関連審決 |
審判1998-35643
審判1998-35642 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成17行ケ10402審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成17行ケ10651審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成12行ケ405審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成15行ケ42審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 識別力 / 役務の提供 / 指定役務 / 普通名称(3条1項1号) / 慣用商標(3条1項2号) / 周知商標 / 周知性 / 混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) / 無効審判 / 同一の役務 / 同業者 / |
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事件 |
平成
12年
(行ケ)
349号
審決取消請求事件
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原告 株式会社サンフジ企画 訴訟代理人弁護士 菊池武、弁理士 中川周吉、中川裕幸 被告 エー・ビー・シー開発株式会社 訴訟代理人弁理士 山本真一、吉田茂明、吉竹英俊、有田貴弘 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2001/10/11 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
特許庁が平成10年審判第35642号事件について平成12年8月2日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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原告の求めた裁判
主文第1項同旨の判決。 |
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事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 被告は、登録第3197526号商標(「住宅公園」の文字を書してなり、第35類「商品の販売に関する情報の提供、建築物における来訪者の受付及び案内」を指定役務として、平成4年9月30日に登録出願、同8年9月30日に設定登録。 本件商標)の商標権者であるが、原告は、平成10年12月17日、本件商標につき登録無効の審判請求をし、平成10年審判第35642号事件として審理されたが、平成12年8月2日、「本件審判請求は、成り立たない。」との審決があり、 その謄本は同月21日原告に送達された。 2 審決の理由の要点 (1) 原告(請求人)の主張 原告は、無効審判請求の理由として次のとおり述べるとともに、証拠方法として審判甲第1ないし第147号証を提出している。 本件商標は、商標法第3条第1項第2号又は同第6号、同法第4条第1項第10号又は同第15号に該当し、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。 (1)-1 商標法第3条第1項第2号又は同第6号について (1)-1-1 本件商標は、その出願日以前に多くの同業他社によって同一の役務に一般的に使用されたものであることが明らかである。すなわち、審判甲第3ないし第19号証(実態調査レポート)及び審判甲第20号証(被告以外の「住宅公園」の使用リスト)によると、「神戸市名谷総合住宅公園」、「木更津市民住宅公園」、「上尾住宅公園」、「北摂三田住宅公園」等のように、地名を冠した「○○住宅公園」(○○は地名、以下同じ。)の使用例が多数みられる。さらに、「住宅公園」は、住宅展示場を示すものとして、本件商標の出願日の10数年以前から、 テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、看板、住宅メーカーのカタログ・展示場ガイド等を通じて需要者によく認識されていることも明らかであり、商標法第3条第1項第2号の慣用商標に該当する。 (1)-1-2 そして、被告が永年にわたって使用してきたという住宅展示場の名称は、「○○住宅公園」ではなく、そのほとんどが「ABCハウジング○○住宅公園」である。