関連審決 | 審判1998-31206 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成13行ケ47審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成20行ケ10042審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成18行ケ10233審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成16行ケ312審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成10行ケ187審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 包装 / 指定商品 / 類似性(類否判断) / 不使用 / 通常使用権 / 専用使用権 / 外観(外観類似) / 取引の実情 / 出所の混同 / 国内 / 警告 / 専用権 / 存続期間 / 更新登録 / 社団法人 / 同一の商品 / 不使用取消審判 / 正当な理由 / 類似商標 / 継続 / 非類似 / |
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元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
12年
(行ヶ)
447号
審決取消請求事件
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原告 日本臓器製薬株式会社 訴訟代理人弁理士 萼経夫 同 村越祐輔 同 館石光雄 被告 グラクソグループ リミテッド 訴訟代理人弁護士 中村稔 同 熊倉禎男 同 松尾和子 同 辻居幸一 訴訟代理人弁理士 加藤建二 同 大島厚 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2001/07/12 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
特許庁が平成10年審判第31206号について平成12年10月5日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための附加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告 主文第1項、第2項同旨の判決 2 被告 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、「INTEGRAN」と「インテグラン」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表(以下、 「旧政令別表」という。)による商品区分第1類の「化学品、薬剤、医療補助品」を指定商品として昭和59年7月10日に商標登録出願され、同62年1月28日に設定登録、平成9年1月30日に商標権存続期間の更新登録がされた登録第1924681号商標(以下、「本件商標」という。)の商標権者である(なお、本件商標の指定商品中、「のりおよび接着剤」については、一部商品の取消審判が確定し、その登録が平成7年8月22日になされている。)。被告は、平成10年11月13日に、原告を被請求人として、本件商標の指定商品中、「薬剤」について、 商標法50条1項の規定に基づく商標登録取消の審判を請求した。特許庁は、同請求を平成10年審判第31206号として審理したうえ、平成12年10月5日に「登録第1924681号商標の指定商品中「薬剤」については、その登録は取り消す。」との審決をし、その謄本は同年10月25日原告に送達された。 2 審決の理由 審決は、別紙審決書の理由写しのとおり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、請求に係る指定商品「薬剤」について使用されておらず、かつ、不使用について正当な理由があるものとは認められないから、本件商標の登録はその指定商品中の「薬剤」についての登録を取り消すべきものと判断した。その判断の要旨は、次のとおりである。 原告が本件商標を使用しているという商品「吸収性局所コラーゲン止血剤」(本件使用商品)は、(a)形状は綿状に紡糸加工したものであり、また、綿状のものとこれを薄く延ばしたシートタイプのものがある、(b)「医療用具製造承認」を受けている(医療用具製造承認番号20700BZZO0468000)、 (c)「医療用品」と表示している、(d)「特定保険医療材料」として保険適用が認められている、(e)学術論文等においては、「止血材」と表現されている、 (f)使用方法は適当量を乾燥状態のまま出血面に適用し、上から圧迫するものである、(g)特性として、吸水性に優れ、さらに血液も速やかに吸収する(h)綿繊維構造であり、「脱脂綿」と形状等が極めて類似している商品である。 そして、本件使用商品の上記品質、用途、材料等を総合勘案すれば、本件使用商品は、「薬剤」に属する商品であるというよりは、むしろ「医療補助品」に属する「脱脂綿」(医療用)の類似商品と見るのが相当である。 一方、特許庁商標課編「商品区分解説」(社団法人発明協会昭和55年4月7日発行)によれば、商品区分第1類「薬剤」の概念には、薬事法の規定に基づく医薬品の大部分が含まれ、「ガーゼ」「脱脂綿」等は、別途「医療補助品」という概念に属する旨規定している。そして、「医療補助品」の概念には、「医療材料」が含まれ、この医療材料には、専ら医師が使用する医療関係品のうち材料的なものであって薬剤でないものが含まれるとされている。さらに、「ガーゼ」、「脱脂綿」は、医師が使用する場合も「医療補助品」の概念に属するとしている。 してみれば、原告が本件商標を使用していたという本件使用商品は、「薬剤」ではなく、「医療補助品」と認められるものであるから、結局、原告は、本件商標を本件審判請求の登録(平成10年12月9日)前3年以内に、不使用取消請求に係る指定商品「薬剤」について日本国内で使用していたものとはいえず、かつ、使用してこなかったことに対して正当な理由があるとは認められない。 |
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原告主張の審決取消理由
