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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18行ケ10100審決取消請求事件 判例 商標
平成18ワ4737商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
平成15ワ11200商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
関連ワード 包装 /  品質保証機能 /  質保証機能 /  指定商品 /  商標の同一性 /  顧客吸引力(グッドウィル) /  損害額 /  使用料相当額 /  通常使用権 /  差止 /  過失の推定 /  使用許諾 /  存続期間 /  更新登録 /  立証責任 /  継続 /  利益額 / 
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事件 平成 16年 (ワ) 11265号 損害賠償等請求事件
原告 株式会社トミー
訴訟代理人弁護士 吉成外史
同 齋藤理英
補佐人弁理士 水野清
同 北村仁
被告 株式会社大創産業
訴訟代理人弁護士 山田延廣
同 藤井裕
被告 プロテックス株式会社
訴訟代理人弁護士 吉田知弘
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2006/02/21
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告株式会社大創産業は,別紙被告標章目録(1)及び(2)に記載の各標章を付した商品「フェイシャルステッカー」を販売し,又は販売のために展示してはならない。
2 被告プロテックス株式会社は,別紙被告標章目録(1)及び(2)に記載の各標章を商品「フェイシャルステッカー」に付し,又は同各標章を付した同商品を譲渡し,若しくは引き渡してはならない。
3 被告らは,原告に対し,別紙謝罪広告目録(1)の2に記載の広告文を,同目録の1に記載の条件で,読売新聞及び日本経済新聞の各全国版社会面に1回掲載せよ。
4 株式会社大創産業は,原告に対し,170万3270円及びこれに対する平成16年6月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被告プロテックス株式会社は,原告に対し,90万7570円及びこれに対する平成16年6月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 原告のその余の請求を棄却する。
7 この判決は,第4,第5項に限り,仮に執行することができる。
8 訴訟費用はこれを5分し,その4を被告らの負担とし,その余を原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告株式会社大創産業(以下「被告大創」という。)は,別紙被告標章目録(1)及び(2)に記載の標章(以下「被告標章1」,「被告標章2」という。また,両標章を併せて「被告各標章」ともいう。)を付した商品「フェイシャルステッカー」を販売し,又は販売のために展示してはならない。
2 被告プロテックス株式会社(以下「被告プロテックス」という。)は,被告各標章を商品「フェイシャルステッカー」に付し,又は同各標章を付した同商品を譲渡し,若しくは引き渡してはならない。
3 被告らは,原告に対し,別紙謝罪広告目録(2)の2に記載の広告文を,同目録の1に記載の条件で,読売新聞及び日本経済新聞の各全国版社会面に1回掲載せよ。
4 被告大創は,原告に対し,別紙謝罪広告目録(2)の2に記載の広告文を,縦50センチメートル,横30センチメートル以上の大きさで,同被告各店舗にそれぞれ1か所,少なくとも2週間継続して掲示せよ。
5 被告大創は,原告に対し,1175万円及びこれに対する平成16年6月7日(訴状送達の日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告プロテックスは,原告に対し,453万7850円及びこれに対する平成16年6月7日(訴状送達の日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は「TOMY」及び「株式会社トミー」の商標権を有している原告が,被告らに対し,被告プロテックスが被告各標章を別紙商品目録(1)ないし(10)の商品「フェイシャルステッカー」(ゲームソフト「ポケットモンスター」のキャラクターが表示されたもの10種類。以下「本件商品」という。)に付し,被告らが,これらを販売等した行為が,原告の有する上記各商標権を侵害するものであると主張し,被告らの上記各行為の差止め及び謝罪広告(同法39条,特許法106条)並びに損害賠償(商標法38条2項又は同条3項)を求めている事案である。
1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び該当箇所末尾掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実) (1) 当事者 ア 原告は,おもちゃ,ゲームの企画,製造及び販売などを業とする株式会社である。
イ 被告大創は,いわゆる100円ショップと呼ばれる店舗を日本全国に展開している株式会社である。
ウ 被告プロテックスは,シール及びラベルの販売・輸出入などを業とする株式会社である。
(2) 原告の有する権利 原告は,下記の二つの商標権を有している(以下,順に「本件商標権1」「本件商標権2」といい,各登録商標を「本件登録商標1」,「本件登録商標2」という。また,これらをまとめて,「本件各商標権」及び「本件各登録商標」という。甲1,2。以下,書証の枝番号は省略する場合がある。)。
ア 本件商標権1 登録番号 第4490308号 登録商標 別紙登録商標目録のアに記載のとおり 登録年月日 平成13年7月13日 商品及び役務の区分 第28類 指定商品 遊戯用器具,ビリヤード用具,囲碁用具,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイ ヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,マージャン用具,おも ちゃ,人形 そのほか,商品及び役務の区分として,第9類,第18類,第20類,第24類,第30類がある。
イ 本件商標権2 登録番号 第2527580号 登録商標 別紙登録商標目録のイに記載のとおり 登録年月日 平成5年4月28日 存続期間更新登録 平成15年5月13日 商品及び役務の区分 第24類 指定商品 おもちゃ,人形,娯楽用具,運動具,つり具,楽器,演奏補助品,蓄音機(電気蓄音機を除く) レコードこれらの部品および附属品 (3) 被告らの行為等 被告プロテックスは,平成16年1月中旬ころから,被告各標章を付した本件商品(甲4の1の1ないし4の1の10)の製造を開始し,同年2月27日ころまでに,被告大創に対し,本件商品を,合計23万5000枚販売した。
また,被告大創は,遅くとも平成16年3月上旬ころから,同社が経営する「ザ・ダイソー100YEN PLAZA」や「ザ・ダイソー100円ショップ」(以下,これらの店舗を単に「100円ショップ」という。)において,本件商品を販売している。
(4) 被告各標章と本件各登録商標の同一性について 被告標章1(「TOMY」)の構成は,本件登録商標1(「TOMY」)の構成と同一であり,被告標章2(「株式会社トミー」)の構成は,本件登録商標2(「株式会社トミー」)の構成と同一である。
(5) 別件訴訟 本件商品の販売に関しては,「ポケットモンスター/ADVANCED GENERATION/アドバンスジェネレーション」の商標権者である任天堂株式会社(以下「任天堂」という。),株式会社ゲームフリーク及び株式会社クリーチャーズから,被告大創に対し,同商標権を侵害しているとして損害賠償請求訴訟が提起されていた(東京地方裁判所平成16年(ワ)第11209号損害賠償等請求事件。被告プロテックスは被告大創の補助参加人として同訴訟に参加した。)。しかし,同訴訟は,平成17年1月17日,被告大創及び補助参加人(本件の被告プロテックス)が,連帯して,別件訴訟の原告らに対し,100万円を支払うこと,被告大創が,本件商品に上記商標を付して販売したことについて,全国紙2紙に謝罪広告を掲載することなどを内容とする和解が成立し,終了した(乙6)。
2 本件の争点 (1) 被告らが本件各登録商標を使用するにつき,原告から許諾を得ていたか(争点1)。
(2) 被告らの本件各商標権侵害行為についての過失の有無(争点2) (3) 原告の損害の内容及び額(争点3) (4) 過失相殺の可否(争点4) (5) 謝罪広告の必要性(争点5)
争点に関する当事者の主張
1 争点1(被告らが本件各登録商標を使用するにつき,原告から許諾を得ていたか)について 【被告らの主張】 (1) 被告プロテックスは,本件商品の製造及び販売について,原告から予め本件各登録商標の使用許諾を得ていたものである。すなわち,次の(2)に記載の経過のとおり,本件商品の商品化に関しては,@被告プロテックスは,キャラクター関係の企画やライセンスビジネスを行う株式会社ジェネシス(以下「ジェネシス」という。)を経営する訴外Aの指示に従い,ジェネシスに対し,ライセンス料名下に283万5000円(税込み)を支払った,A被告プロテックスは,原告におけるキャラクター事業の枢要の地位にあったB及びCから,本件商品の販売について,許諾を前提とする言葉を得ていた,B原告が有していた最新のポケットモンスターのキャラクターデータ(以下「本件キャラクターデータ」という。)が,Aを通して被告プロテックスに送られてきたなどの事情がある。これらの事情からすると,被告プロテックスが,本件商品を商品化する際に,本件各登録商標と同一の被告各標章を使用することについては,原告の許諾があったというべきである。
(2) 本件の経過について ア Aは,平成13年ころまで被告プロテックスの社員であり,被告プロテックスを退社後,ジェネシスを経営していた者である。
被告プロテックスの取締役事業部長Dは,Aから,平成15年7月12日ころ,本件商品の商品化の誘いを受けた。
