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関連審決 審判1980-19212
審判1980-19213
関連ワード 流通性 /  量産 /  役務の提供 /  指定商品 /  外観(外観類似) /  観念(観念類似) /  国内 /  正当な理由 /  商号 / 
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事件 昭和 59年 (行ケ) 256号
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裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1985/07/31
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 原告は、「特許庁が、同庁昭和五五年審判第一九二一三号事件について、昭和五九年九月一二日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求めた。
二 被告は、主文同旨の判決を求めた。
請求の原因
一 特許庁における手続の経緯1 原告は、次の登録商標(以下、「本件商標」という。)につき商標権を有する。
出願 昭和四八年五月七日出願公告 昭和五〇年一〇月四日登録 昭和五一年九月六日登録番号 第一二一五九六六号構成 「美創」の漢字を縦書したもの(別紙商標公報記載のとおり)指定商品 第二六類 印刷物(文房具類に属するものを除く)、書画、彫刻、写真、これらの附属品2 被告は、原告を被請求人として、昭和五五年一〇月二七日、特許庁に対し、本件商標につき商標登録の取消の審判の請求をした(昭和五六年一月二三日同登録)。特許庁は、これを同庁昭和五五年審判第一九二一二号事件として審理した上、昭和五九年九月一二日、「登録第一二一五九六六号商標の登録を取り消す。」との審決をし、その謄本は、同年九月一二日、原告に送達された。
二 審決の理由の要点1 本件商標の出願日、登録日、登録番号、構成、指定商品は、前項1に記載のとおりである。
2 請求人(被告)が本件審判の請求をするについて利害関係を有するかどうかについて判断するに、請求人は「美創」の文字を横書きしてなる商標を、第二六類「印刷物(文房具類に属するものを除く)書画、彫刻、写真、これらの附属品」を指定商品として出願(昭和五五年商標登録願第七七一〇一号)したところ、本件商標を引用されて拒絶理由通知書が発せられ現在審査中であることが、職権により調査したところ判明した。したがつて、請求人は本件審判請求について利害関係を有するものと認める。
3 そこで、本案について審理するに、被請求人(原告)が本件商標の使用の事実を立証するために提出した乙第一ないし第一一号証(本訴における甲第八ないし第一八号証)は、いずれも建物の外観パース(透視図)の青写真である。
ところで、建築の設計を依頼した場合、設計者と施主との交渉に当たつて、設計者が施主に建物全体に関する概念を植えつける必要から、一般に配置図、平面図、
立面図、透視図(パース)等が交渉用図面として準備される。中でも透視図(パース)は建物を一般の人に理解させるのに最もよい図面であつて、これは正確に誇張のないように美しく書かれるのが普通である。そして、右乙第一ないし第一一号証(前同)の青写真は、いずれも前記した設計者と施主との交渉用図面のうちの透視図(パース)とみるのが相当であり、これは設計というサービスに付随するもので、本件商標の指定商品について使用しているものとはいい得ないものである。なお、被請求人は右乙第一ないし第一一号証(前同)及び同第一五号証(本訴における甲第二四号証)は、第二六類における絵画又は写真であると主張しているが、絵画又は写真として販売されている事実を立証していないので、この主張を認めることができない。
次に、乙第一三号証(登録第四七七七四一号意匠公報、本訴における甲第二五号証)に示す家屋用塔を第二六類彫刻として製作し、販売しているとの被請求人の主張についても、そのような事実を立証していないので認めることができない。
また、乙第一六号証(請求書写、本訴における甲第二八号証)、同第一七号証(見積書写、本訴における甲第二七号証)については、本件商標の指定商品中のどの商品について使用しているのか不明であり、本件商標の使用を立証するものとはいい難い。
さらに、建築に係る書籍の発行計画が本件審判請求前に完了しているとの被請求人の主張については、現在に至るも証拠の提出がないので、これも認められない。
