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関連審決 審判1998-30312
関連ワード 指定商品 /  不使用 /  通常使用権 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  国内 /  商標権の移転 /  信義則 /  使用許諾 /  不使用取消審判 / 
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事件 平成 11年 (行ケ) 362号 審決取消請求事件
原告 ラッフルズ・プロパティーズ・インコーポレイテッド
訴訟代理人弁護士 志知俊秀
訴訟復代理人弁護士 藤本圭子
被告 ベアー・ユー・エス・エー・インコーポレーテッド
訴訟代理人弁護士 吉武賢次
同 神谷巖
同 弁理士 佐藤一雄
同 菊地栄
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/09/28
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成10年審判第30312号事件について平成11年6月15日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文第1、2項と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は、「BeaR」の欧文字を横書きしてなり、平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表に基づく区分による第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品とする登録第2667318号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。
本件商標は、平成3年10月16日に株式会社フルーツ(以下「フルーツ」という。)が登録出願をし、平成6年5月31日に商標権者をフルーツとして設定登録された後、平成8年7月8日に被告に対する商標権の移転登録がされたものである。
原告は、平成10年4月2日、被告を被請求人として、本件商標の指定商品中、「洋服、コート、セーター類、下着、水泳着、水泳帽、和服、エプロン、えり巻、靴下、ゲートル、毛皮製ストール、ショール、スカーフ、足袋、足袋カバー、
手袋、布製幼児用おしめ、ネクタイ、ネッカチーフ、バンダナ、保温用サポーター、マフラー、耳覆い、ずきん、すげがさ、ナイトキャップ、ヘルメット、帽子、
ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、手ぬぐい、ハンカチ、ふくさ、ふろしき、クッション、座布団、まくら、マットレス、衣服綿、ハンモック、
布団袋、布団綿、かや、敷布、布団、布団カバー、布団側、まくらカバー、毛布」についての登録を不使用により取り消すことを求める審判請求をし、その予告登録が同月30日(以下「予告登録日」という。)にされた。
特許庁は、同請求を平成10年審判第30312号事件として審理した上、
平成11年6月15日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年7月14日に原告に送達された。
2 審決の理由 審決は、別添審決書写し記載のとおり、本件商標は、フルーツから被告に対する商標権の移転前は商標権者であり、その移転後は通常使用権者であったと認められるフルーツにより、予告登録日前3年以内に日本国内において、取消請求に係る指定商品中「毛布、シーツ、靴下、スリップ、ネクタイ、パンツ、シャツ、セーター、チョッキ、ポロシャツ、Tシャツ、スーツ、スカート、ズボン、ハンカチ、
マフラー、帽子、ふとん、エプロン」等について使用されていた事実を認めることができるから、本件商標の指定商品中、取消請求に係る商品の登録は、商標法50条の規定により取り消すべき限りでないとした。
原告主張の審決取消事由
1 審決は、審判において被告から提出された売上伝票等の取引書類及び商品写真の証拠評価を誤り、これらの証拠によって、本件商標が予告登録日前3年以内に日本国内において、取消請求に係る指定商品について使用されていた旨誤った認定をしたものであるから、違法として取り消されるべきである。
2 取消事由(本件商標の使用の事実の誤認) (1) 審決は、「乙第2号証ないし乙第6号証(注、本訴甲第4号証の2〜6)は、平成7年12月18日付株式会社ラジンに対する売上伝票の写しであって、当時、商標権者であった潟tルーツの売上内容を記載したものと認められる。そして、この売上伝票の『品名・規格』の欄には『BeaR』の文字と共に、『バスタオル』『毛布』『シーツ』等の記載が認められる。乙第8号証ないし乙第15号証(注、本訴甲第4号証の8〜15)も潟tルーツの東タオル他5社に対する売上伝票であり、平成9年6月11日から同10年1月22日の間の日付及び『品名』欄に『BeaR』又は『Bear』の文字と並べて『靴下』『ハンカチ』等の記載が認められる」(審決書8頁23行目〜9頁8行目)とした上、「売上伝票と写真(注、審判乙第20〜31号証、本訴甲第4号証の20〜31、乙第1号証の1〜12)とを併せ勘案すれば、本件商標は、商標権移転前は権利者により、またそれ以降は本件商標の通常使用権者により、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、取消請求に係る指定商品中の『毛布、シーツ、靴下、スリップ、ネクタイ、パンツ、シャツ、セーター、チョッキ、ポロシャツ、Tシャツ、スーツ、スカート、ズボン、ハンカチ、マフラー、帽子、ふとん、エプロン』等について使用されている事実を認めることができる」(同9頁末行〜10頁6行目)と認定した。
