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関連審決 審判1999-30353
関連ワード 取引対象 /  流通性 /  包装 /  指定商品 /  不使用 /  国内 /  販促品 /  継続 /  有名ブランド / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 111号 審決取消請求事件
原告 マルクローラン エス・アー
訴訟代理人弁護士 田中克郎
同 宮川美津子
同 中村勝彦
訴訟復代理人弁護士 山本麻記子
被告 株式会社セリオ
訴訟代理人弁護士 赤尾直人
訴訟代理人弁理士 山本喜幾
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/12/20
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 特許庁が平成11年審判第30353号事件について平成12年11月1日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は,平成3年改正前の商標法施行令1条別表の商品区分第17類の「被服」を指定商品とし、別紙審決書の理由の写し末尾記載の構成から成る登録第2407083号の商標(平成元年2月13日登録出願。平成4年4月30日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。原告は,平成11年3月24日、被告を被請求人として、特許庁に対し、本件商標について商標法50条の定める審判(不使用取消しの審判)の請求をし(以下「本件審判」という。),同請求は平成11年4月14日に登録された。特許庁は、同請求を平成11年審判第30353号事件として審理した結果,平成12年11月1日に「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同月20日原告に送達された(なお,出訴期間として90日が付加された。)。
2 審決の理由 別紙審決書の理由の写しのとおりである。要するに,本件商標は,その商標権者である被告が,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,取消請求に係る指定商品中の「ポロシャツ」について使用しているものということができるから,本件商標の登録は,商標法50条により取り消されるべきものではない,とするものである。
原告主張の審決取消事由の要点
審決は,@ポロシャツ等を撮影した写真(審決における乙第5ないし第8号証。1996年6月7日から1999年3月25日までの現像日付のもの。),下げ札(審決における乙第9号証の一部,本訴における乙第1,第2号証の各2の1ないし3,第3号証の2の1ないし4。以下「本件下げ札」という。)及び請求明細書の写し(審決における乙第9号証の一部。本訴における乙第1ないし第3号証の各1。平成9年及び平成10年に発行されたもの。以下「本件請求明細書」という。)によれば,本件下げ札には,山口衣料株式会社(以下「山口衣料」という。)が被告に納品した商品について発行された本件請求明細書に記載された品番と同一の品番,本件商標と同一構成の商標及び被告の名称が印刷されており,この下げ札がポロシャツに付されていることが認められるから,本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において,被告によって指定商品中の「ポロシャツ」について本件商標が使用されているということができる,A原告の,上記ポロシャツが商標法上の「商品」ということはできないとの主張は,これを裏付ける証拠が何ら提出されていないから,採用することができない,と認定判断した。
しかし,審決は,上記ポロシャツが商標法上の「商品」に該当せず,このポロシャツに本件商標を付しても商標の使用とはいえないにもかかわらず,誤って本件商標が使用されていると認定判断したものであるから,違法なものとして取り消されるべきである。
1 本件商標を付したポロシャツの商品該当性 (1) 商標法における「商品」とは,商取引の目的物として流通性のあるもの,すなわち,一般市場で流通に供されることを目的として生産され又は取引される有体物のことである。
審判手続における乙第5ないし第8号証の写真は,いずれも不鮮明であり,撮影の日付も認められないものであるから,同写真のポロシャツと,本件下げ札に印刷された標章,品番及び本件請求明細書の品番との相互の関係は不明確であり,これらの証拠によっては,上記ポロシャツが一般市場で流通に供されることを目的とするものであることは,証明されていない。
