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関連審決 審判1999-30297
関連ワード 指定商品 /  通常使用権 /  専用使用権 /  外観(外観類似) /  国内 /  存続期間 /  更新登録 /  社団法人 /  同一の商品 /  正当な理由 /  継続 /  商号 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 80号 審決取消請求事件
原告 アメリカンホーム プロダクツ コーポレー ション
訴訟代理人弁理士 木村三朗
同 佐々木 宗治
同 小林久夫
同 大村昇
被告 ユニリバーピー エル シー
訴訟代理人弁理士 浅村皓
同 浅村肇
同 小池恒明
同 岩井秀生
同 宮城和浩
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/07/31
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成11年審判第30297号事件について平成12年10月16日になした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,昭和34年商標法に基づく商品区分第1類「薬剤,医療補助品」を指定商品とする,ローマ字大文字で「SMA」と左横書きして成る登録第2242491号商標(昭和54年1月31日商標登録出願,平成2年6月28日商標登録,平成12年7月18日存続期間更新登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。
被告は,平成11年3月11日,原告を被請求人として,商標法50条の規定に基づき,本件商標の登録を取り消すことについて審判を請求した(平成11年3月31日登録)。特許庁は,これを平成11年審判第30297号事件として審理した結果,平成12年10月16日,「登録第2242491号商標の指定商品「薬剤」については,その登録は取り消す。」との審決をし,その謄本は同年11月7日に原告に送達された。
2 審決の理由 審決は,別紙審決書写しのとおり,原告が本件商標を使用している乳児用調製粉乳(SMA S-26)は,「母乳の代用品又は代替品」としての特性を有する乳児用の栄養食品であって,栄養改善法12条に規定された,厚生大臣が許可する特別用途食品の範疇に属するものであり,医薬品・医薬部外品等ではないから,上記商品についての本件商標の使用をもってその指定商品である「薬剤」についての使用とみることはできず,したがって,本件商標は,日本国内において,継続して3年以上指定商品中の「薬剤」について,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていなかったものと認めざるをえず,かつ使用されていなかったことについて正当な理由があるものとは認められないとした。
原告主張の審決取消事由の要点
原告から本件商標の通常使用権を与えられた下記会社がこれを使用している下記2種類の商品(以下これらをまとめて「本件商品」という。)は,本件商標の指定商品である「薬剤」に該当するから,これを「薬剤」には該当しないとした審決は,この点についての認定判断を誤り,その結果誤った結論に至ったものであるから,取り消されるべきである。
1 原告は,日本ワイス株式会社(東京都港区<以下略> 平成12年4月1日,アイクレオ株式会社と商号変更。以下「アイクレオ社」という。)に対し,本件商標の通常使用権を与え,同社は,昭和38年以降,継続して本件商品について本件商標を使用してきた。
2 本件商品は,「ミルクを主原料として調製された粉乳状の栄養素」であり,「SMA S-26」の商標を使用している乳固形分が50%以上の商品(以下「SMA S-26」という。)と,「SMA LBW」の商標を使用している乳固形分が50%未満の商品(以下「SMA LBW」という。)の2種類がある。
「SMA S-26」は,乳固形分を50%以上含むため,食品衛生法に基づく乳及び乳製品の成分規格等に関する省令別表の適用を受け,栄養改善法第12条第1項の規定に基づき,「特別用途食品」の表示について厚生労働大臣の許可を受けている。
これに対し,「SMA LBW」は,乳固形分が50%未満であるため,上記省令の適用がなく,「特別用途食品」の表示の許可の対象外の商品として販売されている。