しかしながら、以下のとおり、その認定は誤りである。
(2) フルーツの代表者であるC(以下「C」という。)の陳述書(乙第4号証)及び本件と当事者を同じくする当裁判所平成11年(行ケ)第361号事件の証人調書(乙第6号証)に記載されたCの証言(以下「Cの証言」という。)中には、上記各売上伝票(甲第4号証の2〜6、8〜15)記載の商品に本件商標が使用されていた旨の記載があるが、フルーツは、本件商標の登録が取り消された場合には、被告から、その譲渡代金30万ドルの返還を請求される可能性があり、本件訴訟の結果に重大な利害関係を有すること、Cは、上記事件の証人尋問の際に、原告代理人に、本件商標を付した商品の仕入れの有無を調査し、これがあるときはその裏付資料を提出すること等を約束したにもかかわらず、被告はその実行を拒否していること、上記陳述書の記載及びCの証言はあいまいで一貫性がないこと等に照らし、本件商標の使用に関する上記陳述書の記載及びCの証言は信用することができない。
(3) フルーツと被告との間の1996年(平成8年)5月1日付け契約書(乙第2号証の1、2)には、被告がフルーツに対し本件商標の使用許諾をした旨が記載されているが、本件訴訟において、当初、被告は、当該使用許諾は口頭でされたもので文書は存在しない旨主張していたのみならず、上記契約書の作成日付(平成8年5月1日)と、本件商標権移転の登録上の譲渡日付(同年3月29日)に食違いがあることに照らして、上記契約書は実際の権利関係を反映するものではなく、
被告とフルーツとの間の本件商標の使用許諾契約は存在しないものというべきである。
仮に、上記契約書によって、被告とフルーツとの間の本件商標の使用許諾契約の存在が認められるとしても、同契約書上、使用許諾に係る商品の範囲は「タオル、ハンカチ、エプロン、マット、バスローブ、パジャマ(寝室で使用されるもの)、ベッドカバー、毛布、寝具類」に限られており(第4条)、フルーツがこれ以外の商品について本件商標を使用しても、被告にとって商標法50条の「登録商標の使用」に当たるということはできない。
この点につき、Cの証言中には、上記使用許諾契約時にフルーツが有していた在庫品であれば、上記商品以外の本件商標が付された商品であっても、早い時期に売却することを被告が認める口頭の約束があった旨の部分があるが、例えば、
これに該当する商品であるポロシャツを到底「早い時期」といえない平成9年6月26日に売却したとされている(甲第4号証の10)ことに照らして、Cの証言の上記部分は信用することができない。
なお、フルーツの商業登記簿謄本(甲第6号証)の目的欄の記載、同社の会社経歴書(甲第9号証)の記載、同社のチラシ、名刺、看板(甲第10号証添付資料H、I、M、O)の記載上、フルーツの取扱い商品はタオル製品であること、
及びCの証言中に同社がタオルの専業業者である旨の部分があることに照らして、
フルーツはタオルのみを扱う業者と認められるから、(1)の各売上伝票(甲第4号証の2〜6、8〜15)の記載のうち、それ以外の商品を販売した旨の部分は信用することができない。
(4) 被告は、「BEAR」、「Bear」又は「bear」の構成態様より成る商標の使用が、社会通念上本件商標と同一と認められる商標の使用に当たるというべきである旨主張する。
しかしながら、そもそも、フルーツがこれらの構成態様の商標を使用したことを認めるに足りる的確な証拠はない。のみならず、本件商標は、前後端が大文字で中央2文字が小文字であるその特異な文字の配列によって、熊を意味する英単語を想起させず、称呼も「ベアー」又は「ビール」であるから、「BEAR」、
「Bear」又は「bear」の構成態様より成る商標と外観観念称呼が異なり、社会通念上同一と認められる商標であるとはいえない(甲第29号証)。また、本件商標の出願過程において、フルーツは拒絶理由通知に対し、その旨を主張して本件商標の設定登録を得たのであるから、「BEAR」、「Bear」又は「bear」の構成態様より成る商標の使用が、社会通念上本件商標と同一と認められる商標の使用に当たる旨被告が主張することは信義則に反する。
(5) 以上を併せ考慮して、(1)の各売上伝票(甲第4号証の2〜6、8〜15)の記載を検討すると、以下のとおりである。
ア 甲第4号証の2〜6(審判乙第2〜第6号証)について これらは、フルーツの作成に係る株式会社ラジンに対する売上伝票とされているものである。
しかしながら、その各「品名・規格」欄の「BeaR」との記載は、商品名の記載と筆跡、筆圧及びインクの濃淡が異なっており(甲第13号証の1〜5)、異なる機会に記入されたことが明らかである上、Cの証言中には、フルーツでは、伝票の記載において、「BeaR」の文字が付された商品と、「BEAR」、「Bear」又は「bear」の文字が付された商品とを区別していなかった旨の部分があるから、上記各売上伝票に「BeaR」との記載があるからといって、「BeaR」の文字が付された商品が取引されたとは認め得ない。
また、原告の調査によっても、株式会社ラジンという会社の存在を認識できなかった(甲第5号証)。
さらに、各「品名・規格」欄に記載された商品のうち、甲第4号証の3の「靴下、スリップ、ネクタイ」、同号証の4の「パンツ、シャツ、ネクタイ」、
同号証の5の「セーター、チョッキ、ポロシャツ、Tシャツ、ナイトガウン」、同号証の6の「スポーツウェア、ジャケット、スーツ、スカート、ズボン」はいずれも被告のフルーツに対する本件商標の使用許諾に係る商品の範囲外の商品であり、
同号証の2の「ケット、毛布、シーツ」、同号証の3の「バスローブ、ネグリジェ、靴下、スリップ、ネクタイ」、同号証の4の「パンツ、寝巻、シャツ、ネクタイ」、同号証の5の「セーター、チョッキ、ポロシャツ、Tシャツ、ナイトガウン」、同号証の6の「スポーツウェア、ジャケット、スーツ、スカート、ズボン」はいずれもフルーツの取扱い商品外の商品である。
これらの事実を併せ考えれば、上記各売上伝票の記載によって本件商標の使用の事実を認めることはできない。