被告は,本件審判の手続が始まって以来,本件請求明細書に関し,山口衣料が,被告の製造した生地の供給を受けて被服に仕立て上げ,これに本件下げ札を付した状態で被告に納品し,被告は,この納品を受けた被服を問屋等のルートを介して販売するものである,あるいは,被告は,これらの商品を正規に販売ルートに流すものである,などと主張してきた。しかし,被告が本件商標の付されたポロシャツを一般市場において流通させたことは,証明されていない。
被告は,本件商標の付されたポロシャツの販売形態につき,当初,「問屋等のルートを介して販売する」,「正規の販売ルートに流すものである」(平成11年7月27日付け審判事件答弁書。甲第6号証)と主張していたのに,「自らの会社でのみ,求めに応じて小売販売することにした」(平成12年6月15日付け審判事件答弁書。甲第13号証),「不特定の企業又は個人たる第三者からの購入要求に基づいて本件商標をポロシャツ等に付した状態にて販売する小売り販売を行っている」(平成13年6月7日付け本訴第1準備書面),と主張するようになり,さらに,「被告ショールームにおいて被告ブランド商品が小売販売の対象とされていた」(平成13年8月9日付け第2準備書面),と主張するに至るなど,本件において最も重要な要素である被告ブランド商品販売に関する重要な事実につき,主張を,合理的な理由なく大きく変遷させており,その主張は全く信用することができない。
被告が,本件商標の付されたポロシャツが小売販売されている証拠として提出する乙第9ないし第12号証から,シャツの取引があった事実を推認することはできるとしても,それが本件商標の付されたシャツの取引であったのか,被告が行っていると主張する後記OEM商品の取引であったのかを特定することはできない。
被告から本件商標の付されたポロシャツを購入したなどとする,取引先の証明書(乙第12号証の5)は,被告と極めて密接な取引関係にある者が被告の求めに応じて定型フォームによって作成したものであり,その性質上,信用性に乏しいものである。本訴における各証人の証言は,不自然な点が多いなど,全体として信用することができない。これらの証拠は,本件商標の使用の事実を何ら証明するものではないというべきである。
(2) 原告の調査によれば,被告は,本件商標の付されたポロシャツを販売しておらず,被告が生産しているニット生地の顧客に対する宣伝用の贈答品として,年間何着という小さな規模でポロシャツを生産し,これを上記顧客に無償配布しているにすぎないこと,すなわち,本件商標の付されたポロシャツが一般市場に向けられたものではないことが判明している(甲第9ないし第12号証)。
本件商標の付されたポロシャツは,宣伝用の贈答品として顧客に無償配布されるものであって,商取引の目的物として一般市場で流通に供されることを目的とするものではないと認められるから,商標法上の「商品」ということはできない。宣伝用サービス品として無償配布されるものは,一般市場で流通に供することを目的とした有体物でない以上,商標法上の「商品」に該当しない(東京高裁平成元年(行ケ)第139号平成元年11月7日判決参照。甲第7号証)。
本件下げ札は,そこに価格の表示も見当たらず,織物,生地を取り扱う,いわゆるテキスタイルメーカーであって,被服のメーカーでない被告が,自らの顧客への贈答用として無償配布するために下請メーカーに仕立てさせた,との事実を推認させるものにすぎない。
(3) 本件商標の付されたポロシャツは,上記のとおり,一般市場での流通を目的とするものではなく,「織物」,「生地」を取り扱うメーカーである被告が,自らの取引に係る商品である「織物」「生地」の製造・販売業務促進のための,いわゆる販促品として使用されているものと認められる。販促品に付された標章は,その性質上販促品そのものの出所識別標識として機能することはなく,販促品そのものの品質を保証し,その宣伝広告をするために機能することもないから,販促品に商標を使用したところで,それを商標法2条3項による商標の使用と認めることはできない(東京高裁平成12年(行ケ)第335号平成13年2月27日判決参照。甲第14号証)。
(4) 本件商標の付されたポロシャツは,仮に販売に供されることがあるとしても,極めて限定された範囲での特定の第三者をその取引対象として,1,2点を販売するという態様でのみのことであり,被告が,一般消費者に対して,積極的に本件ポロシャツ等を広告,宣伝しているという事実もない。このように,本件商標の付されたポロシャツが,一般市場における不特定の第三者を取引対象とするものではなく,極めて限られた者にたったの1,2点ずつ販売するという態様でのみ販売されるものである以上,このようなポロシャツについてのみ使用される商標を,商標法によって保護する必要はない。すなわち,このような物品を商標法上の「商品」ということはできない。
