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関連審決 審判1978-11492
関連ワード 指定商品 /  除斥期間 /  通常使用権 /  商標の効力 /  商標権の移転 /  存続期間 /  無効審判 /  更新登録 / 
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事件 平成 1年 (行ケ) 65号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1989/10/19
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が昭和五三年審判第一一四九二号事件について平成元年一月一〇日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 原告 主文同旨の判決二 被告「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決
請求の原因
一 特許庁における手続の経緯 被告は登録第一三一四四八七号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者であるが、亡【A】は、昭和五三年七月二五日被告を被請求人として本件商標の登録無効の審判(以下「本件審判」という。)を請求し、昭和五三年審判第一一四九二号事件として審理された。亡【A】は昭和六〇年五月二八日死亡したが、本件審判事件については弁理士【B】等が請求人代理人として選任されていたので、本件審判手続は中断することなく進められ、平成元年一月一〇日、「本件審判の請求を却下する」との審決がなされ、その謄本は同年二月二二日右請求人代理人に送達された。
二 審決の理由の要点1 本件商標は、「白山雲竜」の文字を横書きしてなり、第三〇類「菓子、パン」を指定商品とし、昭和四九年九月三〇日に登録出願され、昭和五二年一二月二日登録、その後、昭和六二年一一月一七日に商標権存続期間更新登録がなされているものである。
2 請求人が引用する登録第四二四四七三号商標(以下「引用A商標」という。)は、「雲竜」の文字を縦書きしてなり、昭和二六年一一月一〇日に登録出願、昭和二八年四月二二日登録、同じく登録第九七〇一九五号商標(以下「引用B商標」という。)は、「雲竜」の文字を縦書きしてなり、昭和四四年六月二五日に登録出願、昭和四七年七月四日登録、同じく登録第九七〇一九六号商標(以下「引用C商標」という。)は、「雲竜」の文字を横書きしてなり、昭和四四年六月二五日に登録出願、昭和四七年七月四日登録、同じく登録第一〇九九一九五号商標(以下「引用D商標」という。)は、「うんりゆう」の平仮名文字を縦書きしてなり、昭和四六年六月二五日に登録出願、昭和四九年一二月九日登録、いずれも現に有効に存続しているものであり、指定商品については商標登録原簿記載のとおりである(以下、引用AないしD商標を総称して「引用各商標」という。)。
3 そこで、本件審理に関し、特詐庁備付の商標登録原簿を調査したところ、引用各商標の商標権は当初請求人に属するものであつたが、昭和五六年九月二二日譲渡により「京都市<以下略> 【C】」に属するものとなつた(昭和五七年二月八日登録)ことを確認し得た。
しかして、商標法第46条に規定する商標登録の無効審判を請求し得る者は利害関係を有することを必要とするものであるところ、引用各商標は前記譲渡により請求人の所有に係るものでなくなつたので、請求人は、本件商標の存在に関して利害関係を有するとはいえない者となつたと判断するのが相当である。
したがつて、本件登録無効審判の請求は、請求による利益を有しない者によつてなされたものに帰したと認めざるを得ない。
三 審決の取消事由 本件商標の構成、指定商品、商標登録出願日、設定登録日、存続期間更新登録日、引用各商標の構成、登録出願日、設定登録日が審決認定のとおりであること、
引用各商標の商標権は当初亡【A】に属したが昭和五六年九月二二日譲渡により原告に属するものとなつた(昭和五七年二月八日登録)ことは認めるが、審決は、本件審判請求が請求の利益を有しない者によつてなされたものと誤つて判断したものであつて、違法であるから、取り消されるべきである。
1 本件審判の請求人である亡【A】は昭和六〇年五月二八日死亡し、原告は亡【A】の唯一の相続人として、本件審判における請求人として審判手続を続行すべきものとなつた。
