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関連審決 審判1997-19453
関連ワード 識別力 /  指定商品 /  記述的商標(3条1項3号) /  普通に用いられる方法 /  称呼(称呼類似) / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 217号 審決取消請求事件
原告A
訴訟代理人弁理士 奥村茂樹
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 小池隆
同 茂木静代
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/11/08
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が平成9年審判第19453号事件について平成13年3月26日にした審決を取り消す。
前提となる事実(争いのない事実)
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成7年12月18日に、別紙1のとおり、「BOTTLE FLOWER」及び「ボトルフラワー」の文字を二段に併記してなる商標(以下「本願商標」という)について、指定商品を商品及び役務の区分第31類の「ドライフラワー」として、商標登録出願(平成7年商標登録願第131179号)をしたところ、特許庁は、平成9年9月8日、拒絶査定をした。
原告は、同年11月17日、拒絶査定不服審判の請求をし、特許庁は、同請求を平成9年審判第19453号として審理した結果、平成11年5月21日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をした。
原告は、上記審決に対して、東京高等裁判所に訴えを提起し、平成11年(行ケ)第218号として審理された結果、平成12年2月28日、上記審決を取り消す旨の判決が言い渡され、その後確定した。
そこで、特許庁は、更に審理をした結果、平成13年3月26日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下、単に「審決」という)をし、その謄本は平成13年4月11日に原告に送達された。
2 審決の理由 別紙2審決書の写しのとおり、審決は、
「本願商標の構成文字の「BOTTLE」、「ボトル」、及び「FLOWER」、「フラワー」の各文字は、それぞれ「瓶」、及び「花」を意味する語として広く親しまれている語と認められ、「瓶の中で帆船などを組み立てた手工芸品」を「ボトルシップ」(bottle ship)と称している用例にならえば、本願商標は、その指定商品である「ドライフラワー」の需要者に、「瓶状容器に入ったドライフラワー」程度の意味合いを容易に認識させるとみるのが相当であり、本願商標は、そのような「BOTTLE FLOWER」及び「ボトルフラワー」の文字を普通に用いられる方法で書してなるにすぎないこと、朝日新聞1998年5月12日朝刊福岡版(甲第12号証、審判証拠資料1)、朝日新聞1997年9月14日朝刊京都版(甲第3号証、審判証拠資料2)、朝日新聞1995年9月30日朝刊岡山版(甲第4号証、審判証拠資料3)、インターネットの検索結果(http://www.1-100.com/lavieenrose、1999年11月11日採録、甲第13号証、審判証拠資料4)、インターネットの検索結果(http://www.bremen.or.jp/2000年6月16日採録、甲第14号証、審判証拠資料5)、インターネットの検索結果(http://www.saganet.ne.jp/2000年6月16日採録、甲第15号証、審判証拠資料6)を総合すると「瓶状容器に入っているドライフラワー等の花のたぐい」を「ボトルフラワー」といっていることが窺い知れることからすれば、「BOTTLE FLOWER」及び「ボトルフラワー」の文字は、指定商品「ドライフラワー」の取引者、需要者に、「瓶状容器に入ったドライフラワー」程度の意味合いを認識させるにとどまるとみるのが相当であり、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の品質、用途を表示したものと理解、認識するにとどまると認められ、本願商標は、自他商品の識別標識として機能し得ないといわざるを得ないから、商標法3条1項3号に該当するとしてその出願を拒絶した原査定は妥当であり、取り消す限りでない」旨認定、判断した。
原告主張の審決取消事由の要点
