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関連審決 審判1999-30659 審判1996-13813
審判1999-30472
関連ワード 包装 /  指定商品 /  指定役務 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  汚染(ポリューション) /  類似性(類否判断) /  不使用 /  商品の類似 /  国内 /  存続期間 /  更新登録 /  継続 /  非類似 /  ハウスマーク /  商号 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 131号 審決取消請求事件
原告A
訴訟代理人弁護士 上谷清
同 宇井正一
同 笹本摂
同 弁理士 青木篤
同 勝部哲雄
同 田島壽
同 菊池桂子
被告 月島機械株式会社
訴訟代理人弁護士 牧野利秋
同 鈴木修
同 伊藤玲子
同 弁理士 柳生征男
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/09/26
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成11年審判第30659号事件について平成13年2月5日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は、「TSK」の欧文字を書してなり、設定登録時における指定商品を平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表による第9類「産業機械(但し、金属加工機械器具、土木機械器具および荷役機械器具を除く)動力機械器具、風水力機械器具、事務用機械器具、その他の機械器具で他の類に属しないもの、機械要素(但し動力伝導装置、管継ぎ手、パッキングおよびガスケットを除く)」とする登録第1750047号商標(昭和54年2月16日登録出願、昭和60年2月27日設定登録、平成7年1月30日存続期間更新登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。なお、上記指定商品中「学校給食用配膳台、
ざる置き台、その他の業務用調理機械器具及びその類似品」については平成8年審判第13813号事件の審決の確定(平成9年4月25日)により、同「発光式又は機械式の道路標識及びこれに類似する商品並びに自動販売機及びこれに類似する商品」については平成11年審判第30472号事件の審決の確定(平成12年1月14日)により、それぞれ登録が取り消された。
原告は、平成11年6月1日、被告を被請求人として、本件商標の指定商品中「半導体製造装置及びこれに類似する商品、石材加工機械器具及びこれに類似する商品、ガラス器製造機械及びこれに類似する商品」に係る登録につき不使用による取消しの審判を請求した(以下「本件審判請求」という。)。なお、本件審判請求の予告登録は、平成12年5月31日にされた請求の趣旨の記載の指定商品を誤った登録を経て、同年8月2日に錯誤を原因として上記のとおり職権更正されたものである。
特許庁は、本件審判請求を平成11年審判第30659号事件として審理した上、平成13年2月5日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年3月3日原告に送達された。
2 審決の理由 審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、本件商標は、被請求人(被告)により、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において同請求に係る指定商品である「半導体製造装置」あるいはこれに類似する商品及び「石材加工機械器具」について使用されていたから、本件審判請求に係る指定商品について、商標法50条の規定により登録を取り消すことはできないとした。
原告主張の審決取消事由
