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関連審決 審判1999-19508
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17行ケ10673審決取消請求事件 判例 商標
平成12行ケ474審決取消請求事件 判例 商標
平成13行ケ446審決取消請求事件 判例 商標
平成13行ケ50審決取消請求事件 判例 商標
平成13行ケ49審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 独占的使用 /  識別力 /  包装 /  識別機能 /  指定商品 /  記述的商標(3条1項3号) /  普通に用いられる方法 /  3条2項 /  周知性 /  立体商標 /  平面商標 /  立体的形状 /  取引の実情 /  出所の混同 /  国内 /  存続期間 /  更新登録 /  継続 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 54号 審決取消請求事件
原告 富士工業株式会社
訴訟代理人弁護士 藤本英介
同 鈴木正勇
同 弁理士 宮尾明茂
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 為谷博
同 宮川久成
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/12/28
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成11年審判第19508号事件について平成12年12月19日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成9年4月1日、別添審決謄本の別掲本願商標記載の立体商標(以下「本願商標」という。)について、指定商品を商標法施行令別表による第28類「釣竿用導糸環」として商標登録出願(商願平9-101279号)をしたが、平成11年11月5日、拒絶査定を受けたので、同年12月6日、これに対する不服の審判の請求をした。特許庁は、同請求を平成11年審判第19508号事件として審理した結果、平成12年12月19日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、平成13年1月15日、原告に送達された。
2 審決の理由 審決は、別添審決謄本記載のとおり、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであって、商標法3条1項3号に掲げる商標(以下「記述的商標」という。)に当たり、かつ、使用をされた結果同条2項所定の自他商品識別機能を有するに至っているとも認められないから、本願商標の登録出願は拒絶されるべきものとした。
原告主張の審決取消事由
審決は、本願商標が商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるとの誤った認定をして商標法3条1項3号該当性を肯定し(取消事由1)、かつ、使用をされた結果自他商品識別機能を有するに至っているとも認められないとの誤った認定をして同条2項該当性を否定した(取消事由2)結果、本願商標の登録出願が拒絶されるべきであるとの誤った判断をしたものであるから、違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性判断の誤り) (1) 商品の形状の意義 ア 審決は、「商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても・・・全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には・・・未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。」(審決謄本2頁21行目〜29行目)と判断するが、誤りである。
商品等の形状は、第一次的には、商品等の機能又は美感を発揮させることを念頭に置いて選択されるものであるが、商品等を製造販売する上においては、
それに加えて、他の同種商品等との識別の有無が重要な意義を有する。他の同種商品等の人気に便乗しようとする意図で、機能や美感との関係においては必然的でない形状を選択するなど、商品等の機能や美感を発揮させながら商品等の識別の有無を意図して選択される商品等の形状もある。そもそも、商品等は、一定の機能を備えているからこそ商品価値があり、機能や美感と関係しない特異な形状など存在しない。商品等の形状において、特異な形状といえるかどうかは、他の同種商品との比較により決まるのであって、当該商品等の形状が機能や美感をより発揮させるために選択されたものであっても、他の同種商品等が通常備えている形状と異なるものであれば、自他商品の識別は十分に可能となる。
イ 審決は、「商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。」(同30行目〜33行目)と判断するが、誤りである。
商品等が備えなければならない機能により、商品等の形状は一定の限定を受けるが、完全に同一形状にならなければならないような場合は例外であって、
多くの場合は、選択し得る形状にも幅があり、その範囲内において異なる形状を選択することは可能であるから、当該商品等の形状が自他商品等の識別機能を備えるに至っている場合には、他の者が当該商品等の形状を使用することができなくても、何ら不都合はなく、むしろ、これを使用させることは、出所の混同を生ずるという不都合を招く。
ウ 審決は、「商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については・・・商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。」(同2頁34行目〜3頁4行目)と判断するが、誤りである。
上記のとおり、商品等の機能又は美感と関係のない形状など存在しないのであり、本願商標のような形状が商標登録を受けることができないとすると、商品等の形状についても商標登録を予定している商標法の趣旨と反する。
エ 審決は、工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」(乙第1号証、以下「審議会答申」という。)を引用しているが、同答申は、商品等の形状として通常予定される範囲のものについて登録対象としないという趣旨にすぎず、その範囲を超えるようなものであれば、機能又は美感を発揮させるための形状であっても、商標登録の対象から除外する趣旨ではない。
オ 審決は、「実用新案法、意匠法等により保護されている形状について重ねて又は権利消滅後商標登録することにより保護することは知的財産制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることとなる。」(審決謄本3頁12行目〜14行目)と判断するが、知的財産制度における実用新案法、意匠法等との目的の相違を見過ごしたものであり、誤りである。
実用新案法、意匠法等は、その形状による自他商品の識別機能を問題とすることなく、使用の継続も必要なく、保護するものであるのに対して、商標法は、商標に自他識別機能を備え、かつ、使用を継続する限りで保護するものであるなど、両者は、保護される要件、目的、存続期間がそれぞれ異なるから、それぞれの保護要件を満たす限り保護されるべきである。
(2) 本願商標の識別性の判断 ア 審決は、「該形状は『釣り竿用ガイド』の一形態を表すものであるから、これをその指定商品に使用しても、取引者・需要者は、単に商品『釣竿用導糸環』の形状を表示するにすぎないものとして理解するに止まり・・・前記認定のとおり、ややその形状が特徴的なものであっても、それは商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであり・・・本願商標は、その形状に特徴をもたせたことをもって自他商品の識別力を有するものとは認められない」(審決謄本3頁18行目〜末行)と判断する。
