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関連審決 審判1999-35680
関連ワード 識別力 /  識別機能 /  指定商品 /  普通名称(3条1項1号) /  記述的商標(3条1項3号) /  品質誤認(4条1項16号) /  無効審判 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 30号 審決取消請求事件
原告 森下仁丹株式会社
訴訟代理人弁理士 青山 葆,樋口豊治,大西育子,西津千晶
被告 有限会社ビーインミュージアム
訴訟代理人弁護士 清水三郎,吉能 平,同弁理士 水野喜夫
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/11/14
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
特許庁が平成11年審判第35680号事件について平成13年12月5日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
前提となる事実
1 特許庁における手続の経緯 (1) 本件商標 商標権者 森下仁丹株式会社(原告) (原商標権者はランカアーユルベーディックハーブ薬品株式会社,その後,コマニー株式会社を経て,原告に移転。原告への移転登録日は平成12年4月5日。) 商標 「サラシア」の片仮名文字を横書きしてなるもの。
登録出願日 平成8年12月3日(商願平8-136754号) 登録査定日 平成10年10月2日 設定登録日 平成10年12月4日 登録番号 第4217020号 登録時の指定商品 第29類「粉末又は顆粒状の乾燥ハーブを主原料とし,これに乾燥茶葉を混合してなる加工食品,乾燥ハーブを粉末又は顆粒状にしてなる加工食品」 一部抹消による減縮後の指定商品 「粉末状又は顆粒状の乾燥サラシアレティキュラータ,同サラシアオブロンガ又は同サラシアプリノイデスを主原料とする加工食品」 一部抹消登録日 平成12年10月11日 (2) 本件審判手続 無効審判請求日 平成11年11月19日(平成11年審判第35680号) 審決日 平成13年12月5日 審決の結論 「登録第4217020号の登録を無効とする。」 審決謄本送達日 平成13年12月17日(原告に対し) 2 審決の理由の要旨 (1) 審決の理由のうち,「第1 本件商標」,「第2 請求人の主張」,「第3 被請求人の答弁」(本件審決書1〜22頁参照)の転記をすることは,省略する。
(2) 審決の理由のうち,「第4 当審の判断」の記載は,次のとおりである(誤記の点を含め,原文のままを転記した。)。
「本件商標は,上記に示すとおり「サラシア」の文字を書してなるものである。
そこで,請求人の提出に係る証拠についてみるに,甲第7号証の「健康の王国(ダイエット特集号)」(平成10年2月20日 健康の王国愛読者クラブ発行)には,「サラシア」に関して「『サラシア』はラテン名でサラシアレティキュラータ。スリランカの特定地域とインド南部に存在し,分布は非常に限定されています。」,「糖質は酵素で分解されブドウ糖となり,過剰なものは脂肪組織に蓄えられます。サラシアは微量で糖質の分解を阻止するため,食後の血糖値の上昇を抑えます。食前にサラシア茶を飲むことで,余分な中性脂肪が体内にたまるのを防ぎます。」等と記載されている事実が認められる。
また,甲第8号証の「産経新聞」(平成10年5月25日)には,被請求人である森下仁丹株式会社の全面広告が掲載されており,そこでは被請求人自身も「サラシア」に関して「『サラシア』はインドなど民間で,ダイエットに愛用されてきた健康食品です。」「・・・サラシアは,スリランカやインド南部の高地のごく一部に生える藤の木のようなツル性の植物。インドでは,その葉を煎じたり,サラシアの幹で作ったカップに寝る前に水を入れ,翌朝,成分が滲み出した水を飲むといった形で利用されてきた。・・・」等,該「サラシア」を品質・原材料を表示する語として普通に使用している事実が認められる。また,甲第11号証ないし甲第18号証は,本件商標の登録査定後ものと認められるものであるが,その記載内容によれば「サラシア」の紹介及びこれを原材料とする「健康食品,茶」の開発が本件登録査定時以前から行われていたことを窺わせるものである。
