関連審決 | 審判1997-20434 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成15ワ1521商標権侵害差止請求事件 | 判例 | 商標 |
昭和55行ケ9 | 判例 | 商標 |
平成9ワ26980商標権使用差止等請求事件 | 判例 | 商標 |
平成20行ケ10139審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成18行ケ10280審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 識別力 / 識別機能 / 指定商品 / 混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) / 4条1項11号 / 類似性(類否判断) / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 要部観察 / 出所の混同 / 非類似 / |
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事件 |
平成
11年
(行ケ)
166号
審決取消請求事件
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原告 リーバイストラウス アンド カンパニー 代表者 A 訴訟代理人弁護士 関根秀太 同 後藤康淑 同 石村善哉 同 岩本昌子 同 伊藤 毅 被告 株式会社ビッグジョン代表者代表取締役 B 訴訟代理人弁護士 大野聖二 同 弁理士 C |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 1999/12/15 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた判決
1 原告特許庁が、平成9年審判第20434号事件について、平成11年1月19日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告 主文1、2項と同旨 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は、別添審決書写し別紙「1本件商標」のとおりの構成よりなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」(平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令の区分による。以下同じ。)を指定商品とする登録第2716443号商標(昭和63年2月25日登録出願、平成8年9月30日設定登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。 原告は、平成9年12月2日、被告を被請求人として、本件商標につき登録無効の審判の請求をした。 特許庁は、同請求を平成9年審判第20434号事件として審理した上、平成11年1月19日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年2月10日、原告に送達された。 2 審決の理由 審決は、別添審決書写し記載のとおり、本件商標が、同写し別紙「2引用商標」のとおりの構成よりなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)、布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く)」を指定商品とする登録第1592525号商標(昭和46年2月24日登録出願、昭和58年5月26日設定登録、以下「引用商標1」という。)及び同別紙「3引用商標」のとおりの構成よりなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)、布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く)」を指定商品とする登録第2006244号商標(前同日登録出願、昭和62年12月18日設定登録、以下「引用商標2」といい、引用商標1及び2をまとめて「引用商標」という。)と、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であり、本件商標をその指定商品に使用しても、その出所について混同を生じるおそれはないから、 商標法4条1項11号及び15号のいずれの規定にも違反して登録されたものということはできず、その登録を無効とすべきではないとした。 |
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原告主張の取消事由の要点
