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関連審決 不服2000-291
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審判番号(事件番号) データベース 権利
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不服20096432 審決 商標
関連ワード 識別力 /  役務の提供 /  識別機能 /  指定役務 /  3条1項6号 /  称呼(称呼類似) /  共有 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 45号 審決取消請求事件
原告 株式会社シグマ
訴訟代理人弁理士 伊藤捷雄
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 八木橋正雄
同 大橋良三
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/06/28
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が不服2000-291号事件について,平成12年12月12日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成10年9月8日,「習う楽しさ教える喜び」の文字を標準文字で書して成り,商標法施行令別表による商品及び役務区分第41類の「技芸,スポーツ又は知識の教授」を指定役務とする商標(以下「本願商標」という。)について,商標登録出願(平成10年商標登録願第76822号)をしたが,平成11年11月26日に拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判の請求をした。特許庁は,同請求を不服2000-291号事件として審理した結果,平成12年12月12日に「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,平成13年1月10日にその謄本を原告に送達した。
2 審決の理由 別紙審決書の理由の写しのとおり,本願商標は,その指定役務に関するキャッチフレーズと理解されるにとどまり,自他役務を識別できる標識部分を有しないものであって,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるから,商標法3条1項6号に該当する,と認定判断した。
原告主張の審決取消事由の要点
審決は,本願商標につき,自他役務の識別機能を有しているにもかかわらず,誤って,自他役務識別機能を有しないと認定,判断したものであり,この誤りが結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法として取り消されるべきである。
1 「習う楽しさ教える喜び」という語句が,審決が説示するように,ものごとを習ったり,教えたりする際の一つの望ましい形,姿を表わしているとしても,この語句が教育の理想の姿を表すキャッチフレーズとして一般に使用されている事実は存在しないから,本願商標が自他役務識別機能を有しないと認定判断したのは,審決の誤りである。
電話帳(甲第2号証)や各種教室情報誌(甲第9号証)をみても,「習う楽しさ教える喜び」というキャッチフレーズは,どこにも記載されておらず,本願商標のような語句がその指定役務を提供する各種学校の業界において日常使用されているという事実をうかがわせるものは,全く見いだせない。被告が提出した乙第1ないし第6号証にも,上記キャッチフレーズは,原告自身が経営する自動車教習所による使用例1件以外には,記載されておらず,「習う楽しさ」単独の使用例及び「教える喜び」単独の使用例も,1件も記載されていない。被告は,本願商標を前段の「習う楽しさ」と後段の「教える喜び」とに分離し,しかも,前段の「習う楽しさ」を「学ぶ楽しさ」に,後段の「教える喜び」を「教える楽しさ」に歪曲して,それぞれにつき,これと似たような例がある旨主張する。しかし,本願商標は,すべての文字が標準文字で同書,同大,同間隔に書され,語呂語調もよいことから一連に称呼されるものであって,一体不可分のものであるというべきであるから,これを分離して,しかも上記のように歪曲することには,何の合理性も認められない。
2 審決が,本願商標が教育あるいは習い事のキャッチフレーズとして用いられているとして挙げる具体例は,いずれも,被告の主張の根拠とはなり得ないものである。
(1) 「小学生は年上のお兄さんやお姉さんと接することで授業の楽しさを知り,高校生は小学生に接することで教える喜びを知ってほしい」との例においては,本願商標の語句はキャッチフレーズとして記載されていない。またこの例は,高校生と小学生の交流の目的として述べられているにとどまるものであって,教育の理想として述べられているものではない。
(2) 「本や教科書もない場所で,子供たちは一生懸命に字を覚えて勉強していた。学ぶこと,教えることの喜びを改めて感じることができました。教員としての自信が新しく生まれたような気がします」との例においては,本願商標の前段部分である「習う楽しさ」の字句はなく,本願商標の語句はキャッチフレーズとして記載されていない。
(3) 「平和橋自動車教習所,『創業40周年記念和歌』を募集中;下の句は『習う楽しさ,教える喜び』で,上の句を募集しています。」との例は,本願商標の出願人である原告自身の経営する自動車教習所による使用例であって,第三者による使用例ではない。商標登録出願人が,自己の出願商標を自社の宣伝目的でさまざまな使用態様で使用するのは当然であり,これを本願商標が自他役務の識別力を有していないことの根拠とすることはできない。
3 本願商標が自他役務の識別機能を有することは,本願商標と同じように教育の一つの理想の形,姿,或いはキャッチフレーズとなり得る商標が,次のとおり登録されていることからも,明らかである。
@ 「人から人への教育」 指定役務 第41類「学習塾における教授」 A 「学術とスポーツの真剣味の殿堂たれ」」 指定役務 第41類「大学における教授等」 B 「これなんの話?」 指定役務 第41類「学習塾における教授」 C 「もっと,心のそばへ。」 指定役務 第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授等」 D 「子供達に日々希望と感動の祈りを」 指定役務 第41類「育児の教授等」
被告の反論の要点
審決の認定判断は正当であり,審決に原告主張の違法はない。
本願商標は,これを本願の指定役務に使用するときは,これに接する取引者・需要者は,何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものであるから,商標法3条1項6号に該当する。