上記,請求人の提出に係る甲各号証を総合勘案すれば,「サラシア」の語は,被請求人(出願人の「ランカアーユルベハーブ薬品株式会社」を含む)が創作した造語ではなく,本件商標登録査定時の平成10年12月頃には,スリランカの特定地域とインド南部に存在する藤の木のようなツル性植物でその根と茎が糖尿病の治療に効果を有する「サラシアレティキュラータ」の略称であり,健康食品,茶等の原材料として使用されるものであることが,取引者・需要者間に広く知られていたものと認められる。
そうとすれば,本件商標をその指定商品に使用した場合,これに接する取引者・需要者は,その商品が単に「サラシア,粉末または顆粒状の乾燥ハーブ及び乾燥茶葉を混合してなる加工食品」であると認識するに止まるものとみるのが相当である。
してみれば,本件商標は,これを「サラシア,粉末または顆粒状の乾燥ハーブ及び乾燥茶葉を混合してなる加工食品」について使用するときは,単に商品の品質,原材料を表示するにすぎず,また,これを上記商品以外の加工食品に使用するときは,その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
したがって,本件商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであり,同法第46条第1項第1号により,その登録は無効とすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。」
原告主張の審決取消事由の要点
1 審決は,次の点で誤っている。
(1) 「サラシア」なる文字は,本件商標の出願日(平成8年12月3日)前はいうまでもなく,原告が「サラシアレティキュラータを主原料とする加工食品」の販売を開始した時点(平成10年3月)においても,十分に自他商品識別力を有していたにもかかわらず,審決は,わずかな証拠に基づいて,「該「サラシア」を品質・原材料を表示する語として普通に使用している」と認定したものであり,この認定は誤っている。
(2) 審決の「甲第11号証ないし甲第18号証は,本件商標の登録査定後のものと認められるものであるが,その記載内容によれば「サラシア」の紹介及びこれを原材料とする「健康食品,茶」の開発が本件登録査定時以前から行われていたことを窺わせるものである。」との認定は,上記証拠の評価を誤り,事実を誤認したものである。
(3) 審決の「本件商標登録査定時の平成10年12月頃には,スリランカの特定地域とインド南部に存在する藤の木のようなツル性植物でその根と茎が糖尿病の治療に効果を有する「サラシアレティキュラータ」の略称であり,健康食品,茶等の原材料として使用されるものであることが,取引者・需要者間に広く知られていたものと認められる。」との認定も誤っている。
(4) 審決の「本件商標は,これを「サラシア,粉末または顆粒状の乾燥ハーブ及び乾燥茶葉を混合してなる加工食品」について使用するときは,単に商品の品質,原材料を表示するにすぎず,また,これを上記商品以外の加工食品に使用するときは,その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。」との認定判断も誤りである。
2 「サラシアレティキュラータ,サラシアオブロンガ,サラシアプリノイデス」なる植物のエキスが腸内で糖の分解とその吸収を阻止する作用を有することに着目し,当該植物を主材とする加工食品及び茶をわが国で初めて製造・販売したのは原告である。当然,それ以前においては,わが国の一般需要者・取引者が「サラシア」の文字に接する機会はなく,極めて限られた一部の学識者のみが専門的な知識を有していたにすぎない。そうすると,本件商標の出願(平成8年12月3日)前はいうまでもなく,原告が「サラシアレティキュラータを主原料とする加工食品」の販売を開始した時点(平成10年3月)において,「サラシア」なる本件商標が,その指定商品について自他商品識別力を十分に発揮するものであったことは明白である。よって,本件商標が商標法3条1項3号に該当するというためには,本件商標登録査定時(平成10年10月2日)において,上記のように有していた自他商品識別力を全く喪失したとする事情が存在したか否かについて検討する必要がある。しかし,登録査定日前に甲第4,第8号証などの影響を受けて,本件商標の識別力が一部蚕食されたかもしれないとしても,本件商標の登録の有効性が否定される程度にその識別力が喪失されたということはできず,本件商標の登録が商標法3条1項3号の無効理由を有していないことは明らかである。