Dが,そのころ,原告のコンテンツ事業戦略本部オリジナルコンテンツグループのグループリーダーを務めるCに対し,本件商品の商品化について間違いなくライセンスを取得できるのかどうかについて確認をとったところ,Cから電話があり,「ポケモンの新キャラクターが出せます。今がチャンスですよ。」という趣旨のことを話された。Dは,原告の執行役員たるBと面識があり,Bなどを通じてCを知っていたため,Cの言葉に間違いはないと確信した。また,Dは,原告と被告プロテックスの中間に別業者であるジェネシスが介入するとしても,これをライセンス取得に関するいわゆるバイセル方式として違和感なく理解できるものであったため,受け入れることにした。
Dは,Aから,同年7月15日までにライセンス料を振り込まなければ商品化できないなどと急かされていたため,被告プロテックスは,同日,Aの指定するジェネシスの口座にポケットモンスターのキャラクターに関する使用許諾料として270万円(税別)を振り込んだ。
イ 被告プロテックスのもとに,平成15年9月に入り,Aからポケットモンスターのキャラクターデータが電子メールにて送信されてきたため,被告プロテックスは,被告大創に商品化と販売の商談を持ちかけた。
しかし,被告大創の担当者Eは,キャラクターが少し古いと言って難色を示した。
ウ Dは,Aに対し,平成15年11月ころ,今後の進行について電話で連絡をとった。Aは,Dに対し,今,小学館プロダクションにいて,原告のB部長がいるので,電話を代わるなどと話し,電話を代わったBからは「今進めているから。AやCがやっているから。」などと回答があった。Dは,Bとは面識があったので,このような回答を得て,本件商品の商品化は間違いないものと確信した。また,そのころ,CからもDに宛てて電話があり,「近いうちにデザインを送る。」との連絡があった。
エ 被告プロテックスは,平成15年12月23日,Aから,本件キャラクターデータが記録されたCD-ROMの送付を受けた。このデザインは,原告においては社外秘とされるほどの最新のデザインによるものであった。
被告プロテックスは,本件キャラクターデータを協和製版株式会社(以下「協和製版」という。)に持ち込み,数回にわたって編集作業を行う一方で,被告大創とも打合せをし,本件キャラクターデータを基にして本件商品を製造することとなり,被告大創に対し,平成16年2月20日を期限として本件商品を納入することとなった。
オ Dは,Aから,平成16年1月13日午後2時に本件商品のサンプルを持って原告本社に来るようにとの指示を受けたため上京したものの,当日になって,Cからキャンセルの電話が入り,Aに同サンプルを預け,本件商品のサンプルチェックを依頼した。
カ その後,平成16年2月に入っても商品の裏面に使用するデジタルデータやロゴマークなどが被告プロテックスの下に送付されず,製品化できない状況であったため,被告プロテックスの技術担当者Fは,Aに対し,何度も苦情の連絡を入れていた。
そして,同月10日前後ころになって,Aから,電子メールで協和製版のメールアドレス宛に,商品の裏面データや原告のロゴマークなどが送付されてきた。
被告大創との約定によれば,本件商品の納期は平成16年2月20日であり,通常の方法で印刷したのでは,納期に間に合わせることができないため,被告プロテックスは,協和製版にてデジタルデータとこれをプリントアウトしただけのカンプと称される紙データの交付を受けて持ち出し,デジタルデータの編集作業は,印刷業者たるシンエイプリントを通じて,関連の編集業者である東京リスマティックに依頼し,裏面の最終編集作業を行った。
キ Dは,Aに対し,証紙(ライセンスシール)の手配がどうなっているかを何度か確認したが,Aからは「在庫が足りない」などと説明を受けた。被告プロテックスは,被告大創に対する納期を遅らせ,証紙の到着を待ったが,平成16年2月21日,Aから連絡が入り,今回は証紙を貼らなくてもよいとCから指示があったと報告を受けた。
そこで,被告プロテックスは,証紙を貼らないまま,被告大創に本件商品を出荷した。
ク まとめ 以上,アないしキのとおり,本件商品に使用された被告各標章は,Aから送信されたデータをそのまま使用して編集作業を行ったものであり,被告プロテックスにおいて独自に作成・編集したものではない。
(3) 原告は,ポケットモンスターのキャラクターを使用することについて,そもそも許諾権限がない旨主張する。しかし,仮にそうであれば,原告から本件キャラクターデータが流出するはずはない。
【原告の主張】 (1) 被告プロテックスは,本件各登録商標の使用について,原告から許諾を得たと主張する。しかし,原告が,何らの書面を交わすことなく,本件各登録商標のような重要な権利について使用許諾をすることは商慣習上あり得ない(特に,ポケットモンスターのキャラクターの使用については,原告には許諾する権限がない。)。
(2) 原告が新製品の企画を行う場合,その版権元の監修を受けるために試作品を製作する必要がある。企画から試作品製作まで原告内部にてすべて行うものについては,デザインデータを外部企画会社へ提供する必要がないが,アイデアを原告が発案し,具体的な試作品の製作を外部企画会社へ委託するもの,外部企画会社から試作品を含めて企画提案を受けるものについては,デザインデータを当該外部企画会社へ渡す必要性がある。本件において,原告の担当者がAに貸与した本件キャラクターデータというのは,このような試作品を製作して原告へ提出するという目的に限って貸与したものである。
したがって,本件キャラクターデータを貸与したことにより,企画会社に何らかの権利を許諾したことにはならない。
(3) 被告らは,本件キャラクターデータが極秘データであったと主張する。しかし,そもそも,本件商品に付されたキャラクターは,「ポケットモンスターアドバンスジェネレーション」というテレビ番組に出ていたものであり,この番組は,平成14年11月21日からテレビ放映されていただけでなく,同日に発売されていた同シリーズのゲームソフト「ポケットモンスター ルビー」,同「ポケットモンスター サファイア」にも登場するキャラクターであって,既に発表済みのものであった。
しかも,被告プロテックスは,本件キャラクターデータをAから受け取っているにすぎず,原告から入手したデータであることについては,Aの言を信じたにすぎない。そもそも,Dが,本件キャラクターデータが原告から提供されたものである可能性があることを知ったのは,本件が問題となった際の平成16年4月2日に原告担当者がDと面談したときである。
2 争点2(本件各商標権侵害行為についての過失の有無)について 【被告プロテックスの主張】 (1) 仮に,被告プロテックスが,本件商品に本件各登録商標を使用することについて,原告の許諾を得ていないとしても,原告社員のBやCの関与の態様に照らせば,被告プロテックスが本件各商標権を侵害したことについて過失がないことは明らかである。
すなわち,被告プロテックスが,本件に関与したのは,原告の社員であるCが,「新キャラクターを出せる」などと称して,企画の具体性を裏付ける発言をしたことが重要なきっかけとなっており,本件商品の商品化企画の進捗が危ぶまれた際にも,Aと同席していたBが電話で「AやCに任せているから心配ない。」旨の発言をし,さらに,Cから「近いうちにデザインを送る。」とする電話があった後に,本件キャラクターデータが送られてきたことなどからして,被告プロテックスが原告から正規品を製作販売する権利を得られたものと信頼しても無理からぬ状況にあったものである。
したがって,本件においては,被告プロテックスが本件各登録商標の使用について,原告の許諾があったと信頼するに足りる十分な理由があり,本件商品の製造及び販売により,本件各商標権を侵害したことについて,被告プロテックスに過失はない。
(2) キャラクター商品の販売の場合,証紙の貼付を求められることもあれば,求められないこともある。本件において,被告プロテックスは,Aから,証紙は不要とCから指示があったことを伝えられたため,本件商品を証紙なしで販売したものであり,証紙の貼付がなかったことは本件各商標権侵害についての悪意や過失の根拠たり得ない。
(3) 原告は,本件商品に付されたJANコード(いわゆる「バーコード」。以下単に「バーコード」という。)が被告プロテックスのDが取締役を務める株式会社マインド(以下「マインド」という。)のものであったことを理由に,被告プロテックスが本件各商標権侵害について悪意であったと主張する。
しかし,マインドは,被告プロテックスの前身にあたる会社であり,かつては,Dが代表者を務める株式会社コンドウコーポレーションが製造部門を担当し,販売部門をマインドが行うという関係にあり(被告プロテックスはこの販売部門を引き継いだ会社である。),かつてAはマインドの社員であった。Aの真意は測りかねるが,被告プロテックスは,Aから伝えられたバーコード番号をそのまま使用したにすぎない。
また,原告は,被告プロテックスのDとAが共謀して本件各商標権侵害に及んだとも主張する。
しかし,Dは,AやBを通じて,本件商品とほとんど体裁の異ならない商品を販売した実績もあり,しかも,被告プロテックスは300万円近い金額をジェネシス(A)に支払っているのであって,刹那的な利潤追求のために,容易に違法と分かる行為を行う動機はない。
【被告大創の主張】 (1) 被告大創は,当時マインドに勤務していたDと,平成10年8月ころ,「スヌーピーフェイスシール」を仕入れたことから知り合い,その後も,「ドラえもんフェイシャルステッカー」,「プーさんフェイスシール」などについて取引があった。被告大創は,平成14年ころ,Dから,取引先名をマインドから被告プロテックスに変更してほしいとの要請を受け,同年10月から被告プロテックスとの取引を継続している。この間,被告大創と被告プロテックスとの間で著作権などをめぐる問題が生じたことはない。
被告大創のEは,平成16年1月ころ,Dから,本件商品の取引の申込みを受けたため,Dにサンプルの送付を求めたところ,Dから本件デザインキャラクターが付されたフェイシャルステッカーが送付されてきた。
被告大創は,同月22日,Dに対し,本件商品について知的財産権などに問題がないか確認した上,同年2月ころから,本件商品を被告プロテックスより仕入れ,同年3月から販売を始めた。
