関連審決 | 審判1998-4904 |
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関連ワード | 識別力 / 役務の提供 / 識別機能 / 指定役務 / 記述的商標(3条1項3号) / 普通に用いられる方法 / 品質誤認(4条1項16号) / 観念(観念類似) / 取引の実情 / 社団法人 / 継続 / |
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事件 |
平成
13年
(行ケ)
72号
審決取消請求事件
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原告 株式会社リコー 訴訟代理人弁護士 稲元富保 被告 特許庁長官及川耕造 指定代理人 茂木静代 同 酒井福造 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2001/11/13 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は、原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成10年審判第4904号について平成13年1月5日にした審決を取り消す。 訴訟費用は、被告の負担とする。 2 被告 主文と同旨 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成8年3月14日、「Image Communication」の欧文字を横書きしてなり、指定役務を第38類「移動体電話による通信、電話通信回線利用加入者の募集及びその代理、テレックスによる通信、電子計算機端末による通信、電報による通信、電話による通信、ファクシミリによる通信、無線呼び出し、電子メール通信、テレビジョン放送、有線テレビジョン放送、ラジオ放送、有線ラジオ放送、報道をする者へのニュースの供給、電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」とする商標(「本願商標」)について商標登録出願(平成8年商標登録出願26978号)をしたところ、平成10年2月17日、拒絶査定を受けたので、これに対する拒絶査定不服審判の請求(平成10年審判第4904号)をしたが、特許庁は、平成13年1月5日、この審判事件について「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をなし、その謄本は同月24日に原告に送達された。 2 審決の理由の要点 審決は、別紙審決書の理由写しのとおり、本願商標は商標法3条1項3号、同法4条1項16号に該当するから、登録は認められないと判断した原査定は妥当なものであって、取り消すべきではないと判断した。その要点は、以下のとおりである。 (1) 本願商標は、「Image Communication」の文字を普通に用いられる方法で書してなるものであるところ、その構成中前半の「Image」の文字は、「(肖)像、画像、形、映像、心象」等を意味し、また、後半の「Communication」の文字は、「伝達、通信」等を意味する語として、各種の英和辞典に記載されており、それぞれ一般に極めてよく知られていると認められる。 (2) しかして、コンピュータの関連分野及び通信関連のうちコンピュータに密接な関連をもつ分野の語が収録されている「英和コンピュータ用語大辞典」(第2版、1996年7月22日 日外アソシエーツ株式会社発行)においては、「Image」の文字は、「画像、像、イメージ」を意味し、「communication」の文字は、「通信、伝送、コミュニケーション」を意味する語として掲載され、これらの語を含む「image data(イメージデータ)」、「image information(イメージ情報)」、「image processor(画像処理プロセッサ)」、「image scanner(イメージスキャナ)」、「data communication(データ通信)」、「digital communication(ディジタル通信)」、「optical communication(光通信)」等の複合語が多数記載されると共に、両者を結合した「image communication」が「画像通信」の意味であることが記載されている。 (3) そして、「画像通信」の意味は、例えば、広辞苑(第5版、1998年1月11日 株式会社岩波書店発行)によれば「主として画像を伝送対象とする通信の一形態。ファクシミリ・テレビジョンなど」を、辞林21(1993年7月1日 株式会社三省堂発行)によれば「画像の伝送を目的とする通信形態。画像情報を走査し、電気信号に変換して送信し、可視像として受信再現する。」と記載されているものである。 (4) そうとすると、本願商標は、上記の意味を有する「Image」の文字と、「Communication」の文字を結合したものと容易に認識、理解されるものであり、全体として「画像通信」の意味を看取させるものである。 (5) してみれば、本願商標をその指定役務について使用した場合、これに接する取引は、需要者は、画像通信又は画像通信を内容とした役務の提供を表示したものと理解するにとどまり、自他役務を識別する標識たる商標とは認識し得ないものとみるのが相当である。 (6) したがって、本願商標は、これを指定役務中、画像通信に関する役務の提供について使用しても、単に役務の質(内容)を表示するにすぎず、前記役務以外の役務に使用した場合は、役務の質について誤認を生ずるおそれがあるものといわなければならず、本願商標を法3条1項3号及び同4条1項16号に該当するとした原査定は妥当なものであって、取り消すべき限りでない。 |
