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事件 |
平成
15年
(ネ)
1835号
商標権侵害差止請求控訴事件
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控訴人(1審原告) A 同訴訟代理人弁護士 濱崎憲史 同 濱崎千恵子 被控訴人(1審被告) 株式会社アザレインターナショナル 同訴訟代理人弁護士 楠眞佐雄 同 本郷誠 同 田中正和 同 小西輝明 同 野邊寛太郎 同 村岡みち代 被控訴人(1審被告)株式会社アザレインターナショナル補助参加人 C 被控訴人(1審被告)株式会社アザレインターナショナル補助参加人 D 上記両名訴訟代理人弁護士 中田祐児 同 島尾大次 上記中田祐児訴訟復代理人弁護士 川島清嘉 同 川島志保 同 関本和臣 被控訴人(1審被告) 日本コルマー株式会社 同訴訟代理人弁護士 井上隆晴 同 細見孝二 同 井上卓哉 |
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裁判所 | 大阪高等裁判所 |
判決言渡日 | 2005/06/21 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用(当審における補助参加によって生じた費用も含む。)は、控訴人の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。 2 被控訴人日本コルマー株式会社は、原判決別紙商標目録1ないし8及び10ないし12記載の登録商標を、石けん類、香料類、化粧品、歯みがき粉又はその包装に付してはならない。 3 被控訴人株式会社アザレインターナショナルは、石けん類、香料類、化粧品、歯みがき粉又はその包装に原判決別紙商標目録1ないし8及び10ないし12記載の登録商標を付したものを販売してはならない。 4 被控訴人らは、原判決別紙商標目録1ないし8及び10ないし12記載の登録商標を付した石けん類、香料類、化粧品、歯みがき粉、その半製品及びその外箱、梱包材又は容器を廃棄せよ。 5 訴訟費用は、第1、第2審とも被控訴人らの負担とする。 |
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事案の概要
(以下、控訴人を「原告」、被控訴人株式会社アザレインターナショナルを「被告インターナショナル」、同被告補助参加人Cを「補助参加人C」、同被告補助参加人Dを「補助参加人D」、被控訴人日本コルマー株式会社を「被告日本コルマー」という。) 1 本件は、原告が、自己の有する原判決別紙商標目録1ないし8及び10ないし12記載の各商標権(以下、一括して「本件各商標権」といい、各登録商標を一括して「本件各登録商標」という。)につき、被告インターナショナルとの間に存した使用許諾契約を、同被告に債務不履行があり解除したと主張して、被告らに対し、本件各商標権に基づき、本件各登録商標を付した商品の販売の差止め等(控訴の趣旨2ないし4に係る請求)及び損害賠償(被告ら各自に対し、平成12年8月1日から、被告インターナショナルが、石けん類、香料類、化粧品、歯みがき粉又はその包装に本件各登録商標を付したものの販売をやめるまで、毎月末日限り2300万円ずつ及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払)を求め、被告らが、@原告は上記使用許諾契約の当事者ではないこと(又は同契約上の地位を単独で有するものではないこと)、A仮に、原告が同契約当事者である(又は同契約上の地位を単独で有するものである)としても、上記解除には正当な理由がないこと、B上記解除は権利(商標権)の濫用であることを理由に、原告による解除の意思表示は無効である旨主張して、 争っている事案である。 2 原審は、原告の請求をいずれも棄却したため、原告が本件控訴を提起し、当審において前記損害賠償請求を取り下げ、被告らがこれに同意した。 |
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当事者の主張
(ゴシック体で記載した箇所以外は、原判決の事実中「第2 当事者の主張」に記載のとおりであるか、これとほぼ同旨である。) 1 請求原因 (1) 商標権 原告の夫であったFは、原判決別紙商標目録5記載の商標権を昭和57年7月12日に、同目録2記載の商標権を昭和58年11月28日にそれぞれ取得し、また、同目録1、3、4、6ないし8及び10ないし12記載の各商標権を、 同目録記載の各登録日に各登録と同時に取得した(以上の取得日を整理すると、本判決別紙「Fの本件商標権取得年月日」記載のとおりとなる。)。 Fは、平成9年11月4日、死亡し、原告は、本件各商標権を、Fから相続によって取得した。 (2) 使用許諾契約 Fは、本件各登録商標につき、それぞれ、本判決別紙「Fの本件商標権取得年月日」記載の日ころ、被告インターナショナルとの間で、Fが被告インターナショナルに対してその使用を許諾し、被告インターナショナルがF又は同人の指定する者に対して、当事者間で合意した金額を「商標使用料」名目で支払う旨の使用許諾契約を締結した。 原告は、Fから、相続により、この各使用許諾契約上の地位をも承継した(以下、本件各登録商標についてFが被告インターナショナルとの間で締結した各使用許諾契約を「本件各使用許諾契約」という。)。 (3) 本件各登録商標を「アザレグループ」という共同体の出所表示として使用するべき義務に違反したこと(債務不履行1) ア 本件各使用許諾契約は、「アザレ化粧品」の創始者であるF又はその相続人である原告を中心とし、アザレプロダクツ株式会社(以下「アザレプロダクツ」という。)が製造を担当し、被告インターナショナルが販売を担当し、有限会社ワンダフル(以下「ワンダフル」という。)が資産管理を担当することによって構成されている、いわば「アザレグループ」という共同体を出所として表示するために用いる限りにおいて使用を許諾するという合意を含むものであった。 Fは、販売分野では被告インターナショナルに、製造分野ではアザレプロダクツに、本件各登録商標の使用許諾を行ったものであり、被告インターナショナルには、「アザレ化粧品」の販売権のみが与えられ、製造権限は与えられていない。 イ しかし、被告インターナショナルは、平成12年4月ころから、被告日本コルマーに、新たな化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品又はその包装に本件各登録商標を付したものを販売している。また、被告日本コルマーは、被告インターナショナルの依頼を受け、化粧品を製造し、その製造する化粧品又はその包装に本件各登録商標を付している。 ウ @被告日本コルマーが製造した化粧品により、従前アザレプロダクツが製造した化粧品を使っていた者に皮膚トラブルが多発していることから、被告日本コルマーが製造し、被告インターナショナルが販売している化粧品は、従前アザレプロダクツが製造し、被告インターナショナルが販売してきた化粧品と、同一の化粧品とはいえず、別の化粧品であること、A被告インターナショナルは、自らが販売する本件各登録商標を付した化粧品の製造者を、原告及びアザレプロダクツの承諾なくして、アザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したこと、B被告インターナショナルが化粧品の製造者をアザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したことにより、従前アザレプロダクツが製造した「アザレ化粧品」がいわゆる自然派化粧品として高い評価を獲得したことによって築かれてきた本件各登録商標に対する消費者の信用が急速に失われつつあること、C被告インターナショナルは、 アザレプロダクツの製造する本件各登録商標を付した化粧品を、偽物であると宣伝していること、D被告インターナショナルが、アザレプロダクツに対して、原判決別紙商標目録4、6及び7記載の登録商標の使用差止めを求める仮処分を申し立てたことからすると、被告インターナショナルは、平成12年4月ころ、「アザレグループ」を離脱したものであり、被告日本コルマーが製造し、被告インターナショナルが販売する化粧品は、「アザレグループ」を出所とするものとはいえなくなった。 それにもかかわらず、被告インターナショナルは、被告日本コルマーの製造した化粧品又はその包装に本件各登録商標を付したものを販売している。これは、「アザレグループ」を出所として表示するために用いる限りにおいて使用を許諾するという、本件各使用許諾契約に含まれた合意に違反し、債務不履行に当たる。 (4) 背信行為(債務不履行2) ア 一般に商標の使用許諾契約において、使用者は、商標権者に対して、背信行為を行わないという信義則上の義務を負っており、使用者が、商標権者に対して著しい背信行為を行った場合には、信義則違反として、債務不履行となる。 イ(ア) 被告インターナショナルの代表取締役であるBは、同被告を代表して、自分の経営する有限会社コスモ(以下「コスモ」という。)と取引を行うことによって、同被告に損害を与え、そのことを是正しようとしたGを同被告の取締役から排除した。 (イ) 被告インターナショナルは、Fの子である補助参加人らを抱き込み、弁護士費用や担保となる保証金を負担して、原告、アザレプロダクツ及び原告が代表取締役を務めるワンダフルに対し、次のような仮処分を申し立てた。 a 事件番号 福岡地方裁判所平成11年(ヨ)第928号 債権者 補助参加人ら 債務者 原告 申立て 遺留分減殺請求による本件各商標権の持分権移転登録請求権を被保全権利として、本件各商標権につき、被告インターナショナルに対する処分を除き処分を禁止する仮処分を求めた。 決 定 債権者らが債務者のために各5000万円を供託する方法の担保を立てさせて認容。 b 事件番号 福岡地方裁判所平成12年(ヨ)第117号 債権者 補助参加人ら 債務者 ワンダフル 申立て 遺留分減殺請求による本件各商標権の持分権に基づき、本件各商標権を被告インターナショナル以外の者に使用させることの差止めを求めるとともに、本件各登録商標の使用料相当額についての不当利得返還請求として、各債権者に対し、毎月560万円の仮払いを求めた。 決 定 認容 c 事件番号 大阪地方裁判所平成12年(ヨ)第20015号 債権者 被告インターナショナル 債務者 アザレプロダクツ 申立て 債権者が、原判決別紙商標目録4、6及び7記載の登録商標は、債権者の商品表示として周知性及び著名性を有しているとして、不正競争防止法2条1項1号及び2号に基づいて、これらの登録商標を使用した化粧品等の製造販売等の差止めを求めた。 決 定 却下 |
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債権者補助参加人D債務者原告、ワンダフル、H、I申立て債権者はワンダフルの持分600口を有する社員であるところ、同会社の臨時社員総会議事録及び商業登記簿によると、平成10年2月26日臨時社員総会が開催され、債務者原告を同会社の取締役に選任する旨の決議がされたとの記載及び登記、同年11月7日臨時社員総会が開催され、債務者Hを取締役に、債務者Iを監査役に、債務者原告を代表取締役に選任する旨の決議がされたとの記載及び登記が存在するが、債権者に対しては臨時社員総会開催の招集通知は一度もされておらず、招集手続に著しい瑕疵が存在し、各臨時社員総会は存在しないものとして、債務者原告は取締役兼代表取締役の、債務者Hは取締役の、債務者Iは監査役の各職務を執行してはならない旨の職務執行停止、職務代行者選任などを求めた。 決定債権者に債務者らのために各50万円を供託する方法による担保を立てさせて認容。 e事件番号福岡地方裁判所平成12年(ヨ)第316号債権者補助参加人ら債務者アザレプロダクツ申立て遺留分減殺請求による本件各商標権の持分権に基づき、債務者に対して、本件各登録商標を使用した化粧品の製造販売等の差止めを求めた。 決定却下(ウ)被告インターナショナルは、本件各登録商標は、同被告による使用以外は使用を禁止されているという虚偽の宣伝を繰り返し、原告を中傷した。 (エ)被告インターナショナルは、アザレプロダクツの製造する本件各登録商標を付した化粧品を、偽物であると宣伝し、原告を中傷した。 (オ)前記(3)イのとおり、被告インターナショナルは、平成12年4月ころから、被告日本コルマーに、新たな化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品又はその包装に本件各登録商標を付したものを販売している。また、前記(3)ウ@、Aのとおり、被告日本コルマーが製造し、被告インターナショナルが販売している化粧品は、従前アザレプロダクツが製造し、被告インターナショナルが販売してきた化粧品とは別の化粧品であって、被告インターナショナルは、 自らが販売する本件各登録商標を付した化粧品の製造者を、原告及びアザレプロダクツの承諾なくして、アザレプロダクツから被告日本コルマーに変更した。 (カ)被告インターナショナルは、平成8年4月6日及び同月8日、原判決別紙商標目録5記載の登録商標と類似の標章(原判決別紙商標目録21、22、 25及び26記載の登録商標)及び原判決別紙商標目録4記載の登録商標と同一の標章(原判決別紙商標目録15ないし20、23及び24記載の登録商標)につき、「アザレ化粧品」の販売促進用品又は新商品が該当する可能性のある商品区分及び指定商品を指定して、F及び原告に告げずにひそかに商標登録出願をした(これらの出願は、その後、原判決別紙商標目録15ないし26のとおり商標登録された。)。 (キ)被告インターナショナルは、「アザレ」以外の商標(ピュアコール)を登録し、これを使用しており、年間1000万円の商標使用料を支払うに至っている。これは、同被告が「ピュアコール」ブランドに変更しようとしているものであり、「アザレ」商標を使用するとの本件各使用許諾契約の根本に違背する。 ウ前記(ア)ないし(キ)の行為は、被告インターナショナルの原告に対する著しい背信行為であり、信義則に反し、債務不履行に当たる。 (5)債務不履行1、2に基づく解除(解除の意思表示1)原告は、被告インターナショナルに対し、内容証明郵便をもって、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をし、同内容証明郵便は、平成12年7月18日、被告インターナショナルに到達した。 この意思表示は、前記(3)又は(4)の債務不履行に基づく解除として有効である。 (6)商標使用料不払いに基づく解除ア(債務不履行3)被告インターナショナルは、従前は、本件各登録商標の使用料を、ワンダフルに対して支払っていた。 原告は、被告インターナショナルに対し、本件各登録商標の使用料を、 平成12年11月分から原告に直接支払うように内容証明郵便をもって催告し、同内容証明郵便は、同年10月23日、同被告に到達した。しかし、同被告は、原告に対し、同年11月分以降の本件各登録商標の使用料を支払わない。 イ(解除の意思表示2)原告は、被告インターナショナルに対し、平成12年12月25日の原審口頭弁論期日において、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をした。 この意思表示は、前記アの債務不履行に基づく解除として有効である。 (7)アザレプロダクツ以外の者に化粧品の製造を委託してはならないとの義務に違反したことに基づく解除ア(債務不履行4)被告インターナショナルは、本件各使用許諾契約に基づき、原告に対し、アザレプロダクツ以外の者に化粧品の製造を委託してはならないという義務を負っていた。 また、本件各使用許諾契約は、アザレプロダクツが製造する化粧品についてのみ本件各登録商標の使用を許諾するとの合意を含むものであった。 それにもかかわらず、前記(3)イのとおり、被告インターナショナルは、 平成12年4月ころから、被告日本コルマーに新たな化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品又はその包装に本件各登録商標を付したものを販売している。これは、被告インターナショナルが本件各使用許諾契約に基づいて原告に対して負う、アザレプロダクツ以外の者に化粧品の製造を委託してはならないという義務に違反し、債務不履行に当たる。また、アザレプロダクツが製造する化粧品についてのみ本件各登録商標の使用を許諾するという、本件各使用許諾契約に含まれた合意に違反し、債務不履行に当たる。 イ(解除の意思表示3)原告は、被告インターナショナルに対し、平成13年6月4日の原審口頭弁論期日において、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をした。 この意思表示は、前記アの債務不履行に基づく解除として有効である。 (8)侵害行為被告らは、平成12年8月1日以降、本件各登録商標を付した化粧品を製造販売し、1か月当たり合計2300万円以上の利益を上げている。 (9)よって、原告は、本件各商標権に基づき、被告日本コルマーに対し、本件各登録商標を、石けん類、香料類、化粧品、歯みがき粉又はその包装に付することの差止め、被告インターナショナルに対し、石けん類、香料類、化粧品、歯みがき粉又はその包装に本件各登録商標を付したものを販売することの差止めを求め、被告らに対し、本件各登録商標を付した石けん類、香料類、化粧品、歯みがき粉、その半製品及びその外箱、梱包材若しくは容器の廃棄を求める。 2請求原因に対する認否(被告インターナショナル)(1)請求原因(1)(商標権)について請求原因(1)の事実のうち、原告の夫であったFが、本件各商標権をそれぞれ本判決別紙「Fの本件商標権取得年月日」記載の日に取得したこと、Fが、平成9年11月4日、死亡したことは認めるが、原告が本件各商標権をFから相続によって単独で取得したことは否認する。 Fは、原告のみに財産を相続させる旨の遺言をしたが、補助参加人らがそれぞれ遺留分減殺請求権を行使したため、これらの商標権は、原告、補助参加人らの共有状態にある。これらの商標権の移転登録は、遺産分割協議に基づき行われたが、この遺産分割協議は詐欺により取り消され又は錯誤により無効であるから、この移転登録も効力がない。共有に係る商標権に基づく差止請求は、共同者全員によってのみ請求し得るから、共有者のうちの一人にすぎない原告は、単独で、共有に係る商標権に基づく差止めを請求することができない。 (2)請求原因(2)(使用許諾契約)について請求原因(2)の事実は否認する。 ワンダフルは、本件各登録商標については、それぞれ本判決別紙「Fの本件商標権取得年月日」記載の日ころ、被告インターナショナルとの間で、ワンダフルが被告インターナショナルに対して本件各登録商標の使用を許諾し、被告インターナショナルがワンダフルに対して、当事者間で合意した金額を「商標使用料」名目で支払う旨の使用許諾契約を締結した。 仮に、Fが被告インターナショナルとの間で本件各使用許諾契約を締結したとしても、原告が相続により本件各使用許諾契約上の地位を単独で承継したことは否認する。本件各使用許諾契約上の地位は、原告と補助参加人両名が共同相続した。 (3)請求原因(3)(本件各登録商標を「アザレグループ」という共同体の出所表示として使用するべき義務に違反したこと。債務不履行1)についてア請求原因(3)アの事実は否認する。 原告の主張する「アザレグループ」というものは存在せず、また、被告インターナショナルのみがワンダフルないしFから本件各登録商標の使用許諾を受けていたことは明らかであり、原告の主張はその前提を欠く。仮に「アザレ関係者」という意味で「アザレグループ」というものを考えるとしても、法律行為の内容の確定性に照らし、このような外延を画し得ない漠然とした概念をもって、合意の構成要素と解釈することは許されない。しかも、「アザレグループ」というものから離脱したのは、被告インターナショナルではなく、原告であるから、「アザレグループ」からの離脱という事実は、権利濫用の評価根拠事実として本件訴訟の抗弁事実となりこそすれ、本件各使用許諾契約の解除原因として請求原因事実とはなり得ない。 イ請求原因(3)イの事実のうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していることは認めるが、その余は否認する。 ウ(ア)請求原因(3)ウのうち、被告インターナショナルが、自らが販売する本件各登録商標を付した化粧品の製造者を、原告及びアザレプロダクツの承諾なくして、アザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したこと(A)、被告インターナショナルが、アザレプロダクツに対して、原判決別紙商標目録4、6及び7記載の登録商標の使用差止めを求める仮処分を申し立てたこと(D)は認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。 被告日本コルマーが製造した化粧品により皮膚トラブルが多発している事実はない。被告日本コルマーは、被告インターナショナルから化粧品の製造を依頼された際、アザレプロダクツが製造していた化粧品の品質を再現してほしいという要請を受けたため、アザレプロダクツが製造していた化粧品の処方をもとに現在の処方を開発したものであり、その内容成分については、アザレプロダクツが製造していた化粧品とほぼ同様のものを使用している。被告日本コルマーは、その製造する化粧品について、パッチテスト等を実施したが、その結果に特に問題はなかった。平成13年春には、「アザレ化粧品」以外の化粧品についても、皮膚トラブルが多発していたが、それは、平成12年から平成13年にかけて寒さが長引き空気が極度に乾燥していたことにより皮膚のバリア機能が低下して引き起こされた知覚過敏によるものと考えられ、被告日本コルマーが製造し被告インターナショナルが販売した化粧品に特有の問題ではなかった。 (イ)商標使用許諾契約において解除権を行使するためには、取引関係を継続し難い不信行為の存在などやむを得ない事由があることが必要である。 しかし、@本件紛争の背景には、原告らによる「アザレ化粧品」の乗っ取りの動きがあること、A原告が、別件訴訟において、本件各登録商標を自己使用して「アザレ化粧品」の製造販売を行っていると主張していること、B本件各登録商標は被告インターナショナルが専ら使用するものとして考案され、同被告が使用の対価として莫大な商標使用料を支払ってきたこと、C原告が本件各使用許諾契約の解除の通知後も「商標使用料相当損害金として商標権者Aの下記口座に送金してお支払い下さい」という通知をしていること、Dアザレプロダクツの代表者であるJは、「アザレ化粧品」の製造販売において自らを有利にするために、被告インターナショナルの代表者を被告として株主代表訴訟を提起していることから、原告が本件各使用許諾契約を解除するについてやむを得ない事由がないことは明らかである。 (4)請求原因(4)(背信行為。債務不履行2)についてア請求原因(4)アの主張は争う。 一般に、給付義務と区別される信義則上の付随的義務は、本来的な給付義務と無関係に恣意的に発生するものではない。仮に、商標の使用許諾契約との関係で、商標使用者の商標権者に対する著しい背信行為を行ってはならない旨の付随的義務を観念するとしても、ここでいう背信行為は、商標の使用又は使用料の支払と関連するものでなければならず、商標権者が商標使用者に対して一方的に主観的かつ個人的な反発をする原因となったにすぎない事実は、背信行為には当たらない。 イ(ア)請求原因(4)イ(ア)の事実は否認する。 Gは、被告インターナショナルの取締役に就任しながら、何ら建設的な提案を行わなかったことから、取締役に再任されなかったにすぎない。 (イ)請求原因(4)イ(イ)の事実は否認する。 被告インターナショナルは、補助参加人らを抱き込んだことはなく、 補助参加人らから原告らに対して申し立てられた仮処分の実質的主体が被告インターナショナルであったことはない。 補助参加人らは、各自の利益を原告から侵害されるおそれがあったことから、自らの利益を保全するために、仮処分に及んだ。 (ウ)請求原因(4)イ(ウ)の事実は否認し、主張は争う。 (エ)請求原因(4)イ(エ)の事実は否認し、主張は争う。 (オ)請求原因(4)イ(オ)のうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していること、被告インターナショナルが、自らが販売する本件各登録商標を付した化粧品の製造者を、原告及びアザレプロダクツの承諾なくして、アザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したことは認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。 (カ)請求原因(4)イ(カ)のうち、被告インターナショナルが、平成8年4月6日、原判決別紙商標目録21、26記載の登録商標について、同月8日、原判決別紙商標目録15ないし20、22ないし25記載の登録商標について商標登録出願をしたことは認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。 (キ)請求原因(4)イ(キ)の主張は争う。 ウ(ア)請求原因(4)ウの主張は争う。 請求原因(4)イ(ア)ないし(エ)の事実、(オ)のうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していること以外の事実及び主張、(カ)の事実及び主張は、いずれも、本件各登録商標の使用ないし使用料の支払とは関連しないものであり、事実関係の有無を問題とするまでもなく、本件各使用許諾契約との関係では、信義則に反する背信行為となるものではない。 請求原因(4)イ(オ)のうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していることは、本件各登録商標の使用と密接に関連するが、これは「アザレ化粧品」の本質を実現することでありこそすれ、「アザレ化粧品」の本質に何ら反しないから、背信行為には当たらない。 請求原因(4)イ(キ)については、被告インターナショナルが「ピュアコール」ブランドに変更するなどという事実はないから、背信行為には当たらない。 (イ)一般に、給付義務とは区別される付随的義務に違反があっても、その付随的義務が当該契約の目的達成のために必要不可欠な意義を有するものでなければ、契約の解除は認められない。原告の主張する請求原因(4)イ(ア)ないし(カ)の事実は、いずれも本件各使用許諾契約の目的達成に不可欠な意義を有するものではないから、解除権を発生させることはない。 また、商標使用許諾契約において解除権を行使するためには、取引関係を継続し難い不信行為の存在などやむを得ない事由があることが必要であるが、 前記(3)ウ(イ)のとおり、原告が本件各使用許諾契約を解除するについてやむを得ない事由がないことは明らかである。 (5)請求原因(5)(債務不履行1、2に基づく解除。解除の意思表示1)について請求原因(5)のうち、原告が、被告インターナショナルに対し、内容証明郵便をもって、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をし、同内容証明郵便が、平成12年7月18日、被告インターナショナルに到達したことは認めるが、 その意思表示が、請求原因(3)又は(4)の債務不履行に基づく解除として有効であることは争う。 前記(2)のとおり、本件各使用許諾契約は、ワンダフルが被告インターナショナルとの間で締結したものであるから、本件各使用許諾契約上の地位を有しない原告が、本件各使用許諾契約を解除することはできない。 仮に、Fが被告インターナショナルとの間で本件各使用許諾契約を締結したとしても、原告は、相続により本件各使用許諾契約上の地位を単独で承継したものではないから、単独で本件各使用許諾契約を解除することはできない。 (6)請求原因(6)(商標使用料不払いに基づく解除。債務不履行3。