関連審決 | 審判1999-9741 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成21行ケ10396審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成3行ケ19 | 判例 | 商標 |
平成3ネ738 | 判例 | 商標 |
平成12行ケ461審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成13行ケ114審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 識別力 / 包装 / 指定商品 / 混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) / 公序良俗(4条1項7号) / 4条1項11号 / 類似性(類否判断) / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 取引の実情 / 出所の混同 / 外国 / 非類似 / 商号 / |
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事件 |
平成
12年
(行ケ)
253号
審決取消請求事件
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原告 東洋エンタープライズ株式会社代表者代表取締役 【A】 訴訟代理人弁理士 野原利雄 被告 特許庁長官【B】 指定代理人 【C】 同 【D】 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2000/12/21 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成11年審判第9741号事件について平成12年6月7日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告 主文と同旨 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成8年7月19日、別紙(1)のとおり「INDIAN MOTOR CYCLE」の欧文字を横一列に書して成り、指定商品を商品及び役務の区分第14類「貴金属、貴金属製食器類、貴金属製の砂糖入れ・塩振出し容器・ナプキンホルダー、貴金属製花瓶、貴金属製針箱、貴金属製宝石箱、貴金属製のがま口及び財布、貴金属製靴飾り、貴金属製コンパクト、貴金属製喫煙用具、身飾品、宝玉及びその模造品、時計、記念カップ、記念たて」とする商標(以下「本願商標」という。)を登録出願したが、平成11年4月23日に拒絶査定を受けたので、同年6月11日、拒絶査定不服の審判を請求した。特許庁は、これを平成11年審判第9741号事件として審理した結果、平成12年6月7日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、同年6月23日、その謄本を原告に送達した。 2 審決の理由 審決の理由は、別紙審決書の理由の写しのとおりである。要するに、本願商標は、指定商品を第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」とし、別紙(2)のとおり、羽根飾りを付けたインディアンの横顔を表した図形(該羽根飾りの部分に「Indian」の欧文字が筆記体で書されている。以下「インディアン図形等」という。)及びその下に「Indian Motocycle Co.,Inc.」との筆記体の欧文字から成る商標登録第2720681号商標(平成4年2月6日登録出願、平成9年4月25日設定登録)、指定商品を第18類「皮革、かばん類、袋物、携帯用化粧用具入れ、かばん金具、がま口口金、傘」とし、上記同様の構成から成る商標登録第3199708号商標(平成5年3月29日登録出願、平成8年9月30日設定登録)、指定商品を第14類「貴金属、貴金属製のがま口及び財布、貴金属製靴飾り、貴金属製宝石箱、身飾品、宝玉及びその模造品、宝玉の原石」とし、上記同様の構成から成る商標登録第4091509号商標(平成5年3月29日登録出願、平成9年12月12日設定登録)、指定商品を第20類「家具、木製・竹製又はプラスチック製の包装用容器、スリーピングバック」とし、上記同様の構成から成る商標登録第4196666号商標(平成5年3月29日登録出願、平成10年10月9日設定登録。 以下、これらの登録商標を「引用商標」と総称する。)と、外観において相違し、 観念上比較すべくもないものであるとしても、称呼において相紛らわしい類似の商標であり、また、本願商標の指定商品と引用商標の指定商品とは同一又は類似のものであるから、本願商標は商標法4条1項11号に該当する、とするものである。 |
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原告主張の審決取消事由の要点
