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関連審決 異議1999-90296
関連ワード 識別力 /  出所表示機能 /  指定商品 /  指定役務 /  普通名称(3条1項1号) /  慣用商標(3条1項2号) /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項15号 /  顧客吸引力(グッドウィル) /  類似性(類否判断) /  結合商標 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  継続 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 430号 商標登録取消決定取消請求事件
原告ザ ユニバーシティオブ ケンブリッジ
訴訟代理人弁理士 今村元
被告 特許庁長官太田 信一郎
指定代理人 村上照美
同 宮川久成
被告補助参加人 ザ ポロ/ローレンカンパニー リミテ ッド パートナーシップ
訴訟代理人弁理士 曾我道照
同 黒岩徹夫
同 岡田稔
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/10/30
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が平成11年異議第90296号事件について平成12年10月12日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とし,参加によって生じた費用は被告補助参加人の負担とする。
事実及び理由
請求
主文第1項と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,別添決定謄本別掲本件商標のとおりの構成からなり,指定商品を商標法施行令別表の区分による第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」とする商標登録第4209200号商標(平成6年12月19日登録出願,平成10年11月13日設定登録,以下「本件商標」という。)の商標権者である。
被告補助参加人(以下単に「補助参加人」という。)外1名は,平成11年2月22日,本件商標の商標登録につき登録異議の申立てをした。
特許庁は,同登録異議事件を平成11年異議第90296号事件として審理した上,平成12年10月12日,「登録第4209200号商標の商標登録を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし,その謄本は,同年11月2日,原告に送達された。
2 本件決定の理由 本件決定は,別添決定謄本写し記載のとおり,同別掲引用商標A及び同Bのとおりの構成からなる,横長四角形中に記載された「Polo」の文字とともに「by RALPH LAUREN」又は「by Ralph Lauren」の文字及び馬に乗ったポロ競技プレーヤーの図形の各商標(以下「引用各商標」という。)はラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する商標として取引者,需要者間に広く認識されるに至っていたものと認められるところ,本件商標をその指定商品について使用した場合には,これに接する取引者,需要者は,本件商標中の図形部分が馬に乗ったポロ競技プレーヤーであることに着目し,さらに,その「POLO」の文字部分に着目して,引用各商標を含むラルフ・ローレンのデザインに係る馬に乗ったポロ競技プレーヤーの図形及び「POLO」,「Polo」,「ポロ」等の文字が需要者の間に広く知られている商標(以下「ラルフ・ローレンに係るポロ商標」という。)を連想,想起し,その商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的,経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように出所について混同を生ずるおそれがあるから,本件商標は,商標法4条1項15号に違反して登録されたものであり,同法43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものとした。
原告主張の本件決定取消事由
本件決定は,ラルフ・ローレンに係るポロ商標の周知・著名性の認定を誤るとともに,本件商標をその指定商品に使用した場合の商品の出所混同のおそれについての判断を誤った(取消事由)ものであるから,違法として取り消されるべきである。
1 ラルフ・ローレンに係るポロ商標の周知・著名性 (1) 本件決定は,「引用商標は,ラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する商標として遅くとも昭和55年頃までには既にわが国において取引者,需要者間に広く認識されるに至っていたものと認められ,その状態は現在においても継続しているというのが相当である」(決定謄本4頁8行目〜11行目)と認定するが,誤りである。
(2) ラルフ・ローレンに係るポロ商標の構成中の「POLO」,「Polo」又は「ポロ」の語及び馬に乗ったポロ競技プレーヤーの図形(以下単に「ポロプレーヤー図形」ともいう。)は,自他商品識別力が全くないか,又は極めて乏しいというべきである。
