関連審決 |
審判1988-20043 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成12行ケ10審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成11行ケ126審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成13行ケ47審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成12行ケ435審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成2行ケ72 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 指定商品 / 4条1項11号 / 類似性(類否判断) / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 存続期間 / 更新登録 / 非類似 / |
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事件 |
平成
7年
(行ケ)
62号
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裁判所のデータが存在しません。 | |
裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 1995/08/29 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告 「特許庁が昭和63年審判第20043号事件について平成6年12月16日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決2 被告主文と同旨の判決 |
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請求の原因
1 特許庁における手続の経緯 原告は、別紙(1)の構成よりなり、指定商品を商標法施行令(平成3年政令第299号による改正前)別表第17類(以下単に「第17類」という。)「被服、 その他本類に属する商品」とする登録1635394号商標(昭和55年9月4日登録出願、昭和58年11月25日登録。以下「本件商標」という。)の商標権者であるが、被告は、昭和63年11月17日、本件商標について登録無効の審判を請求し、昭和63年審判第20043号事件として審理された結果、平成6年12月16日、本件商標の登録を無効とするとの審決があり、その謄本は平成7年2月8日原告に送達された。 2 審決の理由の要点(1)本件商標の構成、指定商品は前項記載のとおりであり、平成5年11月29日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。 (2)請求人(被告)の引用する登録第1258978号商標(以下「引用商標」という。)は、別紙(2)に示した構成よりなり、第17類「被服、布製見回品、 寝具類」を指定商品として、昭和47年4月26日に登録出願、同52年3月14日に登録されたものである。 (3)請求人は、本件商標の登録無効の理由として次のとおり述べた。 本件商標は、デザイン化された筆記体の欧文字「Pli Rossetti」の文字よりなるものであるから、これより「プリロセッティ」の称呼を生ずるものであり、引用商標からは「プレロセッティ」の称呼を生ずるものである。 両称呼は、ともに6音からなり、中間に位置する第2番目において「リ」と「レ」の音の相違を有するのみで、それ以外の各音を共通にするものである。しかも、相違する「リ」と「レ」の音は、ともにラ行に属する同行音で、その音韻が非常に似ているから、両称呼を一連に発声、比較検討した場合、両称呼の語感、音韻上の印象が極めて似ているため、両称呼は相粉らわしい。 したがって、本件商標と引用商標は、称呼上類似するものであり、指定商品も同一であって、引用商標は、本件商標より先行商標であるから、本件商標は、商標法4条1項11号の規定に該当し、その登録を無効にされるべきである。 (4)被請求人(原告)は、本件審判請求不成立の審決を求め、その理由を次のとおり述べた。 本件商標は、欧文字の筆記体をもって表記されているとはいえ、「Feli Rossetti」を表記したものであることは一見して容易に看取できる。