関連審決 | 審判1995-6806 |
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関連ワード | 識別力 / 識別機能 / 指定商品 / 普通名称(3条1項1号) / 周知性 / 混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) / 4条1項15号 / 顧客吸引力(グッドウィル) / 結合商標 / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 取引の実情 / 出所の混同 / 国内 / 使用許諾 / 継続 / |
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元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
11年
(行ケ)
253号
審決取消請求事件
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原告 株式会社ヘブンコーポレーション代表者代表取締役 【A】 訴訟代理人弁理士 【B】 被告 特許庁長官【C】 指定代理人 【D】 同 【E】 同 【F】 被告補助参加人(以下「補助参加人」という。) ザ ポロ/ローレンカンパニー リミテッド パートナーシップ 代表者 【G】 訴訟代理人弁理士 【H】 同 【I】 同 【J】 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2000/01/27 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
特許庁が平成7年審判第6806号事件について平成11年6月11日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とし、参加によって生じた費用は補助参加人の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
主文と同旨の判決 |
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前提となる事実(当事者間に争いのない事実)
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成4年7月24日、「PALM SPRINGS POLO CLUB」の欧文字と「パームスプリングスポロクラブ」の片仮名文字とを上下二段に横書きした構成よりなり、指定商品を商標法施行令別表第25類「洋服,コ-ト,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」とする商標(以下「本願商標」という。)について商標登録出願 (平成4年商標登録願第145378号)をしたが、平成7年3月3日付け拒絶査定を受けたので、同月28日拒絶査定不服の審判を請求した。 特許庁は、この請求を平成7年審判第6806号事件として審理した結果、平成11年6月11日、本件審判の請求は成り立たない旨の審決をし、その謄本は平成11年7月7日原告に送達された。 2 審決の理由 審決の理由は、別紙審決書の理由写し(以下「審決書」という。)に記載のとおりであり、本願商標をその指定商品に使用する場合には、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「POLO」、「ポロ」の文字に注目し、周知になっている引用商標(米国の著名なデザイナー「【K】」(【K】)がその取扱いに係る被服等の商品について使用している商標)を連想、想起し、ラルフ・ローレン若しくはザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ、又はこれらと組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのようにその商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、本願商標は、商標法4条1項15号に該当し、商標登録をすることができないと判断した。 |
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審決の取消事由
