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関連審決 審判1979-14634
関連ワード 指定商品 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  著名商標 /  除斥期間 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  存続期間 /  無効審判 /  更新登録 /  ハウスマーク /  商号 / 
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事件 昭和 58年 (行ケ) 215号
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裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1985/10/15
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が昭和五四年審判第一四六三四号事件について昭和五八年八月一六日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 原告 主文同旨の判決二 被告1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
との判決
請求の原因
一 特許庁における手続の経緯 原告は、昭和三九年一二月一八日、別紙(一)記載のとおり、八稜鏡輪郭内に「寳」の文字を角形に図案化して表して成る商標(以下「本願商標」という。)について第三二類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品(他の類に属するものを除く)」を指定商品として、商標登録出願(昭和三九年商標登録願第五七九八八号)をし、昭和四〇年一一月一一日出願公告(商標出願公告昭四〇ー三三四六五号)された。
原告は、昭和五一年四月一日、指定商品の一部放棄書を提出し、その結果、指定商品は、第三二類「天草、野菜、果実、加工穀物、野菜ジユース、ピーナツツバター、乾燥野菜、乾燥果実、とうふ、凍りどうふ、あぶらあげ、こんにやく、こうじ、酵母、イーストパウダー、ベーキングパウダー、豆乳、麦芽」と限定された。
昭和五四年九月二五日、本願につき拒絶査定を受けたので、原告は、同年一一月二〇日審判を請求し、昭和五四年審判第一四六三四号事件として審理されたが、昭和五八年八月一六日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は、同年一〇月一九日原告に送達された。
二 審決の理由の要点 本願商標は、別紙(一)に表示した構成より成り、指定商品は、前項記載のとおりである。
これに対し、登録第七〇八五七三号商標(以下「引用登録商標」という。)は、
別紙(二)に表示した構成より成り、第三二類「野菜のつけ物、その他本類に属する商品、但し海そう類を除く」を指定商品として、昭和三九年一一月二一日に登録出願、同四一年五月二六日に登録、その後、同五一年八月九日に商標権存続期間更新登録がなされているものである。
よつて按ずるに、本願商標は、その構成は別紙(一)に表示するとおり、図形とやや図案化された文字の組合せより成るものであるが、輪郭とみられる図形と文字の部分が一体となつて直ちに特定の称呼観念を生ずるものとは認められず、顕著に書された文字の部分も取引上独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものと認められるから、該文字部分に接する取引者、需要者をして「寳」の文字を図案化して成るものと容易に理解するものといわなければならない。したがつて、
本願商標は、該文字の部分に相応して「タカラ」(寳)の称呼観念を生ずるものと判断するのが相当である。
他方、引用登録商標は、別紙(二)に表示したとおり、「宝」と「福一」の各文字を組合せて成るものとみられるところ、構成中「宝」の文字はゴシツク体であつて、筆書きの「福一」の文字とは書体を異にし、かつ、文字の大きさを異にしているばかりでなく、分離して配列されているものであるから、これらの文字間には常に不可分一体のものとして、認識し把握しなければならない熟語的な意味合が表現されているともいい得ないところである。したがつて、簡易迅速を尊ぶ商取引に際しては、全体を読んだ場合の「タカラフクイチ」の称呼のほか、「宝」或いは「福一」の各文字から生ずる「タカラ」或いは「フクイチ」の称呼をもつて略称し、取引に資される場合も決して少なくないものと判断するのが相当である。
そうとすれば、引用登録商標は、単に「タカラ」(宝)の称呼観念をも生ずるものと認めざるを得ない。
したがつて、本願商標と引用登録商標とは、「タカラ」(寳或いは宝)の称呼