被告大創は,上記のとおり,被告プロテックスのDを通してこれまでにも種々の取引を行っており,本件商品についても,Dから,「被告プロテックスは,ジェネシスを介して,原告から使用許諾を得ている」などと報告を受けていたからこそ,これを信用して本件商品の販売に至ったものである。
また,本件のような有名なナショナルブランド商品は,通常,メーカーから問屋(仕入先)を通じて,小売店に販売され,小売店が直接メーカーと取引することはない。しかも,メーカーと問屋の著作権等の契約内容は,両者の機密事項として,その開示を求めても,守秘義務を理由に開示を断られるのが通常であったから,被告大創は,被告プロテックスに対し,本件商品に付された本件各登録商標の使用について,原告から許諾を受けたかどうかを確認していなかった。
したがって, 被告大創は,本件商品の販売について過失はない。
(2) 原告は,版権ビジネスにおいては,商品には証紙が発行されるのが通常であったから,被告大創は当然このことを知っていたはずであると主張する。
しかし,被告大創が,原告と取引をしていた商品においても,証紙のないものも存するのであって,証紙の貼付がない商品を販売したことにより,直ちに過失があるとはいえない。
【原告の主張】 (1) 被告プロテックスの過失について ア 被告プロテックスの過失は,法律上推定されるものであり(商標法39条,特許法103条),被告プロテックスと原告との間で,直接契約書を作成した事実はないこと,被告プロテックスは,原告社員のいずれとも面談したこともないこと,本件商品に証紙の貼付や著作権表示がないこと,などの事情の下では,被告プロテックスは,本件各登録商標の商標権侵害について悪意であったといわざるを得ず,少なくとも,過失の推定を覆す事情はない。
なお,被告らが冒用した被告標章1「TOMY」のロゴは,いかにもスキャナーで取り込んだ様なギザギザがみられ,正規に入手したデータを元に作成されたものでないことは明らかである。カンパニーロゴの使用許諾があった場合,通常,ロゴのデジタルデータあるいは,いわゆる清刷り(ロゴマーク,デザインが,色の番号指定をされた上,精密に印刷されたもの)が商標権者から送付されるはずであり,このことは,印刷業を営む会社であれば当然知っていることである。被告標章1のように,ギザギザがみられるようなロゴが送付されれば,当業者であれば,適法に入手したデータではないことに気がつくはずである。
また,被告プロテックスは,原告に直接電話をして事実の確認をしたことはない。少なくとも,証紙の問題等が発生したときには,原告の担当者に直接連絡し,確認すべきことは当然である。
したがって,被告プロテックスが本件各商標権の使用許諾を得ていないことについて,過失があることは明白である。
イ 被告プロテックスが,本件商標権侵害について悪意であったことは,次の事実からも明らかである。すなわち,商品についているバーコードは,当該商品の製造元を特定するために付するものであり,被告プロテックスが,バイセル方式により,本件商品を製造したとすれば,本件商品を表示するバーコードは,被告プロテックスが登録したものを表示するはずである。しかし,本件商品に表示されたバーコードは,被告プロテックスの担当者たるDが取締役を務めるマインドのものである。
しかも,被告プロテックスは,本件商品について,発売元としても自らの会社名を表示していないのであって,自らに対する責任追及を免れようとしている意図は明白であったといえる。
したがって,被告プロテックスが,本件商標権侵害について過失がないとはいえない。
なお,D及びAは,Aが以前マインドに勤務していたときに,ドラえもんのキャラクター商品を,証紙を偽造した上で製造,販売したこともあり,両名が無許諾のキャラクター商品の製造・販売の常習犯であることは明らかである。
ウ 被告プロテックスは,原告の社員から極秘データともいうべき本件キャラクターデータが流出したことをもって,被告プロテックスには過失がない旨主張する。
しかし,被告プロテックスは,Aから,原告から提供を受けたという説明を受け,それを信じたにすぎないのであるから,本件キャラクターデータが送られてきたことをもって,被告プロテックスに過失がないとはいえない。
(2) 被告大創の過失について 被告大創が,被告プロテックスからいかなる内容の報告を受けていたにせよ,本件商品には,被告プロテックスの表記はなく,原告を発売元とする商品の企画を進めるのに,原告が関与しないことはあり得ない。したがって,被告プロテックスの説明をそのまま真に受けて本件商品を販売したとすれば,本件商標権侵害について過失があるといわざるを得ない。
また,証紙の貼付は,原則として,商品1点ずつ行うが,数量が多いものの場合,当該製品の販売時にインナーカートン(出荷時に段ボール箱の中に小分けして商品を梱包する厚紙でできたカートンのこと)に入れた状態で,商品棚に陳列する販売方法をとるものについては,代表証紙としてインナーカートンに証紙を1枚貼ればよいことになっている。
したがって,証紙の貼付がない場合もあるという被告大創の主張は誤っている。
3 争点3(原告の損害の内容及び額)について 【原告の主張】 〔主位的主張〕 (1) 商標法38条2項について 商標法38条2項は,侵害者が「侵害の行為により利益を受けているときは,その利益の額は,商標権者等が受けた損害の額と推定する」と規定する。この利益の額の算定について,固定費相当額を侵害者の粗利益から控除することは明らかに不当である。つまり,侵害者がその侵害行為より得た利益で侵害者の営業に関する固定費を賄うことができれば,侵害者にとっては,いわばやり得となってしまうからである。
したがって,売上額から売上原価を控除したいわゆる粗利益から控除できる費用は,侵害行為に関わる変動費を限度とすべきである(東京地裁平成10年12月25日判決参照)。
また,侵害行為のために要した変動費の主張・立証責任については,侵害者がこれを負担するべきであり,当該主張,立証がなされない場合は,粗利益を侵害者が受けた利益の額と考えるべきである(大阪地裁昭和60年6月28日判決参照)。
(2) 被告大創に対して ア 被告大創は,100円ショップにて,本件商品を1枚100円(税別)で販売し,被告プロテックスからは,50円で仕入れていたというのであるから,本件商品1個当たりの利益は50円ということになる。
イ 被告大創は,本件商品の販売に関係のない経費も控除の対象としており,不当である。すなわち,販売費及び一般管理費の中には,本件商品の売上げが計上されてもされなくても,経費が同額である家賃・人件費等の固定費も含まれており,これらを本件商品の販売により得た利益から控除するのは,上記のとおり,明らかに不当である。
仮に,一定の費用を控除することが許されるとしても,販売費及び一般管理費のうち,控除することができるのは変動費に限られるべきであり,被告大創は,売上げから控除すべき費用について具体的に主張・立証する必要がある。
それができない場合には,売上げから控除されるべき経費としては仕入原価のみというべきである。
ウ 被告大創は,被告プロテックスから仕入れた本件商品をそのフランチャイズ店には65円で販売したと主張する。このことを立証する証拠はないが,仮に,そうであるとしても,フランチャイザーは,フランチャイジーから,通常,商品の納入代金に加えてロイヤルティを受領していることからすれば,この65円を通常の卸売販売として考えることはできないのであり,仕入れ価格とフランチャイズ店に売却した額との差額を本件商品を販売したことによる利益と考えることは相当ではない。
仮に,被告大創が,本件商品の一部をフランチャイジーに売却していたとしても,被告大創のフランチャイジーは,被告大創が納品する商品そのものを,被告大創の直営店舗と同じ形態の100円ショップで一般消費者に対して販売するから,フランチャイジーも被告大創と同様に商標権侵害を行っていることになる。
このような侵害行為を被告大創のフランチャイズシステム全体で考えると,被告大創及び本件商品を販売したフランチャイズ店は共同して商標権侵害行為を行っていることになり,被告大創は共同不法行為責任を負うことになる。
したがって,被告大創の利益を算定する際に,被告大創がフランチャイジーに本件商品を販売させていたとしても,直営店舗及びフランチャイズ店の双方において,本件商品を販売したことにより得た利益全体を考慮する必要があり,基本的には,被告大創が,本件商品をすべて100円で販売したと考えれば足りる。
エ 以上を総合すると,被告大創の利益は,1175万円となる。
(計算式)(100円-50円)×23万5000枚=1175万円 (3) 被告プロテックスに対して 被告プロテックスの主張によれば,被告大創に対する本件商品の販売価格は,1個当たり50円であり,製造原価は30.69円であるということである。
被告プロテックスは,上記製造原価に加え,ロイヤルティ9円も利益から控除するように主張する。しかし,被告プロテックスがジェネシスに金銭を支払ったことが,侵害行為と関係があること自体が疑わしく,本件商品を製造,販売することに関する費用として,およそ認められるものではない。
仮に,それが可能であるとしても,ロイヤルティは上代の6%という取り決めであったはずであるから,本件商品100円に対しては6円になるはずであり,被告プロテックスの上記主張には理由がない。
また,被告プロテックスが営業経費と主張しているものについても,いかなる内容の費用であるかは全く不明であり,これを考慮することはできない。
以上からすれば,被告プロテックスが本件商品を製造,販売したことによる粗利益は,453万7850円となる。
(計算式) (50円-30.69円)×23万5000枚=453万7850円 (4) 被告らの主張に対する反論 ア 被告らは,本件商標権の寄与は大きくないと主張する。
しかし,顧客は,本件商標が付された商品であるからこそ,本件商品が正規品であると信用して購入するのであり,商品の販売元がどのように表示されているかという点は,本件商品において重要な意義を有している。特に,肌に付着して使用する本件商品のように安全性を考慮すべき商品の場合には,その傾向が顕著に現れる。カンパニーブランドにおいては,商標の機能の一つである品質保証機能が大いに発揮され,顧客の購入意欲が促進されるものである。
