも存在することや,商品包装用の手提げ袋にも同表示がされている点等に鑑みても,「VISION OPTIC」「VISION OPT」に周知性が認められることは明らかである。
(3) 被告は,原告の商品等表示に全国的な周知性を要求すべきであるとして,「ビジョンメガネ」の商品等表示の周知性を否定する。
しかし,商品等表示の周知性は,全国的な周知性までは要求されず,一地方で周知であれば足りるとされているのであるから,被告の主張は理由がない。
【被告の主張】 (1) 「VISION」及び「ビジョン」の周知・著名性について 眼鏡,コンタクトレンズに関連する企業には,その商標の一部として「VISION」「ビジョン」を使用するものが多いことからすれば,同表示のみでは自他商品識別機能が弱く,原告の商品等表示として周知・著名性を有するとはいえない。
(2) 「VISION OPTIC」及び「VISION OPT」の周知・著名性について これらの表示は,いずれもほとんどが店内広告として使用されているものである。店内広告は既に原告の存在を認識し来店した者しかその表示を認識することができない。しかもその表示は小さく,補助的に用いられていることが多い。
店外に向けて表示されている場合においても,「ビジョンメガネ」という相対的に大きな表示とともに表示されているし,1店舗における「ビジョンメガネ」の表示が数の上でそれを上回る。これらの状況に鑑みると,需要者が「ビジョンメガネ」を原告の商品等表示として認識することはあっても,「VISION OPTIC」「VISION OPT」を原告の商品等表示として認識することは少ない。
したがって,「VISION OPTIC」「VISION OPT」に周知・著名性はない。
(3) 「ビジョンメガネ」の周知・著名性について 周知性は,一般的には一地方で周知であれば足りるとされているが,具体的事案においていかなる場所的範囲における周知性が必要かを検討するに当たっては,当事者の経済活動の自由を考慮しなければならない。周知性の要求される場所的範囲は,双方当事者の取扱商品,業種,営業地域,企業規模等によって異なるというべきである。
眼鏡,コンタクトレンズ等の商品の性質上,その需要に地域的な限定はない。原告は地域的な限定を付さずに被告に対し被告標章の使用禁止を求めており,被告の新しいビジネスモデルの全国展開に多大な支障が出ることからすれば,原告の商品等表示も全国的な周知性を要求すべきである。
原告の店舗が1店舗もない地域や数店舗という地域もあり,「ビジョンメガネ」という商品等表示の全国的な規模での認知度は未だないといえ,周知性に欠ける。
被告は,100%子会社による経営店舗も含め,全国に直営店150店舗,フランチャイズチェーン25店舗の175店舗を展開している(被告単独では直営126店舗,フランチャイズチェーン25店舗)。被告は,被告店舗のような複合型店舗の他地域への展開も予定しており,本件訴えが認められれば,被告の事業展開に支障が出ることは確実である。
本件においては,双方当事者の業種が眼鏡,コンタクトレンズ類の販売であること及び複数都道府県に店舗を有する企業であること等に鑑みると,周知性は全国的な範囲におけるそれを要求すべきである。
(4) アンケート調査結果について 原告は,アンケート調査の結果に基づき,原告商品等表示の周知・著名性が顕著に認められると主張するが,以下のとおり,同アンケートの結果から原告商品等表示の周知・著名性を認めることはできない。
ア 調査対象について 原告が分析の対象としているサンプル数は100であるが,大阪府下の一般消費者の認識等を的確に反映するに足りるサンプル数とはいえず,誤差の大きいものである。
また,同アンケートにおいて,回答者の年齢・性別等の構成が明らかでないし,その居住地区についても,どのような根拠に基づくものか明らかでない。
イ 質問のあり方について 原告は,同アンケートの調査結果から,眼鏡業界において「ビジョン」「VISION」に周知性があると主張する。
しかし,「Q5 メガネ業界における『ビジョン』『VISION』と聞いて何を連想しますか?」との質問前に置かれたQ2からQ3の質問は全て「ビジョンメガネ」を明示して「ビジョンメガネ」の認識を問う質問であること,Q5の質問が「メガネ業界における」という限定を付していることから,「ビジョンメガネ」という回答を期待する質問者(原告)の意図が現れた極めて誘導的な質問内容,質問順序といえる。回答者は質問者(原告)の誘導に沿って回答しているものと考えられ,Q5の質問に対する回答者の回答は大阪府下の一般消費者の認識を的確に反映したものとはいえない。
ウ また,原告は,同アンケート調査結果から被告標章は原告の商品又は営業と混同のおそれがあると主張するが,前項と同様に極めて誘導的な質問内容,質問順序によって得られた回答であり,大阪府下の一般消費者の認識を的確に反映した回答とはいえない。
エ 評価の誤り 原告は,同アンケート調査結果から97%の人が「ビジョンメガネ」を知っているとし,「ビジョン」「VISION」に周知性があると主張する。
しかし,周知性とは,当該商品等表示が「特定の商品ないし営業を示す表示として」需要者の間に広く「認識されている」状態をいうのであって,「ビジョンメガネ」の「名前を聞いたことがある」にすぎない状態を含むものではない。
原告は,この「名前を聞いたことがある」にすぎない50%の回答者を含めて97%の人が「ビジョンメガネ」を知っていると評価しており,周知性に関する評価を誤っているものである。
5 争点(2)ウ(被告標章と原告の商品等表示の類似性)について 【原告の主張】 (1) 前記2(3)のとおり,被告標章1の要部は「VISION」である。
原告商品等表示である「VISION」と被告標章1の要部「VISION」とは,その外観,称呼,観念において同一若しくは極めて類似している。
原告商品等表示である「ビジョン」と被告標章1の要部「VISION」とは,その称呼,観念において同一若しくは極めて類似している。
また,原告商品等表示である「ビジョンメガネ」のうち,「メガネ」は原告の取り扱う商品若しくは営業の種類を表す表示であり自他商品識別機能がなく,その要部は「ビジョン」である。よって,「ビジョンメガネ」と被告標章1の要部「VISION」とは,その称呼,観念において同一若しくは極めて類似している。