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原告主張の審決取消事由
審決が、(1)本願商標から生じる意味、観念について、「Image Communication」は全体として「画像通信」の意味を看取させるものであると認定し、(2)これを前提として、本願商標の自他役務・商品識別力について取引者、需要者は、本願商標をもって指定役務に使用した場合に「画像通信」又は「画像通信を内容とした役務」を表示したものと理解するにとどまり、自他役務識別標識と認識し得ないと判断し、(3) 本願商標の商標法3条1項3号及び同4条1項16号該当性について、本願商標は、これを指定役務中、画像通信に関する役務の提供について使用しても単に役務の質(内容)を表示するにすぎず(3条1項3号該当)、 これを指定役務中、画像通信に関する役務以外の役務に使用した場合は、役務の質について誤認を生ずるおそれがある(4条1項16号該当)と判断したことは、誤りである。審決は誤った認定判断に基づいて、本願商標の拒絶査定に対する審判請求は成り立たないと結論したものであるから、取り消されるべきである。 1 本願商標から生じる意味、観念について (1) 本願商標の「Image Communication」の「Image」及び「Communication」がそれぞれ日本語に訳した上で、それぞれの意味を結合させて「画像通信」という意味を持つと認識されることはない。 すなわち、我が国における英語の浸透性、汎用性、定着性と迅速を重んじる取引社会における英語の使用方法にかんがみるなら、「Image」から生じる「イメージ」、「Communication」から生じる「コミュニケーション」は、いずれもそのまま日本語化しているということができ、「Image Communication」は、そのまま「イメージコミュニケーション」として受容され、 認識されるものである。これをあえて、「Image」の持つ多様な意味のうちから「画像」という1つを選択し、「Communication」の持つ多様な意味のうちから「通信」という1つを特定した上で、更にこれを結合して、「画像通信」という意味ないし観念であると理解されることはないというべきである。 (2) また、「Image Communication」という用語が我が国において「画像通信」を意味する英語又は外来語として浸透している事実は認められない。「Image Communication」について、審決が引用する「英和コンピュータ用語大辞典」(甲第2号証)には、なるほど「画像通信」という訳が記載されているが、これ以外の各種事典、辞典類には、そもそも「Image Communication」という用語は掲示されていない(甲第3ないし第12号証)のであって、一般的、平均的な取引者・需要者が「Image Communication」をして「画像通信」の意味であると認識することはあり得ない。 (3) 「画像通信」という用語が「Image Communication」という語に英語化されるという事実も認められない。むしろ、「日英西情報通信技術辞典」(甲第4号証)、「情報処理用語大事典」(甲第9号証)において、画像通信という用語は、「visual communication」と訳されている。また、情報通信関連の企業において、「画像受信」或いは「画像通信」という用語は用いられているが、「Image Communication」という用語は用いられておらず(甲第20、第21号証)、「画像」という用語の訳としては「ビジュアル」、「visual」が用いられている。 (4) インターネット上における「Image Communication」の使用例を見ても、原告のホームページが表示される(甲第13、第15号証)か、全く抽出されない(甲第14、第15号証)状況である。 (5) さらに、「イメージコミュニケーション」についての使用例をみると、 「イメージコミュニケーションとしての化粧」(甲第17号証)、インテリアデザイン学科の色彩学としての「イメージコミュニケーション」(甲第18号証)として使用され、「画像通信」を意味するものとしては使用されていない。 (6) 以上からすれば、本願商標の「Image Communication」は、そのまま多種多様な意味を有する「イメージコミュニケーション」として認識されるのであって、「画像通信」という特定の意味ないし観念として看取されるものではないのであって、本願商標が「画像通信」を看取させるとした審決の認定判断は誤っている。 2 本願商標の自他役務・商品識別力について 本願商品からは、その最も自然な訳である「イメージコミュニケーション」が観念され、原告の商標であることが認識される。すなわち、 (1) 原告は、「Image Communication」を本願商標の指定役務(38類)以外の商品及び役務についても出願し、登録を認められている。 