商標登録無効審判事件において、審判請求人が審判を請求することについて利害関係を有するかどうかは、審決時における請求人又は請求人として審判手続を続行すべき者においてその利害関係を有するかどうかによつて判断しなければならない。
したがつて、本件審判においては、請求人として審判手続を続行すべき者である原告について、本件審判請求をすることの利害関係を有するかどうかを判断すべきところ、原告は、引用各商標の商標権者であり、引用各商標に基づいて本件商標の登録無効を請求するものであるから、本件審判請求について利害関係を有することが明らかである。
しかるに、審決は、当初の審判請求人である亡【A】に代わつて請求人として審判手続を続行すべき者である原告について本件審判請求の利害関係の有無を判断することなく、本件審判請求は請求の利益を有しない者によつてなされたものと誤つて判断したものであつて、違法である。
2 本件審判においては、被請求人(被告)は請求人の利害関係について争つていない。当事者間に争いのない請求人の利害関係について特許庁審判官が独自の判断でこれを否認することは許されないというべきである。
仮に、本件審判における請求人の利害関係の有無を職権で審理することが許されるとしても、当初の審判請求人であつた亡【A】が引用各商標の商標権を原告に譲渡した後においてもなお他に利害関係を有するかどうかを検討すべきところ、亡【A】は、引用各商標の商標権者であつた当時同人が代表取締役である訴外株式会社吉富に対し右商標権に基づく独占的通常使用権を許諾していたから、右商標権を原告に譲渡した後も譲渡による移転後の商標権者及び独占的通常使用権者の権益を守るために引用各商標の商標権と牴触する本件商標を排除する権利義務を有するものであり、また、本件商標が登録無効とされたときには、被告又はその承継人に対し本件商標の過去の使用による損害のうち、亡【A】が引用各商標の商標権者であつた部分について損害賠償の請求等をなす権利を有していたものである。
したがつて、亡【A】は引用各商標の商標権を原告に譲渡したつ後においても、
なお本件審判請求について利害関係を有しており、その地位は原告に承継されているものである。
しかるに、審決は、当事者間に争いのない請求人の利害関係について判断をし、
また、引用各商標の商標権譲渡による移転後における審判請求人又はその承継人において、引用各商標の商標権者であること以外にも本件審判請求について利害関係を有するかどうかの判断をしなかつたものであつて、違法である。
3 原告は、引用各商標の商標権取得後、本件審判事件について商標法第56条第1項において準用する特許法第148条第1項の規定により請求人として参加の申請をしたところ、本件参加の申請は商標法第47条に規定する除斥期間経過後の申請であるから、申請人において商標法第56条第1項の準用する特許法第148条第1項にいう共同審判を請求できるものと認められないとの理由で、昭和六三年六月九日参加の申請は許可しないものとの決定がなされた。
ところで、商標法第77条第2項において準用する特許法第20条の規定によれば、商標権その他商標に関する権利についてした手続の効力はその商標権その他商標に関する権利の承継人にも及ぶから、本件審判請求の効力は引用各商標の商標権の承継人であつて本件審判参加申請人である原告に及ぶものであり、したがつて、
本件審判における当初の審判請求人の地位を承継できるものと解するのが相当である。
前記規定による請求人としての参加は、いわゆる共同訴訟的当事者参加に該当するものであるが、本件の場合、審判の係属中において審判の目的物の一つである権利(引用各商標の商標権)を譲り受けたことを主張して請求人としての参加を求めるものであるから、その参加申請は民事訴訟法第73条の規定を類推して審判係属の始めにさかのぼつて法律上の期間遵守の効力を生ずるものと解すべきである。
しかるに、除斥期間経過後の参加申請であることを理由に前記参加申請を許可しなかつた決定は違法であり、その結果、参加がないものとの前提に立つて適法な利害関係を有する者の請求に係るものでないとの理由により、本件審判の請求を却下した審決は違法である。
請求の原因に対する認否及び被告の主張
一 請求の原因一及び二の事実は認める。
二 同三は争う。審決の認定、判断は正当であり、審決に原告主張の違法はない。