また,本件商標は,「サラシアレティキュラータ」の略称ではなく,登録査定日前から現在に至るまで,自他商品識別機能を十分に発揮し続け,原告の営業努力により識別機能は増大している。したがって,商標法4条1項16号の商品の品質の誤認を生ずるおそれはない。
被告の主張の要点
審決の認定には誤りはない。原告主張のように,「サラシア」なる文字が十分な自他商品識別力を有していたとの点は否認する。「サラシア」なる文字は,本件商標の出願時であれ,登録査定時であれ,自他商品識別力を欠如していた。原告自身や原告の関係者ですら,「サラシア」なる文字が「サラシアレティキュラータ」,「サラシアオブロンガ」,「サラシアプリノイデス」を意味する略称として一般に使用されているとの明確な認識を有していたものである。
なお,「サラシアレティキュラータ,サラシアオブロンガ,サラシアプリノイデス」を原材料とする製品をわが国で初めて製造・販売したのは,原告ではなく,有限会社亜羅仁館である。
当裁判所の判断
1 原告の主張は,要するに,本件商標の登録査定時(平成10年10月2日,甲2)において,「サラシア」なる本件商標が,その指定商品について自他商品識別力を十分に発揮するものであり,また,「サラシアレティキュラータ」の略称などではない旨をいうものであり,前記第3のとおり,審決の認定判断の誤りを主張するので,以下に検討する。
(1) 証拠(乙1,4,5,6-1,6-2,15,16,24-1,24-2,27)及び弁論の全趣旨によれば,「サラシアレティキュラータ」,「サラシアオブロンガ」,「サラシアプリノイデス」という名称の植物は,「ニシキギ科」「サラシア属」に分類される植物であること,したがって,「サラシア」という文字は,上記植物名の冒頭部分の4文字であるとともに,属の名称そのものであることが認められる。
(2) 本件商標登録査定時よりも前に作成されたものと認められる証拠(甲4,8,10,乙15,16)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(a) 甲第4号証(審判甲7)は,原告会社内の「健康の王国」愛読者クラブが発行した平成10年2月20日付けの「健康の王国(ダイエット特集号)」であり,これには,「「サラシア」ってどのような植物なのですか?。「サラシア」はラテン名でサラシアレティキュラータ。スリランカの特定地域とインド南部に存在し,分布は非常に限定されています。」,「サラシアの幹からつくられたくり抜き酒杯」,「天然植物「サラシア」」,「糖質は酵素で分解されブドウ糖となり,過剰なものは脂肪組織に蓄えられます。サラシアは微量で糖質の分解を阻止するため,食後の血糖値の上昇を抑えます。食前にサラシア茶を飲むことで,余分な中性脂肪が体内にたまるのを防ぎます。」との記載がある。
(b) 乙第15号証は,「スリランカ有用植物サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)水抽出物のラットおよびヒトの食後過血糖に及ぼす作用」と題する論文で,日本栄養・食糧学会誌Vol.51,No.5に掲載(平成10年5月19日受付)されたものであり,原告のマーケティング開発本部所属のAら3名によるものである。これには,「サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata Wight,以下サラシア)は,スリランカに自生するニシキギ科(Celastraceae)のツル性樹木で,・・。古来サラシアの樹皮は,スリランカの降雨量の少ない一部の地域において,渇水により塩分濃度が上昇した井戸水の飲用が原因で引き起こされる腎障害を予防する目的で,薬草茶として飲用されてきた。また今日,サラシアの根皮や樹皮は,糖尿病を予防する効能をもった食材として,ハーブティー等に使用される他,市場ではその幹を加工して作ったコップや瓶が売られており,これらに水を入れ,日常の飲用水として使用することで,含有成分が徐々に溶け出し,血糖値を下降させる作用があるといわれている。」,「スリランカより購入した乾燥サラシア(Salacia reticulata Wight)」などの記載がある。
