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関連審決 審判1977-1228
関連ワード 指定商品 /  不使用 /  通常使用権 /  専用使用権 /  国内 /  使用義務 /  連合商標 /  存続期間 /  更新登録 /  継続 /  商号 / 
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事件 昭和 55年 (行ケ) 30号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1981/03/17
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が昭和五四年一二月一七日、同庁昭和五二年審判第一二二八号事件についてした審決を取消す。
訴訟費用は、被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は、原告の負担とする。」との判決を求めた。
原告の請求の原因及び主張
一 特許庁における手続の経緯 原告は、登録第四三二二〇五号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。
本件商標は、「ビイバー」の片仮名文字及び「Beaver」の欧文字を二段に左横書きして成り、(旧)第三六類「被服、手巾、釦紐及び装身用ピンの類」を指定商品として昭和二六年一一月五日に登録出願、同二八年四月三〇日に公告(商標出願公告昭二八ー七一六〇号)、同年九月三〇日に登録、その後、同四九年五月二七日に商標権存続期間更新の登録がなされた。
被告は、原告を被請求人として本件商標の登録取消審判を請求し(昭和五二年審判第一二二八号)、特許庁は右審判請求書の副本を、本件商標登録原簿に原告の住所として記載されている「大阪市<以下略>」に宛てて発送したが、送達できなかつたので、公示送達し、昭和五四年一二月一七日「登録第四三二二〇五号商標の登録を取消す。」旨の審決をした。なお、右審決謄本は昭和五五年一月二四日原告に送達された。
二 審決理由の要点1 本件商標は、前項に記載のとおりのものである。
2 請求人(被告)は審決主文と同旨の審決を求め、その理由として被請求人(原告)は本件商標をその指定する商品について、本件審判請求時において継続して三年以上日本国内において使用している事実を認めることができない。また、本件商標に関しては、専用使用権の設定あるいは通常使用権の許諾の事実を認めることができず、かつまた、本件商標に対して互に連合商標となるべき他の登録商標も存在しない。
従つて、本件商標は商標法第50条第1項の規定により、その登録を取消されるべきものである旨述べている。
3 これに対し、被請求人(原告)は、何ら答弁していない。
4 そこで思うに、被請求人(原告)は、本件審判の請求の登録前三年以内に日本国内において、その請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標の使用をしていることを証明していない。
従つて、本件商標は、商標法第50条の規定により取消を免れない。
三 審決を取消すべき事由(一) 原告は、本件商標登録出願時から現在に至るまで、住所を兵庫県尼崎市<以下略>(ただし途中で住居表示が「尼崎市<以下略>」と変つた。)に有するものであるが、登録出願に当つては、原告が代表取締役をしていた近藤繊維株式会社の事実上本店の機能を営んでいた大阪出張所の所在地である大阪市<以下略>を住所として表示し、登録原簿上にそのように登載された。なお、近藤繊維株式会社は、その後商号を近藤繊維工業株式会社と変更し、本店を大阪市<以下略>に移した。
(二) 被告は、原告を被請求人として、商標法第50条による不使用による商標登録取消の請求をなすに当たり、原告の住所を右登録原簿に記載されている大阪市<以下略>と表示し、審判長は右請求書副本及び答弁書催告状を右住所地に宛てて原告に送達したところ、送達できなかつたので、これを公示送達し、その結果前記一、二記載のような審決がなされたものである。
しかしながら、右公示送達は、公示送達すべき要件なくして行なわれた違法のものであり、従つて本件審決は、原告に答弁の機会を与えないでなされた違法のものであるから取消されるべきである。
(なお、原告が本件審決がなされたことを知つたのは、本件審決謄本が「大阪市<以下略>」宛に発送されたのを郵便配達人が原告の現在の居所であり、原告が、