イ 甲第4号証の8(審判乙第8号証)について これは、フルーツの作成に係る東タオルに対する売上伝票とされているものである。
しかしながら、その原本は提出されていないところ、Cの証言中には、
この点につき探しても見つからなかったとする部分があるが、商法36条1項によって10年間の保存義務が、法人税法施行規則67条1項1号、2項により原則として7年間の保管義務が課されていることにかんがみて、Cの証言中の上記部分は信用できず、上記原本の不提出の事実は、このような売上伝票が存在しないことを推認させるものである。のみならず、売上伝票に「BeaR」との記載があるからといって、「BeaR」の文字が付された商品が取引されたとは認め得ないことは、上記アの場合と同様である。
また、東タオルという名称の会社は商業登記簿に存在しない(甲第16号証の1、2)。
さらに、品名欄に記載された商品のうち「ポンチョ、靴下」は被告のフルーツに対する本件商標の使用許諾に係る商品の範囲外の商品であり、「ポンチョ、靴下、ハンドタオル」はフルーツの取扱い商品外の商品である。
これらの事実を併せ考えれば、上記売上伝票の記載によって本件商標の使用の事実を認めることはできない。
ウ 甲第4号証の9(審判乙第9号証)について これは、フルーツの作成に係る有限会社橋場寝装に対する売上伝票とされているものである。
しかしながら、その原本は提出されていないところ、Cの証言中のこの点に関する部分が信用できず、上記原本の不提出の事実はこのような売上伝票が存在しないことを推認させるものであることは、上記イの場合と同様であり、売上伝票に「BeaR」との記載があるからといって、「BeaR」の文字が付された商品が取引されたとは認め得ないことは、上記アの場合と同様である。
また、品名欄に記載された商品のうち「シーツ、ポンチョ」は被告のフルーツに対する本件商標の使用許諾に係る商品の範囲外の商品であり、「シーツ、
カバー、ポンチョ、ハンカチ」はフルーツの取扱い商品外の商品である。さらに、
有限会社橋場寝装の商業登記簿謄本(甲第15号証)の目的欄には「1寝具、寝装品の卸販売 2前号に附帯する一切の業務」とのみ記載されているから、「ポンチョ、ハンカチ」は同社の扱い商品以外の商品でもある。
これらの事実を併せ考えれば、上記売上伝票の記載によって本件商標の使用の事実を認めることはできない。
エ 甲第4号証の10(審判乙第10号証)について これは、フルーツの作成に係る友恵商事に対する売上伝票とされているものである。
しかしながら、売上伝票に「BeaR」との記載があるからといって、
「BeaR」の文字が付された商品が取引されたとは認め得ないことは、上記アの場合と同様である。
また、品名欄に記載された商品である「マフラー、靴下、帽子、ポロシャツ」は被告のフルーツに対する本件商標の使用許諾に係る商品の範囲外の商品であり、フルーツの取扱い商品外の商品でもある。
さらに、友恵商事は、平成6年3月15日及び同年4月15日に振出手形の不渡り事故を起こして事実上倒産し(甲第20号証)、上記売上伝票の日付である平成9年6月26日には営業をしていなかったことが認められる。
これらの事実を併せ考えれば、上記売上伝票の記載によって本件商標の使用の事実を認めることはできない。
オ 甲第4号証の11(審判乙第11号証)について これは、フルーツの作成に係る東北アテネ株式会社に対する売上伝票とされているものである。
しかしながら、その原本は提出されていないところ、Cの証言中のこの点に関する部分が信用できず、上記原本の不提出の事実はこのような売上伝票が存在しないことを推認させるものであることは、上記イの場合と同様であり、売上伝票に「BeaR」との記載があるからといって、「BeaR」の文字が付された商品が取引されたとは認め得ないことは、上記アの場合と同様である。
これらの事実を併せ考えれば、上記売上伝票の記載によって本件商標の使用の事実を認めることはできない。
カ 甲第4号証の12、13(審判乙第12、第13号証)について これらは、フルーツの作成に係る株式会社セレネに対する売上伝票とされているものである。
しかしながら、その各原本は提出されていないところ、Cの証言中のこの点に関する部分が信用できず、上記各原本の不提出の事実はこのような売上伝票が存在しないことを推認させるものであることは、上記イの場合と同様であり、売上伝票に「BeaR」との記載があるからといって、「BeaR」の文字が付された商品が取引されたとは認め得ないことは、上記アの場合と同様である。
また、原告の調査によっても、株式会社セレネという会社の存在を認識できなかった。
さらに、各「品名」欄に記載された商品である「バスローブ、毛布」(甲第4号証の12)及び「パジャマ、ふとん」(同号証の13)はいずれもフルーツの取扱い商品外の商品である。
これらの事実を併せ考えれば、上記各売上伝票の記載によって本件商標の使用の事実を認めることはできない。
キ 甲第4号証の14、15(審判乙第14、第15号証)について これらは、フルーツの作成に係るシェイクハンド株式会社に対する売上伝票とされているものである。
しかしながら、その各「品名」欄の「BeaR」との記載は、いずれも青色カーボンによる「Bear」の文字の末尾の「r」を黒インクで「R」と修正したものである(甲第13号証の6、7)上、売上伝票に「BeaR」との記載があるからといって、「BeaR」の文字が付された商品が取引されたとは認め得ないことは、上記アの場合と同様である。
また、各品名欄に記載された商品のうち、甲第4号証の14の「Vネックシャツ、トランクス」は被告のフルーツに対する本件商標の使用許諾に係る商品の範囲外の商品であり、これと同号証の15の「刺繍デニムエプロン」とはいずれもフルーツの取扱い商品外の商品である。さらに、シェイクハンド株式会社の履歴事項全部証明書(甲第8号証)の目的欄には「1服装の装飾品等の卸売 2前号に附帯する一切の業務」とのみ記載されているから、同号証の14の「Vネックシャツ、トランクス」及び同号証の15の「刺繍デニムエプロン」は同社の扱い商品以外の商品でもある。