審決の理由のうち、「1 本件商標」、「2 請求人の主張」、「3 被請求人の答弁」及び「4 当審の判断」のうち、審決書8頁2行ないし13行は認め、 同頁14行から17行及び25行以下は争う。審決は、原告が本件商標を使用している商品である「吸収性局所コラーゲン止血剤」(以下、「本件使用商品」という。)は、「薬剤」ではなく「医療補助品」であると認定、判断したが、その認定、判断は誤りであるから、違法として取り消されるべきである。 1 審決の基本的誤り(法令の解釈・適用の誤り) (1) 審決は、商品は必ず一義的に一つの商品区分中の一の商品に属するとの考え方をとった点、すなわち、本件使用商品が第1類中の「薬剤」か「医療補助品」のいずれか一方にしか属し得ないとし、本件使用商品が「薬剤」には属しないとした点において、基本的に誤っている。 技術が日進月歩で進歩しニーズが多様化する現代社会において、世の中に出現するあらゆる商品を、一つの商品区分中の一の商品にしか属し得ないものとして画一的に扱うことは、商標法の趣旨に沿わない。商標法1条が「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護すること」を商標保護の目的として掲げている趣旨は、登録商標と同一又は類似する商標が第三者により指定商品と同一又は類似する商品に使用されることによって、商品の出所や品質についての混同、誤認が生じ、商標使用者の業務上の信用が害され、消費者も不利益を被る事態を防止することにある。本件についていうと、本件商標の登録が指定商品「薬剤」について取り消された場合、「薬剤」と「医療補助品」を非類似商品として扱っている特許庁の運用の下では第三者が本件商標と同一の商標について「薬剤」を指定商品とする商標登録を受けることも可能になるのであって、かような事態は、本件使用商品と当該第三者の商品との間に混同、誤認を生じさせることが必至であり、商標法の目的に反する結果を招来することが明らかである。また、商標法50条の規定する商標登録の取消制度は、法が本来保護すべきものとして予定している商標に化体した業務上の信用が存しない不使用状態の登録商標を個別的に整理することにある。逆にいえば、使用されて信用が蓄積している商標については、その信用を十全に保護することが法の趣旨である。 (2) 被告は、我が国の商標法の下で願書記載の指定商品は商標権の効力を画するものとなるから、いわゆる日本分類上の「薬剤」や「医療補助品」の概念の境界を曖昧に解釈することはできる限り慎むべきであるというが、現実に市場に存在し又は新たに現れる商品の膨大な種類からすれば、本件商標の出願当時の商標法施行規則(昭和35年通商産業省令第13号)第3条別表(以下、「旧規則別表」という。)に記載された商品もごく限られたものにすぎず、すべての商品が定規で線引きするように単純明快に仕分けできるものではなく、商品の中にはいずれの分類に属するかを決し難い商品も存在するのである。そのような商品について現実に登録商標が使用され信用が蓄積してきたときに、当該登録商標の使用が指定商品中のいずれの商品についての使用であるかを決するに当たっては、商標法の目的(法1条)や不使用取消審判の制度趣旨に照らした解釈がなされるべきであり、二つの分類に属する二面性を有するとされるべき商品があるならば、それを二者択一的に一の指定商品にのみ属するとすることは、商品の混同・誤認を避け、商取引の秩序を維持するという商標法の趣旨に照らして妥当ではない。 国際的にみても、ニース協定の一般的注釈の(b)が「完成品が複数の用途を有する複合物(例えば、ラジオ付き時計)である場合には、各機能又は各用途に対応するいずれの類にも分類することができる。」と注記しているように、複数の用途を有する複合物については、複数の商品分類にまたがる可能性が認められている。本件使用商品は旧政令別表に基づくいわゆる日本分類によって登録されたものであるが、上述した国際的条約の考え方は、指定商品の書換制度を通じて国際分類(ニース協定による商品分類)上の表示に書き換えられる日本分類に基づく指定商品についても尊重されるべきである。 本件商標は、平成7年11月から継続して原告が販売してきた医家向けの「吸収性局所コラーゲン止血剤」(特定保険医療用材料として保険適用)に使用されてきたのであって、この本件使用商品は、全国700箇所以上の医療機関に納品され、売上高が年間3〜4億円に達する商品である。このような規模で現に使用され信用が蓄積した本件商標について、二者択一的な商品帰属の判断に基づき、前述した弊害が生ずるような登録取消をすることは、商標法50条の解釈適用を誤るものといわなければならない。 (3) 「スキンライフ事件」判決(東京高等裁判所昭和57年(行ヶ)第67号事件昭和60年5月14日判決)では、不使用取消審判の場で、商品は常にいずれか一つの分類に属すべきものであって、二つの分類に属することはありえないとするのは相当でなく、登録商標の使用されている商品の実質に即して、それが真に二つの分類に属する二面性を有する商品であれば、当該二つの分類に属する商品について登録商標が使用されているものと扱って差し支えないとの判断が示されている。後記2に述べる商品の実質に鑑みれば、本件使用商品は「薬剤」にも属する商品として扱われるべきである。 2 本件使用商品は「薬剤」にも属すること 審決は、本件使用商品が前記第2の2の(a)から(h)に記載(審決書8頁5行ないし13行)の特性を有することから、本件使用商品は「脱脂綿」の類似商品であって「医療補助品」に属すると認定したが、上記特性によりたとえ「医療補助品」に属するとされる理由があるとしても、本件使用商品は、以下に述べる理由により、「薬剤」に属する(仮に、一方で「医療補助品」に属するとしても、もう一方で「薬剤」にも属する。)というべきである。 (1) 商品の実体・原材料 本件使用商品は、外観上「脱脂綿」のように見えても、その実体は、ウシの真皮由来のアテロコラーゲン(コラーゲンの血液凝固を促進するという生物学的活性を保持したまま、抗原性をできるだけ低減させたタンパク質。以下単に「コラーゲン」と呼ぶことがある。)という、生体由来のタンパク質そのものであって、 使用後は、これを適用された患者の体内に吸収される製剤である(甲第6号証の1、2)。この点で、本件使用商品は、単なる綿からなる脱脂綿等とは、その実体・原材料において全く異なる。 (2) 包装・表示と使用期限等 本件使用商品は、その実体であるアテロコラーゲンが適当な分量ずつフィルムパックされ、それが更に通常の医薬品と同様に包装箱に入れられて取引されている(甲第5号証の1、甲第6号証の1)。また、医薬品と同様に、添付文書が包装箱毎に入れられており、種々の必要情報が使用者たる医師に伝えられるようになっている(甲第7号証)。この点で、ビニール袋にまとめて入れられ、添付文書などは存在しない脱脂綿等と全く異なる。 また、本件使用商品の包装箱、添付文書、カタログ等における表示は常に「吸収性局所コラーゲン止血剤」等であり(甲第5号証ないし甲第7号証)、原告はこれを脱脂綿のごとき単なる物理的な「止血材」と表示したことはなく、薬事法上の承認に係る一般名称自体が「吸収性局所止血剤」である。 さらに、本件使用商品は実体がコラーゲンタンパク質そのものであるから、脱脂綿等と異なって使用期限があり、それが包装箱及びフィルムパックに明記されている(甲第5号証の1、甲第6号証の1)。 (3) 作用・機能 本件使用商品は、常に「止血剤」と表示され販売されてきたが、これは本件使用商品がその本体であるコラーゲンの薬理学的作用により、積極的に止血効果を発揮する製剤だからである(甲第6号証の1)。すなわち、一般に、止血剤は、 自然の止血メカニズム(血管が損傷を受けると血管壁を形成しているコラーゲンが露出し、このコラーゲンに血液中の血小板が接触することによって血小板がコラーゲンに粘着し、血小板が凝集して血小板血栓をつくり傷口を塞ぐ。この血小板血栓は不安定なため、血液中のフィブリンと呼ばれるタンパク質がこれに網をかけるように覆い、このフィブリン網が血球を捕らえることにより、血餅となり、止血が完全になる。)