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関連ワード 指定商品 /  損害額 /  逸失利益 /  使用料相当額 /  警告 /  使用許諾 /  立証責任 /  継続 /  有名ブランド / 
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事件 平成 16年 (ワ) 2398号 債務不存在確認事件
平成 17年 (ワ) 1891号 損害賠償請求事件
本訴原告(反訴被告) シルバーオックス株式会社
訴訟代理人弁護士 友添郁夫
同 西川道夫
同 山下忠雄
同 梶谷拓郎
同 辻井康喜
本訴被告(反訴原告) 有限会社エーアールツー
訴訟代理人弁護士 益満清輝(以下,本訴原告(反訴被告)を「原告」と,本訴被告(反訴原告)を「被 告」という。)
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2005/09/05
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の本件本訴に係る訴えを却下する。
2 原告は,被告に対し,金267万2274円及びこれに対する平成15年11月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告のその余の反訴請求を棄却する。
4 訴訟費用は本訴反訴を通じてこれを100分し,その1を原告の,その余を被告の負担とする。
5 この判決の第2項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求の趣旨
1 本訴 (1) 原告が被告に対し,原告による別紙商標権目録記載の商標権侵害に基づき,190万8767円を超える損害賠償債務を有しないことを確認する。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 反訴 (1) 原告は,被告に対し,1億6507万8290円及びこれに対する平成15年7月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
(3) (1)項につき仮執行宣言
事案の概要
1(1) 本訴事件は,繊維製品等の販売等を業とする原告が,別紙商標権目録記載の商標権を有する被告に対し,原告が同商標権に係る商標を使用した衣服を販売等した商標権侵害行為に基づき,原告が被告に対して190万8767円を超える損害賠償債務を有しないことの確認を請求した事案である。
(2) 反訴事件は,被告が原告に対し,本訴に係る原告の商標権侵害行為に基づき,1億6507万8290円の損害賠償及びこれに対する平成15年7月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。
2 前提事実(争いがない) (1) 被告は,別紙商標権目録記載の商標権を有している(以下,この商標権を「本件商標権」,この商標権に係る登録商標を「本件商標」という。)。
(2) 原告は,平成15年6月又は8月ころから(時期については争いがある),本件商標又はそれと類似する標章を使用した子供用衣服(以下「本件商品」という。)を販売した。この行為は,本件商標権を侵害する行為に当たる(これを以下「本件商標権侵害行為」という。)。
(3) 本件訴訟の提起前に,原告と被告と間では,次のようなやりとりがなされた。
ア 被告は,原告に対し,平成15年11月19日到達の書面で,本件商品の製造販売が本件商標権を侵害する旨警告した。
イ これに対し原告は,同月21日,被告に対し,@本件商品の製造を停止した,A本件商品の在庫を廃棄する,B平成15年11月19日現在,原告が各得意先に対して出荷し,各得意先における在庫商品については,各得意先が本件商品を販売することを承諾してもらいたい,各得意先が店頭で販売済の本件商品及び各得意先の在庫商品についての損害賠償額として1200万円を支払う,C原告は,平成15年11月19日現在の冬物在庫商品を,各得意先に対して販売することを承諾してもらいたい,これについての本件商標権使用料として,原告の売上予定額の5%を支払う,と申し出た。
ウ 被告は,同月27日,原告の前記申し出には応じられない旨回答した。
エ その後,原告は,被告に対し,再三にわたり,被告が被った損害について,適正な損害額及びこれの算定方法を示してもらいたい旨申し出た。
3 争点 本件の争点は,原告の本件商標権侵害行為によって被告が被った損害の額である。
争点に関する当事者の主張
【被告の主張】 1 被告の基本的主張 被告が原告の本件商標権侵害行為によって被った損害は,1億6507万8290円を下らない。