ア 「POLO」,「Polo」又は「ポロ」の語及びポロプレーヤー図形は,まず,スポーツであるポロ競技を表すものであり,多くの業者が衣料品等の様々な商品について,「POLO」,「Polo」又は「ポロ」の文字を含む商標及び「POLO」,「Polo」又は「ポロ」の文字とポロプレーヤー図形とを組み合せた商標を使用してきたところから,我が国においても,ポロ競技が馬上ホッケーのようなスポーツであることは,取引者,需要者全般に浸透していたものである。
イ 「ポロシャツ」の語は,衣料品の種類を表し,ポロ競技の選手が着用したことにちなみ,米国の作家スコット・フィッツジェラルドが1920年に出版したベストセラー小説「This Side of Paradise」において初めて使用されたとされており,1920年代からはやり始めた。そして,「ポロシャツ」の定義は,ニット製で,襟腰のない襟を持つ衣料品であり,この襟はポロ襟と呼ばれている。言い換えれば,ポロ襟のあるスポーツシャツを「ポロシャツ」,ポロ襟のあるセーターを「ポロセーター」,ポロ襟のあるトレーナーを「ポロトレーナー」と呼んでおり,「ポロ」の語は,商品の形状を表すものであって,自他商品識別力がない。
また,「ポロ」は,「ポロシャツ」の略称でもあり,本件商標の指定商品を扱う被服業界では,商品の普通名称又は慣用商標であって,自他商品識別力のない語である。
ウ 補助参加人は,その主力商品である被服について登録商標を有しているわけではなく,また,その使用する商標は,「POLO」,「Polo」又は「ポロ」と「RALPH LAUREN」とを組み合せて使用するか,「RALPH LAUREN」のみを単独で使用している。したがって,補助参加人の使用する商標中,自他商品識別力があるのは「RALPH LAUREN」の部分である。
他方,ポロ・ビーシーエス株式会社は,被服に関し,「POLO」の文字からなる商標登録第1434359号商標(昭和47年6月13日登録出願,昭和55年9月29日設定登録,甲61,62)並びに「POLO」の文字及びポロの図形からなる商標登録第1447449号商標(昭和47年4月22日登録出願,昭和55年12月25日設定登録,甲63,64)を有し,これらを使用して商品展開を行っており,その外にも上記アのとおり多くの業者が衣料品等の様々な商品について,「POLO」,「Polo」又は「ポロ」の文字を含む商標並びに「POLO」,「Polo」又は「ポロ」の文字とポロプレーヤー図形とを組み合せた商標を使用し,また,フォルクスワーゲンは,「POLO」,「ポロ」の商標を付した自動車を販売し(甲69),三菱自動車のホームページにも,「PAJEROポロトレーナー」の宣伝がある(甲70)。このように,「POLO」,「Polo」又は「ポロ」の商標は単なるブランドの一つにすぎず,ラルフ・ローレンに係るポロ商標の周知・著名性は大幅に希釈された。
2 商品の出所混同のおそれ (1) 本件決定は,「本件商標に接した取引者,需要者は,その商標の図形部分が馬に乗ったポロ競技のプレーヤーであることに着目し,さらに,商標中の『POLO』の文字部分に着目し,ラルフ・ローレンのデザインに係る商標を連想,想起し,該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがある」(決定謄本5頁25行目〜30行目)と判断するが,誤りである。
(2) 本件商標は,別添決定謄本別掲本件商標のとおりの構成からなるところ,横向きの馬の上にポロ競技者が乗り,全体を黒く塗りつぶしたポロプレーヤー図形を上段に表し,その下に「C.U.P.C.」,「CAMBRIDGE UNIVERSITY POLO CLUB」の文字が全体の構成もバランス良く描かれたものである。これに対し,ラルフ・ローレンに係るポロ商標の一つである引用各商標は,シルエット状前向きの馬の上にポロ競技者が乗ったポロプレーヤー図形と「Polo」及び「by RALPH LAUREN」又は「by Ralph Lauren」の文字が一体的に合成されており,両者は明確に区別され,本件商標に接した取引者,需要者において,商品の出所について混同を生ずるおそれは全くない。
(3) 本件商標は,上記のとおり,「POLO CLUB」の文字部分の上にケンブリッジ大学を意味する「CAMBRIDGE UNIVERSITY」という,英国を代表し我が国でも著名な大学名が冠として付加されている。
ケンブリッジ大学は,13世紀に設立され,30のカレッジの集合体から成り,世界で最古の大学の一つである。その教育や研究の国際的名声は,多くのスポーツと文化的なクラブに対する伝統的な支援によっても,その価値が高められている。ケンブリッジ大学のスポーツクラブは50以上あり,その大多数は100年以上の歴史を有し,例えば,ケンブリッジ大学対オックスフォード大学のボートレースは世界中で4億人に達する人々にテレビ観戦された。このことは,ケンブリッジ大学のクラブが世界中で国際的地位と認識を有していることを示している。「CAMBRIDGE UNIVERSITY POLO CLUB」は,1873年にジョン・フィッツウィリアムにより創設された,近代ポロ競技の創設メンバーであり,その総裁は英王室のチャールズ皇太子である。
このように,ケンブリッジ大学は,ラルフ・ローレンとは歴史,事業,規模,社会的地位が全く異なり,本件商標中の「CAMBRIDGE UNIVERSITY」の文字部分がラルフ・ローレンとの関連性を強く打ち消す要素となっているから,義務教育を受けた我が国の普通の取引者,需要者であれば,本件商標に接した場合,両者の間に組織的,経済的な関係があると認識することはあり得ず,著名な大学名である「CAMBRIDGE UNIVERSITY」の冠部分から,ケンブリッジ大学と本場のポロ競技との自然な結び付きを直せつにイメージし,ケンブリッジ大学に関係したポロクラブであると認識するというべきであるから,商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