審決は、本件審判請求に係る指定商品である「半導体製造装置及びこれに類似する商品」及び「石材加工機械器具及びこれに類似する商品」について本件商標が使用されたとの誤った認定判断をした(取消事由1、2)ものであるから、違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(「半導体製造装置及びこれに類似する商品」について本件商標の使用を認めた誤り) (1) 「高純度薬液自動充填装置」について ア 審決は、「高純度薬液自動充填装置」の商品カタログ(審判乙第3号証、本訴甲第4号証の3)に示されている商品(以下「本件高純度薬液自動充填装置」という。)は、「半導体製造装置」の下位概念である「半導体製造用関連装置」中の「薬液用装置」の範疇に属する商品あるいはこれに類似する商品であると判断する(審決謄本4頁25行目〜5頁23行目)が、誤りである。
イ 商標の指定商品としての「半導体製造装置」とは、専ら半導体製造に用いられる装置であり、「半導体製造用関連装置」とは、半導体製造工程に直接供される装置と解すべきである。
ところが、同カタログの「本システムは、当社の薬液ハンドリング技術及びノウハウをもとに、高純度薬品の取扱いで必要とされる品質要求を、充分に満足した画期的なボトリングシステムです。」との記載にあるように、本件高純度薬液自動充填装置は、瓶に薬液を詰める装置にすぎない。すなわち、本件高純度薬液自動充填装置は、薬液製造業者が、瓶を洗浄及び乾燥させ、薬液を充填し、蓋をしてラベリングをして出荷するという薬液の出荷工程において、薬液を瓶に充填するための装置であるから、半導体製造メーカーにおいて行われる半導体製造工程で用いられるものではなく、半導体の洗浄液を製造する化学薬品メーカー等において用いられ、瓶に詰められた洗浄液が半導体メーカーに販売されるものと考えられるのであって、半導体製造工程に直接供される装置ではない。しかも、当該薬液自体、
半導体製造工程において半導体ウェーハ等を洗浄する薬液に限られていないのであるから、本件高純度薬液自動充填装置が専ら半導体製造に用いられる装置であるということもできない。
そうすると、本件高純度薬液自動充填装置は、むしろ「包装用機械器具」に該当するものであって、「半導体製造装置」ないし「半導体製造用関連装置」に当たるとはいえない。なお、日本標準商品分類(甲第5号証)においても、
「びん詰め機械」は「包装機械及び荷造り機械」に属するものとされ、「半導体製造装置」に属するものとはされていない。
ウ また、本件審判請求に係る指定商品は「半導体製造装置に類似する商品」を含むところ、「包装用機械器具」に属する本件高純度薬液自動充填装置と、
「半導体製造装置」とは、商品の機能、用途、使用分野等において著しく異なっており類似する商品ということはできない。とりわけ半導体製造装置の市場は、特殊な専門業者であるその関連企業同士の取引として包装用機械器具とは全く別個の著しく特化した市場を形成しており、その需要者も専門家である企業であって、商品の出所を誤認することはあり得ない。なお、特許庁の「類似商品・役務審査基準」においても、「包装用機械器具」と「半導体製造装置」とは非類似の商品とされている。
エ 被告は、本件高純度薬液自動充填装置の広告が業界誌「電子材料」に掲載されたこと、同装置は「半導体製造装置・材料の国際エキシビジョン」に出品展示されたことを主張するが、そのような雑誌広告やエキシビジョンにおいて半導体製造装置以外の商品が掲載ないし出品展示されることは十分あり得ることであって、本件高純度薬液自動充填装置が半導体装置に該当することを何ら立証することにはならない。
しかも、上記エキシビジョンは平成11年12月1日〜3日に開催されたものであるから、同エキシビジョンでの出品展示に係る本件商標の使用は、商標法50条2項に定める「審判の請求の登録前3年以内」の使用を示すものとはいえない。すなわち、本件審判請求は平成11年6月1日にされ、その請求書副本の被告への送達は同年7月26日に行われているところ、特許庁は予告登録を失念し、
平成12年5月31日に至って初めてその登録をしたものであるから、本件において、上記「3年以内」の期間の基準日は、被告が本件審判請求を了知した平成11年7月26日であると解すべきであり、上記エキシビジョンの開催が上記期間外であることは明らかである。
また、被告は、本件高純度薬液自動充填装置を大手半導体メーカーの信越化学工業株式会社に納入した旨主張するが、同社は大手化学メーカーであって、
「半導体メーカー」ではない。
(2) 「プラズマ成膜装置」及び「マルチスパッタ装置」について ア 被告は、本件商標の「プラズマ成膜装置」及び「マルチスパッタ装置」についての使用を「半導体製造装置」についての使用であると主張するが、この点は、審決において何ら判断が示されていないから、本訴において判断を求めることは許されないというべきであるし、この点をおくとしても、以下のとおり、「プラズマ成膜装置」及び「マルチスパッタ装置」に関して、「半導体製造装置」についての本件商標の使用があったとはいえない。