2 商標法の目的と同法50条の趣旨 商標法による保護は,商標の使用によって蓄積された信用に対して独占排他権という形で与えられべきるものであり,保護すべき信用が発生していない商標については,原則として法によって保護する価値はない。商標法50条にいう使用については,独占排他権を与え続けておくのに見合った使用,すなわち保護すべき信用が発生しているような使用がなされているかで判断すべきである。
本件商標の付されたポロシャツは,仮に販売されることがあるとしても,販売される範囲が極めて限定され,不特定多数の第三者を取引の対象としていないものであり,このような商品にしか商標を使用していない場合には,独占排他権を認めるべき商標の「使用」があったと認めることはできないというべきである。商品流通のために使用されない商標を,権利として特定人に独占させておく理由はなく,このような独占を許しておけば,かえって他人の取引を阻害することとなるから,むしろその使用を欲する第三者のためにこれを開放することが,法目的に合致するというべきである。
3 以上によれば,仮に,本件ポロシャツ等,被告の製造するポロシャツに本件商標が付されているとしても,これらのポロシャツは,商標法上の「商品」ということのできないものであるから,このような本件商標の使用行為をもって,商標法2条3項各号に規定する商標の使用に該当するものとすることはできない。
被告の反論の要点
1 被告による本件商標の使用 被告は,本件審判の請求の登録(平成11年4月14日)前3年以内である平成8年4月14日以降に,被告の商品として販売する目的で,その下請企業である山口衣料に,本件商標を襟の中央部分に付したポロシャツ及び本件商標が印刷された下げ札並びに本件商標が印刷されたビニール包装袋の製造を依頼し,これを少なくとも300個以上購入した(乙第1ないし第3号証の各1の山口衣料からの各請求明細書及び乙第1,第2号証の各2の1ないし3,乙第3号証の2の1ないし4の本件商標が付された下げ札)。乙第4ないし第7号証の各1,2の写真の本件商標の付されたポロシャツ等は,上記のとおり山口衣料から購入したポロシャツ等を撮影したものである。同写真に撮影された本件商標の付されたポロシャツ等への本件商標の使用が,「商品又は商品の包装に標章を付する行為」(商標法2条3項1号)に該当する商標の使用であることは,明らかである。
被告は,本件商標の付されたポロシャツ等を,不特定の企業又は個人たる第三者からの購入要求に基づいて,平成8年5月から平成11年1月にかけて,少なくとも合計280個小売販売した(乙第9号証の1ないし16の被告発行の領収書の耳,乙第10号証の1ないし3の被告の当座勘定照合表,乙第11号証の1ないし16の総勘定元帳,乙第12号証の5の証明書,乙第14号証の1ないし3の各請求書(控),乙第15号証の総勘定元帳,乙第16号証による決算に関する各元帳,乙第17号証の1,2の当座勘定照合表,乙第18号証の1の証明書,乙第21,第22号証の各1の陳述書等)。
被告によるポロシャツの販売は,@特定の注文者から「J.ニクラウス」,「ミラ ショーン」,「ダンヒルゴルフ」などの有名ブランド名による標章を付したポロシャツ(以下「OEM商品」という。)の製造の注文を受け,これを製造して当該注文者に販売する,という形の販売,及び,AOEM商品以外の,本件商標の付されたポロシャツを小売販売する,という形の販売の二つに限られている。このうち,@のOEM販売は総勘定元帳のうち継続的な取引を記載している「売上高」の部分(乙第20号証)に,Aの小売販売は,総勘定元帳のうち「雑収入」を記載している部分(乙第11号証の1ないし16)に,それぞれ記載されている(ただし,乙第20号証の一部である乙第15号証には,例外的に,本件商標の付されたポロシャツの小売販売の記載が混入している。)。
被告は,本件審判の請求の登録から3年以上前から今日に至るまで,その事務所として使用している建物内に,ショールームを設け,本件商標の付されたポロシャツ等を展示している。同ショールームには,第三者の出入りが可能であり,同所で上記ポロシャツを購入することができるようになっていて,近隣の住人が,ショールームで上記ポロシャツを購入したことがある(乙第19号証の2の1,2,第23号証の1ないし4)。
これらの各事実は,本件商標の付されたポロシャツの「商品」性を示し,同時に,被告が,本件商標につき,商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡する行為(商標法2条3項2号)に該当する形で,使用をしてきたことを示すものでもある。
2 本件商標の付されたポロシャツの「商品」該当性について 原告は,本件商標の付されたポロシャツが宣伝用の贈答品として顧客に無償配布されるものであるとして,それゆえにそれらを商標法上の「商品」ということはできない,と主張する。
