関連ワード | 包装 / 指定商品 / 逸失利益 / 国内 / 継続 / 利益額 / |
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事件 |
昭和
45年
(ワ)
2642号
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 1978/02/17 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨1 被告は、原告に対し、金五〇九万六七三七円及びこれに対する昭和四五年三月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払をせよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 1項につき、仮執行の宣言二 請求の趣旨に対する答弁 主文同旨 |
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請求の原因
一 一手商品供給権侵害による損害賠償請求1 原告は、雑貨品の輸出入を業とする会社であるところ、昭和三七年一一月二五日、西ドイツ国ハンブルグ市<以下略>フエドラ合資会社ルドルフ・バウエル商会(以下「フエドラ社」という。)との間において、マーキング・ペン等の取引に関し、次のとおりの期間の定めのない継続的一手商品供給契約(以下、「本件契約」といい、本件契約に基づく原告のフエドラ社に対する債権を「本件一手商品供給権」という。)を締結した。 (一) フエドラ社は、原告から、本件マーキング・ペン(F22型捺染用インキ及びその改造品)を、一回の船積み分として最低一二個入りのもの一万箱、年間最低一〇万箱を購入する。 (二) フエドラ社は、日本から本件マーキング・ペンを輸入する場合は、原告のみから購入すべく、他から購入してはならない義務を負う。 (三) 製造業者である訴外同和化学株式会社は、その製品である本件マーキング・ペンにつき、原告に対して一手輸出権を与え、原告は、右訴外会社以外の者に対して、本件マーキング・ペン及びその同種の製品の発注をしない。 (四) 原告は、本件契約の有効期間中は、西ドイツほか一三か国につき、フエドラ社以外の者に本件マーキング・ペンを輸出しない。 2 原告は、本件契約に基づき、フエドラ社に対して、本件マーキング・ペンを輸出した。その昭和四一年度から昭和四三年度までの実績(ただし、昭和四三年度については、同年六月一八日受注分まで)は、別紙原告実績表記載のとおりである。 3 被告は、マーキング・ペンの製造販売を業とする会社であるところ、フエドラ社と共謀のうえ、フエドラ社に本件マーキング・ペンを販売することが原告のフエドラ社に対する本件契約に基づく本件一手商品供給権を侵害するものであることを知りながら、フエドラ社に対して、昭和四三年八月一日から翌四四年一月三一日までの間に、本件マーキング・ペンを別紙被告販売表記載のとおり販売し、原告のフエドラ社に対する債権である本件一手商品供給権を侵害した。したがつて、被告は、原告に対して、右侵害行為によつて原告が被つた損害を賠償すべき義務がある。 原告が被つた損害は、次のとおりである。 (一) 逸失利益金六〇万三〇三七・五円 原告がフエドラ社に本件マーキング・ペンを販売した場合の一ダース当りの純利益は、別紙原告販売利益表記載のとおりであるから、原告が昭和四一年度及び昭和四三年度に挙げた利益額は、別紙原告利益額計算表記載のとおりである。同計算表記載の昭和四一年度の利益額金一〇七万八九一二・五円から昭和四三年度の利益額金四七万五八七五円を控除した金六〇万三〇三七・五円は、被告が前述のとおりフエドラ社に対し本件マーキング・ペンを販売したため、原告がフエドラ社に同商品を販売することができなくなつた結果、喪失した得べかりし利益である。 (二) 逸失利益金二一五万七八二五円 原告は、フエドラ社から、昭和四三年六月ころ本件契約に基づく取引を中止されたが、この取引中止は被告の前述の侵害行為によるものであるところ、それにより、昭和四四年及び昭和四五年に昭和四一年と同じ額である各金一〇七万八九一二・五円の利益を挙げえたはずであるのに、これを喪失した。 (三) 手持商品及び仕掛品の価額金二六二万六七三七円 原告は、フエドラ社との間の本件契約に基づき、訴外同和化学株式会社に対し、 本件マーキング・ペンの製造を発注してきたところ、前述の被告の侵害行為により、手持商品及び仕掛品であるF22型金一〇四万五三三五円相当、F11型金二六万〇六四三円相当、F11A型金一六万七七〇〇円相当及びF33型金一一五万三〇五九円相当合計金二六二万六七三七円相当の本件マーキング・ペンが販売不可能となり、同額の損害を被つた。これらの商品は、フエドラ社の仕様指図に基づくものであるから、フエドラ社において買取らない限り、他に販売して処分することが不可能なものである。 二 商標権侵害による損害賠償請求1 原告は、次の商標権(以下、「本件商標権」といい、その登録商標を「本件登録商標」という。)の商標権者である。 