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関連審決 審判1995-3593
関連ワード 指定商品 /  周知性 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項10号 /  4条1項15号 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  出所の混同 /  継続 / 
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事件 平成 11年 (行ケ) 299号 審決取消請求事件
原告 株式会社ハスキー代表者代表取締役 【A】
訴訟代理人弁理士 【B】
被告特許庁長官 【C】
指定代理人 【D】
同 【E】
同 【F】 補助参加人(被告)ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナー シップ 代表者 【G】
訴訟代理人弁理士 【H】
同 【I】
同 【J】
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2000/02/01
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成7年審判第3593号事件について平成11年7月23日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、「POLOTEAM」との欧文字を横書きしてなり、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く。) かさ つえ これらの部品および附属品」を指定商品とする商標(以下「本願商標」という。)について、平成2年5月10日、商標登録出願(平成2年商標登録願第51576号)をしたが、平成6年8月3日(平成7年1月27日発送)に拒絶査定を受けたので、平成7年2月22日、拒絶査定不服の審判請求をした。特許庁は、これを平成7年審判第3593号事件として審理した結果、平成11年7月23日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、同年8月18日、その謄本を原告に送達した。
2 審決の理由 審決の理由は、別添審決書の理由の写しのとおりである。要するに、本願商標が、【K】のデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する周知の商標、すなわち、横長四角形中に記載された「Polo」の文字からなる商標、「by RALPH LAUREN」の文字からなる商標、馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形からなる商標(以下、これらを「ポロ商標」と総称する。)と紛らわしく、指定商品も関連性を有するので、このような事情の下において、本願商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者・需要者は、周知のポロ商標を連想、
想起し、該商品が【K】又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品との間で、出所の混同を生ずるおそれがあるから、本願商標は商標法4条1項15号に該当するというものである。
原告主張の審決取消事由の要点
本願商標は、ポロ商標の「Polo」と称呼外観及び観念を異にし、ポロ商標と紛らわしいものではないので、本願商標をその指定商品に使用しても、【K】や同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品と、その出所において混同を生ずるおそれはないから、本願商標は商標法4条1項15号には該当しない。審決は、この点についての認定判断を誤ったものであって、この誤りは結論に影響を及ぼすものであるから、違法として取り消されるべきである。
すなわち、本願商標である「POLOTEAM」の語は、一連不可分に「ポロチーム」との称呼を生じ、また、この語句を構成する「POLO」と「TEAM」の語を組み合わせたものとは異別の一体不可分の1個の英語として、ポロ競技の一方の対戦相手である球技者集団との観念を生じするものである。一方、ポロ商標の「Polo」の語は、「ポロ」の称呼を生じ、ポロ競技という一般的な観念を生じるものである。したがって、本願商標である「POLOTEAM」の語とポロ商標の「Polo」の語とは、称呼観念が相違するものである。外観が相違することは、当然である。
このように、本願商標は、ポロ商標の「Polo」と称呼外観及び観念を異にしているので、本願商標から「ポロ」を想起し、ポロ商標を連想することはなく、
したがって、本願商標をその指定商品に使用しても、【K】又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品との間で、出所の混同を生ずるおそれはない。
被告の反論の要点
審決の認定判断は、正当であり、取り消されるべき理由はない。
我が国では、ポロ競技は、馴染みが薄く、本願商標の指定商品に係る需要者においては、「ポロ競技」がチーム構成で行われることまで知られているとは認め難いから、「POLOTEAM」の語句が一連に称呼されるなどとは考えられない。また、「POLOTEAM」と一連で表現されることがあるとしても、「ポロ競技」の意味を有する「POLO」の語と、「TEAM」の語とを結合した言葉と認識されるとみるのが自然であって、これら2語の有する意味を離れて別の意味合いを看取させるものではないというべきである。
ポロ商標は、【K】のデザインに係る被服類及び眼鏡類について使用する商標として、遅くとも本願商標の登録出願時には既に取引者・需要者間に広く認識されていたものであること、本願商標の指定商品である「はき物(運動用特殊ぐつを除く。) かさ つえ これらの部品および附属品」と、ポロ商標が使用されている被服類及び眼鏡類とは、共にファッションに関連する商品であり、統一ブランドの下に綜合的にファションをまとめようとする昨今にあっては、少なからぬ関連性を有するものであることからすれば、本願商標の「POLOTEAM」については、
これに接する取引者・需要者は、ポロ商標を構成する「Polo」の文字部分に強く印象付けられ、周知となっているポロ商標を連想、想起するとみるのが自然である。
したがって、「POLOTEAM」からポロ商標を連想することはないとする原告の主張は失当である。
当裁判所の判断
1 まず、ポロ商標の周知性について検討する。
(1) 弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。