これらの事実を併せ考えれば、上記各売上伝票の記載によって本件商標の使用の事実を認めることはできない。
(6) さらに、(1)の写真(注、審判乙第20〜31号証、本訴甲第4号証の20〜31、乙第1号証の1〜12)について検討すると、以下のとおりである。
ア 甲第4号証の20、25、27、29(乙第1号証の1、6、8、10、審判乙第20、第25、第27、第29号証)について これらは、フルーツの商品であるビーチタオル(甲第4号証の20)、
タオル(同号証の25、27)又はバスタオル(同号証の29)の写真とされている(甲第3号証)ものであるが、いずれも撮影対象物件が提示されていないため、
そのことが確認できない。のみならず、原告の調査によれば、フルーツは本件商標を付したタオルは扱っていなかった。
したがって、上記各写真によって、本件商標の使用の事実を認めることはできない。
イ 甲第4号証の21(乙第1号証の2、審判乙第21号証)について これは、フルーツの商品であるTシャツの写真とされている(甲第3号証)ものであるが、撮影対象物件が提示されていないため、そのことが確認できない。のみならず、Tシャツは、被告のフルーツに対する本件商標の使用許諾に係る商品の範囲外の商品であり、フルーツの取扱い商品外の商品でもある。
したがって、上記写真によって、本件商標の使用の事実を認めることはできない。
ウ 甲第4号証の22(乙第1号証の3、審判乙第22号証)について これは、フルーツの商品であるシャツの写真とされている(甲第3号証)ものであるが、撮影対象物件のシャツには、「BeaR」との刺繍があるものの、タグや、家庭用品品質表示法3条に基づく繊維製品品質表示規程1条3条5号、別表第一の二の項所定の「繊維の組成 家庭洗濯等取扱い方法」並びに「表示者の氏名又は名称及び住所又は電話番号の付記」の表示(以下、同表示又は同規程1条3条5号、別表第一の一の項所定の「繊維の組成」並びに「表示者の氏名又は名称及び住所又は電話番号の付記」の表示を「品質表示」という。)が存在せず、タオルを加工したにすぎないそのデザイン及び縫製から見ても、商品として取引されていたものとは認められない(甲第13号証の23〜26)。Cの証言中には、この点につき同物件が見本であるとする部分があるが、被告の主張と食い違うから信用することができず、仮にそうであるとしても、同シャツが商品として流通することが予定されていない以上、同物件に「BeaR」との刺繍があるからといって、本件商標の使用があったということはできない。
また、シャツは、被告のフルーツに対する本件商標の使用許諾に係る商品の範囲外の商品であり、フルーツの取扱い商品外の商品でもある。
したがって、上記写真によって、本件商標の使用の事実を認めることはできない。
エ 甲第4号証の23(乙第1号証の4、審判乙第23号証)について これは、フルーツの商品であるスカートの写真とされている(甲第3号証)ものであるが、撮影対象物件のスカートには、「BeaR」との刺繍があるものの、これに付されたタグにはそれが株式会社レナウン製の既製品であることを示す表示があり(甲第13号証の27〜31)、同物件が商品として取引されていたものとは認められない。Cの証言中のこの点に関する部分が信用できず、同物件に「BeaR」との刺繍があるからといって、本件商標の使用があったということができないことは、上記ウの場合と同様である。
また、スカートは、被告のフルーツに対する本件商標の使用許諾に係る商品の範囲外の商品であり、フルーツの取扱い商品外の商品でもある。
したがって、上記写真によって、本件商標の使用の事実を認めることはできない。
オ 甲第4号証の24(乙第1号証の5、審判乙第24号証)について これは、フルーツの商品であるハンカチの写真とされている(甲第3号証)ものであるが、撮影対象物件のハンカチ2枚には、それぞれ「BeaR」との刺繍があるものの、タグや品質表示が存在せず、商品として取引されていたものとは認められない(甲第13号証の32、33)。Cの証言中のこの点に関する部分が信用できず、同物件に「BeaR」との刺繍があるからといって、本件商標の使用があったということができないことは、上記ウの場合と同様である。
また、ハンカチはフルーツの取扱い商品外の商品である。
したがって、上記写真によって、本件商標の使用の事実を認めることはできない。
カ 甲第4号証の26(乙第1号証の7、審判乙第26号証)について これは、フルーツの商品であるよだれかけの写真とされている(甲第3号証)ものであるが、撮影対象物件のよだれかけには、「BeaR」との刺繍があるものの、タグや品質表示が存在せず、タオルを加工したにすぎないそのデザイン及び縫製並びに脇ひもが刺繍に縫い付けられていることから見ても、商品として取引されていたものとは認められない(甲第13号証の34〜36)。Cの証言中のこの点に関する部分が信用できず、同物件に「BeaR」との刺繍があるからといって、本件商標の使用があったということができないことは、上記ウの場合と同様である。
また、よだれかけは、被告のフルーツに対する本件商標の使用許諾に係る商品の範囲外の商品であり、フルーツの取扱い商品外の商品でもある。
したがって、上記写真によって、本件商標の使用の事実を認めることはできない。
キ 甲第4号証の28(乙第1号証の9、審判乙第28号証)について これは、フルーツの商品であるポンチョの写真とされている(甲第3号証)ものであるが、撮影対象物件のポンチョには、「BeaR」との刺繍があるものの、タグや品質表示が存在せず、タオルを加工したにすぎないそのデザイン及び縫製から見ても、商品として取引されていたものとは認められない(甲第13号証の37〜39)。Cの証言中のこの点に関する部分が信用できず、同物件に「BeaR」との刺繍があるからといって、本件商標の使用があったということができないことは、上記ウの場合と同様である。