被告及び補助参加人の反論
本件決定の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
1 ラルフ・ローレンに係るポロ商標の周知・著名性について (1) ラルフ・ローレンに係るポロ商標は,ラルフ・ローレンが,商品「被服,眼鏡」等に長年使用し,本件商標の登録出願前より現在に至るまで継続して周知・著名であるとした本件決定の認定に誤りはない。
米国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは,1967年(昭和42年)に幅広ネクタイをデザインして注目され,1970年(昭和45年)と1973年(昭和48年)にはコティ賞を受賞し,さらに1974年(昭和49年),映画「華麗なるギャッツビー」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことから同国を代表するデザイナーとしての地位を確立し,そのデザインに係る一群の商品には,ラルフ・ローレンに係るポロ商標が使用され,これらは「ポロ」の略称でも呼ばれている。すなわち,ラルフ・ローレンに係るポロ商標は,我が国において,本件商標の登録出願時(平成6年12月19日)前までには,ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等を表示するものとして,取引者,需要者の間に広く認識されるに至り,その認識の度合いは現在においても継続しているものである。
(2) 我が国において,ポロ競技はほとんど行われておらず,なじみの薄いスポーツであり,取引者,需要者により熟知されているということはできないから,「POLO」,「Polo」又は「ポロ」の語及びポロプレーヤー図形に接する取引者,需要者は,ラルフ・ローレンのデザインに係る商品であると認識するというべきである。
原告は,「ポロ」の語は,商品の形状を表すものであって,自他商品識別力がないと主張する。確かに,「ポロ」の文字は,「シャツ」や「セーター」の語と共に用いられることで,特定の形状のシャツ又はセーターを表示するものである。しかし,それは「シャツ」,「セーター」等の商品名称と結合した場合であって,「ポロ」のみの語が,商品の形状を表示するものとして使用されている事実はない。したがって,「POLO」,「Polo」又は「ポロ」の語が単独で使用された場合は,これに接する取引者,需要者は,商品の品質,形状を認識するというよりも,むしろ,「POLO」,「Polo」又は「ポロ」ブランドと称される著名なラルフ・ローレンに係るポロ商標を連想,想起するというのが相当であり,「POLO」,「Polo」又は「ポロ」の語それ自体が自他商品識別力を有しないとはいえない。
なるほど,原告の主張するように,最近においては,ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等に使用されている各種商標は,「POLO」の文字を単独で用いたものはないが,我が国においては,これらが「POLO」,「Polo」又は「ポロ」とも呼ばれていることは明らかであり,現在において,「POLO」単独での使用がないことを理由として,「POLO」,「Polo」又は「ポロ」はラルフ・ローレンに係るポロ商標の略称ではないとする原告の主張は,ラルフ・ローレンに係るポロ商標の周知・著名性及びファッション関連業界の取引の実情等を全く無視したものであって,失当というべきである。
2 商品の出所混同のおそれについて (1) 本件決定の「本件商標に接した取引者,需要者は,その商標の図形部分が馬に乗ったポロ競技のプレーヤーであることに着目し,さらに,商標中の『POLO』の文字部分に着目し,ラルフ・ローレンに係るポロ商標を連想,想起し,該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがある」とする判断に誤りはない。
(2) 本件商標は,「棒状のものを振り上げている騎乗の人物のシルエット」と認められるポロプレーヤー図形を上段に表し,その下に「C.U.P.C」,「CAMBRIDGE UNIVERSITY」及び「POLO CLUB」の文字を3段に表してなるものである。原告主張のようにケンブリッジ大学が我が国においてよく知られた大学であるとしても,「CAMBRIDGE UNIVERSITY」及び「POLO CLUB」の文字が意味する「ケンブリッジ大学のポロ競技クラブ」は,我が国において知られているものとはいえず,また,競技としてのポロは,我が国においてほとんどなじみのないものであることからすれば,本件商標の文字部分全体が,常に一体不可分のものとしてとらえられなければならない特段の事情もない。そうすると,本件商標に接する取引者,需要者は,下段冒頭の見やすい位置に表された「POLO」の文字部分から,「POLO」,「Polo」又は「ポロ」と認識されているラルフ・ローレンに係るポロ商標を,また,ポロプレーヤー図形部分の特徴(棒状のものを振り上げている騎乗の人物)からも,同商標を連想,想起し,ラルフ・ローレンと何らかの関連がある者の業務に係る商品であると認識し,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