審決の理由中、本件商標が、別添審決書写し別紙「1本件商標」のとおりの構成よりなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品とすること、引用商標1が、同別紙「2引用商標」のとおりの構成よりなり、引用商標2が、同別紙「3引用商標」のとおりの構成よりなり、両商標が、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)、布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く)」を指定商品とすること、両当事者の主張の認定、本件商標と引用商標との類否判断の一部(審決書13頁9〜12行、14頁14〜22行(ただし、評価に関する部分を除く。)、15頁5〜6行、15頁15〜17行)は認める。 審決は、本件商標と引用商標との、外観上の類否判断を誤る(取消事由1)とともに、本件商標が、商品の出所について混同を生ずるおそれがないと誤って判断している(取消事由2)から、違法として取り消されるべきである。 1 外観上の類否判断の誤り(取消事由1)1 審決が、「本件商標と引用商標は、・・・いずれも実線とその内側に実線に沿って二重の破線を配した左右相対の五角形の外形とその外形を上下に二分するように横断する二重破線を配した図形からなるものである。」(審決書13頁9〜12行)と認定したことは認めるが、「この種業界においては、前記五角形の外形そのものは、ありふれたものであり、自他商品識別力がないか又は極めて弱いものであって、その内部に表された形状が自他商品識別の際の重要な要素になるものといわなければならない。」(同14頁9〜13行)と判断したことは誤りである。 確かに、本件商標及び引用商標における「実線とその内側に実線に沿って二重の破線を配した左右相対の五角形」の部分は、ジーンズのヒップポケットの形状を素材とするデザインであるが、ジーンズのヒップポケットの形状には、五角形の下側部分が円弧状であるもの、五角形の縦と横のバランスが異なるもの、ポケットの外周の内側に二重破線をデザインとして利用していないものなどがあり、本件商標及び引用商標における五角形の部分が、直ちに「ありふれたもの」、あるいは「識別力の弱いもの」とはいえないのである。 そして、外周の二重破線部分とその「内部に表された形状」とは、同じ色と太さの波線、かつ、二重の波線間の間隔もほぼ同じものからなり、それら両者の配列が、一体としたデザインとして認識される。このように一体として観察された際に、両商標が類似のものとして認識される以上、あえて「内部に表された形状」が要部であり「実線とその内側に実線に沿って二重の破線を配した左右相対の五角形」が付加的な部分として分離する必要性・合理性はない。 しかも、ヒップポケットの図案の商品識別力ひいては商標の類似性を考える場合、五角形の「内部に表された形状」のみの類似性を考えるのではなく、五角形の「内部に表された形状」の位置、その「内部に表された形状」が五角形全体の中で占める割合を重視した、全体のイメージが非常に重要となるのである。 従前の特許庁における登録異議の申立てについての決定(甲第16〜第19号証)においても、五角形の形状を含む全体としての構成に同一性があることが理由とされており、このことからしても、ヒップポケットの図案の類似性判断において、五角形の形状を含む全体の構成が重要視されるべきことが明らかである。 2 審決が、「本件商標と引用商標は、いずれも前記五角形の形状を基調とするものであるが、・・・その五角形の外形を上下二分するように横断する二重破線を配した形状において、本件商標は大部分が直線であり、中央で湾曲している部分もその曲がり度合いがわずかで、しかも交差することなく下方部分が離れているのに対し、引用商標は全体が曲線になっており、中央部において左右両方向からの曲線の末端が交差し、その交差部分に小さな三角形を配置した如き形状をしているという差異を有し」(審決書14頁14〜22行)と認定したことは認めるが、「これらの差異が全体に与える影響が決して少なくなく、両者は全体として看者に別異の印象を与えるものである。」(同14頁22行〜15頁2行)と判断したことは、両商標の細部の相違点を強調する一方で、全体の類似点を前記のとおりあまりに軽視しており、妥当な判断手法とはいえない。 すなわち、両商標において、横断二重破線は、五角形の中段部を横断する形で位置しているのであり、五角形の上下の空間部分と比べて、この横断二重破線が五角形の内側で占める割合は、それほど大きくない。そして、引用商標において、横断二重破線は、五角形の両端から交わることなく中心部に向かい並行な関係を保ちながら下方に湾曲している。他方、本件商標の横断二重破線も、五角形の両端から中心部までの約3分の2の部分は並行な直線であるが、残りの3分の1の部分は、並行な関係を保ちながら下方に湾曲している。そして、両商標において、横断二重破線が中心部で交差するときの交差角度は、いずれも鈍角である。 このような五角形の内部の横断二重破線を五角形全体の配列の中でみるとき、本件商標において看者の印象に残るのは、二重の破線が並行しながら、五角形の両端中段部から中心部に向かって下方になだらかな曲線を描いているというイメージであり、引用商標との相違点である、破線の交差点において下方部分が離れている点や、破線の両端3分の2が直線であるという点は、全体の印象の中で非常に小さなものにすぎないのである。 2 商品の出所についての混同のおそれ(取消事由2) ジーンズは一般の消費者向けの衣料品であり、その主要な消費者は、十代を中心とした若年層又はこれらを子供に持つ主婦層等のごく一般の人々であり、商品に対する専門的な知識を有する者ではないといえる。