(1) 商標使用料相当額の損害 6507万8290円 原告は,本件商標を使用した衣服を合計9万8481枚製造したところ,その内訳は,@トレーナーが3万0907枚,Aパーカーが1万0340枚,BTシャツが1万5748枚,Cパンツが3万0617枚,Dアウターが1万0869枚である。
被告らが製造販売する高級衣料品についての本件商標の使用料は上代の10%であるから,被告の商標使用料相当の損害金の算定は,上記各商品分類の被告の上代にこれを乗じたものである。
@ トレーナー(上代金6,300円) 6,300×0.1×30,907=19,471,410円 A パーカー(上代金7,300円) 7,300×0.1×10,340=7,548,200円 B Tシャツ(上代金5,300円) 5,300×0.1×15,748=8,346,440円 C パンツ(上代金6,900円) 6,900×0.1×30,617=21,125,730円 D アウター(上代金7,900円) 7,900×0.1×10,869=8,586,510円 (2) 信用毀損による損害 1億円 被告は,本件商標を用いた商品で,高級子供服として高級品志向の消費者の認知を得て多くのファンを獲得してきていたものであったが,そこでさらに,本件商標を用いた文具,雑貨等の製造販売を企画し,その販売に着手した矢先に本件商標権侵害行為が発生したことから,提携先会社からクレームが寄せられ,当該企画が中断し,手痛い打撃を受けるに至った。
しかも,本件商標を用いた子供服の売れ行きは,本件商標権侵害行為の発生後急激に低下し,本件商標のキャラクターとしての人気に陰りが出て,本件商標を使用した商品の製造の継続を略断念せざるを得ない状況に追い込まれたために,新たに開発したキャラクターを商標登録して経営戦略の建て直しを余儀なくされるに至っている。
これらの状況を踏まえると,被告が,原告の本件商標権侵害行為により被った信用毀損による損害は金銭に評価して1億円を下らない。
2 原告の基本的主張についての疑義 原告の主張する売上枚数や売上金額等の数字は,次の諸点からして,実際の数字であるとは考えられない。
(1) 原告が主張する納品関係資料(甲16)及び返品関係資料(甲17)のうち,@マンエイ オオサカ,Aサンヨウマルナカ スミノエ店,Bタカシマヤ サカイ店,Cタカシマヤ オカヤマ店,Dタカシマヤ ヨナゴ店,E阪急百貨店 都筑店,Fキンキジャスコ ヒネノ店,Gシャルムについては,納品数よりも返品数の方が多いもの(ABE)や,原告が本件訴訟前に被告に対して開示した資料(乙3)に比べて納品枚数が減少して計上されているもの(@BCDEG),納品されたはずの商品が計上されていないもの(F)が見られる。
(2) また,原告が開示した資料による納品,販売状況は,量販店の実態からしてあり得ないものである。
ア イトーヨーカドー ヒガシオオサカ店では最初の納品から返品開始までの4か月間の月平均売上が6万円に満たないが,人件費も出ないこのような販売数量にもかかわらず,4か月間もの間販売コーナーが維持されることは,量販店ではあり得ない。
イ キンショウストア スミヨシ店では,平成15年9月30日に納品された商品が全く売れていないが,量販店においてこのように商品が売れない状態が長期間放置されることはあり得ない。
ウ サンヨウマルナカ スミノエ店では,平成15年9月30日に納品された商品が全く売れておらず,また同年8月28日に納品された商品のうち売上が計上されたのは1枚だけだが,量販店においてこのように商品が売れない状態が長期間放置されることはあり得ない。
エ このほか,原告が訴訟前に被告に提出した資料(乙3)の中には,出荷枚数が1枚ないし6枚という極めて少量のものがあるが,このような少量では,運賃すらまかなうことができず,あり得ない。
オ 一般に量販店は,商品の品切れを防止するために,いつでも発注に応じられる態勢をとるようメーカーに求めており,そのためにメーカーは,最低でも初期納入と同量又は2倍の量の商品を発送可能な状態に置くようにしている。しかし,原告開示の資料では,リピートオーダーに対して納品した事実が出ていない上,量販店からの出荷要請に応じられる在庫準備の状況も見られない。
カ 原告が訴訟前に被告に提出した資料(乙2)によれば,ジャスコやイトーヨーカドーといった全国に多数の店舗を構える量販店について,1店舗当たり3.5枚又は1.3枚といったわずかな商品しか置かれていないことになるが,これは量販店の状況としてあり得ない。
(3) 原告主張のとおり,本件商品がすべて取引先で販売されたか廃棄処分されたというのであれば,販売済みの商品が中古,古着商品として出回ることがあったとしても,新品の商品が市場に出回ることはあり得ない。しかし実際には,本件商品は,ネットオークションにしばしば多数出品されている。