解除の意思表示2)についてア請求原因(6)アのうち、被告インターナショナルが、従前、本件各登録商標の使用料を、ワンダフルに対して支払っていたこと、原告が、被告インターナショナルに対し、本件各登録商標の使用料を、平成12年11月分から原告に直接支払うように内容証明郵便をもって催告し、同内容証明郵便が、同年10月23日、 同被告に到達したこと、同被告が、原告に対し、同年11月分以降の本件各登録商標の使用料を直接支払っていないことは認めるが、これが債務不履行に当たるという主張は争う。 債務の履行場所は、第一次的には債権者と債務者との間の合意によって定まるところ、被告インターナショナルは、Fとの間で、ワンダフルを本件各登録商標の商標使用料の窓口とすることに合意したのであるから、その変更に合意しない限り、ワンダフルあてに商標使用料を支払えば足りるし、現にワンダフルあての支払を継続している。 イ請求原因(6)イのうち、原告が、被告インターナショナルに対し、平成12年12月25日の原審口頭弁論期日において、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をしたことは認めるが、その意思表示が債務不履行に基づく解除として有効であることは争う。 前記(2)のとおり、本件各使用許諾契約は、ワンダフルが被告インターナショナルとの間で締結したものであるから、本件各使用許諾契約上の地位を有しない原告が、本件各使用許諾契約を解除することはできない。 仮に、Fが被告インターナショナルとの間で本件各使用許諾契約を締結したとしても、原告は、相続により本件各使用許諾契約上の地位を単独で承継したものではないから、単独で本件各使用許諾契約を解除することはできない。 (7)請求原因(7)(アザレプロダクツ以外の者に化粧品の製造を委託してはならないとの義務に違反したことに基づく解除。債務不履行4。解除の意思表示3)についてア請求原因(7)アのうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していることは認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。 アザレプロダクツは、被告インターナショナルのOEM業者(相手先ブランドで販売される製品を製造する業者。以下「OEM製造メーカー」ともいう。)として化粧品を製造していたにすぎず、Fも化粧品の製造委託先をアザレプロダクツから被告日本コルマーに変更することを考慮していたことにかんがみれば、被告インターナショナルが、原告に対して、アザレプロダクツ以外の者に化粧品の製造を委託してはならないという義務を負っていなかったことは、明らかである。 イ請求原因(7)イのうち、原告が、被告インターナショナルに対し、平成13年6月4日の原審口頭弁論期日において、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をしたことは認めるが、その意思表示が債務不履行に基づく解除として有効であることは争う。 前記(2)のとおり、本件各使用許諾契約は、ワンダフルが被告インターナショナルとの間で締結したものであるから、本件各使用許諾契約上の地位を有しない原告が、本件各使用許諾契約を解除することはできない。 仮に、Fが被告インターナショナルとの間で本件各使用許諾契約を締結したとしても、原告は、相続により本件各使用許諾契約上の地位を単独で承継したものではないから、単独で本件各使用許諾契約を解除することはできない。 (8)請求原因(8)(侵害行為)について請求原因(8)のうち、被告らが、平成12年8月1日以降、本件各登録商標を付した化粧品を製造販売し、1か月当たり合計2300万円以上の利益を上げていることは認めるが、そのことが本件各商標権を侵害しているという主張は争う。 3請求原因に対する認否(被告日本コルマー)(1)請求原因(1)(商標権)について請求原因(1)の事実のうち、Fが、本件各商標権をそれぞれ本判決別紙「Fの本件商標権取得年月日」記載の日に取得したことは認めるが、その余は不知。 (2)請求原因(2)(使用許諾契約)について請求原因(2)の事実は不知。 (3)請求原因(3)(本件各登録商標を「アザレグループ」という共同体の出所表示として使用するべき義務に違反したこと。債務不履行1)についてア請求原因(3)アの事実は不知。 イ請求原因(3)イの事実のうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造する化粧品に本件各登録商標を付したものを販売していることは認めるが、その余は不知。 ウ請求原因(3)ウのうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していることは認めるが、被告日本コルマーが製造した化粧品により、従前アザレプロダクツが製造した化粧品を使っていた者に皮膚トラブルが多発していることから、被告日本コルマーが製造し、被告インターナショナルが販売している化粧品は、従前アザレプロダクツが製造し、被告インターナショナルが販売してきた化粧品と、同一の化粧品とはいえず、別の化粧品であること(@)、 被告インターナショナルが化粧品の製造者をアザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したことにより、従前アザレプロダクツが製造した「アザレ化粧品」がいわゆる自然派化粧品として高い評価を獲得したことによって築かれてきた本件各登録商標に対する消費者の信用が急速に失われつつあること(B)は否認し、その余の事実は不知であり、主張は争う。 被告インターナショナルが被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していることは、債務不履行に当たらない。 (4)請求原因(4)(背信行為。債務不履行2)についてア請求原因(4)アの主張は争う。 イ請求原因(4)イ(ア)ないし(キ)の事実は不知であり、主張は争う。 ウ請求原因(4)ウの主張は争う。 (5)請求原因(5)(債務不履行1、2に基づく解除。解除の意思表示1)について請求原因(5)の事実は不知であり、主張は争う。 (6)請求原因(6)(商標使用料不払いに基づく解除。債務不履行3。解除の意思表示2)についてア請求原因(6)アの事実は不知。 イ請求原因(6)イの事実は不知であり、主張は争う。 (7)請求原因(7)(アザレプロダクツ以外の者に化粧品の製造を委託をしてはならないとの義務に違反したことに基づく解除。債務不履行4。解除の意思表示3)についてア請求原因(7)アのうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品に本件各登録商標を付したものを販売していることは認めるが、その余の事実は不知であり、主張は争う。 イ請求原因(7)イの事実は不知であり、主張は争う。 (8)請求原因(8)(侵害行為)について請求原因(8)の事実は不知。 4抗弁(被告ら)原告は、被告インターナショナルの乗っ取り行為を行い、それに失敗すると、本件各登録商標によって出所の表示される主体が被告インターナショナルのみであるにもかかわらず、アザレプロダクツに本件各登録商標の使用を許諾して化粧品の製造販売を行わせ、被告インターナショナルに損害を与えており、原告による本件各商標権の行使及びアザレプロダクツに対する使用許諾は権利濫用である。 また、仮に原告に債務不履行による本件各使用許諾契約の解除権が発生しているとしても、その行使は権利濫用である。 5抗弁に対する認否抗弁の事実は否認し、主張は争う。 被告インターナショナルが被告日本コルマーの製造した化粧品を販売したこと、被告インターナショナル及び補助参加人らが多くの訴訟等を提起したことにより、「アザレ化粧品」の信用は失墜した。 理由第1当裁判所の判断の概要1請求原因のうち、後記第2記載の事実(ゴシック体で記載した箇所以外は、 原判決の理由中「第1当事者間に争いのない事実」に記載のとおりである。)は、当事者間に争いのない事実及び記録上明らかな事実である。 2本件の主たる争点は、原告の被告インターナショナルに対する本件各登録商標の使用許諾契約(本件各使用許諾契約)解除の各意思表示による同契約解除の効力の有無である。 3当裁判所も、原告主張の本件各使用許諾契約解除の効力はいずれも認められず、原告の本訴請求はいずれも理由がないものと判断する。 その理由は、以下のとおりである。ただし、後記第3ないし第5のうち、ゴシック体で記載した箇所以外は、原判決の理由中「第2事実の経過」、「第3被告インターナショナル及びアザレプロダクツの役割について」及び「第4本訴請求について」に記載のとおりであるか、これとほぼ同旨である。 第2当事者間に争いのない事実等1請求原因のうち、次の(8)及び(10)の事実は、記録上明らかであり、その余の事実は、原告と被告インターナショナルとの間で争いがない。 (1)請求原因(1)の事実のうち、原告の夫であったFが、本件各商標権をそれぞれ本判決別紙「Fの本件商標権取得年月日」記載の日に取得したこと。Fが、平成9年11月4日、死亡したこと。 (2)請求原因(3)イの事実のうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していること。 (3)請求原因(3)ウのうち、被告インターナショナルが、自らが販売する本件各登録商標を付した化粧品の製造者を、原告及びアザレプロダクツの承諾なくして、アザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したこと。被告インターナショナルが、アザレプロダクツに対して、原判決別紙商標目録4、6及び7記載の登録商標の使用差止めを求める仮処分を申し立てたこと。 (4)請求原因(4)イ(オ)のうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していること。被告インターナショナルが、自らが販売する本件各登録商標を付した化粧品の製造者を、原告及びアザレプロダクツの承諾なくして、アザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したこと。 (5)請求原因(4)イ(カ)のうち、被告インターナショナルが、平成8年4月6日、原判決別紙商標目録21、26記載の登録商標について、同月8日、原判決別紙商標目録15ないし20、22ないし25記載の登録商標について商標登録出願したこと。 (6)請求原因(5)のうち、原告が、被告インターナショナルに対し、内容証明郵便をもって、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をし、同内容証明郵便が、平成12年7月18日、被告インターナショナルに到達したこと。 (7)請求原因(6)アのうち、被告インターナショナルが、従前、本件各登録商標の使用料を、ワンダフルに対して支払っていたこと。原告が、被告インターナショナルに対し、本件各登録商標の使用料を、平成12年11月分から原告に直接支払うように内容証明郵便をもって催告し、同内容証明郵便が、同年10月23日、 同被告に到達したこと。同被告が、原告に対し、同年11月分以降の本件各登録商標の使用料を直接支払っていないこと。 (8)請求原因(6)イのうち、原告が、被告インターナショナルに対し、平成12年12月25日の原審口頭弁論期日において、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をしたこと。 (9)請求原因(7)アのうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品を販売していること。 (10)請求原因(7)イのうち、原告が、被告インターナショナルに対し、平成13年6月4日の原審口頭弁論期日において、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をしたこと。 (11)請求原因(8)のうち、被告らが、平成12年8月1日以降、本件各登録商標を付した化粧品を製造販売し、1か月当たり合計2300万円以上の利益を上げていること。 2請求原因のうち、次の事実は、原告と被告日本コルマーとの間で争いがない。 (1)請求原因(1)の事実のうち、Fが、本件各商標権をそれぞれ本判決別紙「Fの本件商標権取得年月日」記載の日に取得したこと。 (2)請求原因(3)イ、ウ及び請求原因(7)アのうち、被告インターナショナルが被告日本コルマーに化粧品の製造を依頼し、被告日本コルマーの製造した化粧品に本件各登録商標を付したものを販売していること。 第3事実の経過(以下、重複して提出された書証については、原則としてそのうちの一つのみを掲記し、書証の枝番のすべてを含む場合は、枝番の記載を省略する。)前記第2の当事者間に争いのない事実等に、証拠(甲44の1、甲61、71〜73、93、乙13、30〜33、42、証人J〈原審〉、原告本人〈原審〉、被告インターナショナル代表者本人〈原審〉。ただし、上記各証拠のうち必要に応じて該当箇所にも記載するものもある。)及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。 1「アザレ化粧品」の販売に至る経緯(1)Fは、昭和40年ころ、東京都葛飾区に所在したヴァロー化粧品という化粧品会社に専務取締役として勤務しており、被告インターナショナル代表者(B)も、夫と共に同社に勤務していた。その後、Fとヴァロー化粧品代表者との間に意見の食い違いがあったことから、Fは、福岡に事務所を新設してヴァロー化粧品を販売することとし、そのころ夫を亡くした被告インターナショナル代表者もこれに従って福岡に移り、Fの事業に従事した。 (2)ところが、「ヴァロー」という商標は、フランスの化粧品会社が既に商標を有しており、日本ではKなる人物がその商標権を有していたことから、Fは、昭和45年ころ、新たに有限会社ジュポンファーイースト(以下「ジュポン社」という。)を設立し、「ルールジュポン」という商標権を取得して、化粧品の製造販売を行うようになった。ジュポン社の代表者はFであったが、被告インターナショナル代表者も常務取締役として、その事業に従事していた。