審決は、引用商標の称呼の認定を誤り(取消事由1)、本願商標と引用商標との類否の判断を誤り(取消事由2)、その結果、本願商標と引用商標とは同一又は類似のものであるとの結論を導いたものであって、認定判断に違法があり、その違法は、審決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、審決は取り消されなければならない。 1 取消事由1(引用商標の称呼認定の誤り) (1) 引用商標は、その全体構成をみると、上段部のインディアン図形等が、下段部の「Indian Motocycle Co.,Inc.」に比べて圧倒的に大きく、また、上段部のインディアン図形の部分が外観上最も特徴的な構成要素となっているから、上段部が識別力の中心をなすことは明らかであり、この上段部のインディアン図形等からは、「インディアン」の称呼のみが生ずる。一方、引用商標の下段部は、要部とはいえない付記的部分であるから、ここより生ずる称呼が引用商標全体としての識別能力に影響を与えることはない。 (2) 仮に上記(1)の主張が認められないとしても、引用商標中の「Indian Motocycle Co.,Inc.」の部分からは、一体不可分のものとして、「インディアンモトサイクルシーオーインク」又は「インディアンモトサイクルカンパニーインク」の称呼のみが生ずるものである。 すなわち、引用商標中の「Co.,Inc.」の欧文字は、その全体構成中の他の部分との配置、大きさ、その文字態様、さらには、下段部分の文字が全体として引用商標の出願人及び権利者の名称(社名)と異なることなどの事情を総合すると、単に会社等の法人格を表す略語として認識されることはないのである。より具体的にいえば、引用商標は、これらの登録商標の権利者の商号と異なっているので、その使用が商号単一の原則に反することとなるにもかかわらず、被告が、商標法4条1項7号に該当するものとしていないところからすれば、引用商標は、その商号ないし社名とはならないことになる。そうすると、引用商標中の「Co.,Inc.」の欧文字は、単に「株式会社」等を表す略語とは認識されないから、 「Indian Motocycle」と「Co.,Inc.」とは一体のものとしてのみ認識される。 更にいえば、引用商標は、約50年前に解散した米国バイクメーカー(以下「インディアン社」という。)が使用していた著名な社章的商標であったものであるから、引用商標からは、インディアン社の法人商標との観念を生ずることになり、「Indian Motocycle」と「Co.,Inc.」とは分離されることなく、一体のものとしてのみ認識される。 また、引用商標中の「Moto」の欧文字は、通例のローマ字読みからして、「モート」ではなく「モト」とのみ発音されるものである。なぜならば、「Moto/モト」の文字は、「Motor/モーター」を簡略化した文字であり、Motorcycle/モーターサイクル」そのものを示す文字として多用されていることは、自動車関連業界や自動車競技界のみならず、一般消費者の間にまでも広く認識理解されているところであり、その際、「Moto」の文字部分は、必ず「モト」と発音され、「モート」と発音されることはないからである。 2 取消事由2(類否判断の誤り) (1) 本願商標は、「INDIAN MOTOR CYCLE」と欧文字綴りで横一列に書して成り、これより、「インディアンモーターサイクル」の称呼のみが生ずるのに対し、引用商標からは、単に「インディアン」の称呼のみが生ずるから、本願商標とは称呼において明瞭に相違し、相紛れるおそれはない。 (2) 仮に、引用商標から単に「インディアン」の称呼のみが生ずるとの主張が認められないとしても、引用商標の下段部の「Indian Motocycle Co.,Inc.」からは、「インディアンモトサイクルシーオーインク」又は「インディアンモトサイクルカンパニーインク」の称呼のみが生ずる。そうすると、本願商標においては、音数(長音を含めて)にして13音となるのに対し、引用商標においては、18音ないし19音となって、称呼の相違が明白である。また、本願商標の「MOTOR」の語は、「モーター」と比較的冗長な発音であるのに対し、引用商標の「Moto」は、「モト」と歯切れのよい発音がされることから、両称呼は全体の音感、音調を著しく異にする。 したがって、本願商標と引用商標とが、称呼において相紛れるおそれはない。 3 取消事由3(全体的観察の懈怠) (1) 商標の類否は、対比される商標の全体的観察により行われるべきものであるにもかかわらず、審決は、本願商標と引用商標との全体的観察を全くしていない。 (2) 本願商標と引用商標とは、これらを全体的に観察すれば、全体として非類似の商標であり、両商標が相紛れるおそれはない。 すなわち、外観をみると、引用商標は、上段部のインディアン図形等の部分が最も特徴的な構成要素となっていて識別力の中心をなしているものであるから、本願商標と引用商標とは、外観において著しく相違していることが明らかである。また、観念においてみても、審決のいうとおり、本願商標と引用商標とでは、 比較すべくもないほど顕著に相違しているのである。 |