(c) 甲第8号証(審判甲8)は,平成10年5月25日発行の産経新聞で,原告が提供する全面広告である。これには,「「サラシア」はインドなど民間で,ダイエットに愛用されてきた健康食品です。」,「サラシアは,スリランカやインド南部の高地のごく一部に生える藤の木のようなツル性の植物。インドではその葉を煎じたり,サラシアの幹で作ったカップに寝る前に水を入れ,翌朝,成分が滲み出した水を飲むといった形で利用されてきた。」,「サラシアの葉」,「スリランカ直輸入の希少な天然植物」などの記載があり,さらに,植物の写真を掲載した上,これを「サラシアの原木」との説明を付している。
(d) 甲第10号証(審判甲12)は,平成10年7月23日付け健康産業流通新聞である。ここでは,「東南アジアに自生するニシキギ科植物で,学術名はサラシアオブロンガのこと。地上茎をインドではポンコランチとよぶ。アーユルヴェーダ伝承医学では,糖尿病に効果があるとされ,現地では,ティーバッグとして飲用されている。」,「この研究結果から,亜羅仁館(東京都武蔵野市)が「ポンコランチ」を昨年開発,・・同社では,・・全国展開を開始。また,大手婦人雑誌の通販商品にも採用されるなど・・」との記載がある。
(e) 乙第16号証は,「ニシキギ科植物サラシア幹抽出エキスの安全性」と題する論文で,食品衛生学雑誌40巻3号別刷に掲載(平成10年9月21日受付)されたものであり,原告の前記Aと株式会社日本バイオリサーチセンターのBら6名によるものである。これには,「サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata Wight,以下サラシア)は,スリランカに自生するニシキギ科(Celastraceae)のツル性樹木」,「サラシアの幹の水抽出物が,強いαグルコシダーゼ阻害作用を有し」,「サラシアが有する糖尿病予防作用」などの記載がある。
(3) 以上の(1),(2)によれば,本件商標登録査定時よりも前から,原告によって((a)(b)(c)),あるいは原告の開発担当者と株式会社日本バイオリサーチセンターの研究者らによって((e)),「サラシアレティキュラータ」という植物名の略称として「サラシア」が使用され,それは,糖質の分解を阻止し,食後の血糖値の上昇を抑え,余分な中性脂肪が体内にたまるのを防ぐなどの効果を期待する健康食品ないし飲料の品質,原材料を示すものとして使用されていたことが認められ,そのことは,取引者はもとより一般消費者をも対象とする全国紙の新聞をも含めたメディア媒体でも発表,伝達されたものである。
また,「サラシアレティキュラータ」という名称についてみると,長く呼称がしにくいので,「サラシア」との略称が使用されるようになることが容易に想起され,この略称の使用は自然なこととして広く一般に受け入れられるであろうことも容易に推察し得るところである。しかも,「サラシア」というのは,「サラシア属」という属の一般名称そのものでもある。
結局,「サラシア」との言葉が原告あるいは本件商標の登録出願人であるランカアーユルベーディックハーブ薬品株式会社によって創作された造語であることを裏付ける証拠はなく,「サラシア」との言葉は,本件商標登録査定時において,前記のような効能が期待される健康食品,茶等の原材料となる「サラシアレティキュラータ」の略称として取引者,需要者の間で広く知られていた旨をいう審決の認定は,是認し得るものである。
なお,原告は,「サラシアレティキュラータ」,「サラシアオブロンガ」,「サラシアプリノイデス」なる植物を主材とする加工食品及び茶をわが国で初めて製造,販売したものであり,市場の先駆性を有すると主張するが,上記(d)のほか,乙第6号証の1,2によれば,サラシア属に属する植物を使った末端商品を日本で初めて開発したのは,有限会社亜羅仁館であり,同社は,サラシアオブロンガを主成分にした商品を主力としており,これにサラシアレティキュラータを主成分にした原告の商品開発が続いたことが認められ,原告の主張は必ずしも正確ではない。