本願商標の「Image Communication」を含む商標「IMAGE COMMUNICATION APPLIANCES」についても、本願商標と同じ指定役務38類で登録査定を受けている(甲第210号証) (2) また、原告が所属する情報関連の主たる企業で構成されるサリューション・コンソシアムにおいても、「イメージコミュニケーション」は原告の戦略的ビジョンであると認識されており、同業他社が「Image Communication」を使用する可能性は極めて少ない。 (3) 原告及びその子会社は、「Image Communication」を、原告の「RICOH」と共に、1997年2月ころから、継続的かつ大量に使用しており、「Image Communication」から特定の役務、商品の内容を直感させるような意味が生じ難い状況になっている(甲47〜212)。 (4) 以上のとおり、原告による「画像通信」以外の役務及び商品に関する「Image Communication」の商標権の取得、原告による「画像通信」以外の役務商品に関する「Image Communication」の大量かつ広範な宣伝行為に徴すれば、本願商標に接する取引者・需要者は、本願商標を原告固有の商標として認識するか、「イメージコミュニケーション」という原告による大量の宣伝広告行為によって形成された概念であると認識するのであり、十分に自他役務識別力を有している。 3 本願商標について (1) 法3条1項3項の非該当性について ア 前記2(4)のとおりであるから、本願商標の「Image Communication」は、「画像通信」を直感させるものではなく、取引者、需要者は、本願商標を原告固有の商標として認識するか、「イメージコミュニケーション」という原告によって形成された概念であると認識する。したがって、本願商標は、その指定役務中、画像通信に関する役務に使用しても、単に役務の質(内容)を表示したものではないのであって、商標法3条1項3号に該当しない。 イ 加えて、法3条1項3号に列挙の商標は、商品や役務の内容にかかわるものであるために、現実に使用されあるいは将来使用されるものであることから、 出所識別機能を有しないことが多く、また、これを特定人に独占させることは適切でないために登録することができないとする趣旨である。本願商標は役務の内容に係わって不特定多数の者に現実に使用されている例がないのみならず、原告による多量かつ広範な使用により、将来不特定多数の者によって一般的に使用される可能性もないのであるから、登録を認めても何ら法の趣旨に反するものではない。 (2) 商標法4条1項16号の非該当性について 前記のとおり、本願商標は、「画像通信」を直感させるものではないから、これを画像通信に関する役務の提供以外の役務に使用しても役務の質について誤認を生ずるおそれはなく、商標法4条1項16号に該当しない。もし、「Image Communication」から「画像通信」が看取され、画像通信に関する役務以外の役務に使用する場合には品質誤認を生ずるとすれば、「画像通信」に関しない他の類の役務、商品についても品質誤認を生ずるはずである。にもかかわらず、 多数の類で「Image Communication」の商標登録が認められている事実は、「Image Communication」が「画像通信」を意味するものではないことを特許庁も認めているということである。 |
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被告の反論の要点
原告の主張はいずれも失当であり、審決に所論の誤りはない。 1 本願商標から生じる意味、観念について (1) 「image」、「communication」の各語について ア 「image」及び「communication」の各語は、それぞれ「(肖)像、画像、形、映像、心象」、「伝達、通信」などを意味する極めて平易な英単語として、我が国においてもよく知られている語である。 イ 我が国の通信関連の分野においては、従来からの電話に代表される音声を媒体とした通信に加え、コンピューター技術や半導体技術などの急速な進歩により、文字、図形、静止・動画像、音声等を媒体とした通信、あるいはこれらを組み合わせて行う、いわゆるマルチメディア通信(multimedia communicatoin)といわれる多様な伝達媒体による通信や情報提供サービスが増大している実情にある(乙第1ないし第3号証)。 ウ 上記通信関連の分野において、例えば、「’98’-99年版最新パソコン用語事典」(乙第4号証)によれば、「写真、地図、図面、絵などの画像情報を直接ディジタル・データとして入力する装置」である「画像入力装置」は、「image reader」と英訳され、「画像入力装置」の代表的なものとして「イメージ・スキャナ(image scanner)」があり、その他、「画像再生」、「画像情報」などがそれぞれ「image restoration」、 「image information」のように英訳されている。 また、社団法人電気通信協会、平成4年2月20日初版2刷発行「情報通信基礎用語辞典」(乙第5号証)によれば、「イメージ・スキャナ(image scanner)」は「図形や画像(イメージ)を光学的に読み取り、ディジタル信号に変換する装置である。」との記載が認められ、「イメージ処理(image processing)」は「画像(イメージ)情報を合成したり、加工したり、読みとったり、ファイルしたりする処理をいう。」との記載が認められる。 さらに、甲第7号証(「精説コンピュータ理工学辞典1997年7月25日発行27頁)によれば、「イメージ[image]」は「コンピュータグラフィクスで取り扱うもので、一般に点などで構成する画像をいう。」