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関連審決 審判1986-14405
審判1997-1309
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成13行ケ68審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  識別機能 /  指定商品 /  記述的商標(3条1項3号) /  普通に用いられる方法 /  3条1項6号 /  品質誤認(4条1項16号) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  取引の実情 /  使用許諾 /  存続期間 /  社団法人 /  継続 /  商号 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 212号 審決取消請求事件
原告 三栄商事株式会社
原告 新光産業株式会社
原告 株式会社タツミ
原告 株式会社テザック4名訴訟代理人弁護士 山嵜正俊
同 弁理士 高橋康夫
被告 サプロン建材工業株式会社
訴訟代理人弁護士 大野聖二
同 弁理士 山口栄一
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/10/31
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告ら 特許庁が平成9年審判第1309号事件について平成12年5月1日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は、「スーパーベース」の片仮名文字を横書きしてなり、平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表(以下「旧施行令別表」という。)の区分による第7類「建築基礎用組立鉄筋、その他の金属製建築または構築専用材料」を指定商品とする登録第2713755号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。
本件商標は、昭和58年12月7日に旧施行令別表の区分による第7類「建築または構築専用材料、セメント、木材、石材、ガラス」を指定商品として出願され、平成8年5月31日に設定登録された後、指定商品中、「建築基礎用組立鉄筋、その他の金属製建築または構築専用材料以外の建築または構築専用材料、セメント、木材、石材、ガラス」につき商標権の一部放棄がされ、平成10年12月3日、その旨の本権の登録の一部抹消登録がされたものである。
原告らは、平成9年1月22日、被告を被請求人として、本件商標につき登録無効の審判の請求をした。
特許庁は、同請求を平成9年審判第1309号事件として審理した上、平成12年5月1日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同月29日、原告らに送達された。
2 審決の理由 審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、本件商標は、優れた基礎を意味する「super base」を片仮名文字で表わしたものであって、指定商品中、
住宅等の基礎又は基礎用の材料等に関し、商品の品質、内容を普通に用いられる方法で表示したものであるから、商標法3条1項3号若しくは6号に該当し、又はその意味する商品以外の商品に使用された場合には、その品質について誤認を生ずるから、同法4条1項16号に該当する旨の請求人ら(注、原告ら)の主張に対し、
本件商標は、自他商品識別機能を有すると解するのが相当であり、その指定商品に使用しても商品の品質、用途等を表示するものではなく、かつ、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないから、同法3条1項3号若しくは6号又は4条1項16号に違反して登録されたものではないとした。
原告ら主張の審決取消事由
審決は、原告ら及び被告による本件商標の使用の実態並びに被告と林精工株式会社(以下「林精工」という。)との関係を誤認して、住宅用基礎鉄筋ユニットを取り扱う当業者、需要者の間で、本件商標が被告の商標として広く認識されているとの誤った判断をし(取消事由1)、また、本件商標について自他商品の識別機能を否定できないとの誤った判断をし(取消事由2)、さらに、本件商標を指定商品に使用しても商品の品質について誤認を生じさせるおそれがないとの誤った判断をした(取消事由3)ものであるから、違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(本件商標に対する当業者、需要者の認識についての誤認) (1) 審決は、「遅くとも本件商標の登録査定される時期(注、登録審決がされた平成7年11月15日)までには、『スーパーベース』の語が『住宅用基礎鉄筋ユニット』の自他商品の識別機能を有する商標として継続使用され、上記住宅用基礎鉄筋ユニットを取り扱う当業者、需要者間において、『スーパーベース』の文字からなる本件商標は、被請求人(注、被告)の商標として広く認識されていたものと判断するのが相当である」(審決謄本13頁33行目〜38行目)と認定したが、以下のとおり、誤りである。
(2) 審決は、「林精工株式会社とスーパーベース協会の一社である被請求人(注、被告)は、登記簿謄本によれば、代表者、住所が同じ(但し移転されてはいる)であること(この点は、被請求人は上記林精工株式会社の子会社であると主張している)から、親子会社と認められる」(審決謄本12頁30行目〜34行目)、「日刊工業新聞等の業界紙、住まいの設計等の業界誌の出版物に被請求人或いは件外林精工株式会社は、自社の名称と協会各社名とを表示した『スーパーベース』の広告を掲載し、基礎鉄筋ユニット『スーパーベース』の施工に関する各種技術等全国規模にわたるスーパーベースの宣伝広告に関する活動を継続して行ってきた」(同13頁20行目〜24行目)と認定し、被告と林精工とが親子会社であり、一体であるものとして、林精工による本件商標の使用を被告による本件商標の使用と同視して、上記(1)の認定に及んだものである。
