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関連審決 審判1970-983
関連ワード 識別力 /  指定商品 /  普通に用いられる方法 /  不使用 /  判定 /  商標の効力 /  外国 /  継続 / 
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事件 昭和 52年 (行ケ) 82号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1981/05/28
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
原告訴訟代理人は、「特許庁が、昭和五二年二月二一日、同庁昭和四五年審判第九八三号事件についてした審決を取消す。訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決を求め、被告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求めた。
原告の請求の原因及び主張
一 特許庁における手続の経緯 原告は、登録第七三六九七一号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。本件商標は「EARL GREYS」の欧文字を横書きしてなり、第二九類紅茶その他本類に属する商品を指定商品として、昭和四一年五月一三日に登録出願、同四二年三月二七日に登録されたものである。
被告は、昭和四五年一月一六日原告を被請求人として本件商標について登録無効の審判を請求し、昭和四五年審判第九八三号事件として審理されたが、特許庁は、
昭和五二年二月二一日「登録第七三六九七一号商標の登録は商品ウーロン茶、紅茶について無効とする。」旨の審決をし、その謄本は同年三月二八日原告に送達された。
二 審決理由の要旨1 本件商標は、前項記載のとおりのものである。
2 請求人(被告)の提出した書証を検討すると、本件両当事者はじめ、外国の紅茶メーカーの多数の者が「Earl Grey」を紅茶のブレンド名として使用している事実及びそのことがわが国の紅茶関連業界において、本件商標登録出願の日前から広く認識されていたものであることが認められる。
しかして、「Earl Grey」が「ジヤスミン又はベルガモツト」で着香した原茶を配合した紅茶のブレンド名であることは当事者間において争いのないところであつて、これを不特定多数の者がその香りを有する紅茶に使用しているものであるとすれば、これは「ジヤスミン又はベルガモツト」の香りを有する紅茶の品質を表示する語であるとみるのが相当である。
ちなみに、紅茶はわが国においては英国その他の外国から、その大部分が輸入されている国際的商品であることは顕著な事実であり、従つて、それが外国のメーカーによつて使用されているものであつても、わが国の紅茶関連業界において前記のごとく認識されているものであるとすれば、前記のごとく認定するのが妥当である。
3 そうとすれば、ブレンド名であつても、前述のごとき品質を表示するものとして、不特定多数の者によつて普通に使用されているものは、自他商品識別標識としての機能を果さないものであるとみるのが相当である。
4 してみれば、「EARL GREYS」の文字を書してなる本件商標を、その指定商品中「ジヤスミン又はベルガモツト」の香りを有する原茶をブレンドした紅茶に使用するときは商品の品質を表示するものであるから、自他商品の識別標識としての機能を有しないものであり、また、これをその他の紅茶、ウーロン茶に使用するときは、あたかも前記品質を有するものであるかのごとく、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
5 従つて、本件商標はその指定商品中「紅茶、ウーロン茶」については商標法第3条第1項第3号並びに同法第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
三 審決を取消すべき事由(一) 審決は、「Earl Grey」がわが国において品質を表示するものとしていつから、どこで「使用」されているかということを積極的に認定しておらず、かえつて「ちなみに、紅茶はわが国においては英国その他の外国から、その大部分が輸入されている国際的商品であることは顕著な事実であり、従つて、それが外国のメーカーによつて使用されているものであつても、わが国の紅茶関連業界において前記のごとく認識されているものであるとすれば、前記のごとく認定するのが妥当である。」と言い、外国において不特定多数の者が品質を表示するものとして普通に使用しているから、本件商標の登録は無効であると判示しているようにみえる。
