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事件 平成 12年 (行ウ) 231号 商標権移転登録申請却下処分取消請求事件
原告 ジャパン・ホスピタリティー・マネージメント・インク 右代表者 A
原告 司建物管理有限会社右代表者取締役 B右両名訴訟代理人弁護士 松本健吾
被告 特許庁長官C右指定代理人 D
同 E
同 F
同 G
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2001/01/30
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は、原告らの負担とする。
事実及び理由
請求
被告が原告らに対し平成一一年九月二八日付けで商標登録第一九七三五九九号、商標登録第二〇九六五二〇号、商標登録第三二六四〇六七号、商標登録第三〇〇三六七五号、商標登録第三〇〇三六七六号及び商標登録第三〇〇四六〇五号についてなした商標権移転登録申請却下処分を取り消す。
事案の概要
一 争いのない事実 1 原告らの代理人は、被告に対し、平成一一年七月二日付けで、商標登録第一九七三五九九号、商標登録第二〇九六五二〇号、商標登録第三二六四〇六七号、
商標登録第三〇〇三六七五号、商標登録第三〇〇三六七六号及び商標登録第三〇〇四六〇五号(以下、これらを「本件商標権」という。)について、原告司建物管理有限会社から原告ジャパン・ホスピタリティー・マネージメント・インク(以下「原告ジャパン・ホスピタリティー」という。)への商標権移転登録申請書(以下「本件申請書」という。)を提出した(以下「本件申請」という。)。
2 本件申請書には、イギリス領ケイマン諸島の法人である原告ジャパン・ホスピタリティーの国籍として、「ケイマン諸島」と記載され、本件申請書に添付された右原告の委任状(以下「本件委任状」という。)には、右原告の法人名称が記載されていなかった。
3 被告は、原告らに対し、同月一九日付けで、本件申請書について、@申請書に記載された登録権利者の表示(国籍)は登録することができないこと、A登録権利者の委任状が添付されていないことを理由とする却下理由通知をした。
4 被告は、同年九月二八日付けで、右却下理由通知書に記載された理由が解消されていないことを理由として、本件申請を却下した(以下「本件却下処分」という。)。
5 原告らは、右処分に対し、同年一二月一〇日付けで、行政不服審査法による異議申立てをしたところ、被告は、平成一二年六月一二日付け異議の決定において、右申立てをいずれも棄却した。
二 本件は、原告らが、本件却下処分は違法であると主張して、本件却下処分の取消しを求める事案である。
争点及びこれに関する当事者の主張
一 争点 本件却下処分が違法か否か 二 争点に関する当事者の主張 (被告の主張) 1 本件申請書の登録権利者の欄には、国籍として「ケイマン諸島」と記載されているが、ケイマン諸島については、イギリス領域として相互主義が確認されているだけで、我が国は、ケイマン諸島を国として承認していないから、右記載は、
単なる地域名の記載にすぎず、国籍の記載とは認められない。
したがって、本件申請書は、商標登録令10条において準用する特許登録令28条5号に定める方式に違反しているから、本件申請は、商標登録令10条において準用する特許登録令38条1項1号又は二号に該当する瑕疵を有する。
工業所有権に係る登録申請の補正については、法令上の規定がないから、
補正は認められず、商標登録令10条において準用する特許登録令38条1項により、本件申請は却下されなければならない。
2 本件委任状は、本件申請書に記載された登録権利者である原告ジャパン・ホスピタリティーを委任者とすべきところ、委任者として右法人名称の記載がないから、本件委任状をもって、右原告の真正な委任状とすることができない。
商標登録令施行規則17条2項において準用する特許登録令施行規則13条の2第1項は、申請をする者の代理権は書面をもって証明しなければならないことを、特許登録令28条は、申請書には申請人の氏名及び住所を記載し、申請人が記名及び押印をすることを定めているから、申請を代理人によって行うときも、委任者の記名及び押印のある委任状の添付が必要である。