1 審決の認否 (1) 審決の理由1(本願商標)、同2(原審における査定の理由)及び同3(請求人(原告)の主張)は認める。 (2) 同4(当審(審決)の判断)のうち、(1)は認め、その余は争う。 2 取消事由 審決は、「本願商標は、前記構成から成るものであるところ、全体として既成の観念を示すものとして一般に広く認識されているものとはいい難いものである。・・・そうとすると、本願商標をその指定商品に使用する場合には、前記実情からして、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「POLO」、「ポロ」の文字に注目し、前記周知になっているラルフ・ローレンに係る引用商標を連想、想起し、ラルフ・ローレン、若しくは、ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ、又は、これらと組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのようにその商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。」(審決書5頁24行ないし6頁15行)と認定、判断するが、本願商標の構成中に「POLO」、「ポロ」の文字が含まれていることをもって直ちに本願商標と引用商標とは商品の出所について混同を生ずるおそれがあると判断したのは、誤りである。 (1) 引用商標の周知性の程度 まず、引用商標である「POLO」、「ポロ」にさほど強い自他商品識別力を認めることはできない。 (ア) 「POLO」、「ポロ」の語は、ポロ競技を意味する英語である。ポロ競技は、欧米の富裕層を中心に発達したスポーツ競技であって、世界的に庶民層の憧れの対象となっており、我が国においてもその存在は広く知られているものである(甲第2号証)。 (イ) そして、このポロ競技に際してプレイヤーが着用する衿つき半袖シャツは、古くから「POLO SHIRT/ポロシャツ」と称されており、現在では遊び着的な衿つきシャツを広く指称する普通名称になっている(甲第3、第4号証)。また、ポロシャツは、我が国の取引の実際において、「POLO/ポロ」と略称されている(甲第4ないし第7号証、甲第20号証)。 (ウ) ラルフ・ローレンは、我が国において「POLO」の語を「Polo by RALPH LAUREN」あるいは「POLO RALPH LAUREN」として、「RALPH LAUREN」の語と関連づけて長年に亘って商品「被服等」に使用することにより(甲第12号証)、「POLO」「ポロ」の語とラルフ・ローレンとの関連性を一般に強くアピールしている。 (エ) また、現在、我が国において、「POLO」の語を含む結合商標「POLO CLUB」、「WORLD POLO CHAMPIONSHIPS」、「BEVERLY HILLS POLO CLUB」が、それぞれ第三者によって商品「被服等」に使用されており、それぞれ取引者・需要者から高い認知を得ているだけでなく、ラルフ・ローレンに係る「POLO」、「ポロ」とは明確に区別して取引きされているものである(甲第13号証)。 (オ) 以上の事実によれば、我が国において、「POLO」、「ポロ」の語を含む結合商標のすべてについて、直ちにラルフ・ローレンを想起するという関係は成立しないものである。 (2) 引用商標の連想の有無 前記(1)のとおり、ラルフ・ローレンに係る引用商標である「POLO」、「ポロ」にさほど強い自他商品識別力を認めることはできない上に、本願商標の構成からすれば、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が本願商標中の「POLO」、「ポロ」の文字部分に注目して引用商標を連想、想起することはない。 (ア) 外観 本願商標を構成する上段の欧文字は、「PALM」、「SPRINGS」、「POLO」、「CLUB」の各英単語を同一の書体で表し、 等間隔にて横書きしたものであり、いずれも日本人にとってもなじみの深い簡潔な英単語である。特に、「POLO」の語は、前記のとおり、ポロ競技を意味する既成の英単語として広く知られており、また、ポロシャツの略称としても広く一般的に用いられているものである。 また、本願商標を構成する下段の片仮名文字は、片仮名「パームスプリングスポロクラブ」の文字を同書・同大・等間隔にて横書きしたものである。 したがって、本願商標の外観構成上、取引の実際において、「POLO」、「ポロ」の文字部分が独立して自他商品の識別機能を発揮する部分として分離抽出される要素は全く存在しない。 (イ) 観念 ポロ競技は、欧米の富裕層が楽しむスポーツ競技であることから、高級イメージがあり、本願商標は、かかる「ポロ競技」を意味する「POLO」、「ポロ」という語のもつ高級イメージを利用したネーミングである。 本願商標は、世界的に有名な米国の保養地の名称である「PALM SPRINGS」、「パームスプリングス」の語(甲第19号証)と、「ポロ競技のクラブ」を意味する「POLO CLUB」、「ポロクラブ」の語とを結合した商標である。 欧米には各地にポロ競技のクラブが多数存在しており、ポロクラブの名称に地名を冠した例が多数存在していることから(甲第17、第18号証)、この両語は観念的に密接な関連性を有しているというべきである。 しかも、「POLO」、「ポロ」の語は、ポロシャツの略称としても広く一般的に用いられているものである。 