さらに,原告商品等表示である「VISION OPTIC」「VISION OPT」うち,「OPTIC」や「OPT」も眼鏡等を表す英語の普通名称又はその略称であって,同部分は原告の取り扱う商品若しくは営業の種類を表している。よって,同商品等表示の要部は「VISION」であり,これは被告標章1の要部である「VISION」と,その外観,称呼,観念において同一若しくは極めて類似している。
同様に,被告標章2の要部「ビジョン」も原告商品等表示と同一若しくは極めて類似している。
(2) 被告及び被告店舗の営業形態は,眼鏡,コンタクトレンズ等の販売を業とするものであって,原告の営業と競業関係に立つものである。
したがって,被告がその商品等表示として原告の上記周知商品等表示と類似する被告標章を使用すれば,取引業者,需要者をして,両者の取扱商品若しくは営業の間に出所の混同を生じさせるか,あるいは両者の取扱商品若しくは営業の間に法律上,経済上何らかの関連があるのではないかとの混同(広義の混同)を生じるおそれがあることは明白である。
また,前記アンケート結果によっても,被告標章を聞いて原告が経営し若しくは原告と何らかの関係のある企業が経営している店舗であると連想する人が半数近くおり,混同のおそれを裏付ける事実を示すものである。
被告は,眼鏡,コンタクトレンズは,その購入に際しては目の検査を伴うという性質や,店舗により取り扱う商品層に違いがあることから,購入者は相当の注意力をもってその商品,営業主体を識別するはずであると主張する。しかし,眼鏡,コンタクトレンズの購入は,目の検査を伴うものの,目の検査を重視する人は眼科に行って診断を受け,診断書を手に眼鏡等を購入することが多く,小売店で目の検査をする人は格別この点に注意を払っていないことが多い。また仮に,多少,店舗により取り扱う商品層に違いがあるとしても,眼鏡,コンタクトレンズ業の小売店においてはその相違は些細なものにすぎず,取引者,需要者の通常の取引上の注意を標準とすれば,そのような違いは認識できない。
(3) 被告は,被告標章の色彩や字体,被告のホームページ上の「HeartUp」の表示とともに用いているという被告商標の使用形態は,営業主体が被告であることを強く示すとして,「混同のおそれ」を否定する。
ア しかし,原告商標は,赤い色で表示するだけでなく,黒い色等も使用しており,色彩によって被告標章との識別はできない。さらに,被告が,原告との本訴提訴前の交渉においても,被告標章にいかなる色彩を使うかは被告の自由であると主張していることからしても,色彩の差異は「混同のおそれ」を否定する根拠とはなり得ない。
また,字体の差異については,標準的な需要者,取引者がそのような字体の差異を注意深く見極めて,両者の営業,商品の出所を識別するとは考えられず,これにより「混同のおそれ」を否定するのは妥当でない。
イ 「HeartUp」が被告標章と並列的に表記して使用されたとしても,「VISON」「ビジョン」の商品識別機能の強さの比較においても,「HeartUp」が両表示の具体的な混同を否定するほど強い識別機能を有しているとはいえない。
さらに,類否観察の方法は,離隔的観察,要部観察によるべきであるから,周知・著名性を有する「VISON」「ビジョン」と商品識別機能の弱い「SQUARE」「スクエア」とで構成される被告標章にあっては,些細な色彩や字体の差異は眼鏡等の需要者,取引者の通常の注意力をもってしては捨象されるから,両表示の混同を防ぐ機能を果たすことはなく,あったとしても極めて小さい。
(4) また,被告は,店舗内外を隔てる壁が透明であること,独立した店舗が集合した店舗である等として,被告の営業形態が原告のそれとは異なることを理由として,「混同のおそれ」を否定する。しかし,原告店舗でも内外を隔てる壁が透明であるものは多く存在する。また,被告の営業形態が従来の店舗と異ならず,原告のそれとも異ならないことは,前記1(商標的使用の有無)【原告の主張】で主張したとおりであるから,被告の主張は失当である。
(5) さらに,実際に原告の顧客が,被告標章を見て,原告の店舗又は原告と何らかの関連性を有する店舗であるとの混同を生じて被告店舗に行ったという事例も生じていることや,原告商品等表示の周知・著名性からしても,「混同のおそれ」が認められることは明らかである。
【被告の主張】 (1) 原告商品等表示との比較対象となる被告標章は,「VISION SQUARE」「ビジョンスクエア」である。
原告商品等表示である「VISION」「ビジョン」「ビジョンメガネ」「VISION OPTIC」「VISION OPT」と被告標章である「VISION SQUARE」「ビジョンスクエア」とは,「SQUARE」「スクエア」部分の有無,「VISION」「ビジョン」以外の部分の相違,字体の相違等,明らかに外観,称呼が異なる。
また,観念においても異なることは,前記2(被告標章の原告商標との類否)【被告の主張】において主張したとおりである。したがって,被告標章は,原告商品等表示と類似しない。
眼鏡,コンタクトレンズは,その購入に際しては通常目の検査を伴うものであること,特に眼鏡については購入する店舗によりその取り扱う商品層に大きな違いがあること等から,購入者又は購入を検討する者は相当の注意力をもってその商品,営業主体を識別するはずである。これらの人々を基準として判断すれば,上記の外観,称呼,観念の違いから,時と場所を変えて被告標章と原告商品等表示に接した需要者は,容易にそれらの違いを識別できるといえ,この点からしても,被告標章は,原告商品等表示と類似しない。
(2) 混同惹起行為とは,他人の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と上記他人とを同一営業主体として誤信させる行為のみならず,両者間にいわゆる親会社,子会社の関係や系列関係等の緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為であるが,被告標章の使用形態はその営業主体が原告ではなく被告であることを強く示すものである。
ア 被告標章を使用する際に用いていた色彩や字体は,原告商標のそれとは明らかに異なり被告独自のものである。
