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関連審決 審判1999-35601
関連ワード 指定商品 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項11号 /  4条1項15号 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  離隔的 /  離隔的観察 /  取引の実情 /  存続期間 /  無効審判 /  更新登録 /  非類似 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 300号 審決取消請求事件
原告 バレンチノグローブ ベスローテン フェンノートシャップ
訴訟代理人弁護士 服部成太,稲益みつこ,弁理士 杉村興作,末野徳郎,廣田 米男
被告 フローレンスファッションズ(ジャージー)リミテッド
訴訟代理人弁理士 鈴江武彦,石川義雄,小出俊實,吉田親司,吉野日出夫,松 見敦子,宮永栄,幡茂良
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/03/20
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が平成11年審判第35601号事件について平成14年2月5日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 被告が商標権者である本件登録第4171470号商標は,構成を次のとおりとし,指定商品を第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」として,平成8年10月9日に登録出願,平成10年7月31日に設定登録された。原告は,平成11年10月27日,本件商標登録の無効の審判を請求したが(平成11年審判第35601号),平成14年2月5日,審判の請求は成り立たないとする審決があり,その謄本は同月15日原告に送達された。
本件商標 原告は,審判請求において,本件商標は商標法4条1項11号及び15号に該当すると主張し,次の登録商標を引用した(11号該当として引用A,B商標を引用,15号該当として引用C商標も合わせて引用)。
(1)登録第1560711号商標(引用A商標) 下記の構成で,指定商品を旧第21類「装身具,ボタン類,かばん類,袋物,宝石及びその模造品,造花,化粧用具」として,昭和54年9月25日に登録出願,昭和58年1月28日に設定登録され,平成5年6月29日に商標権の存続期間更新登録がされている。
(2)登録第1635912号商標(引用B商標) 下記の構成で,指定商品を旧第22類「はき物,かさ,つえ,これらの部品及び付属品」として,昭和54年9月25日に登録出願,昭和58年11月25日に設定登録され,平成6年1月28日に商標権の存続期間更新登録がされている。
(3)登録第2072497号商標(引用C商標) 下記の構成で,指定商品を旧第17類「被服,布製身回品,寝具類」として,昭和54年9月25日に登録出願,昭和63年8月29日に設定登録され,平成10年3月31日に商標権の存続期間更新登録がされている。
引用A〜C商標 2 審決の理由の要点 (1) 商標法4条1項11号該当性についての審決の判断 (1)-1 本件商標と引用A,B商標は,それぞれ上記の構成よりなるものであるところ,商標の構成を上記のとおりにする本件商標は,一見して2個の構成要素からなるものと看取させるものであって,外側部に配置した字形は,楕円状の右方に間隙を有し,その下部末端を内側に直線を引き出して表した構成態様から,アルファベット「G」を表したものと,また,これに重ねるように置した字形は,アルファベット「V」を表したものとそれぞれ容易に理解し把握させるというのが自然である。
してみると,本件商標は,ほぼ同じ太さの線により,視覚上,軽重・主従にないアルファベット「G」と「V」とを組み合わせ,「G」の字形により外形が卵状にレタリングされたモノグラム図形として印象し記憶され取引に資されるといえる。
これに対し,商標の構成を上記のとおりにする引用A,B商標は,アルファベット「V」のセリフ(線飾り)部分から左右に曲線を引き出し,下方はこれに繋げてバーテックス(下部先端)部分に接する直線をもって,該「V」の文字を囲むように,その外郭部が四隅に丸みを帯びた横矩形的図形とを結合させてなる図形として看取させるものである。