しかしながら、商品等の形状が商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであるからといって直ちに、他の同種商品との識別機能が否定されるものではなく、当該商品等の具体的形状が同種商品において従来にない特異な形状をしていることにより他の同種商品と識別することができるかどうかを判断すべきである。
イ 本願商標の形状は、パイプを支持するフレームを筒状とし、リングを支持するフレームとを板状態から一体成形して、パイプとリングを支持したものであり、釣り竿用ガイドの中でも、ざん新で独創的である。
釣り竿用ガイドは、趣味として行われる釣りにおいて用いられ、その需要者は、細部の形状の相違についても強い関心を持っているから、その相違により商品等の相違を識別することは十分可能である。
ウ 審決は、「立体的形状からなる商標で商品等の形状をもって構成されるものについては、本来的又は直接的には他の知的財産制度で保護されるものであることなど、平面的な商標とは明らかに異なるものである」(同4頁2行目〜4行目)と判断するが、誤りである。
当該商標が自他商品の識別機能を備えている場合に、出所の混同を防止する必要は、商標が立体であるか平面であるかにより異なるものではない。平面的商標であっても、単なる模様のようなものもある。また、商標は、特許、意匠等の他の知的財産制度と目的が異なり、形状の問題であるからといって、特許法や意匠法により保護すれば足りるというものではない。
2 取消事由2(商標法3条2項該当性判断の誤り) (1) 本願商標の形状としての特異性 釣りは人気のある趣味であり、釣り愛好家は、道具に対するこだわりも強く、機能や品質のみならずそのデザイン性も重視し、微細な形状の相違であっても識別する。この点においても、本願商標の釣り竿用ガイドの形状は、その本来のイメージを払拭したざん新で独創的なものというべきである。
(2) 原告自身による広告宣伝 ア 価格表、カタログの配布 原告は、本願商標の形状を有する釣り竿用ガイド(以下「本件ガイド」という。)の形状が目立つように記載した価格表を、昭和51年から今日まで、毎年取引先に大量に頒布している(甲第8号証の2〜21、第30号証の2)。現在の全国の釣具店の総数は、約8800店ほどであるが(甲第38号証)、原告は、
毎年、価格表を約8000ないし8500部ほど配布しており(甲第37号証)、
取引者である釣具店の大半に価格表が行きわたっている。
イ 釣り博覧会での展示等 原告は、昭和38年から開催されるようになった釣り博覧会に毎年出展しており、昭和51年からは、毎年、釣り博覧会において本件ガイドを展示している(甲第28号証の1〜5、第29号証)。釣り博覧会は、昭和39年から東京の「国際つり博」及び大阪の「フィッシングショー」の2回開催されるようになったが、両者の合計入場者数は、ここ数年は毎年11万人程度であり、昭和51年から平成13年までの総入場者数は140万人を超えている。
原告は、本件ガイドの形状が目立つようにした自社のカタログ(甲第5号証、第8号証の1、第10号証の1〜11、第30号証の1、3)を、毎年、需要者である釣り愛好家に対し、「国際つり博」等の博覧会を中心に、約4万部ほど配布している(甲第37号証)。
ウ 広告宣伝費 原告の昭和54年から平成13年までの広告宣伝費は、総計6億8075万6488円であり(甲第37号証)、そのうち、原告の主力商品である本件ガイドの広告宣伝に、かなりの額が費やされている。
エ 販売数量 原告は、本件ガイドを、昭和51年から現在まで長期間にわたり継続して販売している。昭和51年から平成12年までの本件ガイドの販売数量の合計は1億5607万2861個であり(甲第36号証)、1年間の平均販売個数は624万個以上である。原告は、近時も、年間約3000万個のガイドを販売し、ガイドのシェアの90%近くを占めている。
オ 新聞雑誌広告 原告は、昭和51年以来、釣り雑誌20誌ほどに毎号広告を掲載している(甲第37号証)。毎号の広告に本件ガイドを掲載するものではないが、本件ガイドは、原告の製造販売するガイドの中でも最も売れた商品の一つであり、当然、
その広告掲載数も多い。
また、原告は、昭和51年以降、釣り用具の業界誌3誌に毎号広告を掲載している(甲第37号証)。
(3) 釣り竿メーカーによる宣伝広告 ア 考慮の必要性 原告の製造する本件ガイドの約90%は釣り竿メーカーに販売され、原告の直接的な顧客は釣り竿メーカーであるところ、釣り竿メーカー自身が本件ガイドを釣り愛好家に宣伝広告しており、原告としては、必ずしも、釣り愛好家に対する積極的な宣伝広告をすることが必要でない状況にある。そのため、本件ガイドに係る宣伝広告につき検討するためには、釣り竿メーカーや釣り具の小売店が行う宣伝広告を考慮する必要がある。
イ カタログの配布 主要な釣り竿メーカーのカタログには、釣り竿に装着された本件ガイドが目立つように掲載されており(甲第11号証の1〜7、第23号証の1〜54、
第35号証)、釣り竿のカタログにより、釣り竿とともに本件ガイドをも宣伝広告されていることとなる。どのようなガイドを装着しているかが釣り竿の評価に大きく影響することから、釣り竿メーカーは、自社のカタログにおいて、自社の釣り竿にどのようなガイドが装着されているかを示す必要があり、結果として、釣り竿メーカーのカタログにおいて本件ガイドを宣伝広告することとなる。ダイワ精工などの大手釣り竿メーカー5社では、年間のカタログ配布数も、原告の比ではなく、大量なものとなる。
ウ 雑誌広告 多くの釣り竿メーカーは、自社の釣り竿を宣伝広告するために、釣り竿に装着された本件ガイドが目立つような広告を、各種の釣り雑誌に掲載している(甲第34号証の2〜4)。このような釣り竿の広告は、本件ガイドの広告でもある。大手釣り竿メーカーでは、釣り雑誌に広告を掲載する場合、多数誌に繰り返し掲載するはずであり、昭和51年以来の大手5社の雑誌広告は、膨大な部数に及ぶものと推測される。
(4) 小売店での釣り竿の陳列状況 ア 釣り竿用ガイドの需要者である釣り愛好家が釣り具の小売店に陳列されている釣り竿に接する場合には、釣り竿で一番目立つ上、釣り竿の評価に重大な影響を与えるガイドに真っ先に注意をひかれるため、釣り具の小売店にガイドを装着した釣り竿を大量に陳列することは、最も効果的な宣伝広告であるということができる。
イ 原告が製造するガイドの約90%は釣り竿メーカーに販売されるが、1本の釣り竿には、通常、ガイドが数個装着され、本件ガイドの場合も同様である。
本件ガイドが装着された釣り竿は、年間平均300万本販売され、釣り具の小売店には、毎年、本件ガイドを装着した釣り竿が大量に陳列されてきたこととなる。
(5) 本件ガイドのシェア等 原告は、ガイドシェアの90%近くを占めているところ、原告のガイドの年間平均販売量は約3000万個である。ガイドの種類は約50種あるので、1種類のガイドの年間平均販売個数は約60万個であるから、本件ガイドの年間平均販売個数624万個は、その中でも極めて多い。
(6) 文字商標との関係 ア 審決は、本願商標と同一と認められるガイドには、その大部分に「富士」等の文字商標が併記されていることをとらえて、「商品の形状は・・・本来的(第一義的)には、商品の出所を表示し自他商品を識別する標識として採択されるとはいえないものであり、その識別機能を果たすものとしては文字、図形又は記号等が・・・使用されていること・・・からすれば、前記甲号証(注、本訴甲第8、
第10、第29、第30号証〔枝番を含む。〕を指す。)中の商品『釣り竿用ガイド』は、『Fuji』『富士』『フジ』等の文字商標により識別されているというべきである」(審決謄本4頁23行目〜32行目)と判断するが、誤りである。