代表取締役をしている近藤繊維工業株式会社の本店所在地である「大阪市<以下略>」に自発的に転送してくれたからである。) 右公示送達を違法とする理由は、次のとおりである。
(三)(1) 商標法第77条第5項において準用する特許法第191条は、公示送達について規定したものであるが、同条第一項は、「送達を受けるべき者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れないときは、公示送達をすることができる。」と規定する。すなわち、「送達を受けるべき者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れないとき」を公示送達の要件とするものである。「送達を受けるべき者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れないとき」とは、少なくとも住所・居所その他送達をすべき場所につき、格別の困難を伴わない合理的な範囲内の調査を行ない、その合理的な範囲内の調査によつても知ることができなかつた場合を意味する。単に、一度商標登録原簿記載の住所に送達してみて、所在不明を理由として還付されたという事実のみでは、決して「住所、居所その他送達をすべき場所が知れないとき」に当たるものではない。
そもそも原告は、正当なる出願手続に則つて商標登録出願をし、審査手続を経た上で法定の登録料を納付し、商標登録を受けるとともに、さらに正当なる更新登録手続、審査手続を経て更新登録料の納付をし、商標権の保存を行なつて来たものである。
すなわち、商標権の取得のために要求される手続的・実体的要件を充足し、また商標権の保存のために要求される手続的・実体的要件(使用義務を含む)を充足して、商標権の維持に努めて来たのである。商標法自体もかくして成立し、存続している商標権の消長につき重大な結果をもたらす第三者からの登録無効あるいは取消の請求等の攻撃に対しては、権利者自身に対しても十分防御の機会を与えるべく配慮をしており、かつ、その手続も準司法的な審判手続を採用し、当事者対立構造によつて審理する方式を採つているものである。特にいわゆる当事者系の審判においては、審判請求人は自己の欲する何時にても攻撃が可能な立場を有するのに対し、
権利者は全く受身の立場に立たされているものである。攻撃を知つてこそ防御に出ることができるわけである。従つて審判請求書の送達をなし、攻撃に対して防御の機会を与えるためには、可能な限り権利者が現実に了知し得るような送達方式を採ることが衡平の原則から要請される。また準司法手続の性格を有し、当事者対立構造を採用する審判手続の理念からいつても、審判請求人の協力を仰ぐなり、可能な範囲の調査をつくすなりした上で、なおかつ送達先の知れないときには、止むを得ざるものとして公示送達の手段を採り得るとしても単に一度送達したところ返還されたという事実のみでは、ただちに公示送達に付すことは許されるべきではない。
(2) 本件商標の登録出願手続は、代理人弁理士【A】によつてなされたものであり、このことは特許庁が発行する商標公報において一般に了知させられるところであり、特許庁においては顕著な事実と言い得る。また本件商標は昭和四九年五月二七日に更新登録がなされたものであるが、この更新登録の出願手続も代理人弁理士【A】外一名によつてなされており、このことも特許庁において顕著な事実である。よつて、本件審判請求書副本の送達に当たり、弁理士【A】に送達先の照会をなせば、直ちに送達先は判明したものである。
さらにまた、本件商標登録取消審判請求の代理人弁理士【B】も、審判請求書副本の送達先を十分了知しており、特許庁において右代理人に対し、その送達先につき照会をするならば、直ちに送達先は判別し得たものである。すなわち、審判請求人は、本件審判の請求に先立ち、本件原告訴訟代理人を介して本件商標の譲渡につき、弁理士【A】に権利者の意思を確認されたい旨の交渉をしている(甲第三ないし第五号証)。
商標登録原簿に記載の住所に審判請求書を送達して、所在不明で還付された場合、少なくとも、商標登録の取得手続及び更新登録の取得手続に関与した代理人及び審判請求手続の代理人に対し、送達先の照会を行なう程度のことは何ら格別の困難なくして行ない得ることであり、きわめて合理的な範囲内の調査というべきである。かかる調査も行なわずになされた公示送達は、特許法第191条1項の規定する公示送達の要件を欠くものであり、特許法第134条の規定する答弁書を提出する機会を与えたことにはならないといわざるを得ない。