また、ポンチョは、被告のフルーツに対する本件商標の使用許諾に係る商品の範囲外の商品であり、フルーツの取扱い商品外の商品でもある。
したがって、上記写真によって、本件商標の使用の事実を認めることはできない。
ク 甲第4号証の30(乙第1号証の11、審判乙第30号証)について これは、フルーツの商品であるスウェットシャツ及びスウェットパンツの写真とされている(甲第3号証)ものであるが、撮影対象物件は女性用パジャマの上下であって、上着に「BeaR」との刺繍があるものの、襟ネームはちぎり取られており、これに付されたタグにはそれが他のメーカーの既製品であることを示す表示があって(甲第13号証の40〜43)、同物件が商品として取引されていたものとは認められない。Cの証言中のこの点に関する部分が信用できず、同物件に「BeaR」との刺繍があるからといって、本件商標の使用があったということができないことは、上記ウの場合と同様である。
また、スウェットシャツ及びスウェットパンツは、被告のフルーツに対する本件商標の使用許諾に係る商品の範囲外の商品であり、フルーツの取扱い商品外の商品でもある。
したがって、上記写真によって、本件商標の使用の事実を認めることはできない。
ケ 甲第4号証の31(乙第1号証の12、審判乙第31号証)について これは、フルーツの商品であるバスローブの写真とされている(甲第3号証)ものであるが、撮影対象物件が提示されていないため、そのことが確認できない。のみならず、バスローブはフルーツの取扱い商品外の商品である。
したがって、上記写真によって、本件商標の使用の事実を認めることはできない。
(7) 取引書類に関して商標の使用に該当するのは、「取引書類に標章を付して展示し、又は頒布する行為」(商標法2条3項7号)であるところ、甲第4号証の2〜6、8〜15及び乙第3号証の1〜7の各売上伝票は、頒布されることのない社内文書であり、また、甲第4号証の16、17の納品書(メーカー控)は、その各原本が納品先に実際に頒布されたことの主張立証がないから、いずれも本件商標の使用の事実を証明する取引書類には当たらない。
被告の反論
1 審決の認定、判断は正当であり、原告主張の審決取消事由は理由がない。
2 取消事由(本件商標の使用の事実の誤認)について (1) フルーツと被告とは、1996年(平成8年)3月29日に、フルーツから被告に対する本件商標に係る商標権の譲渡及び被告のフルーツに対する本件商標の使用許諾の合意をし、その後、同年5月1日にその内容に従った契約書(乙第2号証の1、2)を作成したものである。なお、上記契約上、文書による合意がなければ、契約の内容を第三者に開示しないこととされている(上記契約書7条)ことから、被告は、本件訴訟において、当初、契約書の存在を明らかにしなかったものである。
また、上記商標権の譲渡及び使用許諾の合意の際、上記契約書4条に規定された使用許諾に係る商品の範囲に属する商品以外に、本件商標が付された在庫商品をフルーツが有していたため、その処置についても協議した上、被告がフルーツに対し当該在庫商品に限り販売することを認めることとし、その旨口頭で合意された。
(2) 原告は、フルーツがタオルのみを扱う業者であると主張するが、フルーツの主たる取扱い商品は、タオル類及びタオル地を用いた繊維製品であり、後者には、シーツ、バスローブ、ポンチョ、スカート、Tシャツ、シャツ、カットソー、
夏掛けのふとんなど様々なものが含まれる。また、フルーツが顧客から受ける注文の中には、トイレタリーグッズ、寝具類などの商品群を対象とするものもあり、フルーツから、これらの商品群に同一ブランドを付して顧客に提案をすることもあるので、タオル地以外の商品も必然的に取扱い商品中に含まれることになる。
(3) フルーツは、本件商標の外、トランクス、子供用トランクス、紳士肌着、
エプロンにつき、「BEAR」、「Bear」又は「bear」の構成態様から成る商標を使用していたところ(乙第3号証の1〜7)、これらの商標の使用は、社会通念上本件商標と同一と認められる商標の使用に当たるというべきである。上記4件の商標は、いずれも綴りが同一であり、本件商標は、語頭と語尾を大文字、語中を小文字に表現してロゴ化したものであって、このような手法を採った商標はよく見受けられるところである(乙第7〜第9号証)。
当裁判所の判断
1 取消事由(本件商標の使用の事実の誤認)について (1) 当事者間に争いのない事実に、本件商標の登録原簿写し(甲第36号証)、1996年(平成8年)5月1日付け契約書(乙第2号証の1、2)、Cの陳述書(乙第4号証)及びCの証言並びに弁論の全趣旨を併せ考えれば、@フルーツは、東京都練馬区に本店及び営業所を有し、タオル類のほか、シーツ、ハンカチ、パジャマ、Tシャツ等の繊維製品の製造及び卸販売の営業を行っていること、
Aフルーツは、本件商標の設定登録を受けた後、平成7年初めから本件商標を付した各種繊維製品の製造、販売を開始したが、同年12月ころに、被告から本件商標に係る商標権の買受けの申入れを受け、その売却条件等の協議を開始するとともに、本件商標を付した各種製品の製造、販売を取り止めていたこと、B平成8年3月29日ころ、上記売却条件が決まって、フルーツと被告とは口頭で売買の合意をし、約1か月後の同年5月1日に上記合意に従った内容の邦文及び英文の契約書(乙第2号証の1、2)を取り交わし、フルーツから被告に対する同月20日受付の商標権移転の登録手続を経て、同年7月8日にその旨の移転登録がされたこと、
