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事件 昭和 47年 (ワ) 991号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 1976/09/29
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は、
(一) 原告有限会社龍村織寶本社に対する関係において、別紙物件目録(一)記載のパンフレツト中に「たつむら」(但し、同目録中の朱線で囲んだ部分)の文字を、同物件目録(二)記載の商品説明書中に「龍村裂(ぎれ)」(但し、同目録中の朱線で囲んだ部分)の文字を、同物件目録(三)記載の商品説明書中に「(龍村製)」(但し、同目録中の朱線で囲んだ部分)の文字を(二) 原告株式会社龍村美術織物に対する関係において、別紙物件目録(三)記載の商品説明書中に「龍村製」(但し、同目録中の朱線で囲んだ部分)の文字をそれぞれ附して展示頒布してはならない。
2 被告は、
(一) 原告有限会社龍村織寶本社に対する関係において、別紙物件目録(一)記載のパンフレット中の「たつむら」(但し、同目録中の朱線で囲んだ部分)の文字部分、同物件目録(二)記載の商品説明書中の「龍村裂(ぎれ)」(但し、同目録中の朱線で囲んだ部分)の文字部分、同物件目録(三)記載の商品説明書中の「龍村製」(但し、同目録中の朱線で囲んだ部分)の文字部分を(二) 原告株式会社龍村美術織物に対する関係において、別紙物件目録(三)記載の商品説明書中の「龍村製」(但し、同目録中の朱線で囲んだ部分)の文字部分をそれぞれ廃棄せよ。
3 原告らのその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は、原被告ら各自の負担とする。
事実及び理由
当事者双方の申立
一 原告ら1 被告は、原告らに対する関係において、別紙物件目録(一)記載のパンフレツト中に「たつむら」、「【A】」、「龍村製」、「龍村」、「龍村特製」(但し、
同目録中の朱線で囲んだ部分)の文字を、同物件目録(二)記載の商品説明書中に「龍村裂(ぎれ)」(但し、同目録中の朱線で囲んだ部分)の文字を、同物件目録(三)記載の商品説明書中に「龍村製」、「龍村」(但し、同目録中の朱線で囲んだ部分)の文字を、同物件目録(四)記載の商品説明書中に「龍村裂(ぎれ)」(但し、同目録中の朱線で囲んだ部分)の文字をそれぞれ附して展示頒布してはならない。
2 被告は、原告らに対する関係において、別紙物件目録(一)ないし(四)記載のパンフレツトないし商品説明書をそれぞれ廃棄せよ。
3 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決を求める。
二 被告1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告らの負担とする。
との判決を求める。
請求の原因
一 原告有限会社龍村織寶本社(以下「原告有限会社」という。)は、織物の製造販売等を営業目的とする会社で、もとその商号を有限会社龍村本社と称していたが、昭和四六年一二月二〇日これを現商号に変更登記するに至つたものであり、原告株式会社龍村美術織物(以下「原告株式会社」という。)は、昭和三〇年一二月三日設立された帯、壁掛をはじめとする織物諸商品の製造販売等を営業目的とする会社であり、また、被告は、昭和四五年四月二〇日設立された織物諸商品の販売等を営業目的とする会社であり、なお、原告株式会社と被告とは競争関係にあるものである。
二 別紙商標権目録記載の各商標権(以下「本件各商標権」といい、そのうちの符号(A)に属する(1)から(8)までの各商標権を総称するときは、「本件(A)各商標権」といい、さらに、そのなかの各個の商標権をいうときは、「本件(A)(1)商標権」、「本件(A)(2)商標権」のようにいい、また、以上の商標については、「本件各商標」、「本件(A)各商標」、「本件(A)(1)商標」、「本件(A)(2)商標」のようにいい、その余の符号の商標権及びその商標についても同様方法により呼称する。)中1 本件(A)各商標権、本件(B)各商標権は、亡【A】(以下「訴外人」という。)において商標登録出願をして設定の登録を受けたものであるところ、昭和三二年四月一八日の移転登録をもつて訴外人から原告株式会社に、ついで、昭和四一年八月三日の移転登録をもつて原告株式会社から原告有限会社に順次譲渡されたものであり、
2 本件(C)商標権、本件(E)商標権は、原告有限会社において商標登録出願をして設定の登録を受けたものであり、
3 本件(D)各商標権は、原告株式会社において商標登録出願をして設定の登録を受けたものであるところ、昭和四一年八月三日の移転登録をもつて原告株式会社から原告有限会社に譲渡されたものであり、
かつ、本件(A)各商標権、本件(B)各商標権、本件(D)各商標権については、その都度存続期間更新の登録がなされて来ているものであつて、原告有限会社は、本件各商標権の権利者である。
三 被告は、債権者原告有限会社、債務者被告間の東京地方裁判所昭和四六年(ヨ)第二五二三号商標権侵害禁止仮処分申請事件につき同年九月一三日発布された同裁判所の商標使用差止等仮処分決定が送達され、かつ、その執行として、その占有する後記別紙物件目録(一)記載のパンフレツト、同物件目録(三)、(四)各記載の商品説明書につき占有を解かれて同裁判所執行官の保管に移されるに至つた翌一四日まで、その販売する1 (1)帯、(2)ネクタイ、(3)襖張用裂地、壁張用裂地、椅子張用裂地、
座蒲団、クツシヨン用裂地(以下「襖張用裂地等」ともいう。)、(4)ふくさ、