しかしながら、過去において林精工と被告の代表者及び住所が同一であるからといって、林精工と被告とが親子会社であると認定できるものではなく、この点の審決の認定は誤りである。
また、仮に、林精工と被告とが親子会社であるとしても、両社が別個の法人格を有する以上、本件商標の使用や、宣伝広告の効果は両社にそれぞれ個別に帰属するというべきであり、林精工による本件商標の使用を被告による本件商標の使用と同視することはできない。
この点につき、被告は、「木造住宅基礎構築用筋枠」の考案に係る林精工の実用新案権(実用新案登録第1634239号、以下「本件実用新案権」という。)及びこれに基づくノウハウの許諾を基礎として、被告と林精工が本件商標を一体的に管理、使用していた旨主張する。
しかしながら、林精工と日本スーパーベース協会会員との間の本件実用新案権に基づくノウハウの実施契約は、技術的事項に関するものであって、本件商標の使用についての契約は存在しない。本件商標は、同協会が設立された昭和59年7月ころ以降は、同協会が管理し、同協会及び原告らを含む同協会会員が独立して使用してきたものであって、林精工と被告の2社によってのみ一体管理、使用されていたものではない。すなわち、昭和59年7月7日に日本スーパーベース協会が設立され、その決定事項に基き、同協会が雑誌等により全国的にスーパーベース(住宅用基礎鉄筋ユニット)の宣伝広告をし(甲第66号証の16〜21)、また、同協会会員である林精工、原告ら、被告、佐澤金物株式会社及び株式会社札幌山水が、それぞれの販売エリアにおいて、自社商標として独占的に使用し、スーパーベース(住宅用基礎鉄筋ユニット)の宣伝広告を実施していたものである。
なお、本件実用新案権の存続期間は既に終了しており、上記ノウハウの実施契約が原告らを拘束するものでもない。仮に、林精工が上記ノウハウの実施契約の効力を原告らに対し主張し得るとしても、被告がその主張をし得るとする根拠は存在しない。
(3) 本件商標が商標法3条1項3号若しくは6号又は4条1項16号に違反して登録されたものであるかどうかは、登録審決の時点を基準時として判断すべきであり、審決も、「本件商標がこの法条(注、商標法3条1項3号若しくは6号又は4条1項16号)に該当するか否かが判断される時期は、本件審判の審決日(本件商標に関する拒絶査定不服審判の審決日である平成7年11月15日)と解される」(審決謄本11頁35行目〜37行目)とするところである。
ところが、審決は、「件外林精工株式会社と被請求人(注、被告)の新聞広告、新聞記事及びスーパーベース協会の雑誌広告は、基礎鉄筋ユニットに関するものであって、商品名として『スーパーベース』と記載されている。そして、該新聞の発行は昭和58年ないし同60年と認められる(乙第28号証)」(審決謄本12頁25行目〜28行目)との事実を認定し、これを根拠として上記(1)の認定に及んだものである。
そして、上記認定に用いた新聞雑誌(審判乙第28号証、本訴甲第66号証の1〜21)は、その説示のとおり、大部分が昭和58年〜昭和60年発行のものであり、最も新しいものでも昭和61年5月30日発行のもの(甲第66号証の15)である。それ以降に、被告が「スーパーベース」の宣伝広告をしたことを認めるに足りる証拠はない。
それにもかかわらず、審決は、登録審決がされた平成7年11月15日まで被告が「スーパーベース」の宣伝広告をしたとして、上記(1)の認定に及んだものであるから、その認定は誤りであることが明らかである。
(4) 審決は、「スーパーベースの施工実績(売上高)は、被請求人(注、被告)において、昭和62年度に101,199,759、平成4年度に431,780,288、平成8年度に1,027,502,014に達している事実を認めることができる」(審決謄本13頁24行目〜27行目)との事実を認定し、これを根拠として上記(1)の認定に及んだものであるが、審判において、上記スーパーベース(住宅用基礎鉄筋ユニット)の売上金額を認定し得る証拠は、被告が提出した「サプロン建材工業 昭和62年度〜平成8年度スーパーベース売上高」と題する平成9年4月21日付け書面(審判乙第24号証、本訴甲第62号証、以下「被告売上高表」という。)しかなく、審決はこれに基づいて上記売上金額を認定したものと考えられる。
しかしながら、被告売上高表は、会社に作成義務が課された帳簿などではなく、単に年度別に売上高を手書きで記載した書面であって、記載された売上高の裏付けとなるような根拠は何も示されていないから、その証明力はないに等しいというべきである。
したがって、審決が、被告売上高表によって上記売上高を認定したことは、その証明力の評価を誤ったものであり、上記認定も誤りである。
2 取消事由2(自他商品識別機能についての判断の誤り) (1) 審決は、「本件商標は・・・『スーパーベース』の欧片仮名字の構成よりなるところ、いずれも外観上まとまりよく一体として表現され、しかも、全体をもって称呼しても、『スーパーベース』とよどみなく一連に称呼し得るものである・・・その構成中の『スーパー』の文字部分は『極度の、超、高級な』等の意味を表す接頭語で、我が国において親しまれた語であり、『ベース』の文字部分は、
英語で『基本、土台、基地』等を意味する語であるとしても、かかる構成においては特定の品質、用途等を具体的に表示するものとして直ちに理解し得るものともいい難い」(審決謄本14頁12行目〜20行目)、「『スーパー』(SUPER)の文字が『優秀な』『高級な』の意において、商品の品質又は品質誇称表示として随時使用されているものであることは認められるとしても、他方において、該『スーパー』(SUPER)の文字は他の文字と結合して複合語を作る児童でさえ理解できる極めて平易な英語である。・・・これに対して、『ベース』の文字は、上記意味合いを有するところ、本件指定商品との関係において、具体的に商品の品質を表示する語として使用されているとする事実を発見できない」(同頁21行目〜31行目)とした上で、「本件商標は、全体として自他商品の識別機能を否定することはできない」(同頁32行目〜33行目)と判断した。
