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関連審決 審判1971-5573
関連ワード 指定商品 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  類似性(類否判断) /  称呼(称呼類似) /  補正 /  手続の補正 /  遡及効 /  無効審判 /  外国 /  継続 /  非類似 / 
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事件 昭和 53年 (行ケ) 201号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1981/02/24
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
原告訴訟代理人は、「特許庁が、昭和五三年九月二八日、同庁昭和四六年審判第五五七三号事件についてした審決を取消す。訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決を求め、被告指定代理人は主文と同旨の判決を求めた。
原告の請求の原因及び主張
一 特許庁における手続の経緯 原告は、昭和四四年一一月七日特許庁に対し、別紙目録記載の商標(以下「本件商標」という。)について、商品区分第二六類「印刷物、書画、彫刻、写真、これらの附属品」を指定商品として登録出願(昭和四四年商標登録願第九七八七六号)し、昭和四六年三月三日、その指定商品を第二六類「印刷物(ただし教育用印刷物及び学習用印刷物を除く)、書画、彫刻、写真、これらの附属品」とする旨の手続の補正をしたところ、昭和四六年五月一〇日拒絶査定を受けた。そこで原告は、昭和四六年七月一〇日審判を請求し、昭和四六年審判第五五七三号事件として審理されたが、特許庁は昭和五三年九月二八日「本件審判の請求は成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年一〇月二五日原告に送達された。
二 審決理由の要点 本件商標は前項記載のとおりであるが、指定商品については、更に当審において、第二六類「商業雑誌、宣伝広告用印刷物、書画、彫刻、写真、これらの附属品」と補正された。
これに対し、登録第五五五六五七号商標(以下「引用商標」という。)は、「THE」「UNION」「READERS」の欧文字(「UNION」の文字は、他の文字に比較して大きく書してなる)を、三段に書して成り、旧第六六類「英語読本」を指定商品として、昭和三一年一〇月一二日登録出願、同三五年九月一六日登録がなされたものである。
よつて按ずるに、本件商標は別紙に表示したとおり、「THE」の文字を小さく「UNION」の文字を大きく横書してなるものであるから、「ザユニオン」又は「ユニオン」の称呼を生ずるものと認められる。
他方、引用商標はその構成前記のとおりであるが、これを構成する文字中「READERS」の文字は、読本、リーダーの意味を有する英語として一般に良く知られているばかりでなく、出版物を取扱う業界では、例えば「〇〇〇READERS」のごとく、該文字を読本、リーダーであることを表示するものとして普通に使用しているのが実情である。そうとすれば、引用商標における自他商品識別の標識として顕著な部分は、「THE UNION」の文字にあると判断するのが相当である。従つて、引用商標は、「ザユニオンリーダーズ」と一連に称呼される場合があるとしても、「THE UNION」の文字に相応して「ザユニオン」又は「ユニオン」の称呼をも生ずるものといわねばならない。
してみれば、本件商標と引用商標とは「ザユニオン」又は「ユニオン」の称呼を共通にする類似の商標といわざるを得ない。
次に、両者の指定商品の類否についてみるに、本件指定商品中の商業雑誌と引用商標の指定商品英語読本はいずれも製産者(印刷・出版)及び販売店舗等を同じくする場合のある類似の商品と認定し得るものである。
なお請求人(原告)は登録例を挙げ両商標は非類似のものであると述べているが、該登録例は本件とは事案を異にするものであり、また、本件商標「THE UNION」は同社が宣伝広告用印刷物の標題として盛大に使用しており、常にフルネームすなわち、「ザユニオン」と称呼され、「ユニオン」と略称されないとして甲第一号証ないし同第五四号証を提出しているが、本件商標については上記認定のとおりの理由があるから同人の主張は採用しない。