イ 被告のホームページ上における「VISION SQUARE」との表示については,「HeartUp」や「Copyright(C)Nihon Optical Co.,LTD」「VISION SQUAREは日本オプティカルのお店です。」といった表示とともに用いられている。なお,「HeartUp」は従来より被告が眼鏡,コンタクトレンズ等の販売に用いてきた商標(登録番号第4631557号)であって被告が営業主体であることを示すものである。被告が全国に展開している店舗のうち155店舗において被告の登録商標である「HeartUp」という表示を用いている。
したがって,被告の登録商標「HeartUp」には周知性があり,営業主体が原告ではなく被告であることを強く示すものであるから,需要者,取引者が原告の営業と誤認混同するおそれはない。
ウ さらに,被告の営業形態は原告のそれとは明らかに異なる。すなわち,被告は当時,被告店舗入口の看板,立て看板,電飾看板等に被告標章を用いていたが,当時から現在に至るまで店舗内外を隔てる壁は透明であり,外部から各店舗,店舗名が認識できる状態にある。
被告店舗内の各店舗はそれぞれ独立した店舗としての外観を持ち,異なる名称,ロゴを持っており,装飾もそれぞれのコンセプトに合わせたデザインとなっている。各店舗内に陳列された商品の値札にはそれぞれの店舗を示すロゴが付されており,原告の単一店舗による営業形態とは明らかに異なる。
エ 原告が主張するような,原告と被告を誤認した事例の存在は知らないが,被告が被告店舗を開設したのは平成16年2月である。この開設時期から同年12月末日までの間に被告店舗において眼鏡若しくはコンタクトレンズを購入した顧客数は1万2260人で,このうち新規に眼鏡若しくはコンタクトレンズを購入した顧客に限定しても3939名である。被告店舗を訪れた顧客数の調査は行っておらず不明であるが,少なくともこの数値より数段多いことは確実である。
仮に原告の主張が事実であったとしても,被告が平成16年2月に被告店舗を開設した後,同年12月末日までの間に3名が被告店舗を原告店舗であると認識したことがあるからといって,誤認混同のおそれがあるというには取るに足りない数値である。
(3) 以上のとおり,原告商品等表示と被告標章との間には大きな相違点が存在するから,需要者が被告標章によって,被告標章の店舗で販売されている商品を原告の商品であると誤認したり,被告標章の店舗が原告の営業によるものと誤認,混同する可能性はないし,原告と被告との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信する可能性もない。
6 争点(3)(損害額)について 【原告の主張】 (1) 被告の得た利益(商標法38条2項又は不正競争防止法5条2項による推定) 被告は,被告標章1(A),同2(A)を使用して,被告店舗で眼鏡,コンタクトレンズ等を販売したことにより,月平均2500万円の売上げを上げていると推測される。また,被告店舗と同規模の店舗の平均的利益率は60%と推定されるので,被告は原告が被告標章の使用を認知した平成16年2月末から同年8月末日までの少なくとも6か月間においても9000万円以上の利益を得ていると推定される。
よって,商標法38条2項又は不正競争防止法5条2項に基づき,原告は,被告の上記商標権侵害により被告の得た利益9000万円に相当する損害を被ったものである。
(2) 弁護士費用等 原告は,被告の商標権侵害行為又は不正競争行為に対処するため,本件訴訟提起を原告代理人らに依頼した。
本件訴訟によって得られる原告の経済的利益に対応する弁護士及び弁理士等の費用は900万円を下らない。
【被告の主張】 いずれも争う。
争点に対する判断
1 争点(1)イ(被告標章の原告商標との類否)について 争点(1)ア(商標的使用)についてはしばらく措き,被告標章が商標として使用されているものと仮定して,まず,その原告商標との類否について検討することとする。
(1) 原告商標について ア 原告商標1,3は,別紙原告商標目録1のとおり,「VISION」という文字を太めの丸みのある独特の書体で書してなり,「ビジョン」「ヴィジョン」の称呼を生じ,@視覚。幻影。A心に描く像。未来像。展望。見通し(広辞苑第5版)等の観念を生じさせる。
原告商標2,4は,別紙原告商標目録2のとおり,「ビジョン」という文字を太めの丸みのある独特の書体で書してなり,「ビジョン」の称呼を生じ,上記同様の観念を生じさせるものである。
イ 原告は,原告商標は原告の商品等表示として需要者の間に広く知られていると主張する。この主張は,原告商標がそれに接した需要者をして,原告の営業ないし商品を想起させる観念を有しているとの趣旨を含むものと解される。そこで,以下,原告商標が,原告のいうように,その周知・著名性の故に,原告の営業ないし商品を想起させる観念を有するか否かについて検討する。
ウ 前示第2の1の当事者間に争いのない事実等,証拠(甲9ないし26,36ないし54,59ないし61,67ないし78,90ないし97,115ないし117,122,141ないし168,173,178)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 原告の概要 原告は,昭和54年11月1日に肩書地を本店所在地として設立された株式会社である。原告の前身は,原告の前代表者が昭和51年10月31日に「ビジョンメガネ」の商号で開業した眼鏡小売を業とする個人商店であり,1号店を同年11月に大阪府内に開設した。原告は,昭和55年4月に関東地区に,平成9年12月ころに九州地区に進出し,平成12年4月には株式公開した。
平成16年3月31日現在の資本金は7億7200万円であり,同日現在の従業員数はパート社員も含めて1104名である。
原告の平成16年8月現在の店舗数は,全国30余の都府県に直営店259店舗,フランチャイズチェーン店10店舗の269店舗を展開している。なお,平成14年10月末現在の店舗数は総数295店であり,そのうち大阪府下の店舗はフランチャイズチェーン店も含めて57店舗であった。原告の平成16年3月期の売上高は140億2600万円であった。