(4) 審決が引用する本件商標登録査定後に成立した証拠(甲9ないし16〔審判甲11ないし18〕)は,本件商標登録査定前における「サラシア」という言葉の使用状況を直接的に示す記載を有するものではないが,これらには,もともとサラシア(サラシアレティキュラータ)がインドやタイで自生しているニシキギ科の植物で,約5000年前からインドに伝わる医学書にその薬効が記されており,インドで古くから愛飲され,血糖値上昇を防ぐ効果があるとされ,スリランカでも糖尿病に効き目があるなどとされていたところ,日本の研究者がこれに着目して持ち帰り,薬科大学との共同研究などにより,成分の分析や効能の解明がされていき,健康食品等としての開発が進められ,商品化されて全国に広まっていった経緯などが記載されているのであり(上記証拠のうち,特に,甲9〔審判甲11〕,甲11〔審判甲15〕,甲13〔審判甲18〕に詳しいが,その余も,多少なりとも関係する記載がみられる。),上記(3)の認定と矛盾しないばかりか,インド,スリランカにおける長い歴史を受けて,本件商標登録査定前から学術的な研究,分析のほか,健康食品等としての商品開発がされてきたことをうかがわせるものであり,上記(3)の認定を間接的に補強するに足りるものである。
さらに,証拠(乙1,5,6-1・2,7ないし9-1・2,11ないし14,17ないし23,27〔30も同じ〕,29,32ないし34)によれば,本件商標登録査定後も「サラシア」という言葉が,新聞,雑誌,インターネットサイトなどにおいて,サラシアレティキュラータ,サラシアオブロンガ,サラシアプリノイデスなどサラシア属の植物の略称として,広く使用されていることがうかがえるのであり,前記(3)で認定した事情が本件商標登録査定時の前後を通じて一貫していることを示すものである。
(5) 以上によれば,本件商標「サラシア」は,「サラシアレティキュラータ」の略称として,あるいはその属する属の名称そのものとして,前記の一部抹消により限定された指定商品について使用されるときには,単に商品の品質,原材料を表示するにすぎないものであり,そして,上記指定商品以外の加工食品に使用するときは,その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあることが認められるのであって,この趣旨をいう審決の認定判断に誤りはない。
以上判示したところからすると,原告が審決の誤りとして主張する点は,いずれも採用することができないことが明らかである。
2 本件では,多くの証拠についての評価が争われたので,以下,この点に関する原告の主張について,補足説明をしておく。
(1) 原告は,前掲のように甲第4号証(審判甲7)及び甲第8号証(審判甲8)において,「サラシア」なる文字が「サラシアレティキュラータ,サラシアオブロンガ,サラシアプリノイデス」の名称の略称であるかのごとき誤解を招きかねない方法で使用されている旨を認めつつも,それは,執筆した新聞記者の商標に対する理解不足や,情報提供した原告会社担当者(開発担当者,広報担当者)の商標に対する知識不足,理解不足によるものである旨を主張する。
しかしながら,前判示のとおり「サラシア」の語は,造語であるとは認められず,サラシア属の植物であるサラシアレティキュラータ等に由来するものであり,これらの植物については,その薬効が注目され,健康食品,茶等の原材料として用いられていること自体は,当時においても客観的な事実であり,「サラシア」の語の使用方法に格別の誤りがあるとはいえないから,原告の主張は前提において理由がなく,甲第4,第8号証による認定を妨げるものではない(なお,商品原材料などについて最も正確な情報を有しているはずの原告の開発担当者や,会社の経営,営業の方針を対外的に公表,説明する広報担当者について,上記のような商標に対する知識不足,理解不足によるものと主張すること自体が不自然である上,その主張を認めるに足りる証拠もない。)。
(2) 原告は,前項主張の誤りに気づき,「サラシア」の文字の使用方法を自ら是正したとも主張する。
本件証拠(甲3)には,原告の主張に沿ったものも存在し,原告は,平成11年7月以降,「サラシア」の文字を使用するときは必ず登録商標である旨を表示することとしたことがうかがえ,また,乙第25号証の3によれば,平成11年6月21日までにマスコミに対し「サラシア」を普通名称的に扱わないよう要請したことが認められる。しかしながら,本件商標登録査定時から1年以上も経過し,上記のように対処したとされる時期よりも後である平成11年12月9日に原稿が受け付けられた乙第27号証(乙30も同じ)においても,原告の開発担当部門に所属するAら3名は,日本栄養・食糧学会誌53巻4号に掲載した論文において,「インドやスリランカの熱帯雨林に自生するサラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata,以下サラシア)」というように,平成10年の本件商標登録査定前の論文(乙15〔著者は乙27と同一〕,乙16〔Aが共著者〕)と同様に,相変わらず,「サラシア」を「サラシアレティキュラータ」の略称として使用していることが認められる。