当時、Fと被告インターナショナル代表者は親密な関係にあった。 この時代に販売されていた化粧品に「エレガンスカラー」という水性ファンデーションがあり(その写真が乙11)、当時は化粧品の副作用が社会問題となっていたことから、同商品は、「公害性のない化粧品」、「肌に負担をかけない」、「植物性」、「スキンケアとメイクが同時にできるワンタッチカラー」という宣伝文句で販売された。Fは、同商品の製造については、永田美研工業に中身の製造を、他の業者に化粧瓶や外箱の製造を委託し、ジュポン社において製品として完成させた上で、各地の業者に販売していた。 (3)アその後、中身の製造を行っていた永田美研工業が、ジュポン社とは無関係に同様の化粧品を製品化して販売するという事態が生じたため、昭和48年ころ、ジュポン社は、永田美研工業との契約を解除し、化粧瓶の製造を担当していた明成孝橋美術の紹介により、共和化粧品工業株式会社(以下「共和化粧品」という。当時の代表者は、後に同社及びアザレプロダクツの代表者となるJの父であるLであった。)との間で、新たに「製造請負契約」を締結した。 イ前記契約は、概要、次のような内容のものであった(乙10は上記契約に係る契約書の草稿である。)。 @ジュポン社は、共和化粧品にジュポンエレガンススペシャル等の製造を請け負わせるものとして、それに必要な資材の容器、化粧箱、段ボール箱はジュポン社が支給し、内容製造原料は共和化粧品が負担する。 A共和化粧品がジュポン社から供給を受けた材料は、すべてジュポン社の所有であり、共和化粧品は、これを処分したり担保に供したりしてはならない。 B共和化粧品は、ジュポン社の取引先等より問い合わせや注文があった場合は、直ちにジュポン社に連絡して、ジュポン社の指示に従いジュポン社及びジュポン社の取引先の営業権を擁護し、「ルールジュポン」商標や他のブランドの製品を理由の如何を問わず、また直接、間接にても取引することは決してできないこととする。 C共和化粧品は、ジュポン社が製造を委託したジュポンエレガンススペシャル等の3種類の製品と同一様式の水溶性ファンデーションの製造は、ジュポン社以外の業者から請け負えないこととする。 Dジュポン社は、共和化粧品以外の業者に対しては、ジュポンエレガンススペシャル等と同一様式製品の製造を委託できないこととする。ただし、ジュポン社の発注数量に対して、共和化粧品がその70%の生産数量を3か月連続して達成し得ない場合は、ジュポン社は、他の業者に対して製造を委託することができることとする。 (4)ところが、昭和50年ころ、「ルールジュポン」の商標について、アメリカの化学メーカーであるデュポン社の名称と類似するのではないかが問題となり、 紛争が生じたこと、「ルールジュポン」の商標には手違いで化粧品が指定商品とされていなかったことから、Fは、ジュポン化粧品の事業を総代理店のM(以下「M」という。)に譲渡し、被告インターナショナル代表者と共に福岡に戻った。 2「アザレ化粧品」の創業(1)その後、化粧品業から身を引いたFに対しては、再び化粧品業界に戻るよう次のような要請がなされた。 ア一つは、ジュポン化粧品の元販売先からであった。従前のジュポン化粧品の事業は総代理店のMが引き継ぎ、静岡に工場を新設して製造を開始したが、トラブルが続いたため、元販売先(特に徳島のN、山口のO)から化粧品製造の再開を要請された。 イ他はJからであり、同人は、化粧品事業に対するFの卓抜した見識と才能を評価していたことから、化粧品事業の再開を要請した(甲44の1)。 (2)そこで、Fは、当時化粧品公害が社会問題となっていたことから、ジュポン社の時代に引き続き、植物を始めとする天然原料を使用した、いわゆる「自然派化粧品」の理念の下に、新たに「アザレインターナショナル」との名称で、「アザレ」の商標を用いた化粧品事業(以下「アザレ化粧品販売事業」という。)を興すこととした。 (3)Fは、本件各登録商標につき商標登録出願をし(これらの商標の登録出願は、Fの妻であったP〈昭和33年7月11日婚姻届出、平成5年3月18日協議離婚届出〉名義でされたものもあるが、その後いずれの商標権もFに帰属した。)、本判決別紙「Fの本件商標権取得年月日」記載のとおり取得した(甲1、 2の各1〜8・10〜12、乙39)。 (4)「アザレ化粧品」の販売は、昭和52年10月から開始されたが、当初は、「アザレインターナショナル」の商号の、後に被告インターナショナル代表者となるBの個人企業として行われた。その後、個人企業としての「アザレインターナショナル」は、昭和53年3月18日に有限会社アザレインターナショナル(代表取締役B)に法人化され、同社もいったん解散した上で、昭和57年1月20日に被告インターナショナルが設立されて販売を行うようになった。 被告インターナショナルの設立の際の発起人は、B(全2万株中1万株)、F(2800株)、J(2000株)らが名を連ねており、代表取締役にB、取締役にF、Jらが就任した(乙31)。 Bは、昭和52年10月に個人企業として化粧品の販売を開始したときから、本件各登録商標又はそれと同様の標章を化粧品の販売に使用し、有限会社アザレインターナショナル及び被告インターナショナルは、各設立時から、それらを化粧品の販売に使用している。 (5)ア他方、「アザレ化粧品」の製造は、ジュポン時代に引き続いて共和化粧品が行い、「アザレインターナショナル」と共和化粧品との間で製品取引契約が締結され、被告インターナショナルの設立を前提に昭和57年1月5日付けで、改めて、被告インターナショナルと共和化粧品との間で同内容の「製品取引契約書」(乙12)が締結された。 イ前記契約書は、概要、次のような内容のものであった。 @被告インターナショナルは、製品を完成するのに必要な外装用資材を共和化粧品に供給し、共和化粧品は、製品中身の製造に必要な原料を仕入れ、加工完成して被告インターナショナルの販売機構である各県の販売指定店に被告インターナショナルの指示に基づいて送付し、納品することとする。 A被告インターナショナルは、共和化粧品に対して被告インターナショナルの営業活動により設置する販売店全部の住所・氏名を共和化粧品に通知し、共和化粧品は、この名簿により出荷することとする。共和化粧品は、これにより被告インターナショナルの販売経路や販売方法等の詳細を知る立場を利用して、被告インターナショナルの経営を阻害する行為を行ってはならない。 B被告インターナショナルが共和化粧品に支払うべき製品の代価は、共和化粧品の見積書を被告インターナショナルが承認して決定することとする。 C共和化粧品は、被告インターナショナルの主たる商品であるメイクアップ料を水溶液中に保留した通称水彩カラーと称するアザレグレイスカラーと同一様式の製品を被告インターナショナル以外の第三者より受注してはならないこととする。 D被告インターナショナルは、アザレの商標を使用する製品のすべてを共和化粧品以外の第三者に発注してはならないこととする。 E共和化粧品は、被告インターナショナルの販売機構内の販売指定店等から被告インターナショナルの商品と異なる種類の製品でも受注してはならないこととする。 F共和化粧品の製造品種以外の製品については、被告インターナショナルは、共和化粧品を製造元と定め、共和化粧品を通じて他業者に下請けを依頼することとする。 G製品の内容処方や成分については、共和化粧品が決定して製造し、被告インターナショナルは、共和化粧品の製品内容に準じてこれを販売することとする。 H被告インターナショナルの考案による容器デザインや広告文案等については、被告インターナショナルの創作権を認めて、他の品種や被告インターナショナル以外の業者の製品に使用してはならないこととする。 ウこのように、「アザレ化粧品」の製造については、被告インターナショナルが化粧瓶や外箱を供給し、共和化粧品が中身の製造を行った上で製品を完成させ、全国の販売店に出荷するという体制がとられていた。 この体制は、昭和60年7月1日にアザレプロダクツが設立された後も引き続いてとられるが、平成9年から平成11年において被告インターナショナルが支払った「アザレ化粧品」の製造原価のうち、アザレプロダクツに支払われた分は、35%程度であった。 (6)ア「アザレ化粧品」の販売は、全国に「本舗」と呼ばれる販売指定店を設け、「アザレ札幌本舗」等の名称を使用して、本舗の販売員が顧客先を訪問して化粧品の使用方法等を指導するという訪問販売方式によって販売され、カタログ等には、「アザレ製品は、正規のアドバイザーが、消費者を訪問して直接対面し、使用する製品を選んだり、使用方法を細かく指導したり、さらに再訪問して使用結果を検討して使用方法を再指導するなどのアフターサービスを行い、製品の安定性の保持や効能効果について細かいアドバイスを行い、このように製品内容に合致した訪問・直接対面販売制度でのみ販売している。」旨が記載されていた。 イそれらの本舗の販売店契約は、すべて被告インターナショナルとの販売指定店契約としてなされている(甲60)。これらの本舗の開拓は、FがBとJを同行して行った。 ウこれらの販売指定店契約書のうち、昭和53年ころのものには被告インターナショナル及び各本舗の記名(署名)押印のほか、F及び共和化粧品が立会人として記名(署名)押印しており、昭和57年から平成2年ころまでのものには、 一部を除き、共和化粧品又はアザレプロダクツが立会人として記名押印している(甲60)。 エ本舗は、全国の都道府県ごとに置くこととされ、昭和60年ころには全国的に販売組織が整備され(甲72、被告インターナショナル代表者本人)、最終的には55本舗となった。 (7)Fは、各本舗及びその傘下の販売店や販売員から「先生」と呼ばれ、講演あるいは原告や各本舗が作成した機関誌への寄稿等によって、いわゆる自然派化粧品としての「アザレ化粧品」の基本理念を説明し(甲55、61、甲75の6)、「アザレ化粧品」の象徴とでもいうべき存在であった。 被告インターナショナル代表者(B)は、各本舗が開催する美容講習会や展示会において、化粧実演を行うなどして、「アザレ化粧品」の普及に努めた。 3アザレプロダクツの設立(1)アザレプロダクツは、昭和60年7月1日に設立された。その発起人は、 共和化粧品の代表取締役でもあったJ(全100株中54株)、同人の父であるL(共和化粧品の前代表者)を含む○○姓の者3人(計38株)、被告インターナショナル代表者(2株)、F(2株)及びQ(2株)であり、Jが代表取締役となり、被告インターナショナル代表者が取締役に就任した。 (2)ア共和化粧品は、もともと、OEM業者として他の複数の化粧品会社の化粧品を製造しており、「アザレ化粧品」以外の化粧品も取り扱っていたが、アザレプロダクツは、「アザレ化粧品」以外の製造を行わないものとして設立された。 共和化粧品とは別にアザレプロダクツが設立されたのは、Fが、次のような理由で、Jに設立を要請したことによるものである。 @ジュポン社の時代に製造者によって直接製品を製造販売されたことがあり、そのようなことが生じないように、専門の製造会社を設立させておく必要があった。 A消費者に対する「アザレ化粧品」の知名度が上がるとともに、共和化粧品」に化粧品製造を請け負わせている他の化粧品会社が、「アザレ化粧品」と同一の製造元による製品であるとの宣伝を行うことによって、「アザレ化粧品」のブランドの価値が損なわれるおそれが生じた。 B「アザレ化粧品」の専用工場を持つことが「アザレグループ」の発展に資することになる。 イ共和化粧品は、「アザレ化粧品」の製造開始後の昭和54年2月に、大阪府八尾市に工場を新設し、昭和60年7月、アザレプロダクツのために、「アザレ化粧品」専用の工場を建設し、平成元年5月には、増産のために同工場を拡張した(甲44の1、甲93)。 そして、原告発行の機関誌「アザレリポート」において、@「”アザレプロダクツ”…来年の増産計画のためには、どうしても増産体制を新しく敷く必要を痛感しましたので、現在の生産工場から二、三分のところに工場を増設する事になりました。名称は、アザレプロダクツ…。…完成後も今までの生産スタッフがそのまま業務に当ります…。…全国の本舗のみなさんの意欲的な活動が予定よりもなんと二年も早くアザレプロダクツ建設を実行させることになりました。…」(1984年〈昭和59年〉11月号)、A「アザレプロダクツ完成需要の増大に対応する新工場アザレプロダクツが、予定どおり完成し、七月六日、工事関係者より引き渡しを受け…」(1985年〈昭和60年〉7月号)、B「プロダクツ拡張全国アザレグループの躍進が業界の注目を浴びていますが、…此の度隣地に大きな原材料倉庫を建て終り活用しはじめました。…新倉庫の上に爽やかにたったアザレグループの看板が、ひときわ目を引きますね。」(1988年〈昭和63年〉8月号)などと紹介されていた(甲89)。 ウ前記ア、イの事実からすれば、アザレプロダクツは、従前の共和化粧品の「アザレ化粧品」製造部門を分社化し、「アザレ化粧品」専門の製造会社として設立されたものとみるのが相当である。 エ「アザレ化粧品」の化粧瓶や外箱は、前記2(5)の共和化粧品のときと同様に、被告インターナショナルがアザレプロダクツに供給することとされていたが、被告インターナショナルがそれらの製造を発注していた取引先は、「アザレ化粧品」専門の企業ではなく、企業名にも「アザレ」の名は付されていなかった。 (3)アアザレプロダクツは、設立後、薬事法に基づく製造許可を得て、「アザレ化粧品」のみを製造していた。 イ平成元年12月18日付けで、被告インターナショナルとアザレプロダクツとの契約が改定されたが、上記契約書(甲43、乙14)は、名称を「委託製造取引契約書」とするものであり、概要、次のような内容のものであった。 @被告インターナショナルは、製品を完成するのに必要な外装用資材を自己資金で作って、アザレプロダクツに預け、アザレプロダクツは、製品中身の製造に必要な原料を仕入れ、加工完成して被告インターナショナルの販売機構である各県の販売指定店に被告インターナショナルの指示に基づいて送付し、納品することとする。 A被告インターナショナルは、アザレプロダクツに対して被告インターナショナルの営業活動により設置する販売店全部の住所・氏名をアザレプロダクツに通知し、アザレプロダクツは、この名簿により出荷することとする。