これは、単なる「住宅公園」では「住宅展示場」と同じ概念あるいは同義語となるので、その「住宅公園」の前に「ABCハウジング」を冠したサービスマークを使用することにより、初めて特別顕著性が生じ、需要者に認識されるものと判断して使用を開始したものといわざるを得ない。 (1)-1-3 また、原告が出願した商願平5-9379号に係る商標「ハウジングパーク」に対して、平成10年8月5日(起案日)付けの拒絶理由通知書において、この出願に係る商標は、「住宅公園」のような意味合いを派生し、住宅展示場を示すものとして一般に使用されていることから、これをその指定役務に使用しても、需要者が何人の業務に係る役務であるかを認識することができないとされ、最終的に商標法第3条第1項第6号に該当するとして拒絶されている(審判甲第1号証及び第2号証)。 (1)-2 商標法第4条第1項第10号又は同第15号について (1)-2-1 本件商標と同じ文字の「住宅公園」は、原告等が、本件商標の出願日の10数年以前から現在に至るまでサービスマークとして全国的規模で使用してきた結果、需要者の間に広く認識されているものである。特に、原告は、各地において住宅展示用土地を提供する業務を営んでおり、1981年ころから、それぞれの住宅展示用土地の地名を「住宅公園」に冠し、例えば、「志木住宅公園」、「上尾住宅公園」、「池袋住宅公園」等のように使用している。これらの住宅展示場は、読売新聞、朝日新聞等の一般紙に広告されており、そのサービスマークは本件商標の出願日より早く、かつ、広く使用されていたものである(審判甲第24ないし第39号証)。そして、それらの識別力が「住宅公園」の部分にあることは明らかである。 (1)-2-2 また、「住宅公園」を用いた住宅展示場の案内は、一般紙のほかに業界紙(日本プレハブ新聞)においても広告されており、住宅展示場の使用者である住宅メーカー(ミサワホーム、ダイワハウス、セキスイハイム等の大手住宅メーカーを含む)にも、「住宅公園」が原告のサービスマークとして認識されていたものである(審判甲第40号証及び第41号証)。このほかにも、多くの同業者が「○○住宅公園」をサービスマークとして使用している(審判甲第43号証及び第44号証)。 (1)-2-3 したがって、住宅展示場に使用されるサービスマーク「住宅公園」は、原告等の役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されており、本件商標は、商標法第4条第1項第10号又は同第15号に該当するものである。 (2) 被告(被請求人)の主張 被告は審判請求不成立の理由を要旨次のように述べるとともに、証拠方法として審判乙第1ないし第327号証(枝番号を含む)を提出している。 (2)-1 商標法第3条第1項第2号又は同第6号について (2)-1-1 いわゆる住宅展示業という営業に係るサービスは、(ア)住宅展示用土地の貸与、(イ)建築物における来訪者の受付及び案内、(ウ)商品(主としてプレハブ住宅等)の販売に関する情報の提供を主内容とし、本件商標の指定役務は、このうちの(イ)及び(ウ)に該当する。そして、(ウ)の「商品販売情報の提供」でいう「商品」の内容は、動産に限られる必要はなく、取引通念に従って定められるべきものであるから、不動産の一つである住宅(建物)も「商品」中に含まれるものと解される。 (2)-1-2 被告が、原告の提出に係る「住宅展示場に関する実態調査レポート」(審判甲第3ないし第19号証)について分析した結果によると、被告以外の者が住宅展示場の名称の一部として「住宅公園」を使用している割合は極めて小さく(審判乙第1号証の1ないし3及び第2号証、審判乙第13ないし第24号証)、この分析結果等から判断すると、本件商標の「住宅公園」は、その登録時においても慣用商標化していないといわざるを得ない。 (2)-1-3 原告は、過去の拒絶例(商願平5-9379号)を引用して本件商標が商標法第3条第1項第6号に該当する旨述べているが、この引用に係る商標「ハウジングパーク」と本件商標「住宅公園」とは全く別個の商標であり、また、 「住宅公園」なる名称は「住宅展示場」と同義語として一般に認識されているものではない。むしろ、被告自身が、昭和53年より現在に至るまで「住宅公園」の名称をサービスマークとして使用し、住宅展示場の主催・企画運営業を全国的規模で展開してきたところであるから、本件商標は、その登録時においても、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができたものである。 (2)-2 商標法第4条第1項第10号又は同第15号について (2)-2-1 原告は、住宅展示場に使用されるサービスマーク「住宅公園」は、 原告の役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている旨主張している。しかしながら、原告の証拠(審判甲第32ないし第34号証、審判甲第36ないし第40号証)によると、住宅展示場の名称として、「○○+住宅公園」(○○部分は地名、以下同じ。)のほかにも、他の名称を付したもの(例;プラザ、ハウジングプラザ、総合住宅展示場、ハウジングセンター)が多く使用されており、到底、これらをもって「住宅公園」が原告の周知商標として認識されているものとはいえない。 (2)-2-2 一方、被告は、本件商標の指定役務の提供に際して、「○○+住宅公園」という名称の住宅展示場名を昭和52年(1977年)8月に創作して使用を開始し(審判乙第59号証)、本件商標の出願前である昭和53年より現在に至るまで、首都圏及び関西圏という二大都市において大規模な広告活動及び営業活動を行ってきた。この結果、取引者・需要者に厚い信用・信頼を得ているものである(審判乙第105ないし第326号証)。 この点に関し、原告は、被告が永年使用してきた名称は「ABCハウジング○○住宅公園」又は「ABC HOUSING○○住宅公園」であって、「○○住宅公園」ではない旨主張している。しかしながら、被告は、「ABCハウジング」又は「ABC HOUSING」とは別個に、本件商標を「○○+住宅公園」として使用している。 (2)-2-3 以上のことから、本件商標は、他人の周知商標と同一又は類似の商標とはいえないばかりでなく、他人の業務に係る役務との間で混同を生じさせるおそれのある商標にも該当しない。 (3) 審決の判断 (3)-1 商標法第3条第1項第2号又は同第6号について (3)-1-1 原告は、本件商標の「住宅公園」が住宅展示場(住宅が展示されている場所)を表す名称として、住宅展示場の企画・運営等を業務とする多くの同業他社によって使用されていることから、本件商標は、その指定役務「商品の販売に関する情報の提供、建築物における来訪者の受付及び案内」について、商標としての識別性を有するものではない旨主張しているので、まず、この点について判断する。 (3)-1-2 ところで、商標法上の役務とは、他人のためにする労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきものと解すべきであり、本件商標の指定役務「商品の販売に関する情報の提供、建築物における来訪者の受付及び案内」も、当然、そのような内容の役務を指すものである。 そして、商標法施行令(平成3年9月25日政令第299号)第1条で定める「商品及び役務の区分」の掲載役務(省令別表)をみると、本件商標の指定役務中の「商品の販売に関する情報の提供」は、第35類に属する役務として掲載されているのに対し、同区分の第36類には、「建物又は土地の売買」等の不動産の取引に関する役務とともに「建物又は土地の情報の提供」が掲載されていることからすると、第35類の「商品の販売に関する情報の提供」にいう「商品」には、不動産としての建物(住宅等)や土地は含まれていないと解するのが相当である。 (3)-1-3 そこで、本案について検討すると、原告は、本件商標がその指定役務について識別性を有するものではないとする論拠として、審判甲第1ないし第148号証を提出している。 しかしながら、審判甲第1号証及び第2号証を除く各証拠における「住宅公園」ないし「○○住宅公園」の名称の使用に係る役務は、前述した商標法上の役務の内容及び政令で定める「商品および役務の区分」上の役務の取扱いを踏まえると、いずれも本件商標の指定役務である「商品の販売に関する情報の提供、建築物における来訪者の受付及び案内」に係る役務ではなく、不動産としての住宅の販売促進を目的とする、いわゆる広告の範疇に属する「複数の住宅メーカー等の出展による住宅展示場の企画・運営・開催」(以下「住宅展示場の企画・運営・開催」という。)に係る役務と認められるものである。 また、審判甲第1号証及び第2号証(商願平5-9379に係る平成10年8月5日付拒絶理由通知及び同年12月1日付拒絶査定謄本)は、その商標(ハウジングパーク)や指定役務(住宅展示施設の貸与)等が本件商標のものと異なることから、これを採用することができない。 他に、本件商標がその指定役務について識別性を有するものではないと認めるに足りる証左はない。 (3)-1-4 そうすると、本件商標は、その登録時において、その指定役務である「商品の販売に関する情報の提供、建築物における来訪者の受付及び案内」について慣用されている商標といえないばかりでなく、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標ともいえないといわざるを得ない。 (3)-2 商標法第4条第1項第10号又は同第15号について (3)-2-1 原告は、本件商標と同じ文字の「住宅公園」及びこの文字に地名を冠した「○○住宅公園」の名称を商標(サービスマーク)として、原告等が本件商標の出願日前から使用してきた結果、需要者に広く認識されている旨主張する。 しかしながら、原告が提出した審判甲第3ないし第94号証における「住宅公園」及び「○○住宅公園」の名称は、その使用に係る役務内容や使用目的・使用態様、同業他社による使用が認められること等からして、いずれも販売促進のための住宅(不動産)展示場を表す名称として使用されているというべきもの(商標法第3条第2項にいう使用による識別性も認められない)であって、その使用に係る役務「住宅展示場の企画・運営・開催」の識別標識(商標)として使用されているとは認め難い。したがって、地名を冠した「○○住宅公園」の名称の使用をもって、 「住宅公園」の商標としての使用と認めることはできない。 また、審判甲第95ないし第147号証は、「住宅公園」に関する関係者の認識度を示す原告あての証明書であるが、いずれも同種の内容からなり、その証明内容が商標としての周知性を客観的に示すものとは認められないから、結局、原告の前記主張は採用することができない。 (3)-2-2 そうとすると、本件商標は、原告等の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似するものといえないばかりでなく、他に原告等の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがあるものともいえない。 (3)-3 審決のむすび 以上のことから、本件商標は、商標法第3条第1項第2号、同第6号、同法第4条第1項第10号及び同第15号の規定に違反して登録されたものということはできないから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とすることができない。 |
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原告主張の審決取消事由
1 商標法第3条第1項第2号又は同第6号の適用に関して (1) 審決の認定、判断は、「住宅公園」なる商標は、「住宅展示場」の企画・運営等を業務とする多くの同業他社によって使用されていても、第35類の「商品の販売に関する情報の提供、建築物における来訪者の受付及び案内」について、商標としての識別性を有していないとはいえない、というにあるが、誤りである。 特許庁は、前者、すなわち、「住宅展示場」の企画・運営等を業務とする同業他社が、「住宅公園」の名称を展示場を意味する語として、広く使用している事実を認定した上で、第36類「住宅展示用土地の貸与」を指定役務として登録された被告の登録第3370269号商標は、識別性を有しない、と判断して、これを無効とする審決を平成12年8月30日にしている(平成10年審判第35643号。 当裁判所平成12年(行ケ)第405号事件の審決)。本件審決は、率直にいって、「同一商品・役務について重複なし」との大前提を貫くために、無理に、第36類では、普通名称とされて無効とされた商標「住宅公園」を第35類について、 これを認めた感がある。第36類の「住宅展示場の企画・運営・開催」なる役務は、当然、第35類の「商品の販売に関する情報の提供、建築物における来訪者の受付及び案内」という役務を包含していると解するのが素直な解釈なのに、審決は、わざわざ、第35類の役務とを峻別し、全然違う業務と理解している。 (2) 「住宅展示場」を経営するための主たる業務は、確かに「住宅展示用土地の貸与」あるいは「建物又は土地の情報の提供」であり、これらは第36類の指定役務の区分に属しているが、「住宅展示場」を運営するには、当然第35類の指定役務である「商品の販売に関する情報の提供、建築物における来訪者の受付及び案内」の業務も行っている。このことは、「住宅展示場」の経営のみを主たる業務としている本件商標権者が、前記第36類のみならず、この第35類にも全く同一のサービスマーク「住宅公園」を商標登録出願してきた事実から明らかである。したがって、第36類の指定役務である「住宅展示用土地の貸与」、「建物又は土地の情報の提供」と、第35類の指定役務である「商品の販売に関する情報の提供、建築物における来訪者の受付及び案内」とは密接不可分の関係にある。 (3) 審決は、このような業界の実情を理解することなく、識別性の有無の判断は、商品及び役務の区分ごとに行うべきであるとして、本件無効審判の請求を排斥したものである。 