さらに,平成12年以降においても,前記認定(1の(4)後段)のとおり,「サラシア」の語が新聞,雑誌,インターネットサイトなどにおいて,サラシアレティキュラータ,サラシアオブロンガ,サラシアプリノイデスというサラシア属の植物の略称として広く使用されていることが認められる。
したがって,原告の上記主張をもってしても,前記1の認定を覆すに足りるものではない。
(3) 原告は,多くの証拠(甲9〔審判甲11〕,甲10〔審判甲12〕,甲11〔審判甲15〕,甲12〔審判甲17〕,甲13〔審判甲18〕,乙1,2,5,10,11,14,17,18,23)について,C(原告の元取締役研究開発部長,以下「C」という。)又は同人が会長を務めるサラシノール研究会を情報源とするものであるとした上,Cが自らの利益のために原告に対する背信行為を重ねた事情を主張し,Cは,原告に対する遺恨から,あたかも「サラシア」なる文字が普通名称であるかのごとく,上記研究会会員を誤導し,意図的に紛争を煽り立てたものであるから,上記証拠には特殊な背景事情がある旨主張して,証拠を弾劾する。
しかし,原告の主張を裏付けるに足りるだけの立証はない上,「サラシア」を「サラシアレティキュラータ」の略称として,植物の普通名称のように使用しているのは,上記証拠に限らず,原告の担当者さえもがそのように使用してきたことは前記のとおりであり,その他,本件証拠によれば,原告やC以外の研究者及び取引者も概ね同様の使用の仕方をしていることからすれば,原告の主張に沿って上記証拠の信用性を排斥したり,ことさらに低く評価しなければならないものとまでは認められない。
(4) 原告は,また,甲第14号証(審判甲13,登録査定前の新聞の決算報告面)及び甲第15号証(審判甲14,登録査定後の新聞の決算報告面)を援用して,これらに「ダイエット食品「サラシア」」との記載があることから,本件商標を自他商品識別標識として使用していることを示している旨主張する。
しかし,上記記事をみるに,単に原告引用の文言があるのみで,それ以上の説明はなく,これをもって直ちに本件商標を自他商品識別標識として使用していると認めることは困難である。
(5) 原告は,甲第17ないし第26号証の辞典,書籍のいずれにも「サラシア」なる語が全く採録されていないことも主張するが,このことが直ちに前記1の認定を覆すに足りるものとは認められない。
(6) 原告は,平成13年3月27日付けの厚生労働省医薬局長による「医薬品の範囲に関する基準の改正について」と題する医薬発第243号の書面(乙3)の別添3「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り食品と認められる成分本質(原材料)リスト」に「サラシア」との記載がある点につき,これをもって「サラシア」が植物の普通名称であるということはできない旨主張する。そして,原告は,原告の取締役総務部長から大阪府健康福祉部薬務課に対して上記の点について質問書を出したところ(甲27-1),上記リストの「サラシア」とあるのは「サラシアレティキュラータ」と解釈して差し支えないとの書面回答を得た(甲27-2)が,さらに電話で確認したところ,回答書の意味は,「サラシアレティキュラータ」と記載すべきところを誤って「サラシア」としてしまったということであったと主張する。
上記書証だけからは,「サラシアレティキュラータ」と同義として「サラシア」との言葉が使われたのか,「サラシア」が誤って使われたのかは判然としないが,いずれにしても,前記1の認定を左右するに足りるものではない。
3 結論 原告のすべての主張を精査しても,審決取消事由として主張するところはいずれも理由がなく,その他,審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 古城春実
裁判官 田中昌利
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