(イ) 宣伝広告並びにテレビ及び新聞による報道状況 a 原告は,昭和61年ころから,関西地区においてテレビによる広告を行っており,その後,他地域への進出に伴い,福岡県,静岡県及びその周辺地域でもテレビによる広告を行うようになり,平成11年以降,読売テレビ,朝日放送,九州朝日放送,関西テレビ放送,毎日放送,アール・ケー・ビー毎日放送,福岡放送,静岡第一テレビ,静岡放送,静岡朝日テレビ,テレビ静岡,テレビ西日本を通じてテレビによる広告を行っている。これらのテレビ広告には,いずれも原告商標と同様の太めの丸みのある独特の書体(以下「原告商標書体」という。)による「ビジョンメガネ」という表示がされていた(ただし,昭和62年ころに放映されたテレビ広告〔メガネカルテ。甲36,37〕には,画面上部に上記「ビジョンメガネ」とともに,原告商標書体による「VISION」が比較的小さく表示されていた。)。
そのほか,原告は,平成10年11月後半から同年12月前半にかけてFNNのニュース番組「ニュースフラッシュ」において,原告商標書体による「ビジョンメガネ」という標章を付してニュース提供の広告を行った。
また,原告は,平成7年の阪神淡路大震災に際して,いち早く神戸の店舗を開設し,無料で老眼鏡を配布する等のボランティア活動を行い,このことがテレビで放映され,これにより原告の知名度が上がり,業績拡大につながったこともあった。
原告は,平成4年2月22日放映のテレビ番組「関西のジャンプ企業」(テレビ大阪)で取り上げられ,女優による原告吉田武彦社長(当時)に対するインタビューが放映されたが,その際,原告(社屋)を紹介する場面で通常の書体による「ビジョンメガネ」「メガネチェーン店 ビジョンメガネ」というテロップが表示されたほか,原告店舗内でインタビューを受ける吉田社長の背後の壁面に表示された原告商標書体による「ビジョンメガネ」が放映された(甲50,51)。また,平成16年7月25日放映のテレビ番組「エスタブリッシュメント・ジャパン」(テレビ大阪)で取り上げられ,原告の吉田美恵子社長に対するインタビューが放映されたが,その際,同社長を紹介する場面で「株式会社ビジョンメガネ 代表取締役社長 吉田美恵子さん」とのテロップが表示されたほか,原告店舗出入口付近にある原告商標書体による「ビジョンメガネ」の看板表示が放映された(甲59,60)。
また,被告店舗が開設される前後を通じ,各種新聞,雑誌において,原告の新規事業や売上傾向,原告の代表者を取り上げる記事や,原告が眼鏡フレームや杖を福祉団体等に寄贈したことを取り上げる記事が掲載されたところ,これらの各記事のほとんどが,原告を「ビジョンメガネ」と表示し,原告の商品ないし営業を表示するのに「ビジョン」ないし「VISION」とのみ表示しているものは見当たらない。もっとも,平成14年2月11日付けの日経産業新聞(甲122)において,原告の系列会社の事業を報道するのに,「眼鏡用緩まないネジ イデアから販売権 ビジョン系列のケータイ」との見出しが付されたが,その直後に続く本文中には「ビジョンメガネグループのケータイ(福井県鯖江市,森保社長)はボルトやナット開発・製造のイデア・デザインテック(東京・港,橋本秀生社長)と,眼鏡に使う緩まないネジの国内総販売代理店契約を結んだ。」と,原告を「ビジョン」ではなく「ビジョンメガネ」と表示されている。
b 原告による店舗内外に設置している看板,店舗壁面のディスプレイ,ポスター等における原告商標等の使用状況は,次のとおりである。
(a) 看板表示の状況 原告は,全国の店舗内外に設置している看板に,白地に赤い文字,あるいは赤地に白い文字で,原告商標書体による「ビジョンメガネ」の標章を用い,これを大きく目立つ態様で表示している。
(b) 「VISION」(原告商標1,3)の使用状況 原告は,店舗内に貼付するポスター(甲16,53),価格等表示板(甲22等),顧客が原告店舗で購入した商品を収納して持ち帰る手提げ袋を閉じるために用いる包装用粘着テープ(甲67),店舗入口の足ふきマット(甲93),店舗周辺で配布する折込みチラシ(甲54),割引優待券(甲52等),割引優待葉書(甲141。左上の「料金後納郵便」欄下部)に原告商標1「VISION」が用いられている。
ただし,店内掲示用ポスター,店舗周辺で配布する折込みチラシ,割引優待葉書には,原告商標書体による「ビジョンメガネ」が原告商標1「VISION」よりも目立つ態様で表示されているものが多い。また,割引優待券の地模様の「VISION」は薄い文字で細かく書かれており,同商標自体が目立つ態様で表示されているものではない。
(c) 「VISION OPTIC」「Vision Optic」「VISION OPT」等の標章の使用状況 また,原告は,原告商標1,3の「VISION」を単独で用いず,「VISION OPTIC」「Vision Optic」「VISION OPT」等の表示も使用している。その使用状況は,次のとおりである。
@ 「Vision Optic」が表示されているもの 店舗外壁面のディスプレイ(甲15,18等) 店内掲示用ポスター(甲53) A 「VISION OPTIC.」又は「VISION OPTIC」が表示されているもの 店内価格等表示板(甲16。ただし,上部に原告商標書体による「ビジョンメガネ」が書かれている。) 店内吊り下げポスター(甲16,53。画面下部に「SALE」と大きく記載された上に比較的小さな文字で表示されている。) 店内吊りスクリーン(甲22) 持ち帰り用手提げ袋(甲25) 店外の立て掛けられた幟(甲53。ただし,原告商標書体による「ビジョンメガネ」も併記されている。) 割引券の地模様(甲70) 店外看板(甲93,95。ただし,原告商標書体による「ビジョンメガネ」と併記されている。) B 「VISION OPT」が表示されているもの ポイントカード(甲52) (d) 原告商標2,4(ビジョン)のみが単独で用いられている例はない。なお,コンタクトレンズの販売に関しては,「ビジョンコンタクト」なる店舗の看板表示が用いられることもある(甲18)。ただし,「ビジョン」が「コンタクト」に比べてやや小さい文字で表示されており,その下に原告商標書体による「ビジョンメガネ」の表示が併記されている。