アザレプロダクツは、これにより被告インターナショナルの販売経路や販売方法等の詳細を知る立場を利用して、被告インターナショナルが開発した取引先と直接談合したり、 アザレプロダクツが別に経営する共和化粧品と被告インターナショナルの得意先と取引したりして信頼に背き、被告インターナショナルの経営を阻害する行為を行ってはならないこととする。 B被告インターナショナルがアザレプロダクツに支払うべき製品の代価は、アザレプロダクツの見積書を被告インターナショナルが承認して決定することとする。 Cアザレプロダクツは、アザレの商標を使用する製品を被告インターナショナルの指示する所以外に、いかなる理由でも出荷してはならないこととする。 D被告インターナショナルは、アザレの商標を使用する化粧品の製造をアザレプロダクツ以外の下請業者に発注してはならないこととする。ただし、医薬品及び医薬部外品は除外することとする。 Eアザレプロダクツは、被告インターナショナルの販売機構内の販売指定店等から被告インターナショナルの商品と異なる種類の製品でも受注してはならないこととする。 F製造の内容処方や成分については、被告インターナショナルとアザレプロダクツが協議の上決定して製造することとして、被告インターナショナルの承諾なく変更してはならないこととする。 G被告インターナショナルの考案による容器デザインや広告文案等については、被告インターナショナルの創作権を認めて、他の品種や被告インターナショナル以外の業者の製品に使用してはならないこととする。 ウ前記契約の内容によれば、被告インターナショナルは、「アザレ化粧品」の製造(医薬品及び医薬部外品を除く。)をアザレプロダクツ以外の業者にさせることはできないのに対して、アザレプロダクツは、他業者に外注することを禁止されていなかった。このことは、共和化粧品との契約当時も同様であり、当時の契約書では、前記2(5)イFのとおり、被告インターナショナルと共和化粧品の製造品種以外の製品については、被告インターナショナルは共和化粧品を製造元と定め、同社を通じて他業者に下請け発注をすると定められていた。 (4)アザレプロダクツの財務状況平成10年5月期決算におけるアザレプロダクツの決算報告書(乙15)中の貸借対照表によれば、アザレプロダクツが保有する固定資産額は約590万円であり、その全額は保険積立金である。また、同損益計算書によると、売上高は約13億9189万円であるが、売上原価のうちの総仕入高もこれと同額で、仕入割戻高が約1億0925万円あり、その分だけ売上総利益が計上されている。他方、 一般管理販売の明細では、人件費に約5400万円程度が計上されているが、その大部分はJの役員報酬である(乙2、証人J)。 前記(2)イのとおり、「アザレ化粧品」を製造するための工場及び什器備品等を所有していたのは共和化粧品であり、アザレプロダクツは、共和化粧品からこれらを借用して使用し、「アザレ化粧品」の製造作業も共和化粧品の従業員が出向して行っていた(甲72、乙21の9枚目、証人J)。 4「アザレ化粧品」の売上実績と広告宣伝等(1)被告インターナショナルの設立以降の売上げの推移は、原判決別紙「売上高・営業利益・商標使用料比較一覧表」の「売上高」欄記載のとおりであり、平成10年度は67億円超、平成11年度は約63億円であり(甲36、93、乙40)、同年度の申告所得は約9億6200万円であった。 (2)「アザレ化粧品」には本件各登録商標が付され、そのパッケージ(化粧瓶、外箱)には「発売元」として被告インターナショナルの名が記載され、薬事法に基づき、「製造元」としてアザレプロダクツの名が記載されていた。 (3)被告インターナショナルが作成した「アザレ化粧品」用のカタログ、パンフレットやチラシには、同被告の名のみが記載されていたものもあれば、「全国アザレグループ」と記載されていたものもあった。 (4)前記2(6)アのカタログ等と同様の記載をした広告は、全国四大紙に掲載されたが、そこには、広告主として被告インターナショナルの名のみが記載されていた。雑誌広告も、被告インターナショナルの名で掲載された。 各種ファッション雑誌の化粧品の記事には、他の化粧品と並んで「アザレ化粧品」が取り上げられることもあったが、そこでは、「アザレ化粧品」は、おおむね植物性のいわゆる自然派化粧品として紹介されており、出所としては被告インターナショナルの名が記載されていた。 (5)被告インターナショナルは、博多どんたく港祭りへの出演、全国の販売店コンクールの開催及び毎月の「アザレリポート」の発行等による各販売店への連絡や指導を行っていた。 さらに、被告インターナショナルは、各本舗用に、同被告代表者が代表取締役を務めるコスモから仕入れた多種類の販売促進用品を配布した。 (6)女性雑誌「VERY」の平成12年7月号の記事には、被告インターナショナルの「アザレ化粧品」の化粧水「ブランツ」が、愛用化粧水ランキング第4位と紹介されているが、そこにおいて、「ブランツ」は、被告インターナショナルの製品として記載されていた。 (7)このような被告インターナショナルの販売、広告宣伝により、商品としての「アザレ化粧品」ないし本件各登録商標は、需要者の間で周知となった。 5「アザレ化粧品」の製品開発(1)化粧瓶及び外箱について前記3(2)エのとおり、「アザレ化粧品」の化粧瓶及び外箱については、被告インターナショナルがアザレプロダクツに供給することとされており、また、各種化粧瓶の意匠については、Fを創作者として意匠登録出願がされ、被告インターナショナルが意匠権を取得している。 (2)内容処方及び成分等についてア前記のとおり、「アザレ化粧品」の製造は、当初は共和化粧品が、その後アザレプロダクツが担当していた。そして、被告インターナショナルと共和化粧品との契約書(乙12)では、共和化粧品が製品の内容処方や成分を決めるとされており(前記2(5)イG)、また、被告インターナショナルとアザレプロダクツとの契約書(甲43、乙14)では、両者が製造の内容処方や成分を協議の上決定するとされていた(前記3(3)イF)が、新製品の企画(新製品に係る基本理念の構想等)は別論として、製品自体の技術的な研究、開発及び製造は、共和化粧品及びアザレプロダクツが主体となって行っていた(甲93)。 イ被告インターナショナルの前身である有限会社アザレインターナショナルは、昭和54年11月、財団法人日本食品分析センターにアザレグレイスカラー3の試験を依頼したことがあった。 ウ被告インターナショナルは、研究所を有し、平成3年4月、薬剤師のRが入社したが、それ以前に、被告インターナショナルの試験研究費は年間30万円を超えたことはなく(甲93)、それ以降も、R以外に技術職が同被告に存在した形跡はない。 被告インターナショナルは、遅くとも平成4年以降は、社団法人福岡県製薬工業協会の正会員であり、平成10年には化粧品製造業許可を、平成12年には医薬部外品製造業許可をいずれも福岡県知事から受けた。 また、被告インターナショナルでは、平成8年ころからPL法相談室を設け、全国の消費者からの苦情や相談に応じる体制をとっていた。 エ被告インターナショナルとアザレプロダクツとが前記3(3)の委託製造取引契約を維持していた最終時点での「アザレ化粧品」の商品は、約38種類であり、昭和60年には26種類であり、このころ主力製品はほぼ出そろっていた(甲72、93、乙22、被告インターナショナル代表者本人)。 オ「アザレ化粧品」は、その発祥の経緯にかんがみれば、Fの思想とアイディアに基づいており、Fがいなければ誕生しなかった化粧品である。他方、化粧品を製造するためには、成分の具体的な処方が必要であり、また、成分処方が同一であっても、具体的な製造方法によって製品の品質に差異が生じ得るものである(甲93)。そうすると、Fが考え方を示せば、直ちに具体的な製品化ができるというものでもなかったと考えられる。 このことと前記アないしエの事実を総合すれば、「アザレ化粧品」の基本的な使用成分やコンセプトはFが考え、平成4年ころからは被告インターナショナルの研究所においてサンプルを作成するなどもしていたが、化粧品製造技術をもってFのアイデアを現実に量産できる化粧品として具体化していったのは、当初は共和化粧品であり、アザレプロダクツ設立後は同社であったと認めるのが相当である。 6本件各商標権(1)本件各商標権は、前記2(3)のとおり、F個人が保有していた。 (2)アFは、本件各登録商標につき、被告インターナショナルが設立された昭和57年1月ないし本判決別紙「Fの本件商標権取得年月日」記載の日ころ、被告インターナショナルとの間で、Fが被告インターナショナルに対してこれらの登録商標の使用を許諾し、被告インターナショナルがF又は同人の指定する者(ワンダフル)に対して、当事者間で合意した金額の商標使用料を支払う旨の本件各使用許諾契約を締結した。 イ商標使用料は、被告インターナショナルから、当初はFに対して、昭和57年3月以後は、Fが同月設立したワンダフルに対して、原判決別紙「売上高・営業利益・商標使用料比較一覧表」の「商標使用料」欄記載のとおり支払われていた(甲36、乙40)。 ウワンダフルは、主として、被告インターナショナルから支払われる本件各登録商標の使用料を収受し、これを管理することを目的とする会社であって、Fが節税目的で設立した同人の個人会社である(乙42)。 ワンダフルの設立に際し(日付はいずれも設立前の昭和57年1月5日付け)、ワンダフル(代表取締役F)とFとの間の「協定書」(乙7)及び被告インターナショナル(代表取締役B)とワンダフル(代表取締役F)との間の「商標使用契約書」(乙6)が作成されている。上記協定書(乙7)には、「甲・有限会社ワンダフルは乙・F個人所有の商標使用権の無償貸与を受けるのを条件として、 乙の商標登録に関する一切の費用を負担することを認めることとする。」と記載されており、上記商標使用契約書(乙6)には、「(一)甲(被告インターナショナル)は乙(ワンダフル)の商標である『アザレ』を使用することとする。」、 「(三)甲は乙に対して使用料として、当該商標を使用した製品の出荷高に対して末端小売定価の2%を、支払うこととする。」等の条項がある。 このように、ワンダフルが設立された後は、形式上は、Fがワンダフルに「アザレ化粧品」に関する商標の使用を無償で許諾し、ワンダフルから被告インターナショナルに対し同商標の再使用許諾をして、被告インターナショナルはワンダフルに商標使用料を支払うものとされており、Fは、ワンダフルから役員報酬の形で、実質的には商標使用料に当たる金員を得ていた。 エ以上の事実からすれば、実質的にみれば、本件各商標権の商標権者であるFが被告インターナショナルに本件各登録商標の使用許諾をした上で、商標使用料の支払方法としてワンダフルに支払うこととされたものと認めるのが相当である。 (3)一方、「アザレ」の表示は、アザレプロダクツ、各本舗及びその傘下の販売店(販社、営業所)の商号等にも用いられ、本件各標章は、各本舗やその傘下の販売店などによって、パンフレットや会報誌のほか、「アザレ化粧品」の販売活動に係る様々な場面で使用されていた(甲75〜84)が、Fないしワンダフルは、被告インターナショナルとの間で商標使用契約を締結しただけで、アザレ化粧品販売事業に係る他の事業者との間で商標使用契約を締結することはなかった。 (4)被告インターナショナルは、平成8年4月6日、原判決別紙商標目録21、26記載の登録商標について、同月8日、原判決別紙商標目録15ないし20、22ないし25記載の登録商標について商標登録出願をし、これらは商標登録された(甲47)。 (5)被告インターナショナルは、平成12年9月22日以降、「ピュアコール」、「ピュアコールインターナショナル」等の商標について、商品区分、指定商品を化粧品等とする登録出願をし、その設定登録を受けている(甲70)。 7本件紛争の経緯(1)Fは、平成9年11月4日に死亡した。その法定相続人は、妻である原告(平成5年4月20日婚姻届出)と、Fの先妻(P)の子である補助参加人両名である(乙39)。 Fは、死亡に際して全財産を妻である原告に相続させる旨の遺言を残していた。そこで、本件各商標権は、いずれも相続により原告に承継されたものとされ、原告は、平成10年11月12日に本件各商標権の移転登録を了した(甲1の1〜8・10〜12)。また、原告は、ワンダフルの代表取締役に就任した。 (2)Fの死亡後、被告インターナショナルの取締役として、従前のB(被告インターナショナル代表者)、J(アザレプロダクツ代表者)及びS(有限会社アザレ佐賀本舗代表者)に加えて、原告が平成10年2月13日付けで、G(東京本舗であるアザレコーポレーション株式会社の代表取締役)が同年4月3日付けでそれぞれ就任した(乙66)。 平成10年3月以降、上記取締役等が毎月1回以上、「株主定例会」と呼ばれる会議を開催して、原告、アザレプロダクツ及び各本舗の「アザレ化粧品」の製造販売に関する諸問題について話し合うようになったが、次第に、上記取締役らの間で、それぞれの利害に絡んで意見が合わなくなり、同年8月ころから、J、 G、S及び原告は、被告インターナショナル代表者(B)が代表取締役を務めるコスモに対して不正に利益を横流ししている、同被告はFが使用しないようにしていた薬事法表示指定成分を含む新処方をアザレプロダクツに指示してきたなどと主張して、被告インターナショナル代表者と対立するに至った(甲57、93、乙26、70)。 さらに、平成11年2月の役員改選期において、Gが被告インターナショナルの取締役に再任されない見通しになったことから、これに不満を持ったJ、S及び原告は、同被告の取締役に再任されることを拒否し、その結果、J、G、S及び原告の4名は、いずれも同月19日付けで退任となり、同年3月以降、「株主定例会」に出席しなくなった(甲57、93)。 これらの事情から、アザレプロダクツは、被告インターナショナルに対して平成11年11月4日付け、そのころ到達の催告書(乙16)をもって、被告インターナショナルに対し、同被告の姿勢にはFによる「アザレ化粧品」の理念に反するとの疑問を抱かざるを得ないとして、新商品の開発及び販売のルールを確認することなどを要求し、納得できる説明がなければ、同催告書到達後3か月の経過により前記3(3)の委託製造取引契約の解約する旨を通知した。 