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関連審決 審判1998-35308
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19ネ3057商標権侵害差止等請求控訴事件 平成20ネ420同附帯控訴事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  役務の提供 /  指定商品 /  4条1項11号 /  類似性(類否判断) /  結合商標 /  分離観察 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  分割移転 /  存続期間 /  無効審判 /  更新登録 /  非類似 / 
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事件 平成 11年 (行ケ) 114号 審決取消請求事件
原告 ジュジュ化粧品株式会社代表者代表取締役 【A】
訴訟代理人弁理士 【B】
被告 鐘紡株式会社代表者代表取締役 【C】
訴訟代理人弁理士 【D】
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1999/10/13
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた判決
1 原告 特許庁が、平成10年審判第35308号事件について、平成11年3月1日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は、別添審決書写し別紙(1)記載のとおり、「リッチケア」の片仮名文字、「KANEBO」の欧文字及び「RICH CARE」の欧文字を横書きで3段に併記してなり、商標法施行令別表の区分による第3類「せっけん類、化粧品」を指定商品とする登録第4061101号商標(平成8年3月1日登録出願、平成9年9月26日設定登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。
原告は、平成10年7月10日、被告を被請求人として、本件商標につき登録無効審判の請求をした。
特許庁は、同請求を平成10年審判第35308号事件として審理したうえ、平成11年3月1日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、
その謄本は、同月23日、原告に送達された。
2 審決の理由の要旨 審決は、別添審決書写し記載のとおり、本件商標が、@別添審決書写し別紙(2)記載のとおりの態様からなり、商標法施行規則(大正10年農商務省令第36号)15条に基づく類別(以下「旧々類別」という。)による第3類「香料及び他類に属しない化粧品」を指定商品とする登録第510889号商標(昭和31年3月12日登録出願、昭和32年12月4日設定登録、昭和53年5月10日、昭和62年12月14日、平成9年11月18日各存続期間更新登録)、A同審決書写し別紙(3)記載のとおりの態様からなり、旧々類別による第5類「歯磨及び他類に属しない洗料」を指定商品とする登録第530017号の1商標(昭和33年2月20日登録出願、同年11月17日設定登録、昭和53年12月12日存続期間更新登録、昭和56年3月30日本件の分割移転により指定商品が「歯磨及び他の類に属しない洗料、但し、歯磨きを除く」となった旨の登録、平成元年4月18日、
平成10年9月29日各存続期間更新登録)、B同審決書写し別紙(4)記載のとおりの態様からなり、旧々類別による第4類「石鹸」を指定商品とする登録第530500号商標(昭和33年2月20日登録出願、同年11月25日設定登録、昭和53年12月12日、昭和63年12月21日、平成10年10月27日各存続期間更新登録)、C同審決書写し別紙(5)記載のとおりの態様からなり、旧々類別による第3類「香料及び他類に属しない化粧品」を指定商品とする登録第558582号商標(昭和31年3月12日登録出願、昭和35年10月22日設定登録、昭和56年5月30日、平成2年12月21日各存続期間更新登録)、D同審決書写し別紙(6)記載のとおりの態様からなり、平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表に基づく類別(以下「旧類別」という。)による第4類「化粧品、香料類」を指定商品とする登録第705500号商標(昭和37年11月14日登録出願、昭和41年4月28日設定登録、昭和51年11月8日、昭和61年4月16日、平成8年7月30日各存続期間更新登録)、E同審決書写し別紙(7)記載のとおりの態様からなり、旧類別による第4類「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品とする登録第1373980号商標(昭和50年5月16日登録出願、昭和54年2月27日設定登録、昭和56年6月8日指定商品中の「歯みがき」につき放棄する旨の登録、平成元年1月13日存続期間更新登録)、