してみると、被請求人提出の乙号各証は、いずれも本件商標をその請求に係る指定商品について、本件審判の請求の登録前三年以内に日本国内において商標権者が使用していたものであることを証明しているものとはいえない。
4 したがつて、本件商標は、商標法50条により、その登録を取り消すべきである。
5 なお、被請求人は、本件商標の使用を立証するため、【A】外一名の証人尋問を申請しているが、本件商標の使用について判断すべき重要な影響を及ぼす物証においてこれが認められない以上、証人尋問のみでは到底その使用を認定しえないので、同人に対する証人尋問はその必要を認めることができない。
三 審決を取り消すべき事由1 被告は本件審判を請求する審判請求権を有しない(取消事由(1))。
(一) 被告が本件商標に対し本件審判を請求した理由は、被告が「美創」の文字を横書きしてなる商標につき商標登録願(昭和五五年商標登録願第七七一〇一号)をし、特許庁がこれに対し本件商標を引用して拒絶理由通知書を発したというところにあつて、その余の理由は皆無である。しかし、本件商標が排除されれば被告出願の商標が当然商標登録されるという論理は成立しない。商標登録される可能性はあるとしても、可能性は不十分な確実性であつて現実に充足された確実なものではない。仮りに被告出願の商標が登録され、商標権が設定されるとしても、被告がこれを行使する確実性すなわちその商標を使用する確実性はない。被告はその商標を使用する指定商品に付いて全く業務をしていない。あるいは、被告が商標権取得後これを他に譲渡することは推測できないことではないが、商標権取得後の譲渡を目的として商標登録出願をすることは、商標法2条1項3条1項に違背する行為であり、商標法が容認するところではない。
被告自身がその指定商品についての業務を現実にしていないのに本件商標の取消審判を請求することは、衡平の観念を甚だしく失するのみならず、国家公権力の発動を要求するにつき全く理由を欠くものであつて、国家が右審判の請求に対し公権力を発動するいわれがない。
(二) 審決の理由の要点2の判断は、論理を穿つておらず、論旨不成立に堕し、
当然取り消されるべきものである。
2 原告は、本件商標をその商標権取得後引き続き現在に至るまで十分に使用している(取消事由(2))。
(一) 原告は、建築設計、工事監督、建築請負を業務とし、ことに美術建築の設計、施工を主たる目的とし、その設計、図面には、本件商標を付して有償譲渡し、
「美創」の設計、図面と銘打つて業界に進出し、業者及び需要者に好評を受けている。原告は、不特定多数人が任意に選択し使用し得るために、右建築の設計、図面を著作物として作成し、それらに本件商標を付して不特定多数人に対する有償譲渡をし、あるいは、本件商標を付した著作物を不特定多数人に展示している。
原告は、登録第四七七七四一号意匠権(昭和四八年三月二九日出願、昭和五三年一月三一日登録、意匠に係る物品「家屋用塔」)を有し、この彫刻品に本件商標を付して玩具商等に販売し、これを玩具商の店舗屋上等に据え付ける施行をし、その設計、図面及び写真を他人に有償譲渡している。また、原告は、原告の設計、図面を集録説明した図書の刊行にも現実に従事していたものであつて、それらの商標使用行為及びその余の事実行為は、本件審判の請求の登録前三年の間に連続して多数行われた。
本来、商標の使用とは、商標法2条3項各号に規定された行為であり、これらの行為のいずれか一つが商品に対してされれば、商標の使用という法律概念をすでに充足しているということができる。およそ、商品には、食料品や菓子のように日常性の商品と専門書籍ないし建築材料のように専門的、特殊的、非日常的な商品とがあり、日常的商品は市場に大量供給できることが多いが、専門的、特殊的、非日常的な商品は、不特定多数人すなわち市場を取引の対象として大量に供給されるものではなく、時には全く市場に供給できない場合もありうる。大部分の新商品のごときは市場にほとんど供給できない状態において終息するといつても過言ではないのが実情である。しかしながら、それであつても商品ということができるのであり、
それに商標が付してあれば、商標を商品に使用しているにほかならない。換言すれば、商品とは商品という文化観念に適合する物品であつて、譲渡、生産、加工、証明等において有償行為の対象となる性質を保持し得るものである。故に、商標法上の商品に商標を使用したといえる法律観念の最低限度の対象は、文化観念上商品ということのできる対象に商標を付して有償行為により不特定多数人に供給できる状態を業務上保持しているときは、商品に対して商標を使用しているものと断定でき、実際に市場において販売したかどうかを問わないとするを至当とする。