すなわち,平成15年12月21日(乙19),同月29日(乙20),平成16年11月24日から28日まで(乙21),同月24日から29日まで(乙22),同月25日(乙23),同月27日(乙24及び25),平成17年1月7日から同月12日まで(乙38),同月21日から24日まで(乙39)のヤフーオークションにおいて,本件商品が新品として出品された。
したがって,製造販売枚数等に関する原告の主張は虚偽である。
(4) 原告は,量販店への販売以外にも,インターネットを利用した「COW-net」と称する小売店向け販売サイトによって商品販売を行っているが,本件商品をこのようなネット販売の方法により販売するのであれば,大量の在庫商品を抱えていなければ対応ができないはずである。しかも原告は,ネット販売に関する売上については全く触れていない。
したがって,製造販売枚数等に関する原告の主張は虚偽である。
(5) 甲7の4等に「AS」と記載のあるセット販売(「アソート」と呼ばれる)分が,原告が開示した数量や調査嘱託の回答とは別に,中国から直接,各取引先に販売される形で存在している。「AS」とは,各品番の商品について,すべてのサイズ・カラーの組合せを一揃えにしたセット品をいい,甲7の4等に記載の「AS」をこのようなものだとすると,原告が焼却処分した枚数は,甲7ないし11記載の枚数よりもはるかに多くなる。
したがって,製造販売枚数等に関する原告の主張は虚偽である。
【原告の主張】 1 基本的主張 被告が原告の本件商標権侵害行為により被った損害は,190万8767円を超えない。
(1) 原告は,住友商事株式会社及び三井物産株式会社に対し,本件商品の製造を注文したが,被告から,平成15年11月19日到達の書面により,本件商品の販売が本件商標権を侵害する旨の警告がなされたため,直ちにその製造を中止した。そして,この間に製造された本件商品については,すべて前記両社から納品を受けたものであり,その数量は,合計9万8534枚である。
(2) 原告は,このうち取引先に対して平成15年11月27日までの間に,本件商品について合計8万4195枚を出荷・納品し,この出荷分に係る売上金額は,合計5980万2126円である。
したがって,本件商品のうち,取引先に出荷されないまま原告の手許に残った数量は,合計1万4339枚である。
(3) 他方,原告は,同月28日から平成16年1月23日までの間,取引先から本件商品を回収する作業を行ったが,それによる返品数量は,合計2万5470枚であり,この返品分に係る売上金額は,合計2162万6770円である。
(4) そして,前記未出荷分と返品分の本件商品は,証拠品サンプルとして保持する45枚を除き,平成15年12月16日から平成16年1月29日までの間に,三重中央開発株式会社においてすべて焼却処分された。
(5) したがって,原告が取引先に販売し,返品を受けていない本件商品は,合計5万8730枚であり,その売上金額は,合計3817万5356円である。
(6) そして,本件商標の商標使用料率は5%を上回ることはないから,被告が被った損害の額は,合計190万8767円を上回ることはない(38,175,356×5%=1,908,767)。
2 被告主張の点についての反論 (1) 商標使用料相当額の損害について ア 被告の主張2(1)については,いずれも被告による原告開示資料の誤読によるものである。
イ 被告の主張2(2)については,大型量販店については,各店舗の取扱商品及び販売方法が異なることがあり,全国どの店舗においても同じ様式で,同じ商品を販売しているとは限らないから,不合理ではない。
ウ 被告の主張2(3)については,一般に新品の商品についても,安価でヤフーオークションに出品されており,原告の本件商品のみならず,被告の商品や第三者の商品も新品が安価で出品されている。また出品者も同一人の出品ではない。ヤフーオークションへの出品の点から原告の主張が虚偽であるとの被告の主張は争う。
エ 被告の主張2(4)については,原告の各取引先との取引は,オンラインによる注文,注文書による注文及び「COW-net」による注文の3形態があるところ,「COW-net」を通じては,本件商品は販売していない。
オ 被告の主張2(5)は争う。
(2) 信用毀損による損害について 被告主張の事情は不知。
被告の商品には有名ブランドとしての信用が形成されているものではなく,被告の商品は,安価でヤフーオークションに頻繁に多数が出品されており,本件商標を使用した商品の中にはキーホルダーやカンバッチなどの低額商品もある。
他方,原告の商品は,その取引先が一流の量販店及び百貨店及び専門店であり,被告の商品よりも安価ではあるものの,素材,縫製及び品質については,被告の商品に比して劣ることはない。以上からして,原告が本件商品を製造販売したことによって,被告のブランドイメージが低下し,被告の信用が毀損されたとは認められず,また,原告が本件商品を販売したことにより,被告がキーホルダーやカンバッチ等の販売を中止した旨の主張は理由がない。