F同審決書写し別紙(8)記載のとおりの態様からなり、旧類別による第4類「化粧品」を指定商品とする登録第1690357号商標(昭和52年11月11日登録出願、昭和59年6月21日設定登録、平成6年10月28日存続期間更新登録)、G同審決書写し別紙(9)記載のとおりの態様からなり、旧類別による第4類「化粧品、せっけん類、香料類」を指定商品とする登録第2257997号商標(昭和63年3月31日登録出願、平成2年8月30日設定登録)(以下、上記@〜Gの各商標を併せて「引用各商標」という。)と、外観称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標は、商標法4条1項11号に違反して登録されたものではなく、同法46条1項の規定により、その登録を無効にすることができないとした。
原告主張の審決取消事由の要点
1 審決の理由中、本件商標と引用各商標とが、外観上明らかに区別し得るものであるとの認定、本件商標の「KANEBO」、「リッチケア」及び「RICH CARE」の各文字がそれぞれ目的価値を異にした機能を持つものとして分離観察され、それぞれの文字部分より生じる称呼をもって略称され、取引に資せられる場合も決して少なくないとの認定、「リッチケア」の文字が同書、同大、等間隔に一連に書されており、また、「RICH CARE」の文字も同書、同大に書されていて、それぞれ外観上まとまりよく一体的に表現されており、しかも、これより生じる「リッチケア」の称呼も簡潔で滑らかに称呼し得るものであるとの認定、並びに引用各商標が「リッチ」の称呼観念を生じるとの認定は認める。
審決は、本件商標の「リッチケア」及び「RICH CARE」の各文字部分より生じる称呼観念についての認定を誤った結果、本件商標と引用各商標との類否判断を誤ったものであるから、違法として取り消されなければならない。
2 取消事由(称呼観念の認定の誤り) (1) 上記のとおり、本件商標の「リッチケア」及び「RICH CARE」の各文字部分が、それぞれ目的価値を異にした機能を持つものとして分離観察され、
それぞれの文字部分より生じる称呼をもって略称され、取引に資せられる場合も少なくないから、いずれも本件商標の要部というべきところ、「リッチケア」の文字部分は、「リッチ」と「ケア」の各語を結合させたものであり、「RICH CARE」の文字部分は、「RICH」と「CARE」の各語を結合させたものである。
ところで、「CARE」の語は、一般に「心配、気掛かり、世話、看護、
管理、注意、配慮」等の意味を持つ英語であり、我が国では、「デイケア」、「ケア付き老人ホーム」、「ケア付き住宅」等、特に「介護、世話」を意味する語として頻繁に耳にするに至っているが、化粧品の分野では、例えば「ヘアケア」の語が毛髪の手入れを意味する語として使用され、毛髪用化粧品以外の化粧品や石鹸等に関しても、「スキンケア」、「バスケア」、「ベーシックケア」、「オプションケア」、「ボディケア」、「フェイスケア」、「ダメージケア」、「角質ケア」、
「美白ケア」などのように頻繁に使用されていて殆ど日本語化しており、少なくとも化粧品、石鹸の分野においては、「ケア」の語自体は、用途表示として使用されているものとして、識別力を有しないものというべきである。
したがって、本件商標の要部を構成する「リッチケア」及び「RICH CARE」の文字部分において、商品の識別力を備えているのは「リッチ」、「RICH」の部分であり、そうであれば、これが、「リッチ」の称呼観念を生じる引用各商標と類似することは明らかである。
このことは、特別顕著性のない語に「ケア」又は「CARE」の語を付加した構成よりなる商標の登録出願が、特別顕著性なしとして拒絶査定を受けた例が多数あること、また、特許庁の商標審査基準において、ある語に「商品の品質、原料、材料等を表示する形容詞的文字を結合させた商標は、原則として、それが付加結合されていない商標と類似する。」として、商品の品質、用途等を表示する文字を結合させたいわゆる結合商標が、原則として付加された語からなる商標と類似するとしていることに照らしても当然というべきである。