だけでは止血が困難な場合、例えば、手術時などの血液の強い滲み出しや噴出性の出血がみられる場合に使用されるものであるが、本件使用商品は、出血部に圧し当てて圧迫し、コラーゲンの作用により止血の第1ステップたる血小板血栓の形成を促し、その後の止血を容易ならしめるものであって、単に出血を吸収させるだけの材料的な商品である脱脂綿等とは全く作用・機能が異なるのである。 本件使用商品の止血効果は、コラーゲンの薬理学的・生化学的作用に負うところが多いのであって、これを脱脂綿を用いたときの「圧迫」による止血効果と同視することは誤りである。なお、本件使用商品は、患部に適用した際、一部はその場に吸着するが、その後、生体に吸収される性質を有するものであって(甲第6号証)、 この点でも「脱脂綿」とは異なる。 被告は、本件使用商品のような微繊維性コラーゲンについて、材料を表す「材」の文字を用いた「止血材」という表記が学術論文の題名中に用いられていると指摘するが、データベース検索の結果(甲第19号証)によれば、学術論文としては薬剤を表す「剤」の文字を用いて「止血剤」と表示する文献の方が格段に多い。 (4) 需要者 本件使用商品の最終需要者は、医師、特に外科領域の専門医に限られる。 したがって、本件使用商品は、完全な医家向け商品であり、この点で一般家庭等においても広く使用される「脱脂綿」等とは全く異なる。 (5) 競合品とその形態並びに薬事法上の取扱い 本件使用商品は、薬事法上は、「医療用具」の中の「微繊維性コラーゲン」という商品群に属し、保険の適用上、「特定保険医療材料」のうちの「微繊維性コラーゲン」に属するものとされているのであるが、「微繊維性コラーゲン」に属する商品の形態は様々であって、本件使用商品のように綿状、シート状に加工されたものだけではない。例えば、「GRFグルー」という商品は、その実体がゼラチン等であり、形態は溶液状である(甲第10号証)。また、「ヘリテン」という商品は、微繊維タイプと呼ばれる粉状である(甲第12号証)。これらの商品は、 商品の形態が溶液状、粉状というように本件使用商品の綿状とは異なっていても、 薬事法上本件使用商品と同じ「微繊維性コラーゲン」に属する扱いがなされているのである(甲第11号証)。そこで、「脱脂綿」と形状が類似する商品は「脱脂綿」(医療補助品)の類似商品であるから「医療補助品」に属する、とした審決の判断手法に従うと、薬事法上は、本件使用商品と同一の商品(微繊維性コラーゲン)として取り扱われる溶液状や粉状の商品が、商標法上は、異なる商品に属するという矛盾を生じることになる。そのような矛盾した結果をもたらす審決の判断手法が妥当でないことは明らかである。本件使用商品は、全体としてみると「脱脂綿」よりも、むしろ、ゼラチンや酸化セルロースからなる止血剤(以下に述べるとおり、これらは本件使用商品と競合する関係にあり、薬事法上の「医薬品」である。)に類似する(甲23号証)。 「微繊維性コラーゲン」は、ゼラチンあるいは酸化セルロースからなる止血剤の次世代商品にあたる(甲14号証)。ゼラチンあるいは酸化セルロースからなる止血剤は薬事法上「医薬品」とされ、健康保険の適用上「保険薬」とされているのであるが、本件使用商品を含む微繊維性コラーゲンの商品としての性格、医療現場での位置づけは、「医薬品」であるゼラチンや酸化セルロースからなる止血剤の位置づけと全く合致しており、市場でも完全な競合品の関係にある。したがって、薬事法上及び健康保険適用上の取り扱い如何によって、本件使用商品の商品帰属を判断することは妥当ではない。 ちなみに、「脱脂綿」は、商標法上「医療補助品」に属するとされるが、 薬事法上は「医薬品」(それも日本薬局方に収められた医薬品)である(甲第13号証、検甲第2号証)。このように商標法上における商品の分類と薬事法等における分類とは一義的な対応関係にあるものではないのである。 (6) 価格 本件使用商品の価格は、綿状タイプのもの(1g、2個入り)で2万9,000円、シートタイプのもの(0.5g、2個入り)で1万4,500円であり、一般の脱脂綿の価格(500g1,100円)に比して格段に高価であるのみならず、外科手術に使用されるような高度の滅菌がされた脱脂綿の価格(1カット当たり数百円)に比しても極めて高価である。これは、本件使用商品がその実体・原材料、作用・機能から内臓外科手術時において医療上必要とされるものであることによるのであり、脱脂綿等がその実体・原材料(綿)、用途(吸収)から安価であることと対照をなしている。価格は、商品特性の一つのあらわれであるから、商品帰属の判断上の一要素として考慮されてよい。 (7) 被告の主張に対する反論 被告は、「手術用キャットガット」の例を挙げ、タンパク質からなり生体に吸収されるものも「医療補助品」であると主張するが、「手術用キャットガット」は傷口を物理的に縫合する部材であるのに対し、本件使用商品はコラーゲンの薬理学的作用により積極的に止血効果を発揮する製剤であるから、両者は作用・機能が全く異なり、同視し得ない。 また、被告は、指定商品を「患部の止血及び生体組織の復元を助ける医療用補助材」とした商標登録出願においてその指定商品に「医療補助品」に対応する商品類似群コード[01C01](国際分類第7版)が付されているというが、この出願については、そもそも当該商標に係る商品が具体的にどのようなものかが明らかでないうえ、出願人自身が「材」の文字を用いて指定商品を特定しているケース(このような場合に医療補助品に対応する商品類似群コードが付与されても何ら不思議はない。)であるから、本件において考慮するに値しない。 なお、原告は本件使用商品が「医療補助品」的な性質を有することを否定するものではないが、本件商品が止血という「薬剤」としての効果を発揮することは厳然たる事実である。現に、本件使用商品の公的に認められた「効能・効果」は、「結紮又は通常の処置による止血が無効又は実施できない場合の各種手術時の止血」(甲第7号証)であり、商品区分第1類中の「薬剤」には「止血剤」という商品も例示されているのであるから、本件使用商品は「止血剤」に当たるといってよく、反対に解することの合理的理由はない。 (8) まとめ 以上のとおり、本件使用商品は、商品区分第1類の「薬剤」に属する商品として例示された「止血剤」というべきであるから、審決が、本件使用商品が形態上「脱脂綿」に類似していることや、薬事法上「医療用具」、健康保険適用上「特定保険医療材料」として取り扱われていること等を理由として、本件使用商品が「薬剤」に属しないと認定判断したことは誤りである。 |
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被告の反論の要点