しかしながら、以下のとおり、審決の上記判断は誤りである。
(2) 本件商標は、英語の「super base」の発音を片仮名文字で表したものであるところ、「ベース」(base)の語が、「基礎」、「土台」を意味する一般的な語であることは、昭和35年株式会社研究社第4版発行の「新英和大辞典」(甲第7号証)、昭和62年集英社発行の「imidas1988」別冊附録「国際化新時代の外来語・略語辞典」(甲第8号証)、平成3年2月10日株式会社学習研究社第2版第6刷発行の「マスコミに強くなるカタカナ新語辞典」(甲第9号証)、平成元年10月10日株式会社旺文社改訂新版発行の「ビジネスマンのためのカタカナ語新辞典」(甲第10号証)、平成3年成美堂出版発行の「平成版カタカナ語新辞典」(甲第11号証)、昭和48年3月20日第8刷発行の「コンサイス外来語辞典」(甲第37号証)及び平成8年12月5日近代図書株式会社発行の「土木英和辞典」(甲第38号証)の各「ベース」(base)の項にその旨の語義が記載されているとおりである。そして、実際に「基礎」、「土台」の意味で使用されていることは、平成6年8月5日株式会社井上書院発行の「逆引き・建築用語辞典」(甲第21号証)に「ベースモルタル」の語が、平成5年5月1日社団法人日本建築学会第8刷発行の「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説」(甲第22号証)に「基礎筋(ベース筋)」の語が、平成3年1月30日社団法人土木学会発行の「学術用語集土木工学編(増訂版)」(甲第23号証)に「ベースコンクリート」の語がそれぞれ掲載されているほか、平成元年11月6日株式会社講談社発行の「日本語大辞典」(甲第68号証)に、「基礎」の語義として「建物の土台。いしずえ。base」と記載されていることにより明らかである。
また、仮に、「スーパー」(super)の語が他の文字と結合して複合語を作るものであるとしても、当該複合語は、「スーパー」(super)の語と結合する前の元の単語に「優れた」、「超越した」、「卓越した」等の意味が加わったにすぎず、一般的用語であることに変わりはない。このことは、例えば、審決が例示する「super car」、「super computer」等の語を考えれば明らかなところである。審決は、「スーパー」(super)の語が他の文字と結合して複合語を作れば、すべて自他商品識別力を有するとするが、そのこと自体が誤りであることは明白である。
したがって、「スーパーベース」(super base)の語は、「より以上の基礎」、「優れた基礎」、「高機能な基礎」という意味を有する一般的用語として普通に用いられ、あるいは用いられ得る記述的表現である。仮に、「スーパーベース」の片仮名文字からなる本件商標の構成が、審決の認定のとおり、外観上まとまりよく、かつ、よどみなく一連に称呼し得るものであるとしても、本件商標に接した者は、当然に英語の「super base」の発音を表記したものと認識し、上記意味内容を容易に理解し得るものである。そして、本件商標は、「建築基礎用組立鉄筋、
その他の金属製建築または構築専用材料」を指定商品とするものであって、上記指定商品中には、各種建築又は構築物に用いられる基礎、土台及びこれらの製造に用いる各種金属製専用材料(基礎用鉄筋、金属製柱等)が含まれているところ、「より以上の基礎」、「優れた基礎」、「高機能な基礎」という意味を有する「スーパーベース」(super base)の語は、これらの商品の用途、品質等を表す一般的な表現であるにすぎず、「本件商標は、全体として自他商品の識別機能を否定することはできない」とした審決の判断は誤りである。
なお、被告は、「タフ」、「ストロング」、「HI」、「ジャスト」等の語と「ベース」又は「BASE」の語を組み合せてなる商標について設定登録がされている旨主張するが、これらの商標は、「タフ」、「ストロング」等の部分に自他商品の識別力が認められるために、「ベース」又は「BASE」の語と結合した場合にも、
全体として識別力を有するものであり、本件商標のように、単なる品質誇称表示である「スーパー」と建築用基礎を意味する「ベース」とが結合しても、全体として識別力を有するものではない。
3 取消事由3(商品の品質誤認についての判断の誤り) 審決は、「『ベース』の文字から『基礎用』として理解し、建築現場で誤認し、建築物の耐久性に関し危険を生ずるおそれが指摘されるかどうかの評価は、多分に主観的な程度問題であるから、個人差も極めて大きく、このことは、品質の異同の問題ではなく、品質の優劣の問題に過ぎないものと考えるのが自然である・・・本件商標を全体としてみるときは・・・その指定商品に使用しても・・・商品の品質について誤認を生じさせるおそれはない」(審決謄本14頁37行目〜15頁6行目)と判断した。
しかしながら、「スーパーベース」(super base)が、「より以上の基礎」、「優れた基礎」、「高機能な基礎」という意味を有する一般的用語として普通に用いられ、あるいは用いられ得る記述的表現であることは上記2のとおりである。そして、本件商標の指定商品中の「金属製建築または構築専用材料」には、建築又は構築物に用いられる基礎、土台及びこれらの製造に用いる各種金属製専用材料以外に、金属製天井板、金属製棚板、金属製壁板、金属製窓枠等の各種建築又は構築用の金属製材料が広く含まれるから、本件商標が、これらの商品に使用された場合には、当該商品があたかも建築又は構築物に用いられる基礎、土台に関するものであるかのように、その商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるというべきである。実際の建築現場には、例えば、屋根材や壁面材等も組立材料として搬入されるところ、これらの商品に本件商標が付されていた場合には、それが基礎用の部材であるかのように、その商品の用途、使用目的を誤らせるおそれがあることを否定することはできない。現に、被告及び原告らにおいても、基礎用鉄筋材料について本件商標を使用しているにすぎない。