(イ) アメリカの服飾等のデザイナーであった【K】は、1968年(昭和43年)、ポロ・ファッションズ社(以下「ポロ社」という。)を設立して、ネクタイ、スーツ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインを手がけ、1970年と1973年の2回にわたり「コティ賞」を受賞するなど数々のデザインに関する賞を受賞し、1974年(昭和49年)には、映画「華麗なるギャッツビー」の主演男性俳優の衣装のデザインを担当して、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。
(ロ) ポロ社は、【K】のデザインに係る一群の商品についてポロ商標を使用し、
これが【K】のデザインを示す商標として世界的に周知となった。
(ハ) 我が国の服飾業界では、昭和49年ころから【K】の名前が知られるようになった。西武百貨店は、昭和52年ころから【K】のデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等、同53年から【K】のデザインに係る婦人服を、それぞれ輸入、製造、販売するようになり、本願商標の登録出願前、既に、各種雑誌等において、【K】のデザインに係る紳士服、紳士靴、婦人服、サングラス等の商品が、一流ブランド品として、ポロ商標が付されて紹介されていた。
(ニ) ポロ商標は、我が国でも、従前から「ポロ」とも称され、上記のとおり、
【K】のデザインに係る紳士服、紳士靴、婦人服、サングラス等に使用されて、現在に至っている。
(2) 以上の事実によれば、本願商標の商標登録出願時までには、ポロ商標は、その略称である「ポロ」とともに、いずれも紳士服、婦人服、眼鏡等について【K】のデザインに係る商品に付される商標として周知となっていたということができる。
2 上記認定の事実を基礎として、本願商標をその指定商品に使用した場合に、他人の業務に係る商品との間で出所の混同を生ずるおそれがあったかどうかについて検討する。
(1) 本願商標が、英語の「POLO」と「TEAM」の2語を組み合せて「POLOTEAM」とした語句であることは、それ自体で明らかである。
乙第1号証(1998年(平成10年)株式会社研究社発行の「研究社新英和大辞典」)、乙第2号証(昭和60年1月10日株式会社小学館発行の「小学館ランダムハウス英和大辞典」)、乙第3号証(1984年(昭和59年)株式会社研究社発行の「リーダーズ英和辞典」)及び弁論の全趣旨によれば、「TEAM」の語は、「行動を共にする人間の集り、仲間、組、団、(特に競技・ゲームの)チーム」などといった意味合いの、我が国で極めてよく知られている英語であるのに対して、「POLO」の語は、ポロ競技等を意味する英語であることが認められる。
そうすると、「POLOTEAM」の語句は、「POLO」の「TEAM」、換言すれば、「ポロ競技のチーム」といった意味合いの観念を生ずるものと認められる。
甲第3号証(1988年(昭和63年)9月10日成美堂出版発行の「スポーツ用語辞典」(改訂新版))及び乙第7号証(1998年(平成10年)1月17日付け読売新聞)によれば、ポロ競技は、大正時代に、英国大使館員によってはじめて我が国に伝えられたものの、全く普及せず、1998年になっても、競技人口が30人程度という状態であったことが認められ、日本人一般にとって極めて馴染みの薄いスポーツであることが明らかである。
(2) ポロ商標が付される商品は、上記認定のとおり、紳士服、紳士靴、婦人服、サングラス等ファッション(装身に関する流行)に関係するものである。一方、本願商標の指定商品は、「はき物(運動用特殊ぐつを除く。) かさ つえ これらの部品および附属品」であるから、ファッションに関係するものであり、かつ、少なくとも紳士靴についてポロ商標が使用されている商品と共通しているものである。
(3) そうすると、本願商標の登録出願時において、本願商標がその指定商品である「はき物(運動用特殊ぐつを除く。) かさ つえ これらの部品および附属品」に使用された場合には、本願商標に接した需要者は、これが上記のとおり「POLO」という語を含む語句であることから、「ポロ」の観念を想起し、これを通じて、本願商標が付される商品について、【K】又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように誤解し、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
そして、本願商標の登録出願後、審決時までに、事情の変更があったと認めるに足りる証拠はないから、審決時においても、商品の出所の混同のおそれは、なお継続していたものというべきである。
(4) 原告は、本願商標である「POLOTEAM」の語は、一連不可分に「ポロチーム」との称呼を生じ、また、この語句を構成する「POLO」と「TEAM」の語を組み合わせたものとは異別の一体不可分の1個の英語として、ポロ競技の一方の対戦相手である球技者集団との観念を生ずるとの前提で、ポロ商標の「Polo」と比べて、称呼外観及び観念を異にしているので、本願商標から「ポロ」を想起し、ポロ商標を連想することはない旨主張する。
しかし、仮に原告主張のとおり、1個の英語として、ポロ競技の一方の対戦相手である球技者集団との観念を生ずることがあるとしても、前記のとおり、ポロ競技は、日本人一般にとって極めて馴染みの薄いスポーツであったものであること、ポロ商標が周知であったことを考慮すると、本願商標の構成中の「POLO」の語に注目し、「ポロ」の観念を想起し、ポロ商標を連想することになることに変わりがないというべきである。
なお、本件で問題としているのは、本願商標が商標法4条1項15号に該当するかどうかであって、同法4条1項10号に該当するかどうかではない以上、本願商標がポロ商標の「Polo」に類似するかどうかは、本願商標がその指定商品に使用された場合に、【K】又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品との間で出所の混同を生ずるおそれがあるかどうかを認定するために考慮される事実の一つにすぎないのであるから、前記認定のとおり、本願商標をその指定商品に使用した場合に、【K】又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように誤解され、その出所について混同を生ずるおそれがあると認められる以上、さらに、本願商標がポロ商標の「Polo」に類似するかどうかを検討する必要がないことは明らかである。
3 以上のとおりであるから、原告主張の取消事由は理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟
7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 山田知司
裁判官 宍戸充