これを本件商標の使用に当てはめるならば、前記の建築の設計、図面、写真、彫刻は著作物であつて、これらの著作物は経済取引の対象である商品であることは疑いを容れる余地がない。原告が右商品の生産、加工、証明、譲渡をすることを業としていることも明確な事実である。建築請負業務において設計図面の全部又は一部は有償譲渡の対象であり、文化観念としての商品であることに疑いはない。価格の低い場合であつても百万円前後、高い場合は数百万円、数千万円以上に達する設計図面をサービスをもつて譲渡することは不可能である。原告の業務は、建設業、環境設備業にほかならず、設備業である配管工事や冷暖房工事は、工賃手間賃を受取るとともに、工事に使用する各種の管や冷暖房機械器具を注文者に有償譲渡するものであつて、これらの管や冷暖房機械器具が商標法上の商品であることは多言を要しない。よつて、原告が外観図その他建築用設計図を譲渡、生産、証明するについて本件商標を使用してした有償行為は、原告の業務とその規模とに徴し、本件商標の使用に当たることは一点の疑う余地がない。
なお、原告が本件商標を使用して建築設計図の書籍発行の準備行為をしていたことは、商標法50条2項ただし書の正当な理由に該当する。
(二) 審決は、その理由の要点3において、「建築の設計を依頼した場合」についての右建築の設計、図面、写真、彫刻に対する本件商標の使用を判断しているが、原告はこのような主張をしていない。原告の主張は右(一)に述べたとおりであつたのに、審決はこれを「建築の設計を依頼した場合」に論拠をすり変えたものであり、その余の原告主張事実についても判断を誤つた違法がある。
しかも、審決は、原告が申請した人証の採用をせずにおいて原告主張事実の立証がないとした採証法則の無視がある。したがつて、審決は違法として取り消されなければならない。
請求の原因に対する認否、反論
一 請求の原因一、二の事実は認める。同三1のうち被告が原告主張の商標につき商標登録願(昭和五五年商標登録願第七七一〇一号)をし、特許庁がこれに対し本件商標を引用して拒絶理由通知書を発したことは認める。同2のうち原告が建築設計、工事監督、建築請負を業務とし、ことに美術建築の設計、施工を主たる目的としていることは認める。その余の主張は否認する。
二 審決の認定判断は正当であり、原告主張の取消事由はいずれも失当である。
1 取消事由(1)について 出願に係る商標につき引用の登録商標の存在により登録を受けることができない状態にある場合、右商標登録出願人は、その引用登録商標に対し登録取消の審判を請求するについて正当の利益を有している。したがつて、被告が本件審判を請求するについて正当の利益を有することは、原告主張事実から明らかである。
2 取消事由(2)について 原告主張のとおり、原告は建築設計、工事監督、建築請負というサービス業を営むものであり、商品の製造又は販売を業務ないし事業目的とはしていない。原告主張の建築用設計図面が建築請負業というサービス業務に付随するものであることは明白である。商標法上の商品とは市場における流通性量産可能性がなければならず、原告の建築設計図面がこのような要件を充足するものであるとは認め難い。
原告主張の家屋用塔は不動産の一部であるとしか考えられず、商品区分第二六類の彫刻には該当しない。
原告は、本件審判請求の予告登録日においてはもとより現時点においても建築用書籍の出版をしていない。自己の都合による遅延とか準備中というだけでは、商標法50条2項ただし書の正当な理由があるとはいえない。
証拠(省略)
理 由一 請求の原因一、二の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の審決取消事由について判断する。
1 取消事由(一)について 被告が「美創」の文字を横書きしてなる商標につき商標登録の出願(昭和五五年商標登録願第七七一〇一号)したところ、本件商標を引用されて拒絶理由通知書が発せられた事実は当事者間に争いがない。右事実によれば、被告は本件商標の存在によつて直接不利益を被る関係にあるから、本件審判を請求するにつき法律上正当な利益を有する者に当たることが明らかである。原告が取消事由(1)において主張するところは独自の見解であつて採用することができない。