本件商標の使用されている本件使用商品「吸収性局所コラーゲン止血剤」は、 審決が認定判断したとおり、その品質、用途、材料等を総合勘案すれば、「薬剤」に属する商品であるというよりは、むしろ、「脱脂綿」の類似商品であって「医療補助品」の概念に含まれるとみるのが相当である。我が国の商標法の解釈として、 ある商品が「薬剤」及び「医療補助品」の両概念に属するなどということは、原則として認められない。 1 商品の二面性等について (1) 我が国の商標法の下では、商標権の範囲は、願書に記載された指定商品によって画されるものであるところ、旧政令別表の商品区分に基づくいわゆる日本分類は、「政令別表の表示を頂点に下位概念の商品を順次階層的に概念括りして配列し、各区分に属すべき商品の範囲を明確にして」おり、例えば「薬品」あるいは「医療補助品」の範囲は、それぞれ予め確定されたものとして、長年運用されてきている。そして、商標権の権利範囲を画する指定商品の表示は、日本分類上の用語である「薬剤」や「医療補助品」という言葉の持つ概念によって範囲を画されているのであって、決してあいまいであったり二義的なものではない。特許庁の実務上も、「薬剤」と「医療補助品」とは非類似の商品とされ、同一商標を「薬剤」「医療補助品」の各別に別人が商標権を取得することができるものとされて、そのルールに則って競争秩序が維持されてきているのであるから、両概念の境界をあいまいに解釈することは慎むべきである。我が国において商標権は、願書で指定された商品の概念によってその範囲が画されているのであるから、その概念はできるだけ厳格であって一義的であるのが法の趣旨に沿うものであり、特段の事情がなければ、 商標の使用されている商品を「医療補助品」でもあり「薬剤」でもあるなどと安易に解すべきではない。本件使用商品は、商品の用途、形状等からみて、「医療補助品」であることが明らかであり、これをことさら「薬剤」でもあると二面性を認定すべき特段の事情はない。原告が挙げるスキンライフ事件判決は、判決中に摘示された特殊な事情の下に当該商品が「化粧品」と「石鹸」の二面性を有する商品であると認めた極めて例外的なものであって、本件には当てはまらない。同判決は、商品が「真に二つの分類に属する二面性を有する商品であれば」という厳格な限定を付しているのであって、決して一商品が複数概念に属することを安易に認めたものではない。 (2) 本件では、本件商標登録がその指定商品「薬剤」について取り消されても、原告は「医療補助品」についての商標登録を失うわけではなく、これまでどおり本件商標を「医療補助品」である本件使用商品に使用することができるから、何ら不都合はないのに対し、「医療補助品」に属する商品に使用されている本件商標について、さらにこれを広げて「薬剤」にまで及ぶ排他的独占的な権利を与えることは、国民の利益を不当に侵害することになり、また、「薬剤」について類似商標の使用を希望している被告の商標選択の余地を狭める結果となる。そのような結果をもたらす解釈は、商標法第50条の趣旨に反するものであり、許されないというべきである。 原告は、本件商標の登録が「薬剤」について取り消されると、第三者が本件商標と同一又は極めて類似する商標についてすら指定商品を「薬剤」とする商標登録を受けることができることになり、当該第三者の商品が販売されて出所の混同や品質の誤認が生じようと、当該第三者の使用が専用権の範囲内である限り、これを禁止する方法はないと述べ、そのような事態は公益に反する旨主張するが、これは、商標権侵害の場面で問題になるにすぎず、不使用取消審判における使用の有無の問題ではないから、実際に商標権侵害の問題が生じたときに判断すれば足りることである。むしろ、そのような特殊な可能性を根拠として商標の使用範囲を拡張的に認定し商標登録の取消を免れ得るとすれば、取消審判制度を骨抜きにしてしまうことになる。 (3) ニース協定では一の商品が複数の商品区分に所属することが許されているという原告の主張は、日本分類と国際分類(ニース協定による商品分類)とが性格を異にすることを看過している点で失当である。すなわち、国際分類は、ある商品が属する類をおおむね示すものにすぎず、権利範囲を画定するものではない。例えば、国際分類第5類の総括表示には、「医薬・動物薬・衛生用薬剤」の表示があるが、その概念は画定しておらず、おおむねそれらしい商品がこの類に集められるにずぎず、指定商品としては原則的に個々の商品名(たとえば、「駆虫薬」)によって特定するのが原則である。我が国の商品分類は、国際分類とは異なる考え方、すなわち、商品を「順次階層的に概念括り」し、指定商品の表示によって商標権の権利範囲を画するという考え方に拠っているのであるから、ニース協定の下で商品が二つの商品区分に属することが認められるからといって、我が国の商標法の下で同様に解すべき理由はない。 2 本件使用商品について 原告が挙げる前記第3の2の(1)ないし(6)の点は、以下に述べるとおり、いずれも本件使用商品が「薬剤」に属する理由となり得るものではなく、むしろ、本件使用商品は、審決認定のとおり、「脱脂綿」の類似商品であり、「医療補助品」に属するというべきである。 (1) 原告は、本件使用商品は原料がコラーゲン(タンパク質)であって手術後は体内に吸収されるというが、同じようにタンパク質からなり、外科手術に使用された後、体内に吸収される「手術用キャットガット」は、商品としては「医療補助品」であり、登録実務上もそのように扱われている。したがって、原告が主張する点は、本件使用商品が「薬剤」に属するとすべき理由にならない。また、過去の実例では、「患部の止血及び生体組織の復元を助ける医療用補助材」として出願された商品に「医療補助品」の概念に属する商品類似群コード「01C01」が与えられているが(乙第7号証)、本件商品は「患部の止血及び生体組織の復元を助ける医療用補助材」と同一又は類似の商品である。 (2) 原告は、本件使用商品には使用期限が記載され、添付文書が入れられ、包装方法も通常の医薬品と同じであるというが、これらのことは「医療補助品」である「手術用吸収性縫合糸」も同様であるから、本件使用商品が「薬剤」であるとする理由にはならない。また、原告自身が本件使用商品を「止血材 」と表示したことはないとしても、学術文献には「綿状コラーゲン止血材」と表示したものがあり、 本件使用商品は「特定保険医療材料」として保険適用が認められているのであるから、社会通念上客観的かつ一般的には、本件使用商品は「材」ないし「材料」として捉えられている。 (3) 本件使用商品による止血の機序は不知であるが、本件使用商品は綿状であり、その使用方法も「脱脂綿」等によって止血するときと同様の物理的な圧迫を利用するものであるから、目に見えない止血の仕組みはともかく、商品としては「医療補助品」に属する「脱脂綿」の類似商品とみるのが相当である。 (4) 「医療補助品」は、一般家庭用のみならず、縫合糸のような外科手術用の材料をも包含する概念であるから、本件使用商品の最終需要者が医師であることは、「薬剤」に属する理由にならない。この点については、「「医療補助品」の概念には「医療材料」が含まれ、この医療材料には、専ら医師が使用する医療関係品のうち材料的なものであって薬剤でないものが含まれる。」と審決が正当に認定しているとおりである。 (5) 本件使用商品がゼラチンや酸化セルロースからなる止血剤(医薬品)の競合品であるとの原告の主張は、その趣旨及び真偽が明らかでないが、いずれにしても本件使用商品が「特定保険医療材料」であることに変わりはない。 (6) 本件使用商品は「脱脂綿」に比べて高価であるが、医療補助品の中でも外科手術に使用されるものは、日常使用されるものに比して高価であるのが通例であるから、高価であることは、本件使用商品が「脱脂綿」の類似商品であるとする判断を左右するものではない。 |
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当裁判所の判断
