関連審決 | 異議1998-91970 |
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関連ワード | 指定商品 / 混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) / 4条1項10号 / 4条1項11号 / 4条1項15号 / 著名商標 / 顧客吸引力(グッドウィル) / 類似性(類否判断) / 結合商標 / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 離隔的 / 離隔的観察 / 取引の実情 / 出所の混同 / 登録異議申立 / 継続 / |
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事件 |
平成
13年
(行ケ)
119号
商標登録取消決定取消請求事件
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原告 株式会社オクロスコーポレーション 訴訟代理人弁理士 宮崎伊章 被告 特許庁長官及川耕造 指定代理人 廣田米男 同 大橋良三 被告補助参加人 ザ ポロ/ローレンカンパニー リミテッド パートナーシップ 訴訟代理人弁理士 曾我道照 同 黒岩徹夫 同 岡田稔 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2001/11/29 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成10年異議第91970号事件について平成13年2月1日にした決定を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告 主文と同旨 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,別紙決定書の理由の写し末尾に本件商標として表示されたとおりの図形から成り,商標法施行令別表による商品及び役務の区分第25類の「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品とする,登録第4159359号商標(平成8年10月1日登録出願,平成10年6月26日設定登録(甲第2号証により,審決書が平成10年8月20日としているのは,誤記と認める。)以下「本件商標」という。)の商標権者である。本件商標について,被告補助参加人らから異議申立てがあり,特許庁は,これを平成10年異議第91970号として審理した結果,平成13年2月1日に「登録第4159359号商標の商標登録を取り消す。」との決定をし,その謄本は同月26日に原告に送達された。 2 決定の理由 別紙決定書の理由の写しのとおり,本件商標をその指定商品に使用する場合には,これに接する取引者・需要者は,ラルフ・ロ―レン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがあるから,本件商標は商標法4条1項15号に該当する,と認定判断した。 |
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原告主張の決定取消事由の要点
決定の理由のうち,「第1 本件商標」,「第2 本件登録異議申立の理由の要点」,「第3 本件取消理由通知」「第4 本件商標権者の意見の要点」,は認める(ただし,通知された取消理由の正しさは争う。)「第5 当審の判断」は争う。 決定は,出所の混同のおそれについての認定判断を誤ったものであって,この誤りが結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法として取り消されるべきである。 1 引用商標(別紙決定書の理由の写し末尾に引用商標として表示されたものをいう。)に含まれるラルフ・ローレンのポロプレーヤーの図形(以下「ラルフ図形」という。)の周知,著名性について (1) ラルフ図形は,それ自体では,すなわち,「Polo」の文字又は横長四角形中に記載された「Polo」の文字又は「by RALPH LAUREN」の文字を伴わない場合には,周知,著名であるとはいえない。 ラルフ図形の周知,著名性の認定に関係すると思われる甲第4,第5,第9,第29号証が,仮に,何らかの周知,著名性を証明しているとしても,それは,上記の各文字と結合したラルフ図形が周知,著名性を有することについてであるにすぎない。 特許庁電子図書館「日本国周知・著名商標検索」の結果(甲第159号証の1ないし4)によっても,周知,著名性を獲得していることが認められるのは,「POLOBYRALPHLAUREN」及び横長四角形中に記載された「Polo」及び「by RALPH LAUREN」の両者の文字を二段書きにしたものからなる結合商標であって,ラルフ図形が,我が国において周知著名性を獲得していることまでは,認められないというべきである。 (2) 特許庁は,本件における取消理由通知(甲第3号証)においては,引用商標を,横長四角形中に記載された「Polo」の文字,「by RALPH LAUREN」の文字,馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形からなる「各商標」と定義したうえで,上記各文字及び図形のそれぞれについて周知,著名性が獲得されているとしている。