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事件 昭和 61年 (ワ) 363号
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裁判所 横浜地方裁判所 川崎支部
判決言渡日 1988/04/28
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 被告は「株式会社木馬企画」の商号を使用してはならない。
二 被告は昭和五三年三月二〇日大阪法務局においてした商号「株式会社木馬企画」の設立登記の扶消登記手続をせよ。
三 原告のその余の請求を棄却する。
四 訴訟費用はこれを三分し、その一を原告のその余を被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求める裁判
一 請求の趣旨1 被告は、別紙目録記載(一)の物品に同目録記載(二)の(1)及び(2)の標章を付し、又はこれを付した右物品を販売若しくは配布してはならない。
2 被告は、その本店及び営業所に存する別紙目録記載(一)の物品から、同目録記載(二)の(1)及び(2)の標章を抹消せよ。
3 被告は原告に対し、金九〇〇万円及びこれに対する昭和六一年九月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
4 主文第一、第二項と同旨5 訴訟費用は被告の負担とする。
6 仮執行宣言二 請求の趣旨に対する答弁1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
当事者の主張
一 請求原因1 原告は、昭和四六年一一月二五日、ぬいぐるみ人形劇の興行等を営業目的として、本店所在地を東京都中央区<以下略>、その商号を株式会社劇団木馬座として設立登記された株式会社である。
2 被告は、昭和五三年三月二〇日、ぬいぐるみ人形劇の興行等を営業目的として、本店所在地を肩書地、その商号を株式会社木馬企画として設立登記された株式会社である。
3 商標権侵害に基づく請求(一) 原告は、次の商標権(以下、「本件商標権」といい、その登記商標を「本件登録商標」という。また、本件登録商標のうち別紙目録記載(三)の(1)の登録商標を「本件登録商標(一)といい、同目録記載(三)の(2)の登録商標を「本件登録商標(二)」という)を有している。
(1) 登録番号 第〇七九〇四七〇号出願日 昭和四二年四月六日出願番号 四二ー〇二〇四〇五出願公告日 昭和四三年二月二二日出願公告番号 四三ー〇〇六三七一登録日 昭和四三年八月一五日更新登録日 昭和五三年一二月一二日指定商品 第二六類 印刷物、書画、彫刻、写真、これらの附属品登録商標 別紙目録記載(三)の(1)のとおり(2) 登録番号 第〇八五一八三七号出願日 昭和四三年五月一三日出願番号 四三ー〇三一七九五出願公告日 昭和四四年九月二九日出願公告番号 四四ー〇三三七三七登録日 昭和四五年四月七日更新登録日 昭和五五年一〇月二四日指定商品 第二六類 印刷物、書画、彫刻、写真、これらの附属品登録商標 別紙目録記載(三)の(2)のとおり(二) 被告は、本件登録商標(一)に類似する別紙目録記載(二)の(1)の標章(以下、「被告標章(一)」という)及び本件登録商標(二)に類似する同目録記載(二)の(2)の標章(以下、「被告標章(二)」という)を、同目録記載(一)の各物品(以下、「本件物品」という)に印刷するなどして使用し、本件商標権を侵害している。
(三) 原告は、昭和四六年以来、本件登録商標を使用して劇場入場券、プログラム等の販売を行っていたところ、被告による右侵害行為によって、少なくとも年間金一〇〇〇万円の売上が減少し、そのうち原告の利益率は三割であるから、昭和五八年八月一日から昭和六一年七月三一日までの三年間について合計金三〇〇〇万円の売上が減少し、その結果金九〇〇万円相当の損害を被った。
4 商号権侵害に基づく請求 原告は、会社設立以来「株式会社劇団木馬座」の商号を用いて全国的規模でぬいぐるみ人形劇の興行等を行い、その商号は広く認識されていたところ、被告は、不正競争の目的をもって、原告の登記商号である「株式会社劇団木馬座」に類似する「株式会社木馬企画」の商号を登記したうえ、その商号を使用し、又は不正の目的をもって原告の営業であると誤信せしむべき右の商号を使用して、大阪を中心に名古屋市以西の地域で、原告の営業と同種のぬいぐるみ人形劇の興行等を行っている。
5 よって、原告は、被告に対し、
