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関連ワード 先願主義 /  指定商品 /  指定役務 /  周知商標 /  周知性 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  広義の混同 /  公序良俗(4条1項7号) /  4条1項10号 /  4条1項15号 /  著名商標 /  不正競争の目的 /  顧客吸引力(グッドウィル) /  ただ乗り(フリーライド) /  類似性(類否判断) /  除斥期間 /  先使用(32条) /  役務の類似 /  取引の実情 /  出所の混同 /  国内 /  警告 /  共有 /  並行輸入 /  無効審判 /  パリ条約 /  国際登録 /  外国 /  継続 /  有名ブランド /  同業者 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 466号 審決取消請求事件
原告 株式会社コマリヨー
訴訟代理人弁護士 松村信夫
同 和田宏徳
同 塩田千恵子
同 岩井泉
同 弁理士 清末康子
被告B
訴訟代理人弁理士 鈴江武彦
同 石川義雄
同 小出俊實
同 吉野日出夫
同 松見厚子
同 宮永栄
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/11/15
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が平成10年審判第35420号事件について平成12年10月3日にした審決を取り消す。
前提となる事実(争いのない事実)
1 特許庁における手続の経緯 原告は、「ETNIES」の欧文字を横書きしてなり、指定商品を旧第22類の「はき物(運動用特殊靴を除く)、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」(以下「本件指定商品」という。)とする登録第2628482号商標(平成4年1月29日商標登録出願、平成6年2月28日設定登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。
被告は、平成10年9月4日、本件商標の登録無効の審判を請求し、特許庁は、
この請求を平成10年審判第35420号事件として審理した結果、平成12年10月3日に「登録第2628482号の登録を無効とする。」との審決をし、その謄本は同年11月9日に原告に送達された。
2 審決の理由 別紙の審決書の写しのとおり、本件商標は商標法4条1項10号、15号及び7号の規定に違反して登録された旨の被告(請求人)の主張に対して、
「被告及びその関係者が商品「スケートボード用靴」に使用する商標「ETNIES(etnies)」(以下「引用商標」という。)は、本件商標の出願前に、米国及び我が国のスケートボード用具に関わる当業者間で著名性を得ていたものと認められ、本件指定商品中の「はき物(運動用特殊靴を除く)」中の運動靴は、「スケートボード用靴」(販売部門、品質、用途、需要者層などを考慮すれば「運動用特殊ぐつ」の範疇の商品と判断することができる。)と用途、需要者層などを共通にする互いに関連の深い商品であるから、本件商標は、その出願時に、我が国のスケートボード用具に関わる当業者間において、被告あるいはその関係者の取扱いに係る商品であるかのごとく商品の出所についての誤認、混同を生じさせるおそれを有していた商標であるというべきであり、本件商標の登録は、商標法4条1項15号の規定に違反してされたものであり、取り消すべきである。」旨認定、判断した。
原告主張の審決の取消事由の要点
審決は、引用商標は、我が国のスケートボード用具に関わる当業者間において本件商標出願前に著名性を得ていたと認定し(取消事由1)、本件商標について、出所の誤認、混同を生ずるおそれの有無の判断として、本件指定商品中の「はき物(運動用特殊靴を除く)」中の運動靴は、「スケートボード用靴」と用途、需要者層などを共通にする互いに関連の深い商品であると認定し(取消事由2)、本件商標はその出願時に、我が国のスケートボード用具に関わる当業者間において(取消事由3)、あたかも請求人あるいはその関係者の取り扱いに関わる商品であるかのごとく商品の出所についての誤認、混同を生じさせるおそれを有していた商標というべきであるとの結論を導いている(取消事由4)。
しかし、上記の審決の認定、判断は明らかに事実認定及び法律判断を誤ったものであり、これらの点について、取消事由1ないし4として分説する。
1 取消事由1(引用商標の周知著名の認定の誤り)について (1) 周知著名性の程度について 審決は、引用商標は、我が国のスケートボード用具に関わる当業者間において本件商標出願前に著名性を得ていたと認定している。
商標法4条1項15号が適用されるためには、審決が引用する最高裁判所の判決(平成12年7月11日、平成10年(行ヒ)第85号、民集54巻6号1848頁)が判示するように、他人の表示の周知著名性が考慮されるべきであることは認める。
しかし、この周知著名性の程度については、商標法における先願主義の趣旨、及び同法4条1項10号の「需要者の間に広く認識されている」という要件(以下、
周知性」という。)との対比という観点から、厳格に考えるべきである。
すなわち、現行商標法においては、登録商標権の帰属関係を明確にするため、権利の取得が先使用者の出現によって脅かされることのないように、先願主義が採用されているところ、その下で、例外的に商標法4条1項10号及び15号((以下単に「10号」、「15号」ということがある。)が定められている。
したがって、そのような先願主義の趣旨を過度に害することのないよう配慮する必要があり、さらに、特許庁の審査能力の不足あるいは周知商標者が出願を懈怠していたという事実も考慮すれば、周知要件については厳格に解釈されねばならない(渋谷達紀「商標法の理論」282頁参照)。
また、10号の周知性については、「全国に渡る主要商圏の同種商品取扱業者の間に相当程度認識されているか、あるいは、狭くとも1県の単位にとどまらず、その隣接数県の相当範囲の地域にわたって、少なくともその同種商品取扱業者の半ばに達する程度の層に認識されていることを要する」(東京高判昭和58年6月16日、無体集15巻2号501頁)とする判例や、外国製品を取り扱う者を主とした一部の業者や、外国品に関心を持つ極めて少数の需要者に知られているにとどまる場合には周知性の要件を満たさないと説く判決(東京高判昭和44年1月22日、
判タ234号133頁)がある。そして、学説も、商標法4条1項10号周知性とは、相当程度以上に広い地域において、右地域内に存在する競業者の圧倒的多数部分が商標の存在を知っている状態を意味するものと解されるとしている(渋谷・前掲書277頁)。
このことを前提にして、かつ、他人の表示の周知性の他に商品、役務の類似性を要求する10号の規律を無にしないということを考慮すれば、15号の適用のために考慮すべき周知著名性とは、周知の程度が極めて高いことが要求されており、出所の混同の原因となる他人の業務を示す表示の認知度が10号の周知性と同等以上のものである必要がある(田村善之「商標法概説」57頁、最判昭和57年11月12日、同第一審・昭和56年11月5日、民集36巻11号2233頁、東京高判昭和38年8月22日、判例工業所有権法2765の9頁参照) さらに、15号の適用のために考慮すべき周知著名性とは、外国商標については、我が国で著名であるか又は少なくとも外国で著名であることが我が国で認識されている必要がある(商標審査基準43頁)。
(2) しかしながら、審決は、以上の点を吟味することなく、以下のような理由により、安易に著名性を認めるものであり、その判断は誤りである。
ア まず、審決は、米国におけるスケートボードの取扱業者による証明書(乙第6号証・審判甲第6号証)から、米国において、被告(請求人)の関連するエトニーズ社の取扱いに係る商品「スケートボード用靴」のカタログが頒布されていた事実を認定し、米国のスケートボード専門雑誌の写し(乙第9号証の1・審判甲第9号証の1、乙第10号証・審判甲第10号証)から、本件商標の出願前に、「ETNIES」商標が使用された商品「スケートボード用靴」が米国の市場に提供されていた事実を認定し、これを周知著名性を肯定する要素として考慮している。
しかし、被告提出の上記の証拠によっては、上記の米国のスケートボード取扱業者の規模が全く分からないし、その認定事実の内容も、カタログを配布した7業社中6業者は製品の販売ではなく単なるカタログの頒布にとどまるものであること、
また、上記の専門雑誌の発行部数や他の雑誌との発行比率等も分からないため、引用商標が米国において、果たして著名であったのかさえ分からないものである。
また、審決は、乙第17号証(審判甲第17号証)の米国のVANS社とエトニーズ社及びSole Technology社との間における商標権侵害通告に関する書面から、米国のVANS社は、商標「ETNIES」が使用された商品「靴」の出所について、エトニーズ社の取扱いに係るものであるかの如く混同したと認められることを挙げている。
しかし、15号で問題となる周知著名性というのは、日本における周知著名性であって、米国等外国における周知著名性ではない。この点、外国での使用状況が参酌されるとしても、それは、被告が引用する東京高判平成4年2月26日が判示するように、「主として外国で商標として使用され、それが我が国において報道、引用された結果、我が国において、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者に間に広く認識されるようになった」場合のみである。
そうすると、前記の被告提出の書証からは、単に米国で引用商標が使用されていた等ということがいえるだけであって、さらに、「それが我が国において報道、引用された結果」、我が国において、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者に間に広く認識されるようになったというようなことは、全く認められない。
したがって、本件において、日本における引用商標の周知著名性を認定するための根拠となり得るのは、結局、次のイの日本のスケートボード用具の取扱業者(5社)とエトニーズ社との間のやりとりの文書のみである。
なお、被告は、乙第9号証の1(審判甲第9号証の1)の雑誌について、1989年から1992年の間、日本でも毎年7300部以上販売されているとして、乙第9号証の2の報告書を提出している。しかし、輸入の場合、国内で販売される場合のように、売れ残った書籍について、出版社が引き取るという制度がとられていない以上、乙第9号証の2の意味は、毎年7300部以上輸出されたということでしかなく、その後、消費者に販売されたのか、それとも日本の輸入業者、問屋、あるいは本屋の倉庫で眠ったままになっていたかどうかについては、全く分からない。
したがって、審決の上記の認定事実は、引用商標について周知著名性を立証するほどの要素とはなり得ないものである。
イ 審決は、乙第8号証の1ないし5(審判甲第8号証の1ないし5)から、本件商標の出願前に日本のスケートボード用具の取扱業者(5社)とエトニーズ社との間で、被告の商品に関する取引交渉が行われたことを認定し、このことから我が国のスケートボード用具の取扱業者間において引用商標が著名性を得ていたと判断している。
しかし、仮に、本件審決が説示するように、我が国においてスポーツとしてのスケートボードは、国民全体に広く親しまれているスポーツとは認められないことから、該スポーツ用具の取扱業者(販売店)は専門の取扱業者が主といえるとしても、本件の証拠からは、専門業者の全体の数、及び当該5社の規模が不明であるため、当該5社が専門の取扱業者の中でどのような位置を占めるのかが全く分からない。また、審決が認定した取引交渉自体も、接触をはかった程度の内容のものしかなく、実際にどれくらいの数の商品を輸入又は販売したというような事実は全く現れていない。したがって、審決の上記の認定事実は、引用商標についての周知著名性を立証するものとはいえないはずであり、そのような証拠のみで、我が国における引用商標の著名性を認定することは、論理の飛躍といわざるをえない。
また、審決が以上のように取扱業者5社との間のやりとり文書、それも実際の輸入等取引についてのやりとりではなく、単なる問い合わせにすぎないような文書を根拠に、当業者間において「著名性」を得ていたと認定していることからして、審決が前提としている需要者は、日本のスケートボード用具の取扱業者を前提にしたごく狭い範囲の需要者であると考えられる(なお、乙第8号証の日本のスケートボード用具の取扱業者は、甲第10ないし第13号証のように、多くとも従業員10名程度の会社である。)。なぜならば、審決が、スケートボードの消費者を含めて、さらに広い範囲の需要者を本件の需要者ととらえているとすれば、前記の証拠からだけでは、需要者における周知著名性を認めることはできないものであり、また、当業者間で周知著名であることから、消費者においても周知著名であるということはいえないからである。