(3) 本件商標中の「CAMBRIDGE UNIVERSITY POLO CLUB」の文字部分が,原告主張のようにケンブリッジ大学のポロクラブと同一であり,同クラブが1873年に創設され,その総裁が英王室の皇太子であるとしても,我が国において同クラブが新聞やインターネットに掲載された形跡はなく,全く知られていないのが実情であるから,ケンブリッジ大学が有名であるからといって,直ちに同大学のポロクラブが日本において周知であるとはいい難い。加えて,本件商標の中段にある「CAMBRIDGE」の欧文字(語)は,大学教養程度の英語であって,それほど親しまれたものとはいえず,かつ,その語頭である「CAM」の文字を語頭に持つ英語は,「ケン(ken)」ではなく,「キャン(kam)」と読まれる方が,「camera(キャメラ)」,「camp(キャンプ)」,「campaign(キャンペーン)」の英語からも一般的であることよりすれば,一般大衆である本件商標の需要者が「CAMBRIDGE」の文字を直ちに「ケンブリッジ」と読み,本件商標全体から「ケンブリッジ大学ポロクラブ」を即座に認識することは,決して多くないというべきである。
当裁判所の判断
1 ラルフ・ローレンに係るポロ商標の周知・著名性について (1) 「POLO」,「Polo」又は「ポロ」の語について,百科事典及び辞典類の記載を見ると,昭和37年6月1日平凡社初版第2刷発行の「国民百科事典6」(甲8)には,「4人(室内では3人)ずつのチームがそれぞれ馬上から,先端がT字形になっているマレットというスチックで,木または竹製の直径3.25インチ(約8.25cm)のボールをパスやドリブルで運びながら相手方ゴールに入れることを競う競技。・・・近代スポーツとしては1869年英国の陸軍将校がインドから本国に伝えたのがはじまりである。・・・日本では最近になってごく一部で行われるようになったにすぎない」との記載があり,昭和47年4月25日平凡社初版発行の「世界大百科事典 9」(甲89)及び平成7年7月10日小学館第2版第2刷発行の「日本大百科全書 21」(甲90)にも同様の記載がある。
また,昭和61年10月6日岩波書店第3版第4刷発行の「広辞苑」(甲9)には,「ペルシア起源の騎乗球技。現今のものは,4人ずつ二組に分れ,一個の木のボールを馬上から長柄の槌で相手方のゴールへ打ち込み合って勝負を争う」との記載があり,昭和49年1月1日自由国民社発行の「現代用語の基礎知識」(甲10),昭和61年11月集英社発行の「情報・知識・imidasイミダス1987」(甲11)及び平成7年1月1日朝日新聞社発行の「朝日現代用語知恵蔵1995」(甲12)にも,「ポロ」の見出し語の下に,ポロ競技を説明するほぼ同旨の記載がある。
(2) 他方,平成3年研究社第3刷発行の「英和商品名辞典」(乙23)には,「POLO ポロ」の見出し語の下に「⇒Polo by Ralph Lauren」との記載があり,「Polo by Ralph Lauren ポロバイラルフローレン」の見出し語の下に「米国のデザイナーRalph Lauren(1937-)がデザインした紳士物衣料品。通例Poloと略されて呼ばれる。・・・Poloのデザインも・・・Ivy Leagueルックを基にした,英国調のクラシックな雰囲気の服が多い。同氏は,・・・1976年に紳士服でCoty賞を受賞,翌年には婦人服で受賞。・・・R. Laurenは1974年の映画The Great Gatsby(「華麗なるギャツビー」)の衣装を担当して,人気が急上昇した」との記載が,平成11年1月10日小学館第2版第7刷発行の「ランダムハウス英和大辞典」(乙24)には,「polo」の見出し語の下に「3《商標》ポロ:米国のRalph Laurenデザインによるバッグなどの革製品。4ポロ⇒POLO BY Ralph Lauren」との記載があり,「Polo by Ralph Lauren」の見出し語の下に「《商標》ポロバイラルフローレン:米国のR. Laurenデザインのメンズウエア」との記載がある。
(3) また,昭和53年7月20日講談社発行の「男の一流品大図鑑」(乙6)には,ラルフ・ローレンに係るポロ商標を掲げた「ラルフローレン」ブランドの紹介として,「一九七四年の映画『華麗なるギャツビー』・・・で主演したロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したのが,ポロ社の創業者であり,アメリカのファッションデザイン界の旗手ラルフ・ローレンである」,「三〇歳になるかならぬかで一流デザイナーの仲間いりをはたし,わずか一〇年で,ポロ・ブランドを,しかもファッションデザイン後進国アメリカのブランドを,世界に通用させた」との記載が,昭和58年9月28日サンケイマーケティング発行の「舶来ブランド事典『’84ザ・ブランド』」(乙7)には,ラルフ・ローレンに係るポロ商標を掲げた「ポロ」ブランドの紹介として,「今や名実ともにニューヨークのトップデザイナーの代表格として君臨するラルフ・ローレンの商標。ニュートラディショナル・デザイナーの第一人者として高い評価を受け,世界中にファンが多い」,「マークの由来 ヨーロッパ上流階級のスポーツのポロ競技をデザイン化して使っている。彼のファッションイメージとぴったり一致するため彼のトレードマークとして使用しているもの」との記載が,昭和55年4月15日洋品界発行の「月刊『アパレルファッション店』別冊1980年版『海外ファッション・ブランド総覧』」(乙8)には,「ポロ・バイ・ラルフローレン」について,「若々しさと格調が微妙な調和を見せるメンズ・ウェア『ポロ』ブランドの創立者。栄誉あるファッション賞“コティ賞”をはじめ彼の得た賞は数知れず,その実力をレディス・ウェアにも発揮。新しい伝統をテーマに一貫しておとなの感覚が目立つ。アメリカ・ファッション界の颯爽とした担い手」との紹介のほか,「〈販路〉西武百貨店,全国展開〈導入企業〉西武百貨店〈発売開始〉五十一年」等の記載があることが認められる。