三 審決を取消すべき事由(一) 原告は、本件審決が原告に送達された後である昭和五三年一二月二八日、
本件商標の指定商品のうち「通信信用販売用カタログ雑誌以外の商業雑誌、宣伝広告用印刷物、書画、彫刻、写真、これらの附属品」について放棄をするため、このことを内容とする指定商品一部放棄書を被告に提出して、右商品について商標登録出願の一部放棄をした。
右の結果、本件商標の指定商品は「第二六類、通信信用販売用カタログ雑誌」となつた。
そこで右、本件指定商品であるところの「通信信用販売用カタログ雑誌」と引用商標の指定商品であるところの「英語読本(旧第六六類)」とを比較すると、
「英語読本」は、
@ 主として学校で用いられる教科書、又はこれに準ずる教材としての英語読み物としての性質をもち、
A 教科書出版会社又は一般の出版会社によつて発行され、
B 取次店を介して小売店に卸され、そこで需要者の手に入るという、通常の出版物と同じ流通経路をたどり、
C 主として、生徒、学生を中心とする英語の学習、研究中にある者を購読層とする。
これに対して「通信信用販売用カタログ雑誌」は@ 株式会社ユニオンクレジツト、株式会社J・C・B、ダイヤモンドクレジツト株式会社、株式会社日本ダイナースクラブ等いわゆるクレジツト会社が会員向けに編纂した、通信販売用商品の紹介、百貨店情報、その他雑誌記事とから成る準機関誌的な性質をもつ商業用の雑誌であり、
A 当該クレジツト会社又はこの雑誌の編集・発行を専業とするその子会社によつて発行され、
B 取次店、小売店等を介することなく発行者から直接需要者に届けられ、
C クレジツト会社会員の準機関誌という性格からして、購読層は、銀行預金の額、職業等一定の会員資格のある者に限られるところ、生徒、学生は右のような制約からして普通は購読者たり得ない。
以上のことから明らかなように「英語読本」と「通信信用販売用カタログ雑誌」とはおよそ出版物であるという点で共通するだけであつて、出版物としての性質、
発行者、流通経路、購読者層を全く異にするものであるから、たとえ両出版物に類似の商標を附したとしても、需要者としてはそのこと故に一方の出版物の発行者をして他方の出版物の発行者であると誤認するがごとき事態は絶対に生じ得ないものといわなければならない。言替えれば、「英語読本」と「通信信用販売用カタログ雑誌」との間では、単にそこに附された商標が類似するというだけではその出所について誤認混同が生ずる虞れはなく、従つて、右両出版物は商品として非類似である。
従つて、前記、商標登録出願の一部放棄の結果本件商標の指定商品は引用商標の指定商品とは商品において非類似となつたのであるから、両指定商品は類似すると判断した審決には事実誤認の違法があるので取消されるべきである。
(二) 被告は、審判は審決をもつて終了するから、その後の発生事実をもつて審決の違法事由とすることはできないと主張するが、右主張は誤つている。
商標登録出願が放棄されたときは、先後願の関係においてはその商標登録出願は初めからなかつたものとみなされる(商標法第8条第3項)。右の理は出願の全部の放棄の場合と一部(指定商品の一部)の放棄の場合とで適用を異にするいわれはない。商標登録出願は本来指定商品毎に成立しているものであるし、先後願の問題が指定商品中一部の物についてだけ生ずることもあるからである。従つて、本件の指定商品の一部放棄によつてこれらの商品については出願は最初からなかつたものとみなされるものであり、右放棄にはいわゆる遡及効がある。よつて、本件商標の指定商品は審決時において既に「第二六類、通信信用販売用カタログ雑誌」とみなされるべきである。
被告は商標法第8条第3項における放棄について、これは先後願関係においてのみ適用される例外規定であるから、この条文があること自体、放棄には一般的には遡及効がないことの証左である旨の主張をする。
しかしながら各条項には放棄等と並んで取下の場合も規定されており、しかも取下に遡及効があることは自明の理であるから、この場合は右条項を例外規定であるとみることはできないはずである。そうであれば商標法第8条第3項が例外規定であるか否かは決め難いことであつて、従つてまたこのことを根拠に指定商品の一部放棄には遡及効が無いと断ずることはできない。被告の主張には理由がないものというべきである。
指定商品の一部放棄に遡及効があるか否かはむしろ商標登録制度の本質に絡めつつ論議されるべきである。
特許、実用新案、意匠の出願の場合は登録を請求する権利はその独創的な発明考案等について保護を受けるという実体的な私法上の権利(いわゆる発明権等)に基づいている。