当裁判所の判断
1 本件本訴について 本件の本訴請求は,本件商標権侵害行為によって原告が被告に対して負担する損害賠償債務が190万8767円を超えないことの確認を求める債務不存在確認請求であるところ,前記「前提事実」(3)の事実に照らせば,本訴の提起当時はその確認を求める利益が存在していたということができる。
ところが,本件においては,本件本訴の提起後,これと訴訟物を同じくする損害賠償を求める本件反訴が提起されたものである。
このような反訴が提起され,これが取り下げられることなく判決に至っている以上,本件本訴に係る訴えについては,もはや確認の利益を認めることはできないというべきである(最高裁判所平成16年3月25日判決・民集58巻3号753頁参照)。
したがって,原告の本件本訴に係る訴えは不適法なものである。
2 本件反訴について (1) 使用料相当額の損害について ア 原告による本件商品の売上額について (ア) 原告による本件商品の仕入数量について 甲15及び弁論の全趣旨によれば,原告は本件商品を企画し,その製造を住友商事株式会社及び三井物産株式会社に発注し,両社から納品を受けて仕入れをしていたところ,両社との間の仕入取引を入力した磁気テープ(電磁的記録による会計帳簿)をプリントアウトしたものが甲15であり,それによれば,原告は,本件商品の仕入れを平成15年7月14日から開始し,最後の同年12月8日までの間に,別表1の「製造数量」欄記載のとおり,合計9万8534枚を仕入れたことが認められる。
(イ) 原告が取引先に本件商品を販売・納品した数量及び金額について 弁論の全趣旨によれば,甲16は,原告と販売先との間の本件商品の売買取引を入力した磁気テープ(電磁的記録による会計帳簿)をプリントアウトしたものと認められるところ,同書証によれば,原告は,本件商品を,平成15年7月16日から同年11月26日(次に述べるように原告が取引先に返品を求めた前日である)までの間に,別表1の「出荷数量」及び「出荷金額」欄の各記載及び別表2の「出荷数量」及び「出荷金額」欄の記載のとおり,合計8万4195枚,5980万2126円を販売・出荷したことが認められる。
(ウ) 取引先が原告に本件商品を返品した数量及び返品に係る取引額について 弁論の全趣旨によれば,甲17の各号は,原告が販売先から返品を受けた本件商品の返品取引を入力した磁気テープ(電磁的記録による会計帳簿)をプリントアウトしたものと認められるところ,同書証によれば,原告は,平成15年11月27日から取引先に対して本件商品の返品を求め,以後平成16年1月22日までの間に,別表2の「返品数量」欄及び「返品金額」欄中の各「得意先別返品明細(甲17の)による返品金額(円)」欄記載のとおり,合計2万6086枚,2216万8524円分の返品がされたことになることが認められる。
ところで,弁論の全趣旨によれば,甲17の元となった磁気テープへの入力は,原告において,各取引先から発行された返品伝票(専伝)に基づいて原告の伝票(本伝)に入力することによって行われるが,その過程において,誤って別表3のとおり,返品量を二重に計上したことが認められ,二重計上分は合計593枚,48万0992円と認められる。そうすると,前記甲17による返品数量はこれら二重計上分だけ過大に計上されていることになるから,これを控除すると,取引先から原告に返品された数量は,別表1の「返品数量」欄及び「返品金額」欄,別表2の「返品数量」欄及び「返品金額」欄中の各「得意先返品数量」欄記載のとおり,合計2万5493枚,2168万7532円となる。
もっとも,甲17によれば,販売・納品した数量よりも多くを返品したことになる取引先がある(別表2の4頁の井筒屋,11頁の丸福商事,14頁のタナベテキスタイル)が,これは,弁論の全趣旨により他の取引先からの返品分を誤って計上したものと認められるタナベテキスタイルの場合を除いて,不合理である。したがって,前記井筒屋及び丸福商事については,納品分と同量の限度で返品がされたものと認めるのが相当であり,これによって誤って過大に計上された返品量は,合計23枚,6万0762円である。したがって,前記修正した返品量から更にこれらを控除すると,原告が取引先から返品を受けたのは,合計2万5470枚,2162万6770円となる。
(エ) 原告の取引先に対する純売上額について 以上で認定した,原告の取引先に対する売上・納品額(5980万2126円)から,返品額(2162万6770円)を控除したものが,原告の取引先に対する純売上額となるところ,この金額は3817万5356円となる。