(2) 審決は、「リッチケア」の文字も「RICH CARE」の文字も、同書同大に書されていて、外観上まとまりよく一体的に表現されており、簡潔で滑らかに称呼し得るから、構成全体をもって一体不可分のものと認識し、把握されるとみるのが自然であるとし、本件商標からは、「カネボウ」、「リッチケア」の称呼
観念が生じるとしても、「リッチ」の称呼観念は生じないとするが、上記のように、「ケア」「CARE」が化粧品等の分野において特別顕著性を有しない語である以上、全体として滑らかに称呼し得るとしても、そのことの故に「リッチ」の称呼観念が生じないとするのは誤りである。
特に、「RICH CARE」の文字部分は、「RICH」の部分と「CARE」の部分との間に間隔を置いており、このような構成からも「リッチ」の観念が生じないとするのは、著しく経験則に反するものである。
被告の反論の要点
1 審決の認定・判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。
2 取消事由(称呼観念の認定の誤り)について 原告は、化粧品、石鹸の分野において、「ケア」の語が用途表示として使用されており、識別力を有しないから、本件商標の要部を構成する「リッチケア」及び「RICH CARE」の文字部分において、商品の識別力を備えているのは「リッチ」、「RICH」の部分であると主張する。
しかしながら、肌の手入れを認識させる「スキンケア」、毛髪の手入れを認識させる「ヘアケア」、爪の手入れを認識させる「ネイルケア」などのように、
「ケア」、「CARE」の文字部分を含む語の全体が、商品の品質、用途を表示してなるものであることを認識させる場合には、「ケア」、「CARE」の文字部分を含め、全体として自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものであるが、
「ケア」、「CARE」の文字部分を含む語であっても、外観上まとまりよく一体的に表わされ、かつ、全体として商品の品質、用途等を具体的に表示するものとは理解されない場合には、全体として一体不可分のものとして認識され、自他商品識別標識としての機能を果し得るものである。
そして、本件商標の「リッチケア」及び「RICH CARE」の各文字部分は、原告も認めるとおり、それぞれ外観上まとまりよく一体的に表現されており、これより生じる「リッチケア」の称呼も簡潔で滑らかに称呼し得るものであるところ、「リッチケア」、「RICH CARE」の文字部分全体として、商品の品質、用途等を具体的に表示するものとは認められないから、これらの文字部分は、全体として一体不可分のものとして認識されるものであり、したがって、本件商標からは、「カネボウ」の称呼観念のほか、「リッチケア」の称呼観念が生じるが、「リッチ」の称呼観念が生じる余地はない。
原告は、特許庁の商標審査基準において、ある語に商品の品質、用途等を表示する文字を結合させたいわゆる結合商標が、原則として付加された語からなる商標と類似するとしている旨主張するが、該審査基準には、原告の引用するように「原則として」との限定があり、結合商標がすべて分離観察されなければならないとしているものではない。現に、特許庁の審決において、「VITAL CARE」の欧文字からなり、旧類別による第4類「せっけん類(薬剤に属するものを除く。)、歯みがき、化粧品(薬剤に属するものを除く。)、香料類」を指定商品とする商標につき、「VITAL」と「CARE」とに分離して観察すべき特段の理由はないとした例、「CARERAP」の欧文字と「ケアラップ」の片仮名文字とからなり、旧類別による第4類「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品とする商標につき、「CARE」と「RAP」、「ケア」と「ラップ」の文字に分離考察すべき特段の事情がないとした例が存在する。
当裁判所の判断
1 取消事由(称呼観念の認定の誤り)について (1) 本件商標の「KANEBO」、「リッチケア」及び「RICH CARE」の各文字がそれぞれ目的価値を異にした機能を持つものとして分離観察され、
それぞれの文字部分より生じる称呼をもって略称され、取引に資せられる場合も決して少なくないことは当事者間に争いがない。
また、「RICH CARE」の文字部分は、「RICH」と「CARE」の各英単語を結合させたものであり、「リッチケア」の文字部分は「RICH」と「CARE」の各英単語の音を片仮名表記して結合させたものであることが認められる。