イ 被告らは,価格が廉価である場合には品質保証機能は当てはまらないとも主張する。
しかし,ポケモンキャラクターが付された商品が100円均一で販売されていたとして,全く無名の業者が製造・販売元として表示されていたら,消費者はその商品が廉価であるがゆえに模倣品であると判断し,購入を躊躇するはずであるところ,本件商標が付されていることにより,正規品と信頼し,安心して購入することができる。消費者は,おもちゃ会社として著名な原告(トミー)が製造・販売しているのだから,当然正規品であり,品質も高いものと認識する。さらにいえば,本件商品は,直接肌に貼付して使用されるものであり,消費者はその安全性に関心があるため,本件商標が付されているのと付されていないのとでは,消費者に与える印象は決定的な相違がある。
ウ 仮に,訴外任天堂が,被告らの利益に対する本件各商標の寄与割合が3分の1であると主張していたとしても,消費者は,本件商品に本件各商標と同一の商標が表示されているからこそ購入したものであり,損害算定にあたり,著作権との間で寄与割合を考慮する必要はない。被告らは,別々の権利者が所有する異なる権利を侵害しているのであるから,同一商品であっても,異なる権利者から賠償請求されるのは当然である。
(5) まとめ 以上によれば,原告が被った損害額は,@被告大創に対しては1175万円,A被告プロテックスに対しては453万7850円となり,原告は,被告らに対し,上記@及びこれに対する平成16年6月7日(訴状送達の日)から,上記A及びこれに対する平成16年6月7日(訴状送達の日)から,各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
〔予備的主張〕 (1) 仮に,原告が,本件各登録商標を付して本件商品を販売することを許諾するとすれば,原告のグループ子会社に対する独占的通常使用権としてなされる以外に方法はない。そして,本件各登録商標に対する独占的通常使用権の使用料は,一般的な契約では希望小売価格の20パーセントとされることが多い。
したがって,原告が商標法38条3項に基づいて,原告の被った損害を算定すると,下記のとおり,470万円となる。
(計算式) 100円×23万5000枚×20パーセント=470万円 (2) そして,本件商品は,被告プロテックスが被告大創の承認を得て製造・販売したとのことであるから,被告らは共同して商標権侵害を行っているものである。よって,当該使用料相当額の損害については,被告らは連帯して(被告プロテックスに対しては,上記470万円のうち453万7850円の限度で連帯して)その賠償の責めを負う。
【被告プロテックスの主張】 (1) 原告の主張は争う。
(2) 本件商品についての粗利益,純利益は次のとおりである。
ア 粗利益 10.31円 (計算式)下記@-(同A+同B) @ 販売価格 50円 A 製造原価 合計30.69円 (内訳)OPPフィルム 6円 セパレーター 5円 インク及び糊 4.6円 台紙ほか 4.32円 袋詰外注費 3.43円 パッケージ代金 2.96円 製版代金 1.07円 運賃チャーター 0.81円 人件費(製造) 2.5円 B ロイヤルティ 9円 イ 純利益 7.98円 (計算式)粗利益(上記ア)10.31円-下記C C 営業経費 2.33円 (内訳)人件費,交通費,出張費(東京・広島) 【被告大創の主張】 (1) 原告は,本件商品と同様の「ポケットモンスター」の名称と図柄を有する商品を販売していないから,競業関係に立たず,本件商品の販売により,具体的・現実的な損害は生じていない。
(2) 仮に,損害が生じているとしても,被告大創の売上げは,次のとおりである。
ア 被告プロテックスからの仕入個数は,23万5000枚である。このうち,被告大創の店舗に納入されたものは21万1900枚であり,販売されたものは17万0327枚である。残りの4万1573枚は,被告大創の店舗から返品され,在庫として保管している。
イ 本件商品の仕入値は50円(税別)であり,被告大創は,本件商品を直営店では100円で販売し,そのフランチャイズ店に対しては65円で販売した。
これに基づいて販売利益額を算出すると,608万4095円となる。
本件商品の販売のために,店舗を賃借し,従業員を雇用し,商品の運搬を行うなどの販売費や一般管理費が必要であることは公知の事実であり,本件商品における販売等の経費は33万7000円である。
したがって,最終利益は,574万7095円(販売利益608万4095円-33万7000円)となる。
(3)ア 原告は,固定費を含む販売管理費全体を控除することを認めるべきではないと主張する。
しかし,小売業における商品の販売には販売費及び一般管理費を要するため,商品を販売した結果得られる粗利益から上記の販売費及び一般管理費を控除した金額が,小売業における営業利益となり,この金額を最終の利益(純利益)とすべきである。なぜなら,商品を販売しようとすると,運送費や店員の人件費やその他一般管理費を要することは社会通念上,当然だからである。
被告大創において,販売した本件商品の個別ごとにいくら経費を要したかを調査することは不可能である。ただし,被告大創は,100円ショップを経営しており,商品の販売単価はほぼ単一であり,販売する商品の重量(形態)にはさほど相違はないため,運搬費や人件費などの経費は,商品による差異はそれほど大きくないという事情がある。
そこで,被告大創の売上高に対する経費割合を算出し,これを本件商品の粗利益に乗じて,純利益(営業利益)を算出することが合理的である。
したがって,上記のとおり,574万7095円を被告大創の純利益とするべきである。
なお,本件商品については,別件訴訟において,任天堂らは,本件原告の損害割合を3分の1と主張しているから,被告大創の原告に対する純利益額である574万7095円に3分の1を乗じた額が原告の損害額となる。
イ 原告は,被告大創がロイヤルティをフランチャイジーから受領しているはずであると主張する。
しかし,被告大創は,フランチャイズ店との間で,@被告大創の製品を100パーセント仕入れること,A被告大創が指定した看板や販売促進に必要な物品を使用すること,B被告大創が企画した売り場のレイアウトや提案に従うなど,商品売買契約に極めて近い契約内容を約しているだけでロイヤルティは取得していない。
【被告らの主張】 (1) 本件商品については,任天堂などがポケモンキャラクターの著作権を有している。原告は,同著作権者から,その使用権を取得して,本件商品に本件各登録商標を付して販売しているものである。
本件商品の価値は,本件各登録商標にあるのではなく,本件商品の図柄にある。つまり,顧客が本件商品を購入する重要な動機は,その図柄(あるいは剥がして貼り付けできるという機能)にあり,その販売元が誰であるかにはほとんど注目していない。
したがって,仮に,被告大創の販売により,原告に損害が生じたとしても,その損害は微々たるものである。
(2) 原告の損害額算定には,任天堂などの利益まで含まれており,二重払いとなる危険がある。
原告は,本件各登録商標が品質保証機能を有しており,これが顧客の購買意欲を促進すると主張する。
しかし,原告の上記主張は,本件商品のような100円均一の廉価な商品については当てはまらない。顧客は,ポケモンキャラクターというキャラクター,商品名及び図柄と100円という廉価に着目しているにすぎない。
4 争点4(過失相殺の可否)について 【被告プロテックスの主張】 本件を惹起した決定的な誘因は,Cが最新の本件キャラクターデータを収めたCD-ROMをAに対して交付したことによる。原告において,このような杜撰な商品管理に関する注意義務違反がなければ,被告らが,本件商品を製造して小売販売すること自体あり得なかったものであり,原告の主張する損害の発生についても,原告側の過失行為による寄与が大きい。
したがって,大幅な過失相殺が認められるべきである。
【被告大創の主張】 本件キャラクターデータは,社外秘であるデータベースとして保存されるべきである。この本件キャラクターデータが被告プロテックス宛てに送付されたというのであるから,原告の商品管理に落ち度があったことに間違いはない。しかも,BとDが,本件商品について承諾したかのごとき会話をしたことが,Dが,原告の承諾を得たものと誤認した大きな理由となっている。
したがって,仮に,被告大創に過失が存在し,原告に損害が生じているとしても,過失相殺が認められるべきである。
【原告の主張】 原告において,デザインデータの外部企画会社に対する貸与は,試作品の製作に使用目的を限定し,返却を条件に貸与するものである。CがAに対し,本件キャラクターデータを貸与したのも,試作品の制作目的でなされたのであるから,同貸与行為は,キャラクタービジネスを進める上でやむを得ないものであり,あくまでも試作品の制作の目的に限定される。
また,Bは,Aに対し,何らかの許諾を与えているとうかがわせるような対応をしたこともない。
したがって,この点について,原告に落度はない。
5 争点5(謝罪広告の必要性)について 【原告の主張】 本件商品は,人の肌に直接貼付することが想定されるものであり,衛生面を含めた製品上の品質管理の問題,アレルギー等の需要者側の問題に慎重な配慮をすることが強く求められるものである。特に,アニメーション「ポケットモンスター」シリーズの顧客層である子供たちの間でもアレルギー問題が深刻化している昨今の現状を踏まえ,本件商品のような人体に直接触れる商品については,製造・販売の許可に際して,特に慎重に安全性を配慮した上で製造元に対して厳格な品質管理が要求されるものである。
ところが,被告らにより品質の劣悪な本件商品が多数販売されたことによって,原告のお客様相談室に苦情が入るなど,原告の営業上の信用が著しく害された。
また,本件商標を付した本件商品が100円で販売されたこと自体,原告のブランドイメージを害しているともいえる。通常,原告が,本件商品と同種の商品を販売する場合,300円以上の売価を設定するが,本件商品が100円で販売されたことにより,原告のブランドイメージは著しく害されたというべきである。
したがって,原告の名誉声望を回復するためには,被告らが謝罪広告を行うことが必要である。