商品の形状において他の同種商品の形状と異なる特異な形状を備えていれば、それが反復使用されることによって、文字商標とは独立して商品の形状それ自体により自他商品の識別が行われるようになる。
イ 本件ガイドは、何十年にわたり大量に宣伝広告、販売されている商品である。また、上記のとおり、商品カタログ等においては、需要者の関心が商品の形状にあることに配慮して、本件ガイドの形状が特に目立つように記載されており、
需要者が当該形状に注目する状況にあった。このような状況で商品カタログ等に文字商標が付されている場合、当初は文字商標のみにより自他商品の識別がされることがあったかもしれないが、次第に文字商標と商品の形状が結びつくようになり、
最終的には、形状を見るだけで当該文字商標を想起するようになる。
ウ 被告は、本件ガイドが上記文字商標により識別されているとする審決の認定に誤りはないと主張する。
しかしながら、当初は商品の一形態を表示するにすぎないものであっても、それが繰り返し宣伝広告されることによって、形状のみにより自他商品の識別がされるようになることは否定できない。本件ガイドの需要者は、その形状に強い関心を有する釣り愛好家であり、写真やイラストで表示された当該ガイドが原告製であることを繰り返し宣伝広告されれば、形状を見ただけで原告製のガイドであることを判別し得るようになる。
ガイドは、数センチメートルの大きさで、表面積も小さく、ガイド自身に直接に文字商標を付すことには適さない。また、ガイドの大半は、釣り竿に装着されて販売されており、釣り竿にタグ等で別途ガイドメーカーの商標を付すこともされていないため、文字商標以外によりガイドの自他商品の識別を行わざるを得ない状況にあるところ、ガイドは、趣味性の強い釣りにおいて最も重要な用具の一つであり、どのようなガイドが装着されているかが需要者にとって非常に重要であるから、ガイドの形状により自他商品の識別がされることとなる。
(7) 釣り竿と釣り竿用ガイドとの関係 ア 審決は、「甲第5号証(注、本訴甲第11号証の1〜7)及び同第16号証の2(注、本訴甲第23号証の1〜54)における釣り具メーカー各社の釣り竿は、『Daiwa』『SHIMANO』『RYOBI』等や釣り竿の種別毎に表示されている『磯潮』『POWER LOOP』『岩船』等の文字商標により識別されているというべきであって、これら釣り竿に接する取引者・需要者が、その部品の一つにすぎないガイドに注意を払い、その形状のみを捉えて出所を認識し購入するものとは到底認めることができない」(審決謄本4頁37行目〜5頁4行目)と認定するが、誤りである。
イ 主要な釣り竿メーカーのカタログのほとんどには、釣り竿のカタログであるにもかかわらず、わざわざ本件ガイドの形状を個別に抜き出したり、拡大したりして、釣り竿に当該形状のガイドが装着されていることを強調している。仮に、
釣り竿用ガイドが単なる釣り竿の一部品にすぎず、取引者、需要者がこれに注意を払うことなく、また、その形状のみをとらえて出所を認識し取引に当たることがないのであれば、主要な釣り竿メーカーがこぞって釣り竿の形状を拡大するなどして記載するはずはない。
ウ 釣り竿用ガイドは、釣り竿の単なる一部品ではなく、それ自身、釣りにおいて重要な機能を担っている。すなわち、釣りにおいては、釣り糸を傷つけることなく素早く遠くに飛ばし、魚が針に食い付いた後は、魚の引っ張る力に抗して素早く巻き戻すことができなければならない。また、趣味の釣りに用いられる釣り竿であれば、釣り上げる際に魚が引っ張る感触が竿を握る手に忠実に伝えられることも求められている。釣り竿用ガイドの良し悪しがこれらに大きく影響し、どのような釣り竿用ガイドが装着されているかが当該釣り竿の売れ行きに大きく影響するため、主要な釣り竿メーカーは、自社のカタログに釣り竿用ガイドを拡大して記載しているのである。
(8) 取引者である釣り竿メーカーの態度 釣り竿メーカーは、釣り竿用ガイドの取引者であるが、主要な釣り竿メーカーは、釣り竿用ガイドの形状により自他商品を識別しているのであって、その形状に重大な関心を持ち、原告から本件ガイドを長期間にわたり大量に購入している。
(9) 陳述書の信用性 ア 審決は、「甲第7号証(注、本訴甲第13号証の1〜45)は、表題を『陳述書』とする証明書であるが、その証明者の殆どが請求人の関連業者と認められるばかりでなく、予め文章が記載された一枚の用紙のみの証明書であるため、証明者が安易に署名、押印をしたのではないかという疑問も否定し得ないところであって信憑性に欠けるといわざるを得ないものであり」(審決謄本5頁5行目〜9行目)と認定するが、誤りである。
上記陳述書の作成者は、原告との間に何らの資本関係はないし、本件釣り竿用ガイドについて一切利害関係を持っているものではない。陳述書の作成者は、原告と何らかの取引関係があるが、釣り業界においては、だれしもが何らかの取引関係を持たざるを得ないのであって、原告と取引があるということだけで、陳述書の信用性を否定することはできないし、陳述書の作成者の多くは、釣り竿メーカーや釣り具の小売店等であり、取引において原告に従属しなければならないような関係にはない。陳述書があらかじめ文章の記載された一枚の用紙によるものであることは、多数の者に陳述書を記載してもらうためにやむを得ないものであり、陳述書の作成態様として決して不自然ではない。陳述書の中には、二重線でガイドを削除したり、使用目的を限定しているものもあり、作成者の自由な意思の下に作成されたことは明らかである。
イ また、審決は、「甲第7号証と表題を同じくする同第8号証(注、本訴甲第14号証の1〜32)は、単に請求人の釣り竿用ガイドが全国で販売されていることを証明するにすぎないものであるから、前記各甲号証は俄には採用し難い」(同5頁9行目〜11行目)と認定するが、誤りである。
上記陳述書には、当該釣り竿用ガイドが販売されていない地域については削除する旨の指示がされており、全国で販売されていることを証明するからといって直ちに、その信用性を否定することはできない。
(10) アンケート結果 原告は、釣り用品の業者及び釣り愛好家が多数来場する「東京国際つり博2001」及び「フィッシングショーOSAKA2001」において、アンケートを実施した。その結果、本件ガイドについては、有効回答の68%以上が原告製であると回答しており、他のメーカーの製品であると回答したものは数%にすぎないなど、本件ガイドが原告製であるとの識別が示されている(甲第33号証)。
(11) 不正競争防止法等との関係 ア 審決は、東京高裁昭和42年(ネ)第2373号判決(注、昭和45年4月28日判決・無体裁集21巻1号213頁を指すものと解される。以下「東京高裁昭和45年判決」という。)を引用した上、「商標法第3条第2項における当該出願商標が使用をされた結果自他商品の識別機能を有するに至っているものであるか否かと不正競争防止法(注、昭和9年法律第14号、以下「旧不正競争防止法」という。)第1条第1項第1号における当該商品等表示が需要者の間に広く認識されているものであるか否かの認定、判断は、それぞれの法律の目的によってその内容が異なるといい得るものである」(審決謄本5頁12行目〜16行目)と判断するが、誤りである。
確かに、商標法と不正競争防止法の目的は異なっているが、旧不正競争防止法1条1項1号の商品表示性と商標法3条2項の自他商品の識別力は、共に形状から出所を判断し得るという点において共通しており、不正競争防止法上の商品表示性が肯定された場合には、商標法3条2項における自他商品の識別力も備わっているというべきである。
イ 審決は、「意匠法その他の工業所有権法における保護は、同法の目的に基づいて、保護の対象、要件、権利の範囲、効力等が定められているものであり、
これらに従った登録意匠等の実施と商標の使用とは明らかに異なるものであって、