(オ) 原告が仕入れた本件商品のうちの未売上分及び返品分の扱いについて 前記認定のとおり,原告が仕入れた本件商品は9万8534枚であるところ,原告が取引先に販売したのは8万4195枚であるから,残る1万4339枚が未売上ということになる。そして,取引先から返品されたのは前記認定のとおり2万5470枚であるから,これら未売上分と返品分の合計3万9809枚が原告の手許に在庫として存在したことになる。
そして,甲7ないし11の各号及び弁論の全趣旨によれば,原告はこれら在庫品の廃棄を株式会社上野ウィングに依頼し,同社は三重中央開発株式会社にその消却処分を委託したこと,三重中央株式会社は,@平成15年12月16日に1万6724枚(段ボール箱込みで3830kg)を焼却処分し,A同月22日に1万9656枚(同4630kg)を焼却処分し,B平成16年1月14日に243枚(同60kg)を焼却処分し,C同月20日に1421枚(同330kg)を焼却処分し,D同月29日に818枚(同190kg)を焼却処分し,合計3万8862枚を焼却処分したことが認められる。
また,弁論の全趣旨によれば,原告は,上記在庫品のうち45枚を証拠のためのサンプルとして保持していることが認められる。
そうすると,未売上分と返品分の合計3万9809枚から,焼却処分した3万8862枚及び証拠品サンプルとして保持している45枚を除いた902枚については,行方が明らかでないということになる。この点について原告は,焼却処分の際の枚数計上に過誤があったと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。
しかし,これらの902枚が他に売却されたと認めるに足りる証拠もないから,結局,これらの枚数を売上数量に含めることはできない。
(カ) 上記認定について被告は縷々主張するので検討する。
a 被告は,まず,原告が開示した甲16及び甲17によれば,@納品数よりも返品数の方が多いもの,A原告が本件訴訟前に被告に対して開示した資料(乙3)に比べて納品枚数が減少して計上されているもの,B納品されたはずの商品が計上されていないものが見られると主張する。
しかし,これらについては,原告が平成17年1月17日付準備書面で主張するとおり,被告による甲16及び甲17の誤読に基づくものであると認められ,別表2記載のとおり,被告が指摘する店舗について上記@Aのものはなく,また上記Bについても計上されているものと認められる。
b 被告は,原告が開示した資料による納品,販売状況は,量販店の実態からしてあり得ないものであると主張する。
しかし,被告が申し立てた調査嘱託に応じて,被告が前記aで疑問点を指摘する量販店等のうちから当裁判所が選定した5社につき,原告が取引先から得た回答書(株式会社近商ストアにつき甲25の2,イオン株式会社につき甲26の2)及び実施した調査嘱託の結果(株式会社山陽マルナカ,株式会社高島屋,株式会社イトーヨーカ堂)によれば,それらの各取引先に関する本件商品の出荷,返品及び純売上数量は,別表4記載のとおりである。それによれば,各取引先からの回答は,対象期間が異なるために比較ができない株式会社イオンを除けば,原告主張の数字(別表2)と一致する(近商ストア,山陽マルナカ)か,売上量が若干下回る(株式会社イトーヨーカ堂)か微差にとどまる(高島屋)ものとなっているのであって,このことからすれば,被告がいう量販店のみならず百貨店関係でも,甲16及び甲17(及びそれらを整理した別表2)の記載は信用し得るものというべきである。
c 被告は,本件商品は,ネットオークションに新品のままでしばしば多数出品されているから,原告が開示する以外にも販売されたことがあるのではないかと主張する。
確かに乙19ないし25,38及び39によれば,原告が取引先に本件商品の返品を求めた後において,本件商品が新品との表示でネットオークションに出品されていることが認められる。
しかし,これらのうち,乙19と乙25,乙20と乙24は同一書証であると認められ,さらに乙19と乙20とは,出品点数は異なるものの,写真及び商品コメントは同一であり,出品時期も近接していることから,同一人による出品であると認められ(ただし,緑色のトレーナー上下は同一人によるものか定かでない。),また乙21ないし23も出品者が同一人であるところ,乙19の同一人による出品点数は20点(乙20では17点)であるものの,他の乙21ないし23では3点,以上と出品者の異なる乙38及び乙39ではいずれも出品点数は1点にすぎない。
そして,甲18の各号,甲22の2ないし5,10ないし14,16,19,21ないし23,25,27,30,31,33,34,37,41ないし44,47,48,50及び51,甲23の3,4,8,12,14ないし21,25ないし27,30ないし32,34,37ないし45によれば,「CONVEX」の商標を使用した被告の商品も,インターネットオークションにおいて,個人と思われる出品者から,新品が多数出品されていることが認められるから,前記のような数量程度であれば,原告の取引先から購入した消費者が出品したとしてもあながち不合理とはいえず,被告が指摘する前記インターネットオークションに本件商品が出品されていることによっては,前記認定は左右されない。