などの記載が認められ、 甲第9号証(「情報処理用語大事典平成4年11月25日発行80頁)には「イメージ」は「画像」を意味することが記載されている。 一方、前出「’98’-99年版最新パソコン用語事典」(乙第4号証)には、 「通信システム」は「communication system」と英訳されていることが認められ、その他、「通信〜」は「communication〜」と英訳されている(433頁)。また、「マルチメディア通信」についても「multimedia communication」と英訳されている(609頁)。 このように、通信関連の分野においては、「image」の語は「画像」等を意味するものとして、また、「communication」の語は「通信」等を意味するものとして普通に使用されている。 エ そうだとすれば、「image」及び「communication」の語は、前記(1)のように、それぞれ「(肖)像、画像、形、映像、心象」、「伝達、通信」などを意味する英単語として、一般世人によく知られている語であるという事実に加え、我が国の通信関連の分野において、それぞれ「画像」、「通信」等を意味する語として普通に使用されている事実からすると、「Image Communication」の文字よりなる本願商標をその指定役務について使用した場合は、その取引者、需要者をして「Image」と「Communication」の2語を結合したものと理解させる場合も決して少なくなく、このような場合には、「画像通信」の意味を表したものと認識されるというべきである。 (2) 「image communication」の語句について ア 「image communication」の語句は、「画像通信」を意味する用語として掲載されている事実がある(甲第2号証)。 さらに上記以外にも、@日外アソシエーツ株式会社、1997年1月28日第1刷発行「和英コンピュータ用語大辞典第2版」(乙第6号証)には、「画像通信」の英訳として「image communication」の語句が記載されている。 A前出「’98’-99年版最新パソコン用語事典」(乙第4号証)の「画像通信システム」の項(255頁)には、その英訳として「image communication system」の語句が記載されており、その意味するところは、「ネットワークを利用して画像情報を通信するシステムをいう。画像情報は文字・図形、静止画、自然画、動画を含み、通信法としては端末間を互いに通信するものと、センターと端末とを結ぶものがある。」との記載がある。 B株式会社秀和システム、2000年10月1日第2版第1刷発行「標準パソコン用語事典」の「画像通信システム」の項(118頁)にも、その英訳として「image communication system」の語句が表示されている(乙第7号証)。 C甲第4号証(日英西情報通信技術用語辞典1997年3月12日発行46頁)に掲載されている「医用静止画像通信」は、「medical image communication」との英訳が付されていることが認められる。 Dなお、乙第4号証と同じ発行所による、平成5年6月25日第4版第3刷発行「’93’-94年版最新パソコン用語事典」(乙第8号証)においても、「画像通信システム」の項には、その英訳として「image communication system」の文字が表示されていることが認められる。 上記事実に加え、前記1で述べた通信関連の分野において、「image」及び「communication」の語が、それぞれ「画像」、「通信」等の意をもって普通に使用されている事実を併せ考えると、「image communication」の文字全体からは、「画像通信」なる意味を容易に理解させるにとどまるものであって、通信関連の分野にあっては格別顕著なものということはできない。 イ なお付言すれば、「イメージコミュニケーション(image communication)」の語句は、「デジタル情報の技術が格段と進歩した。・・・ 中でも、絵や写真、文字、音声、数値など、人が知覚でき、人のもつ知識を通してその意味を理解することができるイメージ情報に注目が集まる。今日、 イメージコミュニケーション(image communication)は新しい世界を創造すると言われている。」(乙第9号証)、「・・・は、イメージング半導体企業に対し、画像効果をどんなアプリケーションにも組み込むことができる技術を提供します。・・・携帯電子機器でのイメージコミュニケーションを可能にするために、・・・」(乙第10号証)などのように使用されている事実が存在する。 また、原告においても、「イメージコミュニケーション・・・・ネットワークコミュニケーション時代に向けて、リコーがいま進めているのは『絵や写真・文字・数字などのイメージ情報を、誰もが簡単に加工・処理したり、ネットワークで思いのままに』コミュニケーションできる環境づくり。・・・リコーは、コンピューターの情報と、人間が直感的に理解しやすいイメージ情報をつなぐデジタル画像処理を駆使して、コミュニケーションを豊かにする製品、サービス、総合的な環境をお届けしたい・・・」(乙第11号証)との宣伝広告で「イメージコミュニケーショ」を「画像通信」の意味合いをもって使用しているばかりでなく、甲第43号証(5頁2行目)にも、「イメージ・コミュニケーションは、あらゆる形式の文字、 数字、写真、イラスト、音声を無制限にやりとりするためにもっとも簡単な形式--すなわちイメージで--誰もが簡単に作成、変更、処理できるようなオフィス環境を構築」なる記載が認められ、やはり「画像通信」の意味合いをもって使用している。 