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関連審決 審判1982-10037
関連ワード 識別力 /  指定商品 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  無効審判 /  非類似 /  商号 / 
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事件 昭和 63年 (行ケ) 218号
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裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1989/04/27
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 原告 「特許庁が、昭和六三年八月四日、同庁昭和五七年審判第一〇〇三七事件についてした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決二 被告主文同旨の判決
請求の原因
一 特許庁における手続の経緯 被告は、別紙(一)表示のとおりの「ソイルメート」の文字を横書きしてなり、
第一類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤及び医療補助品」を指定商品とする登録第一四五九五九二号商標(昭和四三年二月六日登録出願、昭和四四年八月一一日出願公告・昭四四-二六七三七号、昭和五六年四月三〇日設定登録)(以下「本件商標」という。)の商標権者であるところ、原告は、昭和五七年五月一三日、被告を被請求人として本件商標について登録無効の審判を請求した。特許庁は、これを同庁昭和五七年審判第一〇〇三七号事件として審理した結果、昭和六三年八月四日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をなし、その謄本は同年九月一二日原告に送達された。
二 本件審決理由の要点1 本件商標の構成、その指定商品及び商標登録出願から設定登録までの経緯は、
いずれも前項記載のとおりである。
2 これに対し、請求人(原告)の引用する登録第五五三一八五号商標(以下「引用商標」という。)は、別紙(二)表示のとおり「TAKEDAMATE」及び「武田メート」の文字を上下二段に横書きしてなり、(旧)第一類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として、昭和三二年一〇月一九日に登録出願され、昭和三五年七月二一日に登録され、現に有効に存続しているものである。
3 無効審判請求の理由 本件商標は、「ソイルメート」の文字を書してなるものであるが、そのうち「ソイル」は「土」「土壌」を意味する英語「SOIL」を片仮名で表したものであるから、これをその指定商品中「土壌に使用される薬剤や化学品」に使用するときには、直ちに「ソイル」の部分をもつてその商品が土壌処理剤、土壌安定剤、土壌酸度測定試薬等の土壌に使用される商品であるとの商品の用途を表示した部分と理解せられるものである。しかも、本件商標の「ソイルメート」が一体不可分の熟語として一般に通用している事情もないから、その指定商品、特に土壌に使用される薬剤や化学品との関係においては、かかる商品の用途を表示した部分と認識されて「ソイル」の部分が省略され、本件商標は単に「メート」と簡略化されて称呼観念せられる場合も決して少なくないものである。これに対し、引用商標は、「TAKEDAMATE」及び「武田メート」の文字を書してなるものであるが、その中の「TAKEDA」及び「武田」の部分は請求人(原告)の略称を表したものと理解せられる部分であるところから、かかる「TAKEDA」及び「武田」の部分が省略され、単に「メート」と簡略化して称呼観念せられる場合が決して少なくないものである。そうすると、「メート」の簡略称呼観念の生じる本件商標と引用商標との間に、取引上誤認混同の生じることは避け難いことであるから、このような本件商標と引用商標とは類似の商標である。更に、本件商標と引用商標の指定商品が同一ないし類似するものであることも明らかである。したがつて、本件商標は商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、その登録は同法第46条第1項の規定によつて無効とされるべきものである。
4 本件審決の判断 本件商標と引用商標の構成は、前1、2項のとおりであるから、両者は、その構成態様を異にし、外観上互いに区別し得るものであることは明らかである。次に、