これに対し商標出願の場合、登録を請求する権利は出願をしたことによりはじめて発生する公法上の権利であると考えられているから、いわゆる発明権等に対応するものとしては当該商標を採択してこれを出願したという地位ないし事実が考えられるにすぎない。出願の放棄という場合前者においては、その実体的私法上の権利を将来に向つて放棄し、それに伴つて出願もまた将来に向つて消滅するものであるのに対し、後者においては、出願を放棄するということはとりもなおさず出願人たる地位を放棄することにほかならず、この場合、こうした地位を将来に向つてのみ消滅させることがそもそも論理的に可能であるのか疑わしいけれども、仮にそれができるとしてもその場合に残るところの「出願をしたという事実」を保護する必要性は商標出願にあつては何らないのである。すなわち、特許等の出願において出願を放棄した場合、同一発明について再度出願があれば放棄された先願でこれを拒絶する効果をもたせることに意味があるのに対し、単なる標章の採択にすぎない商標出願においては同一商標について再度出願があつた場合に、放棄された先願によつてこれを拒絶することには何の意味もないのみならずむしろ制度趣旨に反することになる。
このことから、商標出願にあつては、仮に出願の放棄ということがあつたとしても、これを遡及効があるものとして取扱わざるを得ないこと明らかである。言換えれば、商標出願においては出願の取下のほかに出願の放棄という制度を認める実益がないものと言わなければならない。
また、事実、実務においても出願を放棄するということは行なわれていない。
以上の論理は指定商品の一部放棄の場合についてもそのままあてはまる。この場合も放棄された指定商品について「出願したという事実」だけを残しておいても無意味だからである。
それにもかかわらず、指定商品の一部放棄という名目の実務が行なわれているのは、出願の取下が出願毎に行なわれるものであるところから、さしあたり、指定商品の一部について出願を取下げるという概念がないことに因ると思われる。
このように、補正によつて指定商品の一部を削除するのも、また指定商品を一部取下げるのも、その実質は指定商品の一部についての出願を出願当初に遡つて取下げることにほかならない。少なくともそのように取扱わざるを得ない。
こうしたことは商標登録出願制度の性格から導かれることであつて、商標法第8条第3項はこの当然のことを先後願の関係において確認しているにすぎないのである。ちなみに、各条文の存在意義は特許法第39条第5項との関係で、なかんずく、商標出願の場合は放棄についても遡及効のあること―遡及効をもたざるを得ないことを―を確認している点で意義のある規定であると考えられる。
(三) 審決前に、指定商品の一部について出願を放棄する場合は、出願書類の指定商品の記載の一部を削除する補正書を提出するだけで実務上足りている。しかしながら、商標権は指定商品毎に成立し、また従つて出願も指定商品毎に成立しているはずであるから、右の補正も出願の一部放棄たる実質をもつものであることに変りはない。この場合出願の一部放棄書を提出する代りに補正書を出すのは実務の慣行であるにすぎない。ところで、出願人がその出願を放棄するのは審決の前後を問わずいつでも可能なはずである。ところが、審決後の放棄を審決前と同様「補正書」でなすことは商標法第68条の2との関係上できないので、この場合は「指定商品一部放棄書」なる様式でなす訳である。
以上のような実務慣行ではあるが、理論的に見た場合は審決前の出願の一部放棄を「補正書」によつてなすという実務は是正されるべきであり、審決の前後を問わずすべて「一部放棄書」によつてなすのが正しいと言わなければならない。出願の放棄がどの段階でもなし得る行為である以上、これは諸種の制限がある「補正」とは性質を異にする行為のはずだからである。
このように、指定商品の一部放棄は商標法第68条の2にいうところの補正にはあたらないものである。
(四) 審決取消訴訟の手続は一種の行政事件訴訟であるから、法律に特別の定めのない限り民事訴訟の例によるべきである(行政事件訴訟法第7条)。そして、この制度においては第一審の代りに審判制度が置かれている、という事の実質に鑑みれば、審判とその取消訴訟との関係も制度の趣旨に反しない限り民事訴訟の例によるべきである。
右に、制度の趣旨に反しない限りとはすなわち、裁判所が行政権の行使たる特許庁の専権を侵すことがない限り、ということである。そして、特許庁の専権とは本件商標と引用例との類否についての第一回目の判断が特許庁に専属するということを意味する。裁判所としては審判手続において審理判断された事項以外の事項について勝手に判断してはならないのである。
