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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成15ワ13639商標権侵害行為差止等請求事件 判例 商標
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平成16ワ25661商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
平成19ワ14984商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  指定役務 /  不正競争の目的 /  類似性(類否判断) /  権利濫用(権利の濫用) /  先使用(32条) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  国内 /  差止 /  使用許諾 /  継続 /  商号 / 
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事件 平成 15年 (ワ) 23577号 商標権侵害差止等請求事件

原告 企業A
同訴訟代理人弁護士 笹原桂輔
同 笹原信輔
同 富田寛之
同 栢割秀和
同 十亀正嗣
被告 企業B
被告 企業C
上記両名訴訟代理人弁護士 佐藤誠治
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2005/08/02
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告株式会社企業Bは,別紙被告標章目録1及び2記載の各標章を付した別紙物品目録記載の物品を用いて,レンタルビデオショップを営業してはならない。
2 被告企業Cは,別紙被告標章目録3及び4記載の各標章を付した別紙物品目録記載の物品を用いて,レンタルビデオショップを営業してはならない。
3 被告株式会社企業Bは,別紙被告標章目録1及び2記載の各標章を付した別紙物品目録記載の物品を廃棄せよ。
4 被告企業Cは,別紙被告標章目録3及び4記載の各標章を付した別紙物品目録記載の物品を廃棄せよ。
5 被告株式会社企業Bは,原告に対し,金1000万円及びこれに対する平成16年1月20日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告企業Cは,原告に対し,金1000万円及びこれに対する平成16年1月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 争いのない事実 (1) 当事者 ア 原告は,書籍,コンパクトディスク,ビデオソフト及びその関連用品の販売並びに賃貸等を業とする株式会社である。
イ 被告株式会社企業B(以下「企業B」という。)は,ビデオソフト,書籍及びコンパクトディスクの賃貸,販売並びに輸出入等を業とする株式会社である。
ウ 被告企業C(旧商号は企業Cである。以下「企業C」という。)は,ビデオソフト,書籍,コンパクトディスク及びその関連用品の賃貸,販売並びに輸出入等を業とする有限会社である。
エ 原告の取締役であるA,企業Bの代表取締役であるB及び企業Cの代表取締役であるCは,原告及び企業Bの取締役であるDを父親とする異母兄弟である。
(2) 原告の商標権 ア 原告は,次の商標権(以下「本件商標権」といい,その登録商標を「本件商標」という。)を有している。
出願年月日 平成15年1月21日 登録年月日 平成15年9月12日 登録番号 第4709678号 役務の区分 商標法施行規則別表第41類 指定役務 図書の貸与,録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,録音済み磁気ディスクの貸与,録画済み磁気ディスクの貸与,録音済み光ディスクの貸与,録画済み光ディスクの貸与 登録商標 別紙商標目録記載のとおり イ 原告は,レンタルビデオショップである中野坂上店(東京都中野区(以下略)所在),鷺宮店(東京都中野区(以下略)所在),東中野店(東京都中野区(以下略)所在),中野新橋店(東京都中野区(以下略)所在)及び西新宿店(東京都新宿区(以下略)所在)の各店舗を経営し,これらの店舗において,本件商標を使用している。
