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事件 昭和 53年 (ワ) 35号
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裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 1981/04/08
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 被告は、別紙第一目録(三)記載の標章を被告商品である連続版画材料に附し、又はこれを附した右商品を販売してはならない。
二 被告は、前項の標章を附した連続版画材料、包装用紙、販売架台、カタログ、
ポスターを廃棄せよ。
三 被告は、原告に対し、金五〇四万円及びこれに対する昭和五三年二月一七日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
四 訴訟費用は被告の負担とする。
五 この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
申立
一 原告の請求の趣旨1 主文第一ないし第四項と同旨2 主文第三項と同旨の申立につき仮執行宣言二 被告の答弁1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
主張
一 原告の請求原因(主位的請求)1 原告の商標権(一)原告は左記登録商標(以下本件商標という)の商標権者である。
登録番号 第九六九〇九一号出願日 昭和四四年七月二三日公告日 同四六年一〇月一四日登録日 同四七年六月二三日指定商品 第二五類 紙類、文房具類登録商標 別紙第一目録(一)記載のとおり(二)なお、原告は左記連合商標(以下本件連合商標という)も有している。
登録番号 第一〇一七七八二号出願日 昭和四六年三月二五日公告日 同四七年一〇月一二日登録日 同四八年六月一四日指定商品 第二五類 アルバム連合商標 別紙第一目録(二)記載のとおり2 被告の標章使用 被告は昭和五二年一〇月初旬から本件商標の指定商品に該当する連続版画材料(以下版画材料という)又はその包装用紙に別紙第一目録(三)記載の標章(以下イ号標章という)を附し、あるいは、これを附した右商品又はその包装紙にこれを附したものを販売し、かつ、右商品に関する販売架台、カタログ、ポスターにイ号標章を付して展示し又は頒布している。
3 本件商標とイ号標章の類似性 イ号標章は増量を意味する「フエル」と、触れる・画く、触感・筆力を意味する「タツチ」を一連に結合した造語標章であるが、両者に関連性はなく、かつ「フエルタツチ」には特別の観念は認められないから、イ号標章は結合文字標章と解される。そして、そのうち語頭の「フエル」の部分は前記のとおり、増えるという特別の意味を持ち、一般に親しみ深く、特に注意をひきやすい部分であるから、イ号標章の要部というべきである。
しかるところ、原告の本件商標は前記のとおり「フエル」という文字商標そのものであるから、イ号標章の右要部は本件商標と外観称呼観念のすべての点において同一である。
したがつて、イ号標章は全体としては本件商標に類似している。
4 被告の商標権侵害 よつて、被告の前記イ号標章の使用は原告の本件商標権を侵害するものとみなされる(商標法37条)。
5 原告の損害 被告は右イ号標章の使用が本件商標権を侵害することを知り若しくは過失によつてこれを知らなかつたものと推定される(商標法39条、特許法103条)。
したがつて、原告は右侵害行為によつて蒙つた損害を被告に賠償請求しうるところ、被告は昭和五二年一〇月初旬から本件口頭弁論終結時(昭和五六年一月一六日)までの間に本件版画材料三、〇〇〇ケース(一ケースは大・四〇個、小・八〇個の各版画材料入り)を販売した。そして、右一ケースの市販価格は四万八、〇〇〇円(単価、大・八〇〇円、小・二〇〇円)、卸売価格(被告の販売価格)は市販価格の三五パーセントすなわち一万六、八〇〇円、営業利益は卸売価格の一〇パーセントを下らないから、被告が右侵害行為によつて得た利益額は計算上五〇四万円を下らないことが明らかである。したがつて、原告は右同額の損害を蒙つたものと推定される(商標法38条1項)。