このような一般の消費者が本件商標を見た場合、その外観より原告の商品であると識別し、商品を購入するものと考えられ、両商標の差異を認識するのは、特別な商品知識を持った業者や収集家に限ったものといえる。 そうすると、本件商標と引用商標とは、前示のとおり、図形の細部において若干の差異はあるものの、その構成が同一であり、両商標を隔離的に全体としてみた場合にこれらの差異は微差にすぎないから、両商標は、外観において相紛れるおそれの高い類似の商標であり、本件商標をその指定商品に使用すると、取引者・需要者が、該商品を原告又は原告と経済的・組織的に何らかの関係がある者の製造販売に係る商品と誤認し、商品の出所の混同を生じるおそれも高いといえる。 したがって、審決が、「本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が請求人(注、本訴原告)又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如くにその出所について混同するおそれはない」(審決書15頁19〜22行)と判断したことは誤りである。 |
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被告の反論の要点
審決の認定判断は正当であり、原告の主張の取消事由はいずれも理由がない。 1 取消事由1について1 この種商標において、五角形の外形の部分は、自他商品識別機能を有しておらず、この機能を有するのは、五角形を除いた部分である。したがって、審決が五角形の部分を除いて要部観察を行ったことに誤りはない。 また、本件商標及び引用商標は、原告が主張するような、特殊な五角形をしておらず、しかも、デザインの一体性と要部観察は、次元を異にする問題であり、デザインが一体的に捉えられたとしても、要部観察が否定されるものではない。 原告が主張する登録異議の申立てについての決定と、本件は事案を異にしており、本件の要部観察の手法が誤りであるとの理由にはならない。 したがって、この点に関する審決の認定(審決書13頁13行〜14頁13行)に誤りはない。 2 審決が認定するように「本件商標は大部分が直線であり、中央で湾曲している部分もその曲がり度合いがわずかで、しかも交差することなく下方部分が離れている」から、本件商標について、看者の印象に残るのは、二重の波線が並行しながら、直線的に横断しているイメージであり、引用商標とは大きく異なるものである。 したがって、両商標の相違点は決して小さなものではなく、この点に関する審決の認定(審決書14頁14行〜15頁4行)にも誤りはない。 2 取消事由2について 審決が認定するように「自他商品の識別において、前記五角形の外形よりもむしろその内部に表された形状が重要な要素を占めるというこの種業界の実情」(審決書15頁16〜19行)に鑑みれば、一般の消費者といえども、本件商標と引用商標の五角形内部の形状の大きな相違については、容易に看取できるといえるから、 混同を生じるおそれは全くない。 したがって、この点に関する審決の認定(審決書15頁15行〜16頁1行)にも誤りはない。 |
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当裁判所の判断
1 審決の理由中、本件商標が、別添審決書写し別紙「1本件商標」のとおりの構成よりなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」とすること、引用商標1が、 同別紙「2引用商標」のとおりの構成よりなり、引用商標2が、同別紙「3引用商標」のとおりの構成よりなり、両商標が、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)、布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く)」を指定商品とすること、本件商標と引用商標とが「既成の称呼及び観念を生ずるものともいえない」(審決書15頁5〜6行)ことは、いずれも当事者間に争いがない。 2 取消事由1(外観上の類否判断の誤り)について1 本件商標と引用商標とが、「いずれも実線とその内側に実線に沿って二重の破線を配した左右相対の五角形の外形とその外形を上下に二分するように横断する二重破線を配した図形からなるものである」(審決書13頁9〜12行)ことは、当事者間に争いがない。 ところで、商品広告雑誌である「ホットドッグ・プレス」の昭和57年4月10日付け抜粋(審決甲第9号証、本訴甲第11号証)によれば、細綾織りの綿布製のズボン、すなわち、ジーンズについては、原告・被告を含むジーンズメーカー10社がいずれも、ジーンズの背面後部に位置するヒップポケットを、上部が水平であり、左右両辺が下方に垂直かやや窄まりながら垂下し、その下端が内側に折曲又は湾曲して下部を形成し、その下部の中心に頂点を有する左右対象な五角形又はこれに極めて近似した形状としており、その内側周囲を二重のステッチによって縫い付けているものと認められ、この共通する五角形又はこれに極めて近似した形状の内側に設けられたステッチのデザインが、各ジーンズメーカーにより、それぞれ異なっているものと認められる。 