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関連審決 審判1998-35183
関連ワード 指定商品 /  著名な略称 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項15号 /  顧客吸引力(グッドウィル) /  分離観察 /  外観(外観類似) /  対比的(対比的観察) /  出所の混同 /  国内 /  無効審判 /  継続 /  商号 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 165号 審決取消請求事件
原告A
訴訟代理人弁理士 木村三朗
同 佐々木 宗治
同 大村昇
同 小林久夫
被告 株式会社ジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパン
訴訟代理人弁護士 窪田 英一郎
同 柿内瑞絵
同 弁理士 山下穣平
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/09/19
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成10年審判第35183号事件について平成13年1月29日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文第1、2項と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、別添審決謄本写し末尾の本件商標欄記載のとおり「alfredo」、「versace」の各欧文字を上下二段に横書きしてなり、平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表の区分(以下「旧商品区分」という。)による第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品とする登録第2529978号商標(平成3年3月12日登録出願、平成4年11月6日登録査定、
平成5年4月28日設定登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。
被告は、平成10年4月27日、本件商標登録の無効審判の請求をした。
特許庁は、同請求を平成10年審判第35183号事件として審理した上、
平成13年1月29日に「登録第2529978号の登録を無効とする。」との審決をし、その謄本は同年2月14日原告に送達された。
2 審決の理由 審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、「GIANNI VERSACE」、「Gianni Versace」(ジャンニ・ヴェルサーチ)、「VERSACE」又は「Versace」(ヴェルサーチ)の文字からなる標章(以下、一括して「VERSACE商標」という。)は、イタリアの服飾デザイナーBの氏名又はその著名な略称として、また、同人のデザイナーズブランドを表彰し、同人の創立に係る「ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ」ほか国内の関連会社等その事業全体を表彰するいわば代表的出所標識として、我が国の取引者、需要者において広く認識されていたところ、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、VERSACE商標の著名性及び商品分野の共通性よりして、構成中の「versace」の文字部分に注意を惹かれて容易にVERSACE商標を想起し、VERSACE商標の事業主体に係る商品であるかのように混同を生ずるおそれがあるから、本件商標は、商標法4条1項15号に違反して登録されたものであり、同法46条1項1号により無効とすべきものとした。
原告主張の審決取消事由
審決は、審判請求人をイタリア法人「ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ」と誤って認定する(取消事由1)とともに、「VERSACE」との略称の著名性の認定を誤り(取消事由2)、また、本件商標をその指定商品に使用した場合の商品の出所混同のおそれについての判断を誤った(取消事由3)ものであるから、違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(審判請求人の誤認) 審決は、「請求人『ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ』(以下、「請求人会社」という。)は、イタリア国 ミラノ在住の法人と認められる」(審決謄本9頁16行目〜17行目)と認定するが、審判請求人は被告である「株式会社ジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパン」であって、イタリア法人「ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ」ではないから、審判請求人を誤り、これに基づいて本件商標の著名性の基礎となる事実を認定した違法がある。