(5)手提袋、ハンドバツク、数寄屋袋、懐紙入、札入、銭入、名刺入、袋様の爪入(以下「手提袋等」ともいう。)、(6)カーテン、電話カバー、テーブルセンター、壁掛、どん帳(以下「カーテン等」ともいう。)、(7)衣裳盆、乱箱、宝石入、マツチ立、小箱用爪入(以下「衣裳盆等」ともいう。)を広告宣伝するため、別紙物件目録(一)記載のパンフレツト(以下「本件(一)パンフレツト」という。)を作成のうえ、店頭に備えつけて顧客に展示頒布し、
2 札入を広告説明するため、別紙物件目録(二)記載の商品説明書(以下「本件(二)商品説明書」という。)を作成のうえ、当該商品とともに包装紙内に入れて顧客に展示頒布し、
3 銭入を広告説明するため、別紙物件目録(三)記載の商品説明書(以下「本件(三)商品説明書」という。)を作成のうえ、前同様方法で顧客に展示頒布し、
4 ふくさを広告説明するため、別紙物件目録(四)記載の商品説明書(以下「本件(四)商品説明書」という。)を作成のうえ、前同様方法で顧客に展示頒布していたところ、
(一) 本件(一)パンフレツト中には、(1)「たつむら」、(2)「【A】」、(3)「龍村製」、(4)「龍村」、(5)「龍村特製」の記載が、
(二) 本件(二)商品説明書中には、「龍村裂(ぎれ)」の記載が、
(三) 本件(三)商品説明書中には、(1)「(龍村製)」、(2)「龍村」の記載が、
(四) 本件(四)商品説明書中には、「龍村裂(ぎれ)」の記載がある。
四 本件(一)パンフレツト中における前記「たつむら」、「【A】」、「龍村製」、「龍村」、「龍村特製」の記載文字は、一連の文章中に組込まれてはいるものの、被告がその販売する前項1掲記の(1)から(7)までの各商品の品質、図柄、製作過程、製作の由来等を説明して自己の商品を他人の商品と区別するために使用しているものであるから、被告の前項1掲記の所為は、被告の商品に関する広告に文字標章を附して展示、頒布する行為として、商標の使用行為に該当するところ、右各文字(商標)の使用は、
1 前記帯、ネクタイの広告に関しては、本件(A)(1)商標権、本件(B)(1)商標権、本件(C)商標権、本件(D)(2)商標権の侵害に、
2 前記襖張用裂地等の広告に関しては、本件(A)(3)、(4)、(5)、
(6)、(7)商標権、本件(B)(2)商標権の侵害に、
3 前記ふくさの広告に関しては、本件(A)(1)商標権、本件(B)(1)商標権、本件(D)(2)商標権の侵害に、
4 前記手提袋等の広告に関しては、本件(A)(8)商標権、本件(B)(4)商標権、本件(D)(1)商標権の侵害に、
5 前記カーテン等の広告に関しては、本件(A)(2)商標権、本件(B)(3)商標権の侵害に、
6 前記衣裳盆等の広告に関しては、本件(E)商標権の侵害になる。
すなわち、本件(A)各商標権は、その指定商品を異にするだけで、いずれも「【A】製」の商標(本件(A)各商標)からなるものであるところ、本件(A)各商標は、一見して明らかなように、氏名、そのなかでも特に世上稀な「龍村」の氏を中心にして構成されているものであつて、自他商品識別の機能を発揮する部分、すなわち、その要部は、「【A】」又は「龍村」にあり、また、本件(B)各商標権は、その指定商品を異にするだけで、いずれも「龍村製」の商標(本件(B)各商標)からなるものであり、本件(D)各商標権も、その指定商品を異にするだけで、いずれも「龍村裂」の商標(本件(D)各商標)からなるものであつて、本件(B)各商標、本件(D)各商標の要部が、いずれも「龍村」にあることは、さきに述べたところから明らかであろう。
他方、本件(一)パンフツト中の文字商標である「【A】」、「龍村製」、「龍村特製」の要部が、いずれも「龍村」にあることも、さきに述べたところから明らかであろう。
そうすると、本件(一)パンフレツト中の文字商標である1 「たつむら」は、本件(A)各商標、本件(B)各商標、本件(D)各商標の要部である「龍村」と称呼観念を同じくし、本件(C)商標、本件(E)商標と外観称呼観念を同じくするものであるから、本件(A)各商標、本件(B)各商標とは類似し、本件(C)商標、本件(E)商標とは同一であり、
2 「【A】」は、本件(A)各商標の要部である「【A】」又は「龍村」と外観称呼観念において同一又は類似であるほか、その要部である「龍村」が本件(A)各商標の要部である「【A】」又は「龍村」と外観称呼観念において類似又は同一であり、本件(B)各商標、本件(D)各商標の要部である「龍村」と外観称呼観念を同じくし、本件(C)商標、本件(E)商標と称呼観念を同じくするものであるから、本件各商標とは類似し、
3 「龍村製」は、本件(B)各商標と外観称呼観念を同じくするほか、その要部である「龍村」が本件(A)各商標、本件(D)各商標の要部である「龍村」と外観称呼観念を同じくし、本件(C)商標、本件(E)商標と称呼観念を同じくするものであるから、本件(A)各商標、本件(C)商標、本件(D)各商標とは類似し、本件(B)各商標とは同一であり、
4 「龍村」は、本件(A)各商標、本件(B)各商標、本件(D)各商標の要部である「龍村」と外観称呼観念を同じくし、
本件(C)商標、本件(E)商標と称呼観念を同じくするから、本件各商標とは類似し、
5 「龍村特製」は、その要部である「龍村」が本件(A)各商標、本件(B)各商標、本件(D)各商標の要部である「龍村」と外観称呼観念を同じくし、本件(C)商標、本件(E)商標と称呼観念を同じくするから、本件各商標とは類似するところ、
(一) 前記帯は、本件(A)(1)商標権、本件(B)(1)商標権の指定商品である前記旧第三六類商品のうちの被服、本件(C)商標権の指定商品である前記第一七類帯に含まれる商品であり、本件(D)(2)商標権の指定商品である前記旧第三六類裂製の衣服、帯芯類、手巾類、ネクタイ、襟巻類とは類似の商品であり、なかんずく、そのうちのネクタイとは、両者がいずれも衣服の概念に含まれるうえ、装飾品的要素の強いものであり、しかも、織物業地として著名な京都西陣地方においては通常同一業者により製作されている商品であることに鑑みても、類似の商品であるということができ、