3 「SMA S-26」は,新生児の成育に不可欠な栄養の補給を行い,その正常な成育を支えることにより新生児に強い免疫力を与え,新生児に起こりがちな病気の発生を予防することを目的としており,母乳が与えられないとき又は母乳が不足するときに,医師の管理下に医師の指示に基づいて,哺乳に経験を積んだ看護婦又は医療従事者によって新生児に哺乳される。
「SMA S-26」は,主としては病院や医院に納入されるが,一部は,医師の処方に基づいて,薬局,スーパーマーケット(医薬品売場)でも販売されている。
4 「SMA LBW」は,低出生体重児の中でも,体重が1500グラムに満たない未熟児に与えられる栄養素である。低出生体重児は,母乳のみで保育された場合には,しばしば,くる病,低蛋白血症,ミネラル欠乏症を発症することがあり,また,特別な栄養管理を怠ると脳神経などの中枢神経の発育に悪影響を及ぼすことも報告されている。したがって,母乳は,一般的には,新生児にとって,生育に最も適した栄養素であるものの,低出生体重児にとっては,母乳のみに頼ることには問題があり,低出生体重児用に特別に調整した栄養素の哺乳が要請されることとなる。
低出生体重児の哺育は,医師の特別な管理の下で,栄養状態,成育状態を精密に監視しながら行わなければならず,哺乳される栄養素は,母乳を補ってあるいはこれに代替して,その正常な成育に必要なすべての要件に合致するべく調整される必要がある。「SMA LBW」は,上述の目的に合致するべく調整された栄養素であり,医師が低出生体重児の状態を診断し,哺乳する栄養素として処方され,医師の指示に基づいて専門教育を受けた看護婦の手によって哺乳される。したがって,「SMA LBW」は,低出生体重児の治療のために医師の処方に基づいて用いられる栄養素であり,そのため,市販されることはなく,病院又は医院にのみ納入されている。
5(1) 新生児の先天性代謝異常症に属する病気は,約300種といわれている。
新生児の先天性代謝異常に対する治療は,哺乳するミルクによって行われることから,その治療に用いられる調整ミルクを治療乳と位置づけ,それぞれの症例に適した特殊ミルクの開発が行われている。
このようにして開発されている特殊ミルクは,ミルクを主原料としてミルク成分を吸収されやすいようにし,治療目的に応じた栄養素を配合した調整乳(栄養素)の一種であるが,乳成分の含量のために,食品衛生法の適用を受けていないものが多い。そして,特殊ミルクは,先天性代謝異常障害の治療に用いられるための栄養素であるから,医師の処方に基づいてのみ哺乳され,市販されることはない。
原告の「SMA LBW」は,上述の目的における特殊ミルクにも該当する栄養素である。
(2) 特殊ミルクの中には,例外的に,薬事法による医薬品として「薬価基準」に掲載されているものもあるものの(例えば,雪印ロフェミルク,雪印ペプチドロフェ,明乳GSDフォーミュラD等),その多くは,薬事法に定める医薬品にも医薬部外品にも該当しない。
しかし,特殊ミルクは,栄養を補給するミルクであるとはいうものの,医師の処方に基づき特定の疾患の治療,予防に用いられるものであるから,その面から見れば医薬品と等価であると考えられる。「SMA LBW」は,正にこの特殊ミルクに該当する商品である。
6(1) 本件商標が出願されたのは昭和54年1月31日であるから,その指定商品は,昭和34年法律第127号商標法に基づく商標法施行令別表及び商標法施行規則別表に定める商品区分(以下「34年商品区分」という。)の第1類「薬剤,医療補助品」である。商標法施行規則別表に掲示されている商品は,網羅的で,それらに限られることはなく,あくまでも例示にすぎない。また,34年商品区分は,一般に用途に重点が置かれて区分されているために,内容的には同一商品であっても2類にまたがって表示されるものもある(例えば第30類の菓子に区分される氷砂糖と,第31類の調味料に区分される氷砂糖がある。)。
34年商品区分第1類の「薬剤」には,種々の医薬品,医薬部外品,動物用医薬品,農薬等のほか,黒焼き等薬事法の対象外の人の健康維持・疾患の予防を目的とした治療に用いる薬剤も含まれている。
また,食品としての乳製品は,34年商品区分第31類に区分されていて,牛乳,クリーム,粉乳,バターなどが例示されている。
本件商標が使用されている本件商品は,その原料組成及び外観上から見れば,上記の粉乳に該当する。