すなわち、審決が商品の出所混同を生じさせる「他人の業務」に係るものとして引用する登録商標(第2708755号、第1471328号、第2718477号)は、すべてイタリア法人「ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ」の有する商標であって、その使用に伴って蓄積されるグッドウィルもすべて同社に帰属する。これに対し、被告は当該商標の付された商品の販売者にすぎず、VERSACE商標が表彰する事業主体とはいえない。したがって、上記の審判請求人の認定の誤りには審決の結論に影響を及ぼす違法があるというべきである。
2 取消事由2(「VERSACE」との略称の著名性の認定の誤り) 審決は、「GIANNI VERSACE」、「Gianni Versace」、「VERSACE」又は「Versace」の文字からなる標章を一括して「VERSACE」商標として論を進めているが、「ヴェルサーチ」(「VERSACE」、「Versace」)が「ジャンニ・ヴェルサーチ」(「GIANNI VERSACE」、「Gianni Versace」)の略称として取引者、需要者一般に広く知られていたとはいえない。
すなわち、審決がVERSACE商標の著名性の認定の根拠とした証拠(審判甲第1号証・本訴甲第6号証〜審判甲第49号証・本訴甲第27号証)において、一部に「ヴェルサーチ」との略称が使用されている部分もあるが、いずれも「ジャンニ・ヴェルサーチ」についての記述であることが文脈上自明のこととして「ヴェルサーチ」との略称を用いたにすぎないものであって、「ヴェルサーチ」(「VERSACE」、「Versace」)が「ジャンニ・ヴェルサーチ」(「GIANNI VERSACE」、「Gianni Versace」)の略称として我が国の取引者、需要者一般に広く知られていたことを示すものではない。
なお、平成6年3月同文書院発行の「新・田中千代服飾事典」(甲第28号証の1〜3)、平成12年1月文化出版局発行の「ファッション辞典」(甲第29号証の1〜3)及び同年4月矢野経済研究所発行の「2000年版インポートマーケット&ブランド年鑑」(甲第30号証の1〜4)には、「ジャンニ・ヴェルサーチ」、「Gianni Versace」のフルネームでの記載があるものの、平成13年1月20日株式会社チャネラー発行の「ファッション・ブランド年鑑2001」(甲第31号証の1〜6)には「ジャンニ・ヴェルサーチ」、「Gianni Versace」の記載さえなく、これは、Bが1997年(平成9年)に不慮の死を遂げて以来、市場で急速に忘れられつつあることを示すものである。
3 取消事由3(商品の出所混同のおそれの判断の誤り) 審決は、本件商標の「(構成)文字全体からは直ちに特定・固有の意味合い等を感得し得る事情はなく、また、その外観構成よりして容易に上段の『alfredo』と下段の『versace』とに分離して看取し得るものといえる」(審決謄本13頁6行目〜9行目)と判断するが、本件商標はデザイナーである原告の氏名そのもので構成された商標であり、文字のデザイン、大きさからしても全体として一つにまとまっており、上下の部分に分離観察しなければならない理由はない。しかも、デザイナーブランドにおいては、デザイナーのフルネームで認識されるのが通例である上、「ヴェルサーチ」(「VERSACE」、「Versace」)が「ジャンニ・ヴェルサーチ」(「GIANNI VERSACE」、「Gianni Versace」)の略称として我が国の取引者、
需要者一般に広く知られているといえないことは上記のとおりであるから、本件商標は、デザイナーである原告の氏名そのものである「A」として認識されるというべきであり、VERSACE商標との間に商品の出所混同を生じさせるおそれはない。
被告の反論
審決の認定判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。
1 取消事由1(審判請求人の誤認)について 審決が審判請求人をイタリア法人「ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ」と誤って記述している部分があることは認めるが、審決全体を見れば、請求人を被告であると正しく認識していることは明らかであるから、単なる誤記であって、審決の結論に影響を及ぼすような誤りとはいえない。
また、審決は、「『GIANNI VERSACE』、『Gianni Versace』(ジャンニ・ヴェルサーチ)、『VERSACE』又は『Versace』(ヴェルサーチ)の文字からなる標章(以下、これら標章を一括して『VERSACE商標』という。)は、イタリアの服飾デザイナーとして世界的に知られるB氏の氏名又はその著名な略称として、また、同氏に係るいわゆるデザイナーズブランドを表彰し或いは同氏の創立に係り現在その親族により受け継がれる請求人会社ほか国内の関連会社等その事業全体を表彰するいわば代表的出所標識として、1980年(昭和55年)頃よりすでにわが国の取引者、需要者一般において広く認識せられていたものと認められる。そして、同氏又は請求人会社に係る衣料品を中心とするいわゆるファッション関連各商品は、国内輸入会社(三井物産株式会社)、国内販売会社(株式会社ジャンニ・ベルサーチ ジャパン)又は国内各地の直営店、販売店を通じて、当時より現在に至るまでの間、営々として消費者の需要に供されてきた状況が認められる」(審決謄本12頁19行目〜34行目)と認定しているように、VERSACE商標が表彰する事業の主体が被告にもあることを認定し、本件商標が被告の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるとしているのであるから、上記の誤りは審決の結論に影響を及ぼすものではない。