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被告の反論の要点
審決の認定判断は、いずれも正当であり、審決を取り消すべき理由はない。 1 取消事由1(引用商標の称呼認定の誤り)について (1) 簡易迅速を尊ぶ取引の実際においては、商標は、その各構成部分が、それぞれを分離して観察することを取引の実情に照らして不自然であると考えさせるほどに不可分的に結合しているものでない限り、常に必ず構成部分の全体が一体として称呼、観念されるというわけのものではなく、一個の商標から二個以上の称呼、 観念が生ずることもあり得るのである(最高裁判所昭和38年12月5日第一小法廷判決・判例時報366号26頁参照)。本件についてみれば、引用商標において、上段部に描かれたインディアン図形等の部分と下段に書された「Indian Motocycle Co.,Inc.」の文字部分とは、視覚上分離して看取され得るばかりでなく、両者が常に一体不可分にのみ認識されるべき格別の理由もないから、それぞれの部分から生ずる称呼、観念をもって取引に資され得るとみるのが自然であり、引用商標からは、上記構成文字に相応して「インディアン」の称呼のほか、「インディアンモートサイクル」の称呼をも生ずるものである。 (2) まず、「Co.,Inc.」に着目すると、我が国においては、「Co.」の文字は、「会社、商会」を意味する「Company」の略語として、 「Inc.」の文字は「法人組織の、会社組織の」の意味を有する「Incorporated」の略語として、それぞれ知られており、「Co.,Inc.」全体としては、「株式会社」の英文表記にしばしば用いられている。したがって、引用商標中の「Indian Motocycle Co.,Inc.」の文字部分は、会社名を表したものと認識されるというべきであり、そして、簡易迅速を尊ぶ取引の場にあっては、会社名を称呼する場合に「Co.,Inc.」の部分を省略して称呼することが多いことも明らかである。 次に、「Motocycle」の文字は、既成の英語にない綴り字であること、並びに、その前後の「Indian」及び「Co.,Inc.」の文字が英語であることからすれば、我が国において最も普及している外国語である英語において、例えば、「motel」、「motion」、「motor」がそれぞれ「モーテル」、「モーション」、「モーター」のように発音される例にならって、 前半部を「モート」と長音を伴って発音し、全体として「モートサイクル」と発音されることも決して少なくないというべきである。「Motocycle」の文字から、必ず「モトサイクル」の称呼のみが生ずるとはいえない。 したがって、引用商標は、その構成中の「Indian Motocycle Co.,Inc.」の文字部分に相応して、「インディアンモートサイクル」の称呼をも生ずるというのが自然である。 2 取消事由2(類否判断の誤り)について (1) 引用商標は、上段部のインディアン図形等と下段部の「Indian Motocycle Co.,Inc.」の文字部分とが、いずれも明瞭に表されており、両者に軽重の差はなく、指定商品との関係において、「Indian Motocycle Co.,Inc.」の文字が商品の品質等を表示するというような自他商品の識別力がないとすべき格別の理由もなく、加えて、上記両部分は、視覚上分離して看取されるばかりでなく、両者が常に一体不可分にのみ認識されるべき格別の理由もないから、「Indian Motocycle Co.,Inc.」の文字部分も引用商標の要部となり得るものである。 したがって、引用商標から、単に、「インディアン」の称呼のみが生ずるとする原告の主張は、失当である。 (2) 引用商標は、上述したように、その構成中の「Indian Motocycle Co.,Inc.」の文字部分から「インディアンモートサイクル」の称呼をも生ずるものである。引用商標における「インディアンモートサイクル」の称呼と、本願商標の「インディアンモーターサイクル」の称呼とを比較すると、両者は、長音を含めて12音と13音という比較的長い音数からなり、前半部の「インディアンモー」の音と後半部の「サイクル」の音を共通にし、比較的聴取し難い中間において「ト」と「ター」の音を異にするのみである。しかも、相違する「ト」の音と「ター」の音は同行に属する同質音に長音を伴っているかどうかという差異にすぎず、この差異が全体に及ぼす影響はわずかなものというべきであって、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の音感、音調が近似したものとなり、彼此相紛らわしいものである。 引用商標から生ずるのが、「インディアンモートサイクル」でなく、「インディアンモトサイクル」の称呼であるとしても、この称呼と本願商標から生ずる「インディアンモーターサイクル」の称呼とを比較すると、両者は、比較的聴取しにくい中間における「モト」の音と「モーター」の音の差異でしかなく、相違する「モ」と「モー」の音は、後者が「モ」の長音を伴っているかどうかの微差であり、「ト」と「ター」の音は、同行に属する同質音で長音を伴っているかどうかの差異にすぎないため、近似した音感、音調をもって聴取されるというべきであるから、やはり、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の音感、音調が近似し、彼此相紛らわしいものとなるのである。 