これに対し,決定においては,引用商標を,横長四角形中に記載された「Polo」の文字,「by RALPH LAUREN」の文字,馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形からなる「商標」と定義したうえで,上記各文字及び図形の結合商標全体について周知,著名性が獲得されているとしている。このように,取消理由通知と決定とで,引用商標の定義が相違していることは,特許庁において,周知,著名性を獲得する対象についての明瞭な事実認識がなかったことを示しており,このような事実認識を前提に,ラルフ図形が周知,著名であるとした決定の認定判断は,誤りである。 (3) 本件においてなされた取消理由通知は,引用商標中の横長四角形中に記載された「Polo」の文字,「by RALPH LAUREN」の文字,馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形が,それぞれ「ポロ」と略称され,「ポロ」,「Polo」,「POLO」と称されている,としている。しかし,甲第4ないし第15号証,第29ないし第32号証には,このような事実は記載されていない。仮に,上記甲号各証から,横長四角形中に記載された「Polo」の文字又は「by RALPH LAUREN」の文字が,上記のように略称されている事実が認められるとしても,ラルフ図形までが,同様に略称されている事実を認めることはできない。ラルフ図形が,「ポロ」等と略称されていたとの事実を前提に,この図形が周知,著名であるとした決定の認定判断は誤りである。この誤りが決定の結論に影響を与えることは明らかであるから,決定は,違法として取り消されるべきである。 2 商品の出所混同のおそれについて (1) ラルフ図形から特定される観念,称呼について 甲第4,第5,第9,第29号証によれば,ラルフ図形は,@馬上に人が乗り,人は先端がT字型の棒を肩の上に振り上げて掲げており,顕著な躍動感ないしスピード感のない,どちらかといえば静止的な図形であり,A極度に写実的でなく,多数の白抜き線で区切られた「印影」状態で描かれ,B馬も人も共に左側のほぼ正面図形として描かれ,C馬の前足は地面からわずかに離れているが,両足ともおおむね地面に接近した状態で描かれて構成されている。取消理由通知は,この図形に関し,「本件商標と引用商標の図形部分は描き方は相違するが共にポロプレーヤーを表してなるものである。」(甲第3号証3頁6行〜8行)として,「ポロプレーヤー」という「観念」又は「称呼」が認められるものとした。しかし,上記甲号各証によって認められるのは,@ないしCで概略特定される図形の外観にすぎず,「ポロプレーヤー」という「観念」又は「称呼」は認められない。 このような「ポロプレーヤー」という「観念」又は「称呼」が認められることを前提とした決定の認定判断は,誤りである。この誤りが決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,決定は,違法として取り消されるべきである。 被告は,ラルフ図形からは,「ポロプレーヤー」の観念ではなく,ポロ・ラルフローレンの「ポロ」の観念や称呼が認められる旨主張する。しかし,上記甲号各証からこのような事実を認めることはできない。 (2) ラルフ図形と,ポロ競技との関係について 甲第33ないし第36号証によれば,「ポロ競技」は,我が国においてはなじみの薄いスポーツであると認められる。また,ラルフ図形は,前記のとおり,写実性に極度に欠け,印影のような状態で描かれており,外観上,非常に把握し難い図形である。 このように,ポロ競技が我が国においてはなじみの薄いスポーツであること,ラルフ図形が,外観上,非常に把握し難い図形であることから,同図形に接した我が国の取引者・需要者が,「ポロプレーヤー」という「観念」又は「称呼」を認識し得ることはないというべきである。 仮に,ラルフ図形が周知,著名であるとしても,それは,外観上に関してのことにすぎないから,他の図形と比較して観察するときに,その共通要素として,「ポロプレーヤー」という「観念」や「称呼」を持ち出すことは,正しくない。 このように,我が国では,引用商標に含まれるポロ競技者の図形(ラルフ図形)からは,「ポロプレーヤー」や「ポロ競技者」という「観念」や「称呼」は生じず,また,引用商標に含まれる横長四角形中に記載された「Polo」の文字又は「by RALPH LAUREN」の文字からは,ポロ競技を意味する「ポロ」の「観念」や「称呼」は生じていない,というべきである。 (3) ラルフ図形と本件商標のポロ競技者の図形から抽出される共通要素について 決定は,本件商標のポロプレーヤーの図形と,引用商標のポロプレーヤーの図形(ラルフ図形)とを対比して,ポロ競技者が馬上からT字状の棒(マレット)を持ち,これを上から振り下ろさんとする様子において共通するとし,それ以外の相違点は微差にすぎないとして,商品の出所混同のおそれがあると認定判断した。 しかし,上記認定判断は,ポロ競技に対する認識が我が国において定着しているという,誤った前提に立つものである。ラルフ図形は,外観上非常に把握し難い図形であることは,前記のとおりであるから,このような図形から,外観上,ポロ競技者を認識し,T字状の棒(マレット)を認識し,これを上から振り下ろさんとする様子を認識することは,ポロ競技になじみの薄い我が国の取引者・需要者にとって,困難である。