6 結論 よつて、原告は被告に対し本件商標権に基づき請求の趣旨一、二項記載のとおりの差止請求と損害賠償金五〇四万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和五三年二月一七日から支払いずみまで民法別定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
(予備的請求)1 原告は書籍製本、文房具・事務用品・手帳の製造販売等を業とする株式会社である。
2 原告はかねてから本件商標及び連合商標を付したアルバム等商品を多量に販売し、ことに昭和四三年以降はテレビ・ラジオ放送、新聞、雑誌等によつてその宣伝・広告につとめ、またカタログ多数を頒布してきた。したがつて、右商標は斯界の取引業者及び需要者の間で原告のものとして広く認識されている。
3 被告は文房具の製造販売を業とする株式会社であるが、前記のとおり、版画材料を販売するにさいしイ号標章を使用している。
4 しかるところ、イ号標章が本件商標に類似していることは前記のとおりであつて、被告がイ号標章を使用すると、原、被告の商品の間に誤認混同を生じさせ、その結果、原告の営業上の利益が害されるおそれがある。
5 被告は、故意若しくは過失によつて右不正競争行為をなしたものであるから、
原告は被告に対し右不正競争行為によつて蒙つた損害を賠償請求しうるところ、右損害額は前記のとおり五〇四万円を下らない。
6 よつて、原告は被告に対し不正競争防止法1条1項1号1条ノ二第一項に基づき前記主位的請求と同旨の請求をする。
二 被告の認否(主位的請求について)1 請求原因1は不知。
2 同2は認める。
3 同3は否認する。
4 同4は争う。
5 同5は否認する。昭和五二年一〇月の本件版画材料の売上高は皆無であり、同年一一月、一二月の売上高等は別表(一)のとおりであり、右期間中の経費の明細は別表(二)のとおりであるから、被告の得た純利益は差引一九〇万八、三五四円にすぎず、右以外に利益はない。
6 同6は争う。
被告は、昭和五三年一〇月以降版画材料を販売するにつきイ号標章を使用していない。
(予備的請求について)1 請求原因1は不知。
2 同2は否認する。
3 同3については、主位的請求の請求原因に対する認否2と同じ。
4 同4は争う。
被告は昭和五二年一一月二日から同年一二月三〇日までの間イ号標章を使用した商品(版画材料)について三二社の新聞、雑誌を通じいわゆるパブリシテイー広告を行つたところ、これに対する右期間中の応募申込数は約三万七、〇〇〇通となり、応募者多数にイ号標章を附した商品を発送したことがある。また、これとは別に、テレビ朝日により同年一一月二二日から同年一二月二二日まで、関西テレビにより同年一一月二一日から同年一二月一五日まで、それぞれテレビコマーシヤルの放映を行つた。したがつて、イ号標章を使用した商品の出所が被告であることは広く知られている。のみならず、被告は右商品には必らず被告の登録商標「サンスター」をも附している。
したがつて、被告の版画材料がイ号標章を使用していることの故に原告の商品と混同誤認されるおそれは存しない。
5 同5については、主位的請求の請求原因に対する認否5と同じ。
6 同6についても、主位的請求の請求原因に対する認否6と同じ。
三 被告の抗弁1 被告は昭和五二年九月二〇日高野篤から同人所有にかかる別紙第二目録記載の商標権を譲り受け、昭和五三年四月二一日右商標権移転登録を経てその所有者となつた(以下被告商標という)。
2 したがつて、被告は被告商標を専用する権利を有するところ、同商標は「フェルト」のような「タツチ」―felt touch―という意味を込めて案出された造語である。一方、イ号標章は右商標「フェルタツチ」の小文字「ェ」を大文字にしただけで他は同一であつて、全体的に観察する限り両者間に相違はない。ことに、我が国においては、「フエ」という語を見た場合、英語式に正確に「フェ」という表音すると同時に「フ・エ」の表音も用いられているのが実情で、「フェ」と「フエ」は極めて自然に同一視されている。