もし審決を右のように解することができるとすれば、これは商標権の成立・移転・効力などはすべてその権利を付与する国の法律により、かつ、その領域内に限られるという属地主義の原則に明らかに反し、違法である。本件商標の効力は、
「Earl Grey」がわが国において不特定多数の者が使用しているかどうかを基準に判断すべきである。
また、商標法第3条第1項第3号における商品の品質を表示する標章とは、わが国において使用され、その使用によつてわが国で品質を表示する標章として認識されたものを指し、単に外国において品質を表示するものとして使用され、そのことがわが国において認識されている場合は、これに該当しないと解すべきである(大審院大正三年五月一二日判決、民録二〇輯三八二頁参照)。
現に、「ネクター」のように、外国では一般名称のものでも、わが国においては商標登録がされている(甲第二六、第二七号証参照)。
(二) 審決が、「Earl Grey」がわが国において不特定多数の者によつて使用されていると判示しているとすれば、それは事実誤認の違法がある。すなわち、本件商標である「EARL GREYS」又はこれに類似する標章が、本件商標が登録された昭和四二年三月二七日当時わが国において不特定多数の者によつて使用されていたという証拠はない。
(三) 商標法第3条第1項第3号における商品の品質を表示する標章とは、将来使用される可能性があるというだけでは足りず、現実に取引社会で使用されている標章に限ると解すべきである。
仮に商品の品質を表示する標章が外国において多数のメーカーにより使用されており、そのことがわが国において広く認識されている場合を含むと解しても、本件の場合、いつたんパツケージされればほとんどがそのままの状態で最終消費者の手まで行くという紅茶の流通形態を考慮すれば、紅茶関連業界のみならず、一般消費者を含め右のような事情が広く認識されていなければならないと解する。
また、仮に、紅茶関連業界に広く認識されている場合で足りると解するとしても、右の紅茶関連業界には、単に紅茶輸入業者のみならず、紅茶卸売業者、紅茶小売業者(スーパー、デパートを含む。)、喫茶店業者等も含むと解すべきである。
審決は、「Earl Grey」が商品の品質を表示するものであるか否かを判断するのに、わが国の紅茶関連業界の認識を考慮するだけで、最終消費者の認識を考慮しておらず、この点について商標法第3条第1項第3号の解釈を誤まつた違法がある。商標法は、事業者間の利害を調整するだけでなく、需要者の利益を保護することをもその目的としており(同法第1条)、消費者の認識を無視することは許されない。
本件商標を付した紅茶は、ベルガモツトの香りを有する原茶を配合(ブレンド)したものであり、原告は、これを英国のトワイニング社から輸入している。
この紅茶は、他の紅茶に比し独得の味と香りをもつているため、原告の本件商標の登録時である昭和四二年三月二七日以前においては原告のものを除けば全くわが国に輸入されておらず、アールグレーなる名称は一般消費者であるわが国民の間には全く知られておらず、紅茶関連業界内においても周知ではなかつた。原告は、国民の生活様式―食生活等が欧米化されて来たことに着目し、この独得な味と香りのするアールグレーもわが国民に受け入れられるものと考え、昭和四〇年頃から、アールグレー紅茶を輸入し販売を開始した。
この結果、原告の予想は適中し、その市場性の高いことが判明したので、原告はアールグレー紅茶を本格的に販売すべく昭和四一年五月一三日本件商標の登録を出願したのであるが、当時原告を除き他にアールグレーを販売する者がいなかつたため何人からも右出願について異議が出されず昭和四二年三月二七日登録されたものである。その後今日に至るまで、原告は、アールグレーは原告の登録商標でありその味と香りを国民に衆知させ定着させるべく宣伝広告に力を入れてきた結果、アールグレーの販売量は毎年倍増の一途を辿り、本件商標の付された紅茶は即原告又はトワイニング社の紅茶であるという認識を一般消費者の間に定着させてきたものである。
外国の各社が本件商標又はこれに類似する標章を付して販売している紅茶は、ジヤスミン又はベルガモツトの香りを有する原茶をブレンドした紅茶ではあるが、被告も認めているように、そのブレンドの割合は各社とも秘密にしており、そこには共通した品質があるわけではなく、その味と香りは全く異なり現に原告の当該商品と被告のその商品とを比較すれば、紅茶愛飲家ならだれでもその香り、風味等により識別できるものである。本件商標が紅茶の品質を表わすものではないことは明らかである。