本件商標が平成3年改正前の旧政令別表及び旧規則別表による商品区分第1類の「化学品、薬剤、医療補助品(ただし、のりおよび接着剤を除く)」を指定品として登録されており、原告が本件審判請求の登録の日から遡って3年の間に本件商標を原告の販売する商品である「吸収性局所コラーゲン止血剤」(本件使用商品)に使用してきたことは争いがないところ、原告は、本件使用商品が「薬剤」に属するものであって、仮に「医療補助品」に属するとしても「薬剤」にも属するものであると主張するのに対し、被告は、審決が認定したとおり、本件使用商品は「医療補助品」に属し、「薬剤」に属するものではないと主張するので、以下、この点について判断する。 1 基本的な考え方 (1) 政令別表で定める商品区分の基準は必ずしも明確ではないが、過去においては、主として、材料主義、生産者主義によっていたが、その後、用途主義、販売店主義を大幅に考慮した改正がされて、旧政令別表の分類がされたものと解されている(甲第2号証)。そして、旧規則別表は、各商品の区分に属すべき商品を具体的に多数表示しており、各区分に属する具体的商品を、大概念(大分類)、中概念(中分類)、個々の商品(単品)等と階層的に表わしている。したがって、不使用取消審判の対象となっている登録商標を現実に使用している商品が指定商品のいずれに属するかについては、その商品と旧規則別表に例示された個々の商品とを対比することによって比較的容易に判断し得る場合が多い。 しかしながら、市場に存在する現実の商品は多種多様であり、日々新しい商品が開発されて出現していることは周知のことであって、登録商標を使用している商品が、そもそも当該商標の指定商品に該当するのか、あるいは指定商品のうちのいずれに属するのかなどの判断が困難な場合も生じ得るのである。また、極めて希有の例ではあっても、商品区分の大分類又は中分類の二つの商品に該当する二面性を有する複合的な商品が生ずる事も否定し難いところであると認められる(甲第8号証の東京高等裁判所昭和57年(行ケ)第67号事件昭和60年5月14日判決参照)。 (2) 本件においては、審決は、本件使用商品は「医療補助品」であると認められるから、本件商標の登録は指定商品中の「薬剤」について取り消すべきものとしたが、その判断の理由は、本件使用商品は、前記(第2の2)(a)ないし(h)のとおり、綿状の形状、「医療用具製造承認」、「特定保険医療材料」としての保険適用、「止血材」との表現、「医療用具」との表示、圧迫する使用方法、吸水性に優れた特性、綿繊維構造で形状が「脱脂綿」に類似することなどの諸点から、 「脱脂綿」(医療用)の類似商品と見るのが相当であり、「ガーゼ」「脱脂綿」等の属する「医療補助品」であると判断したものである。これらの判断の基礎となった上記諸点の事実関係自体は、原告は本訴において基本的に争ってはいないが、審判手続においても、原告は、本件使用商品が取消請求にかかる指定商品「薬剤」に属するものである旨主張し、これを基礎付ける本件使用商品の性質・機能、使用目的、原材料、需要者、競合品とその形態、価格等のほか、形態の有する機能的意味や薬事法の取扱いに関する主張を提示していた。しかし、審決は、これら原告の主張につきほとんど検討することなく、形状、表示等の上記諸点を挙げて、本件使用商品が「医療補助品」に属する「脱脂綿」と類似すると認定し、「医療補助品」に属するから「薬剤」には属しないものと判断している。すなわち、審決は、本件使用商品が取消請求に係る指定商品「薬剤」に属するものか否かの観点からの検討を十分することのないまま、本件使用商品が「脱脂綿」に類似し「医療補助品」に属するから、「薬剤」に属しないものとの二者択一的な判断をしているかのようにみられるのである。 一般的には、このような審決の判断方法が直ちに不相当であるとはいえないが、前示のとおり、ある商品が指定商品のいずれに属するかの認定・判断は難しい場合があり、二つの指定商品に属する二面性を有することすらあり得るのであるから、仮に本件使用商品が「医療補助品」に属すると認められる場合であっても、 そのことから「薬剤」に属しないとの結論に当然導かれるとは限らないというべきである。とりわけ、審判手続きにおいて、本件使用商品が「薬剤」に属するものと認められるべきであるとする理由を原告が具体的に主張している本件のような場合には、これらの理由をも含めて総合的な検討をし、まず取消請求に係る指定商品「薬剤」に属するか否かを判断すべきであり、その判断に当たっては、本件使用商品の名称、表示、形状・形態、原材料、性質、機能、用途、使用実態等のほか、取引者・需要者の認識や薬事法等の取扱いを含む取引の実情を考慮するのが相当である。 (3) なお、被告は、旧政令別表に定める商品区分における商品の分類(いわゆる日本分類)は、「政令別表の表示を頂点に下位概念の商品を順次階層的に概念括りして配列」するという体系を採っており、「薬剤」あるいは「医療補助品」は範囲が予め画定され、互いに区別されているのであるから、「医療補助品」に属する商品が「薬剤」にも属するなどということは本来あり得ず、商標権の範囲を指定商品によって画している商標法の趣旨からしても許されない旨主張する。しかし、 「商品を順次階層的に概念括りして配列する」分類体系の下で、例えば「薬剤」と「医療補助品」とが区別されているということは、両者が概念上区別される(その結果、商品を「薬剤」と指定して登録された商標権がその専用権の範囲に「医療補助品」まで包含することはない)ということを意味するにとどまり、市場に存在する個別具体的な商品が必ず一つの商品区分中の一の商品にのみ属すべきであって他の商品に属してはならないということまで意味するものではないというべきである。 したがって、本件使用商品が「医療補助品」であると認められるからといって、必然的に「薬剤」に属さないことになるわけではないし、取消請求に係る「薬剤」に属することにつき具体的な理由が主張されている場合に、その検討を不要とするものでもない。 2 本件使用商品について 以上を前提として、本件使用商品が取消請求に係る「薬剤」に属するか否かを検討する。 (1) 証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件使用商品について、次の@ないしDの事実が認められる。 @ 商品の表示、原材料、用途等 甲第5号証の1、2、第6号証の1、2、第7号証、第23号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件使用商品を「吸収性局所コラーゲン止血剤」と表示して販売しており、本件使用商品のパンフレット、リーフレット(甲第6号証の1、2)には、本件使用商品の原材料、特性、作用、使用上の注意等に関して次のように記載されていることが認められ、包装箱に装入される医師宛の添付文書(甲第7号証)にも同趣旨の記載がされていることが認められる。 (原材料等) 「インテグランは医療用に精製したウシ真皮由来のアテロコラーゲン(仔ウシ真皮をタンパク質分解酵素により可溶化し、主要な抗原性発現部位を除去したコラーゲン)を線繊維状に紡糸加工し、ポリエポキシ化合物で化学架橋処理した吸収性局所止血剤です。インテグランは、・・・コラーゲン以外のタンパク質を含みません。そのためインテグランは低抗原性でかつ高い生体親和性を示すものとなっています。