3 取消事由3(全体的観察の懈怠)について (1) 商標の類否判断に当たって、比較される両商標を全体的に観察し、外観、 称呼、観念を総合的に対比する、いわゆる全体的観察をすべきことはもとよりのことである。しかし、本願商標と引用商標とは、全体の外観において相違するとしても、前述したとおり、その称呼において彼此相紛らわしいものであり、このように、称呼において類似する以上、全体として出所の混同のおそれのある類似する商標となるのである。 (2) のみならず、両商標は、むしろ、外観においても類似するというべきである。すなわち、引用商標は、その構成中の「Indian Motocycle」の文字部分が自他商品の識別力を有する要部となり得るものであって、この文字部分と本願商標とを外観の観点から対比するとすれば、両者は、小文字と大文字の相違があるとしても、その綴りが「Motocycle」と「MOTOR CYCLE」における「R」の文字の有無という差異を有するのみで他の構成文字をことごとく同じくすることからして、一見して直ちにその差異を判別し難く、彼此相紛らわしいものである。 |
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当裁判所の判断
1 取消事由1(引用商標の称呼認定の誤り)について (1) 引用商標が、いずれも、別紙(2)のとおり、インディアン図形等及びその下に「Indian Motocycle Co.,Inc.」との筆記体の欧文字から成るものであることは、当事者間に争いがない。 引用商標が、視覚上、上段部のインディアン図形等と下段部の「Indian Motocycle Co.,Inc.」の欧文字とに明確に分離して看取され得るものであることは、引用商標の構成自体で明らかである。 下段部の「Indian Motocycle Co.,Inc.」をみると、この語句は、それぞれ所定の意味を有する「Indian」、「Moto」、「cycle」、「Co.,Inc.」の英語から構成されている。しかし、我が国における英語の普及度からみて、上記語句に接する多くの一般取引者・需要者において、「Co.,Inc.」は株式会社又はこれに類する組織を意味する英文字であると認識し、その前の「Indian Motocycle」を社章であると認識し得るものであるから、「Indian Motocycle Co.,Inc.」の語句は、これを全体として把握し、認識し、称呼するとともに、「Co.,Inc.」を除く「Indian Motocycle」の部分を一まとまりの語句として把握し、認識し、称呼することが十分にあり得るものというべきである。 そうすると、引用商標から、下段部の「Indian Motocycle Co.,Inc.」の欧文字に相応して、「インディアンモトサイクルシーオーインク」又は「インディアンモトサイクルカンパニーインク」の称呼を生ずるほか、「インディアンモトサイクル」の称呼をも生ずるものと認められる。 この点について、被告は、「Motocycle」につき、全体として「モートサイクル」と発音されることも決して少なくない旨主張する。しかし、本件全証拠によってもこれを認めることはできない。 (2) 原告は、引用商標の下段部は、要部とはいえない付記的部分で、ここより生ずる称呼が引用商標全体としての識別能力に何らの影響をも与えるものではないとして、これを前提に、引用商標は、上段部が識別力の中心をなしており、この上段部から「インディアン」の称呼のみが生ずる旨主張する。 しかしながら、上記認定のとおり、引用商標の上段部のインディアン図形等と下段部の「Indian Motocycle Co.,Inc.」の欧文字とは、視覚上、分離して看取され得るものであり、その構成からみて、あえていえば上段部の方が目立つとみることは可能であるとしても、下段部が単なる付記的部分にとどまるとはいえないことが明らかであるから、原告の主張は、前提において既に誤っているといわざるを得ない。 また、原告は、「Indian Motocycle Co.,Inc.」が商標権者の商号と異なっていることを根拠として、引用商標中の「Co.,Inc.」の欧文字は、単に「株式会社」等を表す略語と認識されないから、「Indian Motocycle」と「Co.,Inc.」とは一体のものとして認識される旨主張する。 しかしながら、たとい、「Indian Motocycle Co.,Inc.」が引用商標の商標権者の商号とは異なっているとしても、引用商標の称呼の認定のうえで考慮されるべきは、一般取引者・需要者が、引用商標をどのように把握し認識するかであって、その認定に際して、「Indian Motocycle Co.,Inc.」の商標権者の商号となっているかどうかは、一般的には関係がないことということができる。そして、「Indian Motocycle Co.,Inc.」