2 取消事由2(「VERSACE」との略称の著名性の認定の誤り)について 原告は、「ヴェルサーチ」が「ジャンニ・ヴェルサーチ」の略称として取引者、需要者に広く知られているとはいえない旨主張するが、「ヴェルサーチ」が「ジャンニ・ヴェルサーチ」の略称又はそれ自体が独立した商品の出所表示として広く国内において知られていることは本件の関係証拠から明らかである。この点の審決の認定に何ら誤りはない。
3 取消事由3(商品の出所混同のおそれの判断の誤り)について 原告の主張は、「VERSACE」との略称が取引者、需要者に広く知られていないことを前提とするものであるが、これが失当であることは上記のとおりである。むしろ、取引者、需要者は被告のブランドが「ヴェルサーチ」であることは容易に認識するが、その創業者が「ジャンニ・ヴェルサーチ」であることまで正確に認識しているとは限らない。このような取引者、需要者が本件商標に接した場合、本件商標中の「versace」の文字部分に着目し、商品の出所混同を来すことは明らかである。
当裁判所の判断
1 取消事由1(審判請求人の誤認)について (1) 本件の審判請求人が被告(株式会社ジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパン)であることは当事者間に争いがない(前記第2の1参照)から、審決が「請求人『ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ』(以下、「請求人会社」という。)は、イタリア国 ミラノ在住の法人と認められる」(審決謄本9頁16行目〜17行目)とした認定は誤りというほかなく、これが誤りであること自体は被告も争うものではない。
そこで、この誤りが審決の結論に影響を及ぼすものかどうかについて、以下検討する。
(2) まず、審決は、冒頭の当事者の表示において、「請求人」をその本店所在地(「大阪府大阪市中央区<以下略>」)及び商号(「株式会社ジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパン」)をもって被告であると正しく表示しているほか、理由中の「請求人の主張」欄には、「請求人会社(注、前記読替えに係る「請求人会社」ではなく、「請求人」である被告を指すことは文脈上明らかである。)は、昭和56年7月に設立され、イタリア国ミラノ在のイタリア国法人『ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ』を出資者の一人とする株式会社である。請求人は前記イタリア国法人の取り扱う『GIANNI VERSACE』、『VERSACE』等の商標を付した被服、身飾品等を独占的に輸入販売しているものであり、したがって、本件審判を請求するにつき法律上の利益を有する」(審決謄本2頁7行目〜12行目)、「前記イタリア国法人『ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ』及び請求人『株式会社ジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパン』は、『GIANNI VERSACE』、『VERSACE』、『ジャンニ ヴェルサーチ』及び『ベルサーチ』の商標を被服をはじめとして、装身具、ベルト、
時計、香水等に永年使用し、これら商標は著名デザイナーブランドとして本件商標の登録出願前に周知著名となっている」(同3頁14行目〜20行目)との記載もある。
そうすると、審決の理由中の「当審の判断」に上記(1)で認定した誤りがあるにしても、審決を全体として見た場合、その名宛人としての審判請求人が被告であることは明らかに看取し得るというべきであって、審決には、本来の審判請求人と異なる者(イタリア法人「ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ」)を名宛人とした違法があるとはいえない。
(3) 次に、上記の審判請求人の誤認が審決の結論に影響を及ぼすものかどうかについて判断する。
審決は、「請求人会社は、わが国において早い時期から『GIANNI VERSACE』、『Gianni Versace』若しくは『VERSACE』商標ないしはこれを主要部とする商標について、旧類別(注、旧商品区分)第17類『被服、布製見回品、寝具類』を指定商品とする商標登録を取得し(商標登録第2708755号、同第1471328号、同第2718477号)、その販路確保を図っていた状況が認められる」(審決謄本12頁11行目〜16行目)と認定するところ、証拠(甲第3〜第5号証の各1、2)によれば、上記各登録商標はイタリア法人「ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ」を商標権者とするものであることが明らかであるから、
審決の上記認定中の「請求人会社」とは、本来の審判請求人である被告ではなく、
イタリア法人「ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ」を指していると解される。そうすると、審決は、本件商標について商品の出所混同のおそれを生じさせる「他人の業務」に係る商標であるVERSACE商標が、審判請求人を商標権者とするものであるか否かについて、前提事実の認定を誤ったこととなる。