審決の理由中、本願商標の構成文字の「BOTTLE」、「ボトル」、及び「FLOWER」、「フラワー」の各文字が、それぞれ「瓶」、及び「花」を意味する語として広く親しまれている語であることは争わないが、審決は、特許庁が職権証拠調べで得た甲第3号証(審判証拠資料2)及び第4号証(審判証拠資料3)に記載された事実を誤認し(取消事由1)、また、原告が提出した甲第5ないし第11号証(審判甲第5ないし第11号証)に関して何らの判断もせず(取消事由2)、
さらに、本件各証拠(甲第3ないし第15号証)の証拠力の評価を誤った結果、本願商標が自他商品の識別標識として機能し得ないものであり、商標法3条1項3号に該当するとの誤った判断に達したものである(取消事由3)から、取り消されるべきである。
1 取消事由1(甲第3、第4号証に記載された事実の誤認) 甲第3号証(審判証拠資料2)は、「ペットボトルを組み合わせて花が咲く様子を再現してみせる」ことを「ボトルフラワー」といっているものである。また、甲第4号証(審判証拠資料3)は、「バイオ技術を使って、瓶の中でサボテン、オリヅルラン、ポトス、ドラセナ等を栽培する」ことを「ボトルフラワー」といっているものである。すなわち、甲第3、第4号証の記載に基づけば、「ボトルフラワー」は、「瓶状容器に入ったドライフラワー」の意味には用いられていない。
したがって、甲第3、第4号証の記載に基づいて、本願商標が、「瓶状容器に入ったドライフラワー」を認識させるとの審決の解釈は誤っており、審決には事実誤認の違法がある。
2 取消事由2(甲第5ないし第11号証についての判断遺脱) 甲第5ないし第11号証(審判甲第5ないし第11号証)は、「瓶状容器に入ったドライフラワー」なる商品を取り扱っている者が発行しているカタログや書籍等であるが、これらのいずれにも、これが「ボトルフラワー」であるとは説明されていない。すなわち、甲第5ないし第11号証に基づけば、「瓶状容器に入ったドライフラワー」なる商品を取り扱っている者(取引者)によって、これが「ボトルフラワー」と称される品質のものであるとは認識されていない。
しかるに、審決は、この甲第5ないし第11号証に関して、何らの判断もしておらず、判断遺脱の違法がある。
3 取消事由3(本願商標の自他商品識別力に関する判断の誤り) (1) 本願商標が自他商品識別力を有するか否かは、証拠に基づいて判断しなければならない。この際、恣意的な証拠の取捨選択を行ってはならず、各証拠の証拠適格や証拠力によって、その取捨選択を行わなければならない。
本件で提出されている各証拠(甲第3ないし第15号証)の証拠力は、以下のとおりである。
ア 甲第3号証 上記のとおり、甲第3号証は、ペットボトルで花の形をあしらったものを、「ボトルフラワー」と称している。「瓶状容器に入ったドライフラワー」のことを「ボトルフラワー」と称しているのではない。すなわち、「瓶状容器に入ったドライフラワー」以外のものを「ボトルフラワー」と称している事実が、甲第3号証には示されているのである。この事実は、「ボトルフラワー」は、「瓶状容器に入ったドライフラワー」のことを指し示さないという証拠である。したがって、甲第3号証に基づけば、指定商品ドライフラワーに「ボトルフラワー」なる商標を付した場合、自他商品識別力を有すると認定することができる。
したがって、甲第3号証は、本願商標が自他商品識別力を有するとの認定に役立つ証拠である。
イ 甲第4号証 上記のとおり、甲第4号証は、「瓶状容器内で生花を咲かせたもの」を「ボトルフラワー」と称している。「瓶状容器に入ったドライフラワー」のことを「ボトルフラワー」と称しているのではない。すなわち、「瓶状容器に入ったドライフラワー」以外のものを「ボトルフラワー」と称している事実が、甲第4号証には示されているのである。この事実は、「ボトルフラワー」は、「瓶状容器に入ったドライフラワー」のことを指し示さないという証拠である。したがって、甲第4号証に基づけば、指定商品ドライフラワーに「ボトルフラワー」なる商標を付した場合、自他商品識別力を有すると認定することができる。
したがって、甲第4号証は、本願商標が自他商品識別力を有するとの認定に役立つ証拠である。
ウ 甲第5ないし第11号証 上記のとおり、甲第5ないし第11号証は、「瓶状容器に入ったドライフラワー」なる商品を扱っている者が発行しているカタログや書籍等である。ここには、
「瓶状容器に入ったドライフラワー」を「ボトルフラワー」と称している事実は無い。
したがって、甲第5ないし第11号証は、本願商標が自他商品識別力を有するとの認定に役立つ証拠である。
エ 甲第12、第13号証(審判証拠資料1、4) 甲第12、第13号証には、「瓶状容器に入ったドライフラワー」のことを「ボトルフラワー」と称している事実が記載されている。したがって、甲第12、第13号証だけを参酌すれば、「ボトルフラワー」は自他商品識別力を有しないとの認定に役立つ証拠ということになる。しかしながら、他方、甲第17号証には、甲第12、第13号証で使用している「ボトルフラワー」を含む標章を商標として出願している事実が認められる。
