関連審決 | 審判1994-4864 |
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関連ワード | 指定商品 / 混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) / 4条1項15号 / 外観(外観類似) / 出所の混同 / 使用許諾 / 継続 / |
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事件 |
平成
11年
(行ケ)
333号
審決取消請求事件
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原告 有限会社グッド・エンタープライズ代表者代表取締役 A 訴訟代理人弁護士 飯塚孝 同 荒木理江 同 弁理士 B 被告 特許庁長官C 指定代理人 D 同 E 被告補助参加人 ザ ポロ/ローレンカンパニー リミテッド パートナーシップ 代表者 F 訴訟代理人弁理士 G 同 H 同 I |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2000/03/29 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた判決
1 原告 特許庁が、平成6年審判第4864号事件について、平成11年8月9日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告 主文と同旨 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成3年5月30日、別添審決書写し別紙(1)記載の構成よりなる商標(以下「本願商標」という。)につき、指定商品を平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表による第17類「被服(運動用特殊被服を除く。)、 布製身回品(他の類に属するものを除く。)、寝具類(寝台を除く。)」として商標登録出願をした(商願平3ー56119号)が、平成6年2月18日に拒絶査定を受けたので、同年3月15日、これに対する不服の審判請求をした。 特許庁は、同審判請求を平成6年審判第4864号事件として審理したうえ、平成11年8月9日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、 その謄本は、同年9月8日、原告に送達された。 2 審決の理由 審決は、別添審決書写し記載のとおり、同審決書写し別紙(2)記載の構成よりなる商標(以下「引用商標」という。)が、Jのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用するものとして遅くとも本願出願前までにはわが国において取引者・需要者間に広く認識され、周知・著名な商標に至っていたものと認められ、その状態は現在においても継続しているところ、本願商標は、外観的に見た場合、引用商標と主たる構成要素において共通にするものであるから、これをその指定商品である被服等に使用した場合には、同商品について周知・著名な引用商標を想起ないしは連想するときが少なくなく、該商品がJ又は同人と組織的若しくは経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、出所の混同を生じるおそれがあるから、本願商標が商標法4条1項15号に該当するとして本願を拒絶した原査定は取り消すべき限りでないとした。 |
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原告主張の審決取消事由の要点
1 審決は、本願商標をその指定商品である被服等に使用した場合に、出所の混同を生じるおそれがあるものと誤って判断した結果、本願商標が商標法4条1項15号に該当するとの誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されなければならない。 2 取消事由(15号該当判断の誤り) (1) 引用商標は、顔も馬体も左向きの馬にまたがったポロプレーヤーが右に身体を立ち上げている状態の図形のみからなる構成の商標であるが、「ポロ」は、4人1組で行う馬上球技の名称として広く知られているものであり、また、審決が、 引用商標の周知・著名性の認定(審決書4頁6行〜7頁17行)において掲記した各刊行物に記載された商標は、「POLO」、「POLO BY RALPH LAUREN」、「ポロ・ラルフローレン」等の文字からなる構成であって、引用商標ではないか、あるいは引用商標に係る図形とともに「POLO」、「POLO BY RALPH LAUREN」等の文字が用いられた構成よりなるものである。 そうすると、馬にまたがり、ポロ競技をしている競技者の図形が、直ちに、ラルフ・ローレンの著名な商標であるということはできない。 (2) 本願商標は、馬体が右向き、顔が左向きとなった馬にまたがったポロプレーヤーが、下に屈み、今にもボールをヒットしようとしている状態の図形からなる構成の商標であって、上記のとおり、顔も馬体も左向きの馬にまたがったポロプレーヤーが右に身体を立ち上げている状態の図形のみからなる構成の引用商標と構成を異にするものであるところ、様々な状態の、馬にまたがりポロ競技をしている競技者の図形を有してなる商標について設定登録がされていること(甲第6号証の1〜36)からも明らかなように、過去の特許庁の実務における、ポロプレーヤーの図形における外観上の差異についての審査の基準の範囲は極めて狭いものであったのであり、本願商標について、これを指定商品に使用したとしても、ラルフ・ローレンと何らかの関係を有する商品であるかのように出所の混同を生じるおそれはない。 なお、商標の登録出願に対し、商標法4条1項15号に該当するとして拒絶査定をする場合には、出願に係る商標が、査定時(審決時)のみならず、出願時においても同号に該当しなければならないのである(同条3項)から、本願商標が同条1項15号に該当するとした審決は、過去の実務例に反するものであり、その判断は誤りというべきである。 |