したがって、観念上、本願商標中の「POLO」、「ポロ」の文字部分が独立して自他商品の識別機能を果たすと認識しなければならない要素は全く存在しない。 (ウ) 称呼 前述のとおり、本願商標は、外観構成上一体的に表示されていること、本願商標を構成する各語はいずれも日本人にとってもなじみの深い簡潔な英単語であり、この4者が一体となったからといって、全体の称呼が冗長になるものとも認められないこと、本願商標を構成する各語は観念的にも密接な関連性を有していること、「POLO」、「ポロ」の語はポロシャツの略称として広く一般的に用いられていること等から、本願商標中の「POLO」、「ポロ」の文字部分に相当する「ポロ」の称呼が独立して自他商品の識別機能を果たすと認識しなければならない要素は全く存在しない。 したがって、本願商標からは「パームスプリングスポロクラブ」の一連の称呼のみが生じるとみるのが相当である。 (3) まとめ 以上のとおり、本願商標は、引用商標と商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。 |
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審決の取消事由に対する認否及び反論
1 被告及び補助参加人の認否 原告主張の審決の取消事由は争う。 本件商標が商標法4条1項15号に該当するとした審決の認定、判断に誤りはない。 2 被告の反論 (1) 引用商標の周知性の程度について (ア) アメリカ合衆国在住のデザイナーである【K】は、1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社を設立、 ネクタイ、シャツ、セーター、靴、かばんなどのデザインをはじめ、紳士物全般に拡大し、1971年には婦人服の分野にも進出した。1970年と1973年に服飾業界で最も名誉とされる「コティ賞」を受賞し、1974年に、映画「華麗なるギャツビー」の主演俳優【L】の衣装デザインを担当したことからアメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。この頃から、その名前は我が国の服飾業界においても広く知られるようになり、そのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字とともに「by Ralph Lauren」の文字及び「馬に乗ったポロ競技のプレイヤーの図形」の各標章が使用され、これらは「ポロ」の略称で呼ばれるようになった(株式会社講談社(昭和53年7月20日)発行「男の一流品大図鑑」(乙第1号証)、サンケイマーケティング(昭和58年9月28日)発行「舶来ブランド事典’84 ザ・ブランド」(乙第2号証))。 そして、我が国においては、西武百貨店が昭和51年にポロ・ファッションズ社から使用許諾を受け、昭和52年から【K】のデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の、昭和53年から婦人服の輸入、販売をした(株式会社洋品界(昭和55年4月15日)発行「月刊『アパレルファッション店』別冊、1980年版『海外ファッション・ブランド総覧』」(乙第3号証)、株式会社アパレルファッション(昭和57年1月10日)発行「月刊アパレルファッション2月号別冊 海外ファッション・ブランド総覧」(乙第4号証)、及び昭和63年10月29日付け日経流通新聞の記事(乙第5号証))。 また、【K】のデザインに係る紳士服、紳士用品については、前出「男の一流品大図鑑」、「舶来ブランド事典’84 ザ・ブランド」をはじめ、株式会社講談社(昭和55年11月20日)発行「男の一流品大図鑑’81年版」(乙第6号証)、同社(昭和55年11月15日第2刷)発行「世界の一流品大図鑑’80年版」(乙第7号証)、同社(昭和56年6月20日第2刷)発行「世界の一流品大図鑑’81年版」(乙第8号証)、株式会社チャネラー(昭和53年9月20日)発行「別冊チャネラー ファッション・ブランド年鑑’80年版」(乙第9号証)、株式会社講談社(昭和60年5月25日)発行「FASHION SHOPPING BIBLE'85 流行ブランド図鑑」(乙第10号証)などの書籍において、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ )」 等の表題のもとに紹介されている。 さらに、新聞記事においても(例えば、平成2年11月27日付け、平成3年12月5日付け朝日新聞朝刊;乙第11号証の1及び2)、単に「ポロ」、「ポロのマーク」等として掲載されている。 (イ) さらに、東京高等裁判所 平成3年7月11日判決(平成2年(行ケ)第183号)においても、「我が国において、遅くとも本件商標の登録出願がされた昭和59年までには既に、引用標章(「Polo」)が【K】のデザインに係る被服類及び眼鏡製品を表す標章であるとの認識が、広く需要者及び取引関係者の間に確立していたものということができる。」