ましてや,離隔的観察手法で,両図形商標を観察した場合には,取引者・需要者が,外観上,非常に把握し難いラルフ図形が付された商品を購買し,時と所を違えて,本件商標の横向きの明瞭なポロ競技者の図形が付された商品を購買するに当たって,両者が同一出所であると誤認混同することはあり得ないというべきである。 (4) 本件商標の登録査定時における「ポロ」の称呼概念 甲第160ないし第177号証,第178号証の1ないし13,第180ないし第189号証によれば,本件商標の登録査定時においては,一般の取引者・需要者が通常認識しているラルフ・ローレンのブランドは,「ポロブランド」や「ポロ商標」ではなく,「ラルフローレンブランド」又は「ポロ・ラルフローレンブランド」であり,仮に略称されるとしても,それは「ポロ」ではなく「ラルフ」又は「ラルフローレン」であり,観念は「ポロ」ではなく,「ラルフ」又は「ラルフローレン」である。また,ラルフ図形についても,「ポニー」と愛称されており,「ポロ」という称呼や観念は生じていない。 仮に,ラルフ・ローレンのブランドが,本件商標の商標登録出願時より10年ないし20年も前に,「ポロ商標」又は「ポロブランド」と呼ばれていたことが事実であったとしても,少なくとも本件商標の登録査定時である平成10年には,「ポロブランド」ではなく,「ラルフローレンブランド」と呼ばれており,略称ないし観念は,「ポロ」ではなく「ラルフ」であって,上記事実は消滅している。にもかかわらず,決定は,このような事情の変更に対する認識を欠如したまま事実認定をし,そのため,本件登録査定時にも,この状態は継続しているという,誤った認定をするに至っている。 (5) 本件商標以外の周知,著名商標の外観上の類似性について 前記取消理由通知における認定判断に照らすと,引用商標以外の周知,著名商標である「ラコステ」のワニ図形(商標登録第1151800号,甲第37号証)からは,「ラコステ」の観念が生じ,したがって,ワニ図形から成る商標は,「ラコステ」の観念を共通にすることになるはずであるにもかかわらず,ワニ図形については,各種の外観を持つ登録商標が同一分類で商標登録されている(甲第38〜第78号証)。 また,他の周知,著名商標である「ライルアンドスコット」の鷲図形(商法登録第2291566号,甲第79号証)からは,同様に,「ライルアンドスコット」の観念が生じ,したがって,鷲図形から成る商標は,「ライルアンドスコット」の観念を共通にすることになるはずであるにもかかわらず,鷲図形については,各種の外観を持つ登録商標が同一分類で商標登録されている(甲第80〜第117号証)。 さらに,互いに「競馬図形」という点で共通している,多数の競馬図形(甲第118〜第156号証)については,それぞれが観念上及び外観上類似しないとして,登録されている。 以上によれば,周知著名な図形についても,決定が,ポロ競技図形でありさえすれば,ラルフ図形と観念上及び外観上類似しているものとして画一的に扱っているようには,画一的に扱われていないことが明らかである。本件においても,図形における馬及び競技者の向き,馬の足の位置,馬及び競技者の相互の大きさ,躍動感,写実度(抽象度)など,各種の描写態様を個別的に判断して,その上で引用商標中のラルフ図形を連想するかどうかを判断すべきであるにもかかわらず,決定は,個別的な観察手法を採ることなく,画一的に「ポロプレーヤー」を共通要素とすると判断している。この点において決定の認定判断には瑕疵がある。 引用商標の図形部分(ラルフ図形)からは「ポロプレーヤー」という観念が生じないことは,前記のとおりである。したがって,図形の外観上の比較は,個別的に厳格にしなければならない。 (6) まとめ 引用商標に含まれるラルフ・ローレンのポロプレーヤーの図形(ラルフ図形)と,本件商標のポロ競技図形とを外観上対比観察すると,前者は,前記のとおりの外観構成要素を伴う,多数の白抜き線で区切られて「印影」状態で描かれた極度にデザイン化された極めて非写実的な人馬の正面図であるのに対して,後者は,@馬上に人が乗り,人は先端がT字型の棒を,地面にあるボールを打ち込むために振り下ろす直前の状態として描かれており,顕著に躍動感ないしスピード感があり,どちらかというと動的な図形であり,A図形は,ラルフ図形と比較すると極めて写実的であって,ラルフ図形のように多数の白抜き線で区切られた「印影」状態で描かれておらず,B馬も人も共に右側側面図形として描かれており,C馬の後足は両足とも地面に接しており,前足は両足とも地面から大きく離れているという構成の側面の人馬図形であることから,取引者・需要者は,外観構成上,異なる図形商標として認識することができるものである。しかも,引用商標中のラルフ図形の周知,著名性は,証明されていないのであるから,その周知,著名性が両図形の外観上の差異に関する判断に対して与える影響も皆無である。 仮に,引用商標が,結合商標全体として周知,著名であるとしても,それは,あくまで,結合商標として,全体として,周知,著名であるというにとどまり,その中に含まれている図形商標,すなわちラルフ図形自体が周知著名であるわけではないのであるから,これと,横長四角形中に記載された「Polo」の文字及び「by RALPH LAUREN」の文字を伴わない本件商標とが混同されることはないというべきである。 