さらに、「イメージ」、「コミュニケーション」の各語についても、例えば、 「音声やイメージを通して密接なコミュニケーションを。・・・さまざまなメディア(音声、イメージ、映像など)を駆使して、スムーズなコミュニケーションを図ることが可能」(乙第12号証)、「イメージ(映像)を介した人と機械のコミュニケーション」(乙第13号証)などのように使用されている実情にある。 3 本願商標について (1) 商標法第3条第1項第3号該当性について ア 本願商標は、「Image Communication」の文字を書してなるものであるところ、前記1及び2で述べた通信関連分野の実情からすれば、 これをその指定役務中、特に画像を媒体とした通信が一般的、あるいは可能と認められる役務について使用したときは、需要者をして、「画像通信」なる意味をもって役務の質(内容)を表したと理解させるにとどまり、自他役務の識別標識たる商標とは認識され得ないというべきものであり、このような本願商標を特定人たる原告に独占使用させることは公正な競業活動を阻害するおそれがあり、したがって、 本願商標は独占適応性に欠けるものといわざるを得ない。 イ 原告は、「本願商標とその構成を同じくする商標が指定役務の区分第38類以外の区分において登録されている。」「情報関連の企業の間でも『イメージコミュニケーション』は原告の戦略的ビジョンであると認識されているから、同業他社が『Image Communication』を使用する可能性は極めて少ない。」「原告及びその子会社は本願商標を『RICOH』とともに1997年2月ころから使用しているから、本願商標は特定の役務、商品の内容を直感させる意味が生じ難い。」などと主張する。 しかしながら、問題は、本願商標が役務の区分第38類の通信の分野において、 その取引者、需要者にどのように認識されるかであり、本願商標は、通信の分野で「画像通信」の意を理解させ自他役務を識別する機能を有していないと認識させるものである以上、第38類以外の商品又は役務の区分で登録された事実をもって、 本願商標が第38類の通信の分野においても自他役務の識別機能を有すると主張することは、該役務の取引の実情を全く無視したものであり、かつ、無意味な主張といわざるを得ない。(なお、第38類で登録された「IMAGE COMMUNICATION APPLIANCES」商標は、本願商標と構成する文字において異なるものであるから、本件とは事案を異にするものというべきである。) また、前記したように、「イメージコミュニケーション」ないし「Image Communication」についての原告の使用は、「画像通信」を意味するがごとくの使用であり、「戦略的ビジョン」であるといっても、企業の一戦略として「画像通信」を意味する「イメージコミュニケーション」ないし「Image Communication」なる事業を推し進めていく意味合いを理解させるにとどまるものといわざるを得ないし、パンフレット等における「Image Communication」の使用にしても、常に大きく書された「RICOH」の文字の下に、極めて小さく表示されているにすぎず、少なくとも、本願商標に係る指定役務の分野にあっては、前記したように、「image communication」の語ないし「image」と「communicat ion」の2語を結合させたものが「画像通信」を意味するものとして理解されている実情からすれば、自他役務の識別機能を有しないというべきである。 (2) 商標法4条1項16号該当性について ア 前記したように、本願商標の指定役務である通信関連の分野において、 画像による通信が普通に行われている実情にあって、「画像通信」の意を容易に理解させる本願商標をその指定役務中、一般的には「画像通信」が行われないと考えられる「ラジオ放送」等や、「画像通信」が可能であっても、その機能が付加されていないような通信、及びその機器の貸与等について使用した場合は、これに接する取引者、需要者をして、該役務があたかも「画像通信」が可能であるかのように役務の質について誤認を生じさせることは明らかである。 イ 原告は、本願商標と同一の綴り文字よりなる商標が第38類以外の商品又は役務の区分で登録されたのであるから、役務の質の誤認は生じない旨主張する。 しかしながら、本願商標は、役務の区分第38類に登録出願されたものであり、 該第38類は、概ね通信及びそれに関連した役務についての区分であり、したがって、第38類以外の区分において、「画像通信」の意を容易に理解させる本願商標が、役務の質もしくは商品の品質の誤認について、全く問題とならないような場合であっても、第38類においては役務の質の誤認が生ずる場合があり得るのは当然のことであり、本願商標が第38類において役務の質の誤認が生ずることは前記のとおりであるから、原告の主張は失当である。 |
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当裁判所の判断