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被告の反論の要点
1 審決の認定・判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。 2 取消事由(15号該当判断の誤り)について (1) 昭和53年7月20日発行の「男の一流品大図鑑」(乙第1号証)、昭和58年9月28日発行の「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」(乙第2号証)、昭和55年4月15日発行の「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」(乙第3号証)、昭和57年1月10日発行の「月刊アパレルファッション2月号別冊海外ファッション・ブランド総覧」(乙第4号証)、昭和63年10月29日付日経流通新聞(乙第5号証)等の刊行物によれば、審決が認定したとおり、 米国在住のデザイナーであるJが、1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、1968年にポロ・ファッションズ社を設立して、ネクタイ、シャツ、セーター、靴、かばん等のデザインをはじめ、トータルな展開を図ってきたこと、同人は、1971年には婦人服デザインに進出し、また、1970年と1973年に「コティ賞」を受賞したほか、数々の賞を受賞し、1974年には映画「華麗なるギャツビー」の主演俳優Kの衣装デザインを担当して、米国を代表するデザイナーとしての地位を確立したこと、その頃から、同人の名はわが国服飾業界にも広く知られるようになり、そのデザインに係る1群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字とともに「by Ralph Lauren」の文字及び引用商標の各標章が用いられ、これらは「ポロ」の略称でも呼ばれていること、わが国では、昭和51年に西武百貨店が、ポロ・ファッションズ社から使用許諾を受けて、昭和52年よりJのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の、昭和53年から婦人服の輸入販売を開始したことが認められる。 また、Jのデザインに係る紳士服、紳士用品が、前掲「男の一流品大図鑑」(乙第1号証)、「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」(乙第2号証)のほか、昭和55年11月20日発行の「男の一流品大図鑑’81年版」(乙第6号証)、昭和55年11月15日第二刷発行の「世界の一流品大図鑑’80年版」(乙第7号証)、昭和56年6月20日第二刷発行の「世界の一流品大図鑑’81年版」(乙第8号証)、昭和53年9月20日発行の「別冊チャネラー ファッション・ブランド年鑑’80年版」(乙第9号証)、昭和60年5月25日発行の「流行ブランド図鑑」(乙第10号証)等の刊行物において、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」等の表題の下に紹介されていることも、審決の認定したとおりである。 そして、これらの事実に基づけば、引用商標が被服類等において、本願出願前に周知・著名な商標であったことは明らかであるところ、本願商標と引用商標とは、ともに馬にまたがりポロ競技をしている競技者を描いたものであるから、本願商標を指定商品に使用するときは、引用商標を想起ないし連想することが少なくなく、出所の混同のおそれがあるものであり、本願商標が商標法4条1項15号に該当するとした審決の認定判断に誤りはない。 (2) 原告は、様々な状態の、馬にまたがりポロ競技をしている競技者の図形を有してなる商標について設定登録がされていると主張するが、それらの先登録例は、引用商標との関係のみでいえば、引用商標が周知・著名性を獲得した時期と、 これらの先登録例に係る登録出願時期との関係で、当該各先登録商標が商標法4条1項15号に該当するかどうかが、個別、具体的に判断されたものであり、これら先登録例が存在することのみによって、本願商標が同号に該当することを否定することはできず、また、本願商標についての同号該当性の判断が先登録例に拘束されるものでもない。 |
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当裁判所の判断
1 取消事由(15号該当判断の誤り)について (1) 審決の挙示する昭和53年7月20日発行の「男の一流品大図鑑」(乙第1号証)、昭和58年9月28日発行の「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」(乙第2号証)、昭和55年4月15日発行の「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」(乙第3号証)、昭和59年9月25日発行の「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」(乙第17号証)、昭和63年10月29日付日経流通新聞(乙第5号証)のほか、昭和57年1月10日発行の「月刊アパレルファッション2月号別冊海外ファッション・ブランド総覧」(乙第4号証)の各記載及び弁論の全趣旨によれば、「アメリカ合衆国在住のデザイナーであるJは1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社・・・を設立、ネクタイ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインをはじめ、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服デザインにも進出し、 『コティ賞』を1970年と1973年の2回受賞したのをはじめ、数々の賞を受賞した。