してみると、本件商標は、欧文字「Feli Rossetti」に照応して「フェリーロセッティ」の称呼を生じる。 一方、引用商標は、「プレロセッティ」の称呼を生ずるものである。 本件商標より生ずる「フェリーロセッティ」の称呼と引用商標より生ずる「プレロセッティ」の称呼は、「ロセッティ」を共通にするとはいえ、前半部において「フェリー」と「プレ」の顕著な相違が称呼全体に与える影響の大きさに鑑みれば、彼此相粉れるおそれはない。 したがって、本件商標と引用商標とは、称呼類似でなく、外観上、又は観念上類似するものではないから、本件商標は、商標法46条1項1号の規定に該当しない。 (5)よって、本件商標と引用商標の類否について検討する。 本件商標は、前記構成のとおり、欧文字を筆記体で表記したものであるところ、 該文字中、左端に書された文字は、左に大きく曲がっている先端より書き始めた「P」の文字の一筆書きを表現したものと認識されるとみるのが相当であって、全体として、「Pli Rossetti」の文字を表したものと認められる。 そうとすれば、本件商標は、その構成文字に相応して、「プリロセッティ」の称呼を生ずるものといわなければならない。 これに対して、引用商標は、前記構成よりなるものであるところ、それ自体独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るといえる「PLEROSSETTI」の文字部分より、「プレロセッティ」の称呼を生ずるものである。 そこで、本件商標より生ずる「プリロセッティ」の称呼と引用商標より生ずる「プレロセッティ」の称呼を比較すると、両称呼は、第2音目において「リ」と「レ」の音の差異を有する以外他の音をすべて共通するものである。そして、相違する「リ」と「レ」の音とても、調音の方法、位置において音質が近似した音といえるから、語頭に位置する「プ」が強く響く破裂音で、該差異音が聴者に与える印象が薄れがちになることも相俟って、それぞれ一連に称呼するときには、その語調、語感が極めて近似したものとなり、両称呼は互いに聞き誤られるおそれがあるものである。 してみると、本件商標と引用商標とは、観念、外観について論ずるまでもなく、 称呼において類似するものであって、指定商品も同一のものと認められる。 したがって、本件商標は商標法4条1項11号の規定に違反して登録されたものであるから、同法46条1項1号の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。 3 審決を取り消すべき事由審決の理由の要点(1)ないし(4)は認める。同(5)は争う。 審決は、本件商標を構成する文字についての認定を誤り、その結果、引用商標との類否判断を誤って、本件商標の登録を無効としたものであるから、違法として取り消されるべきである。 (1)審決は、本件商標の構成中、左端に書された文字は、左に大きく曲がっている先端より書き始めた「P」の文字の一筆書きを表現したものと認識されるとみるのが相当であると認定しているが、以下述べるとおり、この認定は誤りである。 @(a) 一般に、「P」の文字を一筆書きするときは、「P」の文字を構成する縦棒部を、筆先を上から下に引き、筆先がそのまま縦棒部の下端からその左側又は右側を通って縦棒の上部に返り、縦棒部の上半右側に半円形部分を円弧状に描いて「P」の筆記体に形成される。 しかし、本件商標の左端の文字は、縦棒部の下端からその右側を上方に向かう線が、縦棒部の下半寄りの中間で左側にカーブして縦棒部を斜めに横断し、横断したあとすぐに縦棒部の右側に向きを変えてそこで縦棒部と交叉し、そこでループ状をなす円に描かれているので、上記の一般的な「P」の一筆書きとは、筆の運び、つまり、描かれた文字の形態が全く異なっている。 審決は、縦棒部の下部右側に描かれたカーブ部分に続いてその縦棒部とクロスして描かれた円の部分までを「P」を描いたものと認定しているが、「P」をそのように描く筆記体の筆法はない。 (b)被告は、アルファベットの書体において、「P」の文字を左に大きく曲がっている先端より書き始め、上方に大きな半円弧を描く、ペン・スクリプト書体やバンク・スクリプト書体が用いられていることからも、本件商標の左端の文字につき、左に大きく曲がっている先端より書き始めた「P」の文字の一筆書きを表現したと捉えるのが自然である旨主張する。 