(二) 前記ネクタイは、本件(A)(1)商標権、本件(B)(1)商標権の指定商品である前記旧第三六類商品のうちの被服に含まれる商品であり、本件(D)(2)商標権の指定商品である前記旧第三六類商品のうちの裂製のネクタイに含まれるか、これと類似する商品であり、本件(C)商標権の指定商品である前記第一七類帯とは、前記のように、類似の商品であり、
(三) 前記襖張用裂地等は、いずれも織物を裁断加工して製作されるものであるから、その素材が絹、木綿、毛、麻、その他のいずれかであるかにより、本件(A)(1)商標権、本件(B)(2)商標権の指定商品である前記旧第三〇類商品絹織物、本件(A)(4)商標権の指定商品である前記旧第三一類商品木綿織物、本件(A)(5)商標権の指定商品である前記旧第三二類商品毛織物、本件(A)(6)商標権の指定商品である前記旧第三三類商品麻織物、本件(A)(7)商標権の指定商品である前記旧第三四類商品旧第三〇ないし第三三類に属しない織物のいずれかに含まれる商品であるのはもちろん、右各指定商品としての織物が、
その素材を異にするとはいえ、一様に織物であつて、通常同一業者により生産販売されることも少なくないのみならず、その用途にも共通点が多いことに鑑みると、
右各商標権のうちの指定商品を同じくしない商標権の指定商品とも類似する商品であるということができ、
(四) 前記ふくさは、本件(A)(1)商標権、本件(B)(1)商標権の指定商品である前記旧第三六類商品のうちの手巾に含まれる商品であり、本件(D)(2)商標権の指定商品である前記旧第三六類商品裂製の手巾類に含まれるか、これと類似する商品であり、
(五) 前記手提袋等は、本件(A)(8)商標権、本件(B)(4)商標権、本件(D)(1)商標権の指定商品である前記旧第四九類商品のうちの袋物に含まれる商品であるか、もしそうでないとしても、右袋物とは、両者がいずれもかばん類、袋物として一般に用途、生産者、販売者を用じくする実情に鑑み、類似の商品であるということができ、
(六) カーテン等は、本件(A)(2)商標権、本件(B)(3)商標権の指定商品である前記旧第三七類商品のうちの他類に属しない室内装置品に含まれる商品であり(七) 前記衣裳盆等は、本件(E)商標権の指定商品である前記第二〇類商品のうちの屋内装置品に含まれる商品であり、
これらによれば、はじめに述べたような関係での商標権侵害が成立していることが明らかであろう。
五 本件(二)商品説明書中における「龍村裂(ぎれ)」の記載文字は、被告がその販売する商品札入を、他人の商品と区別するために使用しているものであるから、被告の第三項2掲記の所為は、被告の商品に関する広告に文字標章を附して展示頒布する行為として、商標の使用行為に該当するところ、右文字(商標)の使用が、本件(A)(8)商標権、本件(B)(4)商標権、本件(D)(1)商標権の侵害になることについては、前項において手提袋等に関し述べたところから明らかであろう。
六 本件(三)商品説明書中における「(龍村製)」、「龍村」の記載文字は、被告がその販売する商品銭入を、他人の商品と区別するために使用しているものであるから、被告の第三項3掲記の所為は、被告の商品に関する広告に文字標章を附して展示頒布する行為として、商標の使用行為に該当するところ、右各文字(商標)の使用が、本件(A)(8)商標権、本件(B)(4)商標権、本件(D)(1)商標権の侵害になることについては、前項において述べたところと同じである。
七 本件(四)商品説明書中における「龍村裂(ぎれ)」の記載文字は、被告がその販売する商品ふくさを、他人の商品と区別するために使用しているものであるから、被告の第三項4掲記の所為は、被告の商品に関する広告に文字標章を附して展示頒布する行為として、商標の使用行為に該当するところ、右文字(商標)の使用が、本件(A)(1)商標権、本件(B)(1)商標権、本件(D)(2)商標権の侵害になることについては、第四項においてふくさに関し述べたところと同じである。
八 訴外人は、明治二七年ころ京都西陣において製織業をはじめ、独特の高級織物諸製品を考案して製作し、明治末期ころにはすでに織物業界において著名な業者に数えられるに至つていたが、大正八年東京の日本橋倶楽部、大阪の中之島中央公会堂において自己の創作になる織物帯につき展覧会を開催したところ、これが好評を博して新聞により全国に報道されるところとなり、織物業者ないし織物美術作家としての名声が全国に広まり、大正一〇年には当時の知識人、著名人の肝入りで、かねてより研究のうえ複製を試みていた正倉院御物裂をはじめとする古代裂、名物裂の頒布会が結成され、優れた作品が世に送られ、また、大正一二年ころ以降は、当時としては破格の名誉に属する宮内省からの注文が続き、訴外人の名声は夙に全国的にゆるぎないものとなつていた。ところで、訴外人は、創業のときからその製造販売する織物製品等に本件(A)各商標、本件(B)各商標と同じ「【A】製」、
「龍村製」の商標を附し、その後前記のように本件(A)各商標、本件(B)各商標の登録出願をしてからは、もちろんこれを使用していたので、本件(A)各商標、本件(B)各商標は、訴外人の前記のような名声に支えられ、各種織物製品の商標として夙に全国的に著名となつていた。