しかし、このようにごく少人数の者の間でだけ著名な商標と抵触するからといって、「混同のおそれ」ありとして、登録商標を無効にするのは、明らかにゆきすぎであり、認められない(需要者の地域的範囲に関し、東京高判昭和58年6月16日(無体集15巻2号501頁、原告提出資料2参照)。そのような場合は、登録商標の登録を認め、引用商標の使用者に対しては、別途当該需要者に対する先使用の権利(商標法32条)を認めて調整を図るというのが、商標法の構造である。
(3) 審決は、引用商標は、我が国のスケートボード用具に関わる当業者間において本件商標の出願時(1992年1月29日)に著名性を得ていたと認めているが、そもそも引用商標が、本件商標の出願時に一定の周知著名性があったといえるかどうかも疑問である。
すなわち、甲第16号証(1987年ないし1989年)及び甲第17号証(1992年ないし1994年)は、米国のスポーツシューズ市場における上位ブランドを示したものであるが、引用商標は、25位までの順位に全く入っていない。なお、「Air Walk」、「Vans」は、引用商標と同じスケートボード用靴のブランドである。
また、被告商品を扱った取扱業者においても、スケートボード靴の取扱ブランドとして、主力ブランドは、「パウエル」、「バードハウス」であると回答しており、引用商標は挙げていない(甲第13号証)。
さらに、本件商標が出願された1992年1月当時、被告の引用商標は、消費者においてはもちろん、スケートボード用靴を取り扱う業者においても知られておらず、周知性など全く有していなかった。すなわち、1992年1月当時、日本におけるかなりのシェアのスケートボード用靴の輸入、卸売を行っていた会社の担当者(甲第26号証、甲第36号証)、及び1992年1月当時、スケートボード用靴を販売していた多数の販売業者(甲第27号証の1ないし82)において、被告の引用商標について、全く知らなかったという報告書を作成している。
また、スケートボード用靴として、1992年1月当時、周知であったのは、バンズ(VANS)、エアウォーク(AIRWALK)、ビジョン(VISION)といったブランドである。そして、1991時点で、株式会社ライフギアコーポレーション1社だけで、バンズの商品を20万足あまり販売しており(甲第26号証)、1992年ではそれ以上の数が販売されている。したがって、スケートボード用靴として、周知といえるためには、数万足のオーダーで販売されている必要があるが、被告商品は、1992年1月当時、とてもそれ程売れているものではなかった。
そもそも、審決において周知性を認定した実質上唯一の根拠といえるのは、上記のとおり、甲第8号証のレター類であるが、甲第8号証に挙がっている会社は、スケートボード用靴の取扱業者からすれば全く知らないような、零細な会社がほとんどである(甲第36号証参照)。このような会社との間で、文書のやりとりがあるとしても、それは何ら周知性認定の根拠となり得ない。
以上によれば、1992年(平成4年)1月の本件商標の出願当時、スケートボード用靴を取り扱う業者の間においても、「ETNIES」という引用商標は全く知られておらず、周知性が認められる余地など全く存在しないことは明らかである。
被告は、多くの国で引用商標の権利を有し、使用しているかのような主張を行っているが、被告提出の乙第4号証を見ても、米国、仏国で引用商標の権利を有しているのは、被告以外の者であるし、また、多くの国での引用商標の出願年月日は、
本件商標出願時以降である。
そして、被告が引用商標を使用し出したのは、エトニーズ社を設立した1990年からと考えられるが(甲第14号証)、本件商標出願時の1992年1月までの約2年の間に、周知性を獲得する程度に、使用、宣伝が重ねられてきたかどうかは疑問といえる。
そして、被告は、@本件商標出願の約2年後の1993年12月に、原告にロイヤリティーを支払い、自己の商品を原告により日本で販売してもらうことを希望し、相互に協力することを提案して来た(乙第12号証)。その後、A被告は、1996年10月に、一旦は引用商標を放棄することを決定している(甲第18号証)。さらに、B被告は、本件商標の無効審判提起の除斥期間満了数ヵ月前になって、無効審判を提起してきた。そのような経緯からして、被告は、需要者に対して広く知れ渡っていない引用商標に対して、大きな価値を感じておらず、かえって、
後記のように、原告が広告宣伝、販売活動によって形成してきた本件商標の信用を労せずして手に入れようとしていると考えられるのである。
(4) 周知著名性の対象範囲 さらに、万一、引用商標がスケートボード用具に関わる業者間において著名であったとしても、商標法4条1項15号が適用されるための周知著名性という要件は、問題視すべき出所の混同のおそれの境界線を設定するという機能を果たすのであるから、周知著名となるべき範囲については、出願商標に係る指定商品指定役務の取引者、需要者と解すべきである(最判昭和59年1月17日、判例工業所有権法2779の80頁)。
しかしながら、審決は、我が国のスケートボード用具に関わる当業者間において著名性を得ていたと認定しており、周知著名となるべき範囲を、引用商標を使用する商品の取引者、需要者であると解しているものであり、その法律解釈は誤りである。
したがって、本件においては、我が国のスケートボード用具に関わる当業者間においての著名性を考慮するのではなく、本件商標に係る指定商品たる「はき物(運動用特殊靴を除く)」の取引者、需要者において引用商標が著名であったか否かを判断すべきなのである。
上記のとおり、引用商標がスケートボード用具の需要者においても周知著名といえないことは明らかである以上、引用商標が、運動具の取引者、需要者において著名であったとは到底認められない。
(5) 被告の主張に対する反論 被告は、商標法4条1項15号における周知著名性とは、指定商品及びそれらと関連する商品分野全般に亘るいわゆる一般的周知著名性がなければ混同のおそれがないというものではなく、特定の商品についてその商品の取引者、需要者間で周知著名となっている場合も含むものであると主張する。
この点、原告も、周知著名性が全国民的に認められる必要があると主張しているものではなく、特定の需要者において周知著名であれば足りるが、その特定の需要者とは、前記のように、引用商標の需要者ではなく、登録商標の需要者であると主張しているだけである。
また、被告は、「スケートボード用靴」は「運動用特殊ぐつ」の範疇に入る商品であって「運動具」に含まれるものであり、そして「運動具」と「運動靴」とは極めて関連の深い商品であって、「スケートボード用靴」と「運動靴」とは関連性を有する商品であるとして、出所混同を生ずるおそれがある認定した審決の判断に誤りはないと主張する。
しかし、15号において、要件を@引用商標の需要者における周知著名性と、A引用商標の商品と登録商標の指定商品との関連性とに分けて判断される場合があるとしても、最終的に認定されるべきは、上記(4)及び後記3のように、登録商標の指定商品の需要者における周知著名性及び混同のおそれなのである。
したがって、両商品の関連性の判断を行うとしても、後記2でも触れるように、
そこでは、抽象的な商品の関連性ではなく、実際の商品間の需要者の重なり合いを吟味する必要がある。そうでなければ、被告の論理を前提とすると、たとえ競技人口10名でも○○というスポーツがあり、その「○○用靴」として、当該10名の間で著名な商標があれば、「○○用靴」と「運動靴」とは関連性があるとして、他の者は、「運動靴」において商標登録ができなくなってしまうからである。
そうすると、本件においては、引用商標の周知著名性が認められるとしても、それは、スケートボード用具の取扱業者のごく少人数の範囲においてということであり、他方、「運動靴」の需要者は、全国で少なくとも1000万名以上は存在する。したがって、両者の需要者は、少人数の範囲で重なったとしても、他の大多数の範囲においては重なり合わない。
このように、引用商標の需要者における周知著名性と、引用商標の商品と登録商標の指定商品との関連性とに要件を分けて判断するとしても、本件においては、15号の該当性は認められない。
2 取消事由2(出所の混同を生ずるおそれの判断の誤り-その1) (1) 審決は、商標法4条1項15号規定の出所の混同を生ずるおそれの要件の判断において、本件商標の指定商品中の「はき物(運動用特殊靴を除く)」中の「運動靴」は、「スケートボード用靴」と用途、需要者層などを共通にする互いに関連の深い商品であると認定している。
15号が適用されるためには、上記最判平成12年7月11日が判示するように、「当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度」が考慮されるべきであることは一応首肯し得る。
しかし、この要件が問題視すべき出所の混同のおそれの境界線を設定するという機能を果たしている以上、抽象的に論じるのではなく、具体的に性質、用途、目的等が関連するかについて比較検討し、上記判決が判示するように、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、出所の混同を生ずるおそれがあるか否かという観点から、慎重に判断すべきである。
(2) この点、審決は、本件商標の指定商品中の「はき物(運動用特殊靴を除く)」中の「運動靴」は、「スケートボード用靴」と用途、需要者層などを共通にする互いに関連の深い商品であると判断している。
しかしながら、そのような判断は何ら証拠によることなく、また、何ら理由を示すことなく抽象的なイメージに頼って安直になされたものであるとしかいいようがなく、その認定を誤っている。
思うに、スケートボード用靴は、審決が述べるように、いわゆる運動用特殊靴であるので、その性質上、スケートボード競技に適するように、小指あるいは踵対応部分に革あるいは綿等の補強材や緩衝材が入り、値段も通常の運動靴よりかなり高いものである。
また、スケートボード用靴の用途、目的は、スケートボード競技をすることであり、審決が述べるとおり、スケートボードは我が国において主に青少年を中心に親しまれているものであって、国民全体に広く親しまれているスポーツとは認められないことから、その需要者層は、青少年の中のごく一部であるいわゆるスケートボーダー、そして、一般の運動具店ではなく専門の取扱業者、すなわち、いわゆるボード関係業者が主といえるものである。
これに対し、本件商標の指定商品中の「はき物」のうちの運動靴は、一般的な運動用であり、特殊な加工もなされず、値段も比較的安価であるという性質を有し、
そして、子供の遊びのためから中高年のジョギング・ウォーキング用までという幅広い目的・用途を有し、それゆえ需要者層は子供から中高年層までの国民全体及びこのような運動靴を取り扱う一般の靴販売店と幅広い層を有する。
したがって、スケートボード用靴と運動靴は、その性質、目的、用途を全く異にし、需要者層においても共通するとはいえない商品というべきである。
とするならば、本件商標の指定商品の取引者及び需要者である一般の靴販売店、
国民全体において普通に払われる注意力を基準とすれば、スケートボード用靴とその関連商品ならばいざ知らず、スケートボード用靴と運動靴では本件商標の出所の混同を生ずるおそれはないというべきであり、その意味で本件商標の指定商品と引用商標に係る商品について関連性はないものである。
3 取消事由3(出所の混同を生ずるおそれの判断の誤り-その2) 審決は、商標法4条1項15号規定の出所の混同を生ずるおそれの要件の判断において、我が国のスケートボード用具に関わる当業者間における出所の混同を生じさせるおそれの有無を問題としている。
しかし、審判が引用する上記最判平成12年7月11日においても、「混同を生ずるおそれ」の有無は、「当該商標と他人の表示との類似性の程度、・・・などに照らし」、「当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである」として、「登録商標の指定商品における需要者」において、混同が生じるかどうかの判断をすべきとしている。
これは、出願商標の指定商品指定役務の需要者に混同のおそれが生じないのであれば、出願商標の登録を認めてその使用を促しても特に弊害は無いので、商標選定の自由を優先し、登録を認めるべきであるからである(田村・前掲書58頁、東京高判平成5年3月30日、知裁集25巻1号125頁参照)。
審決は、上記最判を引用しているにもかかわらず、「本件商標はその出願時に、
我が国のスケートボード用具に関わる当事者間において、・・商品の出所についての誤認・混同を生じさせるおそれを有していた」として、本件商標の指定商品の取引者及び需要者を基準とすることなく、引用商標を使用する商品の取引者、需要者を基準として判断している。