観念を共通にする類似の商標であり、かつ、本願商標の指定商品は、引用登録商標の指定商品に包含されるものと認定し得るところであるから、結局、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。
三 審決を取り消すべき事由1 取消事由(一) 本願商標と引用登録商標とは、「タカラ」(寳或いは宝)の称呼観念を共通にする類似の商標であるとした審決の認定、判断は誤つており、本願商標は登録することができないとした審決は違法である。
即ち、本願商標からは「タカラ(宝)」印の称呼観念(「タカラ」の称呼
「宝」の観念をいう。本項において、以下同じ。)を生ずるが、引用登録商標は、
その構成から、「タカラフクイチ(宝福一)」印の称呼観念(「タカラフクイチ」の称呼、「宝福一」の観念をいう。本項において、以下同じ。)、または単に「フクイチ(福一)」印の称呼観念(「フクイチ」の称呼、「福一」の観念をいう。本項において、以下同じ。)を生じ、単に「タカラ(宝)」印の称呼観念(「タカラ」の称呼、「宝」の観念をいう。本項において、以下同じ。)を生ずることはなく、両商標は、「タカラ(寳或いは宝)」の称呼観念を共通にするものではない。
以下、引用登録商標につき詳述する。
引用登録商標を構成している「宝」、「福」、「一」の三文字は、これを全体的に観察するのが自然であり、いずれの文字も理解容易なものであるから、「宝」の文字と「福一」の文字は同一字体ではないが、この両者を常に分離して観察すべき理由はないので、引用登録商標から生ずる最も自然な称呼は「タカラフクイチ」である。
むしろ、「宝」の文字は、貴重な品物、大切な財物、宝物、財貨、大切に取り扱うべきものなどを意味する文字であり、一方「福」の文字は、さいわい、しあわせ、幸運などを意味するものであつて、両者は、結合一体化しやすい(連想観念しやすい)語であり、したがつて、引用登録商標においても、「宝」の文字と「福」の文字が分離、独立して観察される可能性は少ないものとみるべきである。「福」と「一」の文字も大きさが顕著に異なるが、これらは一体化して観察されるのが自然である。
さらに、引用登録商標の商標権者の商号が「宝福一有限会社」であることを考えあわせてみても、商標権者自身、引用登録商標を「タカラフクイチ(宝福一)」の称呼観念をもつて取引に使用しようとする意図であることは明らかであり、その意図は客観的にも受け入れられるべき性質のものである。
したがつて、引用登録商標は、「宝」、「福」、「一」の三文字を分離して観察されることはなく、不可分一体として「タカラフクイチ」と称呼されるものと考えるのが相当である。
仮に、引用登録商標中の構成の一部が捨象して観察される場合があるとしても、
それは、最も小さく付記的に表された「宝」の文字の部分であつて、顕著に表された「福一」の文字が、観察、認識、記憶の対象から除外されるとは考えられず、引用登録商標から、「フクイチ(福一)」の称呼観念を生ずることはあつても、
「タカラ(宝)」の称呼観念を生ずることはないものというべきである。
右に述べたとおりであるから、審決が、引用登録商標は、「タカラ」(宝)の称呼観念をも生ずるものとし、本願商標と引用登録商標とは、「タカラ」(寳或いは宝)の称呼観念を共通にする類似の商標であるとした認定、判断は、誤りである。
2 取消事由(二) 本願商標と引用登録商標とは、「タカラ(寳或いは宝)」の称呼観念を共通にするところがあるとしても、両商標を全体的に観察して判断し、或いは取引の実情、特に原告の著名商標を考慮すると、両商標は類似していないものというべきであつて、両商標は類似しているとした審決の認定、判断は誤つており、本願商標は登録することができないとした審決は違法である。
商標の類似とは、商標として使用された場合に互いに相紛らわしく、商品の出所について混同を生ずるおそれがある程度に類似していることをいうものであるから、対比すべき二つの商標が類似しているか否かを判断するに当たつては、二つの商標が似ている、あるいは共通点があるというだけでは足らず、取引の実際において出所の混同を生ずる程度まで類似している(混同的類似)か否かについて考慮する必要があるものというべきである。
本件において、本願商標と引用登録商標とは外観を大きく異にし、両商標は、
「寳」または「宝」の文字を含む点で共通しているけれども、前者と後者では、その「寳」または「宝」の文字に対する観察、認識の程度及び態様が異なるものである。即ち、
本願商標からは、文字どおり、「寳」印の認識が生ずる。取引の実際において、
八稜鏡輪郭と角形に図案化された「寳」の文字との組合せは、記号的な特徴とともに、「寳」の文字を際立たせる役割を果たしている。したがつて、「寳」印の観念認識が生じ、それに付随して「タカラ」の称呼の認識が生ずる。本願商標で最も顕著な特徴は、「寳」の文字に存する。そして、本願商標は、商品名的な商標ではなく、ハウスマーク的な商標であつて、当該商標を使用する者の商品全般にわたつて普遍的に使用するを可とする性質のものである。後記のとおり、現に、原告は、本願商標と同一または実質上同一の商標を原告のハウスマークとして、その製造販売にかかる各種商品に使用し、周知、著名な商標となつている。