(ウ) ブランド価値評価額 経済産業省による「ブランド価値評価研究会報告書」のブランド価値評価モデルによって,知的資産評価研究所が試算した「ブランド価値評価額ランキング上位1000社」が雑誌「企業会計」2002年(平成14年)9月号(甲117)に掲載されているが,これによると,「ビジョンメガネ」のブランド価値は,上位1000社中230位にランク付けされ,479億9200万円と評価されている。
なお,原告と同じ眼鏡,コンタクトレンズの販売会社である「三城」は91位,「HOYA」は102位,「愛眼」は186位にそれぞれランク付けされている一方,被告(日本オプティカル)は,283位にランク付けされている。
(エ) アンケート結果 原告は,インデックスデジタル株式会社に依頼して,「メガネに関するアンケート」のアンケート調査を平成17年5月19日から同月20日にかけて実施した。アンケートの収集方法は,ポイントカード事業運営会社の会員450万人のうち大阪府下北摂地区在住の会員から順次府下の遠方会員に対してインターネットのメールでアンケートを配信し,100名から回答を回収した時点で配信を終了したというものであった。その結果,「Q2 ビジョンメガネを知っていますか?」との質問に対する選択肢「1よく知っている,2名前を聞いたことがある,3初めて聞いた」のうち,1が47件,2が50件,3が3件であった。
同質問について1又は2と回答した者に対しては,さらに「いつ頃ビジョンメガネをお知りになりましたか?」という質問が設定され,用意された6つの選択肢のうち,昭和62年から平成2年と答えた者が22名,平成3年から平成6年と答えた者が23名,平成10年から現在にかけてという者が25名であった。
さらに,全員に対して「Q5メガネ業界における『ビジョン』『VISION』と聞いて何を連想しますか?(いくつでもお選びください)」との質問が設定され,選択肢として用意された「1ビジョンメガネ,2視力,3先見性,4その他」のうち,「1ビジョンメガネ」を選択した件数が72件で最も高いという結果が得られた。さらに「Q6『VISION SQUARE』という名称を聞いて,どのような企業が経営している店舗であると連想されますか?」という質問に対して,選択肢として「1ビジョンメガネが経営している店舗,2ビジョンメガネと関係のある企業が経営している店舗,3いずれでもない別会社の店舗,4いずれともわからない」のうち,1を選択した件数が12件,2を選択した件数が33件,3を選択した件数が8件,4を選択した件数が47件との結果が得られた。
エ 以上の認定事実によれば,原告は,長年にわたり,人目を惹く独特の原告商標書体による「ビジョンメガネ」の表示を用いて原告の商品又は営業に関するテレビ広告等を行ってきたほか,関西地区を中心として,全国30余の都府県に直営店259店舗,フランチャイズチェーン店10店舗の合計269店舗を展開しているものであり,その店舗内外に設置した看板にも,同様に人目を惹く原告商標書体による「ビジョンメガネ」が大きく表示され,その他店舗内のポスター,宣伝用チラシ,割引優待券等に,同様の原告商標書体により「ビジョンメガネ」と表示していたものである。また,原告はテレビ番組にも注目される企業として取り上げられ,社長がインタビューを受ける等しているが,その際にも原告は「ビジョンメガネ」又は「株式会社ビジョンメガネ」として紹介され,その際,インタビューを受ける原告社長の背後の壁面に表示された原告商標書体による「ビジョンメガネ」の標章が放映されたものである。これらの事情を総合すれば,「ビジョンメガネ」は,遅くとも被告が被告店舗を開設した平成16年2月ころには,全国的な著名性を獲得していたか否かはともかく,少なくとも現在の被告の営業範囲が含まれる関西地域において,原告の商品ないし役務を識別表示するものとして周知性を獲得していたと認められる。
オ 原告は,さらに,原告商標である「VISION」「ビジョン」も,原告の商品ないし役務を表示するものとして需要者の間に広く知られている旨主張するので,この主張の当否について検討する。
(ア) 前示のとおり,原告商標である「VISION」「ビジョン」は,@視覚。幻影。A心に描く像。未来像。展望。見通し(広辞苑第5版)等の観念を生じさせる普通名詞であって,それ自体の商品(役務)識別性は比較的弱いということができる。
(イ) そして,前示認定のとおり,そもそも,原告自身,自らの識別標識としてテレビ広告等で用いていたのは,そのほとんどが「ビジョンメガネ」(とりわけ,人目を惹く独特の原告商標書体によるものがほとんどである。)である上,原告に関する新聞,雑誌の記事等も,そのほとんどが原告の表示を「ビジョンメガネ」としている。もっとも,前示のとおり,平成14年2月11日付けの日経産業新聞(甲122)には,原告の系列会社の事業を報道するのに,「眼鏡用緩まないネジ イデアから販売権 ビジョン系列のケータイ」との見出しの記事が掲載されている(本件で提出された証拠のうち,原告を表示するのに「ビジョン」を用いた唯一のものである。)。しかし,その直後に続く本文中には「ビジョンメガネグループのケータイ(福井県鯖江市,森保社長)はボルトやナット開発・製造のイデア・デザインテック(東京・港,橋本秀生社長)と,眼鏡に使う緩まないネジの国内総販売代理店契約を結んだ。」と,原告を「ビジョンメガネ」と表示していることからして,上記見出しは,イデア・デザインテックという会社が「イデア」と省略されているのと同様,見出しの字数が制限されているため「ビジョン」と略称したにすぎないことが窺える。したがって,上記見出しに原告を「ビジョン」と表示していることによって,「ビジョン」が原告の商品等表示として周知性を獲得している根拠とすることはできない。
そして,「ビジョンメガネ」は,その音韻数等に照らし,一連のものとして称呼されるものというべきであり,ことさら「ビジョン」のみを取り出して称呼されるものとは認められない。このように,原告自身,自らの識別標識として「ビジョン」を独立して用い,これを原告の商品ないし役務の識別表示として使用したことはなく,原告に関する新聞記事,雑誌の記事等も原告を「ビジョン」と表示して指称したことはほとんどない。