(1)-2 そこで,本件商標と引用A,B商標とを比較すると,両者は全体の構成において,本件商標はその外形が卵形として,また,各引用商標は四隅に丸みを帯びた横矩形として扁平的な外形との相違に加え,本件商標はアルファベット「G」と「V」とによるモノグラム図形として看取されるのに対し,引用A,B商標はアルファベット「V」と単なる細線による輪郭的図形との結合よりなるとものと看取させるものであるから,その構成要素及び態様において,異なる印象を受けるものであり,両商標は顕著な外観上の差異が認められる非類似の商標といわなければならない。そのほか称呼及び観念上においても両者を類似のものとすることはできない。
したがって,本件商標を商標法4条1項11号に該当するものとすることはできない。
(1)-3 原告(無効審判請求人)は,本件商標と引用A商標は,共に一見,横長楕円形様の図形内中央に,最も看者の注意を惹く,「V」字形の図形を配した幾何学的図形である点をも共通にするものであり,外観上類似する商標である旨述べているが,本件商標と引用A,B商標は,共にアルファベット「V」の文字をその構成要素の一つにするとしても,前記の認定のとおり,これ自体が独立して自他商品の識別標識として機能するものとは認め難いものであり,かつ,原告の述べる主張及び証拠をもってしてこれを認めるべき事由は見いだし得ない。
(2) 商標法4条1項15号該当性についての審決の判断 本件商標と引用A〜C商標は,前記認定のとおりであり,その構成及び印象において顕著な外観上の差異が認められる別異の商標というべきものである。
そうすると,たとい,原告所有の引用A〜C商標が婦人服,紳士服,ネクタイ等の被服,バンド,バッグ類,靴,ライター等に「VALENTINO GARAVANI」「valentino garavani」「valentino」及び「バレンティノ ガラヴァーニ」等の商標と併用し使用され(審判甲第23号証ないし第56号証),これと独立してもファッション関連各商品を表彰するいわゆるデザイナーズブランドとして,本件商標の登録出願の日前より著名なものとなっていることを認め得るとしても,本件商標のかかる構成態様よりして,これに接する需要者の商取引における一般の注意力をして,直ちに世界的に著名な各引用商標を想起するものといえないから,本件商標をその指定商品に使用した場合,その商品が原告又は原告と関係のある者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれのないものというのが相当である。
(3) 以上のとおり,本件商標は,商標法4条1項11号及び15号のいずれにも該当するものでなく,これら法条の規定に違反して登録されたものとはいえないから,その登録は,商標法46条1項の規定により,これを無効とすることはできない。
原告主張の審決取消事由
1 審決が11号該当性を否定したのは,誤りである。
(1) 本件商標が2個の構成要素からなるものと看取され,外側部の横長楕円状の図形がアルファベットの「G」を表し,これに重ねるように配置した図形がアルファベットの「V」を表すものであるとしても,商標に接する需要者は常にその構成要素を明確に看取するとは限らないから,本件商標は,一見して,全体として幾何学的図形を表したものと看取される場合も多い。
引用A,B商標は同一の構成に係る幾何学的図形からなるものであり,一見して外側部を構成する上方中央部に間隙のある横長楕円形様の図形とその外側部の中央に内接するように配した「V」字形の図形からなる幾何学的図形として看取されるものであって,両引用商標の外側部は,審決認定のように「四隅に丸みを帯びた横矩形的図形として看取されるもの」でないことは,矩形とは「各頂角が直角である平行四辺形」であり,「矩形」の語に「平行四辺形」の意味も含むことからして,誤りである。
(2) 引用A,B商標(更には引用C商標)は同一の構成に係るものであり,デザイナーズブランドとして本件商標の登録出願の日前より著名なものとなっている。
商標が類似するか否かの判断は,需要者層の知識の程度や商取引の実情も勘案されなければならないことはいうまでもないが,商品に商標を附する行為として,例えばベルトの金具(バックルのベルト本体への固定金具)に刻印したりすることやシャツやハンカチーフに織り込んだり,皮革製品に型押ししたりして商標が小さく表示される場合も決して少なくないのが実情である。審決は,離隔的観察をしていない。
すなわち,本件商標の外観上圧倒的に顕著な部分は,横長楕円形様の図形とその中央に重なるように配した「V」字形の図形であって,この部分が最も強く印象づけられ,横長楕円形様の図形の右の方の間隙部分と極めて短い横線の部分は全体の構成上著しく希薄な印象を与えるにすぎないものであり,他方,両引用商標も,外観上圧倒的に顕著な部分は横長楕円形様の図形とその中央に内接するように配した「V」字形の図形であって,この部分が最も強く印象づけられ,横長楕円形様の図形の上方中央の間隙部分等は全体の構成上著しく希薄な印象を与えるにすぎない。