さて、原告株式会社は、前記のように昭和三〇年一二月三日設立されるとともに訴外人から本件(A)各商標権、本件(B)各商標権につき通常使用権の許諾を受け、ついで、前記のように昭和三二年四月一八日の移転登録をもつて右各商標権を譲り受けてからは、その商標権者として、さらに、前記のように昭和四一年八月三日の移転登録をもつて右各商標権を原告有限会社に譲渡してからは、同年九月一日付をもつて同原告から通常使用権の許諾を受けたうえ、その商標である本件(A)各商標、本件(B)各商標を自己の製造販売する織物諸製品に附するとともに、その間、前記のように自ら商標登録出願をして昭和三四年一月三一日及び昭和三五年九月一六日に設定登録を受け、昭和四一年八月三日の移転登録をもつて原告有限会社に一括譲渡した本件(D)各商標権については、商標権者本人ないし同年九月一日付をもつて原告有限会社から使用許諾を受けた通常使用権者としてその商標である本件(D)各商標を使用しているのみならず、これと同じ商標をすでに会社設立当初から使用しており、また、前記のように原告有限会社においていずれも商標登録出願をして昭和四二年三月二九日に設定登録を受けた本件(C)商標権ないし昭和四六年一一月一三日に設定登録を受けた本件(E)商標権についても、右各設定登録の日原告有限会社から通常使用権の許諾を受けてその商標である本件(C)商標、本件(E)商標を使用し今日に至つているところ、本件(A)各商標である「【A】製」の商標、本件(B)各商標である「龍村製」の商標は、訴外人が使用していた当時からの著名性に支えられ、また、本件(D)各商標である「龍村裂」の商標は、右「【A】製」ないし「龍村製」の商標と両者の要部である「龍村」を共通することにより、いずれも原告株式会社が前記のようにその設立と同時に使用しはじめると、たちまち原告株式会社の製造販売する織物製各種製品を示す商標として全国的に著名となつたのはいうまでもないことであるが、原告株式会社においても右著名商標にふさわしい最高級の織物製各種製品を製作して販売し、訴外人時代からの取引先である全国百貨店からの注文はもとより、宮内庁からの注文も引続き受けるほか、諸官庁、各地の有名ホテル、その他の著名建造物に飾られる室内装飾用織物製品多数の注文を受けて製作納入し、また、有名百貨店に裂地の特設売場を設け、あるいは、作品の展覧会を毎年春秋二回開催して宣伝にも努め、これにより京都西陣を代表する最高級絹織物業者としての名声を博し、営業ますます隆盛を極めて来ていたため、本件(C)商標、本件(E)商標である「たつむら」の商標も、原告株式会社による使用開始とともにたちまち原告株式会社の製造販売する織物製各種製品を示す商標として全国的に著名となつたし、また、原告株式会社の通称である「龍村」も原告株式会社の前記商品を示す表示となつて全国的に著名になつている。
九 原告株式会社と同じく織物製品の製造販売を営業目的とし、同原告と競争関係にある被告において、その製造販売する商品を広告するため、本件(一)パンフレツト、本件(二)、(三)、(四)商品説明書中に「たつむら」、「【A】」、
「龍村製」、「龍村」、「龍村特製」、「龍村裂(ぎれ)」、「(龍村製)」、
「龍村裂(きれ)」の文字商標を附してこれらを展示頒布していることは第三項において述べたとおりであるが、被告使用の右商標が原告株式会社の製造販売する織物製各種製品を示すものとして周知となつている前記「【A】製」、「龍村製」、
「たつむら」、「龍村裂」の商標ないし「龍村」の商品表示のいずれとも同一又は類似であることは、すでに述べたところから明らかであり、そうすると、右商標使用により被告の商品が原告株式会社のそれと混同され、ひいては、これにより原告株式会社が営業上の損失を被るであろうことは、改めて説明するまでもなく、明らかであろう。
一〇 以上説示のように、被告において本件(一)パンフレツト中に「たつむら」、「【A】」、「龍村製」、「龍村特製」と記載してこれを展示領布していること、本件(二)商品説明書中に「龍村裂(ぎれ)」と記載してこれを展示頒布していること、本件(三)商品説明書中に「(龍村製)」、「龍村」と記載してこれを展示頒布していること、本件(四)商品説明書中に「龍村裂(きれ)」と記載してこれを展示頒布していることが、原告有限会社の有する本件各商標権のうちの少なくとも一つの侵害に当るものであり、かつ、原告株式会社の本件各商標と同じ著名商標ないし「龍村」の著名商品表示のうちの少なくとも一つの不正使用による不正競争行為に当るものである以上、被告による前記商標を附したパンフレツト、商品説明書の展示頒布は許されないものであるから、原告有限会社は、本件各商標権に基づき、また、原告株式会社は、不正競争防止法第1条第1号に基づき、それぞれ被告に対し請求の趣旨第一項記載のとおり商標の使用の差止を求めるとともに、
前記のように執行官の保管に移されている本件(一)パンフレツト、本件(三)、
(四)商品説明書を含む被告所有の本件(一)パンフレツト、本件(二)、
(三)、(四)商品説明書は、本件各商標権の侵害の行為、ないし前記不正競争行為に供されたものであつて、商標権侵害の予防のためないし前記不正競争行為の差止を実効あらしめるためには廃棄させなければならないものであるから、その廃棄をも求める。
答弁
一 答弁及び自白の撤回請求原因第一項の事実は認める。
同第二項の事実中、本件各商標権につき、原告ら主張のように、訴外人、原告有限会社、原告株式会社の商標登録出願によりなされた商標権設定登録ないし訴外人、原告株式会社によりなされた商標権移転登録があることは認めるが、原告有限会社において本件(A)各商標権、本件(B)各商標権を譲り受けたとの点は否認し、また、本件(D)各商標権を原告株式会社から譲り受けたとの点及び本件(A)各商標権、本件(B)各商標権、本件(D)各商標権につきその都度存続期間更新の登録がなされて来ているとの点は知らない。もつとも、本件(A)各商標権、本件(B)各商標権につき訴外人が譲渡による移転登録をしたとの点は、右のように一旦これを認めたものの、右自白は、後記のように真実に反し、かつ錯誤に基づくものであつたから、昭和四九年一〇月二日の本件第一九回口頭弁論期日においてこれを撤回し、右移転登録は、原告有限会社において訴外人の印鑑等を盗用のうえ無断で行つたものとして、これを否認すると答弁する。