(ウ) また,英文字の「VISION」についても,その多くが「VISION OPTIC」「Vision Optic」「VISION OPT」等というように,「VISION」が単独で用いられることは少ない上,その使用態様は,そのほとんどが上記のとおり人目を惹く独特の原告商標書体による「ビジョンメガネ」を看板として掲げた店舗内で用いられるポスター,値引表示のチラシ,手提げ袋,その包装用の粘着テープ,マット,あるいは店舗外に立て掛けられた幟等に用いられているのみである。しかも,原告商標書体による特徴ある「ビジョンメガネ」と併記されているものが少なくなく,その文字の大きさも「ビジョンメガネ」と比較すると小さく,また使用されている頻度も「ビジョンメガネ」よりも少ない。したがって,「VISION」の使用態様は,主として,上記「ビジョンメガネ」標章の付随的,従属的なものとして使用されているというべきであり,それ自体が需要者の目を強く惹きつける態様で表示されているとはいい難い。
結局,「VISION」は,人目を惹く特徴ある原告商標書体による「ビジョンメガネ」の看板表示等により,原告の店舗であることが明らかな状況の下で表示されているものにすぎないものというべきであって,それが独立して商品ないし役務の識別標識として機能することを期待されているものではないといえる。
上記以外に「VISION」が使用されているものの使用態様についてみても,前示認定によれば,いずれも人目を惹く独特の原告商標書体による「ビジョンメガネ」に従属し,これと対比して目立たない態様で使用されているということができる。すなわち,新聞の折込みチラシ(甲54)には,表面に上記「ビジョンメガネ」が大きな文字で表示され,その裏面に赤地の正方形内に比較的小さな文字で「VISION」と白抜きして,マークのような表示で記載されているに止まる。
また,割引優待券には,「VISION」の文字が印刷されてはいるものの,あくまでも地模様として印刷されているに止まり,他の印刷されている文字よりも小さくて薄く,これを手に取って観察しても,「VISION」という文字が独立して注意を惹くというよりは,「VISION」という文字の集合として,その全体が地模様として観察されるにすぎないというべきである。そして,その地模様の上には,上記「ビジョンメガネ」の文字が明瞭に目立つ態様で記載されているのである。
さらに,割引優待葉書(甲141)においても,通常切手を貼付する部分に円を記載し,その下半分に,白抜きで「VISION」の表示を用いているものの,その下には上記「ビジョンメガネ」の表示をより大きな字で,3か所にわたり目立つ態様で用いられている。
以上のとおり,原告は,これまで「VISION」のみを原告の識別標識として広告したことはなく,その使用状況に照らせば,原告商標1,3の「VISION」はあくまでも「ビジョンメガネ」の表示を認識することが可能な場所において,「ビジョンメガネ」に付随し,従属的に用いられたにすぎないというべきである。したがって,「VISION」が原告の商品等表示として周知性を獲得している根拠とすることはできない。
(エ) 原告は,「ビジョンメガネ」の略称である「ビジョン」が原告を示す略称として取引者に用いられていることも指摘して,「VISION」「ビジョン」も原告の商品等表示として周知性を獲得していると主張する。
しかし,仮に原告が主張するように,取引者が原告の示す略称として「ビジョン」を用いることがあったとしても,商標の類否の判断において商品の出所について混同を生ずるおそれがあるか否かは,眼鏡,コンタクトレンズの需要者たる一般消費者をも基準として判断すべきである。そして,「ビジョンメガネ」のうち「VISION」「ビジョン」の部分がそれだけで周知・著名性を有するといえないことは上記認定説示のとおりであって,仮に,眼鏡,コンタクトレンズの業者間において原告を指すのに「ビジョン」という略称が用いられたことがあったとしても,「ビジョン」が原告の略称として周知性を獲得したとはいえないとの上記認定を左右しない。
(オ) かえって,証拠(乙8)及び弁論の全趣旨によれば,原告商標と同じく,商品又は役務区分第9類及び第42類に属する登録商標のうち,「VISION」「ビジョン」を構成の一部分とし,あるいは称呼とする登録商標が,平成16年11月時点で,別紙「ビジョン関連商標データ」のとおり,原告商標を除いて40件存在している。その中には「CIBA VISION チバ ビジョン」,「CIBA VISION DAILIES チバ ビジョン ディリーズ」等,少なくとも全国的にも周知性を有していると認められる(弁論の全趣旨)商標も含まれている。これら多くの「VISION」「ビジョン」を含む商標が存在するのも,前述のとおり「VISION」「ビジョン」が「視覚」「視界」の眼鏡,コンタクトレンズの性能に関連する意味を有する普通名詞であることに由来すると推察されるのであり,上記各商標も含めて,これらの眼鏡,コンタクトレンズに関する商標に「VISION」「ビジョン」が多数用いられている事実によれば,眼鏡,コンタクトレンズの取引に関して,「VISION」「ビジョン」から原告が直ちに想起されると認めることはできない。むしろ,眼鏡,コンタクトレンズの取引に関する商標としては,「VISION」「ビジョン」の識別力は比較的弱いものといわざるを得ない。
(カ) また,原告は,前記(1)ア(エ)のアンケート結果をもって,眼鏡業界における原告商号の要部,略称としての「VISION」「ビジョン」が周知であると主張する。しかし,同アンケートは,「メガネ業界における『ビジョン』『VISION』と聞いて何を連想しますか?」という質問に先立って,「ビジョンメガネを知っていますか?」「いつ頃ビジョンメガネをお知りになりましたか?」「ビジョンメガネをお知りになった媒体は何ですか?」という質問に答えさせ,これにより回答者をしてあらかじめ原告の周知商標である「ビジョンメガネ」を想起させた上で,答えを誘導・暗示するものであり,また,回答者がかかるる誘導・暗示を推察して回答した可能性が否定できない点で,その内容の信用性は高いとは認められない。したがって,上記アンケート結果をもって,上記認定を左右することはできない。