d 被告は,原告は「COW-net」を通じた取引を行っているとして,本件商品をこのようなネット販売の方法により販売するのであれば,大量の在庫商品を抱えていなければ対応ができないはずであると主張する。
しかし,乙26の1によっても,本件商品が「COW-net」を通じて取引されていたとは認められず,他にそのことを認めるに足りる証拠はない。
eア 被告は,原告が本件において開示した製造販売数量のほかに,甲7の4等に記載されている「AS」とあるセット販売による売上げが存すると主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。
イ なお被告が指摘する甲7の4等の「AS」との記載について検討する。
弁論の全趣旨(原告の平成16年7月1日付準備書面添付の「本件商品明細一覧表」)によれば,本件商品のサイズ数及びカラー数は,別表5の(1)の@及びA記載のとおりであるから,本件商品のサイズ・カラーの組合せは,同別表の「@×A」欄のとおりの数が存することになる。
他方,甲7の4,甲8の4,甲9の1,甲10の2及び甲11の2によれば,各回の焼却対象となった本件商品において,「AS」と記載されている数は,各品番ごとに,別表5の(2)記載のとおりと認められる。
そうすると,仮に「AS」が被告主張のとおり,本件商品の各品番について,すべてのサイズ・カラーの組合せを一揃えにしたセット品だとすると,上記「AS」と表示される本件商品の枚数は,別表5の(3)のとおりとなる。そして,もともと甲7ないし甲11において焼却枚数とされていた枚数(ここでは,「AS」が1枚の商品としてカウントされている)は,同別表の「甲7ないし甲11記載の元の総枚数(ア)」欄記載のとおりであるから,仮に被告の主張どおりであるとすれば,甲7ないし甲11において焼却対象となった本件商品の枚数は,同別表の(ウ)のとおりとなる。
そして,甲7ないし甲11において焼却された本件商品の正味重量(段ボール箱の重量を含む)は,同別表の(エ)のとおりであるから,焼却対象となった本件商品の平均重量を,各回の焼却ごとに算出すると,別表5の(オ)のとおりとなり,極めて大きなばらつきが認められる。もとより焼却各回における本件商品の構成は区々であるから,焼却各回の平均重量が完全に一致することはあり得ないことではあるが,上記(オ)のようにばらつきが極めて大きいことからすると,甲7の4の「AS」の意味を被告の主張のようなものであると認めることは困難である。
f 以上より,被告の主張はいずれも認められない。
イ 本件商標の使用に対し被告が受けるべき金銭の額について (ア) 後掲証拠によれば,次の事実が認められる。
a 被告は,平成13年ころから,本件商標をキャラクターとして用いた「コンベックス」「CONVEX」ブランドでの商品展開をしていたが,平成14年5月31日には,繊研新聞社の「2001年度 第7回繊研キッズファッション大賞」の新人賞に選ばれた。その受賞理由は,「グラフィックスのおもしろさで人気」という点にあった。(乙27,28) b 雑誌「kids mono」平成15年5月号において,本件商標を使用した被告の子供服の広告が掲載された。(乙29) c 子どものファッションと生活の情報誌「sesame」9月号(年不明)において,本件商標を使用した被告の子供服の広告が掲載された。(乙30) d ベビー&キッズ・ファッション雑誌「maria」10月号(年不明)において,被告のブランド「CONVEX」に関する被告代表者の紹介記事が,「このブランド こんな人がやってるんです。」とのタイトルの下,掲載された(乙31)。
e 雑誌「Cube」平成14年11月号において,他の商品と共に,本件商品を使用したステッカーやキーホルダーが紹介された(乙32)。そこでは,「Tシャツやボトムに,このキャラクターがプリントされたものが大阪のオシャレさんたちに大人気だという。」との記載がある。
f 雑誌「mono」平成14年6月2日号において,本件商標を使用したステッカーやキーホルダーが紹介された(乙33)。そこでは,「凸面という意味を持つブランド”コンベックス”が,いま,大阪を中心に人気上昇中という情報をキャッチ。」,「ブランドの始まりは'01年。男児ウェアから出発し,いまやメンズやレディース,そしてこの写真のようなフィギュアやステッカーまで扱っている。」との記載がある。
g 被告は,テレビ番組「ハロー! モーニング」やドラマ「人にやさしく」において,被告の商品を衣装として提供し,その旨の表示が番組上でなされた(乙34)。