しかしながら、審決は、上記認定に続いて、VERSACE商標は「イタリアの服飾デザイナーとして世界的に知られるB氏の氏名又はその著名な略称として、また、同氏に係るいわゆるデザイナーズブランドを表彰し或いは同氏の創立に係り現在その親族により受け継がれる請求人会社ほか国内の関連会社等その事業全体を表彰するいわば代表的出所標識として、1980年(昭和55年)頃よりすでにわが国の取引者、需要者一般において広く認識せられていたものと認められる。そして、同氏又は請求人会社に係る衣料品を中心とするいわゆるファッション関連各商品は、国内輸入会社(三井物産株式会社)、国内販売会社(株式会社ジャンニ・ベルサーチ ジャパン)又は国内各地の直営店、販売店を通じて、当時より現在に至るまでの間、営々として消費者の需要に供されてきた状況が認められる」(同12頁22行目〜34行目)と認定した上、「本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者・需要者は、前記認定のVERSACE商標の著名性及び商品分野の共通性よりして、構成中の『versace』の文字部分に注意を惹かれ強く印象づけられるとともに、容易にVERSACE商標を想起し又はその事業主体に係る商品等と関連づけて認識し把握するとみるのが相当である。してみれば、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない」(同13頁13行目〜20行目)と判断するところである。すなわち、審決は、イタリア法人「ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ」だけでなく、国内販売会社である被告等の関連会社を含めてVERSACE商標の「事業主体」と認定し、当該事業主体による「他人の業務」に係る商品との出所混同のおそれを認めたものにほかならない。
そうすると、審決が、VERSACE商標の商標権が審判請求人に帰属するかどうかの認定をする上で犯した上記誤りは、商品の出所混同のおそれの有無の判断に何ら影響を及ぼすものとはいえない。
さらに、証拠(甲第9号証の1〜6、甲第10号証、第17号証の3、甲第22号証の5、甲第23号証の3、甲第25号証の3、甲第27号証、第30号証の3)によれば、被告はVERSACE商標の付された被服等の商品の国内販売会社であることが認められるから、被告の審判請求人適格を肯定した審決の判断(同2頁9行目〜12行目)にも問題はないというべきである。
(4) したがって、審判請求人を誤認した誤りは、審決の結論に影響を及ぼすものではないから、取消事由1に係る原告の主張は理由がない。
2 取消事由2(「VERSACE」との略称の著名性の認定の誤り)について (1) 原告は、「ヴェルサーチ」(「VERSACE」、「Versace」)が「ジャンニ・ヴェルサーチ」(「GIANNI VERSACE」、「Gianni Versace」)の略称として取引者、需要者に広く知られていたとはいえない旨主張する。
(2) しかしながら、「ジャンニ・ヴェルサーチ」のフルネームだけでなく、
「ヴェルサーチ」との略称が、イタリアの服飾デザイナーであるB若しくは同人に係るデザイナーブランド又はイタリア法人「ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ」ないしその関連会社による事業全体を示すものとして多用されていることは、
平成2年株式会社研究社発行の「英和商品名辞典」(甲第8号証の2)452頁が、「Versace ヴェルサーチ」との独立した項目を設け、「→Gianni Versace」(注、「Gianni Versace」の項目を参照との意味)と記載していること、業界紙や一般需要者向けの雑誌等においても、「ヴェルサーチの15年にわたるデザイナー活動」(平成3年9月9日付け繊研新聞記事、甲第9号証の1)、「伊のヴェルサーチ社」、「ヴェルサーチを専門的に展開する新会社」(平成2年9月10日付け繊研新聞記事、甲第9号証の2)、「伊ヴェルサーチ・グループ」(平成3年1月8日付け繊研新聞記事、甲第10号証)、「ヴェルサーチブランド」、「ヴェルサーチファン」(平成3年2月12日付け繊研新聞記事、甲第11号証)、「92年秋冬ミラノ・メンズコレクション・・・で、ヴェルサーチがショーを取りやめ商品展示にとどめた」(平成4年1月14日付け繊研新聞記事、甲第13号証)、「主力ブランド別の売上・・・はヴェルサーチが40%増と最も伸び」(平成4年1月24日付け繊研新聞記事、甲第14号証)、「デザインや雰囲気はヴェルサーチのものだが、生地、生産方法などを変えることによって価格を抑えた」(平成4年1月27日付け繊研新聞記事、甲第15号証)、「強気のヴェルサーチも下方修正」、「『高すぎないヴェルサーチ』づくりに加え『派手すぎないヴェルサーチ』イメージを広げることにも力を入れていく」(平成4年7月2日付け繊研新聞記事、甲第16号証)、「ヴェルサーチブティック」(株式会社講談社発行の「世界の一流品大図鑑」’83年版、甲第17号証の3ほか)、「色調は黒と白をメインに明るい色を対比的にあしらうヴェルサーチ独特のカラーバランス」(株式会社講談社発行の「世界の一流品大図鑑」’85年版、甲第18号証の2)、「ヴェルサーチ35歳、イタリアの名高いデザイナーのなかでも・・・常に注目を集めています」、「今シーズンは“モダン・スポーツ”をテーマに繰り広げるヴェルサーチ」(株式会社世界文化社発行の「世界の特選品」’84LADIES’、甲第22号証の2、4)、「30歳にして、イタリア・モード界を背負うリーダーの一人となったヴェルサーチ」(株式会社講談社発行の「男の一流品大図鑑」’81年版、甲第24号証の2)、「英のロック歌手Cが・・・結婚することになり、その衣装をヴェルサーチが製作した」(平成4年8月13日付け日本繊維新聞記事、乙第1号証)等の記載が見られることから認めることができ、その詳細は、審決の認定(審決謄本9頁19行目〜12頁10行目)するとおりである。また、VERSACE商標の一つである商標登録第2708755号(平成2年3月9日登録出願、平成7年7月31日設定登録、甲第3号証の1、2)は、「V2」と「by Versace」を上下二段に書してなるものであるところ、この商標の構成は、「Versace」の派生ブランドである「V2」との意味に解されるものであるから、イタリア法人「ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ」自身も「Versace」の略称を用いていたということができる。