カ 以上検討したところによれば,原告商標である「VISION」「ビジョン」は,それだけでは未だ原告商標に接した需要者をして直ちに原告の商品ないし営業を想起させるほどの周知・著名性を獲得しているとはいえない。上記認定説示のとおり,「ビジョンメガネ」が原告の商品表示ないし営業表示として需要者の間に広く認識されているという事情の下においては,原告の商品ないし営業を想起させる観念を有するのは「ビジョンメガネ」の表示全体であって,原告商標それ自体が原告の商品ないし営業を想起させる観念を有しているということはできない。
(2) 被告標章について ア 被告標章の外観,称呼,観念 (ア) 被告標章1(A)は,別紙被告標章目録1(A)のとおり,「VISION SQUARE」と記載されたものであり,「VISION」と「SQUARE」の間に3分の1文字分程度の間隔が開いているものの,同じ大きさ,同じ形の欧文字を用いて一連の表記がなされている文字標章であって,「ビジョンスクエア」と称呼される。
また,「VISION」は,前示のとおり,@視覚。幻影。A心に描く像。未来像。展望。見通しとの観念を生じさせるものであるところ,「SQUARE」は,@方形。四角。A四辻の方形広場。四角な小公園(広辞苑第5版)を意味するものである(「SQUARE」は英語であるが,広辞苑にも登載されているように,日本語の「スクエア」としても定着している言葉であるということができる。)。そして,これらの各文字を結合した「VISION SQUARE」は,各文字の意味が上記のとおりいずれも多義的であることから,それ自体として直ちに特定の観念を生じさせるものとはいえないものの,被告の業種,業態,とりわけ,弁論の全趣旨によれば,被告標章は,被告が,そこへ行けば多種多様なニーズに応える眼鏡,コンタクトレンズが店舗別に提供されていることが直ちに理解される名称を,という観点から,「眼鏡,コンタクトレンズを提供する者とこれを求める者とが出会う広場」というイメージを持たせることを意図して造られた造語であることが認められることをも参酌すると,「視覚に関する物(眼鏡,コンタクトレンズ等)に関する商品,サービスを提供する(四角い)売り場又は街区」から連想される「種々の売り場の集合した店舗」というような観念を生じさせるものと認められる。
なお,原告は,「VISION SQUARE」から原告の商品ないし営業表示として周知・著名性を有する「VISION」ないし「ビジョン」の商品を売っている広場との観念が生じ得ると主張する。しかし,前示認定説示のとおり,「VISION」ないし「ビジョン」は,原告の商品ないし営業表示として周知・著名性を獲得しているとはいえないから,原告の上記主張は採用できない。
(イ) 被告標章1(B)は,別紙被告標章目録1(B)のとおり,標準文字で「VISIONSQUARE」と記載されたものであり,被告標章1(A)とは異なり「VISION」と「SQUARE」の間に間隔が開いておらず,同じ大きさ,同じ形の欧文字を用いて一連の表記がなされている文字標章であって,「ビジョンスクエア」と称呼される。また,被告標章1(A)と同様,それ自体として直ちに特定の観念を生じさせるものとはいえないものの,上記(ア)の観念を生じさせるものと認められる。
(ウ) 被告標章2(A)は,別紙被告標章目録2(A)のとおり,片仮名のゴシック体で「ビジョンスクエア」と記載されたものであり,同じ大きさ,同じ形の文字を用いて一連の表記がなされている文字標章であって,「ビジョンスクエア」との称呼を生じる。また,同標章は,被告標章1(A)の「VISION SQUARE」を日本語に表記したものであることが容易に理解され,同標章と同様,それ自体として直ちに特定の観念を生じさせるものとはいえないものの,上記(ア)の観念を生じさせるものと認められる。
(エ) 被告標章2(B)は,別紙被告標章目録2(B)のとおり,被告標章2(A)が標準文字で表記された文字標章であり,「ビジョンスクエア」との称呼を生じる。また,同標章は,被告標章1(A)の「VISION SQUARE」を日本語に表記したものであることが容易に理解され,同標章と同様,それ自体として直ちに特定の観念を生じさせるものとはいえないものの,上記(ア)の観念を生じさせるものと認められる。
イ 被告標章は「VISION」「ビジョン」の外観,称呼,観念を生じるか 原告は,被告標章は「VISION」「ビジョン」を要部とし,これに対応した外観,称呼,観念を生じると主張するので,検討する。
(ア) まず,被告標章は,外観において,いずれも同じ大きさ,同じ形の欧文字又は和文字を用いて一連の表記がされているもので,「VISION」又は「ビジョン」の部分が「SQUARE」又は「スクエア」の部分と対比して特に強調されているとか,目立つ態様で表示されているものとはいえない。
(イ) また,被告標章は,冗長ではなく,よどみなく一連して称呼することができるものというべきであって,「SQUARE」又は「スクエア」の部分を特に省略し,「ビジョン」とのみ称呼するものとは認め難い。
(ウ) さらに,観念についてみても,被告標章は,上記のとおり,「視覚に関する物(眼鏡,コンタクトレンズ等)に関する商品,サービスを提供する(四角い)売り場又は街区」から連想される「種々の売り場の集合した店舗」というような観念を生じさせるものと認められるところ,「SQUARE」ないし「スクエア」が眼鏡等の関係で識別力の乏しい言葉であるとはいえず,むしろ,「VISION」「ビジョン」の方が識別力が弱いといえることは上記認定説示のとおりであるから,需要者が,被告標章から「SQUARE」ないし「スクエア」を捨象し,「VISION」ないし「ビジョン」のみの観念を把握するものとは認め難い。
(エ) 原告は,「VISION」ないし「ビジョン」が原告の商品ないし営業表示として需要者の間に広く知られているから,需要者は「VISION」ないし「ビジョン」の部分からその出所を識別することを理由に,同部分が被告標章の要部であると主張するが,前示認定説示のとおり,「VISION」ないし「ビジョン」が原告の商品ないし営業表示として需要者の間に広く知られているとは認められないから,同部分をもって被告標章の要部ということはできない。
(オ) 以上のとおり,被告標章が「VISION」「ビジョン」を要部とし,これに対応した外観,称呼,観念を生じるとの原告の主張は採用できない。
(3) 類否について 以上の認定説示を前提に,被告標章が原告商標に類似するか否か検討する。