(四) 以上のとおり、審決が、本件商標が品質を表示するもので、自他商品の識別標識としての機能を有しないとしていることは理由がなく、かえつて「EARL GREYS」の付された紅茶は原告又はトワイニング社の商品であるという認識が一般消費者の間に漸時定着してきたことが認められるから、審決は違法であつて取消を免れないものである。
被告の答弁及び主張
一 原本の請求の原因及び主張の一、二のうち、本件審決の謄本が原告に送達されたこと及びその送達の日付は知らないがその余の事実は認める。同三の主張は争う。
二 被告が審判で提出した証拠によれば、日本の紅茶関連業界が、紅茶の本場である英国紅茶業界の実情、とくに各種品質の紅茶の存在、各品質名について、本件商標登録出願の日前に既に熟知していたことは、明らかである。そうであるならば、
日本の紅茶関連業界及び日本における紅茶通といわれる人々が、「Earl Grey」が「ジヤスミン又はベルガモツト」の香りを有する原茶をブレンドした紅茶の品質を表示する語であつたことを認識し、使用していたことも、明らかである。
審決は、「Earl Grey」がわが国において、本件商標登録出願の日前に需要者により紅茶の品質を表わす語として認識され、使用されていたものであるとするもので、その認定・判断は正しいといわねばならない。この認定・判断は、原告が非難するように、外国で品質を表わす標章として普通に使用されているとしたものではないことも明らかである。この点での原告の主張は審決を誤解している。
紅茶は、わが国では大半が輸入によるもので、欧米とくに英国の紅茶メーカーの商品が大半を占めていることから、次の事実が現実に生じている。
まず、英国の紅茶取引の慣習及び取引用語がわが国でもそのまま採用されている。紅茶の取引単位、品質名称等々も英国のものがわが国でも使用される。わが国の紅茶の取引業界は、欧米の業界誌を購読し、その情勢を常に分析してきている。
また、わが国の業者は欧米のメーカーや輸出業者とは、英語によつて、英国の取引用語を用いて交信してきている。英国の紅茶メーカー各社の広告を掲載した雑誌等はわが国にも多数輸入されて一般人の眼にふれている。わが国では海外旅行さらに海外勤務を経験する者が多くなつているため、帰国後も、欧米の取引用語になれ、
わが国でも継続してこれを使用することとなつている、従つて国際商品の場合、品質表示語はわが国でもそのまま使用される可能性は多大である。
さらに、本件で特記すべきことは、甲第七号証の一ないし三及び甲第一四号証の一ないし一五にもあるように、紅茶及びコーヒーについての世界的な業界誌「The Tea & Coffee Trade Journal」には、アールグレー紅茶の米国輸入量を毎号のように掲げており、この業界誌は今日では日本語版もあるくらいに、本件商標登録時よりかなり以前から、業界関係者は定期購読していたこと、そして、甲第四号証及び第一〇号証で、需要者も「アールグレー」は登録前後を通じて品質表示語と認識使用していた事実がある。また、甲第八号証で、業界の団体も同様の統一見解をとなえている。
加えて、甲第九号証の一ないし二〇でもわかるように、原告自らもパンフレツト等には、
「エキゾチツクな芳香で世界的に知られている香料入り紅茶です。昔英国の使者アール・グレイが支那の仙人よりこの製茶法を伝授されたといわれております。」とし、紅茶のかんにもそれに類した事実を現在も付記している。
そして、トワイニング社製紅茶を扱う取引業者も、これは「オレンジ・ペコ」「ダージリン」と同様な意味でのブレンド名と認識していたことが明らかである。
また、このパンフレツトの受取手である一般需要者も、同様の認識をもつたことは十分推定しうる。また、原告は他社の「アールグレイ」も扱つている以上、商標として使用していないことは明らかである。
このような状況において「Earl Grey」の語は、わが国において、本件商標の登録査定時には、「品質」を表示するものであつたと考えるのが相当である。
三 商標法第3条第1項第3号の列挙事項は、いずれも対象商品の取引過程で取引業者が使用する必要があるもので、かつ業者は皆使用を欲するものである。従つて、特定私人に独占使用を認めると他の業者の取引を不当に害することとなり公益に反すると考えられる。反面、特定私人が商標として使用しても、多くの場合自他商品の識別力をもちえない。これらのことが、右法文の立法理由である。従つて「品質」表示か否かもこのような立法趣旨に従つて判定すべきもので、本件のアールグレイをこの意味からも品質表示語と考えるべきものである。