(2) ところで、原告は、化粧品、石鹸の分野において、「ケア」の語が商品の用途表示として頻繁に使用されて殆ど日本語化しており、自他商品識別力を有しないと主張するところ、平成10年11月11日発行の「広辞苑(第5版)」(甲第4号証の1〜4)には、「ケア」が「@介護、世話、A手入れ」を意味する語として、また、「ヘア・ケア」が「髪の手入れ」を意味する語として掲載されており、
さらに、平成9年7月に被告が発行したと認められる商品カタログ(甲第5号証)、平成10年春にカネボウホームプロダクツ販売株式会社が発行したと認められる商品カタログ(甲第6号証)、平成11年春に株式会社資生堂が発行したものと認められる商品カタログ(甲第7号証)には、原告の挙げる「ヘアケア」、「スキンケア」、「バスケア」、「ベーシックケア」、「オプションケア」、「ボディケア」、「フェイスケア」、「ダメージケア」、「角質ケア」、「美白ケア」等の語が掲記されている。
しかしながら、該「広辞苑(第5版)」及びこれらの商標カタログは、いずれも本件商標の登録出願後に発行されたものと認められるうえ、仮に、本件商標の登録出願時である平成8年3月当時においても、前示各商品カタログ掲記の各語の使用の状況に変わりがなかったとしても、「@介護、世話、A手入れ」との「ケア」の語義は極めて広範囲にわたっており、かつ、多分に抽象的であって、それのみでは、たとえ、化粧品、石鹸の分野であっても、商品の品質、用途を表す程度の具体性を備えるに至っていないものというべきであり、「ヘアケア」、「スキンケア」、「ボディケア」、「フェイスケア」、「ダメージケア」などのように、「ケア」の語が、身体若しくはその部分又は手入れ等の目的を表す語などと結合して、
あるいは「バスケア」などのように手入れ等の状況を表す語などと結合して用いられ、かつ、それが「髪(肌、身体、顔、損傷部分)の手入れ」、「入浴時の手入れ」等の具体的な意義を感得させるものである場合において、その結合語全体が商品の品質、用途を表すものとなると解するのが相当である。
したがって、化粧品、石鹸の分野において、「ケア」の語を含む結合語の「ケア」の部分が用途表示であり、自他商品の識別力を有するのが「ケア」以外の部分であるものと解することはできない。
(3) 他方、本件商標の「リッチケア」の文字が同書、同大、等間隔に一連に書されており、また、「RICH CARE」の文字も同書、同大に書されていて、
それぞれ外観上まとまりよく一体的に表現されており、しかも、これより生じる「リッチケア」の称呼も簡潔で滑らかに称呼し得るものであることは当事者間に争いがない。
(4) そうすると、本件商標の「リッチケア」、「RICH CARE」の各文字部分を、「リッチ」の部分と「ケア」の部分に、あるいは「RICH」の部分と「CARE」の部分にさらに分離して、各称呼観念を検討すべき理由は見当たらない。
「RICH CARE」の文字部分は、「RICH」の部分と「CARE」の部分との間に1文字分の間隔を置いた構成であるが、これが、2つの英単語からなる該文字部分について英語表記に従った故であることは明白であり、その間隔も1文字分にすぎないから、前示認定を左右するに足りるものではない。
(5) したがって、本件商標の「リッチケア」、「RICH CARE」の各文字部分のうち、「リッチ」、「RICH」の部分のみを引用各商標と対比させて、
その称呼観念が類似するとする原告の主張は失当である。
なお、特許庁の「商標審査基準(改訂第6版)」(乙第3号証)には、商標法4条1項11号に関する結合商標の類否の基準として、「形容詞的文字(商品の品質、原材料等を表示する文字、又は役務の提供の場所、質等を表示する文字)を有する結合商標は、原則として、それが付加結合されていない商標と類似する。」との記載があるが、本件商標の「リッチケア」、「RICH CARE」の各文字部分のうちの「ケア」、「CARE」の部分がそれのみで商標の品質を表すと認められないことは前示のとおりであり、また、原材料等、役務の提供の場所、
質等を表示する文字に当たらないことも明白であるから、「商標審査基準(改訂第6版)」の該記載が前示判断と齟齬するということはできない。
また、原告は、特別顕著性のない語に「ケア」又は「CARE」の語を付加した構成よりなる商標の登録出願が、特別顕著性なしとして拒絶査定を受けた例が多数あるとも主張するが、仮に、主張に係る拒絶査定の事実があるとしても、その拒絶の具体的理由等の主張立証がなく、該査定の当否も検討し得ない以上、前示判断を左右するに足りない。
2 以上のとおり、原告の審決取消事由の主張は理由がなく、他に審決にこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中康久
裁判官 石原直樹
裁判官 清水節