したがって、審決の上記判断は誤りである。
被告の反論
審決の認定及び判断は正当であり、原告ら主張の審決取消事由は理由がない。
1 取消事由1(本件商標に対する当業者、需要者の認識についての誤認)について (1) 原告らは、林精工と被告の代表者及び住所が同一であるからといって、林精工と被告とが親子会社であると認定できるものではなく、仮に、親子会社であるとしても、両社が別個の法人格を有する以上、本件商標の使用や、宣伝広告の効果は両社にそれぞれ個別に帰属するというべきであるから、審決が、被告と林精工とが親子会社であり、一体であるものとして、林精工による本件商標の使用を被告による本件商標の使用と同視したことは誤りである旨主張する。
しかしながら、審決が、被告と林精工との一体性を認めたのは、本件商標の管理、使用という行為に関してのみであり、また、被告と林精工とが親子会社であるとしたのは、両者が、本件商標の管理、使用を一体的に、すなわち、共同して行っている事実を認めるための背景事情としてであるにすぎない。仮に、被告と林精工とが親子会社であるとの事実を除外したとしても、審決が、「第4 当審の判断」の欄の1項(1)〜(6)(審決謄本12頁1行目〜28行目)において認定した各事実及び被告と林精工とが代表者を共通にしていることに基づけば、「『木造住宅基礎構築用筋枠』が遅くとも昭和59年頃に、件外林精工株式会社により開発され、該社が実用新案登録権利者であること、請求人(注、原告ら)、被請求人(注、被告)等で構成する日本スーパーベース協会が設立され、上記林精工株式会社と同協会の各社が上記実用新案登録に基づくノウハウ実施契約書等の契約を結び、商品名を『スーパーベース』として、日本全国における製造、販売を担当している」(同12頁35行目〜13頁1行目)との事実を認定することができ、この事実と「林精工株式会社とスーパーベース協会の一社である被請求人は、登記簿謄本によれば、代表者、住所が同じ(但し移転されてはいる)である」(同12頁30行目〜32行目)との事実によれば、本件商標は、上記実用新案権(本件実用新案権)の実施品等に対し使用する目的で採用されたものであり、本件実用新案権及びこれに基づくノウハウの許諾を基礎として、本件商標が管理、使用されていたことが認められる。そうすると、被告と林精工が本件商標を一体的に管理、使用していたものと評価することができるのであり、結局、原告らの主張は、審決の結論に影響を及ぼさない些細な事実認定の問題点をあげつらうものにすぎない。
また、原告らは、林精工と日本スーパーベース協会会員との間に、本件商標の使用についての契約は存在せず、本件商標は、日本スーパーベース協会が設立された昭和59年7月ころ以降は、同協会が管理し、同協会及び原告らを含む同協会会員が独立して使用してきたものであって、林精工と被告の2社によってのみ一体管理、使用されていたものではない旨主張する。
しかしながら、原告ら同協会会員との間のノウハウの実施許諾には、黙示的に本件商標の使用許諾が含まれており、原告らの本件商標の利用は、上記ノウハウの実施契約に基づくものであって、被告に由来するものである。
(2) 原告らは、審決に、大部分が昭和58年〜昭和60年発行のものである新聞雑誌(審判乙第28号証、本訴甲第66号証の1〜21)に基づき、登録審決がされた平成7年11月15日まで被告が「スーパーベース」の宣伝広告をしたことを認定した誤りがあると主張するが、審決は、平成7年11月15日まで被告が「スーパーベース」の宣伝広告をしたとの事実を認定したものではないから、原告らの上記主張は誤りである。
(3) さらに、原告らは、審決が、被告売上高表に基づいて「スーパーベースの施工実績(売上高)は、被請求人(注、被告)において、昭和62年度に101,199,759、平成4年度に431,780,288、平成8年度に1,027,502,014に達している事実を認めることができる」(審決謄本13頁24行目〜27行目)との事実を認定したことが、被告売上高表の証明力の評価を誤ったものであり、上記認定が誤りであると主張するが、被告売上高表は、被告の帳簿等に基づいて作成されたものであり、また、審判において、被告のスーパーベースの施工実績(売上高)に関し、他の証拠は一切提出されていないから、被告の売上高を被告売上高表に基づいて認定することが不合理であるとすることはできない。
2 取消事由2(自他商品識別機能についての判断の誤り)について 原告らは、「スーパーベース」(super base)の語が、「より以上の基礎」、「優れた基礎」、「高機能な基礎」という意味を有する一般的用語として普通に用いられ、あるいは用いられ得る記述的表現であって、本件商標の指定商品中の各種建築又は構築物に用いられる基礎、土台及びこれらの製造に用いる各種金属製専用材料(基礎用鉄筋、金属製柱等)の用途、品質等を表す一般的な表現であるにすぎないから、「本件商標は、全体として自他商品の識別機能を否定することはできない」とした審決の判断が誤りである旨主張する。
しかしながら、本件商標が、商品の用途、品質等を表示するものであるかどうかは、指定商品との関係で相対的に決せられるものであるところ、本件商標の指定商品と同様、旧施行令別表の区分による第7類に属する商品又は商標法施行令別表の区分による第6類「建築用又は構築用の金属製専用材料」等を指定商品として、「タフ」、「ストロング」、「HI」、「ジャスト」等の品質誇称表示と「ベース」又は「BASE」の語を組み合せてなる「タフベース」、「ストロングベース」、「HIBASE」、「ジャストベース」等の多数の商標(甲第41号証の1〜6、
第64号証の10〜17、乙第2号証の1、2)について設定登録がされており、
このことに、「住宅用基礎鉄筋ユニットを取り扱う当業者、需要者間において、