対象商品が国際的商品で、わが国では大半が輸入商品である場合、原産地での品質表示につき、わが国でも取引業界で共通の認識があれば、右立法理由からみて、
特定私人の独占を認めることは、権利者に不当に広範囲の独占権を与えることとなる。自他商品の識別力の有無の判定にあたつても、現実のわが国での取引事実のみならず、原産地の各メーカー品がわが国で取引される場合も仮定して、考えなければならないものと思料する。換言すれば、使用の蓋然性が大きければ、わが国商標法上も「品質」を表示するものと考えてもよいと思われる。特定私人に独占使用を認め、同人の手を経ていない対象商品の取引を禁ずることまでは、わが国の商標登録制度が目的としているものではない。
なお、原告は、法第3条第1項第3号における商品の品質を表示する標章とは、
将来使用される可能性があるというだけでは足りず、現実に取引社会で使用されている標章に限ると解すべきであると主張するが、右法条の問題点は、「品質」を表示する標章かどうかであつて、その使用、不使用の事実ではない。仮に、使用が要件であるとしても、原告の広告方法からみて、原告自身品質表示語として使用しており、これにより一般需要者自身品質表示語として認識してきている。
四 被告が審判で提出した証拠によれば、本件商標登録出願の日前に原告が使用したパンフレツト等では、「アールグレイ」「EARL GREY」又は「Earl Grey」の語は商標として使用したのではなく、他の紅茶と区別する品質を表わす語として使用しており、これを受取つた一般消費者を含む需要者の間に、品質を表わす語として認識されていたと認定することができる。
原告は審決の一部の記載のみをとりあげて、「一般消費者における認識を考慮していない」と非難するが、「品質を表示する標章」か否か及び「自他商品の識別力」の存否の判定にあたつて取引業者を含む「不特定多数人の認識状況」を審決は考慮したもので、何ら商標法第3条第1項第3号の解釈に違法はない。
仮に審決が一般消費者について判断していないとしても、「品質」については、
本件の場合取引業者の認識で十分であることを付加する。なぜならば、法第3条第1項第3号の列挙事項は法第26条第1項第2号の列挙事項と同一で、後者は「商標」についていうものである以上、取引業者のみを対象としているものである。第26条第1項には、第3条1項のうち第一号、第四ないし第六号はいずれも列挙していないのも一般需要者の認識を要件としていない証左である。
実質的に考えても、取引業者間で共通に品質表示語とされているものを、特定人に独占させることは、商品の円滑な流通をそこなうもので、特段の事由がないかぎり、競争業者の商品取引を不当に排斥するものといわざるをえない。
紅茶関連業界の不特定多数人が品質表示語として普通に認識していた場合、ことさらに、一般需要家の認識状況を考える必要はない。のみならず、甲第四、第八及び第一〇号証から、本件登録出願の日前のみならず、登録後も、品質を表示する語として一般に使用認識されていたことが明らかである。
理 由一 原告の請求の原因及び主張の一、二の事実は、本件審決の謄本が原告に送達されたこと及びその送達の日付の点を除いて当事者間に争いがない。
二 そこで本件審決にこれを取消すべき違法の点があるかどうかについて考える。
1 原告は、審決は「Earl Grey」が外国において不特定多数の者により紅茶のブレンド名を示すものとして普通に使用されているから、本件商標の登録は無効であると判示しているようにみえるが、もしそうであるとすれば、商標権の成立・移転・効力などはすべてその権利を付与する国の法律により、かつ、その領域内に限られるという属地主義の原則に反し違法である旨の主張をする。
しかしながら、審決(成立について争いのない甲第一号証)は、外国の紅茶メーカーの多数の者が「Earl Grey」を紅茶のブレンド名として使用しており、かつ、そのことがわが国の紅茶関連業界において本件商標登録出願の日前から広く認識されていたことを認定したものであることが明らかであるから、原告の主張はその前提において誤つており、理由がない。
2 原告は、また、商標法第3条第1項第3号における商品の品質を表示する標章とは、わが国において不特定多数の者によつて使用され、その使用によりわが国で品質を表示する標章として認識されたものを指し、単に外国において品質を表示するものとして不特定多数の者により使用され、そのことがわが国において認識されている場合は、これに該当しないと解すべきである旨主張し、大審院大正三年五月一二日の判決を引用し、さらに、現に「ネクター」のように、外国では一般名称のものでも、わが国においては商標登録がなされていると主張する。