(一) 商標法36条に基づき、被告標章(一)及び(二)の本件物品への使用禁止、被告標章(一)及び(二)が使用された本件物品の販売若しくは配布の禁止、
並びに被告の本店、営業所に存在する本件物品からの被告標章(一)及び(二)の抹消を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償請求として金九〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和六一年九月九日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求め、
(二) 商法20条1項若しくは同法21条2項に基づき、被告商号の使用禁止及び被告商号登記の抹消を求める。
二 請求原因に対する認否1 請求原因第1、第2項の事実は認める。
2 同第3項の(一)の事実は知らない。
同項の(二)の事実中、被告が原告主張の標章を使用していることは認め、その余は否認する。本件登録商標(二)と被告標章(二)は「木馬」なる文字は共通しているが、本件登録商標(二)は「木馬座」であり、被告標章(二)は「木馬企画」であり、前者は劇団の名称であり、後者はプロダクションの名称のごとくであって、その名称自体において異同が明らかである。しかも、「木馬」なる用語は原告が創造した文言ではなく、固有名詞でもなく、一般的に木で馬の形に作ったものを呼称するものであって、一般化された物の名称は何人でも自由に使用しうるものである。また、本件登録商標(一)の図案は木馬を図案化したものにすぎないが、
被告標章(一)の図案は外周を「木馬企画」及び「MOKUBA FAMILY THEATER」という文字で囲んだ中心部分に木馬企画の頭文字のMと王冠と木馬を図案化したものであり、本件登録商標(一)の図案とは明らかに異なっており、混同誤認のおそれもない。
同項の(三)の事実中、原告が本件登録商標を使用して劇団入場券、パンフレット等を販売していることは知らないし、その余は否認する。原告と被告の営業は本来的に作品の巧拙で競争されるべきものであって、商標によって左右されるものではない。従って、仮に、原告の企画実施した演劇につき観客が減少したとしても、
それは被告が使用する標章とはなんら関係はなく、原告の演劇自体にその原因があるのであって、原告の損害と被告の標章使用との間には因果関係はない。
3 同第4項の事実中、原告の商号が広く認識されていること、被告の商号と原告の商号が類似していること、被告が不正競争の目的若しくは不正の目的をもって被告の商号を使用していることは否認し、その余は認める。原告は、昭和六一年九月ころ、本件商標権とともにその営業を訴外株式会社木馬座に譲渡し、その営業を事実上廃業しているから、被告の営業と原告の営業とは混同誤認の虞はなく、被告は不正競争の目的若しくは不正の目的をもって被告の商号を使用しているものではない。
三 抗弁1 本件商標権の譲渡 原告は、昭和六一年九月ころ、訴外株式会社木馬座に対し、その営業とともに本件商標権を譲渡し、ぬいぐるみ人形劇の興行、プログラム、観劇入場券の販売等の営業を事実上廃止しているから、本件商標権を保護する実益はない。
2 消滅時効 被告は、本件登録商標の登録後で、会社設立時の昭和五三年三月二〇日以降、被告標章(一)及び(二)を本件物品に使用しているから、原告の商標権侵害による被告標章(一)及び(二)の使用差止請求権は、商法522条の準用により、五年の消滅時効により消滅しているから、被告は本訴において右の時効を援用する。
3 権利濫用 被告は、被告標章(一)及び(二)並びに被告商号をすでに一〇年間以上使用し、その間、それは原告の「木馬座」とは全く異なる存在として顧客に認識されて独自の信用を形成し、その知名度は関西方面においては原告をはるかに凌いでいる。しかも、被告は、その公演を行うに当たり、顧客に対して原告の「劇団木馬座」と異なる旨特に説明して入場してもらうなど、原告と混同されないように注意を喚起してきた。このように、被告によって原告とは全く別異のものとして営業が行われ、評判と信用を獲得して形成された被告の「木馬企画」の名称(標章、商号)は、社会的事実として確固とした地位を占めるに至っている。このような場合に、原告による被告標章(一)及び(二)並びに被告商号の使用差止請求を認めることは、被告が木馬企画の商号及び標章によって独自に形成した顧客を原告が不当に奪って、被告に致命的な打撃を与える反面、原告に不当な利益を得させることになり、社会正義に反する結果となる。しかも、被告は、被告標章(一)及び(二)を使用し始めた後の昭和五二年ころ、原告から企画作品を購入し、原告と共同して営業を行ったこともあり、原告は被告が本件標章(一)及び(二)を使用することについて承諾をしている。かかる事情の認められる本件において、原告が被告に対し、商標権侵害を理由とする商標使用差止請求及び損害賠償請求並びに商号権侵害を理由とする商号使用差止請求を行うことは権利の濫用であって許されない。