上記のとおりであるから,引用商標の周知,著名性を根拠に,引用商標に含まれるラルフ図形と,本件商標のポロプレーヤーの図形とが,商品の出所混同をきたすとして,商標法4条1項15号を適用した決定は,違法である。 3 外観類似と商標法4条1項15号の適用 決定は,「本件商標と引用商標には,その構成に係る図形に商標権者主張のような相違があるが,本件商標のポロ競技者の図形と引用商標のポロプレーヤーの図形とは,ポロ競技者が馬上からT字状の棒(マレット)を持ち,これを上から振り下ろさんとする様子において共通し,類似性があるものと認められる。」(決定書5頁下から10行〜6行)としている。 一方,決定は,異議申立人の一人である被告補助参加人が登録異議申立ての段階で特許庁長官に提出した商標登録第2691725号(甲第157,第158号証)を引用商標として,商標法4条1項11号又は10号を適用することはしなかった。 商標法4条1項15号には,「(第10号から前号までに掲げるものを除く。)」と規定されているから,仮に外観上の類似性を問題とするのであれば,同法4条1項15号を適用することは違法である。 仮に,商標法4条1項15号の適用が適法であるとするならば,決定のいう「類似性」は,同法4条1項10号,11号を適用する上での商標の類似を意味するものではないから,それは本件商標とラルフ図形とが,外観上,類似でないことを認定していることになる。それにもかかわらず,商標法4条1項15号が適用されるとすれば,その根拠は,外観類似ではない他の混同要素に求められることになる。 前記のとおり,我が国ではポロ競技のなじみが薄いこと,「ポロ」の略称がラルフ図形から生じるとは認められないことに照らすと,決定が,商標法4条1項15号を適用したことは,明らかに違法であるというべきである。 |
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被告の反論の要点
1 ラルフ図形の周知,著名性について (1) 引用商標の構成は,横長四角形中に記載された「Polo」の文字,「by RALPH LAUREN」の文字,馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形(ラルフ図形)の各標章から成るものである。 引用商標は,「ポロ」,「Polo」,「POLO」などと称され,「ポロ」の略称でも呼ばれ,本件商標の登録出願時までには,既に,我が国の取引者・需要者の間に広く認識されるに至っていた商標である。 それゆえ,取引者・需要者は,引用商標について,各標章を相互に関連付けてラルフ・ローレンのポロ商標としての認識を持ち,その周知・著名性を認識し,その結果,上記各標章が単独で使用されたときにも,引用商標の馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形(ラルフ図形)や,「ポロ」の観念を連想,想起するのである。 たとい,引用商標中の,ラルフ図形が単独で使用されていなかったとしても,そのことは,引用商標が周知,著名性を獲得し,その結果,本件商標が引用商標と出所の混同を生じるおそれがある以上,本件商標について商標法4条1項15号の「混同のおそれ」の有無の判断をすることを妨げる事由となるものではない。 原告の主張は,要するに,ラルフ図形のみが単独で使用されているときのみしか,本件商標とラルフ・ローレンの業務との混同のおそれが生じることはない,とするものにほかならず,失当である。 したがって,決定が,引用商標について,馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形(ラルフ図形)を含む,その全体としての周知,著名性を認定し,その上で,本件商標に商標法4条1項15号を適用した判断には,何らの違法もない。 原告は,取消理由通知と決定との間で,引用商標についての認定が異なる旨主張する。しかし,取消理由通知が,引用商標について,横長四角形中に記載された「Polo」の文字,「by RALPH LAUREN」の文字,馬に乗ったポロ競技のプレーヤーから成る「各商標」,と述べたのは,引用商標の各構成要素を明示し,引用商標を特定するためであり,ラルフ図形を含む引用商標全体を認定判断の対象としていることは,「各商標(以下,これらをまとめて「引用商標」という。・・・)」(甲第3号証2頁2行)と述べているところから明らかである。引用商標についての認定において,決定と取消理由通知とは同一である。 (2) 甲第4ないし第6号証,第8,第9,第11ないし第15号証,第29ないし第32号証,乙第1号証,第2号証の1,2によれば,本件商標の商標登録出願時,既に,引用商標は,「ポロ」と呼ばれて,紳士服,婦人服,眼鏡などのファッション関連商品について,ラルフ・ローレンのデザインに係る商品に付される商標として,我が国の取引者・需要者の間に広く認識され,強い顧客吸引力を有する状態に至っていたものと認められ,その認識の度合いは,現在においても継続しているということができる。 原告は,引用商標が,本件商標の登録出願時よりも10年ないし20年も前に「ポロ商標」又は「ポロブランド」と呼ばれていたことが事実だったとしても,本件商標の登録査定時においては,取引者・需要者が通常認識しているラルフローレンブランドは,「ポロ商標」,「ポロブランド」ではなく,「ポロラルフローレン」ないし「ラルフローレンポロ」であって,上記事実は消滅している旨主張する。