イ 被告の主張に係る「プラズマ成膜装置」は、小規模な実験用装置にすぎず、実際上も大学や企業の研究機関を取引の相手方とするものであるから、製造業者による大量かつ長期の使用を予定する「半導体製造装置」ではない。そもそもプラズマ成膜装置は、レンズのコーティング、歯科医療その他の様々な用途に使用される多目的な装置であるところ、被告の主張に係る「プラズマ成膜装置」も、半導体製造のみに特化しない多目的な商品であって、これを半導体製造装置であるということはできない。
さらに、被告が上記「プラズマ成膜装置」について本件商標が使用されたことを立証するために提出した甲第4号証の13〜16の受取証明書は、証拠価値が乏しく使用の事実の立証もないというべきである。
ウ 被告の主張に係る「マルチスパッタ装置」は、研究開発段階の試作品にすぎず、商標法上の商品とはいえない。すなわち、同装置は、新エネルギー・産業技術総合開発機構から補助を受け、平成10年度速効型提案公募事業採択プロジェクトの一環として、被告と東北大学大学院B研究室との共同研究に基づいて開発されたものであるが、現実に半導体製造業者に販売された形跡はなく、研究報告書概要(甲第14号証)等に照らしても、いまだ生産装置としては未完成の研究開発段階のものであることが明らかである。
なお、被告は、その販売の事実を立証するため、被告が「マルチスパッタ装置」を東北大学に納入したことを紹介する平成12年4月19日付け業界紙の記事(甲第4号証の19)を提出するが、これが商標法50条2項に定める「審判の請求の登録前3年以内」の使用の事実を示す証拠といえないことは、前記(1)エで述べたところと同様である。
2 取消事由2(「石材加工機械器具及びこれに類似する商品」について本件商標の使用を認めた誤り) (1) 審決は、「Eco-Chart」の商品カタログ(審判乙第8号証・本訴甲第4号証の8)には、「廃棄物を結晶化石材に加工する装置」を含むものであり、これは「石材加工機械器具」に該当する旨判断する(審決謄本5頁25行目〜6頁26行目)が、誤りである。
(2) まず、上記商品カタログは、「Eco-Chart」の商標が使用された外装壁タイルの商品カタログであって、その製造工程で「廃棄物を結晶化石材に加工する装置」が用いられることは記載されているものの、当該装置自体が販売の対象物であることを読み取ることはできない。この点は、平成11年5月11日付け「化学工業日報新聞」の記事及び同月19日付け「環境新聞」の記事についても同様である。そうすると、「廃棄物を結晶化石材に加工する装置」は、対価をもって他人に販売される物品である商標法上の「商品」には当たらないというべきである。
また、審決は、「廃棄物を結晶化石材に加工する装置」が、5社の共同開発に係る「Eco-Chart」なる外装壁タイルの製造工程を構成する機械類のいずれを指すものか特定しておらず、この点においても違法というべきである。
(3) 次に、審決が、「廃棄物を結晶化石材に加工する装置」を「石材加工機械器具」に該当するとした判断も誤りである。すなわち、商標の指定商品としての「加工機械器具」には「製造装置」は含まないと解すべきであり、このことは、例えば、製鉄用の「工業用炉」と「金属加工機械器具」、原料プラスチック製造用の「化学機械器具」と「プラスチック加工機械器具」とがそれぞれ商標法施行規則別表において別の商品に区分されていることからも明らかである。そして、上記「Eco-Chart」の商品カタログによれば、「廃棄物を結晶化石材に加工する装置」は、原材料である廃棄物の焼却灰や下水汚泥を溶解し、結晶化装置によって原材料とは全く別の結晶化石材という製品を製造するものであるから、「結晶化石材製造装置」と解すべきものであって、「石材加工機械器具」ではない。
被告の反論
審決の認定判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。
