関連審決 | 審判1998-4435 |
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関連ワード | 識別力 / 商品商標 / 識別機能 / 指定商品 / 指定役務 / 記述的商標(3条1項3号) / 普通に用いられる方法 / 補正 / 商号 / |
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事件 |
平成
12年
(行ケ)
478号
審決取消請求事件
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原告 相田みつを美術館株式会社代表者代表取締役 A 訴訟代理人弁理士 本田崇 被告 特許庁長官B 指定代理人 C 同 D |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2001/03/15 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
特許庁が平成10年審判第4435号事件について平成12年10月31日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告 主文と同旨 2 被告 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告(商標登録出願当時の旧商号「株式会社而今社」)は、平成7年3月28日、「しあわせはいつもじぶんのこころがきめる」との文字を別紙に示すように書して成り、指定商品を第16類「印刷物」とする商標について商標登録出願をしたが(以下、この出願を「本願出願」といい、その商標を「本願商標」という。)、平成10年2月20日(発送日)に拒絶査定を受けたので、同月22日、 指定商品を「印刷物(但し書籍を除く)」と補正する旨の手続補正書(自発)(以下「本件手続補正書」という。)を提出するとともに、同年3月23日、拒絶査定不服の審判の請求をした。特許庁は、これを平成10年審判第4435号事件として審理した結果、平成12年10月31日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、同年11月20日、その謄本を原告に送達した。 2 審決の理由 別紙審決書の理由の写しのとおりである。 |
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原告主張の審決取消事由の要点
審決の理由中、1(本願商標)、2(原査定の理由)、3(請求人の主張の主旨)は認める。4(当審の判断)のうち2頁11行ないし37行は認め、2頁38行〜3頁7行は争う。 審決は、本願商標の「しあわせはいつもじぶんのこころがきめる」の文字が、商品である単行本(書籍)の表紙、奥付に表されていることをとらえて、ここでは、上記文字は、単行本(書籍)の題号の表記として使用されていると認定し、 これを前提に、単行本(書籍)の題号は、その単行本(書籍)である著作物を特定する名称として表記されるものであり、その内容にかかわるものであるから、本願商標は、指定商品である「印刷物」に含まれる単行本(書籍)については、商品の出所を明らかにし、需要者が、それによりある商品と他の商品を区別するための標識、すなわち、自他商品の識別標識としての機能を有しているとは認めがたく、したがって、商標法3条1項3号に該当する旨の判断をした。しかし、原告は、本件手続補正書によって指定商品を「印刷物(但し書籍を除く)」に補正しているのであるから、審決は、本願商標の指定商品である「印刷物」に単行本(書籍)が含まれることを前提に商標法3条1項3号該当性の認定判断をすることはできないはずである。 このように、審決は、本願商標の指定商品が「印刷物(但し書籍を除く)」であるにもかかわらず、書籍に本願商標を使用した場合について自他商品の識別標識としての機能を有しているかどうかを検討し、本願は商標法3条1項3号に該当する、としたものであり、その認定判断は、前提において既に誤っているから、審決は取り消されなければならない。 被告は、原告が、本件手続補正書を提出していたとはいえ、平成10年6月19日付けの審判請求理由補充書(以下「本件補充書」という。)の請求の理由中で上記補正の点に全くふれずに、「書籍」に含まれる単行本に本願商標を使用しても識別機能を有する旨主張し、前記商品について識別機能を有する商標であるとして証拠を提出しているから、審決時においてその補正の効果を認めることはできないというが、失当である。原告は、本件補充書において、本願商標を使用した書籍(単行本)が書店及び読者において高い評価を得て、広く認識され、同書籍についての取引が行われている事実を主張し、また、書籍の題号に限らずそれ以外の印刷物等についても本願商標が使用されている事実をも主張していたのである。要するに、原告は、上記補正とともに、本願商標が著作物の題号であるとは限らないばかりか、商標それ自体に特異性があり、識別力もあること、及び、商品への商標使用の態様いかんによっては商品商標として自他商品の識別機能を十分に発揮し得ることから、単に内容表示にとどまらず自他商品の識別力を発揮する商標であることを主張していたのである。 また、被告は、原告の本件手続補正書による補正は、あくまで形式的になされたものであり、原告は、実質的には、単行本に本願商標を使用しても識別機能を有しているとの主張立証をしていたのであるから、本願商標の指定商品である「印刷物」に単行本(書籍)が含まれることは明らかであるというが、失当である。原告は、本件補充書において、書籍及び書籍以外の商品を含む印刷物について本願商標を使用した場合、一律に識別力がないと判断することは、本願商標の特殊な形態に鑑み、また、取引の実態からみて失当であることを主張していたのである。