意匠登録等により保護される形状の独占実施を理由としては当該出願商標が自他商品の識別機能を有するに至っているものとすることができない」(同5頁17行目〜22行目)と判断するが、誤りである。
意匠権や実用新案権により第三者が本件ガイドを製造販売することができない状況において、原告が本件ガイドを長期間製造販売していれば、原告の独占実施により本願商標が自他商品識別力を獲得することができる。
ウ 本願商標は、アメリカ合衆国において商標登録が認められており、このことは、本願商標が自他商品識別機能を有していることが前提となっている。アメリカ合衆国において自他商品識別機能を有する本願商標は、我が国においても、当然、自他商品識別機能が認められるはずである。
被告の反論
1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性判断の誤り)について (1) 商品の形状の意義 ア 原告は、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、全体として商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状である場合には、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ない旨の審決の判断に対し、機能や美感と関係しない特異な形状は存在しないとか、商品等の形状が機能や美感をより発揮させるために選択されたものであっても、他の同種商品等が通常備えている形状と異なるものであれば、自他商品の識別は十分可能になると主張する。
しかしながら、商品等の形状は、本来的には、それ自体の有する機能を効果的に発揮させたり、美感を追求するなどの目的で選択されるものであって、商品等の出所を表示する自他商品等の識別標識として採択されるものではなく、基本的に識別標識たり得ないものである。そして、商品等の形状は、その機能又は美感等とは関係のない特異な形状からなる場合において、例外的に、その使用により二次的に自他商品等の識別力を有するに至るにとどまる。このことは、審決の引用する審議会答申(乙第1号証)からも明らかであり、裁判例も、東京地裁昭和52年12月23日判決・無体裁集9巻2号769頁などがこの趣旨を判示している。さらに、特許庁は、立体商標制度の導入に際しての説明会のテキスト「平成8年改正商標法に基づく商標登録出願と審査・審判の実務運用について」(乙第2号証、以下「運用指針」という。)において、指定商品等との関係において同種の商品等が採用し得る立体的形状に特徴的な変更、装飾等が施されたものであっても、需要者が、全体としてその形状を表示したものと認識するにとどまる限り、そのような立体商標識別力を有しないものとするとの説明をしている。これらと同旨の審決の判断は正当である。
イ 原告は、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすために原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上なんぴともこれを使用する必要があり、かつ、なんぴともその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でない旨の審決の判断が誤りであると主張する。しかしながら、この主張は、当該商品等の形状が自他商品等の識別機能を備えるに至っている場合を前提とするものであるから、失当である。
ウ 商品等の形状に係る立体商標の識別性については、その形状が果たす役割から見れば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として記述的商標に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。これと同旨の審決の判断に誤りはない。
エ 審決は、審議会答申(乙第1号証)を引用しているが、同答申は、商品等の形状として通常予定される範囲のものについて登録対象としないという趣旨にすぎず、その範囲を超えるようなものであれば、機能又は美感を発揮させるための形状であっても、商標登録の対象から除外する趣旨ではない。
オ 原告は、実用新案法、意匠法等により保護されている形状について重ねて又は権利消滅後商標登録することにより保護することは知的財産制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることとなるとする審決の判断が誤りであると主張する。
しかしながら、実用新案法、意匠法における保護は、権利消滅後、なんぴともその実施が予定されているものであって、商標法における保護とは明らかに異なるものであるから、商品等の立体的形状が実用新案登録又は意匠登録されていたとの理由のみにより、当該形状が自他商品の識別力を有するものとして登録を受けることはできない。商品等の立体的形状が自他商品の識別力を有するものであれば、実用新案権又は意匠権との併存もあり得ること、その形状に係る実用新案権又は意匠権の消滅後においても商標登録される場合のあることを否定するものではない。
(2) 本願商標の識別性の判断 ア 原告は、商品等の形状が商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであるからといって直ちに、他の同種商品との識別機能が否定されるものではなく、当該商品等の具体的形状が同種商品において従来にない特異な形状をしていることにより他の同種商品と識別することができるかどうかを判断すべきであるとか、本件ガイドの形状は、パイプを支持するフレームを筒状とし、リングを支持するフレームを板状態から一体成形して、パイプとリングを支持したものであり、釣り竿用ガイドの中でも、ざん新で独創的であると主張するが、これらは、
釣り竿用ガイドの用途、機能からみて予想し得る程度の特徴にすぎない。
原告の釣り具カタログにおいて、「超硬質のフジハードリング入り ヤスリでこすってもキズがつかない頑固な硬さ。リングの内面はダイヤモンド研摩による鏡面仕上げですから、細い糸でも安心です。プラスチック製竿通しパイプ入り。竿をキズつけず、しっかり固定できます。超軽量、特殊ショックレス構造。ショックリングを必要としない新構造のため、フレームが小さな割りに、リング径が大きい。ステンレス製一体成型フレーム。ロウ付け個所がありませんから、軽くて丈夫。錆びたり、粉がふいたりしません。」(甲第10号証の1)との記載がされているように、本願商標を構成する立体的形状の特徴は、糸絡み防止、摩擦抵抗の極小化等、専ら釣り竿用ガイドの機能をより発揮させるために採択されたものであり、本願商標は、原告主張のこれらの特徴を有することをもって、釣り竿用ガイドの機能又は美感とは関係のない特異な立体的形状よりなるものということはできない。
また、原告が提出したカタログ(甲第6号証の1、2)、ガイド意匠公報一覧表(甲第7号証)、竿種別使用ガイド調査一覧表(甲第24号証)によれば、審決時以前から、本願商標を構成する立体的形状と同様の形状の多種類の釣り竿用ガイドが市場に出回っていたことが明らかである。
したがって、本願商標をその指定商品である「釣竿用導糸環」に使用しても、取引者、需要者は、全体として単に釣り竿用ガイドの形状を表示したものと認識するにとどまるというべきである。
イ 原告は、立体的形状からなる商標で商品等の形状をもって構成されるものについては、本来的又は直接的には他の知的財産制度で保護されるものであることなど、平面的な商標とは明らかに異なるものであるとする審決の判断が誤りであると主張する。
しかしながら、商品等の形状は、本来、それ自体の持つ機能又は美感をより発揮させるために選択されるものであり、本来的又は直接的には、意匠法など他の知的財産制度により保護されるものであるから、商品等の形状をもって構成される立体商標と、当初から自他商品を識別する標識として採択される平面的な商標とでは、当該商標の識別力に関する需要者の認識の程度が相違することは明らかである。もっとも、商品等の形状が立体商標として自他商品の識別力を有するものであれば、意匠権等との併存もあり得ること、その形状に係る意匠権等の消滅後においても商標登録される場合のあることまでを否定するものではない。