しかしながら、右商標法の規定により商標不登録事由の一つとされる商品の品質を表示する標章とは、わが国で品質を表示する標章として認識されたものであれば足り、その標章がわが国において現に使用されていることを必要としないと解すべきである。原告の挙示する大審院の判決は、本件と事案を異にするものであるから、本件には適切でない。また、仮に「ネクター」が外国では一般名称であり、それがわが国において商標登録されているとしても、そのことと本件商標の登録が無効であるかどうかとは関係のないことである。原告の主張は理由がない。
3 原告は、さらに、商標法第3条第1項第3号における商品の品質を表示する標章とは、その標章が外国において多数のメーカーにより使用されており、そのことがわが国において広く認識されている場合を含むと解しても、審決は「Earl Grey」が商品の品質を表示するものであるか否かを判断するにあたり、わが国の紅茶関連業界の認識を考慮するだけで、最終消費者の認識を考慮しておらず、この点について商標法の右規定の解釈を誤つた違法があるとし、商標法は事業者間の利害を調整するだけでなく、需要者の利益を保護することをも目的としており(同法第1条)、消費者の認識を無視することは許されない旨主張する。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号が、商品の産地、販売地、品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標を登録することができないとしたのは、そのような商標は一般に自他商品識別の機能をもたないし、また、仮に自他商品識別の機能を有することがあるとしても、そのような品質等の表示は商品取引の過程において必要なものであり、取引業者は皆その使用を欲するものであるから、特定の人にのみその使用を独占させることは公益に反することによるものと考えられる。そうだとすると、ある商標が商品の品質を示すものであることにつき、当該商品のわが国における取引業者にその認識があるとすれば、一般消費者の認識を問題とすることなく、その商標の使用を特定の者に独占させる結果になるような商標権の設定を許すべきではないと解するを相当とする。本件の場合、「Earl Grey」(アール・グレイ)がジヤスミン又はベルガモツトで着香した原茶を配合した紅茶のブレンド名であることは、当事者間に争いがなく、成立について争いのない甲第四号証、第七号証の一、二、証人【A】の証言により真正に成立したものであることが認められる甲第九号証の一ないし八、第一三号証、第一四号証の一ないし一五、証人【B】、同【A】の各証言を綜合すると、本件商標の登録出願時前において、「アール・グレイ」(Earl Grey)がわが国の紅茶取引業者(輸入業者、卸売業者等)の間で、紅茶の品質を示すものであることが知られていたものであることが認められる。
原告会社代表者【C】本人尋問の結果中右認定に反する部分は、当裁判所これを措信せず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
商標法は、原告指摘のように、需要者の利益を保護することをも目的とする(同法第1条)ものではあるが、その目的は保護に値する「商標を保護することにより」達成されるべきものである(同条)、右のような規定があるからといつて、ある商標を登録すべきか否かの判断に際し、一般消費者の認識を問題にしなければならないということはなく、また、紅茶小売業者、喫茶店業者等までの認識を逐一問題にしなければならないということもないというべきである。
4 以上のとおりであつて、本件商標「EARL GREYS」は、紅茶の品質を表示する標章のみからなる商標であるということができるから、商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号により、本件商標の指定商品中、紅茶、ウーロン茶についてその登録を無効とした審決の判断に誤りはない。
三 よつて、審決が違法であることを理由として、その取消を求める原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用は敗訴の当事者である原告に負担させることとして、主文のとおり判決する。
裁判官 杉本良吉
裁判官 高林克巳
裁判官 舟橋定之
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