2 商標法第4条第1項第10号又は同第15号の適用に関して 審決は、商標法第4条第1項第10号又は同第15号の適用について、「住宅公園」及び「○○住宅公園」の名称は、販売促進のための住宅展示場を表す名称として使用されている事実が認められるべきである。したがって、審決がこの名称は「住宅展示場の企画・運営・開催」の識別商標として使用されているとは認め難い、と認定、判断したのは誤りである。 「住宅公園」の名称を見た需要者は、購入目的で住宅や建築物を見学し、気に入れば、業者と売買ないし建築の契約を締結する。つまり、「住宅公園」の看板を見た需要者の購買意欲を促進するのであり、これをもって、販売促進目的がない、という者はいないからである。 3 商品概念の解釈の誤り 審決は、「第35類の「商品の販売に関する情報の提供」にいう「商品」には、 不動産としての建物(住宅等)や土地は含まれていない」と判断したが、これも恣意的である。 |
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審決取消事由に対する被告の反論
1 商標法第3条第1項第2号又は同第6号の適用の主張に対して @本件の第35類の「商品の販売に関する情報の提供」の役務と、A同じく本件の第35類の「建築物における来訪者の受付及び案内」と、B別件の第36類の「住宅展示用土地の貸与」の役務とは、確かに同一の契約から生じた義務の履行ではあるけれども、それぞれ別個の役務ないしはサービスをなしているのであって、 これらの役務@〜Bは同一役務でないことはもとより、上記役務@及びAが上記役務Bに包含されているものでもない。換言すれば、各役務@〜Bは、いずれも住宅展示場の企画・運営業者が提供する主要なサービスをなしているのであって、主従関係にあるものではない。 2 商標法第4条第1項第10号又は同第15号の適用の主張に対して 原告は、「住宅展示場の企画・運営・開催」における本件役務の需要者を誤って理解している。「住宅展示用土地の貸与」と、「住宅メーカーが製造・販売する住宅(モデルハウス)という商品の販売に関する情報の提供」と、「モデルハウスという建築物における来訪者の受付及び案内」という役務の需要者は、出展住宅メーカーである。動産商品の製造メーカーが販売する動産商品の販売に関する情報の提供」という役務の需要者は、動産商品の製造メーカーである。住宅購入希望者は、 本件役務に対して対価を何ら支払うものではなく、需要者ではない。 3 審決の判断の一部誤りについて 第35類の役務「商品の販売に関する情報の提供」における「商品」には、住宅メーカーが販売する、不動産としての住宅が含まれるべきである。そうすると、審決が、「商品の販売に関する情報の提供」における「商品」には、不動産としての住宅は含まれてはおらず、不動産としての住宅はむしろ第36類の「建物又は土地の情報の提供」に含めて考えるべきであるとした点は誤りである。しかし、その点は審決の結論に影響を及ぼさない。「商品の販売に関する情報の提供」における「商品」には不動産としての住宅は含まれている」との正しい解釈に立ったとしても、審判における証拠に照らせば、事実認定の結果には差異はなく、同一の結論が導出されるからである。 |
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当裁判所の判断
1 乙第29ないし第67号証(住宅展示場用に関する情報を提供するカタログ、チラシ等)によれば、住宅展示場は、複数の住宅メーカー等の展示モデルハウスを集めて消費者に見学してもらって、モデルハウスの材質、構造、工法、間取り設計、扉、棚などの内装品、設備品の検討、商談を勧誘する場所を意味するものであることが認められる。 本件指定役務である「商品の販売に関する情報の提供、建築物における来訪者の受付及び案内」に即してみると、展示モデルハウスを始めとして、内装、設備品の販売を企図する業者の販売活動に関する情報を消費者に提供するという役務と同時に、展示場のモデルハウス等に来訪する消費者に対する受付、案内の役務が、住宅展示場に関して展開されているものである。審決は、第36類の指定役務中に「建物又は土地の情報の提供」が規定されていることとの対比から、第35類の「商品の販売に関する情報の提供」にいう「商品」には、不動産としての建物(住宅等)や土地は含まれていないと解している。しかしながら、住宅展示場のモデルハウスは、建築を受注する可能性のある建物の見本として並べられているものであり、不動産たる建物が商標法上の商品概念に含めて考えるか否かは別として、住宅展示場のモデルハウスが、本件指定役務の定義中にあって「販売に関する情報」の販売の対象となる「商品」に含まれないと解すべき根拠はないといわなければならない。 