被告大創が日本全国に店舗を展開していること,本件商品の販売数量も23万5000枚と莫大であることからすると,被告らは,一般消費者の原告に対する信用を回復するために読売新聞及び日本経済新聞において,また,原告の顧客層に対する信用を回復するために被告大創の経営する100円ショップにおいて,それぞれ謝罪広告を行うことが不可欠である。
【被告大創の主張】 @被告大創は,これまでに取引経験のある被告プロテックスからの報告を信用して販売したもので,故意や重過失に基づいて販売したものではない,A本件商標権侵害の原因は,原告が安易にAに本件キャラクターデータを貸与したことが原因であり,原告に重大な過失がある,B被告大創は,本件商標権侵害が判明した後,販売を中止して,原告の損害の発生や拡大防止に協力している,C原告自身が本件商標権侵害により具体的かつ現実的に名誉を毀損されたという実害も生じていない。以上からすると,本件において,被告大創が謝罪広告を行う必要性は存しない。
【被告プロテックスの主張】 原告の主張は争う。
当裁判所の判断
1 争点1及び争点2について (1) 前記の前提となる事実(第2,1)及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。
ア 原告の担当者について Bは,平成7年11月21日に原告に入社し,エレクトロニクス事業部の部長として配属され,その後,平成13年4月に企画本部の執行役員兼副本部長を経て,平成15年3月ころから,現在のフロンティア事業本部の執行役員兼本部長となった者であり,Cは,平成9年3月1日に原告に入社後,第2事業部の主任として配属され,その後,平成15年3月にトイ事業本部キャラクターグループのグループリーダーを経て,同年10月に現在のコンテンツ事業戦略本部オリジナルコンテンツグループのグループリーダーとなった者である(甲11,12)。
イ DとAとの従前の関係について a) Aは,被告プロテックスの前身であるマインドの社員であり,平成13年まで,被告プロテックスの東京における出張員であった。
Aは,被告プロテックスを退職後,ジェネシスに入社し,キャラクター関係の企画やライセンス等のビジネスを行っていた(甲6)。
b) DとAは,マインドにおいて,平成12年6月ころ,「おしゃべりストロー」(ドラえもん,ハローキティ)という商品について,権利者の監修を済ませずに,かつ,証紙を偽造して商品に貼付し,販売したことがあった(甲16の1ないし16の6)。
ウ 本件商品について a) 本件商品に使用されたキャラクターは,平成14年11月21日からテレビ放送されていた「ポケットモンスターアドバンスジェネレーション」に登場するキャラクターや,同日に発売されたテレビゲームソフト「ポケットモンスター ルビー」及び同「ポケットモンスター サファイア」に登場するキャラクターの図柄を使用したものであった(甲17)。
b) 本件商品の裏面上方には,「シールの貼り方」及び「シールのはがし方」として,本件商品の使用方法がイラストを交えて記載されている。また,本件商品の裏面下方には,「トミーお客様相談室」と記載され,住所,電話番号,電話受付時間などが記載された後,「発売元」として「株式会社トミー」(被告標章2)との標章が記載されている。しかし,本件商品には,証紙は貼られていない(甲4)。
c) 市場に流通する多くの商品に印刷されているバーコードは,財団法人流通システム開発センターに登録したJAN(Japanese Article Number)コードを,POSシステムで容易に使用するために,バーコードリーダーで読みとれるように書き替えたものである。本件商品の裏面に印刷されたバーコードは,原告のものではなく,Dが取締役を務めるマインドのものであった(甲14,15)。
エ 本件に至る前の原告と被告プロテックスとの関わりについて a) 被告プロテックスの前身であるマインドと原告は,平成10年ころに「キャラクタータトゥシール」について,平成11年ころに「キャラクターペットボトルキャップ」について,それぞれ取引をしたことがあった。いずれの取引も,マインドの担当者は,D単独か,あるいは,DとAが担当となっていた(甲11,乙17ないし20)。
b) 原告社員のB及びCは,上記のボトルキャップ製品を商品化する際に,Dと名刺交換をしたことがあり,Dとは面識があった(甲11,12)。
c) Bは,平成14年末ころ,Aとギフトショーで偶然出会い,Aから企画を提案したいという申し出を受けた。Bが,Cと共に,Aが代表取締役をしていたジェネシスのオフィスを訪問した際に,Aから携帯電話に関する「テルミン」という製品の商品化について提案を受けた。同企画はある程度進行したものの,最終的には電波法等の問題から商品化は断念された(甲12)。
オ 被告プロテックスと被告大創の従前の関係について(丙1) Dの勤務先であるマインドと被告大創の取引は,平成10年8月の「スヌーピーフェイスシール」で始まった。
その後,マインドと被告大創との間で,平成11年7月ころに,ストローのアイディア商品の取引,同年8月ころに「ドラえもんフェイスシャルステッカー」,平成13年12月ころに「プーさんフェイスシール」について,それぞれ取引があった。
なお,平成14年ころ,被告大創は,Dから,取引先をマインドから被告プロテックスに変更して欲しい旨の要請を受け,その後,被告プロテックスから商品を仕入れて販売するようになった。
カ 本件に至る経緯(甲11,12,18,19,丙1及び弁論の全趣旨) a) Bは,平成15年11月ころ,突然,Aから電話を受け,Aと渋谷で会うことになった。Aは,Bに携帯電話周りの商品の企画などの提案をするとともに,その場でDに電話をかけ,BにDへの電話に出てほしいと懇請した。BがAから頼まれるまま,Dへの電話に出たところ,Bは,Dから,「ご無沙汰しております。企画をAさんに頼みますのでよろしくお願いします。」などと言われた。Bは,Dのいう具体的な企画の内容までは分からなかったが,一般的な依頼の話であると受け取り,Dに対し,「今後,良い企画があれば提案してください。」という社交辞令的な返事をした(甲12)。
b) その後,Cは,Bから,Aが企画を提案したいというので会って欲しいと言われ,平成15年11月25日ころ,原告本社においてAと会った。Aは,同日,Cに対し,「ポケモンフェイスシール」と「ディズニーの携帯カバー」の企画を提案した。これに対し,Cは,原告ディズニー事業部所属の担当者も同席させてAからの提案を聞いたものの,Aの企画は,ディズニー社からライセンスを受けている範囲の製品ではないことが判明したため,「ディズニーの携帯カバー」の商品化については断った。また,「ポケモンフェイスシール」の企画に関しては,Cは,Aに対し,版権元である株式会社小学館プロダクションに申請することは可能であるものの,商品企画書と試作品がないと版権元に申請できないと伝えたところ,Aから,企画の申請のための試作品を作成するので,最新のポケモンキャラクターのデータを貸して欲しいと要請された(甲11)。
原告におけるキャラクターデータの管理は,パソコンで行い,固有のパスワードを設けて取扱っていた。キャラクターデータの貸出しについては,これまで原告との取引の実績がある企画会社,デザイン会社,印刷会社等に対して貸し出すことは許されるものの,これまでに原告と取引の実績がない業者(新規業者等)に対しては,企画が承認され,商品の生産直前まではキャラクターデータの貸出しはしないという取り決めがあった(甲18)。
Cは,前記のとおり,平成14年末ころ,当時Aが経営していたジェネシスと原告の間で,「テルミン」という商品企画が進行していたことがあったため,原告における上記の基準に従って,試作品の製作のため,返却を条件として,Aに対し,本件キャラクターデータを貸し出すこととし,同データが記録されたCD-ROMをAに郵送した(甲11,19)。
Cは,1週間後にAに連絡をとってみたが,連絡が取れず,その後も何度か電話を掛けたものの,Aと連絡を取ることができなくなった(甲11)。 c) 原告のB及びCは,その後,Aからも被告プロテックスのDからも,本件商品の生産を開始したいとの正式な申し出や,本件商品に本件各登録商標を使用したいとの申し出,あるいは,ポケモンキャラクターの使用許諾の仲介の申し出を受けたこともなく,当然ながら,本件各登録商標を本件商品に使用することについて,AないしジェネシスあるいはDないし被告プロテックスの誰とも,書面による何らかの契約を締結したことはなかった(甲11,弁論の全趣旨)。
d) 被告プロテックスのDは,平成15年12月23日,ジェネシスから本件キャラクターデータが記録されたCD-ROMの送付を受けた。Dは,従前より,Aから本件商品の製造・販売の申し出を受けていたため,この本件キャラクターデータをもとに本件商品を製作することにし,平成15年12月24日から平成16年1月20日ころまでの間に,協和製版において編集を行ない,本件商品の表面(前面)を製作した(乙7,28,29)。
e) Dが平成16年1月ころ,被告大創のEに対し「ポケットモンスターアドバンスジェネレーション」のメインキャラクターが入った本件商品の商品サンプルを送ったところ,被告大創は,上記商品の販売を決定し,同年2月20日ころ,被告プロテックスが被告大創に本件商品を納品することで商談がまとまった(丙1)。
f) 被告各標章が付されている本件商品の裏面に関するデータは,平成16年2月上旬になって,Aから協和製版に対しメールで送信され,被告各標章が付された本件商品の裏面は,平成16年2月12日ころ編集された(乙27,29)。
g) 被告プロテックスは,被告大創に対し,平成16年2月27日に,本件商品の初回印刷分を20万枚,被告大創の物流センターに納品し,その後,追加分として3万5000枚を納品した。
被告大創は,被告プロテックスから納入された全23万5000枚の本件商品のうち,まず,21万1900枚を被告大創の店舗(直営店舗及びフランチャイズ店)に納入し,同年3月から,順次,被告大創の上記店舗(直営店舗及びフランチャイズ店)において販売を開始した(丙1,2)。
キ 本件商品についての苦情等 a) 原告は,平成16年3月11日,「どこでも張れるフェイシャルステッカーで聞きたいことがある。原告の電話番号が載っている。」と本件商品の購入者から電話を受けたため,本件商品に付されたバーコードを調査した結果,そのバーコードは,マインドのものであるということが判明した。しかし,原告が,マインドの電話番号として届けられていた番号に電話をかけても,一般家庭につながるだけであったため,本件商品の上記購入者に対し,購入先の被告大創に相談してもらうように案内した。