1 原告の主張1について 本願商標は,その指定役務との関係において,人の注意を引くように工夫した簡潔な宣伝文句,いわゆるキャッチフレーズを表したものとして理解されるものであり,同様のキャッチフレーズは,知識の教授関連の役務について一般的に用いられている(乙第1号証の1ないし4,第2号証の1ないし7)。
これらは,いずれも,役務の提供者が,その提供に係る役務の特徴を端的に表し,需要者の注意を引くためにキャッチフレーズとして用いられているものである。
そして,本願商標の「習う楽しさ教える喜び」の語句の前半部分の「習う楽しさ」の文字部分は,「習う」の語が「学ぶ」の語義を有することから(乙第3号証),本願商標は「学ぶ楽しさ教える喜び」と読み替えることができる。
この「学ぶ楽しさ」の語句は,全国紙に多数回掲載され(乙第4号証),また,「教える楽しさ」の語句も,全国紙に複数回掲載されており(乙第5号証),これらの語は各種の知識の教授の関係記事の中で使用されている。
これらの事実からすれば,これらの2つの語句を結合したものと容易に認識,理解される本願商標は,その指定役務について一般的に使用されているありふれた語句ないしはキャッチフレーズの一つを表したものということができる。そして,上記の使用例にみられるように,キャッチフレーズは,役務の質,特徴等を簡潔に表したものであって,単なる宣伝文句として理解されるにとどまり,これが役務について使用されても,自他役務の識別標識として,自他役務を識別することができず,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものといわざるを得ない。
2 原告の主張2について 原告の主張2(1)の使用例は,「習う楽しさ教える喜び」の語句が,「教える側と学ぶ側の共有」を具体的に表現したもので,教育が教授側の一方的なものでなく,教授側と学習側双方の共有的なものであることの典型を例示するものである。(2)の使用例は,「習う」の語が「学ぶ」と同義であることを踏まえた,本願商標と類似した語句の使用の例を挙げたもので,乙第1号証の1の広告記事で用いられている「日本を教えて世界を学ぶ。」のキャッチフレーズに対応し,(1)の使用例と同じく,「教える側と学ぶ側の共有」を具体的に表現したものである。(3)の使用例は,原告のインターネットのホームページ(乙第6号証)に掲載されているものであり,「習う楽しさ,教える喜び」の文字部分は,提供に係る役務についての説明文中の「教習生の習う楽しさ,インストラクターの教える喜びの場面・・・」の表現に照らしても,需要者の注意を引くための,単なる,キャッチフレーズ(モットー)として認識されるとみるのが自然である。
3 原告の主張3について 原告の挙げる登録例は,教育に関わり合いを有するものではあるとしても,本願商標とは構成が異なるものであるばかりでなく,本来,当該商標が登録できるものであるかどうかは個別に判断されるべきであるから,上記登録例があることのみをもって,本願商標が登録されるべきものであるとする原告の主張は失当である。
当裁判所の判断
1 原告は、本願商標である「習う楽しさ 教える喜び」の語句が教育の理想の姿を表すキャッチフレーズとして一般に使用されている事実は存在しないと主張する。確かに,原告による使用(乙第6号証等)以外に,この語句がキャッチフレーズとして現に使用されていることを示す証拠はない。
しかしながら,本件において問題となるのは,この語句に接した取引者・需要者が,これを自他役務の識別標識として認識するのか,それとも,これをキャッチフレーズとして理解するのかということである。このことは,この語句がキャッチフレーズとして現に一般に使用されているか否かのみによって決せられるものではない。審決は,「習う楽しさ 教える喜び」の語句がキャッチフレーズとして一般に使用されているとは認定しておらず,一般に供用されていることを根拠に結論を導いたものではないことは,審決書の理由の記載から明らかである。上記の語句がキャッチフレーズとして使用されていることが証拠上認められないからといって,そのことをもって,直ちに,審決の認定判断に瑕疵があるとすることはできないのである。
2 本願商標は,「習う楽しさ」の語句と「教える喜び」の語句を組み合わせて作られたものである。「習う」とは,「教えられて自分の身につける。まなぶ。」を,「楽しさ」とは,「満足で豊かな気分であること。快いこと。」を,「教える」とは,「学問や技芸などをさとし知らせる。できるように導く。」を,「喜び」とは,「よろこぶこと。また,その気持ち。」(広辞苑参照)を,それぞれ意味する語であり,「習う楽しさ」とは,文字どおり,習うことの楽しさを,「教える喜び」とは,文字どおり,教えることの喜びを,それぞれ意味することは,一見して明らかである。
そして,これらの意味を有する語句を簡潔に組み合わせた「習う楽しさ 教える喜び」の語句が本願商標の指定役務である技芸,スポーツ又は知識の教授に関して用いられた場合には,この語句に接した取引者・需要者は,それを妨げる何か特別な事情がない限り,この語句の有する上記の意味を想起したうえで,ごく自然に,「習う側が楽しく習うことができ,教える側が喜びをもって教えることができる。」という,教育に関して提供される役務の理想,方針等を表示する宣伝文句ないしキャッチフレーズとして認識,理解することになるものというべきであり,このことは,実際の使用例の有無を検討するまでもなく明らかである。
そして,本件全証拠を検討しても,上記認識,理解を妨げる特別の事情を見いだすことはできない。
このようにみてくると,審決のなされた時点において,「習う楽しさ 教える喜び」の文字に接した取引者・需要者は、これを,各種学校等の教育に関する役務の理想,方針等を表示する宣伝文句ないしキャッチフレーズであると認識,理解するにとどまり、自他役務の識別標識とは認識しないものと認める以外にないものというべきである。
3 原告は,本願商標と同じように教育の一つの理想の形,姿,あるいはキャッチフレーズとなり得る商標が,複数登録されていることから,本願商標も登録が認められるべきである旨主張する。しかし,これらの各登録商標が,現に,自他役務の識別標識として,一般の取引者・需要者に認識されていると認めるに足りる証拠はないから,これらの登録商標の存在は,本願商標の自他役務の識別性の有無についての判断を左右するものではない。
以上のとおり,原告主張の審決取消事由には理由がなく,その他審決には,
これを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 宍戸充
裁判官 阿部正幸
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