これに対して、引用登録商標は、商品名的な商標であり、ハウスマークとしての使用には適しない性質のものということができる。
そして、引用登録商標において最も顕著な特徴部分は、独特な書体をもつ「福一」の文字部分であり、「宝」の文字は、「福」の文字の右肩に小さく表されているにすぎない。
ところで、原告は大正一四年九月に設立され、酒類、調味料等の製造販売を業務目的としてきたものである。設立直後に、明治三八年一〇月以来存続する四方合名会社を合併して、その一切の営業を承継し、わが国屈指の酒類及びその副産物の総合メーカーとなつた。その製品には、「寳」の文字から成る商標、或いはこれを要部とする商標を使用してきたものであつて、少なくとも昭和二一年頃にはすでに焼酎、味淋について取引者、需要者の間に広く一般に知られていたものである。そして、その後も原告の業務範囲は、味淋、焼酎にとどまらず、調味料、食料品類にまで拡大され、本願商標及び引用登録商標の出願時には、原告の「タカラ(寳)」印と称呼観念される商標には、取引者及び需要者間にさらに広く認識されていたものである。
原告の製造販売にかかる味淋については、商標登録第四九三四二号商標(別紙(三)表示の商標)と実質上同一の商標がその登録当時より連綿として使用されているものである。また、焼酎については、商標登録第五七八〇〇号商標(別紙(四)表示の商標)、同第二〇二二〇二号商標(別紙(五)表示の商標)及び同第一五二四三二三号商標(別紙(六)表示の商標)などを使用してきたものである。
これら味淋、焼酎について原告が使用してきた商標は、本願商標と実質上同一のものといえるものである。
右のとおり、原告の商標は、酒類のみならず、調味料、食料品の取引者及び需要者間において周知著名であり、一方引用登録商標は著名ではないから、本願商標を原告が取引に用いても、引用登録商標の商標権者の製造販売にかかる商品との出所混同を生ずることはない。
3 取消事由(三) 引用登録商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する無効原因を有するものであるから、そのいわゆる権利範囲は願書に添附した書面に記載された商標と同一のものに限定されるものというべく、したがつて、引用登録商標と同一でない本願商標は、引用登録商標のいわゆる権利範囲に属しないものであるから、実質的には引用登録商標に類似しないものというべきであり、本件に商標法第4条第1項第11号を適用した審決は違法である。即ち、
原告の所有にかかる登録第一一四九八八四号商標(昭和三三年五月一六日登録出願、昭和五〇年九月一日登録。以下「甲商標」という。)は、別紙(七)に表示のとおり、本願商標と同一の構成にかかるもので、旧商標法施行規則(大正一〇年農商務省令第三六号)第15条の規定による商品類別(右類別によるものを、以下「旧」と略称する。)第四五類に属する商品を指定商品とするものであるところ、
審決が認定するとおり、本願商標が引用登録商標と類似であるならば、本願商標と甲商標の標章は同一であるから、引用登録商標は甲商標に類似する商標ということになり、かつ、引用登録商標は甲商標の指定商品及びこれに類似する商品について使用するものであるから、引用登録商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する無効原因を有するものである。また、引用登録商標は昭和三九年一一月二一日出願されたが、甲商標と同一又は類似とされることなく昭和四〇年一一月八日出願公告、昭和四一年五月二六日登録されたのに対し、甲商標の構成と同一の構成から成る本願商標(昭和三九年一二月一八日出願)は引用登録商標におくれること三日の昭和四〇年一一月一一日に出願公告されながら、一二年間を経過した昭和五二年七月拒絶理由通知を受けるに至つた。もはや原告は、引用登録商標につき甲商標に類似することを理由とする登録無効審判の請求をすることができなかつた(いわゆる除斥期間の経過)という事情にある。
右のように、先に出願をした関係にある甲商標に、引用登録商標が類似することが明らかなとき、或いは引用登録商標に無効原因の存在することが明らかであるが、無効審判除斥期間に関する規定の関係で登録の取消しを免れているときは、
引用登録商標のいわゆる権利範囲は、引用登録商標の願書に添附した書面に記載された商標と同一のものに限定され、これと異なるものには及ばないものというべきである。
本願商標が引用登録商標と同一でないことは明らかである。
そうすると、本願商標は、引用登録商標のいわゆる権利範囲に属さないものであるから、実質的に引用登録商標に類似しないものとすべく、本願商標に商標法第4条第1項第11号を適用すべきではない。
被告の答弁及び主張