2 取消事由2(商標法3条2項該当性判断の誤り)について (1) 本願商標の形状としての特異性 原告は、本件ガイドがその微細な形状の相違から自他商品の識別が可能であると主張するが、上記のとおり、その形状は、糸絡み防止、摩擦抵抗の極小化等、専ら釣り竿用ガイドの機能をより発揮させるために採択されたことは明らかであるから、本願商標は、釣り竿用ガイドの機能又は美感とは関係のない特異な立体的形状からなるということはできない。
(2) 原告自身による広告宣伝 ア 価格表、カタログの配布 原告が提出した釣り具に関する価格表及びカタログは、「富士の釣具」「FUJI TACKLE」「FUJI FISHING TACKLES」等を表題とするものであって、これらに表示された釣り竿用ガイドには、その図形と共に「ボンガイド」「NCG」「BNHG」等の文字が表示されている。上記図形は、商品そのものの形状を表すものにすぎず、自他商品の識別機能を果たすものとしては文字等が適していることなどに照らすと、上記価格表及び商品カタログにおいて、商品の識別は、上記文字商標によりされているというべきである。
イ 広告宣伝費、販売数量 原告の本件ガイドが相当数販売され、その宣伝広告費もかなりの額であるとしても、雑誌、新聞等において、本件ガイドの立体的形状自体がどのように宣伝広告されたかが不明であるから、本件ガイドの識別が「富士」等の文字商標によりされている事実を覆すことはできない。
(3) 釣り竿メーカーによる宣伝広告 原告が甲号証として提出した釣り竿メーカーの商品カタログ中の釣り竿において、そのガイドが目立つように、又は拡大、強調されているが、このことは、
ガイドの機能面の良さを強調することによって、商品カタログ中の釣り竿が耐久性や機能性に優れていることを広告宣伝するものにすぎない。
釣り竿用ガイドの取引者、需要者は、一般に、その形状から予想される機能面をとらえて、それぞれの釣りに適したものを選択するのであって、その形状に需要者の関心が向くことをもって、釣り具の形状自体に自他商品識別機能があるということはできない。
(4) 文字商標との関係 審決は、本件ガイドの大部分に「富士」等の文字商標が付され、釣り竿用ガイドが文字商標により識別されている旨判断するところ、原告は、商品の形状において他の同種商品と異なる特異な形状を備えていれば、それが反復使用されることによって、文字商標とは独立して商品の形状それ自体により自他商品の識別がされるようになる旨主張する。
しかしながら、審決は、本件ガイドの特徴は商品等の機能や美観を効果的に際立たせるための範囲内のものというべきであるなどとして、具体的な商品の種類、性質を検討した上で、本願商標に係る形状が商品の一形態を表示するにすぎないものであることから、本件ガイドが文字商標により識別されていると判断したものであって、この点に関する審決の認定判断に誤りはない。
(5) 陳述書の信用性 原告は、陳述書(甲第13号証の1〜45)の作成者らが原告との間に何らの資本関係や利害関係はないなど、陳述書の信用性を否定することはできないと主張する。
しかしながら、これら陳述書には、本願商標が使用をされた結果自他商品識別標識としての機能を有するに至っていることが客観的に記載されているものとはいえないばかりか、1枚の陳述書に原告の関連業者が証明したにすぎないものであるから、信用性に欠けるものである。
また、陳述書(甲第14号証の1〜32)は、単に表示された釣り竿用ガイドが全国で販売されていることを証明するにすぎないものであるから、その信用性を肯定することはできない。
(6) アンケート結果 原告は、釣り用品の業者及び釣り愛好家が多数来場する「東京国際つり博2001」及び「フィッシングショーOSAKA2001」におけるアンケート結果につき主張するが、上記アンケートは、釣り用天秤、釣り竿用ガイド、リールシート等を製造販売する原告のブースであることを来場者らが直ちに理解し得るように構成されていたことが推認され、そのブースにおいてアンケートが実施され、アンケートの調査票の右上部及び右下部に「富士工業株式会社」の表示があることから、回答者は、アンケート調査票中の商品が原告のものであろうとの予断をもって回答した可能性があり、また、アンケート調査の内容が15種類の釣り具に対する10の選択群という煩雑なものとなっているため、回答者が安易に又は適当に回答したのではないかという疑問もある。
(7) 不正競争防止法等との関係 ア 原告は、商標法と不正競争防止法の目的は異なっているが、旧不正競争防止法1条1項1号の商品表示性と商標法3条2項の自他商品の識別力は、共に形状から出所を判断し得るという点において共通しており、不正競争防止法上の商品表示性が肯定された場合には、商標法3条2項の自他商品の識別力も備わっていると主張する。
しかしながら、商標法においては、出願に係る商標が設定登録されると、存続期間更新登録をすることにより半永久的に存続する独占的、排他的な商標権となることを前提とするのに対して、不正競争防止法は、飽くまで具体的な当該事案において、流通市場で周知となった商品等表示と混同を生じさせる不正競争行為を個別具体的に把握し、その行為を防止することを前提とするものと解される。商標法と不正競争防止法の目的が異なる以上、旧不正競争防止法1条1項1号における周知性と商標の自他識別機能とは内容が異なる。
イ 原告は、アメリカ合衆国において本願商標の登録が認められたのは、本願商標が自他商品識別機能を有していることが前提となっており、アメリカ合衆国において自他商品識別機能を有する本願商標は、我が国においても、当然、自他商品識別機能が認められるはずであると主張する。
しかしながら、アメリカ合衆国と我が国では、商標保護に関する法制は、細部においておのずと異なるものであり、本願商標の登録の適否は、専ら我が国商標法の下において判断されるべきものであって、アメリカ合衆国における登録により左右されるものではない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性判断の誤り)について (1) 商品の形状の意義 ア 審決は、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、全体として商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状である場合には、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ない旨判断するところ、原告は、機能や美感と関係しない特異な形状は存在せず、商品の形状が機能や美感をより発揮させるために選択されたものであっても、他の同種商品等が通常備えている形状と異なるものであれば、自他商品の識別は十分可能になると主張する。
しかしながら、商標法3条1項3号が、記述的商標は商標登録を受けることができない旨規定する趣旨は、記述的商標が商品の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによると解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁〔判例時報927号233頁〕参照)。指定商品の形状そのものからなる立体商標は、その形状に変更又は装飾が施されても、指定商品等の形状を記述するものであって、原則として、取引に際し必要適切な表示として特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当とせず、また、多くの場合自他商品識別力を欠くという記述的商標の特徴を具備するものであるから、同号に掲げる「指定商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」として登録を受けることができない商標というべきである。