したがって、審決のそのような判断は、その審決の理由自体において矛盾するものであるし、法律判断を明らかに誤ったものである。また、仮に、引用商標が本件商標の出願時に、我が国のスケートボード用具に関わる当事者間において著名であったとしても、引用商標が、本件商標の指定商品である「はき物(運動用特殊靴を除く)、かさ、つえ、これらの部品および附属品」の需要者において周知著名であったわけでは全くない。審決の判断によると、上記1のように、ごく少人数の需要者の間においてだけ「混同のおそれ」があるあれば、本件商標の指定商品の他の大多数の需要者の間では「周知著名性」、「混同のおそれ」がないにもかかわらず、
本件商標の登録を排斥してしまうものであって、明らかに15号の解釈を誤ったものといえる。
また、混同のおそれを判断する場合には、原則的には、引用商標の周知性が登録商標の指定商品の取引者や需要者に及んでいるかどうかを考慮する必要があるというべきである。この点、審決は、引用商標の周知性が本件商標の指定商品の取引者や需要者に及んでいるか否かを考慮することなく、需要者層などを共通にする互いに関連の深い商品といえるものであると認定するのみで、「混同を生じさせるおそれ」を認めている。
しかしながら、本件では、いくら商品の需要者の共通性を論じてみても、その前提となるべき引用商標の周知性が本件商標の指定商品の取引者や需要者に及んでいるかどうかの考慮がなされていないものであり、意味がないものである。
仮に、審決が暗黙にこの点を配慮したと解するとしても、前述のとおり到底これは認められるものではないのであるから、このような場合に、需要者の共通性を考慮するのみで「混同を生じさせるおそれ」を認定することは不当である。
したがって、この点からも、混同のおそれはないといわざるをえない。
4 取消事由4(出所の混同を生ずるおそれの判断の誤り-その3) (1) 商標法4条1項15号が適用されるためには、上記最判平成12年7月11日が判示するように、「当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである」ということは、一般論としては、一応首肯することができる。
しかし、15号の「混同を生ずるおそれ」の要件は、従前の判例を見る限り、他人の表示の周知著名性をまず第一に考え、周知著名性の範囲・程度と相対的に、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情を考慮して判断されている。
これに対して、審決は、上記1のとおり、他人の表示の周知著名性、上記2のとおり、他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性をそれぞれ安易に認定した上で、原告が事業活動の過程で引用商標の存在を知り得たという単なる可能性の問題や、米国のVANS社が本件商標の使用された商品について原告と被告の出所の混同をしたこと、本件商標が独創性のある造語だということを考慮して、15号の「混同を生ずるおそれ」があったということを判断した。
しかしながら、原告が事業活動の過程で引用商標の存在を知り得たという単なる可能性の問題は、何ら15号の「混同を生ずるおそれ」の要件には関わらないし、
在外米国会社が本件商標の使用された商品について原告と被告の出所の混同をしたとしても、「混同のおそれ」は本件商標の出願時における我が国の本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として判断されるべきものであるから、そのような事実が仮にあったとしても重要な要素とはなり得ない。
また、本件商標が独創性のある造語だということも、判例においては余り考慮されておらず、それほど重視すべき要件ではないはずである。
これらのことからすれば、審決の「混同を生ずるおそれ」の判断は誤っているといわざるを得ない。
(2) なお、原告の本件商標出願等の経緯は以下のとおりである。
ア 原告は1955年創業のフットウェア専門の商社であるが、流通業務のみならず独自に新商品を開発し、自社ブランドを付してオリジナル商品として販売する企画販売業務も行っている。そして、本件商標は、当時開発した自社の新商品に使用するため、1991年に、原告代表者が考え出した商標である。原告は、本件商標採択前、既に十数件の商標を使用していたが、マーケティングにおけるブランドの重要性に着目し、自社開発の新商品のためのヒットするネーミングを検討していた。その際、まず着目した点が、靴の有名ブランドは、「Adidas」、「Asics」、「Guess」、「keds」、「Vands」など語尾に「S」のつく語が多いということであった。そこで、原告代表者が、語尾に「S」のつく語で何かよい言葉はないかと考えていたところ、たまたま以前から知っていたスニーカーの「ETONIC」を見かけ(甲第17号証、甲第22号証)、これにヒントを得て、その語尾をモディファイし、語調がなめらかで呼称しやすい「S」付き商標として考えついたのが本件商標であり、原告は、1992年(平成4年)1月29日に商標出願を行ったものである。
そして、原告は、本件商標を考えついた1991年から、既に本件商標を付した靴の商品を台湾等で製造し、日本に輸入して、本件商標を使用してきた。
原告において、古い帳簿類については保管されていないものが多いが、残っている帳簿類においてでも、例えば、甲第23、第24号証において、本件商標「ETNIES」の標章が付された靴を3880足輸入していることが明らかであり、甲第25号証における契約先「SUGI」の合計1万2000足についても、本件商標「ETNIES」の標章が付された靴の取引であった。このことから、原告が、
本件商標を、自社の商品に使用するために出願したことは明らかである。
以上のように、原告は、1991年から、本件商標を、自社の商品に使用しており、本件において、原告が他社に高額で買取らせるため、あるいは他社に代理店契約締結を強制するためというような目的で、商標を出願したというようなことは全くあり得ないことである。
イ 原告の上記本件商標出願の経緯について、被告は、他の原告の商標出願、原告の宣伝広告の内容を指摘して、原告の悪意の商標横取り行為、現実の商標使用上の模倣行為、さらに現実の商標宣伝上のただ乗り行為等から明らかなように、原告が突如主張した本件商標採択の経緯は、信用することができないと主張する。
しかし、被告が指摘する原告の他の商標出願や、原告の宣伝広告の内容というのは、全て平成6年(1994年)以降のものである。
そもそも、エトニーズ社から原告に対し、初めて書面が届いたのは、平成5年(1993年)12月28日であり(乙第12号証)、その後、被告商品に関し、
原告とエトニーズ社との間で取引が始まったのである。すなわち、平成6年以降に、原告が、被告の引用商標等を実際に見て知っているのは当然であり、そのことから、それ以前にも引用商標を知っていたとする被告の論理には、明らかに誤りがある。
原告は、平成6年に被告商品を取り扱うようになる以前については、原告が独自に考案した本件商標を、独自のデザインとして使用していた。すなわち、被告商品に付された標章のデザインとは明らかに異なる、背景に楕円形の歯車上の図形が付された筆記体の「Etnies」が、原告商品に本件商標として付されて使用されてきたのである(甲第37号証ないし第51号証)。
これらから、1993年ないし1994年ころ、原告は、被告商品の標章とは異なるデザインの本件商標を付した原告の商品を、実際に原告の商品として輸入、販売していたことが明らかである。さらにいえば、被告商品はスケートボード用靴であるが、これら被告商品とは異なるデザインの本件商標を付した原告の商品は、スケートボード用靴ではなく、トレッキングシューズであり、被告商品とは、靴の種類が異なっている。
ここで、仮に被告が主張するように、原告が当初から被告商標を模倣する意図で、本件商標等を出願、使用してきたとすれば、原告と取引が始まる前である、1993年、1994年頃においても、原告は、被告の引用商標と全く同一の商標を使用していたはずである。しかし、実際は、原告は、被告と取引を始める前までは、被告の引用商標を知らなかったため、前記のように、被告商品に付された標章のデザインとは明らかに異なるデザインで、本件商標を使用してきたのである。この点で、被告が原告の模倣の意図を印象づけようとして作り出したストーリーが虚偽であることは明らかである。
そして、原告が、エトニーズ社と取引するようになってから、原告は、被告商品のために、非常に多額の宣伝費・広告費を投じてきた。すなわち、1994年から1996年の間に、被告商品のために費やした宣伝・広告費は、1994年は約1000万円、1995年は約2000万円、1996年は約1800万円に上っている。そのため、原告の努力によって、「ETNIES」というブランドが徐々に日本で知られるようになってきた。ただ、その際、販売元、問い合わせ先として、
原告、あるいは原告と代表者を同じくする原告の関連会社であるケーエス・エンタープライズの名称が記載されていたので、多くの靴小売、卸業者等が認めるように、「ETNIES」は、被告のブランドとしてではなく、原告のブランドとして認識されるようになったのである(甲第27号証)。
この点、被告は、テレビ、雑誌等で行った宣伝広告等も被告の著名商標の存在をバックにして始めて行ったものであり、決して損になるはずはないと踏んでのことであり、極めて悪質な行為であると主張している。
しかし、もともと「ETNIES」が被告の商標として日本において著名であったならば、原告がわざわざ多額の費用をかけて、宣伝広告する必要などなかったのである。実際は、もともと原告が被告商品を販売するようになる前は、引用商標は全く周知でなかったものを、原告が被告商品について、多額の費用を投じてテレビ、雑誌等で宣伝するようになって、初めて「ETNIES」というブランドが知られるようになってきたのである。
被告は、原告が被告の著名商標ただ乗りしている旨主張しているが、原告の宣伝、広告の努力にただ乗りしているのは被告の方である。そもそも、本件商標が出願時著名な引用商標の横取りであるとする審決、あるいは本件訴訟のような被告の主張を前提とするならば、被告は、早期に無効審判等を請求すればよかったし、できたはずである。それを、平成10年になって無効審判を提起してきたというのは、原告等の努力によって、引用商標が知られるようになってきたため、その後得た周知性の影響力によって、これを過去に遡って主張しようとするものにすぎない。また、原告と取引のある間は、原告の多額の広告、宣伝や、営業活動による利益を享受しておきながら、原告の努力により商標が日本で知られるようになり、原告と取引がなくなった途端、それまでその存在を認めていた本件商標について、無効審判を提起してくるというのは、許されない行為である。
また、被告は、レバンテが有していた商標のうち2件について、原告がレバンテから一部譲渡を受けたことを問題にしている。
しかし、これは、甲第29号証の5のようなTシャツに「ETNIES」ブランドを付するために必要という取引会社の要望を受けて、原告が権利取得したというものであり、レバンテと被告との間に譲渡交渉が進んでいることなど、原告は全く知らなかったものである。
原告の本件商標の出願後の状況を整理すると以下のとおりである。
すなわち、1991年に、原告代表者Aは、自社の新商品に使用するため、上記のとおり、本件商標を考え出した。また、原告は、1991年から、本件商標を付した靴の商品を、台湾等で製造し、日本に輸入し販売していた。
そして、1992年(平成4年)1月29日に、原告は、本件商標につき、商標登録出願を行った。この当時、原告は、被告の引用商標の存在を全く知らなかった。このことは、上記のとおり、原告と同業者である靴の卸業者、あるいは靴の小売業者、さらには、スケートボード用靴を専門的に扱ってきた者の間でさえ、当時、「ETNIES」というブランドを全く知らなかったことからも当然のこととしてうかがえる。
その後も、1993年、1994年に至るまで、原告は、自社の商品に、原告独自の標章として、背景に楕円形の歯車上の図形が付された筆記体の「Etnies」を付して使用してきた。このことからも、原告は、本件商標出願当時、被告の引用商標の存在を全く知らなかったことが明らかである。
そうして、本件商標を原告の商標として原告商品の輸入、販売を続けていたところ、1993年に、原告は、雑誌「BOON」の広告に、レバンテが本件商標と同じ商標を付した商品を掲載しているのを発見した。そこで、レバンテに連絡をとり、掲載商品は、エトニーズ社の商品であるということから、さらにエトニーズ社に連絡をとり、本件商標の問題について通知を行った。そして、それに対して、エトニーズ社から、1993年12月28日付けの乙第12号証のFAXが送付されてきた。このFAXにも、「貴社は商標使用料を受けるか、日本に「ETNIES」製品を買い付けることもできます。」とあるように、このやりとりがきっかけで、原告は、エトニーズUSAから、引用商標を付した靴の輸入、販売等を行うようになった。