『スーパーベース』の文字からなる本件商標は、被請求人(注、被告)の商標として広く認識されていた」(審決謄本13頁35行目〜38行目)との取引の実情を併せ考えれば、本件商標を指定商品に使用したとしても、商品の用途、品質等を表示するものといえないことは明らかである。なお、「ベース」という用語は化学物質を作る際の主要材料の意味も有するところ、この「ベース」と「super」との組合せからなる「Superbase」が化学品等を指定商品として商標登録がされており、この事実が端的に示すとおり、本件商標が自他商品識別力を有しないとする原告の主張が成り立つ余地はない。
さらに、原告らは、審決が、「スーパー」(super)の語が他の文字と結合して複合語を作れば、すべて自他商品識別力を有すると判断したとして、それが誤りである旨主張するが、審決は、そのような判断をしたものではなく、単に、「スーパー」(super)の語が他の文字と結合して複合語を作ることを指摘した上で、その性質にかんがみて「スーパーベース」を一体的にとらえるべきあるとの判断に基づき、
本件商標が「特定の品質、用途等を具体的に表示するものとして直ちに理解し得るものともいい難い」(審決謄本14頁19行目〜20行目)と判断したものである。
3 取消事由3(商品の品質誤認についての判断の誤り)について 原告らは、「スーパーベース」(super base)が、建築又は構築物に用いられる基礎、土台に関し商品の品質を表示する語であることを前提として、本件商標が、基礎、土台に関する物以外の商品に使用された場合には、当該商品があたかも建築又は構築物に用いられる基礎、土台に関するものであるかのように、その商品の品質について誤認を生ずるおそれがあると主張するが、「スーパーベース」(super base)が、建築又は構築物に用いられる基礎、土台に関し商品の品質を表示する語であるとはいえないことは上記2のとおりであるから、原告らの上記主張は失当である。
当裁判所の判断
1 取消事由1(本件商標に対する当業者、需要者の認識についての誤認)について (1) 前示当事者間に争いのない事実に、甲第1号証(商標公報)、第2号証(商標登録原簿写し)、第3号証(拒絶理由通知書)、第4号証(拒絶査定書)、
第5号証(出願公告の決定書)、第6号証(昭和61年審判第14405号事件の審決書)、第15〜17号証(原告三栄商事株式会社、同新光産業株式会社及び同株式会社テザック(旧商号・帝國産業株式会社、以下旧商号当時を含めて「株式会社テザック」という。)のパンフレット)、第43号証(実開昭59-24447号公報)、第44号証の7、8、9の1〜3、10の1、2(林精工と原告三栄商事株式会社との間の専用実施権設定契約書、合意書、ノウハウ実施契約書、日本建築センターの評定に関する契約書及び機械売買契約書)、同号証の11の1〜3(林精工と原告新光産業株式会社との間の機械売買契約書、通常実施権許諾契約書及び日本建築センターの評定に関する契約書)、同号証の12の1、13、14、
15の1、2(林精工と原告株式会社タツミとの間の専用実施権設定契約書、実用新案実施契約書、ノウハウ実施契約書、機械売買契約書及び日本建築センターの評定に関する契約書)、同号証の16の1、17〜19(林精工と原告株式会社テザックとの間の専用実施権設定契約書、ノウハウ実施契約書、機械売買契約書及び日本建築センターの評定に関する契約書)、同号証の20、21(林精工と佐澤金物株式会社との間の合意書、ノウハウ実施契約書及び機械売買契約書)、同号証の22(林精工と株式会社札幌山水との間の日本建築センターの評定に関する契約書及びノウハウ実施契約書)、第45号証の1(原告株式会社テザックの林精工宛内容証明郵便)、第50号証の1(日本スーパーベース協会のカタログ)、同号証の3、4(被告のカタログ)、第59号証の1(「第1回スーパーベース懇談会」と題する書面)、同号証の4(日本スーパーベース協会臨時総会議事録)、同号証の5、6(いずれも「スーパーベース協会総会開催について」と題する書面)、第60号証の1、2(林精工及び被告の登記簿謄本)、甲第66号証の1〜15(新聞記事)、同号証の16〜21(雑誌「住まいの設計」記事)、乙第1号証(陳述書)及び弁論の全趣旨を併せ考えると、以下の事実が認められる。
ア 林精工は建築基礎鉄筋の製造及び販売等を目的として昭和39年に設立された会社であり、被告は各種住宅建材の製造及び販売を目的として昭和46年に設立された会社であって、両会社は、代表取締役であるAのほか、2名の役員を共通にし、また、平成8年まで本店所在地が同一であった。
イ 林精工は、昭和57年8月2日、名称を「木造住宅基礎構築用筋枠」とする考案につき実用新案登録出願(実願昭57-118015号)をし、その実施品である基礎鉄筋ユニットに「スーパーベース」という名称を付し、これを商標登録するため、昭和58年12月7日に本件商標登録出願をしたが、上記基礎鉄筋ユニットに関する事業は主として被告において行うこととされたところから、同商標登録出願については、後記拒絶査定がされた昭和61年1月24日から出願公告の決定がされた平成7年2月13日までの間に商標登録出願人名義が被告に変更された。
ウ 本件商標登録出願に対しては、昭和61年1月24日に商標法3条1項3号及び同法4条1項16号に該当するものとして拒絶査定がされたが、不服の審判請求(昭和61年審判第14405号)に対し、平成7年11月15日に登録審決がされ、平成8年5月31日に被告を商標権者として設定登録がされた。
エ 林精工は、昭和59年1月から昭和60年2月までの間に、原告4名並びに株式会社札幌山水及び佐澤金物株式会社との間で、それぞれ、上記実用新案登録出願に係る考案の実施品である基礎鉄筋ユニットにつき、その商品名を「スーパーベース」として、林精工が原告4名並びに株式会社札幌山水及び佐澤金物株式会社に対し、それぞれ販売地域を定めて上記基礎鉄筋ユニットの製造販売を許諾する旨のノウハウ実施契約及び日本建築センターの評定に関する契約並びにその製造ライン一式を販売する旨の機械売買契約等を締結し、さらに、上記実用新案登録出願に基づく実用新案権(本件実用新案権)の設定登録がされた後の昭和61年中に、
原告三栄商事株式会社、同株式会社タツミ及び同株式会社テザックとの間で、本件実用新案権につきそれぞれ実施の地域を定めて、専用実施権の設定契約を締結した。