したがって、甲第12、第13号証及び第17号証を総合的に参酌すれば、「ボトルフラワー」の語は商標として、すなわち、自他商品識別標識としての商標として、使用されているものと認められる。
よって、甲第12、第13号証に基づいて、本願商標が自他商品識別力を有しないと認定するのは疑問である。
オ 甲第14、第15号証(審判証拠資料5、6) 甲第14号証は、インターネット検索の結果であり、http://www.bremen.or.jp/2000年6月16日採録の写しであるが、平成13年8月17日に、http://www.bremen.or.jpにアクセスしてみたが、甲第14号証に記載された内容のものを採録することができなかった(甲第32号証参照)。
甲第15号証も、インターネット検索の結果であり、http://www.saganet.ne.jp/2000年6月16日採録の写しであるが、平成13年8月17日に、http://www.saganet.ne.jpにアクセスしたが、これはhttp://www.fukuokanet.ne.jpに移動しており、この移動先にアクセスしてみたが、「ボトルフラワー」なる商品は存在していなかった(甲第33号証参照)。
したがって、甲第14、第15号証は、証拠力の極めて弱いものであり、これに基づいて、本願商標が自他商品識別力を有しないと認定するのは疑問である。
すなわち、この甲第14、第15号証のように、インターネットから採録されたものは、その証拠力を注意深く検討しなければならない。インターネットに掲載されているものは種々雑多である。例えば、官公庁や上場企業が、情報公開として掲載する信頼性のあるページもあれば、個人が興味本位や趣味的に掲載する信頼性のないページもある。前者のページには証拠力はあるが、後者のページに証拠力があるかどうかは十分な検討が必要であると考える。本件に則して言えば、甲第14、
第15号証は、後者の部類に属するものであり、十分な検討が必要である。そして、甲第14、第15号証は、平成13年8月17日現在では、存在しないものなのであるから、十分な証拠力があるとは認められない。要するに、個人のページは、何でも有りの世界であり、ここに記載されている情報を直ちに証拠力ありと認めることはできない。
また、本件のように、商標の自他商品識別力の有無を判断する場合には、インターネットに掲載された時期も検討する必要がある。なぜなら、商標登録出願後にインターネットに掲載された場合には、当該出願に係る商標の自他商品識別力を失わせるという悪意をもって、あるいはそのような悪意がなくとも、模倣(単純なコピー)や流用によってインターネットに当該商標を多数掲載することも可能であるからである。特に、個人が興味本位や趣味的に掲載するページは、一般的な問題ではあるが、悪意や模倣に満ちており、社会問題ともなっている。すなわち、甲第14、第15号証はいずれも本件商標登録出願後に掲載されたものであり、証拠力は不十分であるといわざるを得ない。
(2) 以上アないしオの本件における各証拠の証拠力をまとめると、以下のとおりになる。すなわち、本願商標が自他商品識別力を有すると認定するのに役立つ証拠は、甲第3ないし第11号証である。一方、自他商品識別力を有しないと認定するのに役立つ証拠は、甲第12ないし第15号証である。しかしながら、甲第12、第13号証は、甲第17号証を併せて勘案すれば、本願商標が自他商品識別力を有しないと認定するのは疑問である。また、甲第14、第15号証は、インターネットで採録されたものであり、その証拠力は不十分であり、これをもって、本願商標が自他商品識別力を有しないと認定するのは疑問である。
そこで、甲第3ないし第11号証と甲第12ないし第15号証とを比較すれば、
甲第3ないし第11号証の証拠力を重く評価すべきであり、この結果、本願商標は自他商品識別力を有するとの結論に至るべきである。
すなわち、審決は、上記1の取消事由1のとおり、甲第3、第4号証が本願商標の自他商品識別力を肯定する証拠であるにもかかわらず、その記載の事実を誤認した結果、本願商標が自他商品識別力を有しないとの誤った結論に至り、さらに、上記2の取消事由2のとおり、甲第5ないし第11号証の証拠に関する判断を遺脱した違法があり、さらに、上記のとおり、本件各証拠の証拠力の評価を誤った結果、
証拠力が弱く本来採用すべきでない甲第12ないし第15号証を採用して、本願商標が自他商品識別力を有しないとの誤った結論に至ったものということができるから、違法なものとして、取り消されるべきものである。