1 取消事由1(「半導体製造装置及びこれに類似する商品」について本件商標の使用を認めた誤り)について (1) 「高純度薬液自動充填装置」について 高純度薬液は半導体製造に不可欠であり、半導体製造の要となるシリコンウェーハにIC回路を作り込む工程であるリソグラフィ工程や各工程間で必ず必要となるウェーハ洗浄工程において、高純度薬液は決定的な役割を果たしている。そして、本件高純度薬液自動充填装置は、上記リソグラフィ工程に用いられるフォトレジスト液、現像液、カラーレジスト液や、洗浄工程に用いられるイソプロビルアルコール液、アンモニア水溶液、過酸化水素水等、半導体製造工程に使用される高純度薬液に特化した自動充填装置である。このことは、本件高純度薬液自動充填装置の商品カタログ(甲第4号証の3)に、IC回路が焼き込まれた半導体ウェーハのイメージ映像が用いられているほか、「EL薬品(注、エレクトロニクス薬品)をはじめ、高純度薬品を高いクリーン度に保持したままで充填する」と記載されていることからも明らかである。それゆえ、被告は、平成9年4月1日〜平成10年3月31日事業年度の有価証券報告書(乙第2号証)に「液体原料関連では、半導体業界をはじめとするクリーン環境下での計量・充填・洗浄装置等の開発を進めている」と報告しており、また、半導体業界専門誌「電子材料」に本件高純度薬液自動充填装置の広告を掲載したり(甲第4号証の4、5)、平成11年12月1日〜3日に開催された「半導体製造装置・材料の国際エキシビジョン」(甲第4号証の18)にこれを出品展示するなどしたところである。さらに、被告は、平成9年7月28日、本件高純度薬液自動充填装置を大手半導体メーカーである信越化学工業株式会社に販売納入した(乙第10、第11号証)。
なお、商標法50条2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」の基準日は、本件審判請求の当初の予告登録日である平成12年5月31日であるから、上記エキシビジョンでの出品展示に係る本件商標の使用も上記期間内の使用に当たるというべきである。
次に、指定商品の類似性は、商品自体の取引上の誤認混同のおそれがあるかどうかによって判断すべきものではなく、それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるかどうかによって判断すべところ(最高裁昭和36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁)、本件商標は被告の商号の主要部である「月島機械」のローマ字表記「Tsuki Sima Kikai」の頭文字からなる「TSK」とのハウスマーク商標であって、被告は、この商標を本件高純度薬液自動充填装置に使用し、半導体業界誌等に継続して広告を掲載するなどしているのであるから、第三者が同一又は類似の商標を半導体製造装置に使用した場合に、その出所について誤認混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ない。
したがって、本件高純度薬液自動充填装置が「半導体製造装置及びこれに類似する商品」に該当することは明らかである。
(2) 「プラズマ成膜装置」及び「マルチスパッタ装置」について 被告は、本件審判請求の予告登録日である平成12年5月31日前3年以内に、本件商標を「半導体製造装置」である「プラズマ成膜装置」及び「マルチスパッタ装置」について使用した。このことは、被告から「プラズマ成膜装置」のカタログを受領した旨を証明する東北大学大学院工学研究科教授ほかの証明書(甲第4号証の13〜16)、被告が「マルチスパッタ装置」を東北大学に納入したことを紹介する平成12年4月19日付け業界紙「Business&Technology」の記事(同号証の19)等によって証明されるものである。
2 取消事由2(「石材加工機械器具及びこれに類似する商品」について本件商標の使用を認めた誤り)について (1) 原告は、「Eco-Chart」の商品カタログ(甲第4号証の8)からは、「廃棄物を結晶化石材に加工する装置」が販売の対象物であることを読み取ることはできない旨主張するが、同カタログには、タイルの製造工程における「廃棄物を結晶化石材に加工する装置」を含む各種機械が詳しく図式で示されており、被告としては、同装置を商品として製造販売することを前提としていたものである。
現に、被告は、公的事業団や地方公共団体からの受注を受け、「Eco-Chart」加工装置用の溶融炉を納入した実績がある。