ア まず,原告商標は,太めの丸みのある独特の原告商標書体で「VISION」(原告商標1,3)又は「ビジョン」(原告商標2,4)と書してなるのに対し,被告標章は取り立てて特徴のない欧文字又は和文字で「VISION SQUARE」「VISIONSQUARE」又は「ビジョンスクエア」(ゴシック体及び明朝体)と書してなるものであって,「SQUARE」又は「スクエア」の有無及び字体において相違し,外観において類似しない。
イ 次に,原告商標は,いずれも「ビジョン」と称呼されるのに対し,被告標章は,いずれも「ビジョンスクエア」と称呼されるものであり,称呼においても相違する。
ウ さらに,原告商標は,@視覚。幻影。A心に描く像。未来像。展望。見通しとの観念を生じさせるのに対し,被告標章は,「視覚に関する物(眼鏡,コンタクトレンズ等)に関する商品,サービスを提供する(四角い)売り場又は街区」から連想される「種々の売り場の集合した店舗」というような観念を生じさせるものであって,観念においても相違する。
エ このように,被告標章は,原告商標とは外観,称呼,観念のいずれの点においても類似しない。そして,それにもかかわらず出所の混同を生じるおそれがあるという事情も認められない。
なお,原告の顧客が,被告標章を見て,原告の店舗又は原告と何らかの関連性を有する店舗であるとの混同を生じて被告店舗に赴いた事例が平成16年3月上旬から同年11月11日にかけて3件発生したことが判明しているが(甲55ないし57),平成16年2月21日に被告が被告店舗を開設してから,同年12月末日までに同店舗において眼鏡若しくはコンタクトレンズを購入した顧客数は1万2260人で,このうち新規に眼鏡若しくはコンタクトレンズを購入した顧客は3939人であるから(乙23),上記のような事例が3件あることによっては,出所の混同を生じるおそれがないとの上記認定を覆すに足りない。
オ したがって,原告商標と被告標章は,これを同一又は類似の商品に使用しても相紛れることはなく,その商品の出所について混同するおそれはないから,類似しないというべきである。
(4) 商標権に基づく請求についてのまとめ よって,被告が,被告標章の使用によって原告の商標権を侵害したことを理由とする原告の請求は,その余の争点について判断するまでもなく,理由がない。
2 争点(2)イ(原告の商品等表示の周知性)及び同ウ(被告標章と原告の商品等表示の類似性)について 次に,原告の不正競争防止法に基づく請求の当否について判断するが,これも,争点(2)ア(商品等表示的使用の有無)についてはしばらく措き,まず,争点(2)イ及びウについて判断する。
(1) 前示1(1)のとおり,原告商品等表示のうち「ビジョンメガネ」は,全国的な著名性を獲得しているかどうかはともかく,少なくとも現在の被告の営業範囲が含まれる関西地域において需要者の間に広く知れ渡っていると認められるものの,「VISION」「ビジョン」はそれだけでは原告商品等表示として上記地域における周知性を取得しているとはいえず,「ビジョンメガネ」は,不可分の商品等表示として周知性を取得したものにほかならないというべきである。
また,「VISION OPTIC」「VISION OPT」「Vision Optic」についても,前示1(1)で認定した事実によれば,その使用態様は,主として,人目を惹く特徴ある原告商標書体による「ビジョンメガネ」に付随して用いられているものと認められ,少なくとも商品等表示により出所を識別する需要者に対し,それ独自で原告の識別標識として用いられていたことを認めるに足りない。
したがって,「ビジョンメガネ」を除く原告商品等表示が周知性を取得しているとは認められない。
(2) そこで,被告標章が,原告商品等表示のうち,関西地域における周知性を取得したと認められる「ビジョンメガネ」と類似するか否かを検討する。
ある商品等表示が不正競争防止法2条1項1号にいう他人の商品等表示と類似のものに当たるか否かについては,取引の実情の下において,取引者又は需要者が両表示の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するべきである。
しかるところ,原告商品等表示である「ビジョンメガネ」は,人目を惹く特徴ある原告商標書体からなるもので,被告標章のいずれとも外観を異にすることが明らかであり,「ビジョンメガネ」は「ビジョンメガネ」と称呼されるのに対し,被告標章は,いずれも「ビジョンスクエア」と称呼されるものであって,称呼の上でも両者は類似せず,さらに,被告標章が「視覚に関する物(眼鏡,コンタクトレンズ等)に関する商品,サービスを提供する(四角い)売り場又は街区」から連想される「種々の売り場の集合した店舗あるいは広場」の観念を生ずるものと認めるのが相当であるから,「ビジョンメガネ」とは観念においても類似しない。
以上のとおり,原告商品等表示と被告標章とでは外観,称呼,観念のいずれをとっても類似しないから,取引者又は需要者が,被告標章の印象から,「ビジョンメガネ」を連想し,両者を全体的に類似のものとして受け取り,両者に混同が生じるおそれがあるとも認められない。
(3) なお,原告の顧客が,被告標章を見て,原告の店舗又は原告と何らかの関連性を有する店舗であるとの混同を生じて被告店舗へ行った事例が平成16年3月上旬から同年11月11日にかけて3件発生したことが判明していることは前示のとおりであるが,これによって,両者に混同を生じるおそれがあるとの上記認定を左右するものでないことは,前示1(3)エで認定説示したとおりである。
(4) 以上によれば,被告標章は,「ビジョンメガネ」と類似すると認めることはできないから,被告が被告標章を使用することが不正競争防止法2条1項1号又は2号の不正競争行為ということはできない。したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の不正競争防止法に基づく請求は理由がない。
3 よって,原告の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 松宏之
裁判官 西森みゆき
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