そうすると、審決が、「ジーンズを取り扱う業界においては、ジーンズのヒップポケットが実線とその内側に実線に沿って二重の破線を配した左右相対の五角形の外形をしており、その内側のステッチデザインがメーカーによって異なることが認識されているものといえるし、前記五角形の図形に接する取引者、需要者は、それがジーンズ以外の商品について使用されたとしても、それをヒップポケットの形状を表した図形と認識し理解するというのが相当である。」(審決書13頁19行〜14頁4行)と判断したことに誤りはないといわなければならない。 また、前記第17類を指定商品とする登録第1673824号商標(審決及び本訴乙第1号証)、登録第2316134号商標(同第2号証)、登録第2453240号商標(同第3号証)、登録第2687273号商標(同第4号証)、登録第2687281号商標(同第5号証)、登録第2687282号商標(同第6号証)、登録第2694387号商標(同第7号証)、登録第2694989号商標(同第8号証)及び登録第2719186号商標(同第9号証)並びに平成3年政令第299号による改正後の商標法施行令の区分による第25類を指定商品とする登録第3171115号商標(同第10号証)、登録第3186518号商標(同第11号証)、商公平8-53909号公報(同第12号証)、商公平8-73770号公報(同第13号証)、商公平8-53910号公報(同第14号証)及び商公平8-73774号公報(同第15号証)によれば、前記の各ジーンズメーカーに共通する五角形又はこれに極めて近似した形状を実線により形成し、その実線の内側に沿って二重の破線を配した図形において、その内部に二重破線等により工夫を凝らした様々な模様を形成したものが、本件商標の属する指定商品を取り扱う多くのメーカーによって、商標登録され、あるいは商標登録出願されているものと認められる。 そうすると、審決が、「この種業界においては、前記五角形の外形そのものは、 ありふれたものであり、自他商品識別力がないか又は極めて弱いものであって、その内部に表された形状が自他商品識別の際の重要な要素になるものといわなければならない。」(審決書14頁9〜13行)と判断したことにも誤りはないものといわなければならない。 原告は、ジーンズのヒップポケットの形状には、五角形の下側部分が円弧状であるもの、五角形の縦と横のバランスが異なるもの、ポケットの外周の内側に二重破線をデザインとして利用していないものなどがあり、本件商標及び引用商標における五角形の部分が、直ちに「ありふれたもの」、あるいは「識別力の弱いもの」とはいえないと主張する。 確かに、ジーンズのヒップポケットの形状を、特に些細な点にまで注意して観察すれば、原告主張のような形状のものも認められるが、その基本的な構成態様はいずれも、前示のとおり、上部が水平であり、左右両辺が下方に垂下し、その下端が内側に折曲又は湾曲して、その下部の中心に頂点を有する左右対象な五角形又はこれに極めて近似した形状を有するものであり、多数のジーンズメーカーにおいてその内側周囲を二重のステッチによって縫い付けているものと認められる以上、そのような構成を採用する本件商標及び引用商標のようなヒップポケットの形状において、前記五角形の部分が、看者に強い印象を与えるものでないことは明らかであり、この部分の有する自他商品識別力が弱いものであることも当然といえるから、 原告の主張を採用する余地はない。 また、原告は、外周の二重破線部分とその「内部に表された形状」とは、同じ色と太さの波線、かつ、二重の波線間の間隔もほぼ同じものからなり、それら両者の配列が、一体としたデザインとして認識される以上、「内部に表された形状」が要部であり「実線とその内側に実線に沿って二重の破線を配した左右相対の五角形」が付加的な部分として分離する必要性・合理性はないと主張する。 しかし、図形を主とする商標の類否判断において、当該商標の属する指定商品の分野における多数の商標登録又は商標登録出願により既にありふれた形状となっている部分と、工夫を凝らした様々な模様を形成した部分とが認められ、図形上、両者を分離して認識することが可能である場合、後者の部分を看者の注意を惹く要部として把握し、この点を重視してその類否判断を行うことは当然であり、これを非難する原告の主張に理由がないことは明らかである。 以上の認定事実等に照らして、原告の、前記五角形の「内部に表された形状」の位置及びこれが五角形全体の中で占める割合を重視した全体のイメージが非常に重要であるとの主張、従前の特許庁における登録異議の申立てについての決定において、五角形の形状も含む全体としての構成に同一性があることが理由とされていたとの主張が、いずれも採用できないことは明らかといわなければならない。 2 本件商標と引用商標とが、「いずれも前記五角形の形状を基調とするものであるが、・・・その五角形の外形を上下二分するように横断する二重破線を配した形状において、本件商標は大部分が直線であり、中央で湾曲している部分もその曲がり度合いがわずかで、しかも交差することなく下方部分が離れているのに対し、引用商標全体が曲線になっており、中央部において左右両方向からの曲線の末端が交差し、その交差部分に小さな三角形を配置した如き形状をしているという差異」(審決書14頁14〜22行)を有していることは、当事者間に争いがない。 