もっとも、商品の形状は、一次的には商品の特性そのものであるが、二次的には商品の出所を表示する機能をも併有し得るというべきであり、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる立体商標も、当該形状を有する商品の販売、広告、宣伝等がされた結果、自他商品識別力を獲得するに至り、
商標法3条2項により商標登録を受け得る場合のあることは、記述的商標一般について、これが使用された結果自他商品識別力を獲得した場合と異なるところはない。審決の引用する審議会答申(乙第1号証)も、その趣旨をいうものと解すべきである。
イ また、審決は、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすために原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上なんぴともこれを使用する必要があり、かつ、なんぴともその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でない旨判断するところ、原告は、この判断が誤りであると主張する。
一般に、商品等の形状は、商品等の機能により相当程度の制約を受けるが、同一の機能を保持しつつも、なお、選択し得る形状に一定の幅があるのが通常である。しかしながら、商標法3条1項3号は、記述的商標が一般的に登録を受けることができない旨規定しており、当該記述的商標の表示する商品の形状等が他者の販売する商品と識別可能なものであること、又は現に出願人が販売する商品の形状等を記述するものであることを記述的商標の除外事由としていない。その趣旨は、上記のとおり、取引に際し必要適切な表示として特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当とせず、また、多くの場合自他商品識別力を欠くという記述的商標の特徴が、他者の販売する商品と識別可能かどうか、又は現に出願人が販売する商品の形状等を記述するものかどうかにかかわらないからである。そうすると、指定商品の取引者、需要者が、指定商品に使用された商標に接した場合、これを当該指定商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であると認識するようなものである限り、その形状が特徴的であり、又は装飾が施されていても、記述的商標に当たることを否定すべき理由はない。立体商標の識別性に関する特許庁の運用指針(乙第2号証)も、この趣旨をいうものと解すべきである。
ウ さらに、審決は、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として記述的商標に該当する旨判断するところ、原告は、商品等の機能又は美感と関係のない形状など存在しないのであり、本願商標のような形状が商標登録を受けることができないとすると、商品等の形状についても商標登録を予定している商標法の趣旨と反すると主張する。
しかしながら、上記のとおり、取引者、需要者により指定商品等の形状そのものと認識される立体的形状をもって構成される商標については、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として記述的商標に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。また、商品等の機能又は美感と関係のない特異な形状は、指定商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ということはできないから、記述的商標に当たらない上、商標法は、記述的商標であっても、使用をされた結果自他商品識別力を獲得した場合には、商標法3条2項により登録されることを予定しているのであるから、上記の解釈が商標法の趣旨に反するということはできない。
エ そうすると、指定商品等の形状として通常予定される範囲のものについては、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として登録を受けることはできないが、その範囲を超えるような特異な形状のものであるか、又は使用をされた結果自他商品識別力を獲得したものであれば、商標登録を受けることができるというべきであって、審決の引用する審議会答申(乙第1号証)は、その趣旨をいうものである。
(2) 本願商標の識別性の判断 ア 審決は、本願商標がその形状に特徴をもたせたことをもって自他商品の識別力を有するものとは認められない旨判断するところ、原告は、当該商品等の具体的形状が同種商品において従来にない特異な形状をしていることにより他の同種商品と識別することができるかどうかを判断すべきであるとか、本件ガイドの形状が、パイプを支持するフレームを筒状とし、リングを支持するフレームとを板状態から一体成形して、パイプとリングを支持したものであり、釣り竿用ガイドの中でも、ざん新で独創的なものであると主張する。
確かに、商品の形状は、二次的には商品の出所を表示する機能を併有し得るから、商品等の形状が商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであることから直ちに、他の同種商品との自他商品識別力が否定されるものではない。しかしながら、登録出願された立体商標の形状が同種商品において従来にない特異な形状をしており、その形状が他の同種商品と識別可能であるとしても、
当該商標が記述的商標であることは否定されないのであって、指定商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である以上は、記述的商標として登録を受けることができないというべきである。
イ 本願商標の構成は、別添審決謄本別掲本願商標記載のものである(当事者間に争いがない。)。したがって、本願商標から看取し得る立体形状は、「リングと、リングの下部に、軸方向を並行にしたパイプ部を有し、パイプ部を支持するフレーム部とリングを支持するフレーム部とが板状の支持部により一体的に成形された立体形状」である。
ウ そうすると、本件において、本願商標がその指定商品である釣り竿用導糸環の形状そのものを表示する標章のみからなる商標であることは、上記の本願商標の構成自体から明らかであり、本願商標がその指定商品である釣り竿用導糸環に使用された場合、指定商品の取引者、需要者は、本願商標を釣り竿用導糸環の形状そのものと認識するにとどまるというべきであるから、本願商標は、指定商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、記述的商標に当たり、商標登録を受けることができないというべきである。
エ また、原告は、釣り竿用ガイド(釣竿用導糸環)の需要者が細部の形状の相違により商品等の相違を識別することを主張するが、上記のとおり、商標法3条1項3号は、記述的商標一般について商標登録を受けることができない旨規定しており、指定商品の他の形状と識別し得るかどうかは同号該当性と関係がない。そうすると、上記需要者が細部の形状により商品等の相違を識別するとしても、本願商標を指定商品である釣り竿用導糸環の形状そのものと認識する以上、本願商標は記述的商標であるというべきである。
オ さらに、審決は、立体的形状からなる商標で商品等の形状をもって構成されるものは、商標登録の場面において、平面的な商標と異なる考慮がされるべき旨判断するところ、原告は、この判断が誤りであると主張する。しかしながら、指定商品等の形状のみからなる立体商標は、当該指定商品に使用された場合、当該指定商品の取引者、需要者により、当該指定商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として認識されることが通常であるから、自他商品識別力において平面商標と異なるものであり、審決の上記判断に誤りはない。