(四) 被告の主張に対する反論 被告は、商標法は書面主義を採つており、また商標法施行規則は、住所又は居所の変更があつた場合には必らずその旨を届け出なければならないと規定しているから特許庁が原告の住所変更がないものとして、登録原簿記載の住所地宛に発送し、
送達不能として公示送達した手続は適法であるとの趣旨を主張する。
しかし、公示送達の要件を充足するか否かは、単に住所あるいは居所の変更手続をとらなかつたことのみによつて決せられるべき問題ではない。送達先を知り得たか否かは、正に、少なくとも格別の困難を要せずして調べ得る合理的な範囲内の調査を行なつても、なおかつ知ることができなかつたか否かによつて決せられるべきである。
特許法施行規則第9条第1項は、なるほど手続をした者がその氏名もしくは名称、住所もしくは居所または印鑑を変更したときは、遅滞なく、その旨を届け出なければならない旨を規定している。その意味するところは、同一手続内において、
手続をした者が住所等を変更した場合は、手続主体の表示をできるだけ実体と合致させようとする趣旨から出た訓示規定である。公示送達の規定は、特許法施行規則第9条第1項の規定違背に対する制裁規定ではないのである。公示送達の規定においては、送達先として、住所居所のほか、その他送達をすべき場所を予定している。しかるに手続をなすに当つては住所あるいは居所のいずれか一方を表示するのであり、仮に、手続上において表示されている住所等以外の送達先は、すべて「知れないとき」に該当すると解釈するならば、法規定自体の自己矛盾に相当する。すなわち、公示送達の規定が、手続上において表示されている送達先以外の送達先を予定しており、しかもその送達先のすべてが知れない場合を要件にしているということは、単に手続上における表示に現われなかつたとしてもそのことの故に「知れないとき」には該当しないことを明示している。つまり、「知れないとき」とは、
「知ろうとして、なおかつ知り得なかつたとき」を意味するもので、当然に調査の必要性を包含するものである。
よつて、過去の手続において表示され、そのまま商標登録原簿に記載されている住所地に送達し、返還されたからといつて、直ちに公示送達の要件を充足するものではなく、少なくとも格別困難を要しない合理的な範囲内において、住所、居所その他送達をすべき場所につき調査をし、なおかつ知れなかつた場合にのみ公示送達なる特別の送達手段が許されるべきである。
被告の答弁及び主張
一 原告の請求の原因及び主張の一、二並びに三、(三)、(2)のうち、本件商標登録取消審判請求の代理人弁理士【B】と弁理士【A】の間で本件商標の譲受交渉がなされた事実は認める。同三、(三)、(2)のその余の事実は、否認する。
同(三)の(二)のかつこ内の事実は、否認する。原告のその余の主張は、争う。
二 そもそも公示送達は、当事者の提出した資料のみによつて、公示送達に付すべきかどうかを判断するものであつて原告主張のように特許庁が職権で本件商標登録の出願手続をした代理人に対して問合せてまでして調査する必要は全くないものと言わなければならず、かかる調査をしなかつたことによつて直ちに手続上の違法があつたという主張は誤りである(特許法における書面主義の原則。)三 本件商標登録取消審判請求手続の代理人をした弁理士【B】が、本件商標の譲受交渉の間に原告【C】の個人の住所まで知ることができなかつたことは、同弁理士【B】が審判請求書に登録上の旧住所を表示していること自体によつても明らかであり、また本件商標の所有者が近藤繊維工業株式会社ではなく、あくまで個人である【C】であることに思いをいたせば、更に一層この点については明らかである。原告主張のように、権利者である原告【C】が代表取締役となつている近藤繊維工業株式会社の登記簿謄本を調査するまでの必要は全くないものと言わなければならない。
四 そもそも特許法における書面主義は、特許出願以外の手続についても、原則として採られる主義である。殊にこのことは特許法施行規則第1条に明示されており、法令に別段の定めがある場合を除き、すべて書面でしなければならないことになつており、また同規則第1条第3項には「書面には、提出者の氏名または名称、
住所または居所および提出の年月日……」と規定して、提出者の住所または居所を必要的記載事項としている。商標法施行規則第6条第1項は、右の特許法施行規則第1条を準用しており、商標法においても書面主義が採られることになつている。