繊維構造をとることにより吸水性がよくなり、さらに術野での飛散性や静電気によるピンセットや手・指などへの付着性も低減されるなど、操作性も優れています。また、インテグランには綿状およびこれを薄く伸ばしたシートタイプの2種類があります。」 (特性) 「操作性に優れた綿繊維状コラーゲンです。」、「血小板の粘着・凝集を促進し、強い止血効果を発揮します。」、「コラーゲン以外のタンパク質を含まず、低抗原性です。」、「綿繊維構造をとるため、血液などを非常によく吸収し、 術野にて飛散しない操作性に優れた柔らかい局所止血剤です。」 (作用、出血部位に適用したときの止血の機序) 「生体止血機構で最初に起こる反応は、コラーゲンと血小板の接触です。コラーゲンに粘着した血小板は瞬時に活性化され、凝集します。同時に種々の凝固系連鎖反応を迅速に惹起します。インテグランの綿状繊維構造はその空隙に血液を吸い上げて、血小板活性化の場を提供することにより、速やかな止血作用が得られます。」との説明及び本件使用商品が止血剤を用いない場合と比較して止血時間を有意に短縮する効果を有することを示す実験例(止血剤を用いない群と本件使用商品適用群との止血時間の対比)。 (使用上の注意等) 「【警告】 脳外科領域及び産婦人科領域等において、肉芽腫、腫瘍等があらわれたとの報告があるので、当該領域では使用後必ず除去すること。尚、他の領域においても、止血後、余剰分は可能な限り除去すること。(他の微繊維性コラーゲン止血剤にて、肉芽腫、腫瘍等の発現の報告があり、重篤かつ非可逆的な副作用の発現する可能性が考えられるため。)」 「【禁忌】次の患者には使用しないこと」との朱書きの見出しの下に「(1)ウシ由来製剤(インシュリン、グルカゴン等)に対する過敏症あるいは症状のある患者(他の微繊維性コラーゲン止血剤にて、ウシ血清アルブミンに対る抗体価の上昇が報告された例があるため)」 以上のような記載及び後述する甲14号証の論文中の記載に照らすと、 本件使用商品は、抗原性を低くすべく精製したウシ真皮由来のアテロコラーゲンを原材料とし、これを紡糸加工して得た線繊維状のコラーゲンを綿状又はこれを薄く伸ばしたシート状に整形した形態のものであって、その実体であるコラーゲンと血小板との生理化学的反応によって血液凝固作用が促進されることにより、良好な止血効果を発揮し、術後に患部に残存した場合には生体に吸収されるという性質を有するが、副作用の可能性も皆無とはいえないため、これを使用する医師に慎重な注意が求められていること、また、綿状構造とされているため、血液などを良く吸収する性質を持つものであると認められる。 A 医療の現場における位置づけ(呼び名、用途、使用の実態等) 本件使用商品のような綿状にした微繊維性コラーゲンは、学術論文等の中で「止血材」と表記されることもあるが(例えば、甲第6号証の1のパンフレット末尾の文献欄に記載された文献の題名「綿状コラーゲン製止血材の吸血性、止血性および純度の評価」)、「止血剤」と表記する例(例えば、前記文献欄に記載された論文の題名「アテロコラーゲンを原料とした綿状止血剤」)もあり、数の上では、「止血剤」と表記するものの方が多いことが認められる(甲第19号証)。 「剤」・「材」のいずれの表記が用いられるにせよ、学術文献等の中で本件使用商品のような綿状微繊維性コラーゲンが「止血剤・材」と呼ばれていることからみて、本件使用商品は、その積極的な止血効果に着目して、「止血」の目的で用いられていることは明らかである。 また、甲第14号証の「外科における新しい手術機器と材料 局所止血剤」と題する論文(東京大学医学部第1外科河野信博外執筆、手術第44巻第6号1990年所収)には、執筆当時における局所止血剤の現状及び将来の展望について、次の記述がある。 「出血部位に局所的に薬剤を投与することによって止血を図る、という概念は、古代エジプトの昔に遡るが、現代でも微繊維性コラーゲンや酸化セルロースなど様々な局所止血剤が使われている。」、「現在用いられている局所止血剤としては、・・・微繊維性コラーゲン、トロンビン・・・などがあるが、すべて比較的高価な製剤であると同時にそれぞれが特性を有するため、適応は製剤に応じて慎重に選ぶべきである。」、「局所性止血剤は、一般に、ある一定時間出血面に固着することで初めて、その止血効果が発現する。」(以上、691頁) 「コラーゲンは、上記の機序(注、血小板とコラーゲンの接触による血小板の活性化と凝集作用)を総合した強い止血作用を持ち、これを応用した局所止血剤として、まず、微繊維素性コラーゲン(Avitene)が考案された。・・・形態は白いもぐさ状で、この物質を必要量とって乾燥させた創に押し当て、圧迫を加えるだけで止血が得られる。・・・止血効果では、ゼルフォーム、オキシセルの3倍といわれ、現在のところもっとも強力な止血作用を持つ局所止血剤であり、各種領域において広く用いられている。」「最近ではウシから抽出されたコラーゲン繊維を不織性のパッド状にした製剤、コラーゲンフリース(Novacol)も造られている。Avitene同様の高い止血効果が期待でき、さらに出血面の解剖学的形態に合わせて切断したり折り曲げたりして用いられるという操作性の面での有用性も備えている。もぐさ状のAviteneでは、静電気の為にピンセットに付着したり、腹腔内に散らばることで癒着の原因となる危険性もあったが、この煩わしさを解消するために、最近ではsheet状のAviteneも開発、発売されており、Novacolとともに今後高い需要が予想される。」(以上、693頁) これらの記述は、本件使用商品を含む微繊維性コラーゲンが止血効果の良好な「局所止血剤」として認知され、これを綿状に整形して操作性を良くした製品が酸化セルロース、ゼラチン等に続く局所止血剤の次世代製品として位置付けられていることをうかがわせるものといってよい。 さらに、保険請求の手引書と認められる「図説 特定保険医療材料と保険請求のすべて 上巻」(平成9年発行、甲第11号証)は、「微繊維性コラーゲン」という表題の下に「インスタット」「アビテン」「GRFグルー」「ヘリスタット(ヘリテン)」、「インテグラン(注、本件商標)」、「ノバコール」などの商品名を挙げ、続く下欄の「主に関連する技術料」の項で、「微繊維性コラーゲンは、肝、膵、脾、脳、脊髄の実質性出血及び硬膜出血並びに・・・・出血で、結紮、レーザーメス又は通常の処置による止血が無効又は実施できない場合において、止血に使用する。」「微繊維性コラーゲンは、粉末状のもの及びシート状のものが含まれる。」「ゼラチン止血・接着剤は微繊維性コラーゲンとして算定する。」と解説している。 以上によれば、本件使用商品は、医療の現場で止血の目的で用いられ、 医療関係者の間で微繊維性コラーゲン(シート状や粉末状を含む)の一種としてゼラチン製剤と並ぶ止血用の製品として認識されていたと認められる。 B 包装形態、価格、需要者等 本件使用商品は綿状のものとこれを伸ばしてシート状にしたものの2種類があり、そのどちらも本体であるコラーゲンを所定の分量(例えば、綿状のものは1g、シート状のもの0.5g)ずつ密封パックし、これを更に「保険適用」「吸収性局所コラーゲン止血剤」「インテグラン」「綿状」又は「シートタイプ」などの文字を記載した包装箱に2個ずつ入れた形で販売されており、密封パックにも、包装箱に記載されている上記の文字のほか、「INTEGRAN」と表示され、使用期限が記載されていて(甲第5号証の1、2)、各包装箱には、承認番号、貯法、警告、禁忌、組成、効能・効果、使用方法、使用上の注意、臨床適用、 非臨床試験、取扱い上の注意、関連文献、保険適用に関する情報等を記載した添付文書(甲第7号証)が入れられている。 