しかし,引用商標は,本件商標の商標登録出願よりも15年を超える前に周知著名となり,その後も,前記のとおり,本件商標登録出願時に至るまで,ラルフ・ローレンがデザインした商品にラルフ図形そのものや,この図形を含む標章が現実に使用されてきているのであり,その周知,著名性は,本件商標登録出願当時はもとより,査定時においても継続している。他方,原告主張のように,ラルフ・ローレンのブランドは,「ポロ・ラルフローレン」ないし「ラルフローレンポロ」として取引者・需要者に認識されるようになったということは,取引者・需要者が,ラルフ図形を含む標章について,以前よりもより一層ラルフ・ローレンと関連付けて認識するようになった,という意味での事情の変更があったことを物語るものというべきである。 引用商標の周知,著名性を認定した決定は,正当であり,そこに原告主張の違法はない。 2 商品の出所混同のおそれについて (1) 引用商標中のポロプレーヤーの図形(ラルフ図形)は,走る馬に乗り,右手でポロ競技用のT字状の棒(マレット)を斜め上に構えた一騎のポロプレーヤーを斜め前方から表した図形であり,ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等のファッション関連商品に使用され,「ポロ」と呼ばれて,我が国の取引者・需要者の間に広く知られ,強い顧客吸引力を有している。他方,本件商標は,走る馬に乗り,右手でポロ競技用のT字状の棒(マレット)を中段に構え,後方を向いた一騎のポロ競技者を斜め横から表した図形商標である。本件商標の指定商品は,第25類のファッション関連商品であり,引用商標の使用商品と共通している。 両商標を比較すると,両者は,ポロ競技者がマレットを馬上から振り下ろそうとする,ポロ競技における競技者の躍動的なポーズを瞬間的にとらえた図形であって,全体の構成は,共通の印象を与えるものである。そして,競技者の向き,マレットの高低等の相違は,およそポロ競技者が競技をするときに取るであろうと推測される競技中の単なるポーズの微差にすぎないから,このような相違は,前記のとおり,引用商標が周知,著名であるという取引の実情の下においては,取引者・需要者に与える印象は,薄いものである。 したがって,本件商標がその指定商品に使用された場合には,本件商標に接する取引者・需要者は,上記構成から成り,「ポロ」と称され,強い顧客吸引力を有する引用商標を想起し,これと誤解したり,又はラルフ・ローレンの周知,著名な引用商標と異なることに気付いたとしても,ラルフ・ローレンの引用商標の兄弟ブランドあるいはファミリーブランドであると誤認して,その出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。 (2) ポロ競技は,原告主張のとおり,我が国ではなじみの薄いスポーツである。それだからこそ,本件商標をその指定商品であるファッション関連商品に使用するときは,これに接する取引者・需要者は,被服等のファッション関連商品について使用され,本件商標の登録出願時には既に周知,著名なものとなっている引用商標を連想,想起し,ラルフ・ローレンのポロブランドと誤解したり,ラルフ・ローレンと関係がある商品と誤認したりするおそれがあるのである。 (3) 原告は,引用商標は,写実的でなく,ポロプレーヤーの図形として外観上把握し難い旨主張する。 しかし,前記のとおり,引用商標は,「Polo」の文字,「by RALPH LAUREN」の文字,馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の各標章から成るものであり,しかも,引用商標は,ラルフ・ローレンのポロ商標として周知,著名であり,「ポロ」の略称でも呼ばれているのである。これらの実情からみて,引用商標における図形標章についてポロプレーヤーの図形と認めることを妨げる事由はないものというべきである。 3 外観類似と商標法4条1項15号の適用について 決定は,前記のとおり,馬に乗ったポロプレーヤーの図形よりなる本件商標について,ラルフ・ローレンの馬に乗ったポロプレーヤーの図形(ラルフ図形)の標章との類似性も考慮した上,本件商標をその指定商品に使用するときは,引用商標の使用に係る商品と出所について混同を生じるおそれがあると認定・判断したものである。商標法4条1項15号の「混同を生ずるおそれ」の有無の検討に当たって,「当該商標と他人の表示との類似性の程度」を検討することは,当然のことである(最高裁平成12年7月11日第3小法廷判決,同平成13年7月6日第2小法廷判決参照)。図形から成る本件商標と引用商標を構成する図形部分(ラルフ図形)とを比較して,その類似性を認定し,そのような事情をも併せ考慮した上で,本件商標について,引用商標との誤認・混同の有無を検討して,商標法4条1項15号該当性の判断をすることは,何ら違法なことではない。 4 以上のとおりであるから,ラルフ・ローレンの引用商標を周知,著名とし,その上で,本件商標は,引用商標を付した被服等のファッション関連商品と出所の混同を生じるおそれがあるから,商標法4条1項15号に規定に違反して登録されたとした決定に誤りはない。 |
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被告補助参加人の主張の要点