しかし、いずれのスクリプト体の「P」も、上方の半円弧状部分と縦棒状の部分とは一旦筆の運びが途切れて描かれており、仮に、これらを一筆書きで描いたとしても、本件商標の左端の文字のように、左上部から右回りに略円弧を描きそのまま縦棒部に連続し、しかも、縦棒部下端からの筆の返しによるクロス部分を持った筆の運びには描かれないから、原告の上記主張は失当である。 また被告は、本件商標の左端の文字は、一般的な筆記体の文字の中では小文字の「p」の筆記体と一番類似しているし、ブラッシュスクリプト書体における「P」と形態が極めて近似している旨主張するが、そのようなことはない。 A(a) アルファベットの文字を筆記体で書く場合、運ばれた筆の軌跡の描く形態がその書かれた文字の外観を形造り、また、書く文字について運ばれる筆の軌跡は、人が描くものである以上、その書き手がそれまでに習得した一般的な筆法に依存するので、この観点から本件商標の左端の文字をみると、「左端から右方向へ描き始めた半円弧状部に続けて下方に向けて縦棒部を描き、その下端からこの縦棒の右側を通って上方へ筆を返し前記縦棒部の中間部分を左側へ斜めにクロスし、クロスした直後に右斜め上へ筆を返して再クロスさせた形態で描かれている」ように見受けられ、この筆の運びが描く軌跡、特に下方へ向いた縦棒部とその下端から返した筆が描く2箇所のクロス部分が描く形態は、乙第1号証の135頁に記載の「f」、乙第2号証の191頁に記載の「f」、乙第3号証の18頁に記載の「f」のそれぞれの筆の運びと殆ど同じに見えるから、本件商標の左端の文字は、 「F」の小文字「f」の筆記体を大きく書いたものに見えるというのが最も自然である。 次に、本件商標の左端の文字は、上記の縦棒部と再クロスしたあとの筆がそのまま縦棒部の上半部分と重なる形で「左回りの円」を描くように運ばれ表現されているが、この「左回りの円」の部分は「e」の筆記体が描かれたものである。 したがって、本件商標において左端に書された文字は、「F」の小文字「f」を筆記体で大きく描き、その縦棒部に重ねて「e」の筆記体を描くことにより、 「f」と「e」の2文字を一筆書きで表現したものと見るのが自然である。 上記のとおり、本件商標は、その左端が「F」の小文字「f」と「e」の2文字を大きく、かつ一部重複させて一筆書きで表現したものであるから、全体として、 「Feli Rossetti」と構成され、「フェリーロセッティ」の称呼を生じるものである。 (b)被告は、原告が上記のとおり「e」の筆記体が描かれていると主張している部分につき、その隣にある「l」よりも大きい円に近いループ状であり、また、 「Rossetti」の中の「e」とは大きさ及び形態が全く相違している旨主張する。 上記部分が、被告がいうように、その大きさ及び形態からみて「e」に見えないとすれば、それは右隣りの「l」と同様に「l」を表記したものとみるのが、本件商標の全体の形態を考察する上ではより自然である。 そうであれば、本件商標は、全体として「Flli Rossetti」又は「flli Rossetti」の文字が筆記体で表現され、「フルリーロセッティ」の称呼が生じるものというべきである。 (2)以上のとおり、本件商標は、「Feli Rossetti」又は「feli Rossetti」、もしくは「Flli Rossetti」又は「flli Rossetti」の文字を表したものとみるべきであり、これらからは「フェリーロセッティ」又は「フルリーロセッティ」の称呼が生じるから、引用商標「PLEROSSETTI」から生じる称呼「プレロセッティ」とは、非類似である。 したがって、本件商標と引用商標は称呼において類似するとした審決の判断は誤りである。 |
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請求の原因に対する認否及び反論
1 請求の原因1のうち、原告に対する審決謄本の送達日は不知、その余の事実は認める。同2は認める。同3は争う。 審決の認定、判断は正当であって、原告主張の誤りはない。 2 反論(1)@ 本件商標は欧文字を筆記体で表現したものであり、欧文字の筆記体は型にはまらない様々なバリエーションで表現されるのが常であるから、筆記された文字がいかなるスペルのものと判読されるかは、筆記された一連の文字の全体を見た上、該部分が一般人においてどのように認識されるのが自然であるかという観点から捉えるべきものである。そして、本件商標の左端部分をこのような観点から見たとき、審決が認定するように、「左に大きく曲がっている先端より書き始めた『P』の文字の一筆書きを表現した」と捉えるのが自然である。 