既に掲記した甲号各証及び弁論の全趣旨によれば、本件使用商品は、専ら医家向けに販売される商品であり、その最終需要者は医師、特に外科領域の専門医であって、一般家庭用に薬局などの店頭で販売されることはなく、保険適用における本件商品の告示価格は、「微繊維性コラーゲン」の名称で括られる他の商品(「インスタット」ほか数種)と同じ1g当たり15,200円であり(甲第11号証)、一般の「脱脂綿」あるいは外科手術に使用される高度に滅菌した「脱脂綿」(医療用)の価格(甲第22号証)に比べて極めて高価であると認められる。 C 使用の実態等 甲第11号証及び第14号証によれば、本件使用商品と同様の「止血」目的で用いられるものとしては、商品名「インスタット」、商品名「アビテン」、 商品名「ノバコール」、商品名「ヘリテン」などの「微繊維性コラーゲン」、保険適用上「微繊維性コラーゲン」として扱われる「ゼラチン製剤」、及び商品名「オキシセル」、商品名「サージセル」などの「酸化セルロース」があり、これらは、 その価格帯、使用目的等からみて、相互に競合する関係にあるものと認められる。 これらの競合商品のうち、「ゼラチン製剤」及び「酸化セルロース」は、「止血剤」とされ、保険薬として扱われ、薬価基準が適用されている(甲第16号証の保険薬事典)。例えば、「酸化セルロース」の一種である「サージセル」は、薬価基準に収載された医薬品(医薬品:承認番号(47AM輸)第205号)であり、サージセルの中には「綿型」(綿繊維形状)の製品もある(甲第17号証のリーフレット)。なお、この「サージセル」のリーフレットは、「同効薬剤」として、保険適用上「微繊維性コラーゲン」として扱われるゼラチン製剤の「ゼラチンスポンジ、ゼルフォーム(アップジョン)、スポンゼル(山之内)」の名を挙げている。 D 薬事法及び保険上の位置づけ等 本件使用商品は、薬事法上、「医療用具」の中の「微繊維性コラーゲン」と位置づけられており(薬事法上の一般名称は「微繊維性コラーゲン」)、 「医療用具製造承認」を受けている。また、本件使用商品は、「特定保険医療材料」の中の「微繊維性コラーゲン」の一種として、保険適用を認められている(甲第7、第11号証)。 (2) 以上によれば、本件使用商品は、薬事法上の「医薬品」としてではなく「医療用具」として承認を受け、保険の適用上「医療材料」として扱われているものではあるが、その成分、効用(コラーゲンによる止血作用)及び使用目的をみると、コラーゲンのもつ薬理学的作用により出血を止めるという点で「薬剤」的な性質をきわめて強く有する商品であり、現に、外科手術における止血に使用され、医師を中心とする医療関係者及び取引者・需要者の間で、薬事法及び保険適用上の「医薬品」である他の吸収性局所血剤と同類ないし同等のものとして捉えられていると認められる。 他方、本件使用商品が医療関係者及び取引者・需要者の間で「脱脂綿」、 「ガーゼ」と同等ないし類似のものと認識されていることを認めるに足りる証拠はない。 (3) ところで、旧政令別表に基づく商品区分について解説した特許庁商標課編「商品区分解説」(乙第1号証の1、2)は、商品区分第1類の「薬剤」の概念には、薬事法(昭和35年法律第145条)の規定に基づく“医薬品”の大部分及び同法にいう“医薬部外品”の一部が含まれるとし、“医薬品”について薬事法2条の定義規定を引用したうえ、「なお、薬事法の定義によれば、“医薬品”の中には通常、衛生用品と考えられる「ガーゼ」「脱脂綿」等も入るが、この類には、医療補助品という概念があるので、これらは薬剤には含まれない。」としている。上記解説が「薬剤」の概念を説明するのに引用した薬事法は、その1条で、薬事法の適用対象として「医薬品」、「医薬部外品」、「化粧品」及び「医療用具」の4種を挙げ、2条の定義規定で、「医薬品」とは、@日本薬局方に収められている物(1項1号)、A人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされる物であって、器具機械(歯科材料、医療用品及び衛生用品を含む。以下同じ)でないもの(1項2号)、B人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、器具機械でないもの(医薬部外品及び化粧品を除く。)(1項3号)と規定している。 ここで、商品分類における「薬剤」・「医療補助品」の概念と薬事法における「医薬品」・「医療用具」の概念との対応関係を見ると、「商品区分解説」において「脱脂綿」「ガーゼ」は薬事法上は「医薬品」であるが商品分類の上では「医療補助品」であると説明されていることにも表れているように、商標法上の商品分類における「薬剤」・「医療補助品」の概念(区分)と薬事法上の「医療品」・「医療用具」(医療用材料を含む。)の概念(区分)とは一義的に対応する関係になく、両者の間には、ずれないし差異があることが認められる。このような差異は、商標法の商品分類が商品の混同を防止し商標使用者の業務上の信用と需要者の利益を保護するという商標法の目的に即して、「取引市場を考慮し」、「主として用途主義、販売店主義の商品分類」を採用している(「商品区分解説」)のに対して、薬事法は、医薬品や医療用具につき、それぞれの特質に応じ、「品質、有効性及び安全性の確保」(薬事法1条)という見地から適切な規制を加えることを目的として、「医薬品」や「医療用具」の概念を定めていることに由来するものと解される。いずれにしても、法の目的に応じて分類をする目的ないし観点も異なる以上、商標法における商品の分類区分と薬事法上の「医薬品」・「医療用具」の区分とが必ず合致しなければならないと解する理由はないといわざるを得ず、それぞれの法の趣旨に照らして薬事法上「医薬品」である商品が商標法上は「薬剤」でないものとして扱われたり、商標法上の「薬剤」が薬事法上は「医薬品」でないものとして扱われることがあっても、差し支えないというべきである。 (4) そこで、商標法上の商品分類における「薬剤」にどのような商品が該当するかを検討するに、旧規則別表には、商品分類第1類「薬剤」に属する商品として、中分類の「血液用剤」中に、「血液代用剤」、「血液凝固阻止剤」、「血しょう」と並んで「止血剤」が挙げられている。また、同別表中に「薬剤」に属するものとして記載された商品の中には、液状のもの、粉末状のもの(薬用ベビーパウダーなど)、軟膏状のもの、固形のもの(日本薬局方の薬用石けん)、もぐさ状のものなど、商品の形態(外形)としてみると種々のものが含まれており、それらに共通するのは、何らかの薬理学的作用を有する物質(あるいはその調剤に使用される物質)であるという点であると認められる。 他方、商品分類第1類の「医療補助品」については、旧規則別表に「ガーゼ、脱脂綿、ほう帯、三角きん、眼帯、耳帯、ばんそうこう、腹帯、月経帯、ルーデサック、子宮サック、子宮ペッサリー、避妊用具、指サック、氷のう、氷まくら、氷のう釣り、すいのみ、ほ乳用具、魔法ほ乳器、医療用油紙、オブラート、カプセル、ほう帯液、ピンセット、綿棒、人工鼓膜用材料、人工歯用材料、補綴充てん用材料、歯科用セメント」が商品例として記載されており、「商品区分解説」(乙第1号証の1、2)においては、医療補助品の概念が次のとおり解説されている。 