h 本件商標を使用した被告の商品の上代価格は,1枚当たり4600円ないし7900円であるのに対し,本件商品は1000円又は1500円である。
(イ) これらの事実からすると,本件商品が原告によって販売された平成15年7月ころというのは,本件商標を使用した被告の子供服が大阪で人気を博し,全国誌で紹介されることもあり,被告は子供服以外の多様な商品へと本件商標を使用した商品展開を進めていた時期であったといえるところ,このような状況の下で,被告が原告に対して本件商品への本件商標の使用を許諾したであろうとは考え難いところである。
そうすると,一方で商標についての一般的な使用料率を考慮し,他方で上記のような本件での特殊事情を考慮し,加えて前記のような被告の商品と本件商品との上代価格の差を考慮した場合,本件における「本件商標の使用に対し被告が受けるべき金銭の額」(商標法38条3項)としては,原告による本件商品の売上額の7%をもってするのが相当である。
被告は,本件商品の売上数量に被告の商品の上代価格を乗じた金額の10%をもって,被告が受けるべき金銭の額とするのが相当であると主張するが,商標使用料率を10%とする点及び原告の実際の売上額を基準としない点において,通常の商標の使用許諾のあり方とは余りに隔絶しており,採用することができない。
以上より,本件で原告の本件商標権侵害行為によって被告が被った使用料相当損害金の額は,前記認定に係る本件商品の売上高3817万5356円の7%である267万2274円(小数点以下切下げ)となる。
(2) 信用毀損に基づく損害について 被告は,本件商標権侵害行為が原因で,@子供服に続いて,本件商標を用いた文具,雑貨等の商品展開を行う上での提携先会社からクレームが寄せられ,当該企画が中断し,手痛い打撃を受けるに至った上,A本件商標を用いた子供服の売れ行きは,本件商標権侵害行為の発生後急激に低下し,本件商標のキャラクターとしての人気に陰りが出て,本件商標を使用した商品の製造の継続を略断念せざるを得ない状況に追い込まれたと主張する。
しかしまず,@の点について見ると,本件商標権は,布製身の回り品(第24類)及び衣服(第25類)を指定商品とするものであって,文具や雑貨等に本件商標を使用することによる利益は本件商標権によって法律上保護される範囲に属しないから,仮に本件商標権侵害行為によって本件商標を使用した文具や雑貨等の商品展開を中断することになったとしても,それによる損害は本件商標権侵害行為との間に相当因果関係を有する損害であるとはいえない。
また,この点は措くとしても,被告が主張する上記@及びAの事情については,そのうち本件商品の販売当時,本件商標を使用した被告の子供服が大阪で人気を博し,全国誌で紹介されることもあり,被告は子供服以外の多様な商品へと本件商標を使用した商品展開を進めていた時期であったことは前記のとおり認められるものの,それ以外に,本件商標権侵害行為が原因で商品展開の企画が中断したことや,本件商標権侵害行為が原因で本件商標を用いた被告の子供服の売れ行きに急激に陰りが生じたことについては,これを認めるに足りる証拠がない。
さらにいえば,本件で被告が主張する信用毀損による損害というのは,本件商標を使用した被告の商品展開の企画が頓挫したことによる損害と,本件商標を使用した子供服の製造販売を断念せざるを得なくなったことによる損害であるが,これらはいずれも財産上の逸失利益を損害として主張するものであって,信用毀損そのものによる無形損害とはいえない性質のものである。
したがって,信用毀損に基づく損害は認められない。
(3) 以上によれば,被告の反訴請求は,原告に対して267万2274円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
ところで,本件商標権侵害行為は多数回にわたる本件商品の販売行為から構成されているから,遅延損害金については,各個別の販売行為による商標使用料相当損害金に対してごとに,不法行為たる各販売行為の日から,それぞれ個別に発生することになるところ,前記認定に係る商標使用料相当損害金全体のうち,いずれの部分がいつの販売行為によって発生したものかについて被告は何ら主張立証するところがない。もっとも,本件においては,遅くとも原告による本件販売行為の最終日である平成15年11月26日には,すべての商標使用料相当損害金について遅滞に陥るといえることから,同日を遅延損害金の起算日とした上で,前記267万2274円に対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の限度で認めるのが相当である。
3 なお,本件審理の経過に鑑み,本件が審理の現状において判決をするのに熟したと考えるべきことについて,若干の付言をする。