2 取消事由2(商標法3条2項該当性判断の誤り)について (1) 本件ガイドの形状の特異性 ア 原告の販売する本件ガイドの形状は、本願商標から看取し得る上記形状と同一のものである(甲第5号証、第8号証の1〜21、第10号証の1〜11、
第30号証の1〜3)。
イ 一般に、釣り竿用ガイドは、釣り糸を通すリング、釣り竿に固着される部材(以下「固着部」という。)及びリングと固着部を一体的に連接させる部材(以下「支脚部」という。)から構成されている。そして、釣り竿用ガイドにおいてリングの形状を円環状とすることは、その機能上最も適した形状を採用することであり、カタログ(甲第6号証の1、2)、ガイド意匠公報一覧表(甲第7号証)及び竿種別使用ガイド調査一覧表(甲第24号証)に記載されたほとんどのリングにおいて円環状の形状が採用されている。また、固着部をリングと軸方向を並行にするパイプ部として形成することも、細長い棒状の釣り竿に固着するという機能上最も適した形状の一つであり、上記各証拠において、ほとんどの固着部は、このようなパイプとして形成され、又はリングの軸方向と並行に延びた足部として形成する形状が採用されている。さらに、リングと固着部を連接させる支脚部の形状については、これを板状に形成することが、その機能上当然に採用され得る形状である。
ウ そうすると、本件ガイドの形状は、上記のとおり、これを構成する各部材の形状が、いずれも、機能上最も適した形状であるばかりでなく、これらの各部材を組み合わせた全体的形状もありふれたものであって、従来の釣り竿用ガイドと比べて特徴的形状ではなく、釣り竿用ガイドの形状として通常予想される形状選択の範囲を全く出ていないから、その形状に自他商品識別性を認めることはできない。原告は、本件ガイドの形状が釣り竿用ガイド本来のイメージを払拭したざん新で独創的なものであると主張するが、その形状は上記のとおりであって、採用することができない。
また、原告は、需要者である釣り愛好家が釣り竿用ガイドの微細な形状の相違であってもこれを識別する旨主張するが、上記のとおり、本件ガイドの形状が釣り竿用ガイドの形状として通常予想される形状選択の範囲を全く出ておらず、
他の同種商品の形状と比べ特徴的形状ではない上、釣り愛好家が釣り竿用ガイドの微細な形状の相違を識別するとしても、自他商品識別性を有しない形状については、商品の形状そのものの相違としてしか認識することはないから、釣り愛好家の上記傾向から直ちに、本件ガイドの形状が自他商品識別性を有するということはできない。
さらに、原告は、釣り竿用ガイドの良し悪しが釣り竿の機能に大きく影響し、どのような釣り竿用ガイドが装着されているかが当該釣り竿の売れ行きに大きく影響するため、主要な釣り竿メーカーが自社のカタログに釣り竿用ガイドを拡大して記載している旨主張するが、仮に、そうであるとすると、釣り竿用ガイドの取引者、需要者は、釣り竿用ガイドの機能という観点からその形状に注目しているのであって、当該形状が自他商品識別性を有しないことが裏付けられているというべきである。
エ 原告主張のように、釣り竿用ガイドの取引者である釣り竿メーカーが釣り竿用ガイドの形状に重大な関心を持ち、原告から本件ガイドを長期間にわたり大量に購入しているとしても、上記のとおり、本件ガイドの形状が釣り竿用ガイドの形状として通常予想される形状選択の範囲を全く出ておらず、他の同種商品の形状と比べ特徴的形状ではない以上、釣り竿メーカーは、本件ガイドの機能という観点からその形状に注目しているというべきであって、釣り竿用メーカーの上記態度から本件ガイドの形状が自他商品識別性を有すると認めることはできない。
(2) 文字商標との関係 ア 審決は、本件ガイドの大部分に「富士」等の文字商標が付されており、
本件ガイドが文字商標により識別されている旨判断するところ、原告は、商品の形状において他の同種商品の形状と異なる特異な形状を備えていれば、それが反復使用されることによって、文字商標とは独立して商品の形状それ自体により自他商品の識別が行われるようになる旨主張する。
しかしながら、上記(1)のとおり、本件ガイドの形状は、他の同種商品の形状と比べ特徴的形状であるとは認められないから、原告の上記主張は、その前提を欠く。また、本願商標のように、指定商品の形状のみからなり同種商品と比べ特徴的形状を具備しない立体商標は、指定商品に使用された場合、当該指定商品の取引者、需要者により、商品の形状そのものとして理解されるため、一般に、自他商品識別性を有しない。
また、本件ガイドに係る文字商標の使用態様を見ると、原告のカタログ(甲第5号証、第10号証の1〜11、第31号証の1、3)及び価格表(甲第8号証の1〜21、第30号証の2)には、その表紙に「Fuji」、「FUJI」、「FUJI TACKLE」、「FUJI TACKLES」及び「富士の釣具」の文字商標が目立つように付され、表紙以外の頁にも、本件ガイドの形状の図示と併せ、「TELE GUIDE」、「テレガイド」、「Fuji GUIDE」等の文字商標が適宜付されている。そうすると、これらカタログ及び価格表に接した取引者、需要者は、まず、その表紙に目立つように付された「Fuji」等の文字商標により、そこに記載された釣り竿用ガイドが原告の商品であることを認識し、表紙以外の箇所においても、適宜付された文字商標により商品の出所を確認しつつ読み進むものと認められる。
そうすると、上記認定に係る本件ガイドの形状、上記カタログ及び価格表の記載に加え、上記カタログ及び価格表に表示された本件ガイドの包装に「Fuji」等の文字商標が必ず付されていることを考え併せると、一般に、本件ガイドの取引において、取引者、需要者は、本件ガイドにつき使用された「Fuji」等の文字商標に注目して自他商品の識別を行い、本件ガイドの形状については、商品の形状そのものと理解してきたと認めるのが相当である。
原告は、本件ガイドの商品カタログ等において、本件ガイドの形状が特に目立つように記載されていると主張するが、本件ガイドの形状が特徴的でないために自他商品識別性を有せず、「Fuji」等の文字商標が併せ使用されているという事情の下においては、本件ガイドの形状は、取引者、需要者により商品の形状そのものとして理解されるから、これがカタログ等において目立つように記載されてきたからといって、自他商品識別性を獲得するということはできない。
(3) 原告自身による広告宣伝等 ア 原告は、本件ガイドの形状が目立つように記載した価格表を毎年取引先に大量に頒布していること、昭和51年から毎年釣り博覧会において本件ガイドを展示していること、本件ガイドの形状が目立つようにした自社のカタログを毎年需要者である釣り愛好家に大量に頒布していること、原告の昭和54年から平成13年までの広告宣伝費が総計6億8075万6488円であり、そのうち原告の主力商品である本件ガイドの広告宣伝にかなりの額が費やされていること、本件ガイドを昭和51年から現在まで長期間にわたり継続して販売し、販売数量の合計は1億5607万2861個でありガイドのシェアの90%近くを占めていること、昭和51年以降、釣り雑誌20誌ほどに毎号広告を掲載し、かつ、釣り用具の業界誌3誌に毎号広告を掲載していることから、本願商標が使用により自他商品の識別機能を獲得したと主張する。
しかしながら、商品の形状が他の同種商品にない特徴的なものであり自他商品識別性を有する場合には、広告、宣伝、展示、販売等が繰り返されることにより、商品の形状のみにより自他商品の識別がされるに至ることがあり得るが、本件においては、上記のとおり、本件ガイドの形状は特徴的なものではなく、取引者、需要者は、併せ使用された文字商標に注目して自他商品の識別を行ってきたのであるから、本件ガイドの広告、宣伝、展示、販売等が継続して行われてきたとしても、商品の形状が文字商標から独立して自他商品識別力を獲得することはないというべきである。そして、このことは、これまでの本件ガイドの販売量が大量であり、釣り竿用ガイドの市場における占有率が高いなど原告の主張する上記事実によっても左右されるものではない。