このことは、アルファベットの書体において「P」の文字を左に大きく曲がっている先端より書き始め、上方に大きな半円弧を描く、ペン・スクリプト書体やバンク・スクリプト書体が用いられていることからも明らかである。 原告は、本件商標の左端の文字は、一般的な「P」の一筆書きとは、筆の運び、 つまり、描かれた文字の形態が全く異なっている旨主張するが、本件商標の左端の文字は、一般的な筆記体の文字の中では小文字の「p」の筆記体と一番類似しているといわざるを得ないし、アルファベットの書体においても、ブラッシュスクリプト書体における「P」と形態が極めて近似している。 A 原告は、本件商標の左端の文字における、特に下方へ向いた縦棒部とその下端から返した筆が描く2箇所のクロス部分が描く形態は、乙第1号証の135頁に記載の「f」、乙第2号証の191頁に記載の「f」、乙第3号証の18頁に記載の「f」のそれぞれの筆の運びと殆ど同じに見えるから、本件商標の左端の文字は、 「F」の小文字「f」の筆記体を大きく書いたものに見えるというのが最も自然である旨主張するが、上記乙各号証に記載の「f」はいずれも2箇所のクロス部分が描かれていない形態のものであるし、上半分部分の筆の運びと形態が本件商標の左端文字と全く相違するから、上記主張は失当である。 また、原告が「e」の筆記体に該当すると主張している部分は、本来その隣にある「l」の半分程度の大きさでなければならないにもかかわらず、これより大きなむしろ円に近いループ状をしている上、本件商標の後半部分である「Rossetti」において表現されている「e」とは大きさ及び形態が全く相違している。 (2) 以上のとおり、本件商標は、全体として「Pli Rossetti」の文字を表したものとみるべきであり、これより「プリロセッティ」の称呼が生じるから、引用商標より生じる称呼「プレロセッティ」とは、子音を共通とする第2音の1音違いとなるので、本件商標と引用商標は称呼において類似するとした審決の判断に誤りはない。 |
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証拠(省略)
理 由1 請求の原因1(特許庁における手続の経緯。但し、審決謄本の送達日を除く。)、2(審決の理由の要点)、及び、審決の理由の要点(1)(本件商標の構成、指定商品等)、(2)(引用商標の構成、指定商品)、(3)(請求人主張の登録無効理由)、(4)(被請求人の主張)については、当事者間に争いがない。 原告に対する審決謄本の送達日が原告主張のとおりであることは、弁論の全趣旨により認める。 2 そこで、原告主張の取消事由の当否について検討する。 (1)本件商標は、別紙(1)に示した構成よりなるものであって、欧文字を筆記体で表現したものであるが、左端の文字は、左側から斜め右上方向に描き始め、半円弧状を形成するように屈折して下方に向けて縦棒部を描き、その下端から縦棒部の右側に折り返してやや左斜め上方に向かい、縦棒部の中間よりやや下方寄りの箇所を斜めに横断し、横断した直後に右斜め上方に向きを変えて再度縦棒部を横断した後、縦棒部の上方に、左側の一部が縦棒部にかかるようなループ状の円を描いたものである(縦棒部の右側の円弧状部分は、縦棒部の左側の円弧状部分より相当大きく表されている。)。 ところで、文字商標において、ある部分がどのような文字を表現するものとして用いられていると判断すべきかは、当該部分を見た一般人がどのように認識するのが普通であるかという観点から決せられるべきである。 しかして、本件商標の左端の文字には、縦棒部と、縦棒部の上方に、左側の一部が縦棒部にかかるようなループ状の円が描かれており、縦棒部の右側の円弧状部分は、縦棒部の左側の円弧状部分より相当大きく表されていて、欧文字「P」を構成する縦棒部と縦棒部上半右側の半円形部分を備えていると見られること、乙第3号証(東京書籍編集部編「NEW HORIZON ペンマンシップ」)に記載されている「P」の大文字及び小文字の筆記体では、左側から斜め右上方向に描き始めた後、下方に向けて屈折して縦棒部が描かれており、本件商標の左端の文字のように、左側から斜め右上方向に描き始めた後、下方に屈折させて縦棒部を描く筆法は、「P」の筆記体に見られるものであり、「P」の小文字の筆記体では、縦棒部の下端からその左側を上方に向かい、縦棒部の中間付近を斜めに横断している線が描かれていることからすると、本件商標の左端の文字は、「P」の筆記体に、縦棒部の下端から縦棒部の右側に折り返してやや左斜め上方に向かい、縦棒部の中間よりやや下方寄りの箇所を斜めに横断し、横断した直後に右斜め上方に向きを変えて再度縦棒部を横断する線、及び、縦棒部の左側の円弧状部分を装飾的に付加して、 一筆書きしたものであり、本件商標を見た一般人も上記のように認識するのが普通であると認めるのが相当である。 