従つて一旦提出した書面(出願書を含む)に記載した提出者(出願者を含む)の住所または居所の変更があつた場合には、必ずその旨を再び書面によつて届け出なければならず、しかも遅滞なくなすべきことは、特許法施行規則第9条第1項、商標法施行規則第6条第1項に規定されているとおりであつて、特許庁としてはこの書面による変更届出がなされていることを前提として、仮に変更があつたにもかかわらず届出がなされていない場合には原告指摘のように更新登録の出願手続の代理人弁理士に問い合せる等の煩瑣な手続をとつてまで転居先を調査する必要はなく、
関係書類の送達を直ちに公示送達に付することができるのである。もしそうでないとすれば、ぼう大な件数を抱える特許庁に対し徒らに過重な負担を強いることになることは明らかであり、かつ権利とその権利者との関係を常に書面上明確にしておくべき書面主義という制度上の目的は全く失われることになる。
前記の遅滞なく居所または住所の変更届をなすべき趣旨は右のように常に権利とその権利者との関係を明確にして置くために規定されているのであつて、これが明確になつていることが前提にあればこそ特許庁としては転居先不明という一事をもつて直ちに安心して公示送達に付することができるし、手続上も何ら不正、違法はないのである。現に、原告は、更新登録の出願手続を昭和四九年五月二七日に行なつており、この時点において既に住所または居所の変更届も十分なし得たにもかかわらず敢えて行なつていないのである。自らなすべき手続を怠りながら、その補いを逆に特許庁に行なわせるがごときは手続上許されないことは明らかであろう。
五 商標法第77条第5項で準用する特許法第191条1項は、「送達を受けるべき者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れないときは、公示送達をすることができる。」としているが、この「知れないとき」とは、商標登録原簿記載の住所地に送達を試みて、住所不明を理由として還付されたという事実のみで必要かつ十分である。特許庁は行政庁であつて、司法機関である裁判所のように個々具体的に事例を検討して公示送達に付するべきかどうかを判断するわけにはいかず、画一的に処理せざるを得ない。原告主張のように、公示送達の前提として特許庁に困難な調査義務を課することは特許庁に不可能を強い、特許庁の事務を渋滞させることになるだけである。
商標法施行規則第6条第1項で準用する特許法施行規則第9条第1項は、本件のような場合に特許庁の調査義務を省いて特許庁が過重な事務処理上の負担を負わないようにし、さらに特許庁の判断過程における恣意が入らないよう画一的に事務処理が行なわれるようにしたものである。仮に特許庁が登録された住所以外の居所または住所まで調査しなければ公示送達をなし得ないとするなら、被送達者は商標法施行規則第6条第1項で準用する特許法施行規則第9条第1項の義務を怠つていても何らの不利益を受けないことになつてしまうのに対し、右規則に従つて真面目に変更届をしている者は無駄な手続をしただけになつて、右規則の存在意義を失わせることとなるであろう。
六 裁判所における公示送達手続と特許庁における公示送達手続とではその存在意義を異にする。裁判所の公示送達の手続においては、被送達者は裁判所に対し、自己の住所を何ら届けていないのであるから、被送達者が義務を怠るということはないので、何ら義務を怠つていない被送達者の権利を特に保護するため送達場所が知れないかどうかについては相当慎重に判断しなければならないのである。これに対し、特許庁における公示送達手続においては、住所変更届を懈怠した被送達者は、
義務を怠り自ら現実の居所に送達を受ける権利を放棄していると考えられるのであつて、公示送達を行なうかどうかは登録上の住所に送達してみて、住所不明を理由として差戻されたという事実のみで十分である。
理 由 原告が本件商標の商標権者であること、被告が原告を被請求人として、
商標法第50条に基づく本件商標登録取消の審判を請求したこと、特許庁は右審判請求書の副本を、本件商標登録原簿に原告の住所として記載されている「大阪市<以下略>」に宛てて発送したが、送達できなかつたので、公示送達し、原告が何ら答弁せず、従つて原告は審判請求の登録前三年以内に日本国内において、その請求に係る商品のいずれかについて本件商標の使用をしていることを証明していないとして、昭和五四年一二月一七日、本件商標の登録を取消す旨の審決をしたことは、
当事者間に争いがない。
そこで、本件審決に違法の点があるかどうかについて考える。