そして、原告は、被告商品を輸入、販売するに際して、日本での類似商品に対する防衛を図るために、被告商品に付されている図形等について商標登録出願を行った。
このように、被告商品を輸入、販売している間、原告は、それまで知られていなかった被告商品の販売を拡大するため、上記のとおりの多額の宣伝、広告費を投じて、被告商品の宣伝、広告を行ってきた。ただ、その際、販売元、問い合わせ先として、原告、あるいは原告と代表者を同じくする原告の関連会社であるケーエス・エンタープライズの名称が記載されていたので、「ETNIES」は、被告のブランドとしてではなく、原告のブランドとして認識されるようになった。
このように、原告は、多額の宣伝、広告費をかけて、被告商品の輸入、販売を行ってきたが、1996年になって、被告商品について、安い並行輸入品が入ってくるようになったため、原告が扱う被告商品が売れにくくなってしまった。また、同年5月、Sole Technology社は、これまで原告が扱ってきた被告商品の引用商標の「ETNIES」標章について放棄し、今後「Emerica」という新たな標章を、商品に使用する旨決定した(甲第18号証)。これらが原因で、原告とエトニーズ社(Sole Technology社)との関係が悪化してしまい、
原告は、被告商品を取り扱わないようになった。
ただ、エトニーズ社(Sole Technology社)との取引がなくなり、被告商品の輸入がストップしても、原告としては、その後も、被告商品の在庫を継続して販売していく必要があった。そして、在庫の販売と自社商品の販売とが重なった時期があったため、宣伝、広告について、従前の被告商品について行っていた宣伝、広告のスタイルを多少の期間踏襲してしまった時期がある。
その後、原告は、本件商標のデザインを、原告独自の本件商標のデザインに戻し、以後現在に至るまで、原告独自のデザインの本件商標を使用してきている(甲第53号証)。
被告の反論の要点
原告が指摘する審決の認定、判断はいずれも正当であり、審決に原告主張の違法はない。
1 一般的反論 (1) 本件商標は「ETNIES」の文字よりなる商標であるが、これは被告が米国を始めとする世界の複数国において「スケートボード用靴」を中心に使用してきた結果、日本においても原告が本件商標を出願する以前に、既に我が国のスケートボード愛好者及びこれら関連商品を取り扱う取引業者間において十分知られた周知商標となっていた引用商標と同一の構成のものである。 したがって、審決が本件商標について「スケートボード用靴」はもちろんとして、それ以外の「運動靴」等に使用されたとしても、取引者、需要者間に出所の混同が生じるおそれのあるものとして、商標法4第1項15号に該当するとして無効としたことは、被告の主張及び提出証拠を正しく評価した結果であり、その法律判断において何ら違法はなく、極めて妥当な結論である。
(2) 原告は、出所混同のおそれの判断に当たっては、前提として、日本の取引者、需要者間における周知著名性や商品相互の関連性を厳格に判断しなければならないとして、審決における周知著名性、混同のおそれ等の認定が不十分ないしは誤っていると主張する。しかし、後記のとおり、原告のこれらの主張はいずれも15号の「出所混同のおそれ」についての間違った解釈を前提としているのみならず、世界市場が一つとなった今、世界的視野からの商標保護をとらえ、世界的規模にて流通秩序の維持を図ろうとする現代経済社会における商標保護の基本精神に逆らうもので方向性を欠いた議論といわねばならない。知的所有権先進国を標榜する我が国にあって、先願主義を悪用する一握りの者による外国人所有の周知著名商標の横取り行為は最も恥ずべき行為であり、国際的非難を浴びているところである。
他人の使用する周知著名商標は、我が国も加盟している工業所有権の保護に関するパリ条約6条の2(周知商標の保護)にも規定されているように、世界市場が一つとなった今、世界的規模にて有効に保護されなければ世界市場の流通秩序は維持することができない。したがって、他人の周知著名商標に対する横取り防止対策は、知的所有権保護に関する国際会議では必ず取上げられるテーマであり、現に輸出大国である我が国企業が、特に東南アジア諸国にて直面している極めて深刻な問題でもある。我が国でも、外国人所有の周知著名商標の有効保護を図るため、これまで幾多の商標法改正(特許庁における外国人所有の周知著名商標認定に関する審査基準改正も含む)、不正競争防止法による保護強化の改正等がなされてきたのであるが、さらに一層の保護強化が叫ばれている状況である。
被告は、本件の無効審判の請求に当たり、無効理由として、審決の結論となった商標法4条1項15号(出所混同のおそれ)のみならず、同項7号(公序良俗違反、商標法改正で新設の19号)、及び10号(周知商標)の違反も主張したが、
原告による本件商標の出願は、これらいずれの無効理由にも該当するものと信ずる。審決では結果的に本件商標が15号の出所の混同を生ずるおそれのある商標に該当するとして無効とされたものであるが、これは審決が引用する前記最判平成12年7月11日(参考資料1)及び最近のいくつかの判決(東京高裁平成3年(行ケ)第29号、平成4年2月26日判決、被告提出参考資料2)・審決例(平成3年審判第645号、平成11年9月27日、同参考資料3)における判断とも軌を一にするものであり、商標保護に関する国際信義上からも肯定することができるものである。
2 原告主張の各取消事由に対する反論 (1) 取消事由1(引用商標の周知著名の認定の誤り)に対して ア 一般的に、ある商標が商標法4条1項15号に規定する「出所の混同を生ずるおそれ」に該当する場合は、引用に係る他人の表示が周知著名であることが多い。しかしながら、この場合の周知著名性や混同のおそれとは、上記1の判例及び審決例において示されるように、指定商品及びそれらと関連する商品分野全般にわたるいわゆる一般的周知著名性がなければ混同のおそれがないというものではなく、特定の商品についてその商品の取引者、需要者間で周知著名となっている場合も含むものである。したがって、原告が「出所の混同を生ずるおそれ」の判断の前提として、他人の表示の一般的周知著名性について厳格に認定されなければ混同のおそれを否定すべきであるかのごとく主張し、審決は15号の解釈適用を誤ったと非難するのは、同法の趣旨を正しく理解したものとはいえない。
さらに、審決が引用する最判平成12年7月11日が判示するように、「出所の混同を生ずるおそれ」を判断する場合、唯一引用表示の周知著名性だけがその判断要素となるものではなく、これと他の要素、すなわち、引用表示と当該商標との類似性、その表示の独創性の程度、その他その表示が用いられる商品、役務と当該商標が使用される商品の性質、用途、目的、関連性並びに商品、役務の取引者、需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、総合的に判断されるべきである。
また、我が国の商標法が先願主義を採用しているからといって、先願者が登録に当たって常に圧倒的優先権を有するものではなく、あくまで先願者が登録を得るに当たり、他に不都合な事情が存在しない場合において優先するにすぎない。
イ 原告は、15号の出所の混同のおそれの判断において、引用商標が周知著名であるか否か、また、本件商標を使用することが引用商標との間で混同のおそれがあるか否かは、引用商標が使用される商品の取引者、需要者を基準としてではなく、本件商標の指定商品の取引者、需要者の認識を基にして決定されるべきであると主張し、さらに周知著名性の判断に当たっては、引用商標が使用される商品の取引者、需要者に対し周知著名となっているかではなく、原告が登録した登録商標の指定商品全体に関する分野の取引者、需要者にとって周知著名か否かが重要であると主張している。
しかし、これは原告独自の見解を基にしたものであり、このことは、上記最判平成12年7月11日及び当該上告審の上告理由において引用された3件の東京高裁の判決(被告提出資料6ないし8)の判示内容からみても明らかである。
本件における商標の周知著名性の判断は、被告所有に係る引用商標としての「ETNIES」に関することであることは当然である。原告の主張に従うときは、他国における周知著名商標が日本で横取り登録されたとしても、日本においてその登録に係る指定商品全体に関する周知著名性の立証がなされない限り、保護がされないことになる。このように単純に先願主義を貫くと、これを悪用した横取り登録が横行してしまうことへの反省から、外国における周知著名商標の保護に関する幾多の商標法改正がなされてきたが、ついに平成8年の改正では、我が国における周知著名性は不要となっている(乙第22号証参照)。なお、本改正前においては、本件事例のようなものは商標法4条1項7号(公序良俗違反)、あるいは出所混同混同のおそれのある商標として同項15号が適用されて拒絶されていたのであり、その立法趣旨にも述べられている。
本件では、そもそも最初に「ETNIES」なる商標を採択し、日本を含む世界各国にて引用商標の使用を開始し業務上の信用を築き上げたのは被告であるのに対して、原告は、被告が既に国際的規模の使用を通じて信用を築き上げた商標であって、審決が認定するとおり、日本の同業者もそのような商標を付した商品の輸入販売を望み、盛んに取引交渉を行っているような商標に対し、先願主義を悪用し、いち早く出願し登録を得ることにより、被告が築き上げた信用に只乗りし、自らの不正な利益に利用しようとの挙に出ただけであって、本件で問われているのは真の所有者の商標、及び真の商標使用者の業務上の信用、及び真の所有者の商品を愛好してきた取引者、需要者が保護されるかどうかである。
したがって、「ETNIES」商標についての周知著名性、及びその商標との混同のおそれ等は、被告の引用商標に対する取引者ないしは需要者の立場にあった者を基準として決定すべきは当然である。
ウ 以上を踏まえ、審決がその理由中の「(C)認定事実に基づく判断」、「(D)本件商標との出所の混同について」において、引用商標についての周知著名性及び出所混同を生ずるおそれをどのように認定、判断したかをみると、
次のとおりり、何ら判断の誤りはない。
(ア) 「(C)認定事実に基づく判断」について 審決は、乙第6号証(審判甲第6号証、米国における複数の取扱い業者の証明書)により、引用商標が出願前から被告によって被告の商品「スケートボード用靴」を示すものとして米国において使用されている事実を認定し、乙第8号証(審判甲8第号証、日本の複数業者と被告との間の商品に関する問い合わせ、注文書等)により、本件商標が原告により出願される前に、被告と原告を含む我が国の複数の取引業者との間において、被告の商品の輸入販売のための取引交渉が行われていた事実を認定し、乙第9、第10号証(審判甲第9、第10号証、米国のスケートボード専門雑誌であり、我が国でも販売されているものであり、乙第9号証の雑誌は、我が国で1989年から1992年の間に、毎年7300冊以上販売されてきたものであって、これらのスケートボード専門雑誌は、運動用具を取り扱う業者であれば必ず目を通すもの)により、本件商標の出願前に、米国において被告及びその関係者が「スケートボード用靴」について「ETNIES(etnies)」を使用していた事実を認定し、乙第17号証(審判甲第17号証)により、米国のVANS社が、原告が日本及び米国で販売している靴がエトニーズ社により販売されているものと誤信し、弁護士を通じ同社に警告書を送付するなどの誤認の事実があったことを認定し(これは、原告がVANS社の靴の形状に類似させた靴にエトニーズ社の商標を付して販売したため、VANS社がエトニーズ社により販売されているものと間違えたものである)、さらに上記状況に加え、インターネット情報における原告の事業活動の紹介内容において、原告が1980年ころから海外の「靴」の輸入販売に積極的に取り組み、輸入先は欧米、アジア等の世界20ヶ国に及ぶとされていることなどからしても、原告は本件商標の出願前において引用商標は被告が「靴」について使用する商標と知っていたものと推認することができると認定し、これらの各事実を総合判断して、引用商標は、我が国のスケートボード用具に関わる当業者間において、本件商標の出願前に著名性を得ていたとみても差し支えないものと判断したのであるから、そこには何ら判断の誤りも論理の飛躍もない。