一 請求の原因一、二の事実は認める。
二 同三は争う。
1 取消事由(一)について 引用登録商標は、その構成が「宝」と「福一」の各文字の組合せより成り、それぞれの文字が分離し、独立したものとみられるものである。それは、審決説示のとおり、この各文字の書体が、前者はゴシツク、後者は筆書きをもつて書されているばかりでなく、各文字の大きさが著しく異なるためである。
また、食料品を取り扱う業界において、指定商品との関係における商標の称呼については、その書された文字の書体や大小にかかわりなく一連にのみ読み込み、その称呼をもつて取引に資せられなければならないとする格別の事由もなく、むしろ、引用登録商標における「宝」の文字の部分は、縁起のよい文字として親しまれているものであるから、看者に強く印象づけるものである。
してみれば、引用登録商標からは、全体としての「タカラフクイチ」(宝福一)或いは分断して「フクイチ」(福一)の称呼観念を生ずることは否定しないが、
「宝」の文字部分から「タカラ」(宝)の称呼観念を生ずるものというべく、本願商標と引用登録商標とは、「タカラ」(寳或いは宝)の称呼観念を共通にする類似の商標であるとした審決の認定、判断に誤りはない。
2 取消事由(二)について 味淋や焼酎について、原告の商標が需要者間において周知著名となつていることが認められるとしても、商標の類否は類否が問題とされる商標相互の対比において判断されるべきものであつて、原告が主張するような事情は、本願商標と引用登録商標との類否の判断を拘束するものとはいえず、審決の判断に誤りはない。
3 取消事由(三)について 引用登録商標と甲商標とが併存するところがあるとしても、本願商標と引用登録商標とは、類似の商標と判断されるものであるから、原告の主張は理由がない。
証拠関係(省略)
理 由一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)及び二(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、審決を取り消すべき事由の存否について検討する。
1 本願商標の構成が、別紙(一)表示のとおり、八稜鏡輪郭内に「寳」の文字を角形に表して成るものであることについては、当事者間に争いがなく、右事実によれば、本願商標からは、「タカラ」(寳)の称呼観念を生ずるものということができる。
成立に争いのない甲第七号証によれば、引用登録商標の構成は、別紙(二)表示のとおり、「宝」と「福一」の文字を組合せて成るものであることが認められる。
そして、同号証によれば、引用登録商標における「宝」の文字はゴシツク体、
「福一」の文字は筆書きであつて、書体を異にしていること、「宝」の文字と「福一」の文字は、その大きさを異にし、分離、独立して配列されていることが認められるところ、「宝」と「福一」は観念上関連性のないものであつて、常に不可分一体のものとして認識されるものとはいえないと解するのを相当とするから、引用登録商標からは、構成文字全体から生ずる「タカラフクイチ」の称呼のほか、「宝」或いは「福一」の各文字による「タカラ」或いは「フクイチ」の称呼をもつて略称される場合のあることは、簡易迅速を尊ぶ商取引の実際における経験則に照らし、
否定し難いところであるというのを相当とする。
したがつて、引用登録商標からは、「タカラ」(宝)の称呼観念を生ずることはないとし、本願商標と引用登録商標とは、「タカラ」(寳或いは宝)の称呼観念を共通にしないことを前提とする原告の取消事由(一)の主張は理由がないものといわざるをえない。
2 次に、取消事由(二)について判断する。
当事者間に争いがない請求の原因一の事実に前掲甲第七号証及び成立に争いのない甲第五、第六号証、第八ないし第一六号証、第一七号証の一ないし三、証人Aの証言ならびに本件口頭弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。即ち、
本願商標は別紙(一)表示のとおり八稜鏡輪郭内に「寳」の文字を角形に表して成るものであり、その構成から「タカラ」の称呼、「宝」の観念を生ずるものであること、原告は大正一四年九月に設立され、酒類、調味料等の製造販売を業務目的としてきた会社であるが、右設立直後、四方合名会社を合併して、その一切の営業を承継し、おそくとも本願商標の登録出願当時にはわが国屈指の酒類及びその副産物の総合メーカーとなつていたこと、原告は、その設立以来、味淋及び焼酎の製造販売に主力を注いできたが、現在、味淋については約六〇パーセント、焼酎については四〇パーセント弱の全国的市場占有率を有し、そのほか、清酒、ウイスキー、葡萄酒、ビール等を製造販売し、本しめじ、鰻、漬物、鰹節等の食料品や調味料等をも製造販売していること、別紙(三)表示の商標(登録第四九三四二号商標)は、