1974年に映画『華麗なるギャツビー』の主演俳優Kの衣装デザインを担当したことから、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。その頃から、その名前は我が国服飾業界においても知られるようになり、そのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された『Polo』の文字と共に『by RALPH LAUREN』の文字及び『馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形(注、引用商標)』・・・の各商標が用いられ」(審決書4頁12行〜5頁11行)たこと、 「我が国においては西武百貨店が昭和51年にポロ社(注、ポロ・ファッションズ社)から使用許諾を受け同52年からJのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の、同53年から婦人服の輸入、製造、販売を開始したこと」(同5頁19行〜6頁4行)が認められる。 また、審決の挙示する前掲「男の一流品大図鑑」(乙第1号証)、「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」(乙第2号証)には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字に「by RALPH LAUREN」又は「by Ralph Lauren」の文字を併記した商標とともに引用商標を掲記して、ポロ・ファッションズ社の販売又はJのデザインに係る被服等に関する記事が掲載されており、「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」には、「マークの由来」として、引用商標につき「ヨーロッパ上流階級のスポーツのポロ競技をデザイン化して使っている。彼(注、J)のファッションイメージとぴったり一致するため彼のトレードマークとして使用しているもの。」との記載がある。さらに、昭和54年5月発行の「世界の一流品大図鑑’79年版」(乙第19号証)、昭和53年9月20日発行の「別冊チャネラー ファッション・ブランド年鑑’80年版」(乙第9号証)、昭和55年11月20日発行の「男の一流品大図鑑’81年版」(乙第6号証)、昭和55年11月15日第二刷発行の「世界の一流品大図鑑’80年版」(乙第7号証)、「MEN'S CLUB」昭和55年12月号(乙第20号証)、昭和56年6月20日第二刷発行の「世界の一流品大図鑑’81年版」(乙第8号証)、昭和60年5月25日発行の「流行ブランド図鑑」(乙第10号証)、前示「月刊アパレルファッション2月号別冊海外ファッション・ブランド総覧」(乙第4号証)には、「POLO」、「Polo By Ralph Lauren」、「ポロ」等の各商標を掲記又は使用して、ポロ・ファッションズ社の販売又はJのデザインに係る被服等及び眼鏡に関する記事又はそれらの広告が掲載されている。 これらの事実によれば、引用商標は、前示「Polo」の文字に「by RALPH LAUREN」又は「by Ralph Lauren」の文字を併記した商標、「POLO」、「Polo By Ralph Lauren」、「ポロ」等の各商標とともに、ポロ・ファッションズ社の販売又はJのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用するものとして、本願出願当時、 わが国において周知・著名となるに至っていたものと認められ、また、その状態は現在まで継続していることが推認される。 しかして、本願商標と引用商標には、その構成に係る図形に原告主張のような相違があるが、ともに、馬に乗った一人のポロ競技のプレーヤーの図形のみからなるものである点で共通し、前示の引用商標の周知・著名性に照らせば、本願商標をその指定商品中の被服に使用した場合には、これに接する取引者・需要者において、引用商標を想起し、該商品が、J又は同人と組織的若しくは経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認することが十分に予想されるものといわざるを得ない。 そうすると、本願商標が商標法4条1項15号に該当するとした審決の判断に誤りはない。 (2) 原告は、様々な状態の、馬にまたがり、ポロ競技をしている競技者の図形を有してなる商標について設定登録がされていると主張するが、原告の挙示する商標公報(甲第6号証の1〜34、同号証の36)及び商標検索の結果(同号証の35)に掲記された各商標のうち、引用商標及び本願商標と同様、馬に乗った一人のポロ競技のプレーヤーの図形のみからなる構成のものは、3例(甲第6号証の9、 18、26)のみであり、これらの各商標について設定登録がなされたとしても、 本願商標が商標法4条1項15号に該当するとの判断を直ちに左右するものということはできない。 2 以上のとおりであるから、原告主張の審決取消事由は理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって、原告の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、66条を適用して、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 田中康久 |
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裁判官 | 石原直樹 |
裁判官 | 清水節 |