オ 昭和59年7月7日に、林精工代表取締役Aの主催により、原告4名及び株式会社札幌山水等からの参加者が参集して、「第1回スーパーベース懇談会」が開催され、同懇談会において、日本スーパーベース協会を設立して、その理事長にAが就任し、事務所を原告株式会社テザック内に置くこと、「スーパーベース」のPRの費用は全員が分担することなどが決議され、その後、昭和60年5月8日、昭和61年3月17日及び同月18日並びに昭和62年6月26日及び27日に、それぞれ日本スーパーベース協会総会が開催された。
カ 昭和58年10月19日付け日刊工業新聞(甲第66号証の1)、同月30日付け日本工業技術新聞(同号証の3)、同年11月11日付け週刊建材新聞(同号証の4)、同月12日付け日本工業新聞(同号証の5)、昭和61年4月22日付け建通新聞(同号証の14)に、被告が住宅用布基礎鉄筋ユニット(又は住宅用基礎鉄筋ユニット)の「スーパーベース」及びその製造ラインを開発し、販売を開始した旨の記事(上記日刊工業新聞及び日本工業技術新聞の各記事中、「スーパースペース」とあるのは「スーパーベース」の誤記と認められる。)が、昭和60年2月20日付け日刊工業新聞(同号証の9)、同年2月28日付け同年4月10日付け及び昭和61年1月20日付け各日本工業技術新聞(同号証の10、12、13)には、林精工が開発した住宅用基礎鉄筋ユニット「スーパーベース」が日本建築センターから品質、性能面で公認された旨及び林精工は、全国を7ブロックに分けた加盟7社(原告4名、被告、佐澤商事株式会社(上記佐澤金物株式会社と同一の会社と認められる。)及び株式会社札幌山水)による日本スーパーベース協会を発足させ、販売促進を図る旨の記事が、それぞれ掲載された。
キ 昭和58年10月22日付け日刊工業新聞(甲第66号証の2)には、
被告及び林精工の連名により、同年11月26日付け、同年12月3日付け及び昭和61年5月30日付け各日刊工業新聞(同号証の6、7、15)並びに昭和59年4月27日付け日本工業新聞(同号証の8)には被告により、昭和60年3月2日付け日刊工業新聞(同号証の11)には林精工により、それぞれ基礎鉄筋ユニット「スーパーベース」の広告が掲載され、また、雑誌「住まいの設計」昭和59年10月号、同年12月号、昭和60年2月号、同年4月号、同年6月号、同年8月号(同号証の16〜21)には、日本スーパーベース協会による基礎鉄筋ユニット「スーパーベース」の広告が掲載された。さらに、日本スーパーベース協会並びに被告、原告三栄商事株式会社、同新光産業株式会社及び同株式会社テザックは、それぞれ基礎鉄筋ユニット「スーパーベース」のパンフレットないしカタログ(甲第15〜17号証、第50号証の1、3、4)を作成、頒布した。
ク 被告と林精工との間で、上記基礎鉄筋ユニットの製造販売についての許諾又は本件実用新案権についての専用実施権の設定等に係る契約が明示的に締結された形跡はなく、また、上記オのスーパーベース懇談会又は日本スーパーベース協会総会に、明示的に被告からの参加者とされる者が参加した形跡もないが、上記カの新聞記事及び上記キの日本スーパーベース協会による広告中には、同協会の加盟会社の一つとして被告が掲載されており、上記新聞記事においてはその販売担当地区が徳島、香川、愛媛、高知の各県とされている。
ケ 本件実用新案権は、平成7年10月2日に存続期間満了により消滅したところ、原告株式会社テザックにおいて、平成8年3月19日発送の内容証明郵便(甲第45号証の1)により、林精工に対し、上記ノウハウ実施契約が終了した旨の通知をした。
(2) 上記認定事実によれば、本件商標を構成する「スーパーベース」の語は、
林精工が、昭和58年ころ、その開発に係り、実用新案登録出願をした「木造住宅基礎構築用筋枠」の考案の実施品である住宅用基礎鉄筋ユニットの商品名とすることを直接の目的として採用したものであり、林精工は、これについて本件商標登録出願をした後、昭和59年1月から昭和60年2月までの間に、原告4名及び株式会社札幌山水等に、商品名を「スーパーベース」とした上で、上記住宅用基礎鉄筋ユニットの実施(製造及び販売)の許諾(実用新案権設定登録後は専用実施権の設定)をしたものであることが明らかである。そうすると、本件商標は、林精工が、
原告4名及び株式会社札幌山水等との間の上記実施許諾ないし専用実施権の設定契約に基づき、実施の対象である上記住宅用基礎鉄筋ユニットの商品名として、その製造方法等とともに管理していたものと認めるのが相当である。
この点につき、原告らは、本件商標は、日本スーパーベース協会が設立された昭和59年7月ころ以降は、同協会が管理し、同協会及び原告らを含む同協会会員が独立して使用してきた旨主張するが、少なくとも、原告株式会社テザックがノウハウ実施契約終了の通知をした平成8年3月19日ころまでの原告4名及び株式会社札幌山水等による「スーパーベース」の名称の使用は、「スーパーベース」が林精工によって上記住宅用基礎鉄筋ユニットの商品名とされたことに伴うものであって、同基礎鉄筋ユニットに係る上記実施許諾ないし専用実施権の設定の契約に基づく使用であるといわざるを得ず、また、日本スーパーベース協会が、林精工から独立した立場で、本件商標を管理していたことを認めるに足りる証拠はない。
もっとも、上記(1)の認定事実によれば、被告は、代表者等を同じくする林精工との緊密な関係に基づいて、少なくとも、上記住宅用基礎鉄筋ユニットの製造販売及び日本スーパーベース協会への加盟等に関しては、林精工と一体であるものとして扱われていたことが認められる。そして、このことに、上記のとおり、本件商標に係る商標登録出願人名義が林精工から被告に変更されたことを併せ考えれば、日本スーパーベース協会の設立された昭和59年7月ころ以降は、本件商標の管理は、林精工と被告とが共同で一体的に行うに至ったものと認められる。
そして、上記(1)の認定事実によれば、各新聞の紹介記事及び各新聞、雑誌等への広告の掲載により、昭和60年ころまでには、「スーパーベース」の語は、