原告は,引用商標に含まれるポロプレーヤーの図形(ラルフ図形)からは,「ポロプレーヤー」という称呼及び観念は生じない旨主張する。 しかし,被告補助参加人が使用するポロプレーヤーの図形(ラルフ図形)は,ラルフ・ローレンのデザインに係るファッション関連商品を示すものとして日本を含む多くの国において周知,著名性を獲得しており,丙第1ないし第5号証から明らかなように,日本においても,「ポロプレーヤー」又は「ポロプレーヤーマーク」の意味合いで認識され使用されている商標である。したがって,引用商標に表された図形標章(ラルフ図形)からは,「ポロプレーヤー」又は「ポロプレーヤーマーク」の称呼及び「ポロ競技者」の観念を生ずるものである。原告の主張は,失当である。 |
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当裁判所の判断
1 本件商標の商標登録出願時における商品の出所の混同のおそれについて (1) 甲第4ないし第15号証,第29ないし第31号証,乙第1号証,第2号証の1,2,丙第2ないし第4号証,第6号証によれば,次の事実が認められる。 ラルフ・ローレンは,1939年(昭和14年)生まれのアメリカの服飾等のデザイナーである。同人は,1970年,73年の2回にわたりアメリカのファッション界では最も権威があるとされるコティ賞を受賞し,1974年には映画「華麗なるギャツビー」の男性衣装を担当するなどして,世界的に知られるようになった。ラルフ・ローレンがデザインした紳士服等には、引用商標すなわち横長四角形中に記載された「Polo」の文字と「by RALPH LAUREN」の文字と「馬上の競技者が,先端が小さなT字状になった棒のような物を持っている図形」(ラルフ図形)とを結合した商標や、引用商標中の上記文字あるいは図形単独のものが,使用されている(以下、これらを総称して「ラルフ標章」という。)。我が国においては,我が国でのラルフ・ロ―レンのデザインに係る商品の輸入・製造・販売のライセンス(許諾)を得ていた(ただし,ネクタイ,眼鏡を除く。)西武百貨店の昭和62年におけるポロ・ラルフローレンブランドの小売販売高が約330億円となり,平成元年ころには,第三者がラルフ標章ないしこれに酷似した標章を付した偽ブランド商品を販売して摘発されるという事件が発生し,その後も平成4年,5年に同種の事件が発生して摘発されるなど,ラルフ標章は顧客吸引力を有するに至っていた。本件商標の商標登録出願(平成8年10月1日)前から,各種雑誌等において,ラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服,婦人服,眼鏡を始めとする商品が一流ブランドないし流行ブランドとして,「ポロ」,「POLO」,「Polo」のブランド名のもとに紹介され,一般大衆を読者とする新聞でも,平成元年5月19日付け朝日新聞夕刊(甲第29号証)に「『ポロ』の偽 大量販売 警視庁 通信販売会社を摘発・・・『Polo(ポロ)』の商標で知られるラルフローレンブランド・・・米国の『ザ・ローレン・カンパニー』社の商標・デザインで西武百貨店が日本での独占製造販売権を持っている『Polo』の商標と乗馬の人がポロ競技をしているマーク」,平成2年11月27日朝日新聞朝刊栃木版(乙第2号証の1)に「ポロやアルマーニ・・・などの輸入ブランド・・・ポロのセーター」,平成3年12月5日の朝日新聞朝刊京都版(乙第2号証の2)に「ラルフローレンのポロのマーク」,平成4年9月23日付け東京読売新聞朝刊(甲第30号証)に「アメリカの人気ブランド『ポロ』(本社ニューヨーク)のロゴ『ポロ・バイ・ラルフ・ローレン』」,平成5年10月13日大阪読売新聞朝刊(甲第31号証)に「ポロ競技のマークで知られる米国のファッションブランド『POLO(ポロ)』」という各記事が掲載されているように,ラルフ標章は「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)の商標の名で知られ,これを付した商品もブランドとして「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と呼ばれていた。 また,被告補助参加人らは,平成4年,6年,7年に,新聞(繊研新聞)紙上において,ラルフ図形,すなわち,引用商標中の「馬上の競技者が,先端が小さなT字状になった棒のような物を持っている図形」を大きく示し,その横に大きな文字で「このポロプレイヤーマークは,ラルフローレンがデザインした製品だけに使える商標です。」と付記した広告を出した。 上記認定の各事実によれば,本件商標の商標登録出願時である平成8年10月には,既に,ラルフ標章は,「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)の商標などと呼ばれ,これを付した商品もブランドとして「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と呼ばれて,いずれも紳士服,婦人服,眼鏡等のファッション関連商品についてラルフ・ローレンのデザインに係る商品に付される商標ないしそのブランドとして著名であったことが認められる。 原告は,引用商標中のラルフローレンのポロプレーヤーの図形(ラルフ図形)は,「Polo」,「by RALPH LAUREN」と結合した商標としてのみ著名なのであって,単独では著名ではない旨主張する。