そして、前記のとおり、本件商標及び引用商標の属する指定商品の分野において、前記五角形の外形がありふれた形状であるのに対し、その内側の部分が、工夫を凝らして形成された要部と認められる以上、その部分における上記の差異は、商標全体の印象に大きな影響を及ぼすものといわなければならず、その結果、両商標は、看者にとって外観上別異のものと認識されることが明らかである。 原告は、本件商標において看者の印象に残るのが、二重の破線が並行しながら、 五角形の両端中段部から中心部に向かって下方になだらかな曲線を描いているというイメージであり、引用商標との相違点である、破線の交差点において下方部分が離れている点や、破線の両端3分の2が直線であるという点は、全体の印象の中で非常に小さなものにすぎないと主張する。 しかし、前示争いのない事実のとおり、五角形の外形を上下二分する横断二重破線が、本件商標では、大部分が直線であって、中央の湾曲部分もその曲がり度合いがわずかであり、全体として直線状のものと強く印象づけられるのに対し、引用商標では、その二重破線の全体が曲線で形成され、左右に2つの湾曲状態であることが明瞭に認識できるから、両商標が別異のものと看取されることが明らかであり、 この点に反する上記原告の主張は、これを採用することができない。 したがって、審決が、「これらの差異が全体に与える影響が決して少なくなく、 両者は全体として看者に別異の印象を与えるものである。」(審決書14頁22行〜15頁2行)と判断したことに誤りはなく、その結果、「両商標は外観において彼此紛れることなく、区別し得るものというのが相当である。」(同15頁3〜4行)と判断したことにも誤りはない。 3 取消事由2(商品の出所についての混同のおそれ)について 以上のとおり、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない別異のものであり、また、ジーンズを取り扱うこの種業界において、前記五角形の外形よりむしろその内部に表された形状が、自他商品の識別上、重要な要素を占めるものと認められる。 そうすると、審決が、「本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が請求人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如くにその出所について混同するおそれはない」(審決書15頁19〜22行)と判断したことに誤りはないものといわなければならない。 原告は、本件商標と引用商標における図形の細部に若干の差異はあるものの、その構成が同一であり、両商標を隔離的に全体としてみた場合にこれらの差異は微差にすぎないから、両商標は、外観において相紛れるおそれの高い類似の商標であり、本件商標をその指定商品に使用すると、取引者・需要者が、該商品を原告又は原告と経済的・組織的に何らかの関係がある者の製造販売に係る商品と誤認し、商品の出所の混同を生じるおそれが高いと主張する。 しかし、両商標の構成が同一であり、両商標を隔離的に全体としてみた場合これらの差異は微差にすぎないとする主張自体が誤りであることは、前示のとおりであるから、原告の上記主張は、その余の点について検討するまでもなく、到底これを採用することができない。 また、原告は、ジーンズの主要な消費者が、十代を中心とした若年層又はこれらを子供に持つ主婦層等のごく一般の人々であり、商品に対する専門的な知識を有する者ではないから、このような一般消費者が本件商標を見た場合、その外観より原告の商品であると識別し、商品を購入するものと考えられ、両商標の差異を認識するのは、特別な商品知識を持った業者や収集家に限られると主張する。 しかし、前示のとおり、本件商標及び引用商標における前記五角形の外形が、ジーンズのヒップポケットにおけるありふれた形状であり、その内部に表された形状が自他商品の識別力を有するものと認められる以上、原告の主張する一般の消費者においても、商品を識別するためには、当然、この内部の形状の相違に着目しており、引用商標が付された原告商品に対しても、前記五角形の内部に表された形状が他の商標と異なることを認識し、この認識に基づいて原告の商品であることを識別しているものと推認されるから、本件商標と引用商標の差異を認識するのが特別な商品知識を持った業者や収集家に限定されるものでないことは明らかであり、原告の主張を採用する余地はない。 4 以上によれば、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、審決が、「本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも該当しない」(審決書16頁2〜3行)と判断したことは正当であり、他に審決を取り消すべき瑕疵はない。 よって、原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担並びに上告及び上告受理の申立てのための付加期間の指定につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、96条2項を適用して、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 田中康久 |
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裁判官 | 石原直樹 |
裁判官 | 清水節 |