(3) 被告らの行為 ア 企業Bは,レンタルビデオショップである中板橋店(東京都板橋区(以下略)所在)及び戸越銀座店(東京都品川区(以下略)所在)の各店舗をそれぞれ経営し,これらの店舗において,別紙被告標章目録1及び2記載の各標章(以下「企業B標章1」,「企業B標章2」という。)を別紙物品目録記載の物品に付して使用している。
イ 企業Cは,レンタルビデオショップである千歳烏山店(東京都世田谷区(以下略)所在)及び千歳烏山2号店(東京都世田谷区(以下略)所在)の各店舗をそれぞれ経営し,これらの店舗において,別紙被告標章目録3及び4記載の各標章(以下「企業C標章3」,「企業C標章4」といい,企業B標章1及び2と併せて「被告標章」という。)を別紙物品目録記載の物品に付して使用している。
(4) 本件訴えに至る経緯 ア 原告は,平成元年4月10日,Aを代表取締役として設立された。そのころ,原告は,屋号を「ピープル」として,レンタルビデオショップである中野坂上店を開店し,その後,上記(2)イ記載の鷺宮店,東中野店,中野新橋店及び西新宿店をそれぞれ開店した。なお,原告の現在の代表取締役は,Eであるが,実質的な経営者は,Aである。
イ 企業Bは,平成4年7月6日,Bを代表取締役,Aを取締役として,設立された。そして,企業Bは,上記(3)ア記載の中板橋店,平成8年12月に同記載の戸越銀座店をそれぞれ開店した。この際,Aは,Bに対し,店舗名を「ピープル」とするように求めたことから,Bはこれを了承し,これらの店舗の屋号を「ピープル」とした。
ウ 企業Cは,平成10年9月16日,Cを代表取締役として設立された。企業Cは,屋号を「ピープル」として,同年11月に上記(3)イ記載の千歳烏山店を,平成15年4月に同記載の千歳烏山2号店をそれぞれ開店した。
エ 被告らは,原告及びAの承認の下に,屋号を「ピープル」とする上記レンタルビデオショップを経営してきた。そして,被告らは,本件訴えが提起されるまでは,原告及びAから被告標章の使用の中止を求められたことはない。
オ 原告及びAは,@平成15年9月26日から数回にわたり,被告らの顧問税理士であるF及び被告らの主要な仕入先である企業Dに対し,企業Bの元社員が覚せい剤の売買及び中毒で逮捕され服役した等の事実を申し向け,A平成15年10月14日,被告らの取引先10社に対し,同様の事実が記載された「ご注意を!」と題する書面及び本件訴えに係る訴状と題する書面をファックスでそれぞれ送信した。そこで,被告らは,これらの原告及びAの行為が被告らの名誉及び信用を毀損したと主張して,平成16年3月23日,原告及びAに対して損害賠償を求める訴えを東京地方裁判所に提起した(平成16年(ワ)第6468号)。
2 事案の概要 本件は,原告が,上記1(3)記載の被告らの行為が本件商標権を侵害すると主張して,被告らに対し,商標法36条に基づき,被告標章を付した物品を用いた営業の差止め及び当該物品の廃棄を請求するとともに,民法709条に基づき損害賠償を請求する事案である。
3 本件の争点 (1) 本件商標と被告標章との類似性の有無 (2) 本件商標に係る原告の使用許諾の有無 (3) 先使用の抗弁の成否 (4) 継続的使用の抗弁の成否 (5) 本件商標権に基づく請求は権利濫用かどうか。
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(類似性)について 〔原告の主張〕 (1) 企業B標章1について ア 外観 企業B標章1には,「PeopLe」と「VIDEO」の文字が用いられている。「PeopLe」のうち,「P」と「L」が大文字であり,その他の文字が小文字である点において本件商標と一致する。「VIDEO」は,いずれも大文字である点において本件商標と一致する。
称呼 企業B標章1の文字部分の称呼は,「ピープル」及び「ビデオ」であり,本件商標と一致する。
観念 需要者又は取引者が思い浮かべる意味内容は,いずれもピープルという名前のレンタルビデオ店であり,同一である。
エ 結論 したがって,企業B標章1は,本件商標と出所混同を生じさせるものであるから,本件商標と類似している。
(2) 企業B標章2について ア 外観 企業B標章2は「VIDEO」の文字が大文字であり,この点において本件商標と一致する。