したがって、委任者である法人の名称のない委任状を添付してされた本件申請は、商標登録令10条において準用する特許登録令38条1項2号又は七号に該当する瑕疵を有する。
工業所有権に係る登録申請の補正については、法令上の規定がないから、
補正は認められないし、また、本件申請書に添付すべき委任状は、その書面自体が申請時に証明として完結したものであるべきであり、後の補正でその内容が追加されたり変更されたりすべき性質のものではないから、商標登録令10条において準用する特許登録令38条1項により、本件申請は却下されなければならない。
(原告らの主張) 1 本件申請書には、登録権利者である原告ジャパン・ホスピタリティーの住所として、「ケイマン諸島グランドケイマン州ジョージタウン市」と記載されており、国籍として「ケイマン諸島」と記載されているところ、ケイマン諸島及び右住所地は世界において唯一無二の地であることから、ケイマン諸島がイギリス領であることは明らかである。
そうすると、本件申請において、登録を申請した事項としての右原告の国籍は、イギリス領ケイマン諸島であることが明らかであるから、本件申請書の国籍欄にケイマン諸島とのみ記載したことをもって、登録を申請した事項が登録すべきものではないとはいえず、商標登録令10条において準用する特許登録令38条1項1号に該当するとはいえない。
2 本件委任状には、右原告の法人名称が記載されていないが、本件申請書の登録権利者としては右原告の法人名称が記載されており、本件申請書に添付した譲渡証書及び本件委任状の訳文にも右法人名称が記載されている。したがって、本件委任状が右原告の委任状であることは明らかであって、本件委任状の提出によって、申請に必要な委任状の提出があったというべきであるから、申請に必要な書面の提出がないとはいえず、商標登録令10条において準用する特許登録令38条1項7号に該当するとはいえない。
3 仮に、本件申請に被告の主張のような瑕疵があるとしても、これらの瑕疵はいずれも明白な誤記であるから、被告としては、右誤記を補正させるべきであって、そのような補正の機会を与えることなく申請を却下した本件却下処分は、原告らの申請権を害する違法な処分である。
その理由は、以下のとおりである。
(一) 商標権の移転登録申請に関し、明白な誤記、脱字であっても一切の補正を認めないとすると、申請人は、却下理由通知書を受領した後、同一の申請を再度するしかないが、そのためには登録権利者や登録義務者の委任状など必要な書類を再度作成しなければならない。しかしながら、このような書類の作成は事実上困難なため、申請が却下され申請書類が返還されるまで待つしかなく、再申請まで長時間を要する。
このように、商標権の移転登録申請に対し、明白な誤記、脱字であっても一切の補正を認めないことは、申請人に多大な不利益を与える。
(二)(1) 被告は、明白な誤記については、訂正を認めている。本件申請書のような明白な誤記に相当する脱字についても、補正を認めることで第三者の利益を損なうことはあり得ない。
(2) ソフトウエア情報センターにおけるプログラムの著作権登録申請については出頭訂正が認められ、文化庁の著作権登録申請においても、申請書の返却が早いため、早期の再申請が可能である。
(3) 不動産登記の場合、即日の補正等、早期の補正が可能である。
(4) 商標権の移転登録申請においても、仮差押登録嘱託による場合、補正が認められるところ、裁判所書記官による嘱託と通常の申請とで取扱いを異にすることは、著しく不平等である。
本件商標権についても、仮差押嘱託について補正が認められた結果、
仮差押嘱託が原告らによる再申請よりも先に登録され、原告らに多大な不利益が生じた。
4 また、仮に補正が認められないとしても、被告は、却下理由通知後速やかに却下処分を行い、申請書類を返還して、早期に再申請をする機会を与えるべきであるところ、本件却下処分においては、そのような機会が与えられなかったから、
本件却下処分は、原告らの申請権を害する違法な処分である。
当裁判所の判断
一 商標登録令10条において準用する特許登録令28条5号は、登録の申請書において、登録権利者が外国人であるときは、その国籍を記載しなければならない旨規定する。