2 取消事由(2)について 成立に争いのない甲第八ないし第二三号証、第二七、第二八号証、第三三号証及び原告代表者尋問の結果によれば、原告は、昭和四六年三月に設立された株式会社(当初の商号は株式会社マツダ美創)であつて、建築設計、工事監督、建築請負を業務とし、ことに美術的建築の設計、施工を主たる目的とするものであること(原告の業務内容については当事者間に争いがない。)、このような建築の設計、施工は、いずれも顧客の注文によりこれを行うものであり、設計を含む工事請負の場合設計料は工事費総額の三ないし五パーセントであつて、工事費とは区分して計上されるものであること、原告は、これらの注文により作成した設計図や外観図のうちデザイン的要素の多い店舗等のものはこれを保管しているが、この場合のほかに、
あらかじめ各種のデザイン的要素の多い店舗等の設計図や外観図を作成して保管しておき、これを工事請負を注文するであろういわゆる見込客に示して請負契約締結促進のための手段としており、顧客の方で欲すれば右の図面の写しを実費程度の対価でもつて譲渡していること、原告は、原告作成にかかる右の設計図や外観図に、
丸形の枠内に「美創」の漢字を縦書きにし、その右肩部に「R」の英文字を小さく記した標章を付し、また、原告がその業務につき使用している見積書、請求書にも右標章を付していることが認められる。
右認定の事実によれば、原告が店舗等の建築設計、施工の注文を受けて設計図や外観図を作成し、これを注文主に提供するのは、原告が業とする建築設計という役務(サービス)の提供そのものとしてであり、また、原告があらかじめ作成しておいた設計図や外観図の写しを見込客に対し実費程度の対価でもつて譲渡しているのも、原告が業とする建築設計、施工という役務の提供の一環としてであることは明らかである。このように、提供される役務の提供またはその一環として譲渡される右図面をもつて商標法上の商品ということはできない。したがつて、右図面に付されている前示認定の美創の文字を含む標章は、原告が業として提供する建築設計、
施工という役務を他者の提供する役務から区別するための標識(いわゆるサービス・マーク)として機能しているものというべきであつて、右標章の使用をもつて商標としての使用ということはできない。前示認定の見積書や請求書に右標章を付して使用している行為も、同様に、商標としての使用ということはできない。
原告は、原告の有する登録第四七七七四一号意匠に基づいて製作された家屋用塔の彫刻品は著作物として経済取引の対象となる商品であると主張するが、原告代表者尋問の結果によれば、右塔は店舗建築に際しその屋上部分として構築される不動産の一部分としての塔であることが認められ、これをもつて商標法上の商品ということができないだけでなく、この塔自体に本件商標が付された事実は本件全証拠によつても認めることができない。原告の右主張は失当である。
また、原告は右家屋用塔の写真を商品として販売し、原告作成の設計図、外観図を集録した書籍を発刊したと主張するが、本件証拠上これを認めることができない。更に原告は、右書籍発刊の準備行為をしていたことは商標法50条2項ただし書の正当な理由に該当すると主張するが、特段の客観的事情の主張はないので、右のような商標権者の側の主観的事情のみをもつて右の正当な理由とすることができないことは明らかである。
その他本件全証拠によつても、原告主張の原告が本件商標をその指定商品について本件審判請求の登録がされた昭和五六年一月二三日前三年以内に日本国内において使用した事実はこれを認めることができないから、これと同旨の判断をした審決は正当である。
なお、原告は、特許庁審判官が本件審判事件において原告が申し出た人証を採用しなかつたことは違法であると主張するが、審判官が原告(被請求人)の提出した書証を合理的に判断して十分な心証を得、この心証に基づいて右人証の取り調べを不要と判断したものであることは、前示当事者間に争いのない審決の理由の要点の記載、原告の撮影した広告用写真であることに争いのない甲第二四号証、前掲甲第八ないし第一八号証、第二七、第二八号証及び弁論の全趣旨により明らかであるから、審判官が原告申出の人証を採用しなかつたことが違法であるということはできない。
3 以上のとおりであるから、審決にこれを取り消すに足りる違法な点はない。
三 よつて、原告の本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 瀧川叡一
裁判官 松野嘉貞
裁判官 牧野利秋
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