しかしながら,被告が本件商標の付されたポロシャツの小売販売を行っていることは,1で述べたとおりであるから,上記ポロシャツが商標法上の商品に当たることは,明らかである。
原告が,本件商標の付されたポロシャツが宣伝用の贈答品として無償配布されるものであるとの,その主張を裏付ける証拠として提出する甲第9ないし第12号証は,原告の同主張を何ら裏付けるものではない。
当裁判所の判断
1 本件商標の付されたポロシャツについて 証拠(乙第1ないし3号証の各1,第1,第2号証の各2の1ないし3,第3号証2の1ないし4,乙第4ないし第7号証の各1,2,第8号証)及び弁論の全趣旨によれば,現像年月日が,それぞれ,1996年(平成8年)6月7日(乙第4号証の1,2),1997年(平成9年)4月2日(乙第5号証の1,2),1998年(平成10年)9月15日(乙第6号証の1,2),1999年(平成11年)3月25日(乙第7号証の1,2)である各写真に,本件商標が付されたビニール包装袋に入った,複数の異なったデザインのポロシャツが撮影されていること,これらのポロシャツの衿(えり)の内側中央部分には,いずれにも,本件商標が表示されたラベルが付されていること,これらのポロシャツのほとんどに,下げ札が付けられていること,上記ポロシャツに付された下げ札は,本件下げ札(乙第1,第2号証の各2の1ないし3,第3号証の2の1ないし4)と同形式のものであること,本件下げ札の裏側には,本件商標が印刷されていること,本件下げ札に記載された番号と同一番号の品番の商品が,平成9年10月,平成10年6月及び同年11月に,原告の下請業者である山口衣料から原告に宛てた売買代金の請求明細書に記載されていること,請求明細書に記載された,本件下げ札と品番が一致する商品の個数は多数にのぼること,が認められる。
上記認定の事実により,原告は,平成8年から11年までの間,本件商標が表示されたラベルを付したポロシャツを,下請業者である山口衣料に多数,製作させて購入し,これに本件商標が印刷された下げ札を付し,これを本件商標が表示された包装袋に入れて所持していたことが認められる。この認定の妨げとなる証拠はない。
2 本件商標の付されたポロシャツの「商品」性について (1) 原告は,本件商標の付されたポロシャツは,宣伝用の贈答品として顧客に無償配布されるものであって,商取引の目的物として一般市場で流通に供されることを目的とするものではないから,商標法上の「商品」ということはできない,と主張する。
しかしながら,乙第10号証の2,3,第11号証の8,9,第12号証の5,第14号証の1,第15,第16号証,第17号証の1,第18号証の1,乙第21号証の1ないし3(乙第14号証の1は,乙21号証の2の控え),第22号証の1ないし5並びに証人A及び同Bの各証言によれば,被告は,少なくとも,平成9年12月18日に,知人の紹介により同社事務所を訪れた,長野県松本市で被服等の販売業を営む有限会社岡田インターナショナルの代表者に対し,少なくとも本件商標を付したポロシャツをその中に含むポロシャツ合計30枚を,代金合計29万2950円(消費税込み)で売り渡したこと,被告は,被告と同じく尾西市内で繊維関係の営業をしており,代表者同士が知人である,小笠原株式会社に対し,本件商標を付したポロシャツを,平成9年8月19日に代金合計18万5000円で,平成9年9月29日に代金合計15万6000円で,それぞれ売り渡したことが認められ,上記認定を覆すに足りる証拠はない。
上記認定の事実によれば,本件商標を付したポロシャツは,少なくとも,その販売規模の大きさはともかく,販売の対象物としても取り扱われているものであるから,商標法上の「商品」に該当するものというべきである。
原告は,本件商標を付したポロシャツの販売形態についての被告の主張が変遷している旨主張する。
確かに,この点についての,当初の段階における被告の主張は,現在における主張とは,相当に異なる要素を有するものである。すなわち,甲第6号証によれば,平成11年7月27日付け審判事件答弁書における,この点についての被告の主張は,次のとおりであると認められ,これを自然に理解すれば,そこで述べられている販売形態は,本件において主張されているような小規模な,かつ,特殊といえる形態のものではなく,問屋に販売するなど,多くの元請け業者が一般的に採っている形のものということになるであろう。その意味で,この点についての被告の主張には変遷があり,その限りでは,原告の上記主張は正当である。