したがって、本件商標の左端に書された文字は、「P」の文字の一筆書きを表現したものと認識されるとみるのが相当であるとした審決の認定に誤りはなく、本件商標は、全体として、「Pli Rossetti」の文字を表したものと認められる。 (2)@ 原告は、本件商標の左端の文字は、一般的な「P」の一筆書きとは、筆の運び、つまり、描かれた文字の形態が全く異なっている旨主張する。 確かに、本件商標の左端の文字の筆の運びや形態は、通常われわれが目にする「P」のそれらとは若干相違しているが、「P」の文字の一筆書きを表現したものと認識されるのが普通であることは上記説示のとおりである。 A 原告は、本件商標を構成する文字の筆の運びが描く軌跡、特に下方へ向いた縦棒部とその下端から返した筆が描く2箇所のクロス部分が描く形態は、乙第1号証の135頁に記載の「f」、乙第2号証の191頁に記載の「f」、乙第3号証の18頁に記載の「f」のそれぞれの筆の運びと殆ど同じに見えるから、本件商標の左端の文字は、「F」の小文字「f」の筆記体を大きく書いたものに見えるというのが最も自然であること、縦棒部と再クロスしたあとの筆がそのままその縦棒部の上半部分と重なる形で描くように運ばれ表現されている「左回りの円」の部分は「e」の筆記体が描かれたものであることを理由として、本件商標において左端に書された文字は、「F」の小文字「f」を筆記体で大きく描き、その縦棒部に重ねて「e」の筆記体を描くことにより、「f」と「e」の2文字を一筆書きで表現したものと見るのが自然である旨主張する。 しかし、本件商標における下方へ向いた縦棒部とその下端から返した筆が描く2箇所のクロス部分が描く形態が、上記乙各号証に記載の「f」の筆の運びと殆ど同じに見えるということはなく、したがって、左端の文字が、「F」の小文字「f」の筆記体を大きく書いたものに見えるということはないし、上記「左回りの円」の部分が「e」の筆記体を描いたものであるとも認められない。まして、本件商標の左端が、「f」と「e」の2文字の筆記体を大きく、かつ一部重複させて一筆書きで表現したものと見ることは到底できない。 また原告は、上記「左回りの円」の部分が「e」に見えないとすれば、それは右隣りの「l」と同様に「l」を表記したものとみるのが、本件商標の全体の形態を考察する上ではより自然であり、そうであれば、本件商標は、全体として「Flli Rossetti」又は「flli Rossetti」の文字が筆記体で表現されるものというべきである旨主張する。 しかし、上記「左回りの円」の部分が「l」を表記したものとみることもできないことは明らかであって、原告の上記主張は採用できない。 したがって、本件商標は、「Feli Rossetti」又は「feli Rossetti」、もしくは「Flli Rossetti」又は「flli Rossetti」の文字を表したものとみるべきである旨の原告の主張は採用できない。 (3)本件商標は、その構成文字より「プリロセッティ」の称呼を、引用商標は、 その構成文字より「プレロセッティ」の称呼をそれぞれ生ずるものと認められる。 そこで、両称呼を比較すると、両称呼は、第2音目において「リ」と「レ」の音の差異を有する以外他の音をすべて共通するものである。そして、「リ」と「レ」の音は、調音の方法、位置において音質が近似した音ということができるから、それぞれ一連に称呼するときには、その語調、語感が極めて近似したものとなり、両称呼は互いに聞き誤られるおそれがあるものと認められる。 したがって、両商標は称呼において類似するものであるとした審決の判断に誤りはない。 そして、両商標の指定商品が同一であることは、当事者間に争いがない。 (4)以上のとおりであるから、原告主張の取消事由は理由がなく、審決に取り消すべき違法はない。 3 よって、原告の本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。 |
裁判官 | 伊藤博 |
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裁判官 | 濱崎浩一 |
裁判官 | 市川正巳 |