その後、アザレプロダクツが、平成12年2月2日付け、そのころ到達の通知書をもって、被告インターナショナルに対し、同月5日の経過により上記委託製造取引契約を解約する旨を通知したところ、同被告も同月2日付けの回答書をもって、上記解約の申出に同意し、両者間の上記契約は、同月5日限りで合意解除された。 被告インターナショナル及びアザレプロダクツは、それぞれの立場から全国の本舗に対して説明会を開催し、経過説明をした。 (3)前記(2)の紛争の過程で、ワンダフル(代表者は原告)は、平成11年12月23日付け、そのころ到達の通知書(乙17の1)をもって、被告インターナショナルに対し、同被告の姿勢にはFの提唱したアザレ精神に反するものであり、 「アザレ」の商標に対する消費者の信頼を損なうものであるとして、同通知書到達後6か月の経過をもって、被告インターナショナルとの商標使用契約を解約する旨、また、6か月の経過以前に同契約を継続し難い事由が発生したときは、直ちに解約する旨の通知をした。 その後、ワンダフルは、平成12年2月10日付け、そのころ到達の解約通知書(乙17の2)をもって、被告インターナショナルに対し、前記(2)のとおり、同被告とアザレプロダクツとの委託製造取引契約が同月5日限りで解約されたことは、同被告との上記商標使用契約を継続し難い事由の発生に該当するとして、 同契約を直ちに解約する旨の通知をした。 さらに、原告は、アザレプロダクツの製造する化粧品こそがFの考えていた「アザレ化粧品」であるとの立場から、平成12年7月17日付け、翌18日到達の通知書をもって、被告インターナショナルに対し、本件各商標権の通常使用権設定契約を解約する旨の通知をした(甲23、乙43。もっとも、同被告は上記各解約の効力を争っている。)。 他方、原告は、アザレプロダクツに対して、本件各登録商標を使用して化粧品を製造販売することを許諾した。 (4)ア前記(2)の合意解除後である平成12年4月ころから、被告インターナショナルは、被告日本コルマーを新たな製造元として、本件各登録商標を付した化粧品の製造販売を開始した。 イ被告日本コルマーは、化粧品受託生産会社であるコルマーラボラトリーズ社と業務提携を行っているコルマーグループの一員であり、我が国の化粧品受託生産のトップメーカーで、多くの企業に受託生産(OEM)による化粧品製品を供給している(乙1)。被告日本コルマーは、被告インターナショナルの依頼を受け、化粧品を製造し、その製造する化粧品又はその包装に本件各登録商標を付している。 ウ他方、アザレプロダクツも、独自に、本件各登録商標の付された化粧品の製造販売を開始した。そして、平成12年4月から5月にかけて、約18の本舗が被告インターナショナルとの間の販売指定店契約を解除し(乙18)、アザレプロダクツの化粧品を取り扱うようになった。 エ前記各本舗が被告インターナショナルとの間の販売指定店契約を解除した理由は、Fの化粧品理念を最もよく理解しているのはアザレプロダクツであり、 アザレプロダクツが製造する製品であるから「アザレ化粧品」の品質に何ら疑念も持つことなく安心して取引をしてきたが、被告インターナショナルがアザレプロダクツ製造の製品を供給できなくなった以上、契約は履行不能になったという点にあった。 これに対し、被告インターナショナルは、各本舗に対し、アザレプロダクツらは「アザレ化粧品」を支配しようと目論んでいたこと、アザレプロダクツ製造のままでは2001年(平成13年)4月に予定されている化粧品の全成分表示に対応できないおそれもあったこと、被告日本コルマーは業界でトップクラスの生産技術と生産能力を擁していること等を説明した(甲7)。 オ前記ウのアザレプロダクツが製造販売している化粧品の発注処理の仕方は、当初は、各本舗から原告の事務所とアザレプロダクツの双方に注文書を送付し、製品はアザレプロダクツから各本舗に直送されるというものであり、その後も、原告の事務所では、各本舗から送付されていくる注文書をそのままアザレプロダクツに転送しているすぎず、商品の品質管理や苦情対策はいずれもアザレプロダクツが行っている(甲71、72、証人J、原告本人)。 (5)前記(3)の各通知に先立ち、Fとその先妻であるPとの間の子である補助参加人らは、原告に対する本件各商標権の遺贈を対象として、遺留分減殺請求権を行使して、共有持分移転登録請求権を被保全権利とする処分禁止の仮処分を福岡地方裁判所に申し立て(同裁判所平成11年(ヨ)第928号。同年11月16日受付)、同年12月10日に、補助参加人らが原告のために各5000万円を供託する方法の担保を立てさせて認容する旨の決定を受け(甲3の2、甲58)、さらに保全異議手続(同裁判所平成12年(モ)第6018号)でも、同年3月31日に同仮処分決定を認可する決定がされ、その保全抗告事件(福岡高等裁判所平成12年(ラ)第95号)においても、同年12月22日に抗告棄却の決定がされた。 また、補助参加人らは、ワンダフルに対しても、被告インターナショナル以外の者に本件各登録商標等を使用させることの差止めを求めるとともに、本件各登録商標等の使用料相当額についての不当利得返還請求として、補助参加人らそれぞれに対し、毎月560万円の仮払いを求める仮処分を申し立て(福岡地方裁判所平成12年(ヨ)第117号)、平成12年3月31日に認容決定を得た(甲4)。 ところが、補助参加人らが原告を相手にして、遺産分割協議の無効確認や遺留分減殺請求権に基づく本件各商標権の持分移転登録請求を含む財産上の請求をした訴訟(福岡地方裁判所平成11年(ワ)第3714号)において、平成12年9月5日に言い渡された第1審判決では、原告から主張された遺留分減殺請求権行使に対する価額弁償の抗弁が認められ、原告が補助参加人らに一人当たり約2億6000万円を支払うことによって、本件各商標権を完全に保有できることとされた(甲12の1)。そこで、原告はその金額をいったん供託したが、平成13年7月9日、補助参加人Cに対する供託金を取り戻し、同月13日、補助参加人Dに対する供託金を取り戻した(甲26、丙2、3)。 上記第1審判決に対して、双方が控訴し、同控訴審(福岡高等裁判所平成12年(ネ)第979号)では、平成16年10月20日、補助参加人らの本件各商標権に係る遺留分の存在を否定する旨の判決が言い渡された(甲94)。 上記控訴審判決に対して、補助参加人らは、上告提起及び上告受理申立てをした。 (6)さらに、補助参加人らは、原告、アザレプロダクツ、ワンダフル等を債務者として、次のとおり仮処分を申し立てた。 ア事件番号福岡地方裁判所平成12年(ヨ)第33号債権者補助参加人D債務者原告、ワンダフル、H、I申立て債権者はワンダフルの持分600口を有する社員であるところ、同会社の臨時社員総会議事録及び商業登記簿によると、平成10年2月26日臨時社員総会が開催され、債務者原告を同会社の取締役に選任する旨の決議がされたとの記載及び登記、同年11月7日臨時社員総会が開催され、債務者Hを取締役に、債務者Iを監査役に、債務者原告を代表取締役に選任する旨の決議がされたとの記載及び登記が存在するが、債権者に対しては臨時社員総会開催の招集通知は一度もされておらず、招集手続に著しい瑕疵が存在し、各臨時社員総会は存在しないものとして、債務者原告は取締役兼代表取締役の、債務者Hは取締役の、債務者Iは監査役の各職務を執行してはならない旨の職務執行停止、職務代行者選任などを求めた。 決定債権者に債務者らのために各50万円を供託する方法による担保を立てさせて認容(平成12年4月27日。甲5)。 イ事件番号福岡地方裁判所平成12年(ヨ)第316号債権者補助参加人ら債務者アザレプロダクツ申立て遺留分減殺請求による本件各商標権の持分権に基づき、債務者に対して、本件各登録商標等を使用した化粧品の製造販売等の差止めを求めた。 決定却下(平成12年10月26日。甲8)(7)被告インターナショナルは、本件各登録商標の使用料をワンダフルに対して支払っていたが、原告は、被告インターナショナルに対し、同使用料を、平成12年11月分から原告に直接支払うように同年10月20日付け通知書をもって催告し、同通知書は、同年10月23日、同被告に到達した(甲24)。しかし、同被告は、原告に対し、同年11月分以降の本件各登録商標の使用料を直接支払っていない(乙65)。 (8)被告インターナショナルは、平成12年3月13日、大阪地方裁判所に、 アザレプロダクツを債務者として、原判決別紙商標目録4、6及び7記載の登録商標は、被告インターナショナルの商品表示として周知性又は著名性を有しているとして、不正競争防止法2条1項1号若しくは2号、3条に基づいて、これらの登録商標を使用した化粧品等の製造販売等の差止めを求める仮処分(同裁判所平成12年(ヨ)第20015号)を申し立て、同裁判所は、同年12月7日、その申立てを却下する旨の決定をした(甲35)。これに対し、被告インターナショナルは、当裁判所に即時抗告(当裁判所平成13年(ラ)第20号)をしたが、当裁判所は、平成13年9月3日、抗告棄却の決定をした(甲48)。 (9)原告は、被告インターナショナルに対し、平成12年12月25日及び平成13年6月4日の原審口頭弁論期日において、本件各使用許諾契約を解除する旨の意思表示をした。 第4被告インターナショナル及びアザレプロダクツの役割について1前記第3の認定事実によれば、本件紛争発生前におけるアザレ化粧品販売事業は、Fが創始したいわゆる自然派化粧品である「アザレ化粧品」を普及させるとの目的の下に、被告インターナショナルを販売元(総販売元)、アザレプロダクツ(同事業の創業以来製造を担当してきた共和化粧品の実質的承継人)を製造元として、全国各地に展開する本舗(販売指定店)及びその傘下の販売店(販社、営業所)に「アザレ化粧品」を供給し、本舗等が消費者に対する販売活動等を行い、これらの事業者(企業)等がそれぞれの役割を分担しながら一つのグループ(いわゆる「アザレグループ」)を形成していく過程において、次第に消費者の間に認識され、その信頼を獲得し、発展していったものと認められる。 そして、上記販売事業における法的関係は、@製造面では、中身の製造は被告インターナショナルとアザレプロダクツとの間で委託製造取引契約が締結され、 容器(化粧瓶)及び外箱については同被告が他社から調達してアザレプロダクツ(前同)に供給しており、A販売面では、被告インターナショナルが全国の本舗と販売指定店契約を締結して、種々のパンフレットを作成したり、本舗への指導、連絡を行うなどし、併せて広告宣伝を行っており、B商標使用の面では、被告インターナショナルが、形式的にはワンダフルとの間で、実質的にはFとの間で本件各登録商標の使用契約を締結し、ワンダフルに多額の使用料を支払ってきたというものである。このような法的関係からすれば、被告インターナショナルは、本件紛争発生前におけるアザレ化粧品販売事業において、対外的にも対内的にも中心的存在であったものというべきである。 2一方、以下の点を総合考慮すると、アザレプロダクツは、本件紛争発生前におけるアザレ化粧品販売事業において、「アザレ化粧品」の単なる中身の下請製造業者又はOEM製造メーカーとは異なった役割を果たしていたというべきであるし、むしろ、上記販売事業において、対外的にも対内的にも被告インターナショナルと並ぶ存在として、「アザレグループ」の中核的役割を果たしていたものと認めるのが相当である。 (1)需要者たる消費者からすれば、昭和60年7月のアザレプロダクツ設立以降は、化粧品の容器や外箱には製造元として「アザレ」の名を冠したアザレプロダクツの名が、販売元として同じく「アザレ」の名を冠した被告インターナショナルの名が記載されており、前記第3、4(3)のとおり、カタログ、パンフレットやチラシの中には「全国アザレグループ」と記載されていたものもあり、しかも、前記第3、2(6)認定の販売方法(訪問販売方式)からすると、消費者は、「アザレ」の名の付された本舗傘下の販売員による訪問販売を受けたことから、商号にも商品名と同じ「アザレ」の名の付されたこれらの事業者(企業)が一つのグループを形成し、いわゆる「アザレグループ」をもって「アザレ化粧品」の出所であると認識していたものと考えられ、特に被告インターナショナルとアザレプロダクツを区別していなかったとみることができる。 もっとも、前記第3、4(3)、(4)認定のように、各種の広告やカタログ等には、被告インターナショナルの名のみが記載されていたものも存在するが、被告インターナショナル及びアザレプロダクツのみならず、各本舗やその傘下の販売店の商号等にも「アザレ」の名が冠されていたのであるから、広告やカタログ等に被告インターナショナルの名のみが記載されていたからといって、上記認定判断は左右されない。 (2)前記第3の認定事実によれば、「アザレ化粧品」は、いわゆる自然派化粧品として世に広く認められており、その製品理念と現実の製品の使用感の良さが需要者に受け入れられ、全国的販売組織の整備と相まって、売上げを飛躍的に増大させていったものというべきであるから、「アザレ化粧品」が周知性を獲得し、消費者からの信頼を受けるに当たっては、販売組織の整備及び指導や広告宣伝と並んで、製品内容も大きな比重を占めているというべきである。 そして、前記第3、5(2)オのとおり、「アザレ化粧品」を開発するに当たっては、Fが基本的な使用成分やコンセプトを考え、平成4年ころからは被告インターナショナルの研究所においてサンプルを作成するなどもしていたが、アザレ化粧品販売事業の創業以来、化粧品製造技術をもってFのアイデアを現実に量産できる化粧品として具体化していったのは、当初は共和化粧品、アザレプロダクツ設立後は同社であったと認められる。しかも、化粧品の製造においては、成分内容や処方が同一であっても、製造方法によって品質に差が生じるから、共和化粧品ないし同社から実質的に分社化されたアザレプロダクツが、アザレ化粧品販売事業の創業以来、一貫してその製造を行ってきたことも、「アザレ化粧品」の周知性獲得に当たって無視できない寄与をしてきたものというべきである。 