請求原因第三項の事実中、被告が本件(一)パンフレツト、本件(三)、(四)商品説明書を作成したこと、右パンフレツト、商品説明書が原告ら主張のような仮処分決定の執行としてその主張の日執行官の係官に移されたこと、本件(一)パンフレツト、本件(二)、(三)、(四)商品説明書中に原告ら主張の記載文字があることは認めるが、その余は否認する。
請求原因第四項から第七項までの事実は否認する。
同第八項の事実中、訴外人が織物美術作家として著名であつたとの点は認めるが、
その余は否認する。
請求原因第九項の事実は否認する。
同第一〇項は争う。
二 主張1 被告は、かねてより龍村商工株式会社(以下「龍村商工」という。)の製造する織物製品を販売し、最近は右龍村商工を創立してその代表取締役に就任するとともに、被告の元代表取締役で、現在は相談役に就任している【B】がデザイン製作する絹織物製品の販売を行つている会社であるが、右【B】は、我が国における織物美術工芸の創始者であつて、龍村製「正倉院裂」等の古代の美術織物を複製するなどして美術織物作家として夙に著名であつた訴外人の三男として出生し、訴外人の四男であり、原告らの代表取締役を兼ねている【C】とともに、訴外人の営んでいた織物業を手伝いながら、訴外人の考案になる優れた工芸織物製作技術を習得し、これを踏襲して織物製品を製作しているものであつたところから、被告は、自己の販売している【B】製作の織物製品が訴外人の創案した織物美術工芸を踏襲しているものとして、その由来を宣伝説明するため、本件(一)パンフレツト、本件(三)、(四)商品説明書を作成したものであつて、原告ら指摘の本件(一)パンフレツト中の「【A】」、「龍村製」、「龍村」、「龍村特製」の記載、本件(三)商品説明書中の「(龍村製)」、「龍村」の記載、本件(四)商品説明書中の「龍村裂(きれ)」の記載は、このような【B】が製作し、被告が販売する織物製品の由来を説明するための文章中に用いられている言葉であつて、被告の製品を指し、これを他人の製品と区別するための標章、換言すれば、商標ないし商品表示として使用しているものではないし、また、本件(一)パンフレツト中の「たつむら」の記載も前記「龍村」の記載と同様、被告において販売する商品の製造元であつた龍村商工ないし現にその製造元である【B】をあらわすために使用されているにすぎないものであつて、これまた被告の商品を他人の商品と区別するための商標ないし商品表示として使用しているものではないから、それらにたまたま本件各商標と同一又は類似の点が見出されることがあつたとしても、原告有限会社主張のように商標権侵害のそしりを受けるいわれはないし、また、原告ら指摘の前記々載文字が被告の販売する商品を表示する機能を有していないうえ、これらの記載がある本件(一)パンフレツト、本件(三)、(四)商品説明書中には、被告の商号が大きな文字で明記されているのであるから、被告においてその販売する商品を広告するため、右パンフレツト、商品説明書を展示頒布したからとて、これにより被告の製品と原告株式会社の商品とが誤認混同されることはいうに及ばず、誤認混同されるおそれすらないことも明らかであり、したがつて、原告株式会社に対する被告の不正競争行為も成立する余地がないものである。
2 前記【B】及び【C】は、前記のように家業である訴外人の事業を手伝つていたが、昭和二四年ころ米国ドツジ財政使節の勧告により実施されることになつた政府のインフレ収束のための財政緊縮政策に伴い、右事業の経営が危殆に頻すると、
その経営の立直し策をめぐつて互いに衝突し、爾来夭折した長男を除く五名の兄弟姉妹が【B】側二名、【C】側三名に分れて相争うようになり、その結果、【C】において代表取締役の地位にある原告らにおいて、前記のように【B】の制作する製品を販売している被告をも【B】の事業の一環とみなして、【B】を攻撃する意図のもとに、被告に対し、本訴請求原因にみられるような誠に無理な主張を掲げて本訴を提起するに至つたもので、原告らの本訴請求は、権利濫用のそしりを免れず、到底許されないものである。
被告の自白の撤回に対する異議及び主張に対する反論
一 被告の自白の撤回には異議がある。被告の自白は、真実に合致し、錯誤に基づきなされたものではないし、かりに、錯誤によりなされるに至つたものであるとしても、それは、被害訴訟代理人の重大な過失によりもたらされたものであるから、
その撤回は許されないものである。
二 本件(一)パンフレツト、本件(二)、(三)、(四)商品説明書は、被告の販売する商品を広告するためのものであるから、そのなかに前記のように「たつむら」、「【A】」、「龍村製」、「龍村」、「龍村特製」、「龍村裂(ぎれ)」、
「(龍村製)」、等の記載がなされるならば、これを見る者をして、それが被告の現に販売している商品を指し、しかも、被告の販売している商品が世上本件各商標により著名となつている原告株式会社の製造販売する商品である旨誤認混同させるに十分であり、被告もこのような効果を期待して右記載をしていることは明らかであるから、被告による右記載のある本件(一)パンフレツト、本件(二)、
(三)、(四)商品説明書の展示ないし頒布行為が、原告有限会社の有する本件各商標権の侵害行為に該当するとともに、原告株式会社に対する不正競争行為にも該当することはいうまでもないことである。
三 被告の権利濫用の主張は争う。
証拠(省略) 理 由一 請求原因第一項の事実は当事者間に争いがない。