C上記合意の主な内容は、フルーツが本件商標に係る商標権を30万ドルで被告に売り渡すこと、被告はフルーツに対し、商品の範囲を「タオル、ハンカチ、エプロン、マット、バスローブ、パジャマ(寝室で使用されるもの)、ベッドカバー、毛布、寝具類」として本件商標につき無償の独占的通常使用権を許諾することであったが、合意の当時、フルーツの在庫品として、上記通常使用権の許諾に係る商品以外にも本件商標を付した製品が残っており、これについて、被告はフルーツに在庫品に限ってその販売を認めるが、フルーツはできるだけ早期にこれを販売する旨の口頭の約束がされたこと、以上の事実を認めることができる。
原告は、本件商標の登録が取り消された場合には、フルーツは被告から譲渡代金の返還を請求される可能性があるとし、また、本件と当事者を同じくする当裁判所平成11年(行ケ)第361号事件におけるCの証人尋問の際に同人が原告代理人に約束した資料の提出の実行を被告が拒んでいるとし、さらに、上記陳述書の記載及びCの証言はあいまいで一貫性がないとして、Cの証言及び上記陳述書(乙第4号証)の記載が信用できないと主張する。しかしながら、本件商標に係る商標権譲渡の効力発生(平成8年7月8日)後を含む期間を対象とする商標登録の不使用取消審判によって商標登録が取り消された場合に、商標権の譲渡後に引き続き一定範囲の独占的通常使用権の許諾を受けた譲渡人が譲受人に対し譲渡代金返還の責任を負うとするのは、必ずしも合理性がなく、原告の憶測であるにすぎない。
また、上記事件におけるCの証人尋問の際、同人が原告代理人に特定の資料の提出を約束したとしても、被告が、上記事件において当該資料を証拠として提出するか否かは、被告代理人がその必要性等を検討した上独自の立場で決めるべきものであって、被告がそれを証拠として提出しなかったからといって、直ちにCの証言の信用性が損なわれるものではない。さらに、Cの証言及び上記陳述書(乙第4号証)の記載には、全体として、通常の記憶違い等に基づく食違い以上の、特に信用性を損なうと認められるような問題点は見当たらない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。
次に、原告は、本件訴訟において、当初、被告が、被告のフルーツに対する使用許諾が口頭でされた旨主張していたこと、及び契約書の作成日付(平成8年5月1日)と本件商標権移転の登録上の譲渡日付(同年3月29日)とに食違いがあることを挙げて、フルーツと被告との間の1996年(平成8年)5月1日付け契約書(乙第2号証の1、2)は実際の権利関係を反映するものではなく、被告とフルーツとの間の本件商標の使用許諾契約は存在しないとも主張する。しかしながら、同契約書の7項には、契約内容について当事者間の秘密保持義務が定められ、
被告及びフルーツは文書による合意がなければ契約の内容を第三者に開示しない旨の規定があるところ、Cの陳述書(乙第4号証)の記載によれば、当該契約書を証拠として提出する旨の書面による合意は本件訴訟の提起よりかなり後にされたことが認められ、また、本件商標権移転の口頭による合意後に、上記契約書の作成がされたことは前示認定のとおりであるから、原告の挙示する事実は上記契約書の信用性を格別損なうものとはいえず、原告の上記主張は採用することができない。
また、原告は、Cの証言中の、上記契約書(乙第2号証の1、2)に使用許諾に係る商品の範囲として記載された「タオル、ハンカチ、エプロン、マット、
バスローブ、パジャマ(寝室で使用されるもの)、ベッドカバー、毛布、寝具類」以外の商品につき、被告はフルーツに在庫品に限ってその販売を認めるが、できるだけ早期に販売することという口頭の約束がされたとする部分につき、これに該当する商品であるポロシャツを売却した平成9年6月26日(甲第4号証の10)が到底「早い時期」といえないとの理由で、信用できないとする。しかしながら、前示認定のような経緯で、被告がフルーツに在庫品に限って本件商標を付した商品の販売を認めるようなときに、その販売のための期間を具体的に限定せず、単に「できるだけ早期に」としただけの場合には、その「早期」とは、被告がフルーツの努力に対する期待を表明したにすぎず、在庫品の販売ができるのが特定の具体的な期間に限られるものではないと解さざるを得ない。したがって、原告の上記主張も採用することができない。
さらに、原告は、フルーツの商業登記簿謄本の目的欄の記載、同社の会社経歴書の記載、同社のチラシ、名刺、看板の記載及びCの証言を挙げて、フルーツはタオルのみを扱う業者であるから、各売上伝票(甲第4号証の2〜6、8〜15)の記載のうち、それ以外の商品を販売した旨の部分は信用することができないと主張する。しかしながら、一般に、会社が行う業務が、商業登記簿の目的欄に記載されたものと必ずしも符合しないことがあることは当裁判所に顕著な事実であり、また、前示の契約書(乙第2号証の1、2)中の使用許諾条項において、「タオル」のほか、「ハンカチ、エプロン、マット、バスローブ、パジャマ(寝室で使用されるもの)、ベッドカバー、毛布、寝具類」が使用許諾に係る商品の範囲として記載されていることに照らしても、原告がタオル類以外の繊維製品を営業品目としていることは明らかであって、原告の上記主張は採用することができない。
(2) Cの証言及び弁論の全趣旨によれば、甲第4号証の22〜24、26、28、30(乙第1号証の3〜5、7、9、11)、甲第13号証の23〜43の各写真の撮影対象物件は、もともと商品として流通することを予定して製造したものではなく、フルーツがシャツ、スカート、ハンカチ、よだれかけ、ポンチョ、パジャマの各製品を製造するに当たり、顧客に対し、各製品に本件商標を付した状況を示すために製作した見本であることが認められる。原告は、その旨のCの証言を、
被告の主張と食い違うとして信用できないと主張するが、フルーツないしCは、そもそも本件の審判及び本訴の当事者ではないから、被告の代理人との意思疎通が十分ではない点があり、被告の主張が実際と多少異なることがあったとしても、そのゆえに、Cの証言の信用性が損なわれるということはできない。
そして、上記甲第4号証の22〜24、26、28、30(乙第1号証の3〜5、7、9、11)、甲第13号証の23〜43の各写真及びCの証言によれば、フルーツの上記各製品の見本は、商品に本件商標を付したものであることが認められる。