称呼 企業B標章2の文字部分の称呼は,「ピープル」及び「ビデオ」であり,本件商標と一致する。
観念 需要者又は取引者が思い浮かべる意味内容は,いずれもピープルという名前のレンタルビデオ店であり,同一である。
エ 結論 したがって,企業B標章2は,本件商標と出所混同を生じさせるものであるから,本件商標と類似している。
(3) 企業C標章3及び4について ア 外観 企業C標章3及び4には,「PEOPLE」と「VIDEO」の文字が用いられ ており,「VIDEO」は,いずれも大文字である点において本件商標と一致する。
称呼 企業C標章3及び4の文字部分の称呼は,「ピープル」と「ビデオ」であり,いずれも本件商標と一致する。
観念 需要者又は取引者が思い浮かべる意味内容は,いずれもピープルという名前のレンタルビデオ店であり,同一である。
エ 結論 したがって,企業C標章3及び4は,本件商標と出所混同を生じさせるものであるから,本件商標と類似している。
〔被告らの主張〕 本件商標は,アルファベットを図案化したデザインの下に,「PeopLe VIDEO」の文字を配したものである。このうち,「PeopLe」は人々を示す一般名詞であり,「VIDEO」は役務としてレンタルする商品を示すものにすぎない。そうすると,原告商標の識別力は,図案化されたデザインの部分にある。
このような観点から類似性をみると,企業B標章1及び企業C標章3に付されたデザインは,本件商標とは外観を異にする。しかも,本件商標と企業B標章1及び企業C標章3は,称呼を異にするから,類似しない。 また,企業B標章2及び企業C標章4は,本件商標と称呼を異にするから,類似しない。
2 争点(2)(使用許諾)について 〔被告らの主張〕 原告は,被告らに対し,被告らの経営するレンタルビデオショップを開店する際に,本件商標(ただし,当時にあっては登録されていない同一の標章をいう。)を使用するように求めたことから,企業Bにあっては当初から本件商標を使用し,企業Cにあっては企業C標章3及び4を使用してきた。
したがって,原告は,被告らが本件商標又は企業C標章3及び4を使用していることを認識していた。
また,企業Bは,その後,本件商標に代えて,企業B標章1及び2を使用してきたが,原告はこのことも認識していた。
したがって,原告は,被告標章の使用を許諾していたことが認められる。
〔原告の主張〕 原告は,被告らがレンタルビデオショップを開設する際に被告標章を使用することを黙認していた。しかし,原告は,被告標章を認識していなかったから,その使用を許諾していたとはいえない。なお,原告は,本件商標が登録された後は,被告標章の使用を許諾していない。
また,原告は,被告らとの間で,被告らの事業が軌道に乗れば,フランチャイズ契約を締結し,そのフランチャイズ料を支払うという合意をした上で,被告らは,レンタルビデオショップを開設し,被告標章を使用した。しかし,被告らは,現在に至るまでフランチャイズ契約を締結していないから,その使用許諾の合意に違反する。したがって,その使用許諾は無効である。
3 争点(3)(先使用の抗弁)について 〔被告らの主張〕 被告らは,原告の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなく被告標章を使用していた結果,当該出願の際には,被告標章が被告らのレンタルビデオショップの業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた。すなわち,原告が本件商標を出願した平成15年1月ころにおける被告らの各店舗の会員数は,企業Bの中板橋店にあっては2万7000人,同戸越銀座店にあっては2万人,企業Cの千歳烏山店にあっては1万8000人にそれぞれ達していた。 したがって,被告らは,被告標章を使用する権利を有する。
〔原告の主張〕 被告標章によって需要者の間に広く認識されているのは,原告のレンタルビデオショップであって,被告らではない。したがって,被告標章が被告らのレンタルビデオショップの業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものではない。
4 争点(4)(継続的使用の抗弁)について 〔被告らの主張〕 企業Bは,不正競争の目的でなく,中板橋店において,平成4年7月23日から現在まで継続してその役務について企業B標章1及び2を使用しているから,企業Bは,中板橋店において,これらの標章を使用する権利を有する(平成3年法律第65号附則3条1項)。