しかし,本件商品は,その用途,授乳に際して医師の処方が必要であること,授乳対象が限定されていることからみた場合,商品区分第1類の薬剤の概念に該当する商品でもある。
一つの商品が商品の機能又は用途から見て異なって用いられる二面性を持っている場合,同一商品であっても,二つの異なった商品概念のいずれにも該当するものとされるべきである。本件商品は,乳幼児の生育のための食品としての機能から見れば「乳児用粉乳」であるが,これを低出生体重児の生命を維持し,先天性代謝異常その他の疾病から防衛(予防)し,治療するという機能から見れば,まさに「薬剤」の概念に該当する商品である。
(2) 34年商品区分においては,第1類に区分されている「薬剤」について,明確な説明はなされていないものの,一般に,単に明治,大正の時代を通じて薬剤として取り扱われてきた例を踏襲したものと考えられている。
しかしながら,医学,薬学の発展に伴って,様々な病原菌が発見され,多くの未知の疾患の治療法が開発されるとともに,疾患の発生を予防する治療法やその治療目的に合わせた機能性食品も開発,発見されてきた。したがって,「薬剤」の概念も旧態依然のままであることはできないはずである。
我が国が平成4年に加入したニース協定に基づく「商品及び役務の国際分類」には,その「General Remarks」(b)において,「多目的の用途に用いられる完成品(例えばラジオを組合せた時計)はその機能又は目的に対応する商品の類に区分されるものとする」旨が述べられ,第5類の薬剤には「医薬及びその他医療目的の製品」が含まれ,これらには「医療目的の食餌療養の物質,乳幼児用食品」が含まれる旨が示されている。
これら「医療目的の食餌療養の物質,乳幼児用食品」は,医師の処方に基づいて用いられる医療を目的とした商品であることから,商標登録の目的における区分では「薬剤」に該当する商品でもあるとしているのである。
7 本件商品は,乳幼児の哺育用のミルク(乳製品)でもあるが,低出生体重児の治療用の薬剤でもある。したがって,本件商標は,34年商品区分第31類に属する乳製品であると同時に,低出生体重児の治療目的にも使用される第1類の「薬剤」の概念にも該当する調整粉乳でもある。本件商標は,本件審判の請求の登録前3年間に本件商品について使用されているのであるから,本件商標は,指定商品「薬剤」についても使用されているのである。
被告の反論の要点
審決の認定・判断は,正当であり,審決に原告主張のような違法はない。
1 本件商品は,そのパンフレットに,「量的に母乳に近づけた乳児用調整粉乳SMA S-26を開発しました。」,「母乳の栄養成分に最も近い乳児用調整粉乳」との記述があることからも分かるとおり,「母乳の代品又は代替品」としての特性を有する乳児用の栄養食品であって,栄養改善法12条に規定された,厚生大臣が許可する特別用途食品の範疇に属する「乳児用調整粉乳」そのものにほかならない。
社団法人発明協会の発行に係る「商品及び役務区分解説」によれば,34年商品区分における「薬剤」の範疇に属する商品は,「薬事法の規定に基づく「医薬品」の大部分」,「薬事法に規定する「医薬部外品」の一部」及び「農薬の大部分」である。本件商品すなわち「乳児用調整粉乳」は,母乳の代用品又は代替品であるから,乳児用の栄養食品であって,上記の医薬品ないし医薬部外品でも,農薬でもないことが明らかである。
また,本件商品すなわち「乳児用調整粉乳」は,上述のとおり,乳児用の栄養食品であって,医薬品等ではないから,薬事法の規制を受けず,通常の医薬品等のように薬局やスーパーマーケット等の医薬品売り場での販売に限定されているわけではなく,スーパーマーケットの食品売り場,乳幼児製品の大手販売会社である株式会社あかちゃん本舗の本店及び各支店等の通常の乳児用食品の売り場等で,他の乳児用調整粉乳メーカー(明治乳業,森永乳業,雪印乳業等)の同種製品と一緒に,展示,販売されているものである。
このように,本件商品は,その母乳の代用品・代替品としての商品特性及びその販売経路(薬局・医薬品売り場に限定されない。)からしても,医薬品・医薬部外品等ではなく,用途が特定・限定された食品であることが明白であるから,決して「薬剤」の範疇に属する商品ではなく,我が国の分類上では「乳児用粉乳」の範疇に属する商品であるというべきである。