(イ) 「(D)本件商標との出所の混同について」について 審決は、「出所混同を生ずるおそれ」の判断に当たり、引用商標は「スケートボード用靴」関連の取引者、需要者において周知著名商標であることに加え、引用商標「ETNIES」が特定の語義を有しない造語であり、独創性のある商標であること、「スケートボード用靴」は「運動用特殊ぐつ」(これは旧商品区分第24類の商品)の範疇に入る商品であって、旧第24類の「運動具」に含まれるものであり、そして、「運動具」と「運動靴」とは極めて関連の深い商品であること、現実に米国のVANS社が原告販売の商品を被告の商品と誤認した事実が存在すること等を総合的に判断して、本件商標はその出願時点において、あたかも被告あるいはその関係者の取扱いに係る商品であるかのごとく出所の混同を生ずるおそれを有していた商標であると認定したのであって、これは前記の最高裁判決及びこれと同旨の東京高裁判決、特許庁の審決例と趣旨を同じくするものであって、何ら判断の誤りも論理の飛躍もない。
エ 原告は、15号で問題となる周知著名性は「日本」におけるものでなければならないとし、乙第8、第9号証以外の乙第6号証、第17号証には証拠価値がない旨主張し、また、乙第8号証についても、単なるやりとり文書であるから著名性認定には役立たないとし、乙第9号証の1の雑誌に関しては、7300部が全て売れていたかどうか不明である旨主張している。
しかし、乙第8号証は、日本の複数の業者と米国所在の被告の販売会社との間の「ETNIES」商品に関する取引書簡類であるが、原告の主張によれば、これらは特殊な少数の取引者、需要者しか関係しない商品であると主張する。しからば、
なぜ海外にあるそのような商品を日本の複数の業者が知り、輸入販売を望み被告販売会社に接触してきたのかを考えるべきである。また、原告の主張によれば、乙第8号証に示す業者はいずれも10名程度の小規模の会社であるとのことである。そうであればなおさらのこと、なぜそのような零細業者までが海外にある被告商品の存在を知り、被告商品の輸入販売を望んで熱心に接触したのかを考えるべきである。
また、乙第9号証のスケートボード専門雑誌について、原告は、売れたかどうかも分からないと主張している。しかし、なぜ手間、費用をかけて何年間にも亘り7300部以上も継続して輸入し続けたのか、その理由を考えるべきであり、公共事業や慈善事業ならばともかく、知名度もなく、売れる可能性もない商品をあえて手間と費用をかけて輸入するのが現実的かどうかを考えるべきであろう。
他方、乙第6号証は、引用商標が、米国、ドイツ、フランス等において本件商標が原告によって出願される前より使用されていた事実を示すものであり、引用商標の国際的規模での使用と国際的周知性を示すものである。
さらに、乙第17号証は、米国の同業社VANS社が、原告が「ETNIES」商標を使用して日本及び米国で販売する靴が被告の販売に係る靴であると誤認し、被告に対し警告してきた事実を示すものであり、これは、原告が本件商標を使用した結果、被告の商標商品との間で現実の混同が生じた事実を示す証拠である。
審決は、上記の証拠を総合勘案し引用商標の周知著名性を認定したのであり、その認定に誤りはない。なお、被告は引用商標の世界的周知著名性を立証するために、上記証拠以外に、被告が世界各国で引用商標を登録している事実(乙第4号証)、中国、韓国等において原告による引用商標に対する模倣出願が、被告の所有の周知著名商標ETNIESに対する正当な権限なき不当な出願であるとして拒絶されている事実(乙第14号証、第18号証)も提出している。なお、原告は、乙第4号証につき、米国、仏国で引用商標を有しているのは被告以外の者であると述べているが、乙第24号証、第25号証に示すように、被告関連会社によって登録された後、現在においては被告に名義移転がなされている。
なお、原告は、引用商標の周知性を否定するための立証として、「報告書」と題する書証を追加提出しているが、その「報告書」において述べられていることは、
平成4年当時「全く聞いたこともありませんでした」というものである。平成13年の今日において、9年も前の記憶をたどって作成された「報告書」の信憑性自体が問題であるが、「全く聞いたことがない」ということと「周知ではなかった」ということは同じではない。周知商標として存在していたとしても、その商品と係わりがない業者、あるいは関心がない需要者にとっては、存在はしていても全く「聞いたことがない」ということは多々存在することである。したがって、これらの「報告書」によっては周知性を否定することにはならない。周知著名性とは、上記最判平成12年7月11日が示すように、もともとその種の商品を愛好する者のなかにおいて、周知著名であればよいのであって、これら商品を必要としない者、あるいは関心がない者にまで知られる必要性はないのである。
3 取消事由2(出所の混同を生ずるおそれの判断の誤り-その1)に対して 原告は、「スケートボード用靴」と「はき物、運動靴」等とは、関連性がないか、若しくは極めて関連性の薄い商品であるかのごとく認識しているようであるが、これは全く逆である。
「スケートボード用靴」は、それが純粋に競技用にのみ用いられるもの(すなわち、それ以外には使用されないような特殊なもの)であれば、旧第24類の「運動用特殊靴」に属する商品であるが、「スケートボード用靴」と称しても、構造的にみて特別に「特殊」なものでなく、通常の運動靴としても使用するようなものであれば、旧第22類に属する「運動靴」として扱われるものであり、名称如何により商品が異なるものではない。
そして、被告は、引用商標「ETNIES」を、「競技用専用」のスケートボード用靴に使用しているのと同時に、乙第20号証(商品カタログ)に示すような通常の「運動靴」に属し、若者が市中で使用してよいものにも多く使用して販売してきたのであり、この靴は、旧第22類の「運動靴」に属するものである。近年のファッション性、高級性を志向する若者は、有名人や有名スポーツ選手が身に付けたものと同じブランドを身につけ市中に出ることが流行っている。被告の販売する「ETNIES」ブランドの「スケートボード用靴」も、スケートボードチャンピオンであった被告が使用した靴と同じブランドであることから若者に人気があるのであり、靴の購入者の全てが競技用として用いることを目的として購入しているわけではない。被告の引用商標は、そのいずれにおいても取引者、需要者間に周知著名となっているのである。
したがって、被告の引用商標が使用された靴が旧第24類の運動具の範疇に入る「運動用特殊靴」であれ、旧第22類のはき物の範疇に属する「運動靴」であれ、
商品の用途、性質、取引者、需要者等において互いに極めて密接な関連を有する商品であることは明らかであり、これらを踏まえて混同のおそれを認定した審決の判断に誤りはない。そして、このことは、乙第17号証のVANS社による現実の混同の事例が示すとおりである。
以上のとおり、原告が被告の製品はあたかも競技用の特殊なもののみであり、それ故に取引者、需要者が全く異なり「運動具」や「運動靴」とは全く関連性がないかのごとく主張するのは当を得たものではない。
4 取消事由3(出所の混同を生ずるおそれの判断の誤り-その2)に対して 原告は、審決が「出所の混同を生ずるおそれ」を「当該商標の指定商品等の取引者及び需要者を基準とすることなく」、「引用商標を使用する商品の取引者、需要者を基準として判断している」と批判する。これは、原告が「スケートボード用靴」と「運動靴」とは互いに関連のない商品であるとの誤った認識に立つことからの主張であると解される。
しかし、上記3のとおり、「スケートボード靴」と「運動靴」との関係は、上記3のとおりのものであり、スケートボード用靴の取引者、需要者を基準として判断することは、「運動靴」の取引者、需要者を基準として判断することと実質的に同じことである。
また、原告の法的主張自体が誤っていることは上記2のとおりである。
5 取消事由4(出所の混同を生ずるおそれの判断の誤り-その3)に対して (1) 原告は、審決の他人の表示の周知著名性の認定、商品相互の関連性の認定等が安易であると主張するが、これらの点については、上記2ないし4のとおり、審決の認定、判断の手法は、最高裁判決等における認定、判断と同じものであって、その過程において何ら安易なものはない。特に、米国のVANS社が原告による本件商標の使用を被告の使用と誤認した事実は、現実に発生した重大な混同事実を示すものであり、「出所の混同を生ずるおそれ」の認定において「おそれ」を超えた決定的な証拠を物語るものである。
原告は、原告が本件商標を採択した理由に関して審決がした認定について、「事業活動の過程で引用商標の存在を知り得たという単なる可能性の問題」であるとしているが、原告は、「可能性」でなく、引用商標を十分認識して本件商標を採択したものであり、虚偽の主張といわざるを得ない。原告は、本件商標を韓国、中国でも出願しており、被告の異議申立等によりこれら両国でも拒絶されている(請求人が本件特許庁審判事件にて提出した乙第14号証及び第18号証)。
そして、本件における原告の一連の行為は、単に原告が本件商標を先に出願し登録を得たという問題にとどまらず、後記のとおり、原告は、本件商標の登録を得るや、本件商標の信用を利用し、あたかも自らが正当に採用した商標であるかのごとく自らの商品の宣伝、販売行為に及んでいる。原告のこれら行為について迷惑を蒙っているのは一人被告のみならず、広く被告商品を愛好する需要者、さらには被告商品を正当に輸入販売したいと願う取引者に対する正当な取引をも阻害しているものであり、放置することができない状態になっている。
なお、原告は、「ETNIES」商標に関しては、本件で問題となっている第22類、第24類以外に、第18類、第25類、第28類等にも出願し登録を得ている(乙第26ないし第33号証)。そして、乙第27号証に示す登録第3116038号は、もともと株式会社レバンテが出願したものであるが(これも正当な権限なく出願したもの)、これを知るや原告はこれに接触し、共有に持ち込み登録を得たようであるが、株式会社レバンテは、当初被告に対し当該出願を返還する意思を有していたものである。当該登録は被告による無効審判により無効にされ、これに対し原告は審決取消訴訟を提起したが、原告単独名義で提起した当該訴訟は不適法として東京高裁により却下されている(乙第29号証)。おそらく共有者としての株式会社レバンテが原告のそのような訴訟に加わることを善しとしなかったものと思われる。また、原告は他人の腕時計に関する世界的著名商標「G Shock」を「靴」等に出願し(乙第34号証)、実際にこれを靴に使用したりして当該著名商標権者から内容証明にて通告されるなどの問題を起こしたりしている。このように、原告の他人の著名商標にあやかる行為は常習的なものである。
なお、原告は、15号で要求される周知性の程度は不正競争防止法でのものよりも高いことが要求されるとか、審決は、引用商標や本件商標の周知性が本件登録商標の指定商品の取引者や需要者に及んでいるか否かを考慮することなく、「需要者層などを共通にする互いに関連の深い商品といえるものである」と認定するのみで、「混同を生じさせるおそれ」を認めているなどとも主張するが、引用商標が原告にとってもその出願前から十分に周知著名であったことは何よりも上述した原告の一連の行為からも明白なところであり、また、上記の株式会社レバンテによる横取り出願も引用商標の周知著名性の存在を物語るものである。
(2) 原告は、本件商標の出願の経緯につき、本件の訴状では、「事業活動の過程で引用商標の存在を知り得たという単なる可能性の問題」などと主張をしていたが、平成13年6月18日付けの準備書面において、突如として、本件商標採用の経緯として、本件商標は原告代表者が独自に考えついたものであるとか、他社に対して高額で買い取りをさせたり、あるいは輸入代理店契約を強制する目的で出願したものではないとの主張を開始した。これは本件商標に関し、これまで被告との間で無効審判、内容証明のやり取り、譲渡交渉等を含め何年にもわたる長い論争において一度も主張されなかったものであり、このことは審決において、「これに対して、被請求人は、本件商標を同人が独自に採用したものであるとか、あるいは、
本件商標を被請求人が採択した事情、すなわち、被請求人が受けるべき法的利益の度合いが大きく勘案されるべき事情を説明してはいない」と認定していることからも明らかである。
原告が突如として持ち出した本件商標採択の経緯に関するストーリーには信用性がない。原告は当該ストーリーの中に若干の事実を組み入れ、被告の販売会社であるSole Technology社が「ETNIES」商標を使用するについては問題が生じたために、他の商標に切り替えざる得ない状況を述べるレターを配布したという事実はあるが、これらを便宜的に組み込んで仕立てた本件ストーリーは全く信憑性がない。
原告が本件商標を悪意で出願し、不正競争の目的で使用してきたことは、以下に述べる事実から客観的に明らかなところである。原告は「ETONIC」商標から本件商標「ETNIES」を思いついたなどと主張しているが、以下のとおり、原告の引用商標を含む被告商標に対する模倣行為は、本件商標だけに関するものではなく、被告の図形商標まで完全に模倣し、さらに、これらの現実の使用態様においても完全に模倣しているのであって、そこには何らの弁明の余地はない。