出願日 昭和四一年四月二〇日公告日 昭和四二年一〇月五日登録日 昭和四三年四月二日登録番号 第七七六八七二号指定商品 第二五類 文房具類商標 別添商標公報記載のとおり2 被告は、その行為が本件商標権を侵害するものであることを知りながら、昭和四三年八月一日から翌四四年一月三一日までの間に、文房具である本件マーキング・ペンに「本件登録商標と全く同一の文字及び図形の結合からなる標章」(以下、「被告標章」という。)を付して、別紙被告販売表記載のとおりフエドラ社に販売(輸出)し、本件商標権を侵害した(なお、被告が、フエドラ社をして、本件マーキング・ペンに被告標章を使用させるため、無商標包装の本件マーキング・ペンと被告標章を表示したラベル及び化粧箱とを、各別にフエドラ社に販売するようになつたのは、昭和四四年六月以降のことである。)。したがつて、被告は、原告に対して、右侵害行為によつて原告が被つた損害を賠償すべき義務がある。 原告は、右損害の額として、被告が右侵害行為により得た利益の額を主張するものであるところ、右利益の額は、別紙原告販売利益表記載の利益額と同額の一ダース当り利益額に、別紙被告販売表記載の販売個数を乗じた別紙被告利益額計算表記載の額、すなわち総額金二八五万二六〇〇円である。 三 よつて、原告は、被告に対して、本件一手商品供給権侵害による損害金五三八万七五九九・五円及び本件商標権侵害による損害金二八五万二六〇〇円の合計金八二四万〇一九九・五円の内金五〇九万六七三七円(この内金額は、次の金額を選択的に請求するものである。(一)本件一手商品供給権侵害による損害金の内金。 (二)右損害金の認容額が請求内金額に満たない場合、右認容額に本件商標権侵害による損害金を請求内金額に満つるまで加算した額。(三)本件商標権侵害による損害金に本件一手商品供給権侵害による損害金を請求内金額に満つるまで加算した額。)及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和四五年三月二九日から支払済みまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。 |
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請求の原因に対する認否
一1 請求の原因一1のうち、原告が雑貨品の輸出入業者であることは認めるが、 その余の事実は知らない。 2 同一2は知らない。 3 同一3のうち、被告がマーキング・ペンの製造販売を業とする者であること、 被告とフエドラ社との間に取引があつたことは認めるが、その余の事実は否認する。 被告とフエドラ社との間には、一般的かつ継続的な販売店契約ないしは代理店契約が締結されたことはない。被告とフエドラ社との間の取引は、(一)フエドラ社から被告に個々的な注文があり、(二)これに対し、被告からフエドラ社に見積書を発し、(三)そのうえでフエドラ社から具体的な注文(輸出依頼)があるという方法によるものである。被告は、原告とフエドラ社との関係をフエドラ社関係者その他から知らされたことはなく、両者の関係を認識のうえ、フエドラ社と取引をしたという事実はない。 二1 同二1は認める。 2 同二2は否認する。被告は、自社商品に被告標章を付して商品を販売したことはない。被告は、フエドラ社の指示により、指示どおりの標章をマーキング・ペンに付して使用するため、同標章をラベルに印刷し、マーキング・ペンの輸出手続として財団法人日本輸出雑貨センターの認定を申請したことはあるが、その手続過程で原告から異議が提起され、初めて本件商標権の存在及び右フエドラ社の指示にかかる標章すなわち被告標章が本件登録商標と同一性を有することを知り、やむなく右フエドラ社の指示にかかる標章の使用を中止し、無商標包装の商品と右フエドラ社の指示にかかる標章を印刷したラベルとを各別にフエドラ社に輸出したことがあるにすぎない。 |
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証拠関係(省略)
理 由一 一手商品供給権侵害による損害賠償請求について 成立に争いのない甲第二三号証の一、二及び原告代表者【A】尋問の結果によれば、昭和三七年一一月二五日、原告とフエドラ社との間に、本件契約(ただし、その内容についてはしばらく措く。)が成立したことが認められ、これに反する証拠はない。 しかして、原告は、本件契約において、フエドラ社は、日本から本件マーキング・ペンを輸入する場合は、原告のみから購入すべく他から購入してはならない義務を負い、原告はこれに対応する債権すなわち本件一手商品供給権を取得した旨主張し、原告代表者【A】尋問の結果中には、これに添う供述部分がある。 しかしながら、前掲各証拠(ただし、原告代表者【A】尋問の結果については、 後記信用しない部分を除く。)