被告の反論の要点
審決の認定、判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。
1 取消事由1(甲第3、第4号証に記載された事実の誤認)に対して 原告は、「甲第3、第4号証の記載に基づけば、「ボトルフラワー」は「瓶状容器に入ったドライフラワー」の意味には用いられていない。したがって、甲第3、
第4号証の記載に基づいて、本願商標が「瓶状容器に入ったドライフラワー」を認識させるとの解釈は、誤っており、事実誤認の違法がある旨主張する。
しかし、審決の記載をみれば明らかなとおり、審決は、まず本願商標について、
その構成文字(「BOTTLE」「ボトル」の文字は「瓶」、「FLOWER」「フラワー」の文字は「花」を意味する英語及び外来語としていずれも日常親しまれている)及びその指定商品(ドライフラワー)との関係から、「瓶状容器に入ったドライフラワー」程度の意味合いが容易に認識されると認定し、次いで、「ボトルフラワー」及び「フラワーボトル」の文字(語)の使用例(甲第3、第4及び第12ないし第15号証)を挙げて、それらが「瓶状容器に入ったドライフラワー等の花のたぐい」を指称している場合が多いことを摘示して、上記認定に客観性をもたせたものである。そして、これら本願商標より生ずる前記意味合いと、本願商標を構成する「ボトルフラワー」等の文字(語)の現実の使用例を総合勘案して、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の品質、用途を表示したものと理解、認識するにとどまると認め、自他商品の識別標識として機能し得ないと判断したものであって、審決は、甲第3、第4号証の記載のみに基づいて判断しているのでもなければ、これらを除いて判断したわけでもない。
したがって、甲第3、第4号証の記載を誤って解釈したとの原告の主張は失当であり、本願商標について「瓶状容器に入ったドライフラワー」程度の意味合いを認識させるにとどまるとした審決に事実誤認の違法はない。
2 取消事由2(甲第5ないし第11号証についての判断遺脱)に対して 原告は、「甲第5ないし第11号証に基づけば、「瓶状容器に入ったドライフラワー」なる商品を取り扱っている者(取引者)によって、これが「ボトルフラワー」と称される品質のものであるとは認識されておらず、審決は、甲第5ないし第11号証に関して、何らの判断もしておらず、判断遺脱の違法がある旨主張する。
しかしながら、拒絶査定に対する審判において審判請求人が挙げた証拠及び主張について、審決がその全てにわたって論じなければならないわけではない。審決が原告指摘の甲第5ないし第11号証に関して判断を示さなかったのは、これらについて検討しなかったからではなく、結論に到達した判断の過程を明らかにする理由として、その必要がないからである。
すなわち、本願商標については、審決記載のとおり、その構成文字及びその指定商品との関係から、自ずと「瓶状容器に入ったドライフラワー」程度の意味合いが容易に認識されるのであり、また、甲第3、第4及び第12ないし第15号証に示す現実の使用例からも前記意味合いに認識されるのであって、かかる認識は、本願商標に接する取引者、需要者にごく自然に発生するものであり、甲第5ないし第11号証のカタログ、書籍等に「ボトルフラワー」の文字(語)の記載がないからといってその影響を受けるものではない。したがって、この甲第5ないし第11号証の存在をもって、「ボトルフラワー」の文字(語)が「瓶状容器に入ったドライフラワー」の意味合いに認識されないとまで、積極的に否認することはできないというべきであり、結局、当該証拠方法に依拠する原告の上記主張は、本願商標が商標法3条1項3号に該当しないことを裏付けるべき間接的な事情を述べたにとどまるものであり、この点につき、審決において独立して判断を加えなくても、判断遺脱の違法があるわけではない。 3 取消事由3(本願商標の自他商品識別力に関する判断の誤り)に対して 以上の1、2からも明らかなとおり、本件各証拠の証拠力に関する原告の主張は、いずれも当を得ていないものであり、審決が、本願商標について、自他商品の識別標識として機能し得ないといわざるを得ないから、商標法3条1項3号に該当するとしてその出願を拒絶した原査定について取り消す限りでないとした判断に誤りはなく、審決に取り消されるべき違法はない。
理 由1 本願商標及び引用商標の構成及び指定商品について 本願商標が、別紙1のとおり、「BOTTLE FLOWER」及び「ボトルフラワー」の文字を二段に併記して構成され、指定商品を商品及び役務の区分第31類の「ドライフラワー」とするものであることは争いがない。