1 原告が本件審判請求人である亡【A】の唯一の相続人であるとしても、適法な受継手続を経ていない以上、特許庁は亡【A】のみについて利害関係を判断すれば足り、その相続人の利害関係について判断すべきではない。そもそも、特許庁は相続が開始されたことを知る由もなく、相続人の利害関係を判断できる立場にない。
亡【A】は、引用各商標の商標権を譲渡した時点で本件審判についての利害関係を喪失し、原告は、相続によつて、利害関係を喪失した審判請求人としての地位を承継したにすぎない。
2 本件審判において、被請求人(被告)が請求人の利害関係を争つていないとしても、本件のように審判係属中の請求人引用商標権の移転という特許庁に顕著な事実が存する場合には、特許庁は職権により請求人の利害関係を判断できるというべきである。
ところで、商標登録無効審判の請求人に要求される利害関係は、当該商標の存在することによつて侵害されるべき直接かつ具体的な法律上の利益でなければならない。
この点につき、原告は、亡【A】が引用各商標の商標権の譲渡後も譲受人及び独占的通常使用権者の権益を守るためこれと牴触する登録商標を排除する権利義務を有し、かつ引用各商標の商標権者であつた部分について損害賠償等の請求をなす権利を有することを理由として利害関係を主張する。
しかしながら、商標権の譲渡人が譲受人に対して負うのは、譲渡に係る商標権の登録が正当になされたことや将来も有効に存続することなど商標権の存在についての瑕疵担保責任にとどまり、牴触する他の商標を排除すべき義務は含まれない。まして、通常使用権者との関係においては譲渡により法律上の権利義務関係はすべて消滅したというべきである。なお、引用各商標の登録原簿に通常使用権の許諾が登録されていない以上、これを第三者に主張すること自体許されない(商標法第31条第4項、特許法第99条第1項、第三項)。また、亡【A】が商標権者であつた部分の損害賠償等については、仮にその請求権が存在すると考えるならば別途請求すれば足りることであつて、本件商標の登録が無効か否かとは関係がない。
3 原告は、商標法第56条第1項で準用する特許法第148条第1項の規定により独立した請求人として参加申請したものであるところ、同条の趣旨は、当事者として審判を請求し得る者は、既に他の者による審判手続が係属している場合には、
審判経済上の理由から新たな審判請求をする代わりに係属中の審判に当事者として参加することができるというにあるから、右参加申請は商標法第47条に規定する除斥期間内になされねばならないものであり、これを許可しない旨の決定に誤りはない。
原告の援用する特許法第20条は同一手続の繰り返しによる不便を避けるための行政上の便宜に基づくものであり、本件参加申請の許否とは何ら関係がない。また、民事訴訟法第73条の規定が商標登録無効の審判手続に類推適用される余地はない。
証拠関係(省略)
理 由一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)及び二(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。
商標法第46条の規定に基づき商標登録を無効にすることについての審判を請求するためには、請求人に右審判請求をするについての法律上正当な利益が存することを必要とするものと解すべきであるが、無効審判請求の利益は、審判請求を適法なものとして取り上げ、請求の当否について審決を得るために具備すべき要件であるから、審決時を基準として判断すべきであり、審決時に存在することを必要とするとともにこれをもつて足りるというべきである。
ところで、無効審判手続は行政手続であるが、処分を求める者(請求人)と権利者(行政処分によつて商標権等の付与を受けた者)との当事者対立構造がとられており(商標法第56条第1項、特許法第134条第145条等)、その点において民事訴訟における対審類似の構造であるということができ、当事者の一方が死亡したときは、対立当事者の一方が欠けることになるから、無効審判請求人の地位は請求人の死亡により当然に相続人に承継され、相続人が新請求人になるというべきである。したがつて、
請求人の死亡により相続人が新請求人となり、死亡した請求人に代理人があるときは、手続追行上の支障がないから、その代理人が新請求人(相続人)の代理人となつて手続は中断されることなく続行され(審決には新請求人を名宛人として表示すべきであるが、死亡者の名で審決されても新請求人に対する審決として有効である。)、代理人がないときは手続が中断する(商標法第77条第2項、特許法第24条、民事訴訟法第208条第1項第213条)。