「商標権者の商品「被服」には,本件商標「Selio」を印刷した下げ札(紙製タッグ)が取付けられる。この下げ札には,その裏面にSIC-452-B,97-2375等の品番が印刷されている。そして登録商標の使用説明書(6)には,この下げ札に対応する商品に関する請求明細書が添付されている。すなわち請求明細書の発行元である山口衣料鰍ヘ下請けメーカーであって,被請求人(判決注・被告のこと。以下同じ。)の製造に係る生地の供給を受けて被服に仕立て上げ,該被服に各対応の下げ札を付した状態で被請求人に納品するものである。
そして被請求人は,この納品を受けた被服を問屋等のルートを介して販売するものである。例えば平成9年10月30日付け請求明細書は,本件商標「Selio」の下げ札に印刷された品番SIC-452-B,97-2375,SIC-452-Aに係る商品「被服」を,その当時に被請求人に納品していたことを示している。また平成10年6月22日付け請求明細書は,前記下げ札に印刷の品番SE-34,313W-2705,SV-u54に係る商品「被服」を,更に平成10年11月11日付け請求明細書は,SEL-8,364W-3041,JSFW-2,VMC-2に係る商品「被服」を被請求人に納品していたことを示している。
これら各種品番の商品「被服」を山口衣料鰍ゥら納品された被請求人は,該商品を正規の販売ルートに流すものであるから,この行為は,商標法第2条第3項第2号に規定する「商品に標章を付したものを譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引き渡しのために展示する行為」に該当する。」(甲第6号証4頁3行〜22行) しかし,甲第13号証によれば,平成12年6月15日付け審判事件答弁書における,この点についての被告の主張は,次のとおりであると認められ,これによれば,この段階では,被告は,「ショールーム」のことを具体的に述べていないことを除けば,本訴におけるのと実質的に同じといってよい主張をしているということができる(被告は,平成13年8月9日付け第2準備書面に至って,被告ブランド商品とOEM商品とは,品物自体が別である商品である旨主張を変更し,乙第24号証中には,これに沿う記載があるが,上記審判事件答弁書の記載内容に照らし,信用することができない。)。そして,被告による本件商標を付したポロシャツの販売に,いわゆるOEM商品の製造販売との関係で,そこに述べられているような問題などの問題があるであろうことは,見易い道理であり(状況によっては,OEM商品そのものの「横流し」を疑われることにもなりかねないであろう。),そして,もし,そうであるとすれば,被告にとって,本件商標を付したポロシャツの販売の具体的内容は,余り明らかにしたくない事柄,できれば具体的に触れたくない事柄であったであろうことは,容易に推測できることである。
これらの事情を考慮に入れると,原告主張の被告の主張の変遷は,この点についての被告の主張の全体の信用性を疑うきっかけなり,またその一つの根拠になり得るとはいえるものの,上記認定を左右するに至るまでのものではないというべきである。
「請求人(判決注・原告のこと。以下同じ。)は,弁駁書の第3頁第7行〜第10行において,「被請求人は,商品ポロシャツ等又は同商品の包装に,本件商標を付している旨主張しているが,当該商品がポロシャツであるとしても,これが商品であると認めることはできない。」と弁駁している。しかし,この点は全く事実に反している。以下に証拠を挙げて述べる如く,被請求人が本件商標を付している商品は,現実に一般市場で流通に供されているものであり,商標法上の「商品」であることは毫も疑いの余地がないものである。」(甲第13号証3頁5行〜11行) 「被請求人は,先に述べた如く,ニット生地の製造および被服の製造を約6対4の割合で営む者である。そして被請求人が製造した被服は,@その殆どは「注文側の商標で販売される商品を受託生産するOEM商品」として前記の販売先へ販売し,A残りの被服についてのみ,登録商標の使用説明書(2)乃至(5)に示す如く,これに本件商標「Selio」のブランドを付して販売しているものである。この場合に「Selio」のブランドを付したポロシャツ等の商品は,一般の小売店やデパート等へ卸して販売に供しているのではなく,被請求人の会社でのみ小売販売している,何故に,そのような販売形態を採用しているかについては,OEM商品の販売形態に関係するので後述する。」(甲第13号証4頁3行〜11行) 「被請求人は,前述の如く有名ブランドを付した被服をOEM商品として販売していたが,その商品のデザインや品質が非常に優れているために,当該被服を低廉な価格(すなわち卸値)で販売して貰えないか,との打診や希望が相次いだ。しかしOEM商品は,当然のことながら注文を受けた全量をそっくり発注元に納入しなければならず,仮に有名ブランドを付したOEM商品を横流しした場合は,受注元としての信用を完全に失墜してしまう。そこで被請求人は,「J.