イ さらに、原告は、釣り竿メーカーのカタログに装着された本件ガイドが目立つように掲載されており、釣り竿メーカーの宣伝広告が原告の宣伝広告でもあること、小売店で釣り竿が陳列される場合に、本件ガイドが目立つ状況にあること、釣り竿において釣り竿用ガイドの機能が重要であり、取引者である釣り竿メーカーが本件ガイドの形状に重大な関心をもっていることについても主張するが、上記のとおり、本件ガイドの形状に自他商品識別性がなく、併せ使用された文字商標により自他商品の識別が行われてきたと認められる本件においては、原告の主張する上記事実関係があっても、本願商標が使用により自他商品識別力を獲得したということはできないし、釣り竿において釣り竿用ガイドの機能が重要であるということは、むしろ、釣り竿用ガイドの形状が取引者、需要者により商品の形状そのものとして認識されてきたことを示すといわざるを得ない。
(4) 陳述書及びアンケート結果の信用性 ア 陳述書 審決は、陳述書(甲第13号証の1〜45)の証明者のほとんどが原告の関連業者と認められ、また、あらかじめ文章が記載された一枚の用紙のみの証明書であり証明者が安易に署名、押印をしたのではないかという疑問も否定し得ず信用性に欠ける旨判断するところ、原告は、上記陳述書の作成者らは原告との間に何らの資本関係はなく、本件釣り竿用ガイドについて一切利害関係を持っているものではないとか、陳述書があらかじめ文章の記載された一枚の用紙によるものであることは、多数の者に陳述書を記載してもらうためにやむを得ないものであるなどと主張する。
しかしながら、上記(1)(2)のとおり、本件ガイドの形状は特徴的なものではなく、併せ使用された文字商標により自他商品の識別がされてきたという事情の下において、本件ガイドの形状が文字商標から独立して自他商品識別力を獲得した事実を認めることはできない。また、上記陳述書は、いずれも、「下記に示された釣竿用導糸環(注、本件ガイド)は、その形状から一見して富士工業の釣竿用導糸環であることを認識できる程広く知られております。」として、上記結論のみが記載され、結論に至る理由が何ら明らかではないことを考え併せると、上記陳述書の記載内容を採用することができないとした審決の判断に誤りはない。
また、原告は、陳述書(甲第14号証の1〜32)を採用し難いとした審決の判断も非難するが、この陳述書も、上記陳述書(甲第13号証の1〜45)と同様の理由により、その内容を採用することができない。
イ アンケート結果 原告は、「東京国際つり博2001」及び「フィッシングショーOSAKA2001」におけるアンケート結果(甲第33号証)につき主張するが、上記事情の下において、本件ガイドの形状が文字商標から独立して自他商品識別力を獲得した事実を認めることはできないこと、アンケート結果に結論のみが記載されていることから、上記各陳述書と同様、上記アンケート結果によっても、本件ガイドの形状が自他商品識別力を獲得した事実を認めることはできない。
(5) 不正競争防止法等との関係 ア 審決は、旧不正競争防止法下における東京高裁昭和45年判決を引用した上、商標法3条2項における自他商品の識別機能と旧不正競争防止法1条1項1号における周知性の認定判断は、それぞれの法律の目的によってその内容が異なると判断するところ、原告は、旧不正競争防止法1条1項1号の商品表示性と商標法3条2項の自他商品の識別力は、共に形状から出所を判断し得るという点において共通していると主張する。
また、審決は、意匠及び実用新案登録により保護される形状の独占実施を理由としては、出願商標が自他商品の識別機能を有するに至ったということは許されない旨判断するところ、原告は、意匠権や実用新案権により第三者が本件ガイドを製造販売することができない状況において、原告が本件ガイドを長期間製造販売していれば、原告の独占実施により本願商標が自他商品識別力を獲得することができると主張する。
イ そこで、原告のこれらの主張について判断するに、確かに、旧不正競争防止法1条1項1号の商品表示性と商標法3条2項の自他商品の識別力は、共に形状から出所を判断し得るという点において共通しており、自他商品の識別力を有する標章が我が国の国内において広く知られるに至った場合に、旧不正競争防止法1条1項1号所定の周知性が獲得されると解される。しかしながら、上記(1)(2)のとおり、本件ガイドの形状は特徴的でないため自他商品識別性を有せず、併せ使用された文字商標により自他商品の識別がされてきたものであるから、本件においては、本件ガイドの販売等によりその形状が自他商品識別力を獲得したとはいえないとする審決の判断は正当というべきであって、旧不正競争防止法1条1項1号の商品表示性と商標法3条2項の自他商品の識別力の関係は、審決の結論に影響を及ぼさない無用の議論といわざるを得ない。
また、意匠公報(甲第2号証の1)及び閉鎖意匠登録原簿謄本(同証の2)によれば、原告は、昭和55年2月28日から平成8年2月8日まで、本件ガイドの形状と類似する上記登録意匠の意匠権者であり、特許公報(甲第4号証)によれば、原告は、昭和56年ころから、上記特許発明の特許権者であって、本件ガイドがこれらの実施品であった事実が認められる。そうすると、原告は、昭和55年2月28日から、本件ガイドをほぼ独占的に実施していたことが推認される。原告は、この事実関係に基づき、本件ガイドの形状が自他商品識別力を獲得したと主張するが、創作性のある意匠は原則として登録を受けることができ(意匠法3条)、その意匠が自他商品識別性を有することは、登録を受けるための要件とされていない。すなわち、意匠として創作性を有するが自他商品識別性を欠く商品形状は、意匠登録を受けることは可能であっても、自他商品識別力を獲得することはできず、商標登録を受けることはできないのである。したがって、原告が上記登録意匠の実施として本件ガイドの販売等を独占的に行っていたとしても、その形状が自他商品識別性を欠く以上、使用をされた結果自他商品識別力を獲得したと認めることはできない。さらに、発明は、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものであって、その実施品の形状が特定のものに限定されるわけではないから、
発明が特許要件を具備することと、その一実施品の形状が自他商品識別性を有することとは、次元を異にする。
ウ 原告は、アメリカ合衆国において本願商標の登録が認められたのは、本願商標が自他商品識別機能を有していることが前提となっているとした上、アメリカ合衆国において自他商品識別機能を有する本願商標は、我が国においても、当然、自他商品識別機能が認められるはずであると主張する。
しかしながら、本願商標がアメリカ合衆国において商標登録を受けたことを認めるべき証拠はなく、仮に、登録を受けたとしても、アメリカ合衆国特許商標庁がどのような証拠資料に基づきこれを肯定するに至ったかは不明であるのみならず、同一の標章が国により自他商品の識別力を有するかどうかが異なりこれに応じて商標登録が区々になるという事態は、国際的にも制度上予定されている事柄であり、また、各国ごとに取引の実情が異なるから、アメリカ合衆国において商標登録がされたからといって、我が国における商標登録が当然に認められるべきであるということはできない。
(6) そうすると、本願商標は、使用をされた結果自他商品識別力を獲得した可能性は認められないから、本願商標が使用により自他商品識別力を獲得し商標法3条2項により商標登録が認められるべきであるということはできない。
3 以上によれば、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 石原直樹
裁判官 長沢幸男
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