2 取消事由3(本願商標の自他商品識別力に関する判断の誤り)について 本願商標の構成文字の「BOTTLE」、「ボトル」、及び「FLOWER」、
「フラワー」の各文字が、それぞれ「瓶」、及び「花」を意味する語として広く親しまれている語であることは争いがなく、審決が説示するように、我が国において、室内の装飾品として「瓶の中で帆船などを組み立てた手工芸品」があることは国民一般に広く知られており、これを通常「ボトルシップ(bottle ship)」と称していることは、顕著な事実である。そして、これらの事実に、我が国において、瓶やグラス等の形状の容器の中に、ドライフラワーや生花を入れてアレンジした商品(作品)についても、室内の装飾品として展示、販売等がされていること(甲第4ないし第13号証、第15号証)を総合すれば、本願商標を構成する語は、その指定商品である「ドライフラワー」に使用された場合には、一般的な需要者に対して、「瓶状の容器に入ったドライフラワー」程度の意味合いを容易に認識、理解させるものであるとみるのが相当である。
現に、上記の「瓶やグラス等の形状の容器の中に、ドライフラワーや生花を入れてアレンジした商品(作品)」に関して、ガラス瓶など瓶状の容器の中で生花を咲かせたものを「ボトルフラワー」(甲第4号証)、瓶状の容器にドライフラワーを入れた装飾品を「フラワーボトル」(甲第7号証、第15号証)、「ボトルフラワー」(甲第12、第13号証、第15号証)とそれぞれ称呼している例があることは、このことを裏付けるものであるということができる。
なお、原告は、甲第12、第13号証における「ボトルフラワー」の語の使用について、甲第17号証には、甲第12、第13号証で使用している「ボトルフラワー」を含む標章を商標として出願している事実が認められるから、甲第12、第13号証及び第17号証を総合的に参酌すれば、「ボトルフラワー」の語は商標として使用されているものと認められる旨主張している。しかし、甲第17号証によると、原告が指摘している商標登録出願された標章は、デザイン化された「ラビアンローズ」の文字の下部に、これより小さい文字で「ボトルフラワー」と併記した構成のものであることが認められ、このことに、甲第12、第13号証の記載内容を合わせて考慮すれば、甲第12、第13号証においては、「ラビアンローズ」の語が特別顕著性を備える標章として使用されているのに対して、「ボトルフラワー」の語は商標としての自他商品の識別標識として使用されているとは認めることができないから、原告の上記の主張は採用することができない。また、原告は、甲第14、第15号証の証拠力が不十分であると主張するが、これらは「瓶状容器に入っているドライフラワー等の花のたぐい」を「ボトルフラワー」又は「フラワーボトル」と称呼することがあることを示すものであって、それらの掲載内容に照らしても、原告の主張するような信頼性がないことをうかがわせる格別の事情は認められない。
そして、本願商標は、上記のとおり、指定商品である「ドライフラワー」に使用された場合に一般的な需要者に「瓶状の容器に入ったドライフラワー」程度の意味合いを容易に認識、理解させる「BOTTLE FLOWER」及び「ボトルフラワー」の文字を、普通に用いられる方法で書してなるにすぎないと認められるから、本願商標は、指定商品「ドライフラワー」の取引者、需要者に、「瓶状容器に入ったドライフラワー」程度の意味合いを認識させるにとどまるとみるのが相当である。
そうすると、本願商標をその指定商品「ドライフラワー」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の品質、用途を表示したものと理解、認識するものというべきであるから、本願商標は、自他商品の識別標識として機能し得ず、商標法3条1項3号に該当するものと認められる。
したがって、これと同旨の審決の認定、判断は相当であって、原告が主張するように審決が本件各証拠の証拠力について総合的な評価を誤ったものとは認めることができない。
3 取消事由1(甲第3、第4号証に記載された事実の誤認)について 原告は、甲第3、第4号証の記載に基づけば、「ボトルフラワー」は「瓶状容器に入ったドライフラワー」の意味には用いられていないから、甲第3、第4号証の記載に基づいて本願商標が「瓶状容器に入ったドライフラワー」を認識させるとの解釈は、誤っており、審決には、事実誤認の違法がある旨主張している。
確かに、「ボトルフラワー」の語について、甲第3号証は、ペットボトルを使って花の形状を作成したもの、甲第4号証は、ガラス瓶など瓶状の容器の中で生花を咲かせたものをそれぞれ「ボトルフラワー」と称呼していることが認められ、「瓶状容器に入ったドライフラワー」の意味には用いられていないことが認められる。