また,平成16年3月16日には,本件商品の購入者から,原告宛てに葉書が送付され,同葉書には,本件商品をダイソーで100円で購入したものの,不良品であり,台紙からシールが剥がれないなどの苦情が記載されていた。原告は,同購入者に対し,本件商品は,原告が係わった商品ではないことを連絡し,購入先の被告大創に相談してもらうように依頼した。
原告のお客様相談室には,同月中に,上記のような問い合わせが,上記のほかに数件あった(本項全体について,甲24,25,弁論の全趣旨)。
b) 被告大創は,平成16年3月下旬ころ,本件商品の購入者から,「ポケットモンスターフェイシャルステッカーが腕にうまく貼れないので,発売元であるトミーお客様相談室に電話したところ,『当社では取扱いのない商品だ』と言われた。どうなっているのですか。」などという問合せを受けた。本件商品の購入者と思われる者からの問合せは,その後,1,2件あった(丙1)。
ク 本件商品の販売中止等について 被告大創は,上記のとおり,平成16年3月下旬ころ,本件商品の購入者と思われる者からの問合せを数件受けていた上,原告,株式会社ポケモン及び株式会社小学館プロダクションの代理人から,被告大創が本件商品を販売することは,著作権,商標権侵害行為,あるいは,不正競争行為に該当するため,直ちに本件商品の販売の停止を求めるなどと記載された内容証明郵便が届いたため(甲5),この件について問題がないことが証明されるまで,本件商品の販売を中止することとし,同月31日付けで,被告大創の全店舗に対し,販売中止を指示した(丙1)。
この時点までに,被告大創の店舗で販売されなかった本件商品の数は,4万1573個であり,したがって,被告大創の本件商品の販売数は17万0327個であった(丙2)。
ケ 訴訟告知 被告プロテックスは,Aに対し,平成16年9月27日付け訴訟告知書において,仮に本件訴訟にて被告プロテックスが敗訴すれば,被告プロテックスは,Aに対し,契約上の義務違反ないし不法行為に基づく損害賠償請求をなし得るとして,民事訴訟法53条に基づいて訴訟告知をし,同訴訟告知書は,同年10月6日,Aに到達した。
しかし,本件口頭弁論期日終結に至るまでの間に,Aからの連絡は一切ない。(当裁判所に顕著な事実) コ 告訴 被告プロテックスは,Aが,被告プロテックスをして,ジェネシス名義の口座にライセンス料として283万5000円を振り込み入金させたものであるから,当該Aの行為について詐欺罪が成立するとして,平成16年11月2日,警視庁北沢警察署に対し,同月12日,福岡県警博多警察署に対し,それぞれ刑事告訴した(乙14,15)。
サ キャラクター商品化ビジネスの仕組みとキャラクター商品に貼付される証紙について(甲9,甲23の1及び弁論の全趣旨) a) キャラクター商品化ビジネスは,一般的に次のように行われることが多い。
@ キャラクター使用を希望する企業は,権利者に対し,商品化についての企画書を提出してキャラクターの使用申込みをし,権利者から提案企画の許諾を得られた場合,権利者と商品化許諾契約書を交わす。
A ライセンシーは,その後,権利者に対し,製品サンプルを提出し,権利者の監修を受け,権利者からデザイン,色,品質,機能等に修正の指示があった場合は,製品サンプルを指示に沿って修正し,製品サンプルが,権利者の監修に合格すれば,権利者に製造数量相当の証紙発行申請を行う。
b) 証紙は,製品1個につき1枚の証紙を製品のパッケージ(又は製品本体)に貼付するよう商品化使用契約書で義務づけられているのが通常であり,実際のキャラクター商品1個につき,証紙1枚が貼付されていることが多い。権利者は,証紙の発行により,@ロイヤルティーの徴収管理,A製品の品質の管理,B許諾製造数量の管理を行っている。
なお,数量が多い商品の場合,当該製品の販売時にインナーカートン(出荷時に段ボール箱の中に小分けして商品を梱包する厚紙でできたカートンのこと)に入れた状態で,商品棚に陳列する販売方法をとるものについては,代表証紙としてインナーカートンに証紙を1枚貼る場合もある。
c) 原告も,多数の商品を販売しているが,その一例を示せば,その販売するウォルト・ディズニーのキャラクターが付されたキャラクター商品について,「本商品はウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社との契約により許諾された著作権を使用して株式会社トミーが製造したものです。」との記載とともに証紙を貼付して販売している(甲23の1)。
(2) 争点1(被告らが本件商品に被告各標章を使用することについて原告から許諾を得ていたか)について 上記(1)において認定した各事実によれば,被告プロテックスが本件商品に被告各標章を付し,これを販売した行為について,原告が許諾したとの事実を認めることはできない。その理由は次のとおりである。
ア 原告と被告プロテックスあるいはジェネシスとの間においては,本件各登録商標の使用について,これを許諾する旨の契約書が作成されていない。また,原告から被告プロテックスあるいはジェネシスに対し,通常,商標や著作物の許諾商品について付される証紙も交付されていないため,本件商品については,証紙が貼られないまま,販売された。
イ 原告の社員のBとCは,被告プロテックスのDとジェネシスのAとは,従前に取引関係があったため,相互に面識があった。しかし,BとDとは,電話で通常の挨拶程度の会話をしただけであり,本件商品についての具体的な話は一切していない。また,Cは,平成15年11月25日ころ,Aから,「ポケモンフェイスシール」の企画の提案を受け,本件キャラクターデータが記録されたCD-ROMをAに貸し出したことはあるものの,その後,Aとは連絡が取れなくなり,本件に至ったものである。
ウ 本件商品の表面(前面)は,被告プロテックスからの依頼により協和製版において,上記CD-ROMに記録された本件キャラクターデータを使用して製作されたものである。しかし,上記CD-ROMは,Cから従前に取引のあったAに対し,試作品作成のために貸し出されただけであり,本件商品の製作のために貸与されたものではない。
なお,被告らは,本件商品に使用された本件キャラクターデータが最新の極秘のものであったことからすれば,Cが本件キャラクターデータをAに貸与したことをもって,原告の許諾があったことを裏付けるものであると主張する。しかし,本件キャラクターデータは,既にテレビ番組で放送されていたものであり,ゲームソフトとして販売されていたものにも使用されたキャラクターであるから,最新の極秘のものということはできず,被告らの上記主張は失当である。
エ 本件商品の裏面に使用された被告各標章は,原告から供与された同CD-ROMに記録されていなかったものであり,Aが自ら又は第三者をして原告が許諾した市販の別の商品から何らかの方法でデータを読み取るなどさせて,このデータを協和製版に送付したものと推認される。すなわち,本件商品の裏面に印刷された被告各標章の構成は原告から供与された本件各登録商標と同一であるものの,原告が正式に許諾した製品に記載された「TOMY」(甲23。検甲2。以下「甲23のTOMY」という。)の文字と本件商品の裏面に使用されている被告標章1の「TOMY」の文字とを厳密に比較対照すると明らかなように,被告標章1の「TOMY」の黒太文字の輪郭部分に,甲23のTOMYにはみられないギザギザがみられ(甲3,4,検甲1),本件商品の裏面の作成に使用された被告各標章のデータは,原告から供与された正式なデータにより作成されたものと認めることはできない。
オ 仮に,本件商品が,ジェネシスあるいは被告プロテックスが原告から正式に許諾を受けたものであるとすれば,本件商品の裏面に印刷されたバーコードは,ジェネシスあるいは被告プロテックスのものであるべきである。しかし,本件商品に付されたバーコードはDが取締役を務めるマインドのものであった。
カ 被告プロテックスは,Dが,ジェネシスを経営するAから,平成15年7月ころ,本件商品の商品化をもちかけられ,同月15日,被告プロテックスは,Aに対し,本件商品のシールライセンス料として,ジェネシスの指定する銀行口座に,シール30万枚分に相当する270万円と消費税13万5000円の合計283万5000円を振り込み,支払ったと主張し,これを裏付けるものとして,乙1の1ないし3を提出する。
a) しかし,仮にジェネシスが上記金員を受領していたとしても,ジェネシスが原告に対し本件各登録商標の使用許諾を申し入れたこと,あるいは,原告との間で使用許諾契約を締結したこと,若しくは,使用許諾料を支払ったことを認めるに足りる証拠はないことは前記のとおりである。
b) また,上記証拠(乙1の1ないし3)によれば,被告プロテックスが,ジェネシスに対し,平成15年7月15日ころ,270万円(税別)を振り込んだとの事実,及び,ジェネシスが被告プロテックスに対し,ポケットモンスターのシールライセンス料として,1枚当たり9円のロイヤルティを30万枚分,270万円(税別)を請求し,ジェネシスがこれを受領したことを示す書類が作成されていることが認められる。
しかし,以下の事情にかんがみれば,被告プロテックスがジェネシスに振り込んだ上記金員が,本件商品のためのライセンス料であるかどうかについても疑わしい点があるといわざるを得ない。
@ 被告プロテックスは,Aから金員の振込について,平成15年7月15日までと期限を迫られて,ライセンス料を支払ったと主張するものの,その後,商品化に向けて動きだしたのは,同年11月ころであり,その間に商品化に向けての積極的な活動をしたことを裏付ける証拠はなく,何度かAに連絡をしてみたと主張するのみであって,本件商品のライセンス料として,上記金員をジェネシスに支払ったとの主張に照らすと,ライセンス料を支払った後の経緯が不合理である。
A 被告プロテックスのDが,ジェネシスが原告から使用許諾を受けていることを確認し得る契約書などの書面を確認しないまま,上記金員を支払うのも不自然である(被告プロテックスは,ライセンス料をジェネシスに支払う前に,Dが,Cに電話で確認したところ,Cから「ポケモンの新キャラクターが出せます。