本件申請書の登記権利者である原告ジャパン・ホスピタリティーは、前記第二の一2のとおり、イギリス領ケイマン諸島の法人であって、「ケイマン諸島」は我が国が承認している独立国ではないから、「ケイマン諸島」とのみ記載しても国籍を記載したことにはならないところ、本件申請書においては、前記第二の一2のとおり、国籍として「ケイマン諸島」としか記載されていない。したがって、本件申請書は、商標登録令10条において準用する特許登録令28条5号に違反している。
商標登録令10条において準用する特許登録令38条1項は、登録申請書が方式に適合しないときは、被告は当該申請を却下しなければならない旨規定する(同項二号)ところ、本件申請書は、右のとおり、国籍の記載につき、その方式に適合しているとは認められない。
二 商標登録令施行規則17条2項において準用する特許登録令施行規則13条の2第1項は、登録の申請をする者の代理人の代理権は、書面をもって証明しなければならないと規定する。
本件申請は、前記第二の一2のとおり、登録権利者である原告ジャパン・ホスピタリティーらの代理人によってされたものであるから、代理人の代理権を証明すべき書面を添付しなければならないところ、前記第二の一2のとおり、本件申請書に添付されていた委任状には、右原告の代表者の記名及び署名はあるが、右原告の法人名称は記載されていなかった。このように、代理権授与者の名称が記載されていない書面では、何人が代理権を授与したか明らかではないから、代理人の代理権が証明されたとはいえない。
また、他に、本件申請に関し、右代理人の代理権を証明する書面が添付されたことを認める証拠はない。
商標登録令10条において準用する特許登録令38条1項は、登録の申請に必要な書面を提出しないときは、被告は当該申請を却下しなければならない旨規定する(同項七号)ところ、本件申請は、右のとおり、登録権利者の代理人の代理権を証明する書面が添付されていたとは認められない。
三1 原告らは、本件申請に瑕疵があったとしても、被告がその補正を求めなかったことは、原告らの申請権を侵害するものであると主張する。
しかしながら、商標登録令10条において準用する特許登録令38条1項は、同項各号に規定する場合は、申請を却下しなければならないと規定していて、
被告に申請を却下することを義務づけており、その補正を認める法令上の規定はないから、被告が本件申請書の補正を認めなかったことが違法であるとは認められない。
この点について、原告らは、前記第三の二(原告らの主張)3(一)、(二)のとおり主張する。しかし、本件申請書は、その記載から、登録権利者の国籍が明らかでなく、また、本件委任状は、その記載から、誰が委任者であるか明らかでないから、明白な誤記、脱字であるということはできない。そうすると、これらの記載が明白な誤記、脱字であることを前提とする、前記第三の二(原告らの主張)3(一)及び(二)(1)の主張は、失当である。さらに、同3(二)(2)ないし(4)については、他の手続において補正が認められている旨の主張であるから、それによって右認定が左右されるものではない。
2 原告らは、被告が速やかに本件却下処分をしなかったことで、原告らに新たな申請書を早期に再提出する機会を与えなかったことは、原告らの申請権を侵害するものであると主張する。
しかしながら、前記第二の一3及び4のとおり、被告が本件申請の却下理由通知をしてから本件却下処分をするまでに要した日数が七二日にとどまること、
証拠(甲三)と弁論の全趣旨によると、原告らは、本件申請を撤回するなどして、
本件却下処分を待たずに、再度同一の申請をすることができたと認められることからすると、本件却下処分が、原告らに登録の再申請の機会を早期に与えなかったものであるとは認められない。
したがって、原告らの右主張は採用することができない。
四 以上のとおり、本件却下処分に違法の点は認められないから、本件却下処分の取消しを求める原告らの請求は失当である。
よって、原告らの請求は、いずれも理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 森義之
裁判官 岡口基一
裁判官 男澤聡子
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