したがって,本件商標と引用A,B商標は,仔細にみると,それぞれの外側部の間隙の位置及び極めて短い横線の有無等の形態上の細部に差異がないことはないとしても,一般に取引者及び需要者は,必ずしも商標の構成を細部にわたり正確に記憶し,想起するものとは限らず,商標全体の主たる印象によって商品の出所を識別する場合も少なくないから,本件商標と両引用商標は,商品に同一の大きさであるいは小さく表示された場合,幾何学的図形全体の構成が極めて近似していて,時と所を異にして離隔的に観察するときは,外観上,互いに紛れやすく,取引上混淆を生じさせるおそれのある類似の商標である。
2 審決が15号該当性を否定したのは,誤りである。
本件商標は幾何学的図形からなり,指定商品は第18類に属する。引用C商標は幾何学的図形からなり,引用A,B商標と構成を同じくするもので,指定商品を(旧)第17類とする。本件商標と引用C商標が類似するものであり,他方,引用C商標はその指定商品について使用された結果,著名なものとなっている。
本件商標の指定商品と引用C商標の指定商品は,互いに類似する関係にはないが,生産者や商品の流通経路を同じくする場合の多いものであるばりでなく,装飾品の範疇に属する商品も多く,需要者層を同じくする密接な関係にある商品であるから,本件商標は,指定商品に使用された場合,需要者は,その商品があたかも原告の業務に係る商品であるかのように,その出所について誤認を生ずるおそれがある。
当裁判所の判断
1 11号該当の有無について 本件商標はアルファベット「G」と「V」を組み合わせ,「G」の字形によって外形が卵状にレタリングされたモノグラム図形としての印象によって記憶され取引に資されること,引用A,B商標は,「V」の文字を囲むように,その外郭部が四隅に丸みを帯びた横矩形的図形とを結合させてなる図形として看取させるものであることは,審決が認定判断したとおりであり,この認定判断に誤りはない。この両者は,外形が相違し,構成要素及び態様において,異なる印象を受けるものであることから,顕著な外観上の差異が認められ,称呼及び観念上においても両者を類似のものとすることはできないとした審決の認定判断も同様支持し得るところである。
原告は,本件商標の外観上顕著な部分は,横長楕円形様の図形とその中央に重なるように配した「V」字形の図形であると主張する。しかし,本件商標の「V」の字形と「G」の字形は,共に同じ線太によるゴシック体状で描かれ,「G」の字形は,「V」の字形で一部途切れている部分はあっても,右横に大きくな切れ目があり,その切れ目の下部分には線が内側に入り込んでいて「G」の字形の特徴を表している。本件商標が上記のとおり同じ線太で描かれていて「V」の字形の印象だけが顕著なものとなっていないのに対して,引用A,B商標は,「V」の字形の左斜線が右斜線よりも顕著に太く描かれていて,よくある印刷体形状のままの「V」字形が強調されたものとなっている。ここにおいても,本件商標と引用A,B商標に接する者にとって,両者を異なる印象を持つものとして受け止めるものと認めることができる。原告の主張は,理由がない。
その他,原告が本訴で主張する点にかんがみても,引用A,B商標との対比における商標法4条1項11号該当事由を認めることはできず,これを否定した審決の判断に誤りはない。
2 15号該当の有無について 審決が説示したように,原告所有の引用A〜C商標が婦人服,紳士服,ネクタイ等の被服,バンド,バッグ類,靴,ライター等に「VALENTINO GARAVANI」「valentino garavani」「valentino」及び「バレンティノ ガラヴァーニ」等の商標と併用し使用され,これと独立してもファッション関連各商品を表彰するいわゆるデザイナーズブランドとして,本件商標の登録出願の日前より著名なものとなっていることが仮に認められるとしても(審判甲第23号証ないし第56号証に対応する本訴の甲第23号証ないし第56号証),本件商標も,指定商品について実際に使用されていることが認められる以上(乙第3号証),そしてまた,本件商標と引用A,B(引用C商標も同じ構成である。)とが異なる印象を受けるものである以上(前記の判断),引用A〜C商標との間で出所の誤認を生じるものとは認めることができない(実際にそのような誤認が生じていることを認めるべき証拠もない。)。
よって,商標法4条1項15号該当性を否定した審決の判断に誤りはない。
結論
以上のとおり,原告主張の審決取消事由はいずれも理由がないので,原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実