そして,これと同趣旨の記載は,昭和54年から昭和60年までの間に発行された雑誌である,@昭和54年5月講談社発行の「世界の一流品大図鑑’79年版」(乙12),A昭和55年11月15日講談社第2刷発行の「世界の一流品大図鑑’80年版」(乙15),B同年12月婦人画報社発行の「MENS'CLUB1980年12月号」(乙16),C昭和59年9月25日ボイス情報発行の「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」(乙9)及びD昭和60年5月25日講談社発行の「流行ブランド図鑑」(乙18)等にも認められるところである。
(4) さらに,ラルフ・ローレンに係るポロ商標を模倣したいわゆる偽物ブランド商品に関して,平成4年9月23日付け読売新聞東京版朝刊(乙19)には,「今年は五月に,アメリカの人気ブランド『ポロ』(本社・ニューヨーク)のロゴ『ポロ・バイ・ラルフ・ローレン』に酷似したマークのTシャツを販売していた大阪の業者が,不正競争防止法違反容疑で逮捕・・・」との記事が,平成5年10月13日付け読売新聞大阪版朝刊(乙20)には,「ポロ球技のマークで知られる米国のファッションブランド『POLO(ポロ)』の製品に見せかけた眼鏡枠を販売・・・」との記事が,平成11年6月8日付け朝日新聞夕刊(乙21)には,「米国ブランド『ポロ』などのマークが入った偽物セーターやポロシャツ約三万六千枚を販売目的で所持し,商標権を侵害した」との記事が掲載されていることが認められる。
(5) なお,昭和61年10月6日岩波書店第3版第4刷発行の「広辞苑」(甲77)及び平成5年4月10日婦人画報社第2版発行の「男の服飾事典」(乙28)によれば,ポロ競技に際してプレイヤーが着用する襟付き半袖シャツは,古くから「polo shirt」,「ポロシャツ」と称されており,現在では「二つまたは三つボタンのあきで,頭からかぶって着る襟付き半袖シャツ」を表す普通名称になっていることが認められるが,ポロシャツが「POLO」,「Polo」又は「ポロ」と略称されていることを認めるに足りる的確な証拠はない。
(6) 以上の認定事実を総合すれば,「POLO」,「Polo」又は「ポロ」の語は,元来は乗馬した競技者により行われるスポーツの名称であり,我が国においては,ほとんど競技としては行われていないが,馬に乗って競技するスポーツ競技であること自体は広く知られているものであることが認められる。他方,ラルフ・ローレンに係るポロ商標は,米国のファッションデザイナーとして世界的に著名なラルフ・ローレンのデザインに係るファッション関連商品に付されるものとして,我が国においては,昭和51年ころから使用されるようになったこと,そのブランドは,我が国のファッション関連商品の取引者,需要者の間で,「Polo by RALPH LAUREN(ポロ・バイ・ラルフローレン)」,あるいは単に「Polo(ポロ)」の略称で,ポロプレーヤー図形とともに,広く知られるようになり,遅くとも昭和50年代後半までには,強い自他商品識別力及び顧客吸引力を発揮する周知・著名な商標となり,その周知・著名性は,本件商標の登録出願時(平成6年12月19日)を経て登録査定時(平成10年6月5日,甲2)に至るまで継続していたことも認められる。
(7) 原告は,ラルフ・ローレンに係るポロ商標の周知・著名性を否定する根拠として,「POLO」の文字からなる商標が,様々な分野で商標登録がされ,現実に使用されていたこと,「POLO」,「Polo」又は「ポロ」の語は,衣料品の分野においてはポロシャツを示す普通名称として,また,一般的にもポロ競技を示す用語として用いられていることを主張する。ポロシャツが「POLO」,「Polo」又は「ポロ」と略称されているとはいえないことは上記のとおりであるが,「POLO」,「Polo」又は「ポロ」の語が,スポーツ競技の一つであるポロ競技を示す普通名詞であって,ラルフ・ローレンに係るポロ商標中に用いられている「Polo」の文字も,ポロ競技に由来するものであることは,その文字部分とともに使用されているポロプレーヤー図形や前掲乙7の記載から明らかであるから,このような本来的に普通名詞に由来する「Polo」の文字の性格からして,その有する商品の出所表示機能がある程度減殺されていることは否めない。しかし,このことを考慮に入れても,上記認定事実からすれば,なおラルフ・ローレンに係るポロ商標が単に「Polo(ポロ)」とも略称されるものとして,我が国のファッション関連商品の取引者,需要者の間で広く認識されていたことを認定することができるというべきであるし,さらに,ラルフ・ローレンに係るポロ商標中に用いられているポロプレーヤー図形が,それ自体としても,ラルフ・ローレンに係る出所識別標識として上記の取引者,需要者の間で広く認識されていたことも明らかである。
また,原告は,ポロ・ビーシーエス株式会社が被服等を指定商品とする「POLO」の登録商標を有し,その商品が販売されていることを主張するが,ポロ・ビーシーエス株式会社の「POLO」商標については,甲65〜68等によっても,ラルフ・ローレンに係るポロ商標の周知・著名性の成立及び継続を阻害するものであることを認めるに足りない。