ニクラウス」,「クロエ」,「ミラショーン」,「ダンヒルゴルフ」等の有名ブランドの使用に代えて,自社ブランドである商標「Selio」を付した被服を企画し,これを希望者に卸値またはそれに近い価格で販売することにしたものである。しかしこの場合に,商標「Selio」を付した被服を一般の小売店やデパートで販売することは,ブランド以外の商品内容は同じであることから,前記OEM商品の発注元に対して差し支えがある。そこで,被請求人は,前述の如く自らの会社でのみ,求めに応じて小売販売することにしたものである。」(甲第13号証5頁6行〜18行) (2) 原告は,甲第9ないし第12号証を根拠に,本件ポロシャツは,宣伝用の贈答品として,顧客に無償配布されているものにすぎない旨主張する。これらの甲号各証は,本件商標について,原告訴訟代理人事務所から調査依頼を受けた調査会社の調査員が一主婦を装い,被告会社に電話をして,本件商標を付したポロシャツをクリーニングに出したら縮んでしまったので,購入したい旨の虚偽の事実を告げた際の被告会社の応対内容を録音したテープの反訳書(甲第12号証),調査員の求めに応じて被告会社が送付した本件商標が付されたポロシャツの写真(甲第11号証),ポロシャツを送付した際に被告が添付した書状(甲第10号証)及び調査報告書(甲第9号証)である。
上記証拠中の甲第10号証中には「この商品に付,店頭販売はしておらず,極一部の贈答用の商品として,デザイン及び生産された物です」との記載があり,そこでは,店頭で販売されるという,一般的な取引形態の対象となる商品ではないこと,ごく少量しか生産されないことが強調されている。しかしながら,甲第10号証中のこの記載を,本件商標を付したポロシャツが,一切販売の対象とされていないことまで述べたものとみることはできないというべきである。また,前述のように,被告が本件商標を付したポロシャツを販売することには,いわゆるOEM商品の製造販売との関係で,もともと問題があったとすれば,被告には,それをできるだけ小さなものに見せようとする動機があったことになる。甲第12号証の反訳書中にも,調査員が再三にわたり誘導しているにもかかわらず,被告会社から,本件商標が付されたポロシャツが専ら贈答の対象であって一切販売の対象とされていない旨の回答があったことを見出すことはできない。甲第9号証の調査報告書には,上記資料を前提とした調査会社の推測を交えた意見が記載されているものにすぎないというべきであり,前提とした資料が上記のとおり原告の主張を裏付けるに足るものではない以上,同号証自体が,原告の主張を裏付けるに足るものでないことも明らかである。
上記のとおりであるから,甲第9ないし第12号証は,本件商標を付したポロシャツが贈答品に当てられることもあることを認めさせるものではあり得るとしても,本件商標を付したポロシャツの販売についての上記認定を覆すに足りないというべきであり,他に上記認定を左右するに足りる証拠はない。
(3) 原告は,極めて限定された範囲での特定の第三者をその取引対象としているようなものは,商標法上の「商品」とはいえない旨主張する。しかしながら,仮に,結果的に取引の対象者が限られた少数の者となったとしても,それを,「特定」の第三者を取引対象とするものということはできず,そのことによって,その取引の対象物が商標法上の「商品」であることが否定されるものではないことは,明らかというべきである。
原告の主張は,採用できない。
3 原告は,商標法による保護は,商標の使用によって蓄積された信用に対して独占排他権という形で与えられるものであり,保護すべき信用が発生していない商標については,原則として法によって保護する価値はない,と主張する。しかし,同主張は,立法論としてはともかく,登録主義を原則とする,我が国の商標法の下では,採用できないものというほかない。
4 結論 以上によれば,本件商標は,本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において,被告によって取消請求に係る指定商品中のポロシャツについて使用されているものということができるから,審決の認定判断に誤りはなく,その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
そこで,原告の本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担並びに上告及び上告受理の申立てのための付加期間について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,96条2項を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 設樂隆一
裁判官 阿部正幸
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