(3) 上記認定の事実を総合すれば、本件商標の登録出願日(平成3年3月12日)の前後を通じて、「ヴェルサーチ」との略称が我が国の取引者、需要者一般に広く知られていたことが認められるというべきである。なお、上記の業界誌や雑誌の記事中で「ヴェルサーチ」との名称が「ジャンニ・ヴェルサーチ」との名称と併用されているものも含まれていること、また、原告主張のように、ファッション関係の辞典類には、「ジャンニ・ヴェルサーチ」、「Gianni Versace」のフルネームで記載され、「ヴェルサーチ」の略称が用いられていないもの(平成6年同文書院発行の「新・田中千代服飾事典」〔甲第28号証の1〜3〕、平成12年1月文化出版局発行の「ファッション辞典」〔甲第29号証の1〜3〕、平成12年4月矢野経済研究所発行の「2000年版インポートマーケット&ブランド年鑑」〔甲第30号証の1〜4〕)もあること等の事情を勘案しても、上記の認定を妨げるものではない。
また、原告は、平成13年1月20日株式会社チャネラー発行の「ファッション・ブランド年鑑2001」(甲第31号証の1〜6)に「ジャンニ・ヴェルサーチ」、「Gianni Versace」の記載がないことを根拠として、Bが1997年(平成9年)に不慮の死を遂げて以来、VERSACE商標は市場で急速に忘れられつつある旨主張するが、上記書証のみで原告の上記主張のように認めるには足りない。かえって、「ジャンニ・ヴェルサーチ」ブランドの平成2年1月期の売上高は77億円で、業界紙の「インポートブランドランキング」において、ルイ・ヴィトン、シャネル、バリーに続く4位にランクされていたこと(平成3年8月4日付け繊研新聞記事、甲第27号証)、その後も、平成7年〜平成11年にかけて、概ね100億円前後の年商で推移していること(上記「2000年版インポートマーケット&ブランド年鑑」〔甲第30号証の3〕)が認められるところであり、原告主張のように「ヴェルサーチ」の知名度が急速に衰えたとは到底いうことができない。
(4) したがって、「ヴェルサーチ」(「VERSACE」、「Versace」)が「ジャンニ・ヴェルサーチ」(「GIANNI VERSACE」、「Gianni Versace」)の略称として、
本件商標登録出願当時から現在に至るまで、我が国の取引者、需要者一般に広く知られていたとの審決の認定に誤りはないというべきである。
3 取消事由3(商品の出所混同のおそれの判断の誤り)について 原告は、本件商標がデザイナーである原告の氏名からなるものであること及び「ヴェルサーチ」(「VERSACE」、「Versace」)の略称が我が国の取引者、需要者一般に広く知られているとはいえないことを根拠として、審決は本件商標に係る商品の出所混同のおそれの判断を誤った旨主張するが、後者の根拠が理由を欠くことは上記2のとおりである。
そこで、前者の点について見るに、本件商標が原告主張のように原告の氏名そのものからなるものであるとしても、審決も認定判断(審決謄本13頁24行目〜35行目)するとおり、「A」はデザイナーである原告の氏名そのものであることが我が国の取引者、需要者一般に知られていることを認めるに足りる証拠はないから、本件商標に接した取引者、需要者が、これを原告の氏名ないしそのデザイナーブランドとして認識するとは考えられず、「versace」の文字部分から前記のように著名なベルサーチ商標を想起し、その事業主体に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあるというべきである。そうすると、本件商標には、登録出願時(平成3年3月12日)及び登録査定時(平成4年11月6日)を通じ、商標法4条1項15号所定の登録障害事由が存在するものといわざるを得ず、このことは、本件商標が同書同大の文字からなるとしても変わりはない。また、イタリア国の主要都市における電話番号案内の検索リスト(甲第32号証の1〜12)からうかがわれるように、「VERSACE」が同国では普通にありふれた姓にすぎないとしても、我が国における取引者、需要者一般の認識を示すものではないから、上記判断を何ら左右するものではない。
なお、原告が、商標法26条1項1号により自己の氏名権の行使として本件商標の使用を継続し得るとしても、同法4条1項15号46条1項の適用により、本件商標を専有する排他的、独占的な商標権を対世的、遡及的に失効させることを妨げるものではない。
4 以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担並びに上告及び上告受理申立のための付加期間の指定につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条96条2項を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 長沢幸男
裁判官 宮坂昌利