2 商品の出所混同のおそれについて (1) 商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定商品又は指定役務に使用したときに,当該商品又は役務が他人の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該商品又は役務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標が含まれ,上記の「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知・著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきものである(最高裁平成13年7月6日第二小法廷判決・裁判集民事202号599頁,同平成12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁参照)。そこで,この見地から,本件商標をその指定商品に使用した場合に,これに接する取引者,需要者において,その商品がラルフ・ローレン又は同人と上記のような一定の関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信し,商品の出所について混同を生ずるおそれがあるか否かについて判断する。
(2) 本件商標は,別添決定謄本別掲本件商標のとおりの構成からなり,横向きの馬にまたがりマレットを振り上げ疾走するポロ競技中の競技者の黒塗りの図形を上段に表し,その下に「C.U.P.C.」,「CAMBRIDGE UNIVERSITY」及び「POLO CLUB」の欧文字を3段に表してなるものであって,ポロプレーヤー図形部分に,「C.U.P.C.」の語と,「CAMBRIDGE UNIVERSITY」の語,引用各商標の「Polo」の欧文字を全部大文字で表した「POLO」の語及び「CLUB」の語とを組み合せてなる結合商標である。本件商標の文字部分は,やや小振りの太字体をもって「C.U.P.C.」の部分が4字,いずれも通常の印刷書体による同大の欧文字をもって「CAMBRIDGE UNIVERSITY」の部分が19字,「POLO CLUB」の部分が8字,合計31字からなり,これより順に「シーユーピーシー」,「ケンブリッジユニバーシティ」,「ポロクラブ」の称呼を生じ,「CAMBRIDGE UNIVERSITY」の文字部分からは,「ケンブリッジ大学」の観念を生じ,「POLO CLUB」の文字部分からは「ポロ競技クラブ」との観念を生ずることが認められる。
他方,引用各商標は,別添決定謄本別掲引用商標A及び同Bのとおりの構成からなり,いずれも,横長四角形中に記載された「Polo」の欧文字とともに「by RALPH LAUREN」(引用商標A)又は「by Ralph Lauren」(同B)の欧文字からなる部分及び前向きの馬にまたがりマレットを振り上げ疾走するポロ競技中の競技者の図形部分からなるものである。
(3) ところで,ケンブリッジ大学が,オックスフォード大学と並び英国の由緒ある著名な大学であることは当裁判所に顕著であるところ,同大学について,百科事典類の記載を見ると,平成7年7月10日小学館第2版第2刷発行の「日本大百科全書8」(甲113)には,「Cambridge University イギリスの,伝統と由緒ある大学。起源は一二世紀にさかのぼることができるといわれる・・・一三一八年教皇ヨハネス二二世が,全キリスト教国に通用する学位の認定をこの大学に承認したことにより,名実ともに一流の大学に発展した。ルネサンス期には新学問の一中心として栄えたが,これは人文主義者エラスムスの来講に負うところが大きい。・・・一七世紀後半にはニュートンの指導のもとでとくに数学の研究が進み,大学の名声はひときわ高まった。・・・〔現状〕現在のケンブリッジ大学の規模や体制は,とくに過去一世紀の間の急速な拡張と発展によって形成されたものである。一九八二年現在,学生数は一万二六八〇人・・・で,一〇〇年間に約六倍も増加した。約一〇〇〇人の教授陣が,二〇の学部facultyと五〇以上に及ぶ学科departmentに細分化された学問分野において,教育・研究を担当している。オックスフォード大学と同様,学寮制をとり,現在三〇の学寮(collegeまたはhallとよばれる)が存在している。・・・一九六〇年代から新しい大学が次々と設置されつつあるなかで,ケンブリッジ大学はオックスフォード大学と並んで,依然としてイギリスのもっとも伝統的な大学として,その威信を誇っている」との記載があり,昭和52年5月15日平凡社初版第1刷発行の「国民百科事典-5」(甲112),昭和47年4月25日同社初版発行の「世界大百科事典 28」(甲114),昭和37年6月1日同社初版第2刷発行の「国民百科事典2」(甲115)にもほぼ同様の記載があり,また,平成12年11月14日集英社第1刷発行の「まんがこども大百科」(甲121)には,「ケンブリッジ」の見出し語の下に「イギリス東部,ロンドンの北約八〇キロメートルにある大学都市。ケンブリッジ大学がある」との記載がある。
次に,辞典の記載を見ると,平成14年1月10日三省堂第10版発行「初級クラウン英和辞典」(甲122)には,「Cambridge」の見出し語の下に「・・・Cambridge University ケンブリッジ大学→英国でオックスフォード大学と並んで古い大学」との記載が,研究社昭和59年第5版第8刷発行の「新英和大辞典」(甲120)には,「Cambridge University」の見出し語の下に「・・・ケンブリッジ大学・・・1281年創立;現在29のcollegeから成る」との記載がある。