指定商品を旧商標法施行細則(明治四二年農商務省令第四四号)第20条の規定による商品類別第三九類「味淋」とし、四方合名会社を商標権者として、明治四四年一二月四日登録されたが、前記合併により、原告が右商標権を取得してその旨登録され、その後存続期間更新の登録が重ねられているところ、同商標の構成のうち八稜鏡輪郭内に「寳」の文字を角形に図案化して表して成る部分が本願商標の構成と酷似していること、別紙(四)表示の商標(登録第五七八〇〇号商標)は、指定商品を同施行細則第20条の規定による商品類別第三九類「白酒、焼酎、濁酒、亀ノ歳、直シ、葡萄酒、麦酒、ブランデイ、ベルモット、ウヰスキー、其他他類に属セサル各種の酒類(味淋ヲ除ク)」とし、四方合名会社を商標権者として、大正二年三月五日に登録されたが、前記合併により、原告が右商標権を取得してその旨登録され、その後存続期間更新の登録が重ねられているところ、同商標は「寳」の文字を角形に図案化して表して成ると認められること、原告は、昭和三年一〇月二日、
別紙(五)表示の商標につき、指定商品を旧第三八類「焼酎」として商標登録(登録第二〇二二〇二号)を受けているところ、同商標の構成のうち八稜鏡輪郭内に「寳」の文字を角形に図案化して表して成る部分が本願商標の構成と酷似していること、原告は、その製造販売する味淋、焼酎について、右に認定したところの別紙(三)ないし(五)表示の商標をはじめとし、「寳」の文字を図案化して成り、或いはこれを要部として成る各種の商標を使用してきたものであつて、「タカラ」の称呼を生ずると認められる右各商標は、少なくとも本願商標の登録出願当時にはすでに、味淋、焼酎について、取引者及び需要者の間に広く一般に知られ、かつ、原告の商品全般につき「タカラ」の称呼をもつて広く一般に取引されていたものであること、のみならず原告は、昭和三三年五月一六日、別紙(七)表示の商標につき、旧第四五類「他類ニ属セサル食料品及加味品」を指定商品として登録出願し、
昭和五〇年九月一日に商標登録(登録第一一四九八八四号)を受けているところ、
同商標の構成は本願商標の構成と同一であると認められること、一方、引用登録商標は、別紙(二)に表示のとおりの文字の組合せから成り、その構成から、「タカラ」の称呼、「宝」の観念を生ずるものであること、以上の事実が認められ、他に右認定を左右すべき証拠はない。
右事実からすると、原告は、その創業は古く、かつわが国屈指の酒類等のメーカーであつて、「寳」の文字を前記のとおりに図案化して成る商標はいわゆる周知、
著名商標であることからすると、本願商標をその指定商品に使用し、或いは「タカラ」の称呼をもつて取引がなされた場合、その取引者、需要者は、該商品は、原告の製造販売にかかるものであると認識する蓋然性が極めて高いものというべく、原告が本願商標をその指定商品に使用しても、それが引用登録商標の商標権者である宝福一有限会社の製造販売にかかるものであるかのような印象を一般に与え、商品の出所につき混同を生ぜしめるおそれがあるものとは認め難い。なお、証人Aの証言、前掲甲第七号証によれば、引用登録商標の権利者である宝福一有限会社の本社所在地である、倉吉市西倉吉町の本社周辺においても、「タカラ」の称呼をもつて取引がなされるのは原告の製品であつて、酢、醤油、金山寺漬など宝福一有限会社の製品は「タカラフクイチ」と称呼されて取引され、「タカラ」の称呼をもつてなされる商取引において同会社の商品と原告の商品とが相紛れるおそれはないことを窺い知ることができるのである。
そうとすると、本願商標と引用登録商標とは、「タカラ」の称呼、「寳或いは宝」の観念を共通にするけれども、本願商標は引用登録商標に類似していないものというのを相当とする。
被告は、商標の類否は商標の周知、著名性などの事情とは関係なく、本願商標と引用登録商標との間の異同において判断されるべきである旨主張するが、商標は、
取引において、その商品が自己の製造、販売等営業にかかるものであることを表彰するために使用するものであるから、商標の類否の判断に当たつては、取引の実情を離れてはこれを考察すべきではなく、即ち、その商品の取引の実情において、取引者又は需要者の間に商品の出所につき混同をひきおこすおそれがあるかどうかによつて決すべきものと解するのを相当とするから、被告の右主張は採ることができない。
以上の理由により、原告の取消事由(二)の主張は理由があり、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当し登録することができないとした審決は、原告のその余の主張につき判断するまでもなく、結局、違法として取消しを免れない。
三 よつて、審決の取消しを求める原告の本訴請求は理由があるから、これを認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89条の各規定を適用して主文のとおり判決する。
裁判官 秋吉稔弘
裁判官 竹田稔
裁判官 濱崎浩一
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