しかしながら,前記認定のとおり,ラルフ図形が単独でラルフローレンの紳士服等に付されて使用されている事実が認められる上,同図形は,引用商標中においても,むしろ,文字部分より,取引者・需要者の視覚に訴える度合いが大きいことは明らかであるから,引用商標が著名であると認められる以上,その図形部分は,単独でも著名であると認められるというべきである。原告の主張は,採用することができない。 (2) 一般に,本件商標が使用される商品である「被服」等のファッション関連商品は,主たる需要者は,老人から若者までを含む一般大衆であって,その商品「被服」等に係る商標やブランドについて,詳しくない者や中途半端な知識しか持たない者も多数含まれている。そして,このような需要者が購入する際は,恒常的な取引やアフターサービスがあることを前提にメーカー名,その信用などを検討して購入するとは限らず,そのような検討もなくいきなり小売店の店頭に赴いたり,ときには通りすがりにバーゲンの表示や呼び声につられて立ち寄ったりして,短い時間で購入商品を決定することも少なくないものである。(以上の事実は,当裁判所に顕著である。) したがって,本件商標についての混同のおそれの判断に当たっては,以上のような経験則,及び取引の実情における需要者の注意力を考慮して判断すべきである。 (3) 本件商標は,別紙決定書の写し末尾の「本件商標」欄のとおり,ポロの競技者が疾走する馬に乗って,後ろを向いてポロ競技用のマレットと呼ばれるT字状の棒を後方に向かって構え,振り下ろそうとしている姿を横から表した図形である。 他方,引用商標中の図形部分(ラルフ図形)は,別紙決定書の写し末尾の「引用商標」欄にみえるとおり,ポロの競技者が,疾走する馬に乗り,ポロ競技用のマレットを斜め上方に構え,振り下ろそうとしている姿を,斜め前方から表したものである。 両者は,全体の構成が異なるものの,共に,疾走する馬に乗ったポロ競技者が,持っているマレットを振り下ろそうとしている姿を表した図形であるという点で共通性がある。 前記のように,ラルフ標章ないしラルフ・ローレンブランドが著名であり,強い顧客吸引力を有していることと,前記取引の実情における需要者の注意力とを併せ考慮すると,本件商標がその指定商品である,「被服」等のファッション関連商品に使用された場合には,これに接した取引者・需要者は,馬上でT字状の棒を持った競技者の図形であることに着目して,同様に,馬上でT字状の棒を持った競技者の図形を含むラルフ標章や,「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と呼ばれるブランド名を連想し,ラルフ・ローレンの業務に係る商品であると誤解し,あるいは,ラルフ標章の図形とは全体の構成が異なることに気付いたとしても,それがラルフ・ローレンブランドの兄弟ブランドないしファミリーブランドであると誤解して,その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。 原告は,「ポロ競技」が我が国においてはなじみの薄いスポーツであるため,引用商標中の図形(ラルフ図形)から「ポロプレーヤー」という観念又は称呼を認識することはないから,本件商標と出所混同を生ずるおそれはない旨主張する。 しかしながら,仮に「ポロ競技」自体を知らない取引者・需要者であっても,ラルフ図形から,少なくとも,馬上でT字状の棒を持った競技者の図形であることを認識することができ,前記ラルフ標章の著名性に鑑みるならば,本件商標に接した取引者・需要者は,それが馬上でT字状の棒を持った競技者であると認識し,その結果として,ラルフ標章ないしラルフ・ローレンブランドを連想するものというべきである。原告の主張は,混同のおそれが生じるためには,ラルフ図形及び本件商標から,正確な意味での「ポロプレーヤー」という観念ないし称呼が生じることが必要であるとの見解を前提とするものである。しかし,ポロ競技について正確に知らなくとも,上記の意味で著名なラルフ標章ないしラルフローレンブランドを連想することは十分に可能であり,このような連想にとって,厳密にポロ競技を知った上で「ポロプレーヤー」という観念ないし称呼が生じることまでは必要でないことは,明らかというべきである。原告の主張は,採用することができない。 2 登録査定時における商品の出所の混同のおそれについて 甲第32号証,丙第5号証によれば,本件商標の商標登録出願後も,登録査定時(登録のなされた平成10年6月26日の少し前)を経て,決定時(平成13年2月1日)にかけて,平成8年12月6日付け繊研新聞において,引用商標中の「馬上の競技者が,先端が小さなT字状になった棒のような物を持っている図形」を大きく示し,その横に大きな文字で「このポロプレイヤーマークは,ラルフローレンがデザインした製品だけに使える商標です。」と付記した広告が掲載されていること,平成11年6月8日付け朝日新聞夕刊に「米国ブランド「ポロ」などのマークが入った偽物のセーターやポロシャツ」との記事が掲載されていることが認められ,このことに,本件商標の商標登録出願時の状況についての前記認定を加えて考えれば,上記出願時後も,「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)の商標などと呼ばれるラルフ標章,及び,そのブランドである「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)ブランドの著名性は継続しており,また,ラルフ標章の顧客吸引力に着目して偽「ポロ」ブランド商品を販売する者も絶えなかったことが認められる。 