旨認定されているところである。 (ウ) また、【K】のデザインに係る被服等について使用される標章を模倣した偽物ブランド商品が、昭和63年には我が国において出回っており、その後も同様な事例が後を絶たない。 例えば、平成元年5月19日付け朝日新聞(夕刊;乙第12号証の1)には、「昨年2月ごろから、米国の「ザ・ローレン・カンパニー」社の・・・「Polo」の商標と、乗馬の人がポロ競技をしているマークをつけたポロシャツ・・・を・・・売っていた疑い。」との記事が掲載された。また、平成4年9月23日付け読売新聞(東京版、朝刊;乙第12号証の2)には、「警察庁によると、昨年の全国の商標法違反事件は計五百三件、不正競争防止法事件は七十八件で、三百八人が取り調べを受けた。今年は五月に、アメリカの人気ブランド「ポロ」・・・のロゴ「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」に酷似したマークのTシャツを販売していた大阪の業者が・・・」なる記事が、さらには、平成5年10月13日付け読売新聞(大阪版、朝刊;乙第12号証の3)には、「ポロ競技のマークで知られる米国のファッションブランド「POLO(ポロ)」の製品に見せかけた眼鏡枠を販売・・・」なる記事が掲載され、最近においては、平成11年6月8日付け朝日新聞(夕刊;乙第12号証の4)に、「米国ブランド「ポロ」などのマークが入った偽物のセーターやポロシャツ約三万六千枚を販売目的で所持し、商標権を侵害した。」との記事や平成11年9月9日付け日本経済新聞(乙第12号証の5)において、「ラルフローレン偽物衣類を販売」の見出しのもとに、「・・・団体職員・・・に「ポロ」ブランドの偽物セーター一枚を二千九百円で販売したほか、・・・」との記事が掲載された。 さらに、ザ・ポロ/ローレン社と何らの関係を有しない者(被告人)が、ポロプレイヤーの図形及び「Polo Crocus」よりなる商標等を、無権原で、ポロシャツ等に付して、販売・譲渡のために所持し、ザ・ポロ/ローレン社の登録商標権を侵害したとして起訴された事件において、東京地方裁判所は、「上記被告人の商標は、ザ・ポロ/ローレン社が我が国で商標登録を受けているポロプレイヤーの図形及び「RALPH LAUREN」の文字からなる結合商標に類似する商標であり、被告人の行為は、商標権侵害に当たるものである。」旨の判断をした。 (エ) 上記の事実を総合すれば、【K】のデザインに係る被服等について使用される標章は、「Polo」の文字とともに、「by Ralph Lauren」の文字及び「馬に乗ったポロ競技のプレイヤーの図形」などの各標章であると認められるところ、我が国においては、これら標章を総称して単に「Polo(ポロ)」と略称していたというべきであり、「Polo(ポロ)」の標章は、遅くとも昭和55年頃までには、我が国においては取引者、需要者の間に広く認識されるに至り、強い識別力、顧客吸引力を有しており、その認識の度合いは現在においても継続しているというべきである。 したがって、被服や眼鏡等のファッション関連の商品に「POLO」「ポロ」の文字を使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、【K】のデザインに係る商品であると認識するというべきである。 (オ) これに対して、我が国におけるポロ競技の知名度についてみれば、一般世人が購読すると認められる「スポーツ用語」(株式会社教育社、平成4年11月25日発行;乙第13号証)、「ニュースポーツ百科」(株式会社大修館書店、平成7年9月20日発行;乙第14号証)及び高等学校などの教材に使用される「NEW COLOR SPORTS1995」(一橋出版株式会社、平成7年4月1日発行;乙第15号証)等には、 「ポロ競技」 についての記載はなく、また、平成10年1月17日付け読売新聞(東京、夕刊6頁;乙第16号証)には、「「ポロ」の国内初の競技場が、福岡県粕屋町に建設されることになった」ことに関する記事において、ポロ競技は「日本では競技人ロ約30人の超マイナースポーツ。」との記載があり、上記のような状況からすれば、ポロ競技は、我が国においては、愛好者は極めて少なく馴染みの薄いスポーツである。 原告は、「POLO/ポロ」の語は、我が国においてポロシャツの略称として使用されており、商品「被服」について自他商品の識別機能は高くない旨主張する。確かに、原告が提出した甲第4ないし第7号証によれば、商品「ポロシャツ」が取引の実際において、「POLO」、「ポロ」と略称されている事実が認められるが、これは、【K】の「Polo(ポロ)」標章の著名性に引きずられたものとも考えられる。したがって、原告の上記主張は、【K】のデザインに係る被服、眼鏡等について使用される標章「POLO(ポロ)」の著名性及びファッション関連業界の取引の実情を全く無視したものであり、失当である。 (2) 引用商標の連想の有無について (ア) 前記のように、「Polo(ポロ)」の標章は、我が国においては、【K】のデザインに係る被服等に使用される標章を総称するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されているものであり、被服や眼鏡等のファッション関連分野においては、「Polo(ポロ)」といえば、【K】のデザインに係る被服、眼鏡等について使用される標章を直ちに想起させるものであり、我が国において、「Polo」をはじめ、ラルフ・ローレンの使用する標章を真似た偽物が多数出回っている事実からみても、「Polo(ポロ)」標章は、極めて強い自他商品の識別力、顧客吸引力を有しているものと認められる。 (イ) 一方、本願商標は、原告の提出に係る米国ポロ協会メンバークラブのリスト(甲第18号証)によっても実在の団体を表したものとは認められない。 そして、本願商標は、19字の欧文字と、13字の片仮名文字といった極めて多い文字を一様な大きさで書してなるものであり、これより生ずる「パームスプリングスポロクラブ」の称呼も、13音より構成されているものであるから、外観及び称呼上冗長といえるものである。 (ウ) したがって、本願商標に接する取引者、需要者は、その構成中の著名標章と同一の綴りからなる「POLO」、「ポロ」の文字部分に強く印象付けられ、ラルフ・ローレンの著名標章である「Polo(ポロ)」を連想すると考えるのが自然である。 そうすると、本願商標をその指定商品について使用した場合は、取引者、需要者をしてラルフ・ローレン及びその関連会社の取扱いに係る商品との間に、出所の混同を生じさせるおそれがある。 3 補助参加人の反論 原告は、「POLO CLUB」、「WORLD POLO CHAMPIONSHIPS」、「BEVERLY HILLS POLO CLUB」が、それぞれ第三者によって商品「被服等」に使用されており、引用商標とは明確に区別して取引されている旨主張するが、取引の実際において、消費者は、「POLO CLUB」等の標章を付した商品と補助参加人の商品との混同を来しているものである。 理 由1 引用商標の周知性の程度について (1) 当審(審決)の判断4(1)(審決書3頁15行ないし5頁23行)は当事者間に争いがない。 (2) 上記争いのない事実に、各項に掲記の証拠によれば、次の事実が認められる。 (ア) アメリカ合衆国在住のデザイナーである【K】は、1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社を設立し、 ネクタイ、シャツ、セーター、靴、かばんなどのデザインをはじめ紳士物全般に拡大し、1971年には婦人服の分野にも進出した。【K】は、1970年と1973年に服飾業界で最も名誉とされる「コティ賞」を受賞し、1974年に映画「華麗なるギャツビー」の主演俳優【L】の衣装デザインを担当したことから、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。 この頃から、【K】のデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字が、「by Ralph Lauren」の文字標章や「馬に乗ったポロ競技のプレイヤーの図形」の標章とともに使用されてきた。 (乙第1号証(株式会社講談社(昭和53年7月20日)発行「男の一流品大図鑑」)、乙第2号証(サンケイマーケティング(昭和58年9月28日)発行「舶来ブランド事典’84 ザ・ブランド」、甲第12号証の1ないし26(雑誌、新聞における広告類)) (イ) 我が国においては、西武百貨店が昭和51年にポロ・ファッションズ社から使用許諾を受け、昭和52年から【K】のデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の、昭和53年から婦人服の輸入、販売を始めた。 (乙第3号証(株式会社洋品界(昭和55年4月15日)発行「月刊「アパレルファッション店」別冊、1980年版『海外ファッション・ブランド総覧』」)、乙第4号証(株式会社アパレルファッション(昭和57年1月10日)発行「月刊アパレルファッション2月号 別冊海外ファッション・ブランド総覧」)、乙第5号証(昭和63年10月29日付け日経流通新聞の記事)) (ウ) また、【K】のデザインに係る紳士服、紳士用品については、前記乙第1号証(「男の一流品大図鑑」)、乙第2号証(「舶来ブランド事典’84 ザ・ブランド」)をはじめ、株式会社講談社(昭和55年11月20日)発行「男の一流品大図鑑’81年版」(乙第6号証)、同社(昭和55年11月15日第2刷)発行「世界の一流品大図鑑’80年版」(乙第7号証)、同社(昭和56年6月20日第2刷)発行「世界の一流品大図鑑’81年版」(乙第8号証)、株式会社チャネラー(昭和53年9月20日)発行「別冊チャネラー ファッション・ブランド年鑑’80年版」(乙第9号証)、株式会社講談社(昭和60年5月25日)発行「FASHION SHOPPING BIBLE'85 流行ブランド図鑑」(乙第10号証)などの書籍において、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ )」 等の表題のもとに紹介されている。 