称呼よりみるに、本件商標を構成する「ソイルメート」の文字は外観上まとまりよく一体に表示されるものであり、その全体の称呼も長音を含む六音であつて、それ程冗長でもなく、たとえ、「ソイル」の文字が「SOIL」(土、土壌)の表音であるとしても、「ソイル」と「メート」の文字は軽重の差なく、これを他に「ソイル」と「メート」とに分離して「メート」の部分を抽出しなければならない特段の事情が存するものといい得ないから、本件商標は、その構成より「ソイルメート」の一連の称呼のみを生ずるというべきである。一方、引用商標は、「TAKEDAMATE」及び「武田メート」の文字を書してなるものであるから、該文字に相応して「タケダメート」の称呼を生ずるものであるが、引用商標のうち「TAKEDA」及び「武田」の文字は、請求人(原告)が主張するごとく同人の略称と理解される場合も決して少なくないものであるから、この部分を省略して、商標中の後半の「MATE」及び「メート」の文字部分を捉えて、該文字より生ずる「メート」の称呼をもつて取引に資する場合もあるものといわなければならないから、引用商標からは単に「メート」の称呼をも生ずるものといわざるを得ない。
そこで、本件商標より生ずる「ソイルメート」の称呼と引用商標より生ずる「タケダメート」または「メート」の称呼とを比較するに、まず、「ソイルメート」と「タケダメート」とは、前半において「ソイル」と「タケダ」の音に差異を有し、
これらの差異音は、音質、音感及び語調等を異にし、両者をそれぞれ一連に称呼するも互いに紛れるおそれはないものといわなければならない。また、「ソイルメート」と「メート」とは、構成音数の相違、全体における音質、音感及び語調等の顕著な差異により、称呼上充分聴別し得るものである。更に、観念よりみるに、引用商標は、全体としては特定の観念を生じないものであるが、引用商標中の「MATE」(メート)の部分が「仲間」の意味合いを有する語であるとしても、本件商標は特定の観念を理解し難い造語よりなるものであるから、この点については互いに比較することができない。そうすると、本件商標と引用商標とはその外観称呼及び観念のいずれよりしても相紛れることのない非類似の商標であるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものとはいえず、したがつて、同法第46条第1項第1号の規定によりその登録を無効とすることができない。
三 本件審決を取り消すべき事由 本件審決理由の要点1ないし3は認める。同4のうち、引用商標からは本件審決摘示のような理由で「タケダメート」のほか、「メート」の称呼が生じることは認めるが、その余は争う。本件審決は、次に述べるように本件商標と引用商標とが称呼(「メート」)及び観念(「友、仲間」)を共通にする類似の商標であるのに、
本件商標からは「ソイルメート」の一連の称呼のみが生じ、かつ本件商標は特定の観念を理解し難い造語であるとの誤つた認定をしたことから、両者は称呼観念において相紛れることのない非類似の商標であるとの誤つた結論を導いたものであるから、違法として取り消されるべきである。
1 本件商標を構成する「ソイルメート」の文字は、視覚的に「ソイル」と「メート」の間に段落を感ぜしめる表現であるばかりでなく、本件商標の前半の「ソイル」の文字は、本件審決が認定したように「土、土壌」を意味する英語の「SOIL」の表音を表したものと直ちに理解せられる片仮名文字であり、「SOIL」の語は、我が国の義務教育である中学校の課程を終えた者であれば当然知つているはずの基本的な英語(甲第六、七号証の各二、四参照)であり、一般に良く知られている語である。また、本件商標の後半の「メート」の文字も、中学校の課程を終えた者であれば当然知つているはずの基本的な英語である「友、仲間」を意味する「MATE」(甲第六、七号証の各二、三参照)の表音を表したものと直ちに理解せられる文字で、一般に良く知られたすでに日本語化している言葉である。
しかも、本件商標に係る指定商品の分野においては、例えば、「soil fumigant」(土壌くん蒸剤)、「soil disinfectant」、
「soil fungicide」(土壌殺菌剤)、「soil disinfectant」(土壌消毒剤)、「pesticide for soil treatment」(土壌処理剤)、「soil ster ilant」(土壌不毛剤)、「soil stabilizer」(土壌安定剤)、「soil conditioner」(土壌改良剤)、「SOIL TESTER」「Soil Testkit」などの名称を付されてソイル(土壌)に使用する商品が多数製造販売されており、また、「ソイル」(土壌)に使用される商品であることを示すために、「パンソイル」、「武田ダコソイル」のように「ソイル」の文字を構成に取り入れた商標もある。それ故、このような事情のもとにおいて、本件商標をその指定商品、就中、土壌用の商品に使用したときには、「ソイル」の文字部分は、その商品がソイル(土壌)用のものであるとの用途を示すものと直ちに理解されるので、
この「ソイル」の文字自体は自他商品識別力を有しない部分である。