〔原告の主張〕 企業Bが企業B標章1及び2の使用を始めたのは,平成5年9月からである。すなわち,企業Bは,平成4年7月に設立されたが,原告が,企業Bに対し,原告の中野坂上店の店舗の立退補償金のうち3000万円を提供したことから,企業Bのレンタルビデオショップは開設された。そうすると,その補償金は平成5年9月ころに支払われているから,企業B標章1及び2の使用開始時期は,早くとも平成5年9月である。よって,企業Bは,これらの標章を使用する権利を有さない。
5 争点(5)(権利濫用)について 〔被告らの主張〕 原告は,被告らに対し,被告標章の使用を認めていたにもかかわらず,兄弟であるB及びCとの間の私的なトラブルがあったことを契機として,あえて本件商標の登録をして,被告標章の使用の差止めを求める訴えを提起したのであるから,本件商標権の行使は,権利の濫用である。
〔原告の主張〕 被告らは,被告標章の使用許諾の条件であるフランチャイズ契約を締結していない。加えて,被告らは社会的な問題行動を起こしており,原告は被告らと混同されないために,本件訴えを提起している。したがって,本件商標権の行使は,権利の濫用ではない。
当裁判所の判断
1 争点(2)(使用許諾)について (1) 前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 本件商標について 原告は,平成元年4月10日,Aを代表取締役として設立され,設立当初から,本件商標と同一の標章を使用していた(争いのない事実(4)ア,甲9〔1頁〕)。
イ 企業B標章1及び2について (ア) 企業Bは,平成4年7月6日,Bを代表取締役,原告の当時の代表取締役であるAを取締役として設立された(争いのない事実(4)イ)。
(イ) 企業Bは,平成4年7月に中板橋店,平成8年12月に戸越銀座店をそれぞれ開店した(争いのない事実(4)イ,乙5〔1頁〕,乙7)。その際に,原告の当時の代表取締役であるAは,企業Bの代表取締役であるBに対し,店舗名を「ピープル」とするよう求めた(争いのない事実(4)イ)。
(ウ) そこで,企業Bは,設立当初においては本件商標と同一の標章を使用し,その後,これに代えて,企業B標章1及び2を使用している(争いのない事実(4)イ,乙5〔2頁〕)。
(エ) Aは,企業Bが企業B標章1及び2を使用することを少なくとも黙認していたのであって(甲9〔2頁〕),企業Bは,本件訴えが提起されるまで,企業B標章1及び2の使用を継続していたが,原告及びAから,これらの標章を使用しないように求められたことはない(争いのない事実(4)エ)。 (オ) 企業Bの中板橋店及び戸越銀座店は,広告又は電話帳に,PeopLe group network等として,原告の店舗と同一のグループである旨の記載がある(乙2ないし4)。
ウ 企業C標章3及び4について (ア) 企業Cは,平成10年9月16日,Cを代表取締役として設立された(争いのない事実(4)ウ)。
(イ) 企業Cは,平成10年11月に千歳烏山店,平成15年4月に千歳烏山2号店をそれぞれ開店した(争いのない事実(4)ウ)。その際に,原告の当時の代表取締役であるAは,企業Cの代表取締役であるCに対し,店舗名を「ピープル」とするよう求めた(乙6〔2頁〕)。
(ウ) そこで,企業Cは,設立当初から,企業C標章3及び4を使用している(争いのない事実(4)ウ,乙6〔2頁〕)。
(エ) Aは,企業Cが企業C標章3及び4を使用することを少なくとも黙認していたのであって(甲9〔2頁〕),企業Cは,本件訴えが提起されるまで,企業C標章3及び4の使用を継続していたが,原告及びAから,これらの標章を使用しないように求められたことはない(争いのない事実(4)エ)。
(オ) 企業Cの千歳烏山店は,ピープルグループの電話帳に,原告の店舗とともに記載されている(乙4)。
(2) 上記(1)認定の被告らが被告標章を使用するに至った経緯及びその使用の経過並びにこれらに対する原告の対応等によれば,原告は,被告らの店舗が原告と同一グループの店舗であることを前提として,被告商標がピープルグループの一員であることを示す標章であることを認識して,これらを被告らが使用することを許諾していたことは明らかである。