ア 原告による悪意の商標横取行為 (ア) 原告の被告の商標に対する模倣行為は、引用商標「ETNIES」だけではない。原告は被告が靴に用いる他の図形商標についても模倣出願(乙第32、第33号証)している。これら出願は本件出願より後の1996年であるが、本件商標出願後においても被告の商標に執着し模倣出願を継続している。
このような全く同一の図形が偶然の一致により他人により出願されることはあり得ないことである。
(イ) さらに、原告が被告の商標に対し如何に執着していたかは、
以下の事実が示すとおりである。すなわち、株式会社レバンテは、被告所有の7件の商標について模倣出願し登録を得た(乙第35号証の1に示すレターに示される7件)。しかし、これらに関しては交渉の結果、株式会社レバンテはその7件の模倣登録商標について、対価$35,000とそれらの権利移転登録に要する費用とで譲渡する旨の合意をし、譲渡手続に入ろうとしていた。しかし、これについて、
後から原告が株式会社レバンテに接触し、7件のうち被告にとって最も重要な2件の商標、すなわち、「ETNIES」(乙第27号証)と、円形のなかに「E」の文字をデザイン化した図形商標(乙第31号証)について、株式会社レバンテとの共有名義に持ち込んだのである(乙第27号証及び第31号証の商標登録原簿に示すとおり、平成10(1998)年12月2日商標権一部移転登録申請、平成11年1月21日商標権の一部移転登録)。
原告のそのような行為により、株式会社レバンテ所有の上記2件の商標に関しては被告への譲渡はできない事態となったため、他の5件の商標についてもそのままの状況となっている。これらの事情については被告の米国代理人と仏国代理人、及びこれと日本の代理人との間で交わされた交信レターから明らかである(乙第36号証の1ないし3)。なお、原告が不当に株式会社レバンテとの共有に持ち込んだ「ETNIES」(乙第27号証)及び図形商標(乙第31号証)は、被告の商標そのままであり、このような図形が関係のない他人によって偶然の一致で出願されることなどあり得ない。株式会社レバンテが模倣出願した他の5件の図形も全て被告の所有する図形商標と全く同じである(乙第37号証。被告が世界で所有する図形商標のリスト参照)。
イ 原告の商標使用上における模倣行為 原告が横取りした上記商標について、如何なる態様で使用しているかをみれば、
始めから被告商標をまねてのものであり、およそ独自に採択し、独自に使用しているなどといえるものではないことが明らかである。
すなわち、原告提出の甲第29ないし第33号証(雑誌記事及び広告類)は、原告による本件商標の使用態様を示す証拠であるが、ここに示される使用態様を見ると被告の使用態様をその細部に至るまでそっくりまねている。
(ア) 「etnies」に関する模倣使用 被告が使用する「etnies」の使用態様の特徴は、この構成文字中の二つの「e」と最後尾の「s」の文字の上部と下部が割れているデザインとなっているものであるが(乙第20号証のカタログに示す使用態様参照)、原告はこの特徴をそのまま模倣して使用している(甲第29号証の1ないし4、第30号証の4、第31号証、第33号証)。
(イ) 「E」デザインに関する模倣使用 被告は「ETNIES」の「E」をデザイン化した図形商標を有し、これを靴の横に大きく斜め下向きに表示して使用しているが(乙第20号証カタログ参照)、
原告はこの「E」デザインを被告と全く同様に、靴の横に斜め下向きに大きく表示して使用するなどの模倣行為をしている(甲第29号証の1ないし4、第30号証の2、3、第31号証、第33号証)。
(ウ) 靴底に「e」デザインの模倣使用 被告は上下の部分が割れたデザインとなっている特徴の「e」の表示を靴底に用いているが(乙第20号証カタログ参照)、原告も全く同様に靴底に同じ特徴の「e」の文字を表示している(甲第30号証の3)。
ウ 宣伝態様にみるただ乗り行為 原告の模倣行為は上記の使用態様に示す模倣だけではない。原告は次のような宣伝さえしている。以下のものは被告の商品の名声、信用をバックにし、これにあやかる宣伝態様である。
(ア) 甲第32号証 「あのエトニーズからデニムモデル登場 元スケートボードワールドカップ世界チャンピオン、Bが‘89年にカリフォルニアのハンティントンで始めたエトニーズ。プロでの経験とIBMのエンジニアというキャリアを持つ彼が、新たに世に送り出すのがデニム素材のスニーカー。」 (イ) 甲第30号証の1 「エトニーズといえば、スケートボード用スニーカーとして超有名ブランドだけど、それだけではなかったのだ。ストリートご用達の人気バックも作っていたのでした。」 (ウ) 甲第30号証の2 「スケーターブランドであるエトニーズは、激しい動きや、衝撃に対応できるタフさとシンプルなスタイルがスケーターばかりでなくウケている・・・やっぱりエトニーズですか?」 「サイドにEの入ったデザインの定番スタイル、ホットドッグ。エトニーズの代表的モデルの貫禄さえ感じさせる」 (エ) 甲第30号証の4 「スケーターシューズの大御所エトニーズがかなりヤバイ! サンダルをはじめ、定番モデルも要チェックしろよ!」 (オ) 甲第29号証の5 「スポーティなアメリカンティストのエトニーズ」 (カ) 甲第33号証 これは原告が、テレビコマーシャルとして放映された内容を説明した書面と主張するものであるが、ここに示される靴に表示された「etnies」も「E」のロゴマークも、被告が現実に商品に使用する際の特徴をそっくり模倣している。
(3) 原告は、被告との交渉経緯に関して、乙第12号証は、被告が原告に対しロイヤルティを支払い、原告に被告商品を販売してもらうことを希望し、相互に協力することを提案してきたものであるなどと主張している。そして、甲第18号証は、被告が引用商標を放棄することを決定したものであるなどと主張している。しかし、本件に関する経過の全趣旨と、甲第18号証の内容をよく読めば分かるように、被告としては原告が本件商標を振りかざしている限り、日本の他の輸入業者に本件商品をスムースに供給することも出来ず、やむなく当面の緊急措置として他のブランドを使用してでも商品の供給をすべきことを考えた苦渋の選択に関する内容のものである。
また、原告の一連の行為からいえることは、始めから被告の著名商標にあやかることを目的としたものであって、そのような行為からは商標法で保護する業務上の信用など生じる筈がない。原告がテレビ、雑誌等において行なった宣伝行為等も被告の著名商標の存在をバックにして始めて行なったものであり、決して損になる筈はないと踏んでのことであり、極めて悪質な行為と言わねばならない。原告が韓国、中国等において出願行為に及んだのも同じ計算からと考えられる。
(4) 原告は、履物卸売業であるが、海外のブランド「靴」の輸入販売に関してはもともと深い関心を示し、輸入販売に積極的に取り組んできたものであることは、原告自らのホームページにて次ぎのようにアピールしていることからも明らかである。「同社が輸入品を扱い始めたのは今から15〜16年前の1980年代初頭である。・・・A社長は当時の業界では珍しかった輸入品への積極的取り組みという形でこの難関に取り組んだのである。・・・同社の輸入先は欧米、アジアにまたがって世界20ヶ国に及ぶが・・・輸入業務も商社に依存せず、自社内の人材を確保している」(乙第39号証)。
原告のこれら業務からしても、審決にて、原告は本件商標を知って出願したものと推認するに難くないと認定したのはごく自然なことである。被告が本件商標「etnies」を使用してきた靴は、機能、品質ともに高級であり、それゆえに名声も得てきたのである。しかしながら、原告は悪質なただ乗り行為により、機能も品質も全く異なる商品に対し、ETNIESのブランド性をうたい、一時的な利益を得ようとして宣伝行為に及んだのである。
原告のこのような行為は他人の著名商標に対する単なる無断出願という域を超え、名声ある商品の信用の低下を来たし、需要者を裏切り、さらに名声ある商品の輸入販売を望む同業者を排除する行為であって、不法行為の度合いは極めて高い。
したがって、そのような行為には法が保護すべき何らの正当理由も見出せず、ましてや、不当な模倣行為により模倣者側に商標法が保護すべき信用が宿るはずはない。
原告が甲第19ないし第21号証等で、原告商品の販売に費やしたとする宣伝広告費というのは、バックに被告が既に築き上げた名声と信用ある商標及び商品があることを盾に、たまたま自らが商標登録を得られたことを奇貨として、品質、機能等が全く異なる商品につき、それらがあたかも原告の周知著名な商品と関連した商品であるかのごとく仕立てて、不当な利益を得ようとすることに費やした費用であって、自らの努力で自らのオリジナルのブランドを作り上げるために費やしたものではない。
したがって、ここに見られる宣伝広告費というのは、被告の名声ある商品にあやかり、不当な利益を挙げるために費やした費用を言うだけであって、自らのブランドを作り上げるために純粋かつ誠実に費やした本来の宣伝広告費用と混同すべきではない。本件事案は日本企業が外国企業の所有する周知著名商標を横取登録する典型的事案である。すなわち、外国の周知著名商標権者の多くは我が国商標法が先願主義をとることなどを知らないため、我が国に商標登録出願をせずして我が国業者と商談に入ってしまうのがむしろ普通である。本件もこのように状況下で我が国業者と商談が行われていた時期にいち早く原告により不当な商標登録出願が行われ登録されたのである。そして、一方において本来の権利者による自由な営業行為を妨害しておきながら、片や無効審判になると日本での販売実績がないため周知・著名ではない、との形式的法律論を展開するのである。
しかし、本件訴訟においては、被告は日本も含め、世界規模での引用商標の周知・著名性を立証し、原告による現実の使用態様におけるまでの完全な摸倣事実、
さらに被告商標との間で現実に生じた混同の事実等の立証もしており、また周知著名性に関する解釈主張は前記最判平成12年7月11日と同趣旨に基づいての主張であり、これで十分であると考える。
理 由1 本件商標の構成及び指定商品等 本件商標は、「ETNIES」の欧文字を横書きしてなり、指定商品を旧第22類の「はき物(運動用特殊靴を除く)、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」として、原告によって平成4年(1992年)1月29日に出願されたものであること、他方、被告及びその関係者が商品「スケートボード用靴」に使用する引用商標も、同じく「ETNIES(etnies)」の欧文字を横書きしてなるものであることは、争いがない。
2 引用商標と本件商標の使用状況及び両者の関係等について (1) 審決及び被告が引用する最判平成12年7月11日が判示するとおり、
一般に、商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品又は指定役務(以下「指定商品等」という。)に使用したときに、当該商品等が他人の商品又は役務(以下「商品等」という。)に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等が上記他人との間にいわゆる親子関係や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ(以下「広義の混同」という。)がある商標を含むと解するのが相当である。そして、「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他の取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。
(2) そこで、以上の観点に立って、本件における「ETNIES」商標の使用状況等についてみると、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によると、次の各事実が認められる。