今がチャンスですよ。」という趣旨のことを言われた旨主張するが,これを認めるに足りる証拠はなく,DがBと電話で話をしたというのも,平成15年11月のことであり,平成15年7月に上記金員を支払ってから相当期間が経過している。)。
B Aは,従前,被告プロテックスの前身であるマインドの社員であり,DとAは,平成12年6月,「おしゃべりストロー」(ドラえもん,ハローキティ)という商品について,権利者の監修を済ませずに,かつ,証紙を偽造して商品に貼付し,販売したことがあった。
C Aは,本件訴訟において,被告プロテックスから訴訟告知を受けているにもかかわらず,当裁判所に対し一切連絡がない。
D 被告プロテックスは,本件が発覚した7か月後(本件訴訟提起の半年後)になって,ようやくAの行為は詐欺罪を構成するものとして告訴したにすぎず,Aに対し,その責任を真剣に追及しているものと直ちには認め難い。
以上からすれば,被告プロテックスからジェネシスに対し上記金員が支払われているとしても,同金員が本件商品のライセンス料として支払われたかどうかは疑わしいものといわざるを得ない。
(3) 争点2(被告らの本件各商標権侵害行為についての過失の有無)について ア 被告プロテックスの過失について 商標権侵害については,侵害行為者の過失は推定されるものである(商標法39条,特許法103条)。被告プロテックスは,Dが原告の社員のBやCから本件各登録商標の使用許諾が可能である趣旨の電話を受けたこと,また,本件キャラクターデータが送られてきたことなどを理由として,被告プロテックスが,原告から本件各登録商標の使用について使用許諾があったと信頼しても無理からぬ状況にあったから,本件各登録商標の無断使用について過失はない旨主張する。しかし,被告プロテックスの過失の推定を覆す事情は本件においては認められない。その理由は次のとおりである。
まず,Dが,BやCから,本件商品について本件各登録商標の使用許諾が可能である旨の電話を受けたとの事実を認めることができないことは,上記(1)及び(2)のとおりである。
また,本件では,被告プロテックスは,本件商品の商品化に必要な原告との間の本件各登録商標の使用許諾契約の成立の有無を,原告に対し,直接確認したことはなく,また,本件商品の製作に必要な本件キャラクターデータ入手に関する経緯を原告に対し直接に確認したこともないのであり,その主張によっても,概ねAを通じて入手した情報に基づいて行動しているだけである。
しかも,被告プロテックスの前身であるマインドと原告との間には,従前に,本件商品と同種類の商品である「キャラクタータトゥーシール」や「ディズニーペットボトルキャップ」などについて正式な取引があり,その場合においては,一つの商品を商品化するために,原告が,マインドに対し,当該製品の品質及び色やデザインの管理等については,非常に詳細な指示をしていることが認められるのである(乙17ないし20)。にもかかわらず,本件商品の商品化については,被告プロテックスは,その詳細を明らかにせず,商品化についてのデータのやりとりについても,単にAから送られてきたという本件キャラクターデータを使って本件商品を製造したというものにすぎず,また,本件キャラクターデータすら,被告プロテックスの手元にないのである(乙29によれば,乙28で示されたデータは,協和製版が保存していたものとのことである。)。このような本件商品の商品化の過程だけをみても,従前の取引のように,原告からの詳細な指示書等が存しないこと自体,不自然であり,この点で,被告プロテックスが疑問を抱かなかったとすること自体が不自然である。
さらに,キャラクター商品ビジネスについては,キャラクターを使用する商品については,当該キャラクターの権利者と商品化許諾契約書を交わし,権利者から製造数量相当の証紙を発行をしてもらい,商品に証紙を貼ることは通常の方法である(その方法は,商品1点ごとに一つ貼る方法と代表証紙としてインナーカートンに一つ貼る方法があることは前記のとおりである。)。したがって,被告プロテックスが,Cから証紙を貼らなくてよいと言われたとのAの言を信じて,本件商品の出荷をしたことについても,通常の取引者として負うべき十分な注意義務を尽くしたとはいうことはできない。
以上によれば,本件各商標権侵害行為について,被告プロテックスに過失があったとの推定を覆すべき事実の立証があったとは到底いえないのであり,被告プロテックスに過失があったものと推定されることは明らかである。
イ 被告大創の過失について 商標権侵害については,侵害行為者の過失は推定されるものであり(商標法39条,特許法103条),本件において,被告大創の過失の推定を覆す事情は認められない。その理由は次のとおりである。
a) キャラクター商品ビジネスについては,キャラクターを使用する商品については,当該キャラクターの権利者と商品化許諾契約書を交わし,権利者から製造数量相当の証紙を発行をしてもらい,商品に証紙を貼ることは通常の方法である(その方法は,商品1点ごとに一つ貼る方法と代表証紙としてインナーカートンに一つ貼る方法があることは前記のとおりである。)。したがって,被告大創が,本件商品に証紙が貼られていないことを認識した段階で,その発売元と記載されている原告に対し,本件商品の発売元かどうかを確認するなどすべきだったのであり,このような確認をすることが容易であったのに,これをしなかった被告大創については,通常の取引者として有すべき十分な注意義務を尽くしたものということはできない。
b) 被告大創は,被告プロテックスとのこれまでの取引において,キャラクターの使用について,何か問題になったことはなく,また,キャラクター商品については,小売店がメーカー等に問い合わせても,守秘義務を理由として契約内容の開示を断られるのが通常であり,さらに,被告大創が原告と取引した商品においても証紙のないものが存していた,と主張する。
しかし,被告大創は,100円均一ショップなどの名称で商品を販売する全国的にも有名な小売店であり,本件のようなキャラクター商品の販売について,どのような手続が必要であるかは,十分知り得る立場にある。被告大創が主張しているように,メーカー等が契約上の守秘義務の関係から,著作権等の契約内容を小売店に開示することはできないとしても,本件のように証紙の貼付のない商品について,許諾契約の内容ではなく,その契約の存否自体の問合せや,少なくとも発売元と記載されている原告が本件商品の発売元かどうかを確認するための問合せについて,発売元である原告がその回答を留保する理由はない。本件においては,被告大創が,発売元である原告に対しこのような問い合わせをすれば,本件紛争が生じることを未然に防げたのであり,被告大創が,本件の権利関係を確認しないで本件商品を販売したことは,通常の取引における注意義務を欠いたものであるといわざるを得ない。
よって,被告大創の上記主張は採用できない。
2 争点3(原告の損害の内容及び額)について (1) 被告大創について ア 丙2の1ないし2の6によれば,次のとおり認められる。
a) 店舗への全出荷数 21万1900個 b) 販売数 17万0327個 (うち,直営店舗には10万0834個,フランチャイズ店舗には6万9493個) c) 返品数 4万1573個 d) 販売額 被告大創は,直営店舗においては100円で一般に販売し,フランチャイズ店に対しては65円で販売した。
イ 利益の額 a) 共同不法行為 被告大創は,フランチャイズ店には,65円で販売したものであるから,フランチャイズ店に対する販売については,同金額に基づいて販売利益額を算出するべきと主張する。
しかし,被告大創のフランチャイズ店は,被告大創から仕入れた本件商品を,被告大創の直営店舗と同様,100円均一で販売するものであり,被告大創から仕入れた商品をそのまま販売するものである。
そうすると,被告大創のフランチャイズ店に対する本件商品の販売行為(卸売り)も,被告大創のフランチャイズ店における本件商品の販売行為(小売り)も,いずれも原告の有する本件各商標権を侵害するものであり,また,被告大創とそのフランチャイズ店の本件商品の上記各販売行為は,客観的に関連共同して本件商標権を侵害するものであると認められるから,結局,フランチャイザーたる被告大創は,フランチャイズ店における販売行為についても,共同不法行為者としての責任を負うことになる。
したがって,被告大創が,フランチャイズ店に販売した本件商品については,65円を販売利益額の算定の前提とするのではなく,フランチャイズ店が顧客に販売した100円を販売利益額の算定の前提とすべきである。
b) 商標法38条2項の利益の額 被告大創は,被告大創で販売している商品が100円均一であるという特殊性を有することから,販売経費については,被告大創産業の売上高に対する経費割合を算出し,これを本件商品の売上高と比して,販売経費を求め,得られた販売経費を本件商品の販売利益から控除した額を被告大創の最終利益とすべきであるとし,本件商品の販売経費は33万7000円となる,と主張する。
しかし,商標法38条2項にいう「利益」の額は,侵害品の売上高から,その販売に直接要する費用(仕入れ高,当該製品に関する包装費・運送費等)を控除した額と解すべきであり,侵害品の売上げによって直接に変動しない経費(人件費,店舗の賃借料,その他)などは控除すべきではない。
被告大創は,いわゆる100円ショップであり,極めて多数の種類の商品を店舗内に陳列し,これらを100円で販売するものである。本件商品は,非常に軽く,小さいものであり,多数の他の商品と一緒に運搬され,販売されたものであり,その売り場内の極めて小さなスペースを利用して陳列され,販売されたものにすぎない(甲3の3)。したがって,本件商品の販売によって,人件費,店舗の賃借料などが増加したと認めることは到底できないし,また,本件商品の販売により,広告宣伝費などが増加したことを認めるに足りる証拠はない。なお,本件商品の運送費については,一応考え得るものの,本件商品は,非常に軽く,小さいものであり,他の商品といっしょに運搬され得るものであることからすると,本件商品の販売により,運送費が明らかに増加したことも考えにくく,また,この点の立証もない。また,本件商品の包装費についても,一応考え得るものの,100円ショップにおける包装は簡易で極めて安価なものであり,無視し得る程度のものといえるし,また,本件商品に関する包装費についての立証もない。いずれにしても,被告大創の上記主張は,同社全体のすべての販売経費を売上額に応じて案分して,本件商品の売上額から差し引くべきであるとの主張であり,本件商品の販売によって直接変動しない上記各経費も含めるべきとの主張であるから,これを採用することはできない。