2 原告は,「SMA LBW」が医師の処方に基づいてのみ哺乳され,市販されることはない旨主張しているが,これは誤りである。すなわち,「SMA LBW」は,そのパンフレットに「専門家の指導のもとで使用」と記載されてはいるものの,ここにいう「専門家」は医師に限定されていないから,栄養士その他の専門的知識を有する者もここにいう「専門家」である。また,入手や使用が医師の処方によらなければできないというわけのものでもない。「SMA LBW」という「食品」が市販されていないとしても,それは,その使用目的が「低出生体重児」用に限定されているために,量販品として「市販」されることがないという結果となっているだけであり,商品の性質上市販品として取り扱うことができない食品であるためではない。
3 原告は,「SMA LBW」は,「特殊ミルク」にも該当する栄養素であると主張しているが,「特殊ミルク」に該当することが直ちに「薬剤」に該当することにはならない。すなわち,特殊ミルクといってもその実状は多岐にわたっているものであり,例えば,特殊ミルク共同安全開発事業で取り扱われている登録特殊ミルクですら,法的には医薬品とはいえず,「特殊ミルク」に該当することが直ちに「薬剤」に該当することにはならないのである。
4 原告は,本件商品が第1類の「薬剤」と第31類の「乳製品」の双方の概念に該当する旨を主張している。しかし,他の類での扱いはともかくとして,「薬剤」については,このような扱いを安易に認めると,様々な食品,とくに「健康食品」なども「薬剤」に含まれることとなり,両分類の限界が全くあいまいになってしまうから,上記主張は失当である。
当裁判所の判断
1 証拠(甲第5ないし第14号証,枝番のあるものについてはすべての枝番)によれば,次の事実が認められる。
(1) 「SMA S-26」は,「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(昭和26年厚生省令第52号)に基づき,厚生大臣の承認を受けて,アイクレオ社により昭和42年ころから販売されているミルクを主原料とする乳児用調整粉乳である。「SMA S-26」は,限りなく母乳に近い調製粉乳であり,母乳授乳が全くあるいは十分にできない乳児に対し,母乳に代えてあるいは母乳不足を補う目的で,与えられるものである。「SMA S-26」は,栄養改善法12条1項の規定により,厚生労働大臣の許可を受けて,特別用途食品の表示として「母乳は赤ちゃんにとって望ましい栄養です。「エスエムエー S-26 ベビー」は母乳が不足したり与えられない場合に,母乳の代わりをする目的でつくられたものです。」との表示が付されて販売されている。
「SMA S-26」は,哺乳により乳児に栄養を補給する必要がある場合に,専門家である医師,看護婦,栄養士による母親に対する指導に従って用いられるものとされており,このことから,病院や医院にも販売されている。しかし,これに限られず市中の薬局及びスーパーマーケット(医薬品売場)等でも販売されている。
(2) 「SMA LBW」は,ミルクを主原料として調整された低出生体重児用の粉乳であり,アイクレオ社により平成8年2月から販売されている。低出生体重児は,正常な新生児に比べて,消化,吸収,代謝,排泄の仕組みが未熟であるため,健全な生育及び疾病予防のために特別な条件に合わせた栄養が必要となる。
「SMA LBW」は,医師の管理の下に病院等で育成されている低出生体重児に対し,母乳と併用して,あるいは,母乳に代えて,専門家の指導の下に使用されるものである。また,「SMA LBW」は,病院や医院等で医師の指導の下に使用されるものであるので,専ら病院や医院に納入されており,薬局やスーパーマーケットでは一般に販売されていない。
「SMA LBW」は,未熟児が過度な濃度の乳の摂取に耐えられないことから,成分組成中の乳固形分が50%以下とされており,「乳製品の成分規格等に関する省令」によれば,乳固形分が50%以上という調製粉乳には該当せず,「乳等を主要原料とする食品」に分類され,製造に関する承認申請や特別用途食品の表示許可の必要がない。
「SMA LBW」は,乳児の成熟程度に応じて,経管栄養として,又は哺乳瓶で,飲ませるものである。原告のパンフレットにおいては,新生児の体重が1800グラムないし2500グラムに達したら,「SMA S-26」などの乳児用調製粉乳に変更していくことが推奨されている。