そうすると、被告のイ号標章の使用は被告商標権の権利行使として使用されているものであつて適法である。
3 仮にイ号標章が被告商標と同一ではなく、類似しているにすぎないとしても、
被告は被告商標権の禁止権の及ぶ範囲内においては、結果として、他人の使用を排除して類似範囲にある商標を自由に使用できるから、このような場合に当る被告のイ号標章の使用もまた適法な権利行使であると解すべきである。
四 原告の認否1 抗弁1は認める。
2 同2は争う。
(一) 被告商標は別紙第二目録を一見して明らかなとおり、「ェ」を小文字として「フェルタツチ」と構成した標章であるのに対し、イ号標章は、「エ」を大文字として「フエルタツチ」と構成したものであるから、両者はまず外観において異る。
(二) 次に、被告商標は四音節からなり、「fe―l―t●―t●」と発音されるのに対し、イ号標章は五音節からなり、「fu―e―ru―t●―t●」と発音されるものであつて、両者は称呼の点でも異る。
(三) 更に、被告商標は「felt touch」から生じる「フエルト状のタツチ」又は「羊毛、毛房状のタツチ」という観念を想起させるのに対し、イ号標章は「ふえる(増える)」という観念を想起させるから、両者は観念においても異る。
(四) したがつて、イ号標章は被告商標と同一性を有しないことはもちろん、類似性もないから、被告の抗弁は理由がない。
3 同3は争う。
仮に、両者に類似性があるとしても、商標法25条所定の登録商標専用権は登録商標と同一の標章にのみ及ぶのであつて、類似標章にまで及ばないから、被告のイ号標章の使用は被告商標権の行使とはいえない。
証拠(省略)
理 由(主位的請求について)
差止請求について
一 原告の商標権 成立に争いのない甲第一、第二号証によれば、請求原因1の事実が認められる。
二 被告のイ号標章使用とイ号標章にかかる被告商品(版画材料)の指定商品該当性 請求原因2の事実は当事者間に争いがない。
三 本件商標とイ号標章の類否1 前記争いのない事実によれば、イ号標章は片仮名フ・エ・ル・タ・ツ・チの各文字を同一書体、同一の大きさ(但し、「ツ」は小文字)及び同一の間隔で一連かつ一体に横書きした文字標章であることが認められるところ、その称呼は片仮名の性質上その表音どおりに生じ、また右標章を構成する文字の前半部分に当る「フエル」は、一般に「ふえる(増える)」の意を想起させる語であり、後半部分に当る「タツチ」は、我が国の英語の普及度からして「触れる」「触感」等の意を想起させる語であると認めるのが相当である。
イ号標章は原告も主張するとおり右二つの部分からなる結合文字標章と解される。
2 一方、前認定事実によれば、本件商標は片仮名のフ・エ・ルの各文字を同一書体、同一の大きさ、同一の間隔で一連かつ一体に横書きした文字標章であることが認められるところ、右「フエル」は、その称呼は片仮名の性質上表音どおり生じ、
また観念上は「ふえる(増える)」の意を想起すると認められることも前示のとおりである。
3 そうすると、イ号標章中の「フエル」の部分と本件商標の全体はともに「ふえる」という称呼を生じ、かつ「増量する、増加する」という観念を生じるから、称呼観念において同一である。また、両者が外観においても同一であることは多言を要しないところである。そして、イ号標章中「フエル」という部分は三字、三字からなる結合商標のうちの冒頭の三字であつて、後半部の「タツチ」との間には、
意味内容における密接な若しくは自然な牽連性もない。
このようにみてくると、イ号標章は、その「フエル」の部分が本件商標と外観
称呼観念において同一であることにより、全体としてもこれと類似すると解すべきである(なお、右の説示については、特許庁が別紙第一目録(二)の標章を同(一)のそれ、すなわち、本件商標の連合商標として許容している点も参照。商標法7条)。