したがつて、本件商標において自他商品識別力を有する部分は、「友、仲間」を意味する語としてすでに日本語化し、一般に良く知られているところの「メート」にあることは明白といわざるを得ない。そればかりではなく、本件商標の「ソイルメート」の文字は、「ソイル」や「メート」の右のような語もしくは意味と無関係な熟語として通用しているものではなく、また全体が「ソイル」や「メート」の言葉もしくは意味と無関係な一体不可分な創造語として理解されて、常に、一連一体にのみ称呼されるものとの事情も認められないから、このような本件商標は「メート」と簡略化して称呼され、また、「友、仲間」を意味するものと観念せられることになるのである。
2 これに対して、引用商標から「メート」の称呼が生じることは本件審決の認定したところであり、また、引用商標の前半の「TAKEDA」「武田」の文字は、
原告の会社商号の略称であるところ、かかる会社商号の略称部分は、同一人を出所とする個々の商品の区別標識とはなり得ないために、商標は、このような会社商号の略称部分を省略して記憶、認識せられる場合が決して少なくないから、原告の会社商号の略称である「TAKEDA」「武田」と、個々の商品の区別標識となり得る「MATE」「メート」との組み合わせよりなる引用商標にあつては、後半の「MATE」「メート」によつて、「友、仲間」を意味するものとして観念せられる場合のあることは明白である。
3 このように、本件商標は「メート」と簡略化して称呼され、引用商標も「メート」と簡略化して称呼されるものであるから、両者は「メート」の称呼を同じくし、かつ両者とも「友、仲間」なる観念を生じさせるものであるから、観念をも同じくするものである。したがつて、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念を同じくする類似の商標である。
4 被告は、本件商標が一体不可分な造語である旨主張するが、そもそも、造語とは、「商標の選定者によつて創作されたものであつて、それ自体特定の観念を有しない文字商標である。」(工業所有権用語辞典<新版>八一〇頁・甲第一八号証の二)から、もともと、意味を有する「ソイル」と「メート」の語を組み合わせて横書きした構成である本件商標は、その表現の如何にかかわらず、特定の意味、観念を有しない造語に該当しないことは明らかである。本件商標の構成及び配列をみても、「ソイル」の「ル」における「レ」の縦線部分と「メート」の「メ」における「、」の部分の間隔が広くならざるを得ない必然性があるために、「ソイル」と「メート」との文字の間にこれを分離することを示す符号、記号等がないとしても、なお本件商標における「ソイル」と「メート」の文字は、視覚的に離れているとの印象を与えるものとなつている。前叙のとおり「ソイル」は「土、土壌」を表す語として、また、「メート」は「友、仲間」を意味する語として、いずれも我が国において良く知られた語であるから、このような「土、土壌」を意味する「ソイル」と「友、仲間」を意味する「メート」を組み合わせて、本件商標のごとき態様で横書きしてみても、右のような意味合いに理解される二つの語と全く無関係な意味を有する熟語となるものではなく、また右の語もしくは意味と無関係な造語となり得るものでもない。本件商標を見聞きする者は、前半の「ソイル」が「土、土壌」用のものであるとして後半の「メート」を形容する語と理解し、本件商標が、
「ソイル(土壌)」用の「メート」印であると感受するのが、我が国における英語知識の水準からみて一般的である。そして、前叙のように「ソイル」の部分には、
自他商品識別力がないので、後半の「メート」の部分のみから「メート」の称呼が生じ、かつ「友、仲間の観念を抱かせることになるのである。したがつて、被告の右主張は誤りというべきである。
請求の原因に対する認否及び被告の主張
一 請求の原因一、二の事実は認める。
二 同三の主張は争う。本件審決の認定判断は正当であり、本件審決には、原告の主張するような違法の点はない。
1 まず、別紙(一)から明らかなように本件商標は、それを構成するそれぞれの片仮名文字が、同じ書体、同じ大きさで表わされ、かつ同間隔をもつて横書きしてなる造語であり、そこには、「ソイル」と「メート」とを分離させるための符号、
記号等はなく、また、発音上も音数が多く一気に発音できないとか、あるいは、語感上、「ソイル」と「メート」との間に自然に段落を生ずるとかいうような両者を分離しなければ発音ができないという理由は全くないのである。したがつて、本件商標である「ソイルメート」は一体不可分な全くの造語と考えるべきものであり、
本件審決が「外観上まとまりよく一体に表示されている」と認定したのも、右のことを指摘したものであつて、本件商標の構成をみて、視覚的に「ソイル」と「メート」の間に段落を感ぜしめる表現であるとする原告の主張は到底首肯し得ないところである。また、前叙のとおり本件商標である「ソイルメート」は、一体不可分な全くの造語であると考えるべきものであるため、本件商標が「ソイル」の部分を含んでいても、原告主張のように、その部分から「土、土壌」を意味する英語である「SOIL」が直ちに理解され得るものではない。更に、原告の指摘する土壌くん蒸剤や土壌不毛剤などは、いずれも一般的な商品名であり、全体としての意味を有するものであるから、その商品名の中に、「SOIL」、「土壌」の語が含まれているからといつて、商標の構成の一部に使用された「ソイル」の部分が常に「土壌用」であることを示したものと理解されるものではない。