そうであれば、無効審判請求がなされた後請求人の死亡により相続人が請求人の地位を承継し新請求人となつた場合において、無効審判請求の利益の有無は、新請求人について審決時を基準として判断されるべきである。
これを本件についてみるに、亡【A】は昭和五三年七月二五日被告を被請求人として本件商標(その構成、指定商品、商標登録出願日、設定登録日、存続期間更新登録日は審決認定のとおりである。)について、引用各商標(その構成、商標登録出願日、設定登録日は審決認定のとおりである。)を引用して登録無効の審判(本件審判)を請求したこと、本件審判については弁理士【B】等が請求人の代理人となつていたこと、引用各商標の商標権は右審判請求時亡【A】に属するものであつたが、昭和五六年九月二二日原告に譲渡され、昭和五七年二月八日その旨の登録がなされたことは、当事者間に争いがない。
そして、成立に争いのない甲第十四ないし第一七号証、第一八号証の一、二、第一九号証によれば、亡【A】は昭和六〇年五月二八日死亡したこと、原告は亡【A】の長男であり、かつ唯一の相続人としてその財産に属した一切の権利義務を承継したことが認められ、右死亡時本件審判が特許庁に係属中であつたことは前記特許庁における手続の経緯から明らかであるから、原告は亡【A】の死亡により本件審判における請求人の地位を承継し新請求人になつたものというべきである。
そこで、審決時(平成元年一月一〇日)、原告が本件無効審判請求をするについて法律上正当な利益を有するかについて検討すると、審決摘示の引用各商標が昭和五六年九月二二日亡【A】から原告に譲渡され昭和五七年二月八日その旨の登録がなされたことは前述のとおりであり、成立に争いのない甲第五ないし第一二号証によれば、引用A商標(指定商品第四三類菓子類)については昭和五八年七月二五日、引用B商標及び引用C商標(いずれも指定商品第三〇類菓子、パン)については昭和五七年九月二二日、引用D商標(指定商品第三〇類菓子、パン)については昭和五九年一二月一四日それぞれ存続期間更新登録がなされ審決時有効に存続していたことが認められ、原告は、審決時本件商標と指定商品を同じくする引用各商標の商標権者として、本件商標が引用各商標と牴触することを主張して本件商標の効力を争うことができ、その無効審判を請求する法律上正当な利益を有していたというべきである。
この点について、被告は、原告が適法な受継手続を経ていない以上亡【A】について利害関係を判断すれば足り、そもそも特許庁は相続が開始されたことを知る由もなく、相続人の利害関係を判断できない旨主張する。
しかしながら、無効審判請求人の地位は請求人の死亡により当然に相続人に承継され、相続人が新請求人になることは前述のとおりであつて、受継手続によつてはじめて新請求人となるものではない。また、特許庁において相続が開始されたことを知らなかつたとしても、請求人の死亡により相続人が新請求人となつているのに、死亡した者について審判請求の利益の有無を判断している以上、その判断は誤りというほかない。
また、被告は、亡【A】は引用各商標の商標権を譲渡した時点で本件審判についての利害関係を喪失し、原告は相続によつて利害関係を喪失した審判請求人としての地位を承継したにすぎない旨主張するが、審判請求の利益の有無は審決時に、その時点で請求人である者について判断すべきことは前述のとおりであるから被告の右主張は採用できない。
したがつて、「引用各商標は前記譲渡により請求人(亡【A】)の所有に係るものでなくなつたので、請求人は本件商標の存在に関して利害関係を有するとはいえない者となつた」との理由で「本件登録無効審判の請求は、請求による利益を有しない者によつてなされたもの」とした審決の判断はその余の原告の主張について判断するまでもなく誤りであり、その誤りは審決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、審決は違法として取消しを免れない。
三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は正当としてこれを認容し、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89条の各規定を適用して主文のとおり判決する。
裁判官 藤井俊彦
裁判官 竹田稔
裁判官 岩田嘉彦
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