原告は,本件商標の登録査定時である平成10年においては,ラルフ・ローレンのブランドは,「ポロブランド」や「ポロ標章」ではなく,「ラルフローレンブランド」又は「ポロ・ラルフローレンブランド」と呼ばれており,「ポロ」の称呼や概念は生じなくなったから,著名性に関する事情が変化した旨主張する。甲第160ないし第162号証,第164ないし第167号証,第170号証,第173,第177号証,第178号証の1ないし10,第180ないし第189号証によれば,平成4年から平成12年にかけて発行された雑誌や,平成9年以降のブランドランキングの結果等を表示したインターネットホームページ,平成8年から平成11年にかけての新聞記事において,ラルフ・ローレンのブランドが,「ラルフ ローレン」,「RALPH LAUREN」,「ポロ・ラルフローレン」,「ラルフ」等の名称で表示されて紹介されていることが認められる。しかしながら,前記認定のとおり,平成11年においてもラルフ・ローレンのブランドを「ポロ」と表示する新聞記事があることからすれば,上記事実があるからといって,「ポロ」の称呼が生じなくなったということはできない。仮に,「ポロ」の称呼が生じなくなったとしても,ラルフ・ローレンブランドが「ラルフローレン」等と呼ばれることによって,ラルフ標章の著名性が何ら減殺されるものではないことは,明らかである。原告の主張は,採用することができない。 そして,他に,本件商標の商標登録出願時から登録査定時に至るまでの間に,前記1の認定に係る事情に変化があったものと認めるに足りる証拠はないから,登録査定時においても,前記1の認定に係る混同のおそれは,なお継続していたものと認められる。 なお,原告は,引用商標以外の周知,著名商標である「ラコステ」等に関して,他の「ワニ図形」等が商標登録されている事例を挙げて,本件商標と引用商標とを,「ポロプレーヤー図形」として共通するものとして把握すべきではない旨主張する。しかしながら,他の周知,著名商標に関する類似の図形の商標登録の事例があっても,他の商標登録の事例は,事柄の性質上,本件商標にラルフ標章との混同のおそれがあるとの上記判断を左右するものではないというべきである。 3 商標法4条1項15号の適用について 決定は,「本件商標と引用商標には,その構成に係る図形に商標権者主張のような相違があるが,本件商標のポロ競技者の図形と引用商標のポロプレーヤーの図形とは,ポロ競技者が馬上からT字状の棒(マレット)を持ち,これを上から振り下ろさんとする様子において共通し,類似性があるものと認められる。そして・・・引用商標は,・・・本件商標に係る登録出願前には既に周知,著名な商標になっていたことを,以上認定した事実に合わせ考えれば,本件商標と引用商標との間の商標権者主張の前記差異点は,微差にすぎないものと認められる。」(決定書5頁下から10行〜末行)と認定判断したうえで,商標法4条1項15号を適用している。 原告は,商標法4条1項15号には,「(第10号から前号までに掲げるものを除く。)」と規定されているから,外観上の類似性を問題とするのであれば,同法4条1項15号を適用することは違法である旨主張する。商標法4条1項15号は,その規定の仕方から,商標相互の間に同条1項10号,11号にいう類似性が認められない場合や,その商品若しくは役務が同一又は類似でない場合に適用され,商品若しくは役務が同一又は類似である商標相互の間に類似性が認められる場合には,適用されないことは原告主張のとおりである。決定は,上記のとおり,「類似性がある」,「差異点は微差に過ぎないものと認められる。」として,本件商標と引用商標との類似性を認定して,これを根拠に,商標法4条1項15号を適用したようにも受け取れる表現をとっている。しかしながら,決定は,それを全体としてみれば,両商標の間に同条1項10号ないし11号にいう類似性があるといっているのではなく,ポロ競技者が馬上からT字状の棒(マレット)を持ち,これを上から振り下ろさんとする様子において共通に認識できる部分があるから,引用商標の著名性を前提とするならば,本件商標と引用商標との間に構成上の違いがあっても,本件商標に接する取引者・需要者は,ラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その出所の混同をきたすと認められる旨を述べていると解することができる。そうである以上,決定に商標法4条1項15号の適用を誤った違法があるとは認められない。 原告の主張は採用することができない。 |
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以上のとおりであるから,原告主張の取消事由は理由がなく,その他決定に
はこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって,本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 山下和明 |
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裁判官 | 設樂隆一 |
裁判官 | 阿部正幸 |