上記住宅用基礎鉄筋ユニットの商品名として、すなわち、林精工又は被告若しくは原告4名等日本スーパーベース協会加盟各社の業務に係る商品を表示するものとして、需要者に広く認識されるに至ったものと認めるのが相当である。
(3) ところで、原告らは、審決が、「遅くとも本件商標の登録査定される時期(注、登録審決がされた平成7年11月15日)までには、『スーパーベース』の語が『住宅用基礎鉄筋ユニット』の自他商品の識別機能を有する商標として継続使用され、上記住宅用基礎鉄筋ユニットを取り扱う当業者、需要者間において、『スーパーベース』の文字からなる本件商標は、被請求人(注、被告)の商標として広く認識されていたものと判断するのが相当である」(審決謄本13頁33行目〜38行目)とした認定を誤りであると主張し、その理由として、審決が、上記認定の根拠として挙げた事由のうち、林精工と被告とが親子会社であるとした点、平成7年11月15日を基準時とする判断の資料として、昭和58年〜昭和61年発行の新聞雑誌(審判乙第28号証、本訴甲第66号証の1〜21)の記事又は広告を用いた点及び被告売上高表(甲第62号証)によって被告のスーパーベース(住宅用基礎鉄筋ユニット)の売上高を認定した点がそれぞれ誤りであると主張する。
しかしながら、審決が、林精工と被告とが親子会社であると認定した趣旨は、上記(2)のとおり、被告が、代表者等を同じくする林精工との緊密な関係に基づいて、少なくとも、上記住宅用基礎鉄筋ユニットの製造販売及び日本スーパーベース協会への加盟等に関して、林精工と一体であるものとして扱われていたことをいうものと解され、そのこと自体に誤りはない。また、審決が、登録審決がされた平成7年11月15日を基準時とする商標法3条1項3号又は6号該当性に係る判断、具体的には「『スーパーベース』の語が『住宅用基礎鉄筋ユニット』の自他商品の識別機能を有する商標として継続使用され、上記住宅用基礎鉄筋ユニットを取り扱う当業者、需要者間において、『スーパーベース』の文字からなる本件商標は、被請求人の商標として広く認識されていた」(審決謄本13頁34行目〜38行目)との判断の資料として、昭和58年〜昭和61年発行の新聞雑誌(甲第66号証の1〜21)の記事又は広告を用いたことは原告ら主張のとおりであるが、審決は、平成7年11月15日まで被告が「スーパーベース」の宣伝広告をしたとの事実を認定したものではなく、また、上記新聞雑誌の記事又は広告のみから上記判断をしたものでもないから、この点に関する審決の判断に原告ら主張の誤りはない。
さらに、審決の説示に照らし、審決が、上記のとおり、「遅くとも本件商標の登録査定される時期までには、『スーパーベース』の語が『住宅用基礎鉄筋ユニット』の自他商品の識別機能を有する商標として継続使用され、上記住宅用基礎鉄筋ユニットを取り扱う当業者、需要者間において、『スーパーベース』の文字からなる本件商標は、被請求人の商標として広く認識されていた」ことを認定をしたのは、本件商標が、商標法3条1項6号に該当するものではないとの判断及びいわゆる独占適応性がないものとして同条1項3号に該当するものではないとした判断(審決謄本14頁2行目〜7行目)の根拠となる事実を摘示したものと解される。
しかし、そのためであれば、本件商標の登録査定(登録審決)時に、「スーパーベース」の文字からなる本件商標が被告の商標として広く認識されていた旨を認定することは必ずしも必要ではなく、「スーパーベース」の語が、林精工又は被告若しくは原告4名等日本スーパーベース協会加盟各社の業務に係る商品を表示するものとして、需要者に広く認識されるに至ったこと、本件商標は、林精工又は林精工及び被告が一体として、これを管理しており、少なくとも本件商標の登録審決後である平成8年3月19日ころまでの原告4名等による「スーパーベース」の名称の使用は、住宅用基礎鉄筋ユニットに係る実施許諾ないし専用実施権の設定の契約に基づく使用であることを認定すれば足りるところ、その事実は、上記(2)のとおり、上記(1)の認定事実に基づいて認めることができる。そうすると、仮に、被告売上高表(甲第62号証)によって被告のスーパーベース(住宅用基礎鉄筋ユニット)の売上高を認定したこと、また、本件商標の登録査定(登録審決)時に、「スーパーベース」の文字からなる本件商標が被告の商標として広く認識されていた旨認定したことに、原告ら主張の誤りがあったとしても、その誤りは、審決の結論に影響を及ぼすものということはできない。
2 取消事由2(自他商品識別機能についての判断の誤り)について (1) 原告らは、本件商標の指定商品中には、各種建築又は構築物に用いられる基礎、土台及びこれらの製造に用いる各種金属製専用材料(基礎用鉄筋、金属製柱等)が含まれているところ、「スーパーベース」(super base)の語は、「より以上の基礎」、「優れた基礎」、「高機能な基礎」という意味を有する一般的用語として普通に用いられ、あるいは用いられ得る記述的表現であり、上記商品の用途、
品質を表す一般的な表現である旨主張する。
(2) そこで、「ベース」(base)の語についての一般的な辞典類の記載についてみると、昭和35年株式会社研究社第4版発行の「新英和大辞典」(甲第7号証)には「基底、土台、根本、台、基盤」等の、昭和62年集英社発行の「imidas1988」別冊附録「国際化新時代の外来語・略語辞典」(甲第8号証)には「基地、根拠、土台、基本」等の、平成3年2月10日株式会社学習研究社第2版第6刷発行の「マスコミに強くなるカタカナ新語辞典」(甲第9号証)には「土台、基礎、基本」等の、平成元年10月10日株式会社旺文社改訂新版発行の「ビジネスマンのためのカタカナ語新辞典」(甲第10号証)には「土台、基盤、基準」等の、平成3年成美堂出版発行の「平成版カタカナ語新辞典」(甲第11号証)には「土台、基本」等の、昭和48年3月20日第8刷発行の「コンサイス外来語辞典」(甲第37号証)には「土台、基本、基準」等の語義がそれぞれ掲載されている。しかしながら、これらの「土台」、「基礎」、「基盤」等の語は、一般に広範な意味を有するものであり、例えば、「基礎」の語につき、平成元年11月6日株式会社講談社発行の「日本語大辞典」(甲第68号証)に「基礎知識」、