商標第56条で準用する特許法第134条第1項は、「審判長は審判請求書の副本を被請求人に送達し、相当の期間を指定して、答弁書を提出する機会を与えなければならない。」と規定し、また、同法第77条第5項で準用する特許法第191条第1項は、「送達を受けるべき者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れないときは、公示送達をすることができる。」と規定する。そして、この公示送達をすることができる要件である、受送達者の「住所、居所その他送達をすべき場所が知れないとき」とは、通常の調査方法を講じて探索したが送達をすべき場所が判明しない場合をいうものと解すべきところ、本件においては、特許庁は、審判請求書の副本を、本件商標登録原簿に原告の住所として記載されている地に宛てて発送したに止まり、それ以上に原告の住所、居住その他送達をすべき場所を探索するごとき方法を講ずることなく、直ちに送達をすべき場所が知れなかつたとして公示送達したものであるから、右公示送達はその要件を欠き、適法に行なわれたものということはできない。
けだし、一旦権利として成立した商標権が無効とされ、あるいは取消されることは商標権者にとつては極めて重大なことであるから、この権利を保護するため、無効あるいは取消審判の請求があつた場合には、その請求に対して充分に防御する機会が与えられなければならず、本件のごとき登録取消審判請求の場合にあつては、
審判請求書副本及び答弁書催告状は、商標登録原簿への原告の住所地としての記載にかかわらず、右住所への送達が不能であつた場合には、なお、通常の調査方法(たとえば、最小限原告の住民票を調べる等の)を用いて送達をすべき場所を探索し、それでも判明しない場合にはじめて公示送達することができるものと解すべきである。
被告は、商標法においても書面主義が採られ(商標法施行規則第6条第1項、特許法施行規則第1条)、法令に別段の定めがある場合を除き、出願以外の手続においても、すべて書面でしなければならないことになつており、その書面には提出者の住所または居所を記載しなければならず(特許法施行規則第1条第3項)、住所、居所の変更があつた場合にはその旨を遅滞なく届け出なければならない(商標法施行規則第6条第1項、特許法施行規則第9条第1項)ことになつているので、
特許庁としては、届け出られた住所に書類を送達すればよく、その場所で送達することができなかつた場合には、直ちに公示送達することができると解するのが相当であるから、本件公示送達には何ら違法の点はない旨主張する。
しかしながら、被告の挙示する特許法施行規則第1条第1項は、特許出願、請求その他特許に関する手続は、法令に別段の定めがある場合を除き、口頭ではなく、
書面でしなければならないことを定めたにすぎず、また同条第三項、第9条第1項は、その書面には提出者の住所または居所を記載しなければならず、その住所もしくは居所に変更があつた場合には遅滞なくその旨を届け出なければならないことを規定しているに止まり、この規定があることにより、特許庁のなすべき送達はすべて届出のあつた住所、居所にすれば足り、その場所で送達できなかつた場合には他に特段の調査をすることなく公示送達することができるものとすることはできない。
なお、被告は、右のような場合には、直ちに公示送達することができるようにしないと、ぼう大な件数を抱える特許庁に対し徒らに過重の負担を強いることになり、かつ権利とその権利者との関係を常に書面上明確にしておくべき書面主義という制度の目的は全く失われることになる旨主張する。
なるほど前記公示送達に関する規定は、送達を受くべき者の範囲を、民事訴訟におけるように「当事者」に限定せず、「送達を受くべき者」としているため、査定手続上のすべての書類について前示のような要件を満たす場合でなければ公示送達をすることができないとするときは特許庁に過重の負担を強いることになるというべきであろうが、商標法は、特許法の送達に関する規定を準用して送達すべき書類の範囲を限定するとともに、特に査定に関する送達の方法については郵便に付して送達できる場合を拡充しているのであるから、あながち、商標法の送達に関する現行の規定が実情を無視した不合理なものとはいえない。
以上のとおりであるから、本件審決は、原告に対し適法な手続により答弁書を提出する機会を与えないでなされた違法のものであるといわなければならない。よつて、その取消を求める原告の請求を認容し、訴訟費用は、敗訴の当事者である被告の負担とすることとして、主文のとおり判決する。
裁判官 杉本良吉
裁判官 高林克巳
裁判官 舟橋定之
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