要するに、本件商標である「ソイルメート」は、一体不可分に表示されており、
「ソイルメート」の称呼のみが生じ、また、
全くの造語であると考えるべきもので特定の観念を生じさせるものではない。
2 一方、引用商標からは、その構成に相応して「タケダメート」もしくは「メート」の称呼が生じ、かつ「仲間」の観念が生じることのあることは、被告もこれを争わない。しかしながら、本件商標の称呼である「ソイルメート」と引用商標の称呼の一つである「タケダメート」とは、前半における「ソイル」と「タケダ」の音に差異があり、これらの差異音は、音質、音感及び語調等を異にするので、両者をそれぞれ一連に称呼しても、互いに紛れるおそれのないものである。また、本件商標の称呼である「ソイルメート」と引用商標の他の称呼である「メート」とを比較してみると、構成音数の相違、全体における音質、音感及び語調等の顕著な差異によつて、両者をそれぞれ一連に称呼した場合であつても、互いに紛れるおそれのないものである。更に、引用商標は全体としては特定の観念を生じないものであり、
たとえ、引用商標中の「MATE」「メート」の部分が「仲間」の意味を有する語と理解されるとしても、本件商標は、前叙のとおり特定の観念を生じない全くの造語よりなるものであるから、本件商標と引用商標とは、観念上も互いに紛れるおそれのないものである。そして、本件商標と引用商標とは、本件審決の指摘のとおり構成態様を異にするから、外観上も互いに区別できるものである。
3 したがつて、本件商標と引用商標とは、その外観称呼及び観念のいずれよりみても相紛れることのない非類似の商標であるというべきである。右と同旨の本件審決の判断は正当であり、何ら違法の点はない。
証拠関係(省略)
理 由一 特許庁における手続の経緯、本件商標及び引用商標の構成、指定商品及び商標登録出願から設定登録までの経緯並びに本件審決理由の要点が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いのないところである。
二 そこで、本件商標と引用商標との類否について判断する。
1 まず、当事者間に争いのない別紙(一)の本件商標の構成及び同(二)の引用商標の構成を対比すれば、その構成態様を異にし、外観上区別し得ることは明らかである。
2 次に、別紙(一)により更に詳細に検討すると、本件商標「ソイルメート」は、五つの片仮名文字と一つの長音符号からなる比較的簡明な構成であり、しかもこれを構成する各片仮名文字及び長音符号は、その字体、大きさともほぼ同じであり、かつそれら文字や符号が同じ間隔で横に配列されているので、一連一体に観察される構成をとつているということができる。このように、本件商標は外観上一連一体に表示されたまとまりのある構成態様のものとして観察できるのであつて、原告が主張するように視覚的に「ソイル」と「メート」との間に段落を感ぜしめるような表現態様のものとは認められない。
また、成立に争いのない甲第六号証の一ないし五及び甲第七号証の一ないし四並びに弁論の全趣旨を総合すれば、「SOIL」(土)や「MATE」(友、仲間)の英単語は、中学生であれば当然知つているはずの基本的な英単語であることに照らすと、一般取引者または需要者のうちには、本件商標を構成する前半の「ソイル」は「SOIL」(土)に相応し、後半の「メート」は「MATE」(友、仲間)に相応するものと理解する者のいることは推認し得るところであるが、たとえ、本件商標が、「ソイル」、すなわち土と、「メート」、すなわち仲間とを結合した構成のものと理解されたとしても、全体としては特定の観念を一義的に生じせしめるものではなく、「ソイル」と「メート」との二つの語の間に軽重のあることが認められる関係にもないし、しかも本件商標を一連に称呼してもそれ程冗長にはならないから、本件商標は、不可分一体に構成された特定の観念のない造語とみるのが相当である。
確かに、「SUDBURY SOIL TESTER」及びその外箱の写真であることについて争いのない甲第一〇号証、「SUDBURY Soil Test Kit」及びその外箱の写真であることについて争いのない甲第一一号証、成立に争いのない甲第一四号証によれば、「SOIL TESTER」(土壌試験剤)、「Soil Test Kit」(土壌測定試薬)、
「Soil Bond」(土壌固結剤)などのように「SOIL」の語がその商品の施用の対象を直截に表示する例のあることが認められるが、一般取引者もしくは需要者はこれらの商標の構成自体、すなわち商標を構成する「SOLI」と他の用語と相俟つてその商標が付された当該商品の具体的な品質もしくは用途を認識し、