1 本願商標から生じる意味、観念について (1) 本願商標は、「Image Communication」の欧文字を普通に用いられる方法で書してなるものであること、その構成中の「Image」の文字が「(肖)像、画像、形、映像、心象、表象、イメージ、概念、観念、印象」などの意味を持つ語として、「Communication」の文字が「伝達、コミュニケーション、心の通じ合い、連絡、通信」などの意味を持つ語として、それぞれ各種の英和辞典に記載され、上記の意味を持つ語として一般世人によく知られていることは当事者間に争いがない (2) 本件証拠によれば、本願商標の指定役務に関連する通信関連の分野、特にコンピュータ技術を応用した情報通信に関連する用語事典類には、「image(イメージ)」及び「communication(コミュニケーション)」の各語に関連して、次のような説明ないし用例が記載されていることが認められる(対応する語に下線を付した。)。 ア 「image communication」の訳語として「画像通信」を当てた例 ・甲第2号証「英和コンピュータ用語大辞典」(日外アソシエーツ株式会社1996年発行):「image communication」の語が掲載され、訳語として「画像通信」の語が当てられている。 イ 「画像通信」に対応する訳語として「image communication」を当てた例 ・乙第4号証「最新’98’-99’年版パソコン用語事典」(株式会社技術評論社平成10年発行)」:見出し語として「画像通信システム image communication system」を掲載し、「ネットワークを利用して画像情報を通信するシステムムをいう。」と説明している。 ・乙第6号証「和英コンピュータ用語大辞典第2版」(日外アソシエーツ株式会社1997年発行):「画像通信 image communication」を見出し語として掲載している。この他、「画像 処理プロセッサ image processor」、「画像 データベース image database」、「画像伝送 image transmission」などの見出し語を掲載している。 ・乙第7号証「最新2001年版 標準パソコン用語事典」(株式会社秀和システム2000年発行):「画像通信システム image communication system」の見出し語を掲載するほか、「画像 認識 image recognition」等々の見出し語を掲載している。 ・乙第8号証「 ’93’-94年版最新パソコン用語事典」(株式会社技術評論社平成5年発行): 「画像通信システム image communication system」の見出し語を掲載し、「ネットワークを利用して画像情報を通信するシステムをいう。」と説明している。 ・甲第4号証「日英西情報通信技術用語辞典」(株式会社朝倉書店1997年発行):「医用静止画像通信」の英訳として「medical image communication 」の語を当てている。 ウ 「image(イメージ)」を含む複合語中の「image(イメージ)に対応する日本語として「画像」の語を当てた例、「画像」に対応する英語として「image(イメージ)」を当てた例、及び「image(イメージ)」を「画像」と説明している例 ・甲第5号証 映像メディア学会編「映像情報メディア用語辞典」(株式会社コロナ社1999年発行): 「イメージ スキャナ」を「画像 入力装置」、 「画像雑音」を「image noise」、「画像 情報」を「image information」、「画像処理」を「image processing」、 「画像表示」を「image display」と訳出し、「イメージ センサ」を「画像情報を電気信号に変換するデバイス」、「イメージ ガイド」を「・・・画像が他端面に導かれるようにした光学装置」と説明している。 ・甲第7号証「精説コンピュータ理工学辞典」(共立出版株式会社1997年発行):見出し語「イメージ image 」につき「コンピュータグラフィクスで取り扱うもので、一般に点などで構成する画像をいう。」と説明し、見出し語「イメージ処理 〔Image Processing〕」につき「画像 処理ともいい」と説明し、「イメージスキャナ〔image scanner〕」を「固定した画像・・・をコンピュータに直接取り込む装置」と説明し、「画像 入力〔image input〕」を「画像 をスキャナなどでコンピュータに取り込み、画面に表示すること」と説明している。 ・甲第8号証「Computing辞典」(サイエンス社1996年発行):見出し語「画像処理(image processing,picture processing)」を掲載している。 ・甲第9号証「情報処理用語大事典」(オーム社平成4年発行):「イメージ image」の見出し語の下に、同義語として「画像」を挙げている。 ・前出乙第4号証:「イメージ・スキャナ image scanner→ 画像入力装置」との記載、「イメージ ・センサ」の項目に「→ 画像 入力装置」との記載がある。「イメージ登録」を「画像 情報を・・・読み込んで保存・・・」と説明する。このほか、「画像圧縮 image compression」、「画像再生 image restoration」、「画像 強調 image enhancement」、「画像 情報 image information」などの記載がある。 エ 「communication(コミュニケーション)」を「通信」の意味で使っている例 ・前出乙第4号証:「通信規約 communication protoclo」、「通信システム communication system」、「通信ソフト communication software」等々、「通信〜」を英語で「communication ○○」と表した多数の複合語が見出し語として掲載されている。 (3) 以上に挙示した辞典類中の記述及び用語例によれば、通信に関連する分野、特にコンピュータ技術を応用した通信に関連する分野においては、「image」が「画像」ないし「画像情報」を意味する語として普通に使われ、また、「communication」が「通信」を意味する語として普通に使われ、「image」の語と他の英語を結合した複合語が日本語では「画像○○」と表され、 「communication」の語と他の英語を結合した複合語が日本語ではそのまま、「通信○○」あるいは「○○通信」と表される例が極めて多いことが認められる。そうすると、「image」の語と「communication」の語を結合してなる「Image Communication」の語が通信に関連する分野の役務について使用された場合には、これに接した取引者・需要者に「画像通信」という意味を直感させることが多く、「Image Communication」からは「画像通信」の観念が極めて容易に生じるというべきである。 (4) 原告は、我が国における英語の浸透性、汎用性及び定着性と迅速を重んじる取引社会における英語の使用方法にかんがみれば、「Image」及び「Communication」の各語はそのまま日本語化しているというべきであり、 「Image Communication」はそのまま「イメージコミュニケーション」として受容され認識されるのであって、あえて各語の持つ複数の意味の中から、「画像」及び「通信」という特定のものを選択し結合した「画像通信」の意味ないし観念に理解されることはない、「Image Communication」という用語が「画像通信」を意味する外来語をして定着している事実はない、 などと主張する。 しかし、こと通信関連の分野に関する限り、前記(2)で挙げた証拠によれば、「Image」及び「Communication」の各語は、他の分野におけるよりも、「画像」及び「通信」を意味する語として使われることが多いことが認められるのであって、両語からは容易に「画像」及び「通信」の観念が生じるというべきである。そして、このことと、2つの英単語を組み合わせた英熟語がそのまま各語に対応する日本語を組み合わせた熟語として通用する例が多いことを考慮すると、 「Image Communication」が「画像」及び「通信」を結合した「画像通信」の意味に極めて容易に理解されるものであることは否定し難いところである。 また、原告は、「画像通信」が「image communication」と英訳されている事実はなく、「画像通信」の英訳は「visual communication」であると主張するが、「画像通信」の訳語として「Image Communication」の語が当てられている例も多く存在していることは前記(2)のイのとおりであり、「Image Communication」から「画像通信」という観念が容易に生じることを否定することはできない。 また、 原告は、「イメージコミュニケーション」という用語が画像通信とは全く違う意味で使用されている例(甲第17、第18号証)を指摘するが、これらの例があるとしても「Image Communication」から「画像通信」という観念が容易に生じ得ないとすることもできない。 (5) 以上によれば、本願商標の「Image Communication」の文字は「画像通信」の意味に認識、理解されることが多いというべきであって、 審決が、本願商標は画像等を意味する「Image」の文字と通信等を意味する「Communication」の文字を結合したものと容易に認識、理解され、 全体として「画像通信」の意味を看取させるものであると判断したことに誤りはないというべきである。 2 本願商標の自他商品識別力について (1) 原告は、本願商標は原告及びその子会社によって継続的かつ大量に「画像通信」及びそれ以外の役務及び商品にも使用されていることなどを理由として、取引者・需要者は、本願商標を原告固有の商標として認識するか、「イメージコミュニケーション」という原告による大量の宣伝行為によって形成された概念と認識するものであるから、本願商標には自他役務識別力があると主張する。 (2) 原告が上記の主張を裏付ける証拠として提出したカタログ、パンフレット、雑誌中のカラー広告、ポスター、中吊り広告及びホームページ広告(甲第49ないし第68号証、第70ないし第201号証、第205から第208号証)には、それらの表紙又は広告の上部右隅又は左隅(ごく一部のもの〔甲第173、196号証〕では下部左隅)にデザイン化した書体で「RICOH」の文字を大きく朱又は他の色で横書きし、その下に「RICOH」の文字の幅の範囲に納まるように普通の活字体で「Image Communication」の文字が黒字又は白抜き文字で小さく書されていることが認められる。 しかし、それらの表示態様を見ると、「RICOH」の文字がその大きさ及び色により強い印象を与えるのに較べて、その下部に表示された「Image Communication」の文字は、小さく地味であり、印象が薄い。また、「Image Communication」の文字は、原告の小冊子、紙袋、テレビコマーシャルにも表示されていることが認められるが(甲第69、第202ないし204、第212号証)、それらにおける表示態様も概ね前記と大同小異であって、 「Image Communication」の文字は、「RICOH」の文字に較べて、印象が薄く、それだけで着目され識別標識として認識されることの少ないものであると認められる。