(3) 審決の挙示するフルーツの売上伝票(甲第4号証の2〜6、8〜15、審判乙第2〜第6号証、第8〜第15号証)のうち、以下のとおり、少なくとも甲第4号証の8〜13の各売上伝票に記載された商品の取引において本件商標が使用されたものと認められる。
ア 甲第4号証の8(審判乙第8号証)について これは、東タオルに対する平成9年6月11日付け売上伝票の写しであって、同日、原告が東タオルに「BeaRポンチョ」20枚、「BeaR S.T」10枚(弁論の全趣旨によれば、「S.T」は「スポーツタオル」を意味すると認められる。)、「BeaR靴下」19足、「BeaRハンカチ」59枚、「BeaRハンドタオル」229枚を売り上げた旨が記載されたものであるが、このことに、上記(2)のとおり、フルーツの製品見本において商品に本件商標が付されていること、乙第4号証及びCの証言を併せ考えれば、同売上伝票記載のとおり、本件商標が付された上記各商品の売上げの取引がされたものと認めることができる。
原告は、同売上伝票の原本が提出されていない事実がこのような売上伝票が存在しないことを推認させる旨主張するが、乙第4号証、Cの証言及び弁論の全趣旨によれば、同売上伝票の原本は、Cが、被告訴訟代理人弁理士の依頼により、本件の審判に提出すべく写しを作成した後、しまい忘れて発見できないことが認められるほか、これと同様に審判に提出するため写しを作成した売上伝票中には原本が存在するもの(甲第4号証の2〜6、10、14、15)もあることを併せ考えれば、甲第4号証の8の原本が存在したことは明らかである。原告は、商法上の保存義務ないし法人税法施行規則上の保管義務にも言及するが、上記のとおり、
発見できないのは偶発的な事情に基づくものであるから、もともとこれらの義務の懈怠があったものではない。
原告は、フルーツでは、伝票の記載において、「BeaR」の文字が付された商品と、「BEAR」、「Bear」又は「bear」の文字が付された商品とを区別していなかったから、売上伝票に「BeaR」との記載があるからといって、「BeaR」の文字が付された商品が取引されたとは認め得ないとも主張するが、仮に、フルーツにおいて伝票の記載上、「BeaR」、「BEAR」、「Bear」又は「bear」の文字が付された商品を区別していなかったことがあるとした場合に、特異な文字配列である「BeaR」の文字が付された商品につき、
伝票上、一般的な文字配列である「BEAR」、「Bear」又は「bear」と記載することはあり得ても、逆に、一般的な文字配列である「BEAR」、「Bear」又は「bear」の文字が付された商品につき、伝票上、特異な文字配列である「BeaR」と記載することは考え難いから、原告の上記主張は採用し難い。
また、原告は、東タオルという名称の会社は商業登記簿に存在しない旨主張するが、Cの証言によれば、東タオルは個人経営の企業であることが認められ、これに反する乙第4号証の記載は採用し難いから、当該商業登記簿が存在しなくとも異とするには当たらない。
さらに、原告は、「ポンチョ、靴下」は被告のフルーツに対する本件商標の使用許諾に係る商品の範囲外の商品であり、「ポンチョ、靴下、ハンドタオル」はフルーツの取扱い商品外の商品である旨主張するが、この主張が採用できないことは上記(1)のとおりである。
イ 甲第4号証の9(審判乙第9号証)について これは、有限会社橋場寝装に対するに対する平成9年6月17日付け売上伝票の写しであって、同日、原告が同社に「BeaRシーツ」20枚、「BeaRカバー」10枚、「BeaRポンチョ」20枚、「BeaRハンカチ」600枚を売り上げた旨が記載されたものであるが、このことに、上記(2)のとおり、フルーツの製品見本において商品に本件商標が付されていること、乙第4号証及びCの証言を併せ考えれば、同売上伝票記載のとおり、本件商標が付された上記各商品の売上げの取引がされたものと認めることができる。
原告は、同売上伝票の原本が提出されていない事実がこのような売上伝票が存在しないことを推認させる旨、売上伝票に「BeaR」との記載があるからといって、「BeaR」の文字が付された商品が取引されたとは認め得ない旨及び「シーツ、ポンチョ」は被告のフルーツに対する本件商標の使用許諾に係る商品の範囲外の商品であり、「シーツ、カバー、ポンチョ、ハンカチ」はフルーツの取扱い商品外の商品である旨主張するが、これらの主張がいずれも採用し難いことは、
上記アの場合と同様である。
また、原告は、有限会社橋場寝装の商業登記簿謄本(甲第15号証)の目的欄に「1寝具、寝装品の卸販売 2前号に附帯する一切の業務」とのみ記載されているから、「ポンチョ、ハンカチ」は同社の扱い商品以外の商品である旨主張するが、一般に、会社が行う業務が、商業登記簿の目的欄に記載されたものと必ずしも符合しないことがあることは当裁判所に顕著な事実であるから、原告の上記主張も採用することができない。
ウ 甲第4号証の10(審判乙第10号証)について これは、友恵商事に対する平成9年6月26日付け売上伝票の写しであって、同日、原告が友恵商事に「BeaRマフラー」36枚、「BeaR靴下」20足、「BeaR帽子」20個、「BeaRポロシャツ」2枚を売り上げた旨が記載されたものであるが、このことに、上記(2)のとおり、フルーツの製品見本において商品に本件商標が付されていること、乙第4号証及びCの証言を併せ考えれば、
同売上伝票記載のとおり、本件商標が付された上記各商品の売上げの取引がされたものと認めることができる。
原告は、売上伝票に「BeaR」との記載があるからといって、「BeaR」の文字が付された商品が取引されたとは認め得ない旨及び「マフラー、靴下、帽子、ポロシャツ」は被告のフルーツに対する本件商標の使用許諾に係る商品の範囲外の商品であり、フルーツの取扱い商品外の商品でもある旨主張するが、これらの主張がいずれも採用し難いことは、上記アの場合と同様である。