四 抗弁に対する認否と反論1 抗弁事実はいずれも否認する。
2 原告は、被告主張のころ、訴外株式会社木馬座に本件商標権を譲渡したが、本件商標権の移転登録はしていないからいまだ商標権者であり、また商標権に基づく差止請求権の本質は妨害排除請求権であって、現に営業をしていることを要件とするものではないから、被告の主張は理由がない。
証拠《省略》
理 由一 請求原因第1、第2項の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、同第3項(商標権侵害に基づく請求)について検討する。
1 成立に争いのない甲第一ないし第四号証、第一二ないし第一八号証、第二九、
第三〇号証、原告代表者尋問の結果により成立の認められる甲第二〇号証、原告及び被告各代表者尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告は本件商標権を有していること、被告は被告標章(一)及び(二)を本件物品に使用し、劇場入場券、
パンフレットを販売していることが認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
2 ところで、前記一の争いのない事実に、前掲甲第一二ないし第一八号証、被告代表者尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、被告はぬいぐるみ人形劇の企画、
制作及び興行をその営業目的としており、主に名古屋以西の各地においてぬいぐるみ人形劇を公演し、被告自身が主催者となって劇場入場券の販売活動をするかあるいは被告自身主催者とならずに他の主催者にぬいぐるみ人形劇を一括販売する方法(以下「売り公演」という)で営業しているところ、本件物品はいずれも被告のぬいぐるみ人形劇の公演のために使用されるものであり、そのうちポスター、ちらしはぬいぐるみ人形劇の宣伝、広告のためのものであり、パンフレット及びプログラムはぬいぐるみ人形劇の案内、解説のためのものであり、また、観劇申込封筒は観劇希望者の観劇申込のために使用されるものであることが認められる。
右事実によれば、被告の行う営業は、ぬいぐるみ人形劇というサービスを提供して、その対価を得ることを内容とするものであり、そのサービス自体はいわば無形の利益であるから、商標法上にいう商品には該当しないというべきである。そして、その宣伝、広告のためのポスター及びちらし、その観劇申込のための観劇申込封筒、その案内、解説のためのパンフレット及びプログラムは、いずれも右のとおり被告によるぬいぐるみ人形劇の宣伝、案内等の利用に供されているものであり、
それ自体が独自に商取引の対象として流通性を有しているものと認めることはできないから(被告代表者尋問の結果によれば、被告はパンフレットを販売し、利益を得ていたことがうかがわれるが、パンフレットが有償であったとしても、パンフレットそれ自体がぬいぐるみ人形劇の存在を離れて独自に商取引の対象として流通性ないしは交換価値を有していたとは認められない)、これらをもって商標法上にいう商品ということはできず、商標法2条3項3号にいう商品に関する広告、取引書類ということはできない。また、劇場入場券については、それが被告によって行われるぬいぐるみ人形劇というサービスの給付を目的とする債権を表象していることから、その意味で財産的価値を有し、かつ商取引の対象となる流通性を有する面の存在することは否定できないけれども、本件で問題とされる劇場入場券の経済的価値は印刷物としてのそれではなく、ぬいぐるみ人形劇というサービスの提供を受けるものとしてのものであるから、劇場入場券に使用される標章は観劇入場券それ自体の識別標識としてではなく、劇場入場券によって給付されるサービスについての識別標識として、そのサービスについての出所表示機能、質的保証機能、宣伝広告機能を果たしているものとみるのが相当であるから、被告が販売する観劇入場券それ自体は商標法上の商品とはいえないと解するのが相当である。
従って、被告が商標法上の商品とはいえない印刷物である本件物品に、原告主張の第二六類、印刷物等を指定商品とする本件登録商標に類似する標章を付したとしても、これが不正競争防止法違反になるかどうかの点はともかく、本件商標権侵害の問題は生じないというべきであるから、その余の点を判断するまでもなく、本件商標権侵害を理由とする原告の請求は理由がない。