(1) 本件訴訟の審理の経過は,次のようなものである。
本件本訴は債務不存在確認請求訴訟であり,平成16年3月1日に提起されたが,被告は,第1回口頭弁論期日(同年4月12日)の前の同月8日付準備書面において,請求の趣旨に対する答弁を行った後,第1回弁論準備手続期日(同年5月24日)の前の同月18日付準備書面において,請求原因に対する認否を行うとともに,原告に対し,各商品ごとの色別・サイズ別の製造点数と販売先ごとの販売点数を明らかにするよう求めた。
そこで原告は,第2回弁論準備手続期日(同年7月15日)の前に甲15ないし甲17を提出した上で,同月1日付,同月5日付及び同月8日付の各準備書面において,それらの整理表を添付して整理した主張をした。
これに対し,被告は反論を準備することとしたが,第3回弁論準備手続期日(同年9月9日)までには反論の準備ができず,第4回弁論準備手続期日(同年10月13日)に乙1を提出したものの,その後もそれらを踏まえた準備書面は提出されず,第2回口頭弁論(平成17年1月24日)に至って,ようやく乙1とほぼ同内容の準備書面が提出されるに至った。そして,同期日において,被告は,次回期日までに反訴を提起するとともに,損害立証の方法をすべて明らかにすると主張し,第3回口頭弁論期日(同年2月28日)の前の同月25日に本件反訴を提起するとともに,調査嘱託を申し立てた。
この調査嘱託の申立てに対し,原告は,民事訴訟法157条1項に基づく却下を求めたが,当裁判所は,計画審理の観点から不適切であるといわざるを得ないが,同条項にいう故意又は重過失に当たるとはいえないと判断して,被告による調査嘱託の申し出に限定的に応じて,原告が任意に調査報告するよう求めた。
そして,第5回口頭弁論期日(同年5月16日)において,原告の調査が一部しか進まなかったことから,その余の調査対象について当裁判所は調査嘱託を正式に採用し,その結果が第6回口頭弁論期日(同年7月4日)までに到着した。
同口頭弁論期日において,被告は,新たに甲7号証の4等に「AS」と記載されているものが,これまで原告が開示した数量や調査嘱託の結果とは別に存在しているとして,その主張立証を行う意向を示したが,当裁判所は,既に前記第2回口頭弁論期日において,被告に対し,損害立証の方法をすべて明らかにするよう命じた上で調査嘱託を採用していることから,これ以上の主張立証のために期日を重ねることはできないとして,本件の弁論を終結するに至った。
(2) 本件本訴は,債務不存在確認請求訴訟であり,本件商標権侵害行為によって被告が被った損害の額に関する主張立証責任は,本件反訴を提起するか否かにかかわらず,当初から被告が負っていたものである。したがって,主張立証責任を負う被告としては,訴訟の初期に必要な相応の準備期間を経過した後は,原告が主張する損害額を争うのであれば,早期に自らの主張とそのための立証方法を明らかにして訴訟活動を行うべき立場にあったというべきである。
しかるに被告は,平成16年3月1日の本訴提起後,原告が同年7月15日の第2回弁論準備手続期日において甲15ないし甲17の帳簿類を提出したにもかかわらず,その検討と反論の提出のみで6か月以上を費やし,それだけの時間をかけて原告の主張を虚偽であると主張するに至った結果として,調査嘱託を申し立てる一方,第2回口頭弁論期日において次回期日までに損害の立証の方法をすべて明らかにするとした上で,その後も調査嘱託以外の立証方法を明らかにしなかったのである。そして,被告から唯一示された損害の立証方法たる調査嘱託の申立てについては,時機に後れたものであるとの原告の反対意見を抑えて,限定的ではあるが当裁判所はこれを採用したところである。
このような経緯からすると,調査嘱託の回答がすべて出そろった第6回口頭弁論期日において,被告が「AS」に関する問題点を新たに提起した場合であっても,なお本件は判決をするのに熟したものと考えるのが相当である。
4 結論 以上のとおり,原告の本訴に係る訴えは,不適法なものであるからこれを却下し,被告の反訴請求は,原告に対して267万2274円及びこれに対する平成15年11月26日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから,その限度でこれを認容し,訴訟費用については,本訴について,その確認の利益が失われた事情と反訴の結論に鑑み,民事訴訟法62条後段を適用し,本訴反訴を通じてその100分の1を原告に,その余を被告に負担させることとし,仮執行宣言について同法259条1項を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山田知司
裁判官 高松宏之
裁判官 守山修生
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