また、弁護士藤本圭子作成の電話聴取書(甲第20号証)及びCの証言によれば、平成6年3月15日及び同年4月15日に友恵商事株式会社が振出手形の不渡り事故を起こし、事実上倒産したことが認められるところ、原告は、上記売上伝票記載の売上先である「友恵商事」が同社であることを前提として、同社が平成9年6月26日には営業をしていなかった旨主張するが、Cの証言及び弁論の全趣旨によれば、同社の経営者が、同社の倒産後個人経営によって営業を再開しており、同売上伝票記載の売上先は同人であることが認められるから、原告の上記主張はその前提を欠くものとして失当である。
エ 甲第4号証の11(審判乙第11号証)について これは、東北アテネ株式会社に対する平成9年7月1日付け売上伝票の写しであって、同日、原告が同社に「BeaR ミニO.T」120枚、「BeaR S.T」48枚、「BeaR B.T」(単価450円のもの)30枚、「BeaR B.T」(単価550円のもの)30枚、「BeaR O.T」232枚(弁論の全趣旨によれば、「O.T」、「B.T」はそれぞれ「おしぼりタオル」、「バスタオル」を意味するものと認められる。また、「S.T」が「スポーツタオル」を意味すると認められることは上記のとおりである。)を売り上げた旨が記載されたものであるが、このことに、上記(2)のとおり、フルーツの製品見本において商品に本件商標が付されていること、乙第4号証及びCの証言を併せ考えれば、同売上伝票記載のとおり、本件商標が付された上記各商品の売上げの取引がされたものと認めることができる。
原告は、同売上伝票の原本が提出されていない事実がこのような売上伝票が存在しないことを推認させる旨及び売上伝票に「BeaR」との記載があるからといって、「BeaR」の文字が付された商品が取引されたとは認め得ない旨主張するが、これらの主張がいずれも採用し難いことは、上記アの場合と同様である。
オ 甲第4号証の12、13(審判乙第12、第13号証)について これらは、株式会社セレネに対するに対する平成9年8月6日付け売上伝票及び同年9月4日付け売上伝票の各写しであって、前者は同年8月6日に原告が同社に「BeaRバスローブ」10枚、「BeaR毛布」10枚を売り上げた旨が、後者は同年9月4日に原告が同社に「BeaRパジャマ」10枚、「BeaRふとん」10枚を売り上げた旨が記載されたものであるが、このことに、上記(2)のとおり、フルーツの製品見本において商品に本件商標が付されていること、乙第4号証及びCの証言を併せ考えれば、同各売上伝票記載のとおり、本件商標が付された上記各商品の売上げの取引がされたものと認めることができる。
原告は、同各売上伝票の原本が提出されていない事実がこのような売上伝票が存在しないことを推認させる旨、売上伝票に「BeaR」との記載があるからといって、「BeaR」の文字が付された商品が取引されたとは認め得ない旨及び「バスローブ、毛布、パジャマ、ふとん」はいずれもフルーツの取扱い商品外の商品である旨主張するが、これらの主張がいずれも採用し難いことは、上記アの場合と同様である。
また、原告は、原告の調査によっても株式会社セレネという会社の存在を認識できなかった旨主張するが、Cの証言によれば、同社は実在することが認められる。
(4) 以上によれば、審決が、フルーツの各売上伝票(甲第4号証の2〜6、8〜15、審判乙第2〜第6号証、第8〜第15号証)及び写真(甲第4号証の20〜31、審判乙第20〜第31号証)によって「本件商標は、商標権移転前は権利者により、またそれ以降は本件商標の通常使用権者により、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、取消請求に係る指定商品中の『毛布、シーツ、靴下、スリップ、ネクタイ、パンツ、シャツ、セーター、チョッキ、ポロシャツ、Tシャツ、スーツ、スカート、ズボン、ハンカチ、マフラー、帽子、ふとん、エプロン』等について使用されている」(審決書9頁末行〜10頁6行目)とした認定は、少なくとも、甲第4号証の8〜13(審判乙第8〜第13号証)の各売上伝票に記載された商品の取引によって、本件商標が、通常使用権者であるフルーツにより、予告登録日前3年以内に日本国内において、取消請求に係る指定商品中、靴下、マフラー(えり巻)、帽子、ハンカチ、毛布、シーツ(敷布)、ふとんについて使用されているとの事実を認定した限度で誤りはない。
なお、原告は、甲第4号証の8〜13の各売上伝票が商標法2条3項7号にいう「取引書類」に当たることを前提として、これらの売上伝票が頒布されることのない社内文書であることを理由に、いずれも本件商標の使用の事実を証明するものでない旨主張するが、上記各売上伝票に係る商品の取引による本件商標の使用が同項2号所定の行為を指すものであることは、以上の認定判断に照らして明らかであるから、原告の上記主張は前提において失当である。
そうすると、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者により、取消請求に係る指定商品中、上記各商品について使用されているから、本件商標の指定商品中、取消請求に係る商品についての商標登録を、商標法50条に基づいて取り消すことはできない。
2 よって、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらないから、原告の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担並びに上告及び上告受理申立てのための付加期間の指定につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条96条2項を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 石原直樹
裁判官 宮坂昌利