(3) 特殊ミルクといわれるものは,一般には,フェニルケトン尿症などの先天性代謝異常症の新生児のために,それぞれの病気に応じて特殊に調合されたミルクのことであり,これらの特殊ミルクの中には,一般の乳児用調製粉乳と比べ,高価であるため,雪印ロフェミルクS,雪印ペプチドロフェ等のように,医薬品として認められ,薬価収載されたものがある。ただし,特殊ミルクといっても,様々なものがあって,その定義は必ずしも明確ではなく,特殊ミルク共同安全開発事業で現在取り扱われている登録特殊ミルクの多くは,薬事法上は医薬品とも医薬部外品ともいえず,現在のところ,医療食品,病態食品に属するものが多い(原告は,「SMA LBW」は,特殊ミルクであると主張する。しかし,「SMA LBW」は,低出生体重児の持つ多くの栄養上の必要条件を満たすことを目的とするものであり,低出生体重児に必要な栄養量を考慮して開発されたものである。そして,「SMA LBW」が,特定の先天性代謝異常症の治療のために開発されたものであることを認めるに足りる証拠はなく,特定の先天性代謝異常症の治療のために開発されたミルクを特殊ミルクというのであれば,「SMA LBW」は,特殊ミルクということはできない。)。
2 証拠(甲第17号証の1ないし5)によれば,@34年商品区分は,商標法施行令別表と同法施行規則別表の両者で構成されていること,A同法施行規則別表は,商品の区分に属すべき商品を定めたものであり,商品の区分を明確にするためのものであること,B同法施行規則別表は,用途主義の比重が重くなっている結果,物の用途によっては,同一の物が2類以上にまたがって掲載されていることがあること(例えば「氷砂糖」は,第30類「菓子」と第31類「調味料」に掲載されている。),Cこのような場合は,商標を付すべき商品がいずれの形で取り引きされるかによりそれに該当する類を指定しなければならないとされていること,D34年商品区分第1類の「薬剤」には,「中すう神経系用薬剤,末しょう神経系用薬剤,感覚器官用薬剤」等の種々の医薬品,医薬部外品,動物用医薬品,農薬等が例示的に列挙されていること,Eしかし,この中に乳児用調製粉乳が該当する可能性のあるものは全く見いだせないこと,Fこれに対し,34年商品区分第31類には,食品として「乳製品」が規定され,その中に,牛乳,クリーム等のほかに「粉乳」が例示されていることが認められる。
3 上記1,2に認定した状況の下では,次のとおり認めるのが合理的であるというべきである。
(1) 「SMA S-26」について 「SMA S-26」は,新生児に対し与えられる調製粉乳であり,限りなく母乳に近いものであって,母乳に代替しあるいはこれを補完するものとして,乳児に与えられるものである。また,「SMA S-26」は,病院や医院にも納入されるものの,市中の薬局又はスーパーマーケット等でも販売されている。
34年商品区分第1類の「薬剤」には,医薬品,医薬部外品,農薬その他多くのものが列挙されているものの,その中に,乳児用の調製粉乳に該当する可能性があるものは全く見いだせないのに対し,34年商品区分の第31類の「乳製品」には,粉乳が例示されている。
以上によれば,「SMA S-26」は,限りなく母乳に近いものであって,母乳に代替しあるいはこれを補完する調製粉乳であり,34年商品区分第31類の「乳製品」に該当するものであることは明らかというべきであり,これを同商品区分第1類の「薬剤」に該当するものということはできない。
(2) 「SMA LBW」について 「SMA LBW」は,低出生体重児に対し与えられる調製粉乳である。
低出生体重児については,母乳による栄養を与えるだけでは十分ではなく,その健全な生育と疾病予防のために低出生体重児用に特別に調整した栄養素の哺乳が要請される。低出生体重児の哺育は,医師による管理下で行われるので,哺乳は,母乳の補充あるいは母乳の代替として,医師の指示に基づいて,看護婦らによって行われるものであるため,「SMA LBW」は,専ら,病院に対し販売されるものである。
このように,「SMA LBW」は,低出生体重児用に特別に栄養素を調整している点,利用者である低出生体重児が病院や医院で医師の管理の下に生育されることから,一般に市販されず,病院や医院にのみ販売される点では,「SMA S-26」と異なるものである。しかし,「SMA LBW」は,新生児の生育に必要な調製粉乳であることにおいては「SMA S-26」と変わりはなく,その哺乳の対象が低出生体重児であるために,その成育に必要な栄養素について特別な配慮がなされているにすぎないものである(そのため,原告のパンフレットにおいても,新生児の体重が1800グラムないし2500グラムに達した後は,「SMA S-26」などの調製粉乳に変更することが推奨されている。)。この意味で,「SMA LBW」は,「SMA S-26」と同じく,基本的に乳児用調製粉乳に該当するものであるということができる。また,「SMA LBW」は,特定の先天性代謝異常の新生児の治療に使用される特殊ミルクでもなく,医薬品として認可されているものでもない。