ところが、本件商標の指定商品が一部放棄され、その結果指定商品が減縮されたという事実は、本件商標の指定商品如何という事柄であり既に審判段階で審理の対象とされた事項であるのだから裁判所がこの事項についての特許庁の認定を改め、
商品の非類似を認定したとしても特許庁の専権を侵したことにはならないはずである。
しかしながら、このように審決後の事情を審決取消判断に考慮するとすれば審決は不安定なものとなり、ひいては審判制度自体意味が稀薄になるのではないか、との疑問が提起されるかも知れない。しかし、これは決定的な理由たり得ない。何故なら、いかなる立場に立つても、審決後に生起した事実を審決取消理由として考慮せざるを得ない場合があるからである。
すなわち、審決後、引用例が無効審判により無効になつたり、特許権の無効審決後当該特許発明が訂正審判により訂正された場合にはこれらの事実は当事者から主張されれば審決取消事由に考慮せざるを得ないのである。
このように審決取消訴訟において、類否判断の対象は前述のごとく審決の前後を問わず色々な理由によつて時々刻々変化し得るものであり、また類否判断そのものも社会的な事実評価の問題として時々刻々変化するものである。この点においては、その本質は民事訴訟と変らないのであつて、事実の一回性を基礎におく刑事訴訟の事後審制とは性質を異にする点である。
以上述べたように、審決後発生した事実であるからということだけで、これを審決取消事由から除外すべき理由はないのである。
むしろ、審決取消訴訟の法的な性格から言えば、口頭弁論終結前に発生した事実はすべて主張し得るものと解すべきである。ただ、特許庁の権限との関係から、主張し得る事実は、審判段階で既に審理判断された事項に限られるにすぎない。
以上のように解することは、審決取消制度の合理的な運用という点からみても妥当である。
審判手続は審決がなされても特許法第157条第1項にいう文字どおり終了してしまう訳ではない。審決取消訴訟が提起された以上、審決は確定せず、従つて審判手続自体まだ特許庁に係属しているわけである。ただ、審決を下したことにより、
特許庁としてはたとえその後事情の変更が生じたとしても裁判所によつて前の審決が取消されるまで、当面その新たな事実に基づいて審判手続を進めることができない状態にあるだけである。このように、特許庁とすれば、審決が裁判所によつて取消されさえすれば、新しい時点に立つた事実関係を基礎に審決をやり直す態勢にあるわけだから、裁判所としてもこのような場合は審決後の新たな事実を考慮に入れて審決を取消し、登録の可否の判断を特許庁が再開し得るようにしてやれば充分なはずである。徒らに、審決時の事実に固執してみても、審判・訴訟の経済に反するだけで何ら格別の意義もない。
以上述べた理由によつて、審決後発生した事実といえども審判段階で既に審理を経た事項に関する事実であれば審決取消の事由たり得ることは明らかである。
よつて、本件においても、本件商標の指定商品が一部放棄され、指定商品が減縮した事実にもとづいて、商品の類否が判断されるべきである。
被告の答弁及び主張
一 原告の請求の原因及び主張中一、二の事実及び三の事実中原告が審決送達後、
昭和五三年一二月二八日、本件商標の指定商品から、「通信信用販売用カタログ雑誌以外の商業雑誌、宣伝広告用印刷物、書画、彫刻、写真、これらの附属品」を放棄する指定商品一部放棄書を提出し、同日付で特許庁に受付けられていることは認め、同三における原告の主張は争う。
審決取消訴訟は、審決の審決時における違法の有無について裁判所の判断を求める制度であるところ、原告は、審決送達後の昭和五三年一二月二八日付で指定商品の一部放棄書を特許庁に提出し、その結果、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは商品において非類似になつたものであると主張している。
しかしながら、審判は、審決をもつて終了する(特許法第157条第1項)ものであるから、その後の発生事実、すなわち出願の放棄等の申出があつても、該手続については審理できない状態に立到つたものであり、審決には取消事由はない。
審判係属中指定商品の一部放棄は、放棄後、残存した指定商品を内容とする出願が継続されることとなり、実質上補正の手続と同等の効果を生ずるものといえる。
出願等の手続は、その当初から完全な手続を期待することは実際上困難であるから、商標法は出願の手続について、その後の補正を認めている。しかしながら、それは無制限に認めるものではない。