この点は、原告、被告とも争っていないところである。 2 証拠によれば、以下の事実を認めることができる(概ね、原告主張の平成10年審判第35643号において、特許庁が平成12年8月30日付けでした審決認定の事実である。甲第154号証)。 ア)株式会社矢野経済研究所発行の「ヤノ・レポート(1981〜1997年発行のもの)」(甲第8ないし第24号証、乙第88ないし第104号証)には、 住宅展示場に関する詳細な紹介内容(当該展示場の名称、所在地、主催者、企画運営者、開設期間、出展メーカー等)が毎年掲載されている。 その中の展示場名の欄には、「○○住宅展示場」や「○○総合住宅展示場」等とともに、「○○住宅公園」、「○○総合住宅公園」、「ABCハウジング○○住宅公園」、「TVK○○住宅公園」等の記載があり、主催・企画運営の欄には、当該住宅展示場の主催・企画運営を行う原告以外の多数の同業他社名の記載がある。そして、「住宅公園」を一部に有する名称の展示場の所在地(開催場所)は、東京、 大阪等の大都市を含む22都府県に及んでいることが認められる。本件商標の登録出願日(1992年9月30日)より前の「ヤノ・レポート」にも、随所に「住宅公園」を冠する上記の展示場所在地(開催地)の記載がある。 イ)被告及び関連会社発行の「立川サンシャインパーク住宅公園計画(1977年8月)」と題するパンフレット(甲第27号証、乙第107号証)には、その住宅公園開設についての説明文中(1頁中段)に「住宅公園(大規模住宅展示場)」の記載がある。また、同説明文中(1頁下段)には「住宅展示場というより、正に『住宅公園』というにふさわしいものです。」との記載があるが、ここでいう「住宅公園」は大規模住宅展示場を意味するものと認められる。 ウ)「朝日新聞、読売新聞等の一般紙及び業界紙による広告(1981年6月ないし1991年3月発行のもの)」(甲第28ないし第46号証、乙第108ないし第126号証)には、複数の住宅メーカー等の展示モデルハウスを取り扱う住宅展示場の紹介・案内(当該展示場所の地図を含む)が掲載され、その中で特定の地名(展示場の所在地名)等を冠した「○○住宅公園」、「○○総合住宅公園」等の記載がある。 3 上記認定事実によれば、「住宅公園」という名称は、本件商標の登録時には、住宅を購入しようとする需要者はもとより、モデルハウスを取り扱う業界内において、いわゆる「総合住宅展示場」と同様に「複数の住宅メーカー等の展示モデルハウスを取り扱う住宅展示場」(住宅展示場)を表す語として広く知られていたものということができる。そして、本件指定役務である「商品の販売に関する情報の提供、建築物における来訪者の受付及び案内」に含まれる、展示モデルハウス販売に関する情報の提供、展示モデルハウスにおける来訪者の受付及び案内の役務も、この住宅展示場に関して一般に行われているものであるから、「住宅公園」という名称は、本件指定役務が提供される場所を表すものとして広く認識されていたものと認めることができる。 本件商標は、この名称と同じ「住宅公園」の文字からなるものであるところ、その指定役務に含まれる展示モデルハウス販売に関する情報の提供、展示モデルハウスにおける来訪者の受付及び案内の役務に接する取引者・需要者は、住宅展示場が常に一定の土地(場所・空間)を必要とすることとの関係上、本件商標を、住宅展示場が設置されている場所が上記役務が提供されるのに適するもの(その土地が広く、周辺地に居住者が多く存在し、駅から近いとか幹線道路に面しているなどの立地条件がよいことなどを条件を充足しているものであること)として把握し、認識するにとどまり、取引者・需要者は、本件商標を、何人の業務に係る「商品の販売に関する情報の提供、建築物における来訪者の受付及び案内」であることについて、認識することができないものといわなければならない。 4 そうすると、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第46条第1項の規定により無効とすべきものであって、本件商標登録は同法第3条第1項第6号に違反するものではないとした審決の判断は誤りである。 |
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結論
以上のとおり、その余の原告の主張について判断するまでもなく、原告の請求は認容されるべきである。 (平成13年6月21日口頭弁論終結) |
裁判長裁判官 | 永井紀昭 |
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裁判官 | 塩月秀平 |
裁判官 | 橋本英史 |