によれば、同時に、本件契約書(甲第二三号証の二)には、次の約定、すなわち1 本件マーキング・ペンの製造業者である訴外同和化学株式会社は、昭和三七年一〇月二三日付文書により、原告に対して、本件マーキング・ペンの一手輸出権を与え、原告は、本件マーキング・ペン及びその同種の製品につき、他社に発注しないことに同意し、かつ、保証したこと、しかして、右製造業者は、昭和三七年一二月一日から翌三八年一一月三〇日までの間、西ドイツほか一三か国の買付人に対しては、直接であると間接であるとを問わず、本件マーキング・ペン及びその同種の製品を提供しないことにより、原告及びフエドラ社の利益を守ることに同意し、かつ、保証したこと2 以上の事実を考慮して、原告は、本件マーキング・ペンにつき、フエドラ社を特約販売業者に指定し、フエドラ社はこれに同意したこと3 前記約定期間は、フエドラ社をいかなる競争からも保護し、そうすることによつて、同社に対し、一船積みにつき少なくとも一二個入り一万箱、年間最低一〇万箱の本件マーキング・ペンを売り捌くための市場を確保するのに必要であり、同期間経過後は、そうすることにより、右製造業者に対して、ヨーロッパ市場への特定の年間量を保証することができること4 フエドラ社が、前記期間経過後、一二個入り一万箱、年間最低一〇万箱を保証できない場合は、本契約は当然に効力を失い、それによつて、右製造業者及びもしくは原告は、他の輸出業者及び他の買付人を通じて、本件マーキング・ペンの販売を促進することができること、しかしながら、原告は、その時の状況により、一年以上二年以下の期間本件契約を更新することができ、かかる更新の通告は、昭和三八年一一月三〇日から四五日前に文書で行なうものとすること5 原告が、昭和三八年一一月三〇日後最低一二個入り一万箱の船積みを保証し、 年間最低一〇万箱を購入するという義務を履行する場合には、本件契約は、いかなる時期においても、原告及びもしくは右製造業者によつて破棄されえないこととする約定が記載されていることを認め得るところ、この約定に明らかなように、 製造業者たる同和化学株式会社の原告に対する一手商品供給権については明定されているにもかかわらず、原告のフエドラ社に対する本件一手商品供給権には全くふれるところがないことに鑑み、かつ、原告代表者【A】尋問における供述中には、 フエドラ社が本件マーキング・ペンを輸入する場合には原告のみから購入するものであつて、原告以外からは購入しないとの文言は本件契約書(前記甲第二三号証の二)に記載されていない旨の供述部分があることをも斟酌すれば、原告代表者【A】尋問の結果中原告の前記主張に添う部分は、にわかに信用できず、他に右主張を認めるに足りる証拠はない。 そうすると、本件一手商品供給権の存在を前提とする原告の請求は、進んでその余の点につき判断するまでもなく、理由がないものといわなければならない。 二 商標権侵害による損害賠償請求について 原告が本件商標権の権利者であることは、当事者間に争いがない。 しかしながら、本件全証拠によるも、被告が、原告の主張する昭和四三年八月一日から翌四四年一月三一日までの間、本件マーキング・ペンに被告標章を付してフエドラ社に販売した事実を認めることはできない。もつとも、原告代表者【A】尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第二五号証、証人【B】の証言及び被告代表者【C】尋問の結果並びにこれらにより真正に成立したものと認められる乙第一ないし第二三号証によれば、被告は、前記期間中フエドラ社をして西ドイツ国内において本件マーキング・ペンに被告標章を使用させるため、無商標包装の本件マーキング・ペンと、被告標章を印刷したラベル及び化粧箱とを、各別にフエドラ社に輸出したことが認められるので、被告の右行為が原告の本件商標権を侵害するか否かにつき検討するに、商標権者は、一般に、指定商品について登録商標を使用する権利を専有するが、かかる商標権の効力はわが商標法の施行地域内に限られるべきものであるから(いわゆる属地主義)、被告のわが国内における右行為が、標章の「使用」に関する商標法第2条第3項掲記のいずれの行為態様にも該当しない(ちなみに、同項第一号中「商品の包装に標章を附する行為」にいわゆる「包装」とは、現に商品を包むことに使用されているものをいい、右認定のように末だ実際に商品を包装するのに用いられていない包装(本件化粧箱、ラベルは右の「包装」には含まれないと解するのが相当である。)以上、本件商標権を侵害するものといえない。 次に、被告の前記行為が、商標法第37条第4号中「指定商品について登録商標の使用をさせるために登録商標を表示する物を譲渡し引き渡し又は譲渡若しくは引渡のために所持する行為」又は同条第五号中「指定商品について登録商標の使用をさせるために登録商標を表示する物を製造する行為」として、商標権を侵害するものとみなされるべきか否かについても、前記属地主義の理念に照らせば、使用させようとする他人がわが商標法施行地域外にある場合には、右各号の行為はいずれも本件商標権を侵害する行為もしくはその予備的な行為ということはできず、これに右各号の規定を適用すべきではないと解するのが相当であるから、被告の前記行為は、本件商標権を侵害するものとみなされるものでもない。 そうすると、本件商標権侵害を原因とする原告の損害賠償請求も、さらに判断を進めるまでもなく、理由がないものといわなければならない。 三 よつて、原告の本訴請求は棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第89条の規定を適用して、主文のとおり判決する。 |
裁判官 | 秋吉稔弘 |
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裁判官 | 佐久間重吉 |
裁判官 | 安倉孝弘 |