すなわち、商標法は、「事件が、審査、審判又は再審に係属している場合に限り」という一定の制限の下に、同法第68条の2(出願公告決定後にあつては、同法第17条で準用する特許法第64条)により、その補正を認めることとされ、更に、同法第56条で準用する特許法第156条の規定とを考えあわせると審理終結後の補正はできないものと解すべきである。そして、これは、補正のできる時間的限界を定めて、審査、審判の手続の円滑迅速な進行をはかることを目的としているものと思われる。
しかるところ、審理終結後、補正の手続に代えて、指定商品の一部放棄の手続をなすことは、それ自体出願より生じた権利の一部放棄であるから、確定までは出願人の自由に行ない得るものであるとしても、すでに審判は審決をもつて終了しているものであり、その後に、出願の瑕疵を治癒させることを目的とした一部放棄の手続(商標法において、指定商品の一部放棄は、実質上の補正と同等の取扱いを受ける)をなされても、その効力は、その時点から将来に向つて生ずるにすぎず、しかも、審決(審判の終了)後にされた出願より生じた権利の一部放棄は、それによつて審判を再開しなければならないとすれば、無限に審理を遅延させることになる。
従つて、指定商品の一部放棄によつて審判を再開する事由とはならないことは、
商標法第56条によつて準用する特許法第156条、同第157条の規定から明らかであるから、該手続によつて審判をすることはできないものである。
従つて、審決後の放棄をもつて、該審決を違法のものとする理由とはならない。
二 原告は、本件審決後商標登録出願の一部放棄をし、右放棄には遡及効があるから、審決時において本件商標の指定商品は「第二六類、通信信用販売用カタログ雑誌」になつたと主張し、商標法第8条第3項を引用する。
しかしながら、右規定は、登録出願中のものが競願又は先後願関係にある場合、
先願等の商標登録出願の放棄若しくは無効、又は査定若しくは審決の確定があつた場合の同条第一項又は第二項についての効果を規定したもので、この場合は、出願がなかつたことになり、その後の出願が順次くり上るといういわば先後願関係における例外規定とみられるから、この条文があること自体、放棄が放棄した時点から将来に向つて効力を生ずることを意味するものと解せられる。
従つて、この点における原告の主張は本件審決の取消理由にはならない。
三 仮に審決後における商標登録出願の一部放棄が出願当初に遡つて効力を生じ、
本件商標登録出願が「通信信用販売用カタログ雑誌」を指定商品としてなされたことになるとしても、本件商標の指定商品と引用商標との指定商品非類似であるとすることはできない。
原告は、指定商品の一部放棄後の商品の表示を「通信信用販売用カタログ雑誌」と表示しているが、指定商品の表示として必ずしも熟したとはいえないものであるところ、原告の主張からみて、通信販売用商品の紹介、百貨店情報、その他雑記事とから成る商業雑誌と解して、以下両商標の指定商品の類否について比較検討する。
原告は、「英語読本」と「通信信用販売用カタログ雑誌」とは、およそ出版物であるという点で共通するだけであつて、出版物としての性質、発行者、流通経路、
購読者層を全く異にする非類似のものであると主張する。
しかしながら、原告も本件商標にかかる指定商品「通信信用販売用カタログ雑誌」(商業雑誌)は、出版物であることは認めているところであり、一方、引用商標にかかる指定商品「英語読本」(英語読み物)もまた出版物であつて、いずれも印刷物の範疇に属する商品といえるものである。
そうして、原告が述べるごとく、両者は商品の性質(内容)において異る点があるとしても、購読者(需要者)においては、「英語読本」(英語読み物)の購読者が、学生、生徒に限られず、広く一般の人に読まれていることは、外国語の普及が著しい現在の社会実情に照らして否定しえないところである。
そうしてみると、該カタログ雑誌(商業雑誌)の購読者と英語読本(英語読み物)の購読者層が全く別異のものとはいいえず、むしろ両者の購読者が交錯する場合も決して少なくないといわなければならない。
そうとすれば、両者の商品が、いずれも出版物であつて一般取引市場で競合する商品であるから、製産者、取引者、需要者を共通にする商品ということができる。
(直接特定の会員にのみ頒布されるものであつて、一般の流通経路にのらないものは、商標法上にいう商品とはいえない。) 従つて、両商品間に多少の差異点があるとしても、これらの商品に同一又は類似の商標を付して使用した場合、商品の出所について混同を生ずるおそれのある範囲内の商品といわなければならないから、両者の商品は、商標法上にいう類似の商品と判断するのが相当である。