三 次に、同第4項(商号使用禁止)について検討する。
1 まず、商法20条1項に基づいて、被告が登記して使用している「株式会社木馬企画」なる商号が、原告によって登記されている「株式会社劇団木馬座」の商号に類似しているか否かについてみるに、前記甲第二〇号証、原告及び被告各代表者尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告の商号「株式会社劇団木馬座」と被告の商号「株式会社木馬企画」に関しては、まず、原告及び被告の商号で共通している「株式会社」の部分は営業主体の識別標識としてはその識別力が乏しいし、原告の商号中「劇団」と被告の商号中「企画」の各部分は「木馬」の部分に比較して同様に識別力が乏しいというべきであるが、原告及び被告の商号中その共通する部分である「木馬」の箇所が一般の顧客の注意を特に惹く主要部分であるということができ、これに着目して更に原告及び被告の右商号を全体として観察してみると、
原告及び被告の右各商号は一般取引市場において世人が混同誤認するおそれがあるものというべきであって「株式会社木馬企画」なる商号は「株式会社劇団木馬座」の商号に類似しているものと認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
2 次に、被告の「株式会社木馬企画」という商号の使用が商法20条2項不正競争の目的、換言すれば、世人をして自己の営業を既登記商号である「株式会社劇団木馬座」の営業と混同誤認させて競争しようとする意図をもってされたものといえるか否かについてみる。
(一) 前記一の当事者間に争いのない事実及び二の認定事実に、前掲甲第一なしい第四号証、第一二ないし第一八号証、第二〇、第二九、第三〇号証、成立に争いのない甲第五ないし第一一号証、第二二号証の一、二、第二三ないし第二五号証、
第三六、第三七号証、乙第三、第六号証、原告代表者尋問の結果により成立の認められる甲第二八号証、被告代表者尋問の結果により成立の認められる乙第一、第二(写真)、第四(原本の存在も認められる)、第五号証、原告及び被告各代表者尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
(1) 原告は、昭和四六年一一月二五日、東京都中央区<以下略>を本店所在地(昭和五三年五月二六日肩書地に移転し、同年六月一六日その旨登記)、その商号を「株式会社劇団木馬座」として設立、登記された。
(2) 原告は、昭和四七年、本件商標権者で、主に影絵、ぬいぐるみ人形劇の制作公演を行っていた訴外株式会社木馬座(以下「旧木馬座」という)からその営業を譲り受け、以後主にぬいぐるみ人形劇の公演を行った。
(3) 原告は、昭和五一年一二月一七日、旧木馬座との間で訴訟上の和解をし、
原告が、昭和四七年一月二五日旧木馬座から本件商標権を譲り受けたことを確認するとともに、旧木馬座が本件登録商標(一)及び(二)並びにこれに類似する商標の使用をしないことを合意し、昭和五二年二月一四日、旧木馬座から原告に対し本件商標権の移転登録がされた。
(4) 原告のぬいぐるみ人形劇の公演は、「木馬座」の名称で広く認識され全国各地において行われたが、そのうち関西一円、中国、九州及び名古屋の一部の地域での公演は原告の大阪事務所が中心となって行っていた。
原告の営業形態は、原告自身がぬいぐるみ人形劇の主催者となり、原告の社員が幼稚園、保育園等を訪問して入場券を販売して行う場合と原告自身が主催者とならずに別の主催者にぬいぐるみ人形劇を一括して販売して行う売り公演の場合の二とおりの方法で行われた。
(5) 昭和五二年一月二〇日、当時原告の大阪事務所の所長であった訴外【A】及び被告の現在の代表取締役である【B】を含む大阪事務所勤務の者五名は原告会社を退職し、訴外【A】を中心に始めは木馬プロダクションの名で、その後は木馬企画の名でぬいぐるみ人形劇の企画、公演を行った後、昭和五三年三月二〇日、本店所在地を被告の肩書地、代表取締役を訴外【A】、商号を「株式会社木馬企画」、営業目的をぬいぐるみ人形劇の企画、制作及び興行として被告会社を設立、
登記した。
(6) 被告のぬいぐるみ人形劇の公演は名古屋以西の地域で行われ、そのため原告と被告のぬいぐるみ人形劇の公演は名古屋で時期的に重なり、また、関西以西の地方でも時期的には重ならないものの公演場所が重なることがあった。