四 被告の抗弁について1 抗弁1の事実は当事者間に争いがない。
そして、右争いのない事実によれば、被告が本件で援用する被告商標は片仮名フ・エ・ル・タ・ツ・チの各文字を同一書体、同一の大きさ(但し、「エ」と「ツ」は小文字)、同一の間隔で一連かつ一体に横書きした文字標章であることが認められる。
被告は、イ号標章「フエルタツチ」の使用は右被告商標「フエルタツチ」専用権の行使にほかならないと抗弁しているのである。
そこで、按ずるに、被告の右主張は被告商標とイ号標章とが同一であることを前提とするものと解さなければならないところ(商標法25条。なお、いわゆる禁止権を定めた同法36条37条と対比参照)、いま右両者を対比するに、前者は二番目の文字を構成する「エ」の字が小文字であつて、「fe―l―t●―t●」と四音節で発音されるのに対し、後者は、二番目の文字を構成する「エ」の文字が大文字であつて、「fu―e―l―t●―t●」と五音節で発音され外観称呼を異にし、また観念上も後者の「フエル」が「増える」の意を想起させるのに前者の「フエル」はそのようなことがない。
このようにみてくると、両者を同一と解することに対してはなおちゆうちよを覚える。したがつて、被告の抗弁はすでにこの点においても失当である。
この点に関し、右の説示と異なり両者は同一であるとの見解が記載されている乙第一四号証(鑑定書)は、「二つの商標の同一性の有無は単なる物理的同一にこだわらず取引社会の通念に照らして判断すべきである。」と述べている点等少からず首肯すべき部分を含んでいると考える。しかし、ことイ号標章と被告商標の同一性に関する各論的論証については前記の説示に照らしにわかに賛同することができない。いわゆるフエルト(羊毛その他を圧縮密着させたもの)をフエルトとも表記する場合があるとしても、それは我が国の仮名の表記法上一般的なこととは解されない(あらかわそおべえ著の外来語辞典によつてもそのような表記法は記載されていない。)。現にイ号標章でも「タツチ」の「ツ」は小文字にして促音であることを明示しており、「フエルト」の「エ」を小文字にしていることと呼応させている。
また、右鑑定書の見解はイ号標章「フエルタツチ」が観念上一般世人に直ちに「フエルトのようなタツチ」ということを想起させることに関連づけたうえでの見解であり、右見解が直ちには首肯し難い点もあつて(「フエルタツチ」はむしろ造語に近いと考えられる。)、所論は結局採用し難い。
2 また、次に被告は、仮に右主張が認められないとしても、イ号標章は被告商標の類似範囲内にあることの故をもつて被告のイ号標章使用が適法である旨も主張している。そして、右両者の類似性自体についてはこれを肯定すべきである。
しかし、一般に登録商標の専用権は当該登録商標と同一性のある商標についてのみ認められるのであつて、
類似商標についてはこれを他人が使用する場合にその使用を禁止する権利を有する結果、普通は、事実上自から使用しうることになるだけである。ただ、本件では、
イ号標章は原告商標にも類似すること上来説示のとおりである関係上、原告商標権の禁止効を及ぼされ、右のような事実上の使用は許されないわけである(結局、
原、被告の商標権はイ号標章をともに類似範囲に含むと解される。したがつて、イ号標章の使用に対しては原、被告双方とも互いに禁止効を及ぼしうることとなり、
この限りで三者の関係はいわゆる蹴り合いの関係になると考えられる。東京地裁昭和三〇年四月一五日判決下民集六巻四号七一八頁参照)。
したがつて、被告の前記仮定主張もまた失当である。
五 被告の商標権の侵害 以上の説示によれば、被告の前記イ号標章の使用は、本件商標にかかる指定商品につき、本件商標に類似する商標を使用することになるから、原告の本件商標権を侵害するものとみなされる(商標法37条)。