二 本件(A)各商標権、本件(B)各商標権が訴外人において、本件(C)商標権、本件(E)商標権が原告有限会社において、本件(D)各商標権が原告株式会社においてそれぞれ商標登録出願をして設定の登録を受けたものであることは当事者間に争いがなく、各成立に争いのない甲第一号証の一から七までの各2、第二号証の一の2、第四号証の一、二の各2、第五〇、五一号証に本件口頭弁論の全趣旨を参酌すれば、本件(A)各商標権、本件(B)(1)、(3)、(4)商標権、
本件(D)各商標権については、その都度存続期間更新の登録がなされて今日に至つていること、本件(B)(2)商標権についてははじめその存続期間更新登録がなされ、昭和四九年四月まで存続していたことが認められるころ、その間、本件(A)各商標権、本件(B)各商標権については、訴外人が昭和三二年四月一八日原告株式会社に対し、ついで、原告株式会社が昭和四一年八月三日原告有限会社に対しそれぞれ譲渡の移転登録をし、本件(D)各商標権については、原告株式会社が昭和四一年八月三日原告有限会社に対し譲渡の移転登録をしていることは当事者間に争いがなく、これらの事実によれば、原告有限会社は、本件(C)商標権、本件(E)商標権をその設定の登録により取得したほか、訴外人においてこの設定の登録により取得した本件(A)各商標権、本件(B)各商標権を、その譲受人である原告株式会社からさらに譲り受け、原告株式会社においてその設定の登録により取得した本件(D)各商標権を同原告から譲り受けたものと推認することができるから、原告有限会社は、本件(B)(2)商標権を除く本件各商標権についての商標権者であるということができる。なお、被告は、訴外人から原告株式会社への本件(A)各商標権、本件(B)各商標権譲渡の移転登録は、原告有限会社において訴外人の印鑑を盗用のうえほしいままにしたものであるから、訴外人において右移転登録をしたとする原告らの主張を前記のように認めた被告の自白は、真実に反し、かつ錯誤に基づきなされたものである旨主張し、これを撤回すると述べ、証人【B】の証言及び同証言により真正に成立したものと認める乙第一四号証によれば、訴外人の三男である【B】は、訴外人による本件(A)各商標権、本件(B)各商標権の譲渡による移転登録につき不審の念を抱いていることが認められないではないが、それは単なる憶測の域を出るものではないことが同号証により明らかであつて、そのまま直ちに信用できないし、他に被告の右自白がその主張するように真実に反し、かつ、錯誤に基づきなされたものであることを肯定し得る資料も見当らないから、被告の右自白の撤回は、原告らにおいてこれにつき異議を述べる以上、許すことができない。
三 被告が原告ら主張のような記載のある本件(一)パンフレツト、本件(三)、
(四)商品説明書を作成したことは当事者間に争いがなく、また、各成立に争いのない甲第九号証、第一一、一二号証の各一、第一三号証、各撮影者、撮影年月日の点を除き成立に争いのない同第一一、一二号証の各二、各原告ら主張の商品であることにつき争いのない検甲第二、三号証に証人【B】の証言及び被告代表者【D】尋問の結果を綜合すれば、本件(一)パンフレツトは、横長長方形のパンフレツトであつて、裏には、営業品目として帯、ネクタイ、襖張裂地等、ふくさ、手提袋等、衣裳盆等が掲記され、かつ、その写真も印刷され、裏には、右営業品目として掲げられた商品をこしらえる素材としての裂地が訴外人の努力により再生することが可能になつた正倉院御物中の正倉院裂に倣うとともに、さらにこれに創意工夫をこらして作られたものである旨の横書説明文及びこのような裂地の一文様写真が印刷されているほか、被告の商号、住所、その所在を示す地図及び原告らが商標権侵害等になるといつている「たつむら」の記載が横書で印刷されている(別紙物件目録(一)参照)ものであつて、被告肩書の営業所店頭に備えつけられ、観客をして自由に閲覧持ち去るに任せ、本件(三)商品説明書は、被告が右営業所において販売している商品銭入に添えられている商品説明書であつて、これには「紅牙瑞錦」と題し、標題の模様が正倉院御物中の象牙の物指にある模様を模して織り出されたものである旨の説明文及びその末尾に併記された被告の商号、住所等が縦書で印刷されている(別紙物件目録(三)参照)ものであり、本件(四)商品説明書は、被告が前同様販売している商品ふくさに添えられている商品説明書であつて、これには、「天平繍華文綿」と題し、標題の模様が正倉院御物中の裂地に刺繍されている「緋地羅唐草文刺繍」、「深縹地羅唐草文刺繍」と呼ばれている模様に想を得て創作されたものである旨の説明文及びその末尾に併記された被告の商号、住所等が縦書で印刷されている(別紙物件目録(四)参照)ものであることが認められ、これによれば、本件(一)パンフレツトは、被告の販売している商品帯、ネクタイ、襖張用裂地等、ふくさ、手提袋等、カーテン等、衣裳盆等を、これをこしらえている裂地につき説明宣伝することにより、広告する広告として、顧客に展示頒布され、
本件(三)商品説明書は、被告の販売している商品銭入を、これをこしらえている裂地につき説明宣伝することにより、広告する広告として、顧客に展示頒布され、
本件(四)商品説明書は、被告の販売している商品ふくさを、これをこしらえている裂地につき説明宣伝することにより、広告する広告として、顧客に展示頒布されていたものということができるところ、これらのパンフレツト及び商品説明書については、債権者原告有限会社、債務者被告間の東京地方裁判所昭和四六年(ヨ)第二五二三号商標権侵害仮処分申請事件につき同年九月一三日発布された同裁判所の商標使用差止等の仮処分決定が翌一四日被告に送達され、かつ、これに基づく執行として、被告占有中のものにつき、被告の占有が解かれて同裁判所執行官の保管に移されるに至つたことが当事者間に争いがないから、被告は、なおこれらを展示頒布しているものということができる。