(2) 次に、原告は、商標の指定商品としての「加工機械器具」には「製造装置」は含まないとして、「廃棄物を結晶化石材に加工する装置」を「石材加工機械器具」に該当するとした審決の判断が誤りである旨主張する。しかし、「製造」と「加工」にニュアンスの相違はあるとしても、商標法上の商品区分も含めて厳密に区別して使用されているわけではなく、例えば、商標法施行規則別表第7類中「食料加工用又は飲料加工用の機械器具」の下位概念に「アイスクリーム製造機、チーズ製造機、バター製造機」等が記載されている。そうすると、「加工」が「製造」を含む広い概念ということもできるのであって、「石材加工機械器具」は「石材製造機械器具」を含むとした審決の判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(「半導体製造装置及びこれに類似する商品」について本件商標の使用を認めた誤り)について (1) 証拠(甲第4号証の3、5、6、8、13〜16、18、20、乙第7号証の1、2)並びに弁論の全趣旨によれば、平成11年6月1日株式会社工業調査会発行の雑誌「電子材料」に掲載されている本件高純度薬液自動充填装置の広告には被告の商号と並んで「TSK」との本件商標が付されていること、同年12月1日〜3日に幕張メッセにおいて開催された「セミコン・ジャパン99」(半導体製造装置・材料の国際エキシビジョン)の被告のブースには被告の商号と並んで本件商標が大きく表示されるとともに同装置が出品展示されていること、本件商標の構成は、被告の商号の主要部である「月島機械」のローマ字表記「Tsuki Sima Kikai」の頭文字からなるものであって、その商標権者である被告がこれを被告の商号と併記する形でその製造販売に係る各種の商品について使用しており、被告の代表的出所標識(いわゆるハウスマーク商標)であることが認められる。
以上の事実によれば、被告が、商標権者として、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標を本件高純度薬液自動充填装置に使用したことは明らかである。
なお、商標法50条2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」の期間の基準日は、本件においては、本件審判請求の予告登録が指定商品について職権更正された平成12年8月2日であると解すべきである。原告は、上記基準日は被告が本件審判請求を了知した平成11年7月26日(審判請求書副本の送達日)であることを前提として、上記エキシビジョンでの出品展示に係る本件商標の使用は上記期間内の使用に当たらない旨主張するが、商標法50条は、特定の指定商品又は指定役務に係る商標登録について同条1項に基づく取消しの審判請求がされたことを第三者に公示する予告登録の日をもって基準日とすることを定めたものと解すべきであるから、原告の上記主張は、その前提において失当というほかはない。
(2) そこで、本件高純度薬液自動充填装置が、本件審判請求に係る指定商品の一つである「半導体製造装置及びこれに類似する商品」に該当するかどうかについて判断する。
本件高純度薬液自動充填装置の商品カタログ(甲第4号証の3)は、本文冒頭の「ファインマスターシステムとは・・・本システムは、当社の薬液ハンドリング技術及びノウハウをもとに、高純度薬品の取扱いで必要とされる品質要求を、
充分に満足した画期的なボトリングシステムです」との記載に続いて、同システムを構成する装置として、「液充填装置」、「瓶洗浄装置」、「薬液精製供給装置」、「瓶乾燥装置」のそれぞれについて、特長、仕様等を記載したものであるが、このうち「液充填装置」に関しては、「本装置は、ファインマスターシステムの一部として、EL薬品をはじめ、高純度薬品を高いクリーン度に保持したままで充填する、画期的な重量式充填装置です」、「特長 1 クリーンルーム対応、かつ防爆仕様 設置場所はクリーン度クラス10で、防爆仕様に対応できます」との記載があることが認められる。これによれば、本件高純度薬液自動充填装置は、高純度薬品の取扱いにおいて必要とされる高度の品質要求を満たすための特殊な薬液自動充填装置であると認められるが、当該カタログの記載自体において、半導体製造装置との関連性に直接言及しているものではないので、進んで、本件高純度薬液自動充填装置が被告の主張するように半導体製造工程に使用される高純度薬液に特化した装置といえるかどうかについて検討する。
(3) まず、本件高純度薬液自動充填装置の平成10年6月24日作成の販売用VTR(乙第1号証)は、冒頭、半導体製品の製造ラインを背景画面として、「半導体関連産業において高純度薬品の需要が高まり高品質化が要求されています」とのナレーションで始まり、本件高純度薬液自動充填装置はそのような要求にこたえるための装置であることを説明していること、本件高純度薬液自動充填装置の上記カタログ(甲第4号証の3)には、明らかにIC回路が焼き込まれた半導体ウェーハを表していると考えられるイメージ映像が背景に用いられていること、被告は、