(7) 被告の営業形態は原告の場合と同様であり、被告の社員は、原告の大阪事務所の社員時代に営業活動をしていた幼稚園、保育園等を訪問して、ぬいぐるみ人形劇の入場券の販売等の営業活動を行った。
(8) 被告は、昭和五二年から五年ほどの間、ぬいぐるみ人形劇の公演の際、原告の劇団木馬座とは関係がない旨の立看板を掲げ、あるいは同趣旨のことを場内放送したりした。
(9) 原告は、訴外【A】らが退職した後も、原告の大阪事務所の営業活動を続けたが、採算が悪化したため、昭和五四年四月ころ同大阪事務所を閉鎖した。
(二) 右事実によれば、原告と被告の登記された本店所在地は遠距離にあり、被告のぬいぐるみ人形劇の公演は名古屋以西の地域で行われたもので被告はその登記商号を、原告の商号が登記された東京都中央区内及び本店所在地移転後の川崎市多摩区内において使用しているものではないけれども、被告が設立された当時、原告のぬいぐるみ人形劇の公演は全国的規模で行われ、すでに木馬座の名称で広く認識されていたものであるところ、被告は、原告の大阪事務所に勤務していた者によって設立され、原告の木馬座の名称がすでに広く認識されていたことやその営業内容を十分知って、原告の「株式会社劇団木馬座」の商号に前示のとおり類似する「株式会社木馬企画」の商号を敢えて選定登記したこと、被告の主な営業活動は原告と同じぬいぐるみ人形劇の制作、公演であり、原告と被告の営業の混同誤認の虞は大きいこと、被告は原告の大阪事務所が中心となって営業を行っていた地域と同一地域で、原告と同様のぬいぐるみ人形劇の公演を原告と同様の営業形態で行い、しかも、被告は名古屋以西の地域で、原告と公演場所が同一であったり、公演時期が同一であるにもかかわらずその営業を行ったこともあったことに照らすと、結局、被告は不正競争の目的をもって「株式会社木馬企画」の商号を選定し、使用したものと推認することができ、右の認定を覆すに足りる証拠はない(被告代表者はその尋問中で、被告の社員が旧木馬座以来長く木馬座に関与し、木馬の名称に愛着を抱いていたことから「株式会社木馬企画」の商号を選定した旨供述しているけれども、
そのことは被告の商号選定について不正競争の目的を否定する理由とはならないし、更に被告は、前記(一)の(8)のとおり、一時期公演の際に原告の劇団木馬座とは関係がない旨観客に告げていたことが認められるけれども、右の程度では被告の商号選定について不正競争の目的を否定することはできないというべきである)。なお、成立に争いのない乙第七号証及び弁論の全趣旨によれば、訴外株式会社木馬座(以下「新会社」という)は、昭和六一年四月一七日、東京都品川区<以下略>を本店所在地として設立され、原告は、昭和六一年九月ころ、本件商標権とともにその営業を右新会社に譲渡したことが認められるが、原告が営業を廃止し、
その登記商号を廃止したことを認めるに足りる証拠はないから、これをもって被告の不正競争の目的を否定する理由とすることはできない。
四 そこで、抗弁第3項(権利濫用)についてみるに、前記三の2の認定事実に、
前掲乙第四、第五号証、原告及び被告各代表者尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、被告は、被告の商号を一〇年以上使用し、その間、関西方面を中心に独自の信用を形成して営業を続けていること、被告は一時期その公演に際して、被告の公演が原告の劇団木馬座の公演とは異なる旨観客に告げていたこと、被告はその間、
原告から被告の商号の使用について抗議を受けたことはなかったこと、被告の元代表取締役であった訴外【A】らは、原告を退職後被告会社設立前の昭和五二年ころ、木馬プロダクションの名称で、原告のぬいぐるみ人形劇の公演を買い入れ、原告の劇団木馬座によるぬいぐるみ人形劇を企画、公演したことが認められるが、原告が被告の商号使用について許諾したことまでをも認めるに足りる証拠はなく、右事実によっては、いまだ原告の被告に対する商号使用差止請求は権利濫用とまではいうことができない。
五 よって、原告の被告に対する請求は、被告商号の使用差止を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、
仮執行の宣言を付するのは相当でないからこれを却下し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条92条本文を適用して主文のとおり判断する。
裁判官 澁川満
裁判官 小池勝雄
裁判官 加々美博久
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