また、成立に争いのない甲第一〇号証の一、撮影者、撮影年月日の点を除き成立に争いのない同号証の二、原告ら主張の商品であることにつき争いのない検甲第一号証に証人【B】の証言及び被告代表者【D】尋問の結果を綜合すれば、本件(二)商品説明書は、龍村商工において作成したものであるが、被告がその前認定営業所において販売している商品札入に添えられている商品説明書であつて、これには、「金鋼間道」と題し、標題の縞柄が熊衣裳金襴の縞柄に想を得て創作されたものである旨の説明文が縦書で印刷されている(別紙物件目録(二)参照)ものであることが認められ、これによれば、本件(二)商品説明書は、被告の販売している商品札入を、これをこしらえている裂地につき説明宣伝することにより、広告する広告として顧客に展示頒布されていたものということができるところ、これについても、前記仮処分決定によりその頒布が仮に禁止されるに至つたことが前記甲第一三号証に本件口頭弁論の全趣旨を参酌して認められるから、本件(二)商品説明書も被告の商品に関する広告であり、被告は、なおこれをも展示頒布しているか、
少なくとも将来これを展示頒布するおそれがあるものということができる。そして、本件(二)商品説明書に原告ら主張の「龍村裂(ぎれ)」の記載があることは当事者間に争いがない。
四 ところで、原告有限会社は、本件(一)パンフレツト中の「たつむら」、
「【A】」、「龍村製」、「龍村」、「龍村特製」の記載、本件(二)商品説明書中の「龍村裂(ぎれ)」の記載、本件(三)商品説明書中の「(龍村製)」、「龍村」の記載、本件(四)商品説明書中の「龍村裂(ぎれ)」の記載は、請求原因第四項において述べたように、本件各商標権のうちの少なくとも一つの商標権の侵害に該当すると主張するので、以上この点について検討すると、商標法第36条によれば、商標権者は、商標権を侵害する者に対し侵害の停止等を請求できるとされているが、ここにいう商標権を侵害するとは、商標権者の有する権利、すなわち、同法第25条によれば、商標権者の専有する指定商品について登録商標の使用をする権利、を侵害することをいうのであるから、指定商品について登録商標を使用することを指すのは当然であるが、さらに、同法第37条によれば、指定商品について登録商標に類似する商標を使用すること、指定商品に類似する商品について登録商標若しくはこれに類似する商標を使用すること、このような商標使用がなされている商品(その包装を含む。)苦しくは、このような商標の使用をし、あるいは、使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示したものを所持ないし製造すること等を商標権を侵害するものとみなしている。したがつて、これらによれば、商標権の侵害を構成するには、少なくとも、登録商標若しくはこれに類似する商標の使用、あるいは、その使用がないとしても、その使用をし若しくは使用をさせる意思をもつた一定の行為がなければならないことになる。ところで、商標法第2条第1項は、商標とは、文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、業として商品を生産し加工し証明し又は譲渡する者がその商品について使用するものをいうと定義し、また、
同条第二項は、登録商標とは、商標登録を受けている商標をいうと定義しているから、前述の商標権侵害を構成する要素となつている登録商標若しくはこれに類似する商標とは、右定義に該当する商標でなければならないことはいうまでもない。しかしながら登録商標若しくはこれに類似する商標であつて、業として商品を生産し加工し証明し又は譲渡する者がその商品について使用(使用の定義については第2条第3項参照。)等をする場合には、それは必然的に商標権を侵害することになるかどうかは問題である。商標は、商品の顔にもたとえられ、社会における一般通念によれば、自他商品識別の機能を果させる標識であると考えられていることは周知のとおりであるが、そもそも自他商品識別の機能を果すことあるいはその機能を果すことを目的とすることが商標制度の本質的要素の一つなのであつて、右にみたように商標法第2条第1項は商標を定義するに当り、その商品の識別機能について何等言及していないのであるが、このことから、わが商標法は商標につき商品の識別機能には何等考慮を払うことなく、「文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合であつて、業として商品を生産し加工し証明し又は譲渡する者がその商品について使用をするもの」であればこれを全部商標であるとし、したがつてその商標が登録商標である場合には商標権者は他人の登録商標若しくはそれに類似する商標の使用等をその使用態様のいかんを問わず一切これを禁止し得るとしているものと解することはできないのである。商標法第2条第1項は、
形式的には商標の自他商品識別機能については規定するところなく、標章であつて業として商品を生産等する者がその商品について使用をするものはすべて商標であるというような規定の仕方をしているが、この条項の中には当然自他商品識別の機能を有するものとしての商標の概念が前提されかつ含まれているものと解さなければならないものと考えられる。そしてこのように解することによつて始めて商標法第1条の「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」という商標法の目的が達せられるものと考えられるのである。商標法第2条第1項を右のように解釈すべきことは、右規定を文字どおり形式的に解釈すれば、例えば「文字ヽヽヽヽヽであつて、業として」雑誌という「商品を生産ヽヽヽヽヽする者が」その「商品」である雑誌「について使用するもの」はすべて商標であるということになり、