本件高純度薬液自動充填装置の広告を、半導体業界の専門誌であると認められる上記「電子材料」の平成10年12月号及び平成11年6月号に掲載し(甲第4号証の4、5)、また、前記のとおり、平成11年12月1日〜3日に幕張メッセにおいて開催された「セミコン・ジャパン99」(半導体製造装置・材料の国際エキシビジョン)の半導体製造関連装置のビジネスショーに同装置を出品展示していること(甲第4号証の18、乙第7号証の1、2)、被告の平成9年4月1日〜平成10年3月31日年度の有価証券報告書(乙第2号証)にも、研究開発活動の一環として、「液体原料関連では、半導体業界をはじめとするクリーン環境下での計量・充填・洗浄装置等の開発を進めている」と記載していることが認められる。
(4) 次に、本件高純度薬液自動充填装置の上記カタログ(甲第4号証の3)に記載されている「EL薬品」の意味について見るに、インターネットの三菱化学株式会社その他の関連ホームページ(乙第8号証)には、「EL(エレクトロニクス)薬品」の用途に関して「半導体デバイスの微細化・高集積化に伴い、洗浄プロセスで使用される薬品への要求は益々厳しくなっています」との記載があるほか、
具体的な薬品として、超純過酸化水素、超純アンモニア水、ポジ型フォトレジスト現像液、有機アルカリ洗浄液、ポリマー除去用洗浄液、ポジ型フォトレジスト用剥離液、ポリイミドエッチング液、化合物半導体用エッチング液及び電子工業用洗浄液を紹介するとともに、超純過酸化水素に関して「シリコンウェハーなどの電子工業用部品の洗浄液として高純度を誇る超純過酸化水素ELM(注、商品名)は、高集積化の進む半導体産業を支えます」、超純アンモニア水に関して「超純度過酸化水素と共に電子工業用部品の洗浄液として幅広く使用されております」、ポリマー除去用洗浄液に関して「A1配線、ゲート電極、コンタクト/ビアホール形成工程において、ドライエッチング、アッシング後、側壁保護膜(サイドウォールポリマー)を除去する洗浄液です」、化合物半導体用エッチング液に関して「ガリウム、
ヒ素をはじめとする化合物半導体ウェハー、デバイスの洗浄やエッチングに使用される過酸化水素を含有した高純度な混酸系エッチング液です」との説明が記載されている。
そして、平成11年1月10日株式会社日本実業出版社発行の「半導体のすべて」(甲第4号証の12)には、半導体製造工程においては、フォトレジスト液、露光部のレジストを溶かす溶剤、各工程間で必ず使用される洗浄液などの多様な薬液が使用されることの記載に加え、例えば、フォトレジスト液については「エキシマ・レーザー露光用レジストには、化学増幅型と呼ばれる、樹脂と酸発生剤および溶剤の混合液が最もポピュラーに使用されています。・・・化学増幅型レジストは、反応に酸を用いているため、アルカリ系不純物に極めて敏感です。このためエキシマレーザー露光を用いるリソグラフィ・エリアでは、ケミカル・フィルターなどによる有機系微量不純物の除去が必須になります」(129頁)との記載が、
洗浄液については「ICでは、ゴミや微量不純物(金属や有機物)は高歩留り、高性能、高信頼性を確保する上で大敵となります。ICの製造ラインであるクリーンルームは、もともと非常に清浄な環境ですが・・・何がしかの汚染が必ず導入されてしまいます。このような汚染を除去するため、ウェーハの『あるプロセス工程から次のプロセス工程』の間には、『洗浄』という工程が入れられています。洗浄法としては、薬液を用いたウェット洗浄が主に用いられています。洗浄液にもいくつかの種類があり、それぞれ汚染の種類によって除去効果が異なります。したがって、単独ではすべての汚染を除去できませんので、これらの薬液を組み合わせて用います」(140頁)との記載がある。
そうすると、半導体製造工程においては、フォトレジスト液、各種の洗浄液その他の薬液が不可欠であって、しかもその薬液については、クリーンルーム内の製造ラインでの使用に対応し得るような高度の品質が要求されており、本件高純度薬液自動充填装置の上記カタログ(甲第4号証の3)にある「EL薬品をはじめ・・・」、「クリーンルーム対応」等の記載もこれを受けたものであることが明らかである。
以上の認定を総合すれば、本件高純度薬液自動充填装置は、その取扱いに係る薬液として、半導体製造工程に用いるフォトレジスト液、洗浄液その他の薬液を想定し、クリーンルームで行われる半導体製造工程における高度の品質要求を満たす仕様を備えたことを特長とする薬液充填装置として、半導体関連企業を主な需要者として製造販売されていることが認められる。