c) 本件商品販売による利益の額 被告大創は,被告プロテックスから本件商品を50円で仕入れていた(丙2の2)のであるから,本件においては,被告大創とそのフランチャイズ店が顧客に販売した100円から,被告大創が被告プロテックスから仕入れた価額である50円を引いた残額50円が,本件商品の1個当たりの利益と推定され,被告大創とそのフランチャイズ店による本件商品の販売による利益額は,次のとおり,851万6350円となる。
(計算式) (100円-50円)×17万0327個=851万6350円 ウ 被告各標章の寄与率について 商標権は,特許権・実用新案権等の他の工業所有権と異なり,何らかの創作的価値を製品自体に付与するものではなく,商標に化体された営業上の信用を意味するものである。一般に,商標権侵害においては,侵害者の利益が当該登録商標の顧客吸引力のみによって達成されていることは稀であり,侵害者の商品の内容や侵害者の営業努力等の事情が相まって,当該商品について利益を上げることができる場合が少なくない。また,一つの商品について,複数の商標権が付されている場合には,当該商品との関連で,商標権の内容により,当該商品の売上げに対する影響力が異なることも多々ある。
本件商品のようなキャラクターが掲載された商品の売上げは,一般的には,当該キャラクターの内容や当該キャラクターに関する商標権の影響力が,商品の販売実績に大きな影響を与えるものといえる。一方,商品自体の安全性も商品の購入に際しては重要であり,当該商品の製造元や販売元として記される商標の影響力も少なくない。
本件商品は,世界的に有名なキャラクターであるポケットモンスターが使用されたフェイスシールであり,その表面には,ポケットモンスターの図柄(著作権)と「ポケットモンスター アドバンスジェネレーション」の商標(商標権)が付されており,その裏面には,その発売元を表示するものとして,本件各登録商標(被告各標章)が使用されている(甲3,4,検甲1)。本件商品については,その表面のポケットモンスターの図柄(著作権)と「ポケットモンスターアドバンスジェネレーション」の商標(商標権)の著名性からいって,これらが本件商品の顧客購買動機あるいは顧客吸引力に与える影響力が大きいことは明らかであり,発売元である原告の本件各登録商標が有する顧客吸引力も高いことを考慮しても,両者を比べると,前者が本件商品の顧客吸引力の約5分の4を占めているものといえ,その余の5分の1が,本件各登録商標の顧客吸引力によるものと認めるのが相当である。よって,被告大創が本件商品の販売により得た利益についての本件各登録商標の寄与率は,20%と認めるのが相当である。
エ 被告各標章の使用による損害 上記イ及びウによれば,被告大創が,被告各標章を使用したことによって得た利益は,170万3270円(計算式:851万6350円×20%=170万3270円)と認めるのが相当であり,原告は,これと同額の損害を被ったものと推定される(商標法38条2項)。
オ まとめ 上記によれば,被告大創による本件各商標権の侵害行為により原告が被った損害は,170万3270円であると認められる。
(2) 被告プロテックスについて ア 甲6並びに丙2の1及び2によれば,被告プロテックスは,被告大創に対し,平成16年2月ないし3月の間に,本件商品を50円で,23万5000個販売したことが認められる。
また,被告プロテックスにおける製造原価が,30.69円であることについては,原告は明らかに争っていない。
したがって,被告プロテックスが,本件商品を販売することによって得た利益は,453万7850円となる。
(計算式) (50円-30.69円)×23万5000枚=453万7850円 イ 被告プロテックスは,商標法38条2項に基づき損害を主張する場合,本件商品のために支払ったロイヤルティ(乙1の1ないし3)や営業経費(乙24の1ないし5)を差し引くべきであると主張する。
しかし,ロイヤルティについては,前記のとおり,DとAの従前の関係や,本件商品の商品化の過程に鑑みると,本件商品の商品化について支払ったものであるかどうかは疑問の残るところであるから,これを本件商品の販売利益から差し引く合理的な理由は認められない。
また,営業経費についても,被告プロテックスは,DからA個人の口座に振り込んだことを証するカード利用明細票など(乙24の1ないし5)を提出するだけであって,これらが被告プロテックスが本件商品の製造販売に要した営業経費であるかどうかを裏付ける証拠は存しない。
したがって,被告プロテックスが主張する上記の営業経費を,被告プロテックスの本件商品による販売利益から差し引く合理的な理由は認められない。
ウ 上記(1)のウと同様の理由により,本件商品の販売に関し,本件各登録商標の寄与率は,20%と認めるのが相当である。
したがって,上記ア及びイによれば,被告大創が,被告各標章を使用したことによって得た利益は,90万7570円(計算式:453万7850円×20%=90万7570円)と認めるのが相当であり,原告は,これと同額の損害を被ったものと推定される(商標法38条2項)。
エ まとめ 上記によれば,被告プロテックスによる本件各商標権の侵害行為により原告が被った損害は,90万7570円であると認められる。
(3) 予備的主張について 原告は,予備的に,被告らに対し,商標法38条3項に基づき,本件商品の小売価格に20パーセントを乗じた使用料相当額の損害を連帯して支払うことを求めている。しかし,原告の予備的主張に基づく損害額は,次に述べるとおり,前記認定の損害額を超えるものとは認められない。
まず,本件各登録商標に対する独占的通常使用権の使用料が,希望小売価格の20パーセントであることを認めるに足りる証拠はない。また,仮に,本件商品の独占的通常使用権の使用料が希望小売価格の20パーセントであるとしても,前記認定のとおり,本件商品には,本件各登録商標以外の商標権やポケモンキャラクターが使用されているのであるから,本件各登録商標の寄与率は,上記使用料20パーセントの5分の1の4パーセント(0.2×0.2=0.04)にすぎないものというべきである。そうすると,同条3項に基づく損害は,上記使用料を前提としても,94万円(=100円×23万5000枚×0.2×0.2)となり,前記認定の商標法38条2項による損害の合計額(170万3270円+90万7570円=261万0840円)を超えるものではないことは明らかである。したがって,本件においては,原告が予備的に主張する商標法38条3項に基づく損害額が,同条2項により推定される損害額(原告の主位的主張に基づく損害額)を超えることはないことは明らかであるから,原告の予備的主張は採用しない。
3 争点4(過失相殺)の可否について 原告の社員のCが本件キャラクターデータをAに渡したことは,前記のとおり,試作品作成のためのものであり,原告の社内規定上も問題のないことである。
また,原告の社員のBがDに対し,電話における会話で,本件商品の製造を許諾したことが ないことも前記のとおりである。したがって,被告らによる本件商標権侵害について原告に過失は認められない。
したがって,被告らの過失相殺の主張は,原告の過失が認められない以上,採用することができない。
4 争点5(謝罪広告の必要性)について 本件商品は,水性のりを使用したシール製品であり,当該シールを貼りたい場所(手や顔などの肌)の上などに直接置き,手のひらでシールを温めるように押さえ,シールを被っていたフィルムをはがすと,シールが当該場所に付着するというもので,シールをはがしたいときには,シールを巻き取るようにすると簡単にはがせるというものであり,対象年齢6歳以上の商品であって,商品の品質や安全性が特に要求されるものであること(甲3の1の1ないし5及び甲4の1ないし10),また,上記1(1)で認定したとおり,平成16年3月に本件商品の販売が開始された後,本件商品を購入した消費者から原告に対し,フェイスシールが台紙から剥がれないなどの本件商品の品質に関わる苦情が数件寄せられていたこと(甲24及び25),本件商品は,前記認定のとおり,1か月間とはいえ,20万個弱と大量に販売され,かつ,すべて100円ショップにおいて廉価で販売されたものであること,被告各標章は,本件各登録商標と全く同一の構成をとっているため,本件商品を購入した消費者は,本件商品が原告の発売に係るものであると誤信することは明らかであることなどを総合すると,原告は,被告らの本件商標権侵害行為により,その商品の品質について疑いの残る本件商品を,原告自身による品質の検査・確認の手続きを一切経ることなく,大量に100円ショップで廉価に販売され,その結果,一般の消費者から苦情を受けたものであり,原告の業務上の信用が害されたものと認められる。
上記事実及び本件に現れた諸事情を総合すると,本件においては,原告が被った業務上の信用毀損を回復するために,被告大創及び被告プロテックスは,別紙謝罪広告目録(1)の1に記載された条件で,同目録(1)の2記載の謝罪広告を,読売新聞,日本経済新聞の各全国版社会面に掲載する必要があると認められる。
ただし,被告らは,前記のとおり,別件訴訟において和解が成立したため,同訴訟における和解条項に従い,平成17年2月28日までに本件商品の在庫をすべて廃棄したことが認められるから(乙6,26,弁論の全趣旨),上記の謝罪広告以外に,被告大創の各店舗において,謝罪広告目録に記載のとおりの広告を掲示する必要性は,現時点においては認められないというべきである。
5 本件商品の販売等差止請求について 原告の請求のうち,本件商品に被告各標章を付する行為及び同標章を付した本件商品の販売等については,これまでの経緯などにかんがみると,差止請求を認める必要性があるといえる。
結論
以上によれば,原告の請求は,主文に記載した限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとする。
裁判長裁判官 設樂隆一
裁判官 杉浦正典
裁判官 鈴木千帆
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