34年商品区分第1類の「薬剤」には,このような低出生体重児用の調製粉乳に該当する可能性があるものは全く見いだせないのに対し,第31類には「乳製品」として「粉乳」が挙げられている。
上記各事情を総合した場合,「SMA LBW」も,「SMA S-26」と同様に,34年商品区分第1類の「薬剤」ではなく,第31類の「乳製品(粉乳)」に該当するものと解するのが相当である。
原告は,「一つの商品が商品の機能又は用途から見て異なって用いられる二面性を持っている場合,同一商品であっても,二つの異なった商品概念のいずれにも該当するものとされるべきである。本件商品は,乳幼児の生育のための食品としての機能から見れば「乳児用粉乳」であるが,これを低出生体重児の生命を維持し,先天性代謝異常その他の疾病から防衛(予防)し,治療するという機能から見れば,まさに「薬剤」の概念に該当する商品である。」と主張する。
確かに,34年商品区分の商標法施行規則別表においては,用途主義の比重が重くなっている結果,物の用途によっては,同一の物が2類以上にまたがって掲載されていることがあり,氷砂糖等が2つの類にまたがって例示されている。しかし,これは,氷砂糖の例からも明らかなように,複数の異なる用途を有する物について用途毎に別の種類の商品として扱うことを認めるにすぎず,用途の特定された同一の商品が2類以上に該当することを認めるものではない。そして,本件商品における用途はいずれも一つであり,決して複数あるわけではない。また,この点をおくとしても,34年商品区分においては,乳児用調製粉乳が該当する「粉乳」は2類にまたがって例示されてはおらず,同商品区分第1類「薬剤」についてみても,乳児用調製粉乳ないし粉乳と関連性を有するものが全く記載されていないことは上記のとおりである。さらに,そもそも乳児用調製粉乳には,もともと新生児を健全に育成させ,疾病を予防し,健康を維持する機能があることは昭和34年当時においても既に明らかなことであるのに,商標法施行規則別表において,乳児用調製粉乳を包含する粉乳を第31類の「乳製品」に例示して,第1類の「薬剤」に例示しなかったことは,34年商品区分における分類においては,乳児用調製粉乳を34年商品区分第1類の「薬剤」にも該当する二面性を有する商品であるとまでは考えていなかったためであると解するのが相当であり,原告の上記主張を採用することはできない。
原告は,34年商品区分第1類「薬剤」の概念も変わってきているとして,我が国が平成4年に加入したニース協定の例を挙げる。
我が国の商標法は,平成4年にニース協定に加入した後に,同年4月1日に,国際分類を主たる体系として採用して,商標法に基づく商品区分を改正しており,その結果,商標法施行規則別表第5類「薬剤」に「乳児用粉乳」が追加されていることは,当裁判所にも顕著な事実である。しかし,本件は,34年商品区分の第1類「薬剤」が問題となっているのであり,これとは異なる商品区分である平成4年改正後の商標法の商品(及び役務の)区分ないしはその前提となっているニース協定をもって,これを解釈することはできない。 4 以上のとおりであるから,原告が本件商標を使用している商品である「SMA S-26」及び「SMA LBW」は,いずれも,34年商品区分第1類の「薬剤」に該当する商品と認めることはできず,原告主張の審決取消事由は理由がない。他にも,審決には,これを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担並びに上告及
び上告受理の申立てのための付加期間の付与について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,96条2項を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 設樂隆一
裁判官 宍戸充
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