「学問の基礎」との各用例が掲載されているように、抽象的な概念を表すものとしても頻繁に用いられるものであるから、上記各辞典類に上記のような語義が掲載されているからといって、「ベース」(base)の語が、建築又は構築物に用いられる基礎、土台を意味するものとして一般に使用されているものと直ちに認めることはできない。
また、「base」の語につき、平成8年12月5日近代図書株式会社発行の「土木英和辞典」(甲第38号証)には「土台、基礎、台座、底辺、底面、地盤、
路盤、基点、基線、基地、根拠地、口金、幅木、塩基、基数、対数の底、基礎の、
基準の」との語義が、平成7年1月10日株式会社小学館第2版第3刷発行の「小学館ランダムハウス英和大辞典」(甲第67号証)には「円柱や壁柱などの柱身の基部」、「記念碑・外壁などの基部」との語義がそれぞれ掲載されているほか、前掲「日本語大辞典」(甲第68号証)には「基礎」の語義として「建物の土台。いしずえ。base」との語義が掲載されており、これらの記載によれば、「ベース」(base)の語が、建築又は構築物に用いられる基礎、土台を意味するものとして使用されることがあることも認められる。しかしながら、上記各辞典類のうち、本件商標の指定商品の需要者の認識を示すものと考えられる「土木英和辞典」(甲第38号証)に、上記のとおり、「土台、基礎」のほか、多数の語義が掲載されていることにかんがみると、本件商標の指定商品の需要者の認識においても、「ベース」(base)の語は、建築又は構築物に用いられる基礎、土台の意味の外に極めて広範な意味を有する漠然とした語であることがうかがわれ、そうすると、本件商標の指定商品との関係においても、需要者において、直ちに「ベース」(base)の語が一義的に建築又は構築物に用いられる基礎、土台を意味すると理解し、認識するものとは認め難い。
なお、平成6年8月5日株式会社井上書院発行の「逆引き・建築用語辞典」(甲第21号証)には「ベースモルタル」の語が「鉄骨柱のベースプレートと基礎との間に敷く、高さ調整用のモルタル」の意味を表すものとして掲載されているほか、平成5年5月1日社団法人日本建築学会第8刷発行の「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説」(甲第22号証)には「基礎筋(ベース筋)」の語が、また、平成3年1月30日社団法人土木学会発行の「学術用語集土木工学編(増訂版)」(甲第23号証)に「ベースコンクリート」の語がそれぞれ掲載されているが、これらは、いずれも「ベース」の語に他の語を組み合せた熟語であるから、その記載によっては、本件商標の指定商品の需要者の認識に係る「ベース」の語自体の意味を明らかにするものということはできない。
そうすると、本件商標の指定商品中に、各種建築又は構築物に用いられる基礎、土台及びこれらの製造に用いる各種金属製専用材料(基礎用鉄筋、金属製柱等)が含まれているとしても、「ベース」の語が、これらの具体的な商品の品質又は用途を表示する語として使用されていると認めることはできない。
(3) したがって、「スーパー」の語が、原告ら主張のように「より以上の」、
「優れた」、「高機能な」等の意味を有し、それ自体、商品の品質を表示する語として使用されているとしても、「スーパーベース」の構成からなる本件商標にあっては、全体として指定商品の品質又は用途を表示するものであるとは認められず、
したがって、「『ベース』の文字は・・・本件指定商品との関係において、具体的に商品の品質を表示する語として使用されているとする事実を発見できない」(審決謄本14頁29行目〜31行目)とした上で、「本件商標は、全体として自他商品の識別機能を否定することはできない」(同頁32行目〜33行目)とした審決の判断に原告ら主張の誤りがあるとはいえない。
3 取消事由3(商品の品質誤認についての判断の誤り)について 原告らは、「スーパーベース」(super base)が、「より以上の基礎」、
「優れた基礎」、「高機能な基礎」という意味を有する一般的用語として普通に用いられ、あるいは用いられ得る記述的表現であるから、本件商標が、指定商品中の建築又は構築物に用いられる基礎、土台及びこれらの製造に用いる各種金属製専用材料以外の商品、すなわち金属製天井板、金属製棚板、金属製壁板、金属製窓枠等の各種建築又は構築用の金属製材料に使用された場合には、当該商品があたかも建築又は構築物に用いられる基礎、土台に関するものであるかのように、その商品の品質について誤認を生ずるおそれがあると主張する。
しかしながら、本件商標の指定商品の需要者において、「ベース」(base)の語が建築又は構築物に用いられる基礎、土台を意味すると認識するものと認められないことは上記2のとおりであるから、「スーパーベース」の構成からなる本件商標は、全体として建築又は構築物に用いられる基礎、土台及びこれらの製造に用いる各種金属製専用材料の品質又は用途を表示するものであるとはいえず、したがって、本件商標が、指定商品中の建築又は構築物に用いられる基礎、土台及びこれらの製造に用いる各種金属製専用材料以外の商品に使用されたとしても、その商品の品質又は用途につき原告ら主張のような誤認を生ずるおそれがあるということはできない。
そうすると、審決の説示には、措辞やや適切を欠く点があるとしても、「本件商標を全体としてみるときは・・・その指定商品に使用しても・・・商品の品質について誤認を生じさせるおそれはない」(審決謄本15頁3行目〜6行目)としたその判断に原告ら主張の誤りがあるとはいえない。
4 以上のとおりであるから、原告ら主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告らの請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条65条1項本文を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 石原直樹
裁判官 宮坂昌利