さらに、新聞記事においても(例えば、平成2年11月27日付け、平成3年12月5日付け朝日新聞朝刊;乙第11号証の1及び2)、単に「ポロ」、「ポロのマーク」等として掲載されているものがある。 (エ) 他方で、我が国においては近年、【K】のデザインに係る被服等について使用される標章を模倣した偽物ブランド商品が市場に出回っている。 例えば、平成元年5月19日付け朝日新聞(夕刊;乙第12号証の1)には、「昨年2月ごろから、米国の「ザ・ローレン・カンパニー」社の・・・「Polo」の商標と、乗馬の人がポロ競技をしているマークをつけたポロシャツ・・・を・・・売っていた疑い。」との記事が掲載された。また、平成4年9月23日付け読売新聞(東京版、朝刊;乙第12号証の2)には、「警察庁によると、昨年の全国の商標法違反事件は計五百三件、不正競争防止法事件は七十八件で、三百八人が取り調べを受けた。今年は五月に、アメリカの人気ブランド「ポロ」のロゴ「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」に酷似したマークのTシャツを販売していた大阪の業者が・・・」との記事が掲載され、本件商標の出願後のものではあるが、平成5年10月13日付け読売新聞(大阪版、朝刊;乙第12号証の3)には、「ポロ競技のマークで知られる米国のファッションブランド「POLO(ポロ)」の製品に見せかけた眼鏡枠を販売・・・」との記事が掲載され、平成11年6月8日付け朝日新聞(夕刊;乙第12号証の4)に、「米国ブランド「ポロ」などのマークが入った偽物のセーターやポロシャツ約三万六千枚を販売目的で所持し、商標権を侵害した。」との記事や平成11年9月9日付け日本経済新聞(乙第12号証の5)において、「ラルフローレン偽物衣類を販売」の見出しのもとに、「・・・団体職員・・・に「ポロ」ブランドの偽物セーター一枚を二千九百円で販売したほか、・・・」との記事が掲載されている。 これらの事実によれば、遅くとも昭和63年以降、我が国において「Polo」の文字などを使用した偽物ブランド商品が出回っており、それらの報道ではラルフ・ローレンに係る標章が「ポロ」「POLO(ポロ)」と称されているものである。 (オ) ところで、「Polo」の語は、ポロ競技を意味する英語であり、引用商標は、造語商標ではないことは明らかである(甲第2号証の1、2)。 我が国におけるポロ競技の知名度について検討すると、「スポーツ用語」(株式会社教育社、1992年11月25日発行;乙第13号証)、「ニュースポーツ百科」(株式会社大修館書店、1995年9月20日発行;乙第14号証)及び高等学校などの教材に使用される「NEW COLOR SPORTS1995」(一橋出版株式会社、1995年4月1日発行;乙第15号証)等には、「ポロ競技」 についての掲載はなく、また、平成10年1月17日付け読売新聞(東京、夕刊6頁;乙第16号証)には、「「ポロ」の国内初の競技場が、福岡県粕屋町に建設されることになった」ことに関する記事において、ポロ競技は「日本では競技人ロ約30人の超マイナースポーツ。」と記載されていることが認められる。 しかしながら、弁論の全趣旨によれば、「ポロ」がポロ競技を意味することは、 辞書等において説明されていることが認められ(本願商標の出願後のものであるが、甲第2号証の2参照)、さらに、前記のとおり、引用商標「POLO(ポロ)」は「馬に乗ったポロ競技のプレイヤーの図形」の標章とともに使用されてきたことからすると、少なくとも本願商標の出願当時において、「POLO」、「ポロ」が馬に乗ってプレーをするスポーツであるポロ競技を意味することそれ自体は、我が国においても広く知られているものと認められる。 なお、甲第4号証(新・田中千代服飾事典)によれば、このポロ競技に際してプレイヤーが着用する衿つき半袖シャツは、古くから「POLO SHIRT/ポロシャツ」と称されており、現在では遊び着的な衿つきシャツを広く指称する普通名称になっていることが認められるが、本願商標の出願当時、我が国において、ポロシャツが「POLO/ポロ」と略称されていることを認めるに足りる的確な証拠はない。 (カ) また、甲第13号証(「’98ブランド&キャラクター調査」)によれば、現在、我が国において、「POLO」の語を含む結合商標「ポロ クラブ」、「ワールド ポロ チャンピオンシップス」、「ビバリーヒルズ ポロ クラブ」が、 それぞれ第三者によって使用されていることが認められるが、その出願時期や指定商品等を認めるに足りる証拠はなく、これらの商標が引用商標との関係で商標法4条1項15号違反とならないものであると認めることはできない。 (キ) 上記認定の事実を総合すると、被告が主張するとおり、引用商標は、昭和55年頃までには、我が国において【K】のデザインに係る商品に付される商標として取引者、需要者の間に広く認識されるに至り、その強い識別力は現在においても継続しているというべきである。しかしながら、原告が主張するとおり、本願商標の出願当時、「POLO/ポロ」がポロ競技を意味することは我が国においても広く知られていたところである。 したがって、本願商標のように結合商標中に「POLO/ポロ」が含まれている場合、当該商標からラルフ・ローレンに係る引用商標を連想するか否かは、上記の引用商標の強い識別力等を前提にして、個別具体的に判断するほかはない。 (2) 引用商標の連想の有無について (ア) 本願商標は、前記説示のとおり、「PALM SPRINGS POLO CLUB」の欧文字と「パームスプリングスポロクラブ」の片仮名文字とを上下二段に横書きした構成よりなるところ、甲第19号証(研究社新英和大辞典)によれば、「PALM SPRINGS」は、世界的に有名な米国カリフォルニア州南東部の都市で、保養地であることが認められる。そして、弁論の全趣旨によれば、本願商標の出願当時、「PALM SPRINGS」は、その正確な位置等はともかく、米国にある保養地として日本においても広く知られていたことが認められる。 そして、本願商標の出願当時、「POLO/ポロ」がポロ競技を意味することが我が国においても広く知られていたことは、前記のとおりであり、また、「クラブ」が「同じ目的の人々が作った団体」を意味するものと理解されることは、明らかである。 これらの点からすると、本願商標は、その出願当時、その指定商品の取引者、需要者がこれに接した場合、極く自然に、「PALM SPRINGS」にある「ポロ競技のクラブ」を意味するものと認識するものと認められ、ラルフ・ローレンに係る引用商標の周知・著名性を考慮しても、本願商標から、「PALM SPRINGS」にある「ラルフ・ローレンに係るポロ製品の愛好者のクラブ」との観念が生ずるとか、「POLO/ポロ」の部分のみが注目され、直ちに引用商標が連想されるとまで認めることはできない。 (イ) 被告は、本願商標がポロ競技のクラブを連想させない理由として、原告の提出に係る米国ポロ協会メンバークラブのリスト(甲第18号証)によっても実在の団体を表したものとは認められない旨主張するが、本願商標がその指定商品の取引者、需要者によって「PALM SPRINGS」にある「ポロ競技のクラブ」と認識されるために、「PALM SPRINGS POLO CLUB」が実在することが不可欠の前提であると解することはできないところ、前記のとおり、本願商標の出願当時、「PALM SPRINGS」は米国にある保養地として日本においても広く知られていたこと、及びポロ競技が貴族的なスポーツとして受け取られていること(甲第2号証の3及び弁論の全趣旨)からすると、「PALM SPRINGS POLO CLUB」が「PALM SPRINGS」にある「ポロ競技のクラブ」を意味するものと認識されるとみることに何ら影響を及ぼすものではないから、被告の上記主張は採用することができない。 さらに、被告は、本願商標は、19字の欧文字と、13字の片仮名文字といった極めて多い文字を一様な大きさで書してなるものであり、これより生ずる「パームスプリングスポロクラブ」の称呼も、13音より構成されているものであるから、 外観及び称呼上冗長といえるものであるから、「POLO/ポロ」の部分が注目される旨主張する。 しかしながら、本願商標が、前記説示のとおり、「PALM SPRINGS」にある「ポロ競技のクラブ」を意味するものと認識されるものである以上、全体の称呼等が長いからといって、「PALM SPRINGS」の部分が生産地、販売地の場合のように除かれ、「POLO/ポロ」ないし「POLO CLUB/ポロクラブ」の文字のみが注目されると解することはできず、被告の上記主張は採用することができない。 (ウ) まとめ 以上によれば、本願商標をその指定商品に使用する場合に、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「POLO」、「ポロ」の文字にのみ注目し、ラルフ・ローレンに係る引用商標を連想、想起するものとまで認めることはできず、この点の審決の認定、判断は誤りである。そして、この点の認定、判断の誤りが審決の結論に影響することは明らかである。 3 結論 以上によれば、原告の請求は理由があるから、これを認容することとし、主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結の日 平成11年11月25日) |
裁判長裁判官 | 永井紀昭 |
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裁判官 | 塩月秀平 |
裁判官 | 市川正巳 |