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関連審決 審判1977-8309
関連ワード 指定商品 /  不使用 /  補正 / 
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事件 昭和 57年 (行ケ) 76号
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裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1982/10/12
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が昭和五二年審判第八三〇九号事件について昭和五七年一月二九日にした審決を取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 原告主文同旨の判決二 被告「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決
当事者の主張
一 請求の原因1 特許庁における手続の経緯 被告は、指定商品を第一七類「被服、布製身回品、寝具類」とする登録第六六三四六六号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者であるが、原告は、昭和五二年六月三〇日、特許庁に対し、商標法第50条第1項の規定に基づき被告を被請求人として、「本件商標の登録はその指定商品中『被服、寝具類』につきこれを取消す。」との商標登録取消の審判を請求(昭和五二年審判第八三〇九号事件)し、
更に、その後原告は、昭和五三年二月八日付手続補正書によつて前記審判請求書中の「5 請求の趣旨」の記載を「第六六三四六六号登録商標の登録は指定商品『被服、布製身回品、寝具類』につきこれを取消す。」と訂正補正したが、昭和五七年一月二九日、「本件審判の請求を却下する。」との審決がされ、その謄本は同年三月一七日原告に送達された。
2 審決の理由の要旨(一) 昭和五二年六月三〇日付審判請求書中の「請求の趣旨」には、本件商標の登録は指定商品「被服、寝具類」について取消す旨記載されていたところ、原告は、昭和五三年二月八日付手続補正書によつて不使用に基づく登録取消を求める指定商品として新たに「布製身回品」を追加して、「請求の趣旨」の記載を、「本件商標の登録は、指定商品『被服、布製身回品、寝具類』について取消す」旨の記載に変更補正する旨の申出をした。
(二) 商標法第56条第1項の規定によつて準用される特許法第131条第1項の規定によれば、審判を請求する者は、審判請求書に請求の趣旨及びその理由その他所要事項をあわせて記載しなければならないことが明らかである。しかして、
「請求の趣旨その他当事者の表示、審判事件の表示」などの記載は、審判事件を特定するための要件と解され、それを変更することは、一旦係属した審判事件を他の事件に流用することとなり、審判請求書の要旨を変更するものと認められるので、
右特許法第131条第2項の規定により許されないものといわなければならない。
したがつて、本件審判請求は不適法であり、かつ、その補正をすることができないものであるから、商標法第56条第1項の規定によつて準用される特許法第135条の規定により却下する。
3 審決の取消事由 原告が当初の審判請求書中の「請求の趣旨」の記載を変更する旨の補正をしたことを理由に、本件審判請求自体を不適法として却下した審決は、明らかに誤りであり、違法であるから、取消されるべきである。
補正が、特許法第131条第2項の規定にいう審判請求書の「要旨」を変更するものに該当するとみたならば、この補正を却下するかもしくは採用できない旨説示したうえで、当初の審判請求書の「請求の趣旨」の内容に即し、指定商品「被服、寝具類」について、商標法第50条第1項の規定に基づく登録取消理由の存否に関し審理判断をすべきものであつた。しかるに、審決は、右補正が許されないことをもつて、ただちに本件審判請求自体を不適法であると誤つて判断し、かつ、商標法第56条第1項の規定によつて準用される特許法第135条の規定を誤つて適用し、本件審判請求を却下したものであるから、違法として取消を免れない。
二 被告の答弁及び主張1 請求の原因1及び2の事実は認める。
2 同3の取消事由についての主張は争う。
審決の判断は、正当であつて審決には原告主張のような違法の点はない。
商標法第50条第1項に規定する商標登録の取消審判を求めて、審判請求書を提出したのち、「請求の趣旨」に記載する指定商品の範囲を実質的に変更することは、一旦係属した審判事件の特定を害し、これを他の事件に流用することとなり、
審判請求書の要旨を変更するものであるから、商標法第56条第1項の規定によつて準用される特許法第131条第2項の規定により許されない。
そこで、本件審判請求書の「請求の趣旨」に記載する指定商品と右手続補正書の補正の内容に記載する指定商品についてみるに、本件審判請求書の請求の趣旨に記載する指定商品は「被服、寝具類」であるのに対し、右手続補正書の補正の内容に記載する指定商品は「被服、布製身回品、寝具類」であるから、右手続補正書の補正の内容に記載する指定商品の範囲が、本件審判請求書の請求の趣旨に記載する指定商品の範囲を実質的に変更するものであることは明らかである。
したがつて、右手続補正書の補正の内容は、商標法第56条1項の規定によつて準用される特許法第131条第2項の規定にいう「その要旨を変更するもの」に該当すると解される。
そうすると、本件審判の請求は、右手続補正書の補正の内容に基づいて、商標法第56条第1項の規定によつて準用される特許法第135条の規定に定める「不適法な審判の請求であつて、その補正をすることができないもの」に該当すると解されるものである。
証拠関係(省略)
理 由一 請求の原因1及び2の事実については、当事者間に争いがない。
二 そこで、審決を取消すべき事由の存否について判断する。
原告が、商標法第50条第1項の規定に基づき、昭和五二年六月三〇日被告を被請求人として、本件商標の登録の取消を求める審判の請求をし、その審判請求書の「請求の趣旨」には「本件商標の登録はその指定商品中『被服、寝具類』につきこれを取消す。」旨記載されていたこと、その後、原告は、昭和五三年二月八日、右「請求の趣旨」の記載中の「被服、寝具類」を「被服、布製身回品、寝具類」と補正する旨の手続補正書を提出して、不使用に基づく登録の取消を求める指定商品の一つとして新たに「布製身回品」を追加したことは、当事者間に争いがない。
右争いのない事実に徴すると、右補正の内容は、審判請求にかかる指定商品の範囲を拡大変更するものであるから、右補正は、商標法第56条の規定によつて準用される特許法第131条第2項の規定にいう審判請求書についてその要旨を変更するものとして許されないものである。しかしながら、右補正が許されないからといつて、すでに適法にされている指定商品「被服、寝具類」につき本件商標の登録の取消を求める旨の本件審判の請求が不適法となるものとは解されない。この点、審判は、右補正をすることが許されないものと認めたのであるから、更に進んで審判請求書中の当初の「請求の趣旨」の記載に即し、指定商品「被服、寝具類」について不使用の事実の存否などを審理して商標法第50条の規定に定める登録取消事由の有無を判断すべきものであつた。しかるに、審決は、右補正が許されないことから、ただちに本件審判請求自体も不適法となるものと誤つて判断し、かつ、商標法第56条第1項の規定によつて準用される特許法第135条の規定を誤つて適用し、本件審判の請求を却下したものであり、明らかに違法であるから、取消を免れない。
よつて、審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を正当として認容することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第7条及び民事訴訟法第89条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 荒木秀一
裁判官 舟本信光
裁判官 舟橋定之