また,平成11年6月2日付け日本繊維新聞(甲73〔本件商標に関する紹介パンフレット〕中に転載)には,「英国ウエア紹介 ブリティッシュスタイルの正統求めて・・・大学生活をエンジョイ ケンブリッジの気風・・・大学自体はオックスフォードと並んで古く・・・オックスフォードは学問そのものを目的にする傾向が強いが,ケンブリッジの方はむしろ理論を実生活に応用する面に力点を置く。オックスフォードの出身者はしたがって学者・教育者,医者,官僚,裁判官などが多い。一方ケンブリッジの卒業生は政治家,実業家,弁護士,会計士などの道へ進むケースが主流・・・英国全体では両校OBは“オックスブリッジ”と呼ばれ,最高教育を受けたものとしてそれなりの地歩を占めている」との記事が掲載されていることが認められる。
以上によれば,ケンブリッジ大学は,我が国においても,古くから,英国の伝統と由緒ある大学として著名であり,その著名性は本件商標の登録出願時(平成6年12月19日)及び登録査定時(平成10年6月5日)においても同様であったことが明らかである。
(4) そうすると,本件商標の構成中,「CAMBRIDGE UNIVERSITY」の文字部分は,上記認定のとおり,我が国においても著名な,英国の伝統と由緒ある大学の名称であり,本件商標の中央にバランス良く配され,その文字構成中に占める割合が最も大きいところから,他の部分に比べて,看者の注意をひく程度が著しく強く,商品の出所表示機能が強い部分であると認められる。
この点について,被告及び補助参加人は,「CAMBRIDGE」の語は,大学教養程度の英語であって,それほど親しまれたものとはいえず,かつ,その語頭である「CAM」の文字を語頭に持つ英語は,「ケン(ken)」ではなく,「キャン(kam)」と読まれる方が一般的であるから,本件商標の需要者が「CAMBRIDGE」の文字を直ちに「ケンブリッジ」と読み,本件商標全体から「ケンブリッジ大学ポロクラブ」を即座に認識することは多くないとも主張する。確かに,平成3年2月10日小学館第2版第21刷発行の「プログレッシブ英和中辞典」(乙33)には,「Cambridge」の見出し語には「*」印が付され,これは「大学教養程度」の単語を意味するものであるとされている。しかし,上記認定のとおり,平成14年1月10日三省堂第10版発行の「初級クラウン英和辞典」(甲122)には,「Cambridge」の見出し語の下に「Cambridge University ケンブリッジ大学→英国でオックスフォード大学と並んで古い大学」との記載があるところ,その「はしがき」からは,同辞典が中学生用の英和辞典であることが認められる。加えて,「CAMBRIDGE」に続く「UNIVERSITY」の語が「大学」を意味する親しみやすい平易な英語であることは当裁判所に顕著であるところ,上記のとおり,ケンブリッジ大学は我が国においても著名な大学であり,「CAMBRIDGE」を「ケンブリッジ」と読むことは特異な読み方ではないことをも考慮すれば,「CAMBRIDGE」と「UNIVERSITY」の文字相互の結び付きは,それを分離して観察することが取引上甚だ不自然と思われるほどに不可分的に結合しているというべきであって,本件商標の指定商品の一般的な取引者,需要者において,「CAMBRIDGE UNIVERSITY」の文字部分から,「ケンブリッジ大学」の観念を想起し,「ケンブリッジユニバーシティ」の称呼を生ずるものと認めて妨げはない。
(5) ラルフ・ローレンに係るポロ商標は,単に「Polo(ポロ)」とも略称される周知・著名性を有していることは上記説示のとおりであるところ,本件商標の構成中に,ラルフ・ローレンに係るポロ商標の一つである引用各商標の「Polo」の欧文字を全部大文字で表した「POLO」の文字部分を含むことは上記のとおりであり,簡易迅速性を重んずる取引の実際においては,比較的長い構成文字からなる商標の場合に,その一部分だけによって簡略に表記ないし称呼されることがあること,本件商標の指定商品は,ラルフ・ローレンに係るポロ商標が付された商品と共通する日常的に消費される性質のファッション関連商品であって,その需要者がこれを購入するに際して払う注意力もさほど高いものではないことは当裁判所に顕著である。しかし,「POLO」は,本来的に普通名詞に由来するもので,商品の出所表示機能がある程度減殺されていることは上記のとおりである上,本件商標の「POLO」の文字部分は,引用各商標の「Polo」の文字部分のように明りょうな黒枠で囲まれた横長四角形中にデザイン化された太字体で,かつ,当該欧文字のみが際立った形で記載されたものではなく,いずれも通常の印刷書体による同大の欧文字をもって構成された「CAMBRIDGE UNIVERSITY POLO CLUB」の全文字27字中の4文字にすぎず,また,全体の文字の配置も引用各商標のものとは明らかに異なるから,強い自他商品識別力を有する「CAMBRIDGE UNIVERSITY」の文字部分との対比において,「POLO」の文字部分の自他商品識別力は商標全体の中に埋没し,それのみが看者の注意をひいて略称としての「ポロ」の称呼,観念を生ずるものとは認め難い。