しかしながら、被告が指摘するとおり、審決は、まず本願商標について、その構成文字の「BOTTLE」、「ボトル」、及び「FLOWER」、「フラワー」の各文字は、それぞれ「瓶」、及び「花」を意味する語として広く親しまれている語と認められ、「瓶の中で帆船などを組み立てた手工芸品」を「ボトルシップ」(bottle ship)と称している用例にならえば、本願商標は、その指定商品である「ドライフラワー」の需要者に、「瓶状容器に入ったドライフラワー」程度の意味合いを容易に認識させるとみるのが相当であると認定した上で、「ボトルフラワー」及び「フラワーボトル」の文字の現実の使用例について検討して、甲第3、第4号証、第12ないし第15号証のとおり、それらの文字が単に「瓶状容器に入ったドライフラワー等の花のたぐい」を称呼する一般的な用語として使用されていることを説示して、上記認定の裏付けとしているものと認められる。この説示部分は、「ボトルフラワー」及び「フラワーボトル」の文字の現実の使用例について、本願商標の指定商品である「ドライフラワー」に限定することなく、より広く、室内の装飾品として、生花や人造の材料によって花の形状としたものを含め、
「ボトルフラワー」及び「フラワーボトル」の文字が単に「瓶状容器に入ったドライフラワー等の花のたぐい」を称呼する一般的な用語として使用されていることを指摘したものである。そして、審決は、本願商標の構成文字より生ずる上記の意味合いと、本願商標は、そのような「BOTTLE FLOWER」及び「ボトルフラワー」の文字を普通に用いられる方法で書してなるにすぎないこと、さらに、本願商標を構成する「ボトルフラワー」やこれに類する「フラワーボトル」の文字の上記の現実の使用例を総合勘案して、本願商標を構成する「BOTTLE FLOWER」及び「ボトルフラワー」の文字は、指定商品「ドライフラワー」に使用された場合に、その取引者、需要者に、「瓶状容器に入ったドライフラワー」程度の意味合いを認識させるにとどまるとみるのが相当であると判断したのであって、その認定、判断の過程には、何ら誤りはないものと認められる。
このように、審決が甲第3、第4号証に関して事実誤認をしたとの原告の上記主張は理由がないものであり、採用することができない。
4 取消事由2(甲第5ないし第11号証についての判断遺脱)について 原告は、甲第5ないし第11号証に基づけば、「瓶状容器に入ったドライフラワー」なる商品を取り扱っている者(取引者)によって、これが「ボトルフラワー」と称される品質のものであるとは認識されておらず、審決は、甲第5ないし第11号証に関して、何らの判断もしておらず、判断遺脱の違法がある旨主張している。
しかしながら、一般に、審決が審理判断した結果について理由として記載する場合に、拒絶査定に対する不服の事由として請求人が提出した証拠については、その評価等の全てを説示しなければならないわけではなく、その審決の結論が導き出される認定、判断の過程につき客観的にみて合理的であることを示すために必要であると思料される範囲で記載すれば足りるものと解される。
そして、本願商標を構成する「BOTTLE FLOWER」及び「ボトルフラワー」の文字について、指定商品「ドライフラワー」に使用された場合に、その取引者、需要者に、「瓶状容器に入ったドライフラワー」程度の意味合いを認識させるにとどまるとみるのが相当であるとした審決の認定、判断に誤りがないことは、
上記2、3に判示したとおりであって、その説示内容に照らせば、「瓶状容器に入ったドライフラワー」の商品を扱うカタログ、書籍等の中に「ボトルフラワー」の語が使用されていない例がある(甲第5ないし第11号証)という事実によっては、この認定、判断が左右されるものでない(甲第7号証の「フラワーボトル」は、むしろ審決の認定に沿うものともいえる。)ことは、特段の説示を要するまでもなく、明らかであるというべきである。
したがって、審決が原告指摘の甲第5ないし第11号証について、これらの証拠が審決の結論に影響を及ぼさないことについて明確な説示をしなかったとしても、
審決がこれらの証拠の判断を逸脱したものと認めることはできないし、審決を取り消すべき違法があると評価することはできない。
原告の上記主張も失当である。
5 総括 上記2ないし4のとおり、原告の主張は、いずれも採用することができず、本願商標については自他商品の識別標識として機能し得ないといわざるを得ないから、
商標法3条1項3号に該当するとした審決の判断に誤りはないものと認められる。
6 結論 以上のとおり、原告主張の審決取消事由はすべて理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 古城春実
裁判官 橋本英史