ア スケートボードは、我が国においても1980年代以降、アメリカのカリフォルニアをメッカとするスポーツとして青少年の若者を中心として人気を博し、スピードや妙技を争う競技大会に参加する選手のほか、ストリート、広場、遊技場等でスケートボードを乗用して楽しむ多数のスケートボーダーがおり、スケートボード、スケートボード用靴、被服等のスケートボード関連の商品は、若者を中心として広い需要者層を獲得している。そして、近年のファッション性、高級性を志向する若者の間では、スケートボードの世界チャンピオンなど有名な選手が使用するものと同じブランドのスケートボード関連商品を身につけて市中に出ることが流行している。(甲第4、第6号証、弁論の全趣旨、当裁判所に顕著な事実) イ 引用商標を構成する「ETNIES」の文字は、フランス語で「民族」を意味する「ETHNIE」の語から発想された造語として独自に創作されたものであるところ、米国カルフォルニアに在住し、スケートボードのワールドカップ世界チャンピオンであった被告Bは、1990年(平成2年)ころ、「ETNIES」商標を使用する権利を得て、スケートボード用の靴を中心として、Tシャツ、ジャケット等の被服、帽子、ステッカー等の商品に「ETNIES」商標を使用し、被告の関係する会社である米国のエトニーズ社(後には、Sole Technology社)を通じて、米国内でこれらの商品を販売した(以下「被告の「ETNIES」商品」という。)。被告は、1989年(平成元年)に、スケートボード界で初めて特定の選手(当時のスケートボードのチャンピオンであったNatas Kaupas)のためのシューズをデザインし、これを「NATAS」モデルとして発売するなどしており、被告の「ETNIES」商品は、有名なスケートボードの選手に使用されるものとして、スケートボードの愛好者の注目を集めた。被告の「ETNIES」商品の「スケートボード用靴」は、競技用の特殊なもののほか、
単にスケートボードのような機敏な動きにも適することをアピールするために「スケートボード用靴」と称され、通常の運動靴として市中で使用してよいものも多く販売されており、また、その販売品目はその後拡充され、例えば、2000年(平成12年)の商品カタログでは、ズボン、靴下、バッグ等が掲載されている。
被告の「ETNIES」商品は、米国各地で広くトレードショーが開催されるなど活発な販売活動がされ、さらに、米国のスケートボード専門雑誌「TRANSWORLD SKATE boarding」(乙第9号証の1)、「THRASHER」(乙第10号証)に、「ETNIES」商標を付した一面広告が掲載されたり、後者の雑誌の1991年(平成3年)11月号の表紙にスケートボード・チャンピオンのEric Dressenが「ETNIES」のシューズを履いている写真が登載されるなどして、被告の「ETNIES」商標は、本件商標の出願時である1992年(平成4年)1月の以前には、米国内におけるスケートボード関連商品の販売業者、及び若者を中心とする一般需要者の間で著名なものとなっていた。(甲第4号証、第6号証、乙第3号証、第6、第7号証、第9、第10号証、第14号証、第20号証) ウ 被告は、本件商標の出願時である1992年(平成4年)1月までに、ドイツ、フランスなど海外にも被告の「ETNIES」商品のカタログを頒布して、「ETNIES」商品の販売を広げるとともに、1988年から1997年にかけて、世界の多数の国で「ETNIES」商標について商標登録の出願をして、これらが登録されており、本件商標の出願時である1992年1月の前後では、1989年1月に国際登録され、1988年5月にフランス、1991年5月に米国、1989年11月に台湾、1989年5月にタイ国、1992年4月にギリシャ国の各国で登録されている(乙第4号証(枝番は原則的に省略する、以下同じ。)、第第35号証)。なお、フランス、米国、台湾では、被告の関連会社(販売代理店)によって登録され、1997年に、フランス、米国で被告に移転登録されている(乙第4号証、第6号証の2、3、第24号証、第25号証、第35号証)。
エ 我が国においても、被告の「ETNIES」商品が掲載された上記イに記載のスケートボード専門誌が販売され、また、米国各地で開催されたトレードショーで被告の「ETNIES」商品が紹介され、被告の「ETNIES」商品は、スケートボードの本場の米国カルフォルニアにおける有名なブランドとして、
我が国でスケートボード用靴、スケートボード関連商品を扱う販売業者の注目を集め、また、我が国の輸入業者に対して多くの取引者から問い合わせがされて、本件商標の出願時である平成4年(1992年)1月までには、複数の輸入業者によって輸入されて、我が国における若者を中心とする一般需要者に販売されていた。
(乙第5号証、乙第8ないし第10号証)。
オ 靴の輸入販売を業としている原告も、同時期に、被告がスケートボード用靴等の商品に「ETNIES」の商標を使用していることを知り、平成4年(1992年)1月29日に、本件商標について、被告に無断で商標登録出願した。また、被告の「ETNIES」商品を輸入販売する株式会社レバンテも、同年12月17日に、「ETNIES」の文字商標について、指定商品を第25類の「洋服」等として、平成5年(1993年)9月8日には、被告が使用している円形のなかに「E」の文字をデザイン化した図形商標について、指定商品を第28類の「おもちゃ」、「人形」等として、それぞれ被告に無断で商標登録出願した。
(甲第1号証、乙第11号証、第13号証、第27号証、第31号証、第39号証、弁論の全趣旨) なお、原告は、後記のカのとおり、被告の「ETNIES」商品を取り扱うようになった後である平成6年(1994年)7月1日に、被告が靴に用いている「E」の文字をデザイン化した図形商標について、指定商品を、第25類の「靴類」、「運動用特殊靴」として、平成7年(1995年)4月3日に、指定商品を第18類の「かばん類」等として、それぞれ被告に無断で商標登録出願しており、
また、株式会社レバンテが商標登録を得ていた上記の「ETNIES」の文字商標及び図形商標についても、被告の「ETNIES」商品の輸入を止めた後に、被告の承諾を得ずに株式会社レバンテから持分の譲渡を受け、平成10年(1998年)12月2日に、商標権一部移転登録を申請し、平成11年(1999年)1月21日に、移転登録を受けている。(乙第27号証、第31ないし第33号証、弁論の全趣旨) カ 本件商標の出願後も、被告の「ETNIES」商品は、複数の業者によって、我が国に輸入、販売され、また、スケートボード等のストリートファッションを扱う「BOON」等の雑誌に広告されるなどしていた。
本件商標「ETNIES」を出願中の原告は、被告が使用している「ETNIES」商標と異なるデザインの標章を原告が販売する商品「靴」に使用していたが、
被告の「ETNIES」商品を我が国に輸出して販売しているエトニーズ社との間における「ETNIES」商標に関する交渉を経て、平成6年(1994年)から平成8年(1996年)までの間、被告の「ETNIES」商品を輸入、販売し、
スケートボード等のストリートファッションを扱う複数の雑誌にその宣伝広告を出しており(原告の主張によれば、被告商品のために費やした宣伝、広告費は、1994年は約1000万円、1995年は約2000万円、1996年は約1800万円に上っている。)、被告の「ETNIES」商品を販売する米国のSole Technology社との間の取引を終了した後である平成9年(1997年)から平成11年(1999年)6月ころまでの間も同様の宣伝、広告をして、被告が使用する「etnies」商標の構成文字中の二つの「e」と最後尾の「s」の文字の上部と下部が割れている特徴的なデザインの標章や被告が「E」の文字をデザイン化した上記の図形商標を付した靴を掲載するなどしていた。(甲第29ないし第32号証、第37ないし第52号証、乙第12号証、第20号証、弁論の全趣旨) 原告は、「ETNIES」商標を付した商品の販売に関して、上記の雑誌に次のような広告を掲載していた。「スポーティなアメリカンティストのエトニーズ」、
「アクティブでスポーティなデザインがストリートでも常に注目の本格派ブランド、エトニーズ」(「Fine」1999年7月号、甲第29号証の5)、「エトニーズといえば、スケートボード用スニーカーとして超有名ブランドだけど、それだけではなかったのだ。ストリートご用達の人気バックも作っていたのでした。」(「BOON」1997年3月号、甲第30号証の1)、「スケーターブランドであるエトニーズは、激しい動きや、衝撃に対応できるタフさとシンプルなスタイルがスケーターばかりでなくウケている」、「やっぱりエトニーズですか?」、「サイドにEの入ったデザインの定番スタイル、ホットドッグ。エトニーズの代表的モデルの貫禄さえ感じさせる」(同1998年2月号、甲第30号証の2)、「‘98年春夏、スケーターシューズの大御所エトニーズがかなりヤバイ! サンダルをはじめ、定番モデルも要チェックしろよ!」(同1999年6月号、甲第30号証の4)、「あのエトニーズからデニムモデル登場」、「元スケートボードワールドカップ世界チャンピオン、Bが‘89年にカリフォルニアのハンティントンで始めたエトニーズ。プロでの経験とIBMのエンジニアというキャリアを持つ彼が、新たに世に送り出すのがデニム素材のスニーカー。」(「Fine MAX」1997年11月号、甲第32号証)。これらの広告の掲載時期は、いずれも平成9年(1997年)以降のものであるが、それ以前の原告が被告の「ETNIES」商品を輸入し、販売していた時期においても、例えば、「スケーター注目のエトニーズ」、
「すっかりストリートの定番になったエトニーズ、今年もニューモデルを加えて、
ますます元気いっぱいだ。エトニーズといえば、スケートボードの元世界チャンプ、Bがデザインすることで有名。それだけに機能面だってバッチリ文句なし!」、「デザイナーのBはフランス人。そのせいか彼の創るスケーターシューズにはエレガントさが感じられる。」(「Fine」1995年8月号、甲第59号証)との広告が掲載されるなど、上記と同様の宣伝がされていたものと認められる。
キ これらの被告の「ETNIES」商品の販売業者による販売、宣伝広告活動によって、被告の「ETNIES」商標は、我が国においても、スケートボード関連商品や運動靴を取り扱う業者及び若者を中心とする一般需要者の間で、スケートボード関連商品について、スケートボードの本場の米国カルフォルニア発祥のブランドとして著名なものとなった。
ク 米国のVANS社は、平成9年(1997年)9月17日付けの書簡により、Sole Technology社に対して、同社が日本で販売している商品である「靴」の靴底のデザインはVANS社の保護デザインと同一のものを含み商標権等を侵害するとの理由で該商品の販売停止を申し入れ、「ETNIES」商標が付されて日本で販売されている商品を同封してきたが、この商品は、Sole Technology社が販売に関わらない原告の商品であり、審決が指摘するとおり、平成9年の秋の時点で、米国のVANS社は、日本で、「ETNIES」商標が付されて販売されている原告の商品「靴」の出所について、それがあたかも被告の関係会社であるSole Technology社の取扱いに係るものであるかのように現実に出所の混同をしたことが認められる。
(3) 原告は、「ETNIES」というブランドが日本で知られるようになってきたことは認めた上で、被告の「ETNIES」商品の宣伝、広告における販売元、問い合わせ先として、原告あるいは原告と代表者を同じくする原告の関連会社であるケーエス・エンタープライズの名称を記載していたので、「ETNIES」は、被告のブランドとしてではなく、原告のブランドとして認識されるようになった旨主張している。
しかしながら、上記(2)エないしキのとおり、我が国において、被告の「ETNIES」商品は、原告以外にも複数の業者が輸入、販売し、かつ、宣伝広告をしていたのであり、また、原告による被告の「ETNIES」商品の広告の内容をみても、上記(2)カのとおりであって、元スケートボードワールドカップ世界チャンピオンである被告のデザインに係り、被告が1989年に米国カリフォルニアで始めたスケートボード用靴の有名なブランドとして紹介していたものと認められるから、「ETNIES」は、米国在住の被告の出所に係る商標であり、原告は、その輸入販売元ないし問い合わせ先の一社として我が国の取引者、需要者に認識されていたものにすぎないものと推認されるのであって、原告の上記主張は採用することができない。
また、原告は、本件商標の「ETNIES」の語は、原告代表者が考え出した商標であるとして、その考案の経緯について詳しく主張している。
しかしながら、本件の審判手続において、原告は、本件商標について上記のような主張はしておらず、また、被告の「ETNIES」商品の輸入販売及び宣伝広告活動に関して、「被請求人(原告)はもともと自己の商品に本件商標を使用するために出願したのであり、事実、本件商標を自己の企画発注した商品に使用していたため、請求人(被告)の誘いを拒絶し、その後も請求人との間にいかなる契約も締結していない。ただ、被請求人は、本件商標出願後、請求人の商品をスポットで数回輸入したことはあるが、これらは本件商標商品の販売のために独自で開発した国内の販売ルートに乗せて被請求人の商品を販売した場合、採算が採れるか否かを試しただけであり、その後は請求人の商品は一切扱わず、自己の商品にのみ本件商標を使用し、本件商標の宣伝広告及び販売拡大に努めてきた」旨主張していたが(甲第1号証及び弁論の全趣旨)、これは、上記認定(2)カの原告による被告の「ETNIES」商品の輸入販売及び宣伝広告の実態に明らかに反する主張であると認められること、審決が出される前の平成12年4月から同年8月までの間に、原告及び被告の代理人同士による内容証明郵便による交渉において、被告からは、被告が「ETNIES」商標を使用するに至った経緯の詳しい内容が示されたのに対して、原告からは、本件商標について原告が考案したことなど原告の上記主張に沿う内容は何ら示されていないこと(甲第54ないし第57号証、乙第38号証、弁論の全趣旨)、原告は、上記認定(2)オのとおり、被告の「ETNIES」商品を取り扱うようになった後である平成6年(1994年)7月1日に、被告が靴に用いている「E」の文字をデザイン化した図形商標について、指定商品を、第25類の「靴類」、「運動用特殊靴」として、平成7年(1995年)4月3日に、指定商品を第18類の「かばん類」等として、それぞれ被告に無断で商標登録出願していることに照らせば、原告の上記主張は採用し難いものであるといわざるを得ない。