これらの表示における「Image Communication」の文字ないし語の表示態様からすると、「Image Communication」が原告固有の商標として認識されて識別力を獲得するに至ったものとは認めることができない。 (3) また、「Image Communication」の標章については、 原告の主張するとおり、原告により多数の商標登録出願がなされ、十数件の商標登録がされていること(甲第25ないし第28、甲第32ないし第42号証)及びサリュテーション・コンソーシアムと称する団体を紹介するホームページ上で「リコーは・・・イメージコミュニケーショ戦略の実現に向けた重要な一歩を踏み出す。」、「これは、リコーのイメージコミュニケーションに関するビジョンを拡げるものです。」等の紹介がなされていること(甲第43号証)が認められるが、これらの事実からは、「Image Communication」という語を原告のいわゆるコーポレートスローガンにしようとする意図が窺われるものの、「Image Communication」の語が原告固有の商標として認識されるに至っているとまで認めることはできない。 以上のとおりであるから、本件全証拠によっても、「Image Communication」の文字ないし語が原告の役務又は商品を表わす標識として認識され、定着して、自他役務識別力を獲得するに至ったという事実は、これを認めることができない。 3 本願商標について (1) 本願商標の商標法3条1項3号該当性について 前記1及び2で認定したところからすれば、本願商標は、これをその指定役務中、特に画像を媒体とした通信が一般的、あるいは可能と認められる役務について使用したときは、「画像通信」という役務の質(内容)を表したものと理解されるにとどまるというべきであり、審決が認定したとおり、自他役務の識別標識たる商標とは認識され得ないというべきものである。また、役務の質(内容)をそのまま記述したに近い「Image Communication」の語は、前記認定(1(2)ア、イ参照)のとおり、通信関連の分野において「画像通信」を意味する一般的な用語として使用されており、これを特定人が独占使用し得る商標権とすることは、好ましくないと考えられる。 原告は、「本願商標とその構成を同じくする商標が指定役務の区分第38類以外の区分において登録されている。」「情報関連の企業の間でも『イメージコミュニケーション』は原告の戦略的ビジョンであると認識されているから、同業他社が『Image Communication』を使用する可能性は極めて少ない。」「原告及びその子会社は本願商標を『RICOH』とともに1997年2月ころから使用しているから、本願商標は特定の役務、商品の内容を直観させる意味が生じ難い。」などと主張するが、本願商標が指定役務に使用された場合に需要者にどのように認識されるかという観点から考察すると、本願商標は、前記認定のとおり、通信に関連する分野の役務について使用されるときは「画像通信」の意を認識、理解させるものであって、自他役務を識別する機能を有していないというべきである。 なお、原告が指摘する「Image Communication」の文字標章が第38類以外の商品又は役務の区分で登録された事実は、役務・商品を異にする分野に関することであって、本願商標の指定役務である第38類の役務について、 本願商標が自他識別力を有しないとの認定を左右し得るものではない。また、「イメージコミュニケーション」ないし「Image Communication」を原告が使用してきた事実によっても、いまだ、本願商標が自他役務・商品識別力を獲得するに至っていると認め難いことは、前記2に判示したとおりである。 (2) 商標法第4条第1項第16号該当性について 前記したように、本願商標の指定役務である通信関連の分野において、画像による通信が普通に行われている実情にあって、「画像通信」の意を容易に理解させる本願商標をその指定役務中、一般的には「画像通信」が行われないと考えられる「ラジオ放送」等や、「画像通信」が可能であっても、その機能が付加されていないような通信、及びその機器の貸与等について使用した場合は、これに接する取引者、需要者をして、該役務があたかも「画像通信」が可能であるかのように役務の質について誤認を生じさせることは明らかである。 原告は、本願商標と同一の綴り文字よりなる商標が第38類以外の商品又は役務の区分で登録された例を挙げて、役務の質の誤認は生じない旨主張する。しかしながら、第38類以外の区分において「画像通信」の意を容易に理解させる「Image Communication」の語が使用され、役務の質もしくは商品の品質の誤認が問題にならない場合であっても、概ね通信及びそれに関連した役務についての区分である第38類において「Image Communication」がその指定役務に使用された場合には、役務の質(内容)の誤認が生ずる場合があり得るのは当然のことであるから、原告の主張は採用することができない。 4 以上のとおりであるから、原告主張の取消事由1から3は、いずれも理由がなく、その他本件審決を取り消すべきは理由は見出せない。よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 永井紀昭 |
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裁判官 | 古城春実 |
裁判官 | 橋本英史 |