以上述べた理由よりして、本件商標と引用商標とは、商標において類似し、又商品においても類似するものといえるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものであり、審決は正当であつて違法の点はない。
理 由一 原告の請求の原因及び主張の一、二については、当事者間に争いがない。
そこで、本件審決に、これを取消すべき違法の点があるかどうかについて考える。
二 本件審決が原告に送達された後である昭和五三年一二月二八日、原告は、本件商標の指定商品から「通信信用販売用カタログ雑誌以外の商業雑誌、宣伝広告用印刷物、書画、彫刻、写真、これらの附属品」を放棄する指定商品一部放棄書を特許庁に提出し、これが同日付で受付けられていることは、当事者間に争いがない。
原告は、商標登録出願が放棄されたときは、その放棄が出願の全部であろうと、
一部であろうと、先後願の関係においては、その商標登録出願は初めからなかつたものとみなされる(商標法第8条第3項)から、本件の指定商品の一部放棄は出願の当初に遡つてその効力を有し、従つて、本件商標の指定商品は、審決時において既に「第二六類、通信信用販売用カタログ雑誌」とみなされるべきである旨主張する。
しかしながら、原告の挙示する商標法第8条第3項の規定は、原告もこれを認めるとおり、商標登録出願の放棄、取下等があつたときは、右出願は、同条第一、二項すなわち先後願の関係の適用については、初めからなかつたものとみなすことを特に規定しているものであつて、出願の放棄等をもつて全ての関係において出願が初めからなかつたものとみなす規定ではない。そもそも、ある行為がなされたことによる法的効果は、特別の規定のない限り、行為により始めて発生するものである(例えば、民事訴訟法第237条第1項は、訴取下の遡及効を規定しているが、訴取下に遡及効があるのは、この定めがあるからであつて、この規定なくして訴取下には論理必然的に遡及効があるものとすることはできない。)。商標登録出願の放棄、取下等があつた場合は、前記商標法第8条第3項の規定により、右放棄、取下等は先後願の関係において商標登録出願が初めからなかつたものとみなされるにすぎないのであつて、商標登録出願の放棄、取下等は、放棄、取下という性質上当然に遡及効をもつとすることはできない。これに反する見解は採ることを得ない。しかして、商標登録出願の放棄、取下等が先後願の関係以外においても一般に遡及効を有する旨の規定は商標法には存しない。
三 審決取消訴訟は、特許庁の審判官で構成する合議体がした「審決」という行政処分に違法の点があることを理由としてその取消を裁判所に求める行政訴訟であつて、審決に違法の点があるかどうかは、審決がなされた時の状態で判断されるべきものである。ただし、審決時においては、該審決は適法であつたにもかかわらず、
その後の事情により、違法となり、これを取消さざるを得ない場合はあり得る。例えば、特許を無効とした審決の取消訴訟の係属中、該特許の訂正審判請求を認容する審決が確定したときは、訂正後における明細書又は図面により特許権の設定の登録がされたものとみなされる、すなわち、訂正審決は遡及効をもつ(特許法第128条)ところ、特許を無効とした審決は、当然、訂正前の明細書又は図面により設定登録された特許権を無効としているものであるから、訂正審判の審決に遡及効が認められれば、無効審判の審決の基礎としたところが失われることになるから、右無効審判の審決はこれを取消さざるを得ないことになる。しかし、右の場合は法が訂正審判の審決に遡及効を認めた結果であつて、このような場合のあり得ることをもつて一般に審決の適法違法の判断の基準時は判決の時であるとすることはできない。しかして商標登録の出願の放棄が、出願時に遡つて効力を有するものでないことは前説明のとおりである。
四 右のとおりであり、原告が審決後指定商品の一部を放棄したとしても、右放棄は出願の当初に遡るものではなく、従つてこれにより審決を違法にするものではない。そうとすれば、本件商標と引用商標とが類似しその指定商品も類似するとした審決の判断に誤りはないから、審決が違法であることを理由としてその取消を求める原告の請求を棄却し、訴訟費用は敗訴の当事者である原告の負担とすることとして主文のとおり判決する。
裁判官 小堀勇
裁判官 高林克巳
裁判官 小笠原昭夫
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