3 取消事由1(引用商標の周知著名の認定の誤り)について (1) 上記認定2の(1)の事実によれば、被告の「ETNIES」商標は、
本件商標の出願時である平成4年(1992年)1月の以前に、米国内におけるスケートボード関連商品の販売業者、及び若者を中心とする一般需要者の間で著名なものとなっており、我が国においても、被告の「ETNIES」商標を使用した商品は、スケートボードの本場の米国カルフォルニアにおける有名なブランドとして、スケートボード用靴、スケートボード関連商品を扱う販売業者の注目を集め、
輸入業者に対して多くの取引者から問い合わせがされる状況にあり、本件商標の出願時までには、複数の輸入業者によって輸入されて、我が国における若者を中心とする一般需要者に販売されていたのであり、靴の輸入販売を業としている原告も、
同時期に、被告がスケートボード用靴等の商品に「ETNIES」の商標を使用していることを知ったものである。そして、被告の「ETNIES」商品は、その後も継続して輸入、販売され、これらの業者の宣伝広告活動によって、被告の「ETNIES」商標は、スケートボード関連商品や運動靴を取り扱う業者及び若者を中心とする一般需要者の間において、スケートボード関連商品について、スケートボードの本場の米国カルフォルニア発祥のブランドとして著名なものとなったものであると認められる。
以上のとおり、被告の「ETNIES」商標は、本件商標の出願時である平成4年(1992年)1月までに、米国内におけるスケートボード関連商品の販売業者、及び若者を中心とする一般需要者の間で著名なものとなっており、我が国においても、被告の引用商標を使用した商品は、スケートボードの本場の米国カルフォルニアにおける有名なブランドとして、スケートボード用靴、スケートボード関連商品を扱う販売業者の注目を集めており、複数の業者において現に輸入、販売されていたのであるから、引用商標は、これらの取引者の間において広く知られていたものと推認するに難くなく、これと同旨の審決の認定に誤りはないものと認められる。また、近年のファッション性、高級性を志向する若者は、スケートボードの世界チャンピオンなど有名な選手が使用するものと同じブランドのスケートボード関連商品を身につけて市中に出ることを好み、スケートボードの本場の米国カルフォルニアにおけるブランドには興味があるものと推認することができるから、我が国の若者を中心とする一般的な需要者の少なからざる範囲で、被告の引用商標は知られるに至っていたものと推認することができる。
(2) 原告は、本件商標が出願された平成4年(1992年)1月当時、被告の引用商標は、消費者においてはもちろん、スケートボード用靴を取り扱う業者においても知られておらず、周知性など全く有しておらず、その根拠として、1992年1月当時、日本におけるかなりのシェアのスケートボード用靴の輸入、卸売を行っていた会社の担当者(甲第26号証、第36号証)、及び1992年1月当時、スケートボード用靴を販売していた多数の販売業者(甲第27号証)において、被告の引用商標について、全く知らなかったという報告書を作成している旨主張している。
しかしながら、甲第27号証は、本訴提起後の平成13年に作成されたものであって、平成4年1月当時から長期間が経過しているものであり、その内容をみても、いずれも「平成4年当時、スケートボード用靴等の商品を取り扱っておりました。・・・「ETNIES」というブランドについては、当時全く聞いたこともありませんでした。その後、「ETNIES」というブランドを知るようになりましたが、それは、株式会社コマリョーのブランドとして知ったものです。」旨の同一の文章が印字された用紙に単に記名印がされているものであり、また、この事実のうち、「その後、「ETNIES」というブランドを知るようになりましたが、それは、株式会社コマリョーのブランドとして知ったものです。」という部分は、上記認定のとおり、我が国においても、「ETNIES」は、米国カリフォルニアの被告の出所に係る商標であり、原告は、その輸入販売元ないし問い合わせ先の一社として我が国の取引者、需要者に認識されていたものにすぎない事実に明らかに反するものであって、上記甲第27号証は、いずれも採用することができない。また、甲第26号証及び第36号証の報告書についてみると、いずれも本訴提起後の平成13年に作成されたものであって、平成4年1月当時から長期間が経過しているものであることに加えて、前者は、我が国において、1991年ないし1992年当時、被告の「ETNIES」商標を付したスケートボード用靴は輸入されていなかったと断定し、後者は、我が国内では、1992年当時スケートボード用靴を取り扱う事業者は、「ETNIES」というブランド名のスケートボードシューズが存在することすら知らないと断定するなど、前記2の(2)エ及びオの認定事実に明らかに反する記載が見受けられることに照らして、いずれも採用することができない。
(3) 原告は、商標法4条1項15号出所の混同のおそれの判断において、
引用商標が周知著名であるか否か、また、本件商標を使用することが引用商標との間で混同のおそれがあるか否かは、引用商標が使用される商品の取引者、需要者を基準としてではなく、本件商標の指定商品の取引者、需要者の認識を基にして決定されるべきであると主張し、さらに周知著名性の判断に当たっては、引用商標が使用される商品の取引者、需要者に対し周知著名となっているかではなく、原告が登録した登録商標の指定商品に関する取引者、需要者にとって周知著名か否かを判断すべきである旨主張している。
しかしながら、15号規定の要件の該当性の有無は、前記2の(1)のとおり、
当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他の取引の実情などの諸事情を総合して判断されるべきものであって、これに反する原告の上記主張は、採用することができない。
(4) 原告の取消事由1のその余の主張を併せて考慮しても、上記(1)の認定の妨げにはならず、審決の引用商標の周知著名の認定に誤りを見いだすことはできないから、原告の取消事由1の主張は、採用することができない。
4 取消事由2ないし4(出所の混同を生ずるおそれの判断の誤り)について (1) 上記2(1)に判示した判断の方法によって、商標法4条1項15号規定の「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれ」の有無について、検討する。
まず、原告の登録に係る本件商標と被告の引用商標は、前記1のとおり、同じ「ETNIES」の欧文字を横書きしてなるものであって、同一の構成であると認められる。そして、前記3の(1)のとおり、被告の引用商標「ETNIES」は、本件商標の出願時である平成4年(1992年)1月までに、米国内におけるスケートボード関連商品の販売業者、及び若者を中心とする一般需要者の間で著名なものとなっており、我が国においても、被告の引用商標を使用した商品は、スケートボードの本場の米国カルフォルニアにおける有名なブランドとして、スケートボード用靴、スケートボード関連商品を扱う販売業者の注目を集めており、複数の業者において現に輸入、販売されており、引用商標は、これらの取引者の間において周知性を獲得しており、また、我が国の若者を中心とする一般的な需要者の少なからざる範囲で、被告の引用商標は知られるに至っていたものと認められる。
さらに、前記前記2の(2)に認定の事実によれば、被告が被告の「ETNIES」商品に使用する引用商標「ETNIES」は、独自に創作された造語であり、
かつ、スケートボード関連商品における一般的な需要者である若者はファッション性、高級性を志向しており、引用商標「ETNIES」は、スケートボードの世界チャンピオンであり、スケートボードの本場の米国カルフォルニアに在住する被告がデザインしたことを示すブランドとして高い顧客吸引力を有するものとみることができる。
そして、引用商標が使用されているスケートボード用靴のうちの特殊なものは、
旧第24類の「運動具」に該当するものであるが、引用商標が使用されるスケートボード用靴で通常の運動靴と変わりのない商品は、本件商標の指定商品中の「はき物(運動用特殊靴を除く)」中の「運動靴」に該当するものであり、かつ、この商品やその他のスケートボード関連商品は、若者を中心として広い需要者層を有しているものと認められるから、本件商標の指定商品の取引者及び需要者層と相当程度の重なりがあるものとみると推認することができる。さらに、上記2の(2)のとおり、近年のファッション性、高級性を志向する若者の間では、スケートボードの世界チャンピオンなど有名な選手が使用するものと同じブランドのスケートボード関連商品を身につけて市中に出ることが流行しており、被告が「ETNIES」商標を使用して販売する商品の分野も拡充していることが認められるのであるから、
前記2の(1)に判示した広義の混同が生ずる商品の範囲は、相当程度広いものとみるのが相当である。
以上の諸事情を総合的に考慮して、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準とすれば、本件商標の出願時において、本件商標をその指定商品に使用したときには、当該商品が本件商標と同一の構成からなる引用商標を使用する被告ないし被告との間で密接な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれが生ずることを首肯することができる。前記2の(2)クのとおり、本件商標の出願後の平成9年に、米国のVANS社が日本で「ETNIES」商標が付されて販売されている原告の商品「靴」の出所について、それがあたかも被告の関係会社であるSole Technology社の取り扱いに係るものであるかのように現実に出所の混同をしたことは、このことを裏付けるものであるということができる。
したがって、これと同旨の審決の判断に誤りはなく、審決が本件商標の登録につき、商標法4条1項15号の規定に違反してされたものであり、取り消すべきであると判断したことは相当であるというべきである。
(2) 原告は、審決が本件商標の指定商品中の「はき物(運動用特殊靴を除く)」中の「運動靴」は、「スケートボード用靴」と用途、需要者層などを共通にする互いに関連の深い商品である旨の認定について誤りである旨主張し(取消事由2)、また、審決の15号の該当性判断における総合判断は誤りである旨主張しているが(取消事由4)、上記(1)のとおり、審決の認定、判断には誤りがないものと認められる。
また、原告は、審決が15号の出所の混同を生ずるおそれの要件の判断において、我が国のスケートボード用具に関わる当業者間における出所の混同を生じさせるおそれの有無を問題としているのは誤りである旨主張している(取消事由3)。
甲第1号証によると、確かに審決は、原告が指摘するとおり、本件商標について、「我が国のスケートボード用具に関わる当業者間において、あたかも請求人(被告)あるいはその関係者の取り扱いに係る商品のごとく商品の出所について誤認・混同を生じさせるおそれがある」旨の説示をしているものと認められるが、この説示部分は、上記最判12年7月11日の判示を引用した後に、本件商標の指定商品と引用商標が使用される商品との関連性を説示した後に記載されたものであるから、両商品に共通する取引者、需要者の意味で、上記の記載をしたものと解釈することも可能である。また、その審決の判断内容及び結論において誤りがないことは、上記(1)のとおりである。
したがって、審決には、これを取り消すべき違法があるということはできず、原告の上記主張も採用することができない。
(3) 以上のとおり、原告の取消事由2ないし4の主張は、いずれも採用することができない。
5 結論 以上のとおり、原告主張の審決の取消事由はすべて理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 橋本英史
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