「医療補助品 この概念には、次のものが含まれる。 (1) 一般に家庭でも使われる衛生用品 この中には薬事法にいう「医薬品」の一部(例えばガーゼ、脱脂綿等)も含まれる。 (2) ほ乳用具 (3) 医療材料(例えば、「人工鼓膜用材料」「人工歯用材料」等。) 専ら医師が使用する医療関係品には、器具器械と材料的なものがあるが、医療補助品には、後者のうち薬剤を除いたものが属する。前者は、第10類医療機械器具に属する。 歯科材料として使用される「歯科用アマルガム」は、この概念に属する。 「ガーゼ」「脱脂綿」 一般に家庭でも使われるので、医療補助品に含まれるが、医師が使用する場合もこの概念に属する。 「ピンセット」 医師専用の特殊なものは含まれない。」 以上のような旧規則別表に記載された「医療補助品」の例及び「商品区分解説」における解説に照らすと、「医療補助品」とは、一般家庭でも使われる衛生用品、ほ乳用具及び専ら医師が使用する医療関係品の中で薬剤を除いた材料的な性質の商品を統括した概念であると認められる。 (5) 以上の検討を総合してみると、本件使用商品は、前記(1)、(2)で認定したとおり、その薬理学的作用による止血効果を目的として使用されるという点において「薬剤」的な性質の強い製品であって、旧規則別表中に「医療補助品」として例示された衛生用品や材料的な商品と同等視することはできず、商品の性質、用途、 医療現場における位置づけ、使用の実態及びこれらから推認される取引者・需要者の認識に照らすと、「薬剤」に属する商品と認めることが相当である。本件使用商品は、被告が主張するような「材料」(吸収材)としての性質を認め得るとした場合でも、これを敢えて「薬剤でない医療補助品」と解して「薬剤」から排除すべき積極的かつ合理的な理由は見いだせない。そして、本件使用商品が、薬事法上の「医薬品」として承認を受けていない事実は、本件の事実関係の下では、上記認定を左右するものではない。 3 被告の主張について 被告は、本件使用商品は「脱脂綿」の類似商品であり、「医療補助品」に属するものであるから、「薬剤」には属さないと主張するので、被告の主張の当否について判断する。 (1) 「脱脂綿」との類似性について 被告は、本件使用商品は綿状である、目に見えない止血の仕組みはともかく、本件使用商品も「出血面に圧し当てる」という物理的な圧迫を利用して止血をすることは「脱脂綿」等によって止血する場合と変わらない、などの点を挙げて、 本件使用商品は「脱脂綿」の類似商品であると主張するが、その主張は以下の理由により採用することができない。 ア. 「脱脂綿」は、日本薬局方解説書(甲第13号証)によれば、綿の種子の毛を脱脂し、漂白したものであり、その品質に関して試験項目として挙げられている項目(酸又はアルカリ度、水溶性物質含有の有無、色素、蛍光増白剤の有無、沈降速度、吸水量、他の繊維やネップ、混在物、異物の有無)からみて、生体に対して薬理学的作用を及ぼすことが全く予定されていない、もっぱら材料的な性質の物であることが明らかである。脱脂綿を止血に使用する場合でも、止血は脱脂綿を介した出血部の圧迫という物理的作用によって行われるのであって、脱脂綿自体が積極的に止血作用を有するものではない。 また、一般の「脱脂綿」は店頭で販売され、衛生用品として一般家庭でも使用されるものであって、包装は一般に簡易であり、価格も低廉で、使用上の注意や副作用その他の詳しい情報を記載した添付文書などはなく、外科手術用の高度に滅菌した脱脂綿の場合でも、使途は「止血」に限られず(血液等の「吸収」にも用いられる)、価格は止血剤として販売されている商品に比べるとはるかに低廉であることは、前示のとおりである。 イ. 他方、本件使用商品は、綿状であるという形状・形態及び水分の吸収性に優れるという点で「脱脂綿」と共通するところはあるものの、コラーゲンの薬理学的作用による積極的な止血作用に着目して止血の目的で使用されるものであって、単なる材料としての働きしか予定されていない脱脂綿とは異なる。また、原材料、用途、販売の実情(包装、添付文書の有無、価格、競合品等)、需要者層などの点でも、脱脂綿とは大きく異なっている。 ウ. 以上によれば、本件商品は、原材料、性質、作用、用途等からみて「脱脂綿」とは異質の商品であり、取引の実態に照らしても「脱脂綿」とは全く異なるものというべきであって、本件使用商品を「脱脂綿」の類似商品とみることはできない。したがって、本件使用商品は「脱脂綿」の類似商品であるから「医療補助品」であって、「薬剤」ではないとする被告の主張は、その前提を欠くものであって、採ることを得ない。 (2) 「医療補助品」であるとする被告主張の他の理由について 本件使用商品が「医療補助品」であって「薬剤」ではないという被告の主張は、「脱脂綿」との類似性を理由とするほか、@本件使用商品の薬事法及び保険適用上の地位、Aいわゆる新分類の10類に属する「手術用キャットガット」(縫合糸)からの類推解釈、B「患部の止血及び生体組織の復元を助ける医療用補助材」に旧分類の「医療補助品」に対応する類似群コードが与えられていること等をも理由としている。しかし、@については、前記2の(5)で判断したとおり、薬事法及び保険適用上における本件使用商品の取り扱いが「医療用品」であって「医薬品」でないことは、本件の事実関係の下では、本件使用商品が「薬剤」に属する商品であることの妨げとなるものでなく、本件使用商品を商標法上の「薬剤」と扱っても差し支えないというべきであり、Aについても、物理的な縫合のために用いられるもっぱら材料的な性質の「手術用キャットガット」と薬理学的作用による止血効果を目的として使用される本件使用商品とは同視し得ないから、「手術用キャットガット」に関する商標法の扱い如何は、本件使用商品が「薬剤」に属するか否かの判断を左右するものではない。Bも、本件使用商品が「医療補助品」であるとする理由とはなり得ず、また、「薬剤」でないとする理由ともなり得ない。 なお、本件使用商品が仮に「医療補助品」と判断され得べき性質を有するとしても、そのことが本件使用商品を「薬剤」と認めることの妨げにならないことは、前記1のとおりである。 4 結論 以上によれば、本件使用商品は、「薬剤」に該当する商品であり、原告は、 本件商標を取消請求に係る指定商品「薬剤」に属する本件使用商品について使用してきたものと認められる。したがって、審決における本件指定商品が「薬剤」に該当しないとした判断及びこれを前提として原告が取消審判請求の登録前3年以内に本件商標を指定商品「薬剤」について日本国内で使用していたものとはいえないとした判断は、誤りであって、取消を免れない。 よって、審決の取消を求める原告の請求は理由があるから、これを認容することとし、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 永井紀昭 |
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裁判官 | 古城春実 |
裁判官 | 橋本英史 |