また,ラルフ・ローレンに係るポロ商標中のポロプレーヤー図形が,それ自体として,ラルフ・ローレンに係る出所識別標識としての周知・著名性を有していることは上記説示のとおりであるが,本件商標のポロプレーヤー図形は,馬及びポロ競技者を横から見た姿を表したもので,マレットの頭部を左上の方向にかざし,全体を黒く塗りつぶしたシルエットであるのに対し,ラルフ・ローレンに係るポロ商標の一つである引用各商標のポロプレーヤー図形は,馬及びポロ競技者をほぼ正面から見た姿を表したもので,マレットの頭部は右上の方向にかざし,図形全体に明暗の陰影をつけたやや縦長のものであって,外観上,両ポロプレーヤー図形は異なった印象を与えるものである。もっとも,馬に乗ったポロ競技者を表している点で観念において類似するところはあるが,それとても「CAMBRIDGE UNIVERSITY」の文字部分が有する上記の強い自他商品識別力とは比べるべくもない。したがって,本件商標は,その指定商品を含むファッション関連商品の取引者,需要者がこれに接した場合に,「CAMBRIDGE UNIVERSITY」が称呼及び観念において一体のものとして「ケンブリッジ大学」を意味するものと認識するのが通常であると認められる。
(6) 被告及び補助参加人は,ケンブリッジ大学が我が国においてよく知られた大学であるとしても,「CAMBRIDGE UNIVERSITY POLO CLUB」の文字が意味する「ケンブリッジ大学のポロ競技クラブ」は,我が国において知られているものとはいえず,また,競技としてのポロは,我が国においてほとんどなじみのないものであることからすれば,本件商標に接する取引者,需要者は,下段に表された「POLO」の文字部分から,「POLO」,「Polo」又は「ポロ」と認識されているラルフ・ローレンに係るポロ商標を,また,ポロプレーヤー図形部分の特徴(棒状のものを振り上げている騎乗の人物)からも,同商標を連想,想起し,ラルフ・ローレンと何らかの関連がある者の業務に係る商品であると認識し,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあると主張する。しかしながら,ケンブリッジ大学のスポーツクラブは50以上に上り,その大多数は100年以上の歴史を有し,「CAMBRIDGE UNIVERSITY POLO CLUB」(略称C.U.P.C.)も1873年の創設に係り,そのころ英国で始まった近代ポロ競技の創設メンバーの一員であって,現在,英王室のチャールズ皇太子がその総裁を務めている(甲73,117,123)ところ,このような古い歴史と実態を有する「ケンブリッジ大学のポロ競技クラブ」の存在が我が国において知られているものとはいえないとしても,上記認定のとおり,「POLO」,「Polo」又は「ポロ」の語が馬に乗って競技するスポーツ競技の名称であること自体は我が国においても広く知られており,ケンブリッジ大学が著名な大学である以上,同大学に関係したポロ競技のクラブであることは容易に連想,想起し得るところというべきであり,「CAMBRIDGE UNIVERSITY」が商品の出所表示機能の強い部分であるとの上記認定を何ら左右するものではない。また,本件商標とラルフ・ローレンに係るポロ商標中に用いられているポロプレーヤー図形及び同部分をその構成中に有する引用各商標とは外観において類似しないものであること,本件商標は「ポロ」のみの称呼を生ずるものとは認め難いことは,上記のとおりである。そうすると,上記認定のラルフ・ローレンに係るポロ商標の周知・著名性を考慮しても,本件商標は,その指定商品を含むファッション関連商品の取引者,需要者がこれに接した場合,ラルフ・ローレンよりもはるかに古い歴史を有する,英国の伝統と由緒ある大学として著名な「ケンブリッジ大学」を想起するから,そのような大学が,米国のファッションデザイナーにすぎないラルフ・ローレンとの間に,緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にあるものと認識するとは到底認め難いところである。したがって,被告及び補助参加人の上記主張は採用することができない。
(7) 以上検討したところによれば,本件商標の構成中「CAMBRIDGE UNIVERSITY」の文字部分が看者の注意を強くひき,「POLO」の文字部分及びポロプレーヤー図形部分は,商標全体の中に埋没して看者の注意をひくことはないから,本件商標は,称呼,観念及び外観のいずれにおいてもラルフ・ローレンに係るポロ商標とは類似しないというべきである。このような両商標の類似性の程度,本件商標の構成中の上記文字部分が意味するケンブリッジ大学の顕著な著名性に加え,ラルフ・ローレンに係るポロ商標の周知・著名性の程度,本件商標の指定商品とラルフ・ローレンの業務に係る商品との間の性質,用途又は目的における関連性の程度,商品の取引者,需要者の共通性その他取引の実情などを総合考慮すると,本件商標をその指定商品に使用した場合に,これに接するファッション関連商品の取引者,需要者において,ラルフ・ローレンに係るポロ商標を連想,想起し,その商品がラルフ・ローレン又は同人と緊密な営業上の関係若しくは同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信し,商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものということはできず(前掲最高裁平成13年7月6日判決における裁判官福田博の補足意見参照),これと異なる本件決定の判断は誤りといわざるを得ない。
3 以上のとおり,原告主張の取消事由は理由があり,この誤りが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,本件決定は取消しを免れない。
よって,原告の請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 宮坂昌利
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