差止請求の必要性1 成立に争いない乙第九号証、被告主張のとおりのものであることに争いない検乙第三ないし第五号証及び証人【A】の証言によれば、被告は昭和五三年秋以降前記版画材料の販売にさいしイ号標章の使用を中止することとし、代りに被告商標と同一の標章すなわち「フエルタツチ」の「エ」を小文字とした標章を使用していることが一応認められるが、前記被告の主張に照らすと、被告はイ号標章と被告商標との間に同一性があると認識理解していることは明らかであるから、被告が将来再びイ号標章を使用するおそれは絶無であるとは言い難い。現に、成立に争いない甲第一九号証によると、被告はその後も業界紙に、それが新聞社の誤植によるものかどうかは別として、結果としては、なおイ号標章を使用しているようにみえる。
七 結論 以上のとおりであるから、原告の本件差止請求は理由がある(なお、原告のイ号標章使用差止請求は商標法2条3項36条に照らし同法の許容するすべての態様の使用の差止を求めているわけではないから、その請求の限度でのみこれを認容すべきことはいうまでもない。)。
損害賠償請求について
一 被告の前記侵害行為が不法行為法上の違法行為であることはいうまでもない。
又、右違法行為は過失によつてなされたものと推定される(商標法39条、特許法103条)。なお、損害賠償請求についても被告の抗弁が失当であることは前示のとおりである(のみならず、右被告の抗弁によると被告が被告商標権を取得したのは昭和五三年四月二一日というのであるから、右以前の期間にかかる原告の損害賠償請求については主張自体失当である。)。
したがつて、被告は右違法行為により原告が蒙つた損害を賠償する義務がある。
二 そこで、原告の蒙つた損害額を確定するため、まず被告の右違法行為によつて得た利益額について検討する。
その様式、体裁により真正に成立したと認める乙第二一、第二二号証の各一、二によれば、別表(一)の事実(但し、「単価」の欄を除く)すなわち、被告が昭和五二年一一月、同年一二月の間にイ号標章を使用して版画材料を販売して得た荒利益は一、七一二万五、七三一円であること及び同年一〇月は発売早々で未だ計上すべき利益はなかつたことが認められる。
原告は昭和五三年以降蒙つた損害についても請求しているが、その具体的な計数上の主張を欠くのみならず、前記と同様にして真正に成立したと認める乙第二三ないし第二六号証の各一、二及び前掲証人の証言によると、少くとも昭和五三年一月ないし四月の期間は右商品が主として年末用商品であるため返品が多く計上すべき利益がなかつたことも認められ、他に前記認定以外の利益を認めうべき証拠はない。
しかるところ、被告は利益額算定にさいし前記荒利益額から別表(二)記載の経費控除の主張をしているので按ずるに(商標法38条1項所定の「利益」が如何なるものであるかは暫らくおく。)、別表(二)の経費がすべて前記二カ月間の荒利益を得るに必要な経費であるとする主張自体、被告はその後使用標章をイ号標章から被告商標に改めたうえ同じ版画材料の販売を継続している点に照らすと、その対応関係の点でにわかに首肯し難いのみならず、別表(二)のE、F欄の出資についてはこれを裏付けるに足る確証がない。これに対し、A、B、C、D欄の各出資についてはそれぞれ順次その様式体裁により真正に成立したと認める乙第二七号証の一、二、第三〇号証、第二八号証の一、二、第二九号証によつてこれを裏付けることが可能である。したがつて、前示の疑念を暫らくおいても、被告のために控除を認めうる経費額は最大限右A、B、C、D欄の経費合計一、〇六五万円に限られ、
いまこれを全額前記荒利益額から控除したとしても、純利益は計算上六四七万五七三一円となる。そして、この純利益額は本訴で原告の主張する利益額五〇四万円を上廻ること明白である。
そうすると、結局、原告の利益額に関する主張分は全額について理由がある。
したがつて、原告はその主張にかかる利益額五〇四万円と同額の損害を受けたものと推定される(商標法38条1項)。
三 してみると、原告の損害金とその附帯金請求は全部理由がある。
(結論) よつて、原告の本訴請求は予備的請求について判断するまでもなく全部正当であるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条、仮執行宣言につき同法196条を適用し、主文のとおり判決する。
裁判官 畑郁夫
裁判官 上野茂
裁判官 若林諒