(3) もっとも,原告は,この使用許諾には,被告らの事業が軌道に乗れば,フランチャイズ契約を締結し,被告らは原告に対しフランチャイズ料を支払うものとする条件が付されていたにもかかわらず,被告らがこの条件を履行しないから,この使用許諾は無効であると主張する。
しかしながら,その主張自体が具体性に乏しい上,使用許諾に条件が付されていた事実を認めるに足りる具体的な証拠はない。したがって,原告の上記主張は理由がない。
(4) 以上によれば,原告が被告らに対し被告標章の使用を許諾した事実が認められるから,原告の請求は理由がない。
2 争点(5)(権利濫用)について (1) 念のため,本件商標権に基づく請求が権利濫用かどうかについて検討するに,上記1(1)の事実に加えて,争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 原告の実質的な経営者であるA,企業Bの代表取締役であるB及び企業Cの代表取締役であるCは,異母兄弟である(争いのない事実(1),乙1別紙@)。
イ 原告は,平成15年1月,本件商標を出願し,同年9月にその登録を受けた(甲1)。
ウ 平成15年1月ころにおける被告らの各店舗の会員数は,企業Bの中板橋店にあっては2万7000人,同戸越銀座店にあっては2万人,企業Cの千歳烏山店にあっては1万8000人にそれぞれ達していた(乙5〔3頁〕,乙6〔3頁〕)。
エ Aは,平成15年6月ころ,企業Bの取締役を退任したが(甲9〔5頁〕),同人は,無断で退任させられたのであり,この行為は企業Bの裏切り行為であって,企業Bがピープルグループを離脱するつもりであると受け止めた(甲9〔6頁〕,乙1別紙@)。
オ 「ご注意を!」と題する書面の送付 (ア) 原告の実質的な経営者であるAは,被告らの取引先10社に対して,平成15年10月14日,下記の内容等を記載した被告会社作成名義の「ご注意を!」と題する書面及び本件訴えに係る訴状と題する書面をファックスでそれぞれ送信した(争いのない事実(4)オ,乙1)。
a 企業Bの元社員が覚せい剤の売買及び中毒で逮捕され,有罪が確定して服役した。
b 企業Bの代表取締役であるBは,@フィリピンパブに毎日のように通い,自分はゴルフ三昧で部下に働かせ,フランチャイズ料を支払わない,A腹違いの弟であるAを企業Bの取締役から無断で解任した,B遺産が欲しいため,父親が早く死ねばいい旨公言した,CAに対し,「おまえとは,一生戦争してやる」と述べた,D酒酔い運転で新車を全損させた上で,そのまま逃げ,会社に500万円相当の損害を与えた。
c 企業Cの代表取締役であるCは,@3人の子供がいるにもかかわらず,浮気し放題で,キャバクラ遊びに精を出し,経営を真剣にやっていない,A新車を酒酔い運転で全損させ,免許取消処分を受けている。
d 企業B及び企業Cの店舗は,上記記載の恥ずかしい行為をする人間が経営するものであって,「ピープル」の信用を失墜させる店舗であるから注意すべきである。
(イ) (ア)の行為について,Aは,企業Bの代表取締役であるB及び企業Cの代表取締役であるCに係る悪評が取引先に知れるところとなったため,同一のピープルグループの一員として黙っているわけにはいかなかったと述べている(甲9〔7頁〕)。 (2) 上記1のとおり,原告は,被告らに対し,少なくとも被告標章を使用することを黙認していたことが認められる。他方で,上記2(1)認定の事実によれば,被告らは,被告標章を使用して営業を継続し,平成15年1月ころには,被告らの店舗の会員数も相当数に達するまでに信用を築き上げてきたことが認められる。
そうすると,本件訴訟における争いは,結局のところ原告の実質的な経営者と被告らの代表取締役との間における兄弟喧嘩に端を発するものであって,原告が,その兄弟喧嘩を契機として,自ら使用を黙認していた被告標章の差止め等を突如として求めることは,客観的に公正な競争秩序を維持するという商標法の目的に反するものと認められる。
したがって,原告による本件商標権に基づく請求は,権利濫用として許されない。 3 結論 よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとする。
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官 東海林保
裁判官 中島基至・