また、前記「アザレ化粧品」の販売方法(訪問販売方式)からすると、その販売網(本舗)の整備も、「アザレ化粧品」の周知性獲得に当たって重要な要素を占めていたといえるが、前記第3、2(6)のとおり、アザレ化粧品販売事業の創業時から平成2年ころまでの販売指定店契約書には共和化粧品又はアザレプロダクツが立会人として記名押印しているのであって、販売網の整備に当たっても、共和化粧品又はアザレプロダクツが、相応の寄与をしてきたと考えられる。 (3)前記第3、2及び3の認定事実によれば、@アザレ化粧品販売事業の創業は、JらのFに対する強い要請が発端となっており、Fは、その事業展開に当たり、「アザレ化粧品」の製造部門をJにゆだねていること、Aアザレ化粧品販売事業が発展していく過程で、Jは、被告インターナショナルの株主となるとともに、 その取締役に就任し、また、同被告代表者(B)は、アザレプロダクツの株主となるとともに、その取締役に就任しているが、このような関係は、「アザレグループ」内では同被告とアザレプロダクツだけであること、B被告インターナショナルと共和化粧品ないしアザレプロダクツとの間における「アザレ化粧品」の製造に関する契約では、同被告は共和化粧品ないしアザレプロダクツに対してだけ、「アザレ化粧品」の製造を委託するものとし、共和化粧品ないしアザレプロダクツだけが「アザレ化粧品」の製造元になり得るとしていたこと、C上記契約に係る被告インターナショナルと共和化粧品との契約書では、共和化粧品が製品の内容処方や成分を決めて製造するとされており、また、同被告とアザレプロダクツとの契約書では、両者が製造の内容処方や成分を協議の上決定して製造するとされていたことが認められる。 (4)以上の点からすれば、本件紛争発生前の「アザレグループ」内において、 アザレプロダクツは、アザレ化粧品販売事業創業以来の製造担当者である共和化粧品の実質的承継人として、消費者の観点からしても、グループ内部の観点からしても、重要な地位を占めていたものというべきである。このような事情があったからこそ、前記第3、3及び7で認定したように、製造側ではアザレプロダクツのみに「アザレ」の名を冠した商号の使用が許され、少なくない本舗が被告インターナショナルとの永年にわたる販売指定店契約を解除して、新たにアザレプロダクツの製品を取り扱うようになり、本件各商標権を承継した(ただし、補助参加人両名と紛争中である。)原告も、被告インターナショナルに本件各商標権の使用契約を解除する通知をして、逆にアザレプロダクツに使用許諾をするに至ったものと考えられる。 3(1)ところで、前記第3、3(4)のとおり、本件紛争発生前は、アザレプロダクツは独自の生産設備や従業員を有していなかったことが認められる。 この点について、被告インターナショナルは、アザレプロダクツは、「アザレ化粧品」が専用工場で製造されているという外観・外形を装うために設立されたペーパーカンパニーにすぎない旨主張する。 しかしながら、@アザレプロダクツは、前記第3、3(3)のとおり、その設立後、薬事法に基づく製造許可を得て、専用の工場において、前記第3、4(1)認定の売上高に相当する量の「アザレ化粧品」を製造し、その容器(化粧瓶)及び外箱に製造元としてその名が記載されていること、Aアザレプロダクツは、前記第3、3(2)の経緯で、「アザレ化粧品」の創始者であるFの要請を受けたJが、アザレ化粧品販売事業の創業以来、「アザレ化粧品」の製造を行う一方で、OEM業者として他の化粧品会社(複数)の商品の製造も行ってきた共和化粧品から「アザレ化粧品」の製造部門のみを分社化し、「アザレ化粧品」専門の製造会社として設立されたものであること、B被告インターナショナル自身、前記第3、3(2)のとおり、アザレプロダクツを「アザレ化粧品」の製造元として承認した上で、機関誌等で、アザレプロダクツを「アザレ化粧品」の専用工場として、工場の建設や拡張について紹介し、同被告と並ぶ「アザレグループ」の構成員であることを宣伝していたことに照らすと、前記第3、3(4)のとおり、「アザレ化粧品」の生産設備はアザレプロダクツではなく共和化粧品が有しており、実際の「アザレ化粧品」の製造も共和化粧品の従業員が出向して行っていたものであるとしても、アザレプロダクツを単なるペーパーカンパニーにすぎないとすることはできない。 (2)また、前記第3、6のとおり、本件各登録商標については、被告インターナショナルのみが商標使用契約を締結し、商標使用料を支払ってきたものである。しかし、同認定のとおり、商標使用料の受皿となったワンダフルは、節税目的で設立されたFの個人会社であり、上記商標使用契約は、Fが、商標使用料という名目で、「アザレグループ」によるアザレ化粧品事業の収益から分配を受けるための手段であったとみるのが相当である。そうすると、被告インターナショナルしか商標使用料を支払っていないことが、「アザレグループ」が存在し、かつ、アザレプロダクツが同被告と並ぶその中核的存在であったとすることの妨げとなるものではない。 4以上によれば、本件各登録商標が出所を表示する主体は、本件紛争発生前は、Fを象徴的存在とした、被告インターナショナル、アザレプロダクツ及び全国の各本舗を包括する「アザレグループ」として需要者の間に広く認識されていたものと認められる。本件では、Fの死亡後、その「アザレグループ」が被告インターナショナル側とアザレプロダクツ側に分裂し、これに伴って、各本舗及びその傘下の販売店も二派に分かれ、被告インターナショナル又はアザレプロダクツのいずれかの傘下に属して、互いに別個の化粧品を製造販売するに至ったものである。 第5本訴請求について1(1)請求原因(1)(商標権)についてアFは、前記第3、6(1)のとおり本件各商標権を保有していたが、前記第3、7(1)のとおり、平成9年11月4日、死亡した。 イ前記第3、7(5)のとおり、平成12年9月5日に言い渡された補助参加人らと原告との間の本案訴訟の第1審判決では、原告から主張された遺留分減殺請求権行使に対する価額弁償の抗弁が認められ、原告が補助参加人らに一人当たり約2億6000万円を支払うことによって、本件各商標権を完全に保有できることとされ、原告はその金額をいったん供託したが、平成13年7月9日、補助参加人Cに対する供託金を取り戻し、同月13日、補助参加人Dに対する供託金を取り戻した。ところが、その控訴審において、補助参加人らの本件各商標権に係る遺留分の存在を否定する旨の判決が言い渡され、上記控訴審判決に対して、補助参加人らは、上告提起及び上告受理申立てをした。 したがって、本件各商標権は、原告のみに帰属するものか、原告が持分4分の3、被告補助参加人らがそれぞれ持分8分の1の共有状態にあるものかは確定していない。 (2)請求原因(2)(使用許諾契約)について前記第3、6(2)のとおり、Fは被告インターナショナルとの間で本件各使用許諾契約を締結したものであるが、@本件各商標権が原告のみに帰属する場合は、原告が単独で本件各使用許諾契約の当事者たる地位を承継したことになるし、 A本件各商標権が原告と補助参加人らとの共有である場合は、本件各使用許諾契約の当事者たる地位は、原告が持分4分の3、被告補助参加人らがそれぞれ持分8分の1の共有状態にあることになる。 商標使用許諾契約の当事者たる地位を、原告が単独で承継したとすると、 本件各使用許諾契約の解除は、原告が単独で決することになるのは当然であるが、 上記地位が共有状態にあるとした場合、その商標使用許諾契約の解除は共有商標権の管理行為(民法264条、252条)に当たり、持分の価格に従ってその過半数をもって決することができるというべきであるから、仮に債務不履行など解除の要件があるとすれば、本件各使用許諾契約の解除は、持分4分の3を有する原告が決することができるというべきである。 したがって、本件の場合、いずれにせよ、本件各使用許諾契約の解除は、 原告において決することができる。 (3)請求原因(3)(本件各登録商標を「アザレグループ」という共同体の出所表示として使用するべき義務に違反したこと。債務不履行1)についてア前記第3で認定された事実の経過及び前記第3、2(4)、4(2)に認定された本件各登録商標の使用態様にかんがみれば、本件各使用許諾契約は、Fを中心とした、被告インターナショナル、アザレプロダクツ及び全国の本舗を包括する「アザレグループ」を出所として表示するために用いる限りにおいて使用を許諾するという合意を含むものであったと認められる。 イ前記第4、4のとおり、本件各登録商標が出所を表示する主体は、本件紛争発生前は、「アザレグループ」として需要者の間に広く認識されていたものと認められ、本件では、Fの死亡後、その「アザレグループ」が被告インターナショナル側とアザレプロダクツ側に分裂し、これに伴って、全国の本舗等も二派に分かれ、被告インターナショナル又はアザレプロダクツのいずれかの傘下に属して、互いに別個の化粧品を製造販売するに至ったものである。 被告インターナショナルは、アザレプロダクツと同様に、本件紛争発生前から「アザレグループ」を構成していた者であり、「アザレグループ」で中心的な役割を果たしていたことや、「アザレグループ」の分裂の経緯にかんがみれば、 分裂によって、被告インターナショナルについて、本件各登録商標が出所を表示する主体の一員であることが否定されることはないものというべきである。そうであるとすれば、被告インターナショナルが被告日本コルマーの製造した本件各登録商標を付した化粧品を販売することは、前記アの本件各使用許諾契約に含まれる合意に反することはないものというべきである。 ウ(ア)原告は、@被告日本コルマーが製造した化粧品により、従前アザレプロダクツが製造した化粧品を使っていた者に皮膚トラブルが多発していることから、被告日本コルマーが製造し、被告インターナショナルが販売している化粧品は、従前アザレプロダクツが製造し、被告インターナショナルが販売してきた化粧品と、同一の化粧品とはいえず、別の化粧品であること、A被告インターナショナルは、自らが販売する本件各登録商標を付した化粧品の製造者を、原告及びアザレプロダクツの承諾なくして、アザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したこと、B被告インターナショナルが化粧品の製造者をアザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したことにより、従前アザレプロダクツが製造した「アザレ化粧品」がいわゆる自然派化粧品として高い評価を獲得したことによって築かれてきた本件各登録商標に対する消費者の信用が急速に失われつつあること、C被告インターナショナルは、アザレプロダクツの製造する本件各登録商標を付した化粧品を、 偽物であると宣伝していること、D被告インターナショナルが、アザレプロダクツに対して、原判決別紙商標目録4、6及び7記載の登録商標の使用差止めを求める仮処分を申し立てたことからすると、被告インターナショナルは、平成12年4月ころ、「アザレグループ」を離脱したものであり、被告日本コルマーが製造し、被告インターナショナルが販売する化粧品は、「アザレグループ」を出所とするものとはいえなくなった旨主張する。 (イ)証拠(甲41、49、50)によれば、被告日本コルマーが製造し被告インターナショナルが販売した化粧品を使用した者の中に皮膚トラブルを生じた者のあったことが認められる。しかし、証拠(甲49の2、被告インターナショナル代表者本人)及び弁論の全趣旨によれば、これらの皮膚トラブルの原因は、体調不良や気候など他の原因に起因する場合もあり、他の化粧品にも皮膚トラブルのあることが認められ、必ずしも被告インターナショナルの販売する化粧品がアザレプロダクツ製から被告日本コルマー製に変わったことが原因であるとは断定できない。また、前記第3、7(4)イのとおり、被告日本コルマーは、化粧品の受託生産を広く行っている企業であることに加え、証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば、 被告日本コルマーの製造に係る化粧品は、従前のアザレプロダクツの製造した化粧品とほぼ同様の内容成分を使用しており、従前のアザレプロダクツの製造した化粧品よりも石油系成分を低減させるなどの改良を加えた製品もあることが認められ、 いわゆる自然派化粧品として人気を集めた従前の「アザレ化粧品」のイメージに反するものではないと認められる。そして、「アザレグループ」の分裂後、被告インターナショナル側に付いた各本舗によって、消費者に対して被告日本コルマー製の化粧品の販売が継続されている。これらの事実に、前記第3、7の「アザレグループ」の分裂の経緯を併せ考えると、前記(ア)@ないしBに関する原告の主張は、採用することができない。 証拠(甲20〜22、32)によれば、被告インターナショナル又は同被告側に付いた本舗が、アザレプロダクツ側の化粧品が正規の「アザレ化粧品」ではなく、類似品である旨記載したチラシなどを配布したことが認められ、また、 前記第3、7(8)のとおり、被告インターナショナルは、アザレプロダクツに対して、原判決別紙商標目録4、6及び7記載の登録商標の使用差止めを求める仮処分を申し立てた。しかし、「アザレグループ」の分裂に至る経緯、並びに分裂後、被告インターナショナルとアザレプロダクツ及びそれぞれの側に付いた本舗の間で、 いずれの側もが、Fの生前の「アザレグループ」の承継者である旨主張して厳しい対立が続いていることにかんがみれば、これらの事実は、そのような対立関係を巡る紛争の一環というべきであり、このような事実があるからといって、それによって、被告インターナショナルが「アザレグループ」を離脱したとはいえないし、同被告の販売する化粧品が「アザレグループ」を出所とするものといえなくなったということはできない。したがって、前記(ア)C、Dに関する原告の主張は、採用することができない。 そして、以上に述べたところによれば、原告の主張する前記(ア)@ないしDの事実のうち当事者間に争いのない事実及び証拠によって認定される事実を併せ考えても、被告インターナショナルが「アザレグループ」を離脱したということはできないし、被告日本コルマーが製造し被告インターナショナルが販売する化粧品が「アザレグループ」を出所とするものといえないとも認められない。 エしたがって、請求原因(3)の債務不履行の主張は、理由がない。 (4)請求原因(4)(背信行為。