が引用商標の商標権者の商号とは異なるとすれば、「Indian Motocycle」と「Co.,Inc.」とは一体のものとしてのみ認識される、と考えさせる特別の事情は、本件全証拠を検討しても、見出すことができない。 さらに、原告は、引用商標は、約50年前に解散したインディアン社が使用していた著名な社章的商標であったものであるから、引用商標からは、インディアン社の法人商標との観念を生ずることになり、「Indian Motocycle」と「Co.,Inc.」とは分離されることなく、一体のものとして認識される旨主張する。 しかしながら、仮に、原告主張のとおり、引用商標から、インディアン社の法人商標との観念を生ずることがあるとしても、「Co.,Inc.」の欧文字が「株式会社」等を表す略語として認識されることには変わりがないから、上記事実から、必ず、「Indian Motocycle」と「Co.,Inc.」とは分離されることなく、一体のものとして認識されることにならないことは、論ずるまでもないことである。 原告の主張は失当というほかない。 2 取消事由2(類否判断の誤り)について (1) 本願商標が、「INDIAN MOTOR CYCLE」の欧文字を横一列に書して成るものであることは、当事者間に争いがない。 本願商標からは、「INDIAN MOTOR CYCLE」の欧文字に相応して、「インディアンモーターサイクル」の称呼が生ずることが明らかである。 一方、前記認定のとおり、引用商標からは、「インディアンモトサイクルシーオーインク」又は「インディアンモトサイクルカンパニーインク」の称呼を生ずるほか、「インディアンモトサイクル」の称呼をも生ずるものであるから、本願商標と対比すると、本願商標においては、「MOTOR」に相応して「モーター」の称呼となるのに対し、引用商標においては、「Moto」に相応して「モト」の称呼となる点で相違し、その余はすべて共通しているものである。 そして、相違する称呼のうち「モー」と「モ」の音は、単に長音を伴っているかどうかで相違するにすぎず、「ター」と「ト」の音は、長音を伴っているかどうかで相違するものの、いずれもタ行に属する同質音で他に相違はなく、本願商標及び引用商標を、それぞれ、一連に称呼するとき、両者は、全体の音感、音調が近似した紛らわしいものとなることが明らかである。 (2) 原告は、本願商標中の「MOTOR」は、「モーター」と比較的冗長な発音であるのに対し、引用商標中の「Moto」は、「モト」と歯切れのよい発音がされることから、両称呼は全体の音感、音調を著しく異にする旨主張する。しかし、「モーター」と「モト」の相違のみにより、両商標全体の称呼に、音感、音調の著しい差が生まれることはあり得ない。原告の主張は、採用できない。 (3) そうすると、本願商標と引用商標とは、指定商品を共通にし、少なくとも称呼において共通しているから、後述するように、当該商品について商品の出所の混同をきたすおそれはないと考えさせる特別の事情が存在すると認められる場合を除いて、出所の混同を生ずるおそれがあるものと認めるべきである。 3 取消事由3(全体的観察の懈怠)について 商標の類否の判断の結論が、最終的には、対比される商標を全体的に観察した結果として導き出されなければならないものであることは、原告主張のとおりである。しかしながら、本願商標と引用商標とは、前述したとおり、少なくとも称呼において共通しており、そうである以上、称呼において共通していても、当該指定商品について商品の出所の混同をきたすおそれはない、と考えさせる特別の事情が認められる場合を除いて、たとい、外観や観念に相違があるとしても、出所の混同を生ずるおそれがあるものと認めるべきである。取引者・需要者が、外観や観念を離れて称呼のみに基づいて行動することが一般的にいえば十分あり得るものであるからである。ところが、上記特別の事情は、本件全証拠によっても認めることができない。 審決が、称呼において類似する以上、全体として出所の混同のおそれのある類似する商標であると判断したことは、審決書の「本願商標と引用商標とは、外観において相違し、観念上比較すべくもないものであるとしても、上記称呼において相紛らわしい類似の商標といわなければならない。」(3頁5行〜7行)と説示しているところから明らかである。したがって、審決は、当該指定商品について商品の出所の混同をきたすおそれはないと考えさせる特別の事情が存在するかどうかについて認定判断しておらず、これは、審決の瑕疵というべきである。しかしながら、この瑕疵が審決の結論に影響を及ぼすものでないことは、上述したところに照らして明らかである。 4 そうすると、原告主張の審決取消事由は、いずれも理由がないことが明らかであり、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。そこで、原告の本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 山下和明 |
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裁判官 | 山田知司 |
裁判官 | 宍戸充 |