被告の上記主張は、その前提において誤りがある。 さらに、被告は、仮に、指定商品が「印刷物(但し、書籍を除く)」に補正されたことが認められるとしても、本願商標の指定商品である「印刷物」には「絵はがき、楽譜、歌集、カタログ、カレンダー、日記帳、パンフレット」等が含まれ、これらの指定商品との関係においても、本願商標は単に品質を表示するものにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を有しないというが、失当である。本願商標は、単なる標識として文字を選定したものではなく、毛筆により平仮名を5行の縦書きにして成るものであって、普通に用いられる方法で表示された文字のみから構成されるものではない。また、本願商標は、その言葉の内容とあいまって有意性及び特異性があり、流通過程又は取引過程に置く場合に、商品標識あるいは出所表示商標として必ず必要な表示であるわけでもなく、何人も使用をする必要があるとか、何人も使用を欲するとかという標章であるわけでもない。しかも、本願商標は、一般的に使用され、あるいは、将来必ず一般的に使用される標章であるわけでもない。 |
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被告の反論の要点
審決の認定判断は正当であり、審決を取り消すべき理由はない。 原告が、本件手続補正書を提出していたとはいえ、本件補充書の請求の理由中で上記補正の点に全くふれずに、「書籍」に含まれる単行本に本願商標を使用しても識別機能を有する旨主張し、前記商品について識別機能を有する商標であるとして証拠を提出している以上、審決時においてその補正の効果を認めることはできないものというべきである。 また、原告の本件手続補正書による補正は、あくまで形式的になされたものであり、原告は、実質的には、単行本に本願商標を使用しても識別機能を有しているとの主張立証をしていたのであるから、本願商標の指定商品である「印刷物」に単行本(書籍)が含まれることは明らかである。 さらに、仮に、指定商品が「印刷物(但し、書籍を除く)」に補正されたことが認められるとしても、本願商標の指定商品である「印刷物」には「絵はがき、 楽譜、歌集、カタログ、カレンダー、日記帳、パンフレット」等が含まれ、本願商標は、これらの指定商品との関係においても、単に品質を表示するものにすぎず、 自他商品の識別標識としての機能を有しない。 |
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当裁判所の判断
1 原告が、平成10年2月22日付けで、指定商品を「印刷物(但し書籍を除く)」に補正する旨の本件手続補正書を提出したことは当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば、特許庁は、上記補正について補正却下の決定をしていないことが認められる。 商標法16条の2が、1項において「願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものであるときは、審査官は、決定をもってその補正を却下しなければならない。」と規定し、2項において「前項の規定による却下の決定は、文書をもって行い、かつ、理由を付さなければならない。」と規定していることからすれば、特許庁が上記補正を却下していない以上、本願商標の指定商品が「印刷物(但し書籍を除く)」に減縮されていることは、明らかというべきである。 被告は、上記補正について、形式的になされたにすぎず実質的には補正の効果が生じないとの趣旨の主張をしているけれども、手続補正が適法になされたのであれば、補正の効果が生ずるのは当然であり、それが形式的であるか実質的であるかを論ずる余地はないものというべきである。 2 被告は、仮に、指定商品が「印刷物(但し、書籍を除く)」に補正されたことが認められるとしても、本願商標の指定商品である「印刷物」には「絵はがき、 楽譜、歌集、カタログ、カレンダー、日記帳、パンフレット」等が含まれ、これらの指定商品との関係においても、本願商標は単に品質を表示するものにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を有しない旨主張する。 審決が、本願商標は書籍の題号を表記として使用されていると認定し、これを前提に、書籍の題号は、その単行本である著作物を特定する名称として表記されるものであり、その内容にかかわるものであって、商品の出所を明らかにし、需要者が、それによりある商品と他の商品を区別するための標識、すなわち、自他商品の識別標識としての機能を有しているとは認めがたい旨の判断をし、その結果、本願商標は商標法3条1項3号に該当するとの結論に至っていることは、審決書の記載自体から明らかである。 ところが、上述したとおり、本願商標の指定商品は、「印刷物(但し書籍を除く)」に減縮されているのであるから、審決は、減縮された指定商品については全く認定判断をしていないことになる。このような場合、指定商品を「印刷物(但し書籍を除く)」とする本願商標が商標登録を受けることができるのかどうかを改めて認定判断しなければならないのは当然である。その際、この審理判断は、審決取消訴訟の係属する裁判所において、特許庁における審判の手続を経ることなく、 第一次的に行うことはできないと解するのが相当であるから、裁判所としては、審決を取り消すしかないものというべきである。 3 以上によれば、審決の取消しを求める原告の請求は理由があることが明らかである。そこで、これを認容することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 山下和明 |
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裁判官 | 山田知司 |
裁判官 | 宍戸充 |