債務不履行2)についてア商標の使用許諾契約において、使用者が商標権者に対して著しい背信行為を行った場合、信義則違反として債務不履行とされる場合があることは否定し得ないが、本件において、著しい背信行為があったかどうかについて、以下検討する。 イ(ア)前記第3、7(2)のとおり、平成11年2月19日、被告インターナショナルの株主総会で、Gが取締役に再任されない見通しになったことから、J、 S及び原告は、これに反発して、被告インターナショナルの取締役として再任されることを拒否し、その結果、以上の4名は、いずれも同日付けで退任となったものである。その背景には、被告インターナショナル代表者を中心とするグループとアザレプロダクツ代表者であるJ、G、S及び原告を中心とするグループの対立が深まっていたという事情があったことは否定し得ない。しかし、Gは、本件各登録商標の商標権者でも本件各使用許諾契約の当事者でもないし、Gを取締役に再任しないことは、被告インターナショナルの株主総会で議決されたことであるから、Gが取締役に再任されなかったことをもって、被告インターナショナルの背信行為ということはできない。 (イ)前記第3、7(5)、(6)のとおり、補助参加人らは、原告、アザレプロダクツ、ワンダフル等を債務者として、原告主張の仮処分(福岡地方裁判所平成11年(ヨ)第928号、平成12年(ヨ)第117号、同年(ヨ)第33号、同年(ヨ)第316号)を申し立てた。しかし、補助参加人らは、Fの法定相続人として、受遺者である原告に対して遺留分減殺請求権を主張し得る立場にあること、また、補助参加人Dがワンダフルの社員であることからすれば、これらの仮処分は、補助参加人らがその利益を守るために申し立てたものと認められ、かつ、これらの行為は、本件各使用許諾契約上の義務や「アザレ化粧品」の信用性等にはかかわりのない事柄であるから、これらの仮処分の申立てをもって、被告インターナショナルの背信行為と認めることはできない。 また、証拠(甲64)によれば、被告インターナショナル代表者が代表取締役を務めるコスモと補助参加人らとの間で、遺留分減殺請求権の行使やワンダフルにおける社員としての権利行使に必要な費用等をコスモが立て替える契約が締結されたことが認められるが、補助参加人らがその利益を守るために上記のような仮処分申立てをする理由があるのであるから、そのことを援助するような行為を被告インターナショナル代表者がすることをもって、背信行為に当たるとすることはできない。 また、被告インターナショナルがアザレプロダクツを債務者として申し立てた仮処分(大阪地方裁判所平成12年(ヨ)第20015号)は、本件各商標権の持分を有する原告を債務者とするものではないし、「アザレグループ」が被告インターナショナル側とアザレプロダクツ側に分裂した後、双方の対立関係を巡る紛争の一環として申し立てられたものであることからすれば、これをもって、被告インターナショナルの著しい背信行為ということはできない。 (ウ)証拠(甲13〜18)によれば、「アザレグループ」の分裂後、被告インターナショナル側に付いた本舗が配布した文書の中には、「アザレ化粧品」の商標を被告インターナショナル側だけが使用することができるとも受け取り得る記載があったことが認められ、また、証拠(甲20〜22、32)によれば、被告インターナショナル又は同被告側に付いた本舗が、アザレプロダクツ側の化粧品が正規の「アザレ化粧品」ではなく類似品である旨記載したチラシなどを配布したことが認められる。 しかし、前記第3、7(5)のとおり、補助参加人らは、原告に対する本件各商標権の遺贈を対象として遺留分減殺請求権を行使し、共有持分移転登録請求権を被保全権利とする処分禁止の仮処分を福岡地方裁判所に申し立て(同裁判所平成11年(ヨ)第928号)、平成11年12月10日に、補助参加人らが原告のために各5000万円を供託する方法の担保を立てさせて認容する旨の決定を受けたものであり、同決定は、原告に対し、本件各商標権等について被告インターナショナルを除き、譲渡、質権、専用使用権の設定、通常使用権の許諾その他一切の処分をしてはならない旨を命ずるものであった(甲3の2)。そして、保全異議手続でも同仮処分決定を認可する決定がされ、その保全抗告事件においても、抗告棄却の決定がされ、さらに、同仮処分決定に基づく不作為義務について間接強制を命ずる認容決定がされ(平成12年10月2日。福岡地方裁判所平成12年(ヲ)第348号。甲9の3)、同認容決定に基づき、原告が禁止事項に違反したとして違反金の支払の執行を求める執行文付与の訴えは、控訴審において、アザレプロダクツが原告の許諾を受けて本件各登録商標を使用していることが前記間接強制認容決定に違反すると判断されて、請求が認容された(平成14年11月21日。福岡高等裁判所平成13年(ネ)第972号。乙52)。これらの事実にかんがみると、被告インターナショナル側の配布した文書の中に、「アザレ化粧品」の商標を被告インターナショナル側だけが使用することができるとも受け取り得る記載があったとしても、それは全く根拠を欠くものとはいえない。 また、「アザレグループ」の分裂に至る経緯、並びに分裂後、被告インターナショナルとアザレプロダクツ及びそれぞれの側に付いた本舗の間で厳しい対立が続いていることにかんがみれば、前記認定の事実は、そのような対立関係を巡る紛争の一環というべきであり、このような事実をもって、一方的に被告インターナショナルの背信行為とするのは相当でない。 (エ)前記第3、7の「アザレグループ」の分裂の経緯にかんがみれば、 被告インターナショナルが化粧品の製造者を原告及びアザレプロダクツの承諾なくしてアザレプロダクツから被告日本コルマーに変更したことをもって、被告インターナショナルの著しい背信行為ということはできない。 (オ)前記第3、6(4)のとおり、被告インターナショナルは、原判決別紙商標目録15ないし26記載の登録商標について商標登録出願をし、これらは商標登録された。 これらの商標は、被告インターナショナルやアザレプロダクツが製造販売していた化粧品とは異なる商品の区分、指定商品のものであって、被告インターナショナルが「アザレグループ」において重要な位置を占めており、各本舗に対して多種類の販売促進用品の配布なども行っていたことにかんがみれば、これらの商標について被告インターナショナルが登録出願をしたとしても、その事実をもって、被告インターナショナルの著しい背信行為ということはできない。 (カ)前記第3、6(5)のとおり、被告インターナショナルは、平成12年9月22日以降、「ピュアコール」、「ピュアコールインターナショナル」等の商標について、商品区分、指定商品を化粧品等とする登録出願をし、その設定登録を受けている。 しかし、本件全証拠によっても、同被告によるブランドの変更の事実は認められない。 (キ)そして、以上に述べたところによれば、原告の主張する請求原因(4)イ(ア)ないし(キ)の事実のうち当事者間に争いのない事実及び証拠によって認定される事実を併せ考えても、それらの事実をもって、被告インターナショナルの原告に対する著しい背信行為ということはできない。 ウしたがって、請求原因(4)の債務不履行の主張は、理由がない。 (5)請求原因(5)(債務不履行1、2に基づく解除。解除の意思表示1)について前記(3)エ、(4)ウのとおり、請求原因(3)、(4)の債務不履行の主張は、いずれも理由がないから、請求原因(5)の解除の意思表示は、解除の効力を生じないというべきである。 (6)請求原因(6)(商標使用料不払いに基づく解除。債務不履行3。解除の意思表示2)についてア被告インターナショナルは、前記第3、6(2)のとおり、昭和57年3月以降、商標使用料をワンダフルに支払っていたものであるところ、前記第3、7(7)のとおり、原告は、被告インターナショナルに対し、商標使用料を、平成12年11月分から原告に直接支払うように同年10月20日付け通知書をもって催告したものである。 しかしながら、前記第3、6(2)のとおり、ワンダフルが設立された後は、形式上は、Fはワンダフルに対して本件各登録商標の使用許諾をし、ワンダフルが被告インターナショナルに対して再使用許諾をして商標使用料を収受してきたものであるから、原告が個人の立場で、商標使用料をワンダフルではなく原告に直接支払うよう被告インターナショナルに対し求める権限はない。しかも、原告は、 前記第3、7(6)のとおり、平成12年4月27日の福岡地方裁判所の仮処分決定により、ワンダフルの取締役兼代表取締役の職務の執行を停止されていたのであるから、ワンダフルの代表者の立場で上記のような支払方法の変更を求めることはできず、原告の行動は上記仮処分決定を潜脱するものにほかならない。 また、実質的にみれば、本件各使用許諾契約は、商標権者であったFと被告インターナショナルとの間で締結されたものであり、商標使用料の支払方法として、被告インターナショナルがワンダフルに支払うこととされてきたものであるが、この観点からみても、支払方法の変更は、使用許諾契約の当事者の合意によって決められるべきであり、一方当事者の意思表示によって直ちに変更できるところではないと考えられる。 また、本件各使用許諾契約において、商標権者のみの意思表示によって支払先を指定することができるという合意があったとしても、前記1(1)のとおり、 本件各使用許諾契約の当事者たる地位の承継については、原告と補助参加人らの間で係争中であるから、そのような状況の下で、商標使用料の支払先を、原告と補助参加人Dが社員であるワンダフルから、原告に変更することは、商標使用料を紛争の一方当事者である原告が独占し、他の紛争当事者が収受し得ないことにもつながりかねず、本件各使用許諾契約の当事者たる地位に重大な影響を与えることになるから、原告の意思のみではなし得ない行為というべきである。 以上によれば、いずれにしても、原告が、補助参加人らの合意を得ることなく、被告インターナショナルに対して、本件各登録商標の使用料を平成12年11月分から原告に直接支払うように催告したとしても、それによって本件各登録商標の使用料の支払先が変更されることはなく、被告インターナショナルには、本件各登録商標の使用料全額を原告に直接支払う義務は生じないというべきである。 そうすると、被告インターナショナルが原告に対し、平成12年11月分以降の商標使用料を直接支払わなかったとしても、本件各使用許諾契約に違反することはなく、請求原因(6)アの債務不履行の主張は理由がない。 イしたがって、請求原因(6)イの解除の意思表示は、解除の効力を生じないというべきである。 (7)請求原因(7)(アザレプロダクツ以外の者に化粧品の製造を委託してはならないとの義務に違反したことに基づく解除。債務不履行4。解除の意思表示3)についてア「アザレ化粧品」の創設から本件各使用許諾契約の締結、アザレプロダクツの設立に至る経緯にかんがみれば、本件各使用許諾契約は、「アザレグループ」の存在を前提として、「アザレグループ」に属さない者に化粧品の製造を委託してはならないという合意、又は「アザレグループ」に属する者が製造する化粧品についてのみ本件各登録商標の使用を許諾するという合意を含むものであったと認めるのが相当である。 しかるところ、被告インターナショナルが、アザレプロダクツと同様に、本件紛争発生前から「アザレグループ」を構成していた者であり、「アザレグループ」で中心的な役割を果たしていたこと、「アザレグループ」の分裂の経緯、 そして、前記(3)ウ(イ)のとおり、被告インターナショナルが被告日本コルマーに製造を委託している化粧品が、いわゆる自然派化粧品のイメージに反するものでないことにかんがみれば、分裂後、被告インターナショナルが、自らが販売する化粧品の製造をアザレプロダクツではなく被告日本コルマーに委託し、その化粧品を販売したとしても、上記合意に反することはないというべきである。 そうすると、請求原因(7)アの債務不履行の主張は、理由がない。 イしたがって、請求原因(7)イの解除の意思表示は、解除の効力を生じないというべきである。 2その他、原審及び当審における当事者提出の各準備書面等に記載の主張に照らし、原審及び当審で提出、援用された全証拠を改めて精査しても、前記認定判断を覆すに足りるものはない。 3よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の本訴請求はいずれも理由がない。 第6結論以上の次第で、原告の本訴請求をいずれも棄却した原判決は相当であって、本件控訴はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。 (当審口頭弁論終結日平成16年12月22日)大阪高等裁判所第8民事部裁判長裁判官竹原俊一裁判官小野洋一裁判官長井浩一(別紙)Fの本件商標権取得年月日原判決別紙商標目録1の商標権平成4年2月28日(設定登録日)同2の商標権昭和58年11月28日(移転登録日)同3の商標権昭和61年9月29日(設定登録日)同4の商標権平成9年3月12日(設定登録日)同5の商標権昭和57年7月12日(移転登録日)同6の商標権平成9年5月16日(設定登録日)同7の商標権平成9年5月16日(設定登録日)同8の商標権平成9年5月16日(設定登録日)同10の商標権昭和62年8月19日(設定登録日)同11の商標権平成9年10月3日(設定登録日)同12の商標権平成9年10月3日(設定登録日)(備考)1上記1、4、6ないし8及び10ないし12の各商標権は、いずれも、Fが、原判決別紙商標目録1、4、6ないし8及び10ないし12記載の各出願日に商標登録の出願をし、同記載の各登録日(上記各設定登録日)に設定登録がなされたものである。 2上記2及び5の各商標権は、それぞれ、原判決別紙商標目録2及び5記載の各出願日(昭和53年8月29日及び昭和49年8月12日)にP名義で商標登録の出願がなされ、同記載の各登録日(昭和58年1月28日及び昭和52年5月12日)に同人名義で設定登録がなされた後、上記各移転登録日に同人からFへの移転登録がなされたものである。 3上記3の商標権は、原判決別紙商標目録3記載の出願日(昭和56年9月7日)にP名義で商標登録の出願がなされ、同記載の登録日(上記設定登録日)にF名義で設定登録がなされたものである。 以上 |