(5) そこで、本件高純度薬液自動充填装置が本件審判請求に係る指定商品である「半導体製造装置及びこれに類似する商品」に該当するかどうかについて判断するに、商標の指定商品としての「半導体製造装置」とは、審決も説示するとおり(審決謄本4頁25〜26行目)、専ら半導体製造に用いられる装置を意味すると解すべきであるが、上記認定によれば、本件高純度薬液自動充填装置は、専ら半導体製造に用いられる装置に当たるというべきである。
なお、商標法施行規則別表は、第7類中に規定する「半導体製造装置」の下位概念を具体的に示していないが、その下位概念の射程を検討する上で、平成12年3月財団法人全国統計協会連合会発行、総務庁統計局統計基準部編集の「日本標準商品分類(平成2年6月改訂)」(甲第5号証)が参考になるところ、これによれば、分類番号43 91の「半導体製造装置」の下位概念として、分類番号43 917の「半導体製造用関連装置」が、更にその下位概念として、分類番号43 9173の「薬液用装置」が、更にその下位概念として、「薬液供給装置」、「薬液純化装置」、「廃液処理装置」、「その他の薬液用装置」があることが認められる。さらに、平成12年11月21日日刊工業新聞社発行の「半導体製造装置用語辞典(第5版)」(甲第10号証)には、「薬品自動供給装置」を「半導体製造工程で使用される薬品を、製造装置に自動供給する装置」などと説明する記載がある。そうすると、本件高純度薬液自動充填装置は、「日本標準商品分類」上では、
「半導体製造装置」の下位概念としての「薬液用装置」(「その他の薬液用装置」)に属する商品と考えられるのであって、この点からも、本件高純度薬液自動充填装置が商標の指定商品としての「半導体製造装置」に該当するとの上記判断が基礎付けられるというべきである。
この点について、原告は、商標の指定商品としての「半導体製造装置」とは、専ら半導体製造に用いられる装置であり、「半導体製造用関連装置」とは、半導体製造工程に直接供される装置と解すべきであるとした上、本件高純度薬液自動充填装置は、半導体メーカーにおいて行われる半導体製造工程で用いられるものではなく、半導体製造工程に直接供される装置ではないから、「半導体製造用関連装置」には該当しない旨主張する。
しかし、本件高純度薬液自動充填装置が、それ自体、直接には半導体の洗浄液等を製造する化学薬品メーカー等において用いられ、瓶詰めされた薬液として半導体製造業者に納入される場合があるとしても、専ら半導体製造に用いられる装置であると認められる以上、商標の指定商品としては「半導体製造装置」の範ちゅうに入ると解すべきであり、このことは、例えば、「純水製造装置」が、上記「日本標準商品分類」(甲第5号証)において、分類番号43 91721として、「半導体製造装置」及びその下位概念である「半導体製造用関連装置」の一つと位置付けられていることに照らしても明らかである。
また、原告は、本件高純度薬液自動充填装置で使用される薬液は半導体製造工程で用いられる薬液に限られないから、同装置は「半導体製造装置」ではなく、「包装用機械器具」に該当する旨主張するが、本件高純度薬液自動充填装置は、クリーンルームで行われる半導体製造工程で使用する薬液についての高度の品質要求を満たす仕様を備えたことを特長とする薬液充填装置として、半導体関連企業を主な需要者として製造販売されているものであることは上記のとおりであるから、本件高純度薬液自動充填装置が、半導体製造工程で使用される薬液以外の薬液の充填に使用することが可能であるとしても、これが専ら半導体製造工程に用いられる装置であるとの前記認定を妨げるものではない。
(6) したがって、本件高純度薬液自動充填装置は、本件審判請求に係る指定商品の一つである「半導体製造装置及びこれに類似する商品」に該当するというべきである。
2 以上の認定判断によれば、被告が、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件審判請求に係る指定商品の一つである「半導体製造装置及びこれに類似する商品」について、本件商標の使用をしていたことが明らかであるから、その余の点について判断するまでもなく、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 長沢幸男
裁判官 宮坂昌利