「SOIL」が「土壌用」を意味するものと理解することができるのである。しかして、右に掲げた三つの商標において、「SOIL」又は「土壌」が品質もしくは用途を表示するとしても、これらの商標の付された商品の取引に当たつて、「SOIL」又は「土壌」の語もしくは称呼を除外したうえ、それぞれ単に「TESTER」(試験剤)、「Test Kit」(測定試薬)、「Bond」(固結剤)なる称呼のみをもつて取引されるものとは考えられないから、右のごとき商標があることを根拠に「ソイル」が単なる品質又は用途を示すものとして自他商品識別力を有しないものとすることはできないものというべきであるが、その点はさておくとしても、右のように、具体的な文字商標の構成の中における「SOIL」もしくは「ソイル」のもつ意義は、これと結合された他の用語との関係において判断されるものと認められるので、これら「SOIL」や「ソイル」の語が、常に同じ程度にその商標の付された商品の品質もしくは用途を具体的に表示する機能をもつものではない。これを、本件商標についてみるに、たとえ、一般取引者もしくは需要者が、本件商標を構成する前半の「ソイル」は「SOIL」(土)に相応し、後半の「メート」は「MATE」(友、仲間)に相応するものと理解するとしても、それぞれの語の有する意味内容からみて、高々、これが付された商品が土壌に何らかの関連をもつものであろうことを推測し得るだけであつて、この域をこえてより具体的な商品の品質もしくは用途までをも特定した観念が生じるものとは到底認めることはできない。
このようにみてくると、本件商標は、「ソイルメート」として一連一体に観察されるところの特定の観念をもたない造語と理解するのが相当であり(パンソイル粉剤入りの袋の写真であることについて当事者間に争いのない甲第一二号証、武田ダコソイル入りの袋の写真であることについて当事者間に争いのない甲第一三号証によつて認められる「パンソイル」、「武田ダコソイル」の商標も、その構成中に「ソイル」の語を用いてはいるが、「パン」、「武田ダコ」に品質又は用途を表示するものとしての意義を認めがたい以上、全体として特定の観念を有しない造語と解するほかない点では本件商標と同様である。)、殊更、本件商標の後半の「メート」の部分のみを抽出して称呼しなければならない事情があるとは認められず、また、いかに簡易迅速を尊ぶ取引の場においても、本件商標に係る指定商品の取引に当たつて一般取引者もしくは需要者が、本件商標を「メート」のみで称呼し、また「友、仲間」の観念をもつて取引するとは到底考えられない。したがつて、本件商標からは「メート」のみの称呼が生じ、かつ「友、仲間」の観念が生じるとする原告の主張はいずれも失当というべきである。成立に争いのない甲第八、第九号証の各一ないし三により認められる原告主張の農薬用語は、いずれも「土壌」又は「SOIL」と他の語が結合した構成であるが、それが、商品に付され商標として使用されることがあるとしても、これら結合された語が相俟つてその品質あるいは用途を知ることができるのであるから、「土壌」又は「SOIL」の語もしくは称呼を除外したうえ使用されるものとは認めがたい。したがつて、これら農薬用語が本件商標の称呼観念についての原告の主張を支える根拠となるものではない。また、
前掲甲第一四号証、成立に争いのない甲第一五ないし第一七号証は、いずれも本件と事案を異にする特許庁の判断であるから、もとより当裁判所がこれに拘束されるものではない。
そうすると、本件商標からは「ソイルメート」なる一連の称呼のみが生じ、かつ特定の観念が生じないとした本件審決の判断は正当というべきである。
3 そして、引用商標からは、本件審決認定のとおり「タケダメート」もしくは「メート」の称呼が生じることは原告の認めるところ、本件商標の称呼である「ソイルメート」と引用商標の前記二つの称呼とを比較すると、本件審決認定のとおり全体における音質、音感及び語調等に顕著な差異があることは明らかであるから、
一般取引者もしくは需要者が、両者を相紛れて認識理解することはないものとみるべきである。また、本件商標は、前叙のとおり特定の観念を有しない造語として理解されるべきものであるから、たとえ、引用商標の後半の「MATE」「メート」の部分から「友、仲間」の観念が生まれるとしても、観念の点で両者を比較できないことも本件審決の指摘するとおりである。
4 右のとおりであるから、本件商標と引用商標とはその外観称呼及び観念のいずれからみても相紛れることのない非類似の商標であるとした本件審決の判断は正当であつて、本件審決には原告主張のような違法の点はない。
三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法第7条及び民事訴訟法第89条の規定をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 松野嘉貞
裁判官 舟橋定之
裁判官 杉本正樹