そこから必然的に雑誌中の全部の文字又は任意の一部分の文字も商標であり、したがつて商標権者が指定商品を雑誌として任意の文字につき商標登録を得れば、他のすべての雑誌製作者はその雑誌中に当該文字若しくはそれと類似する文字を使用できないということになり、その不当であることはいうまでもないということから容易に理解されるであろう。商標とは本来自他商品識別の機能を果すものとして使用されるものでなければならず、商標権者は登録商標の本来持つこの機能を乱すものとしての第三者の登録商標の使用を禁止する権利はこれを有するが、第三者が登録商標と同一の若しくはこれと類似の標章を商品について使用するものであつても、
その使用態様が自他商品を識別するという機能の面において使用されているものと認められないときは、商標権者は第三者のその標章の使用を禁止し得ないものと解すべきである。さて、
1 前記甲第九号証によれば、本件(一)パンフレツトは、六つ折にして使用されるものであり、そのなかの原告有限会社が商標権侵害を構成するという「たつむら」の記載は、六つ折にした場合、外部に出るやや縦長長方形の地色が紺色の面の中央に白色で横書きに印刷されているものであり、なお、その裏側に当る面には、
表面と同じ紺色地に白色で横書きされた前記被告の商号、住所等が下部に、前記被告の所在を示す地図がその上部に印刷され、さきに認定したその余の記載等はすべて内側に隠れるようになつていることが認められるところ、本件(一)パンフレツトは、前認定のように被告の販売する各種商品を広告宣伝するためのパンフレツトであるから、これよりすれば、右「たつむら」の記載は、その右認定使用の位置、
態様等に照らし、標章であつて、被告の販売する各種商品を表彰するとともに、これにより他人の商品と区別する作用をも果しているということができる。そうすると、さきに認定したところによれば、被告は、「たつむら」の記載を商標としてその販売する帯ないし衣裳盆、乱箱、宝石入をはじめとする前認定商品に関する広告に附して展示頒布しているものということができるが、右「たつむら」の記載は、
本件(C)商標の「たつむら」、本件(E)商標の「たつむら」と同一であり、また、右のような被告の商標が附されている本件(一)パンフレツトが広告する商品帯ないし衣裳盆、乱箱、宝石入が本件(C)商標権の指定商品である前記第一七類帯ないし本件(E)商標権の指定商品である前記第二〇類商品のうちの家具に含まれ、これと同一であるか、又は少なくとも類似であることは明らかであるから、被告が本件(一)パンフレツト中に「たつむら」と記載してこれを展示頒布していることが、少なくとも本件(C)商標権、本件(E)商標権の侵害に該当することは直ちに明らかである。
また、前記甲第一九号証によれば、本件(一)パンフレツト中の原告有限会社が商標権侵害を構成するという「【A】」、「龍村製」、「龍村」、「龍村特製」の記載は、前認定のように右パンフレツトを六つ折にした場合、内側に隠れる一面に横書きで印刷されている前認定説明文中の言葉として使われているものであつて、
使用活字も特に他の言葉のそれと異なつた種類のものではなく、他の記載部分と密接に結合していることが認められるのであつて、右説明文全体によれば、それが被告の販売する商品を広告宣伝する役割を果しているものと読みとることができるが、「【A】」の記載自体は、それが他の記載部分と密接に結合している関係上、
正倉院裂の魅力にひかれてこれを模写複製した訴外人を指すにすぎず、「龍村製」の記載自体は、前同様の関係上、訴外人という特定人が模写複製した正倉院裂を指すにすぎず、「龍村」の記載は、前同様の関係上、被告を指すものと解する余地がある程度のことであり、「龍村特製」の記載は、これに続く「裂地」の文言と特に不可分の関係にあるところから、せいぜい被告の商品の素材として用いられている裂地を示唆するものと解する余地がある程度のことであつて、いずれも本件(一)パンフレツトが広告する被告の商品そのものを指すものと読みとることは不可能である。そうすると、本件(一)パンフレツト中の「【A】」、「龍村製」、「龍村」、「龍村特製」の記載は、いずれもそれ自体で被告の商品そのものを表彰し、
これを他人の商品と区別しようとしているものとは到底いい難いから、これを捉えて、原告有限会社主張のように、商標の使用に該当し、商標権侵害を構成するものと論ずる余地のないことは、さきに説明したところから明らかであろう。
2 前記甲第一〇号証の一によれば、本件(二)商品説明書中の原告有限会社が商標権侵害を構成するという「龍村裂(ぎれ)」の記載は、前認定「金剛間道」の標題のすぐ上に、これとほぼ同じ活字で縦書きに印刷されていることが認められるところ、右記載は、「金剛間道」の記載やこれを標題とする前認定説明文と密接不可分のものということはできないから、それ自体で独立した意味をもつものとの評価が可能であるうえ、本件(二)商品説明書が前認定のように被告の商品札入に添えて展示頒布されている以上、独立の標章であつて、被告の右商品札入そのものを表彰するとともに、これにより他人の商品と区別する作用をも果しているということができる。そうすると、さきに認定したように、たとえ本件(二)商品説明書が龍村商工によつて作成されたものであるとはいえ、これを自己の販売する商品に添えて頒布しているところによれば、被害は、「龍村裂(ぎれ)」の記載を商標としてその販売する商品札入に関する広告に附して展示販布しているものということができるが、右「龍村裂(ぎれ)」の記載は、本件(D)(1)商標の「龍村裂」とは、振仮名がある点で相異するだけで、他は同一であるから、類似であり、また、
右のような被告の商標が附されている本件(二)商品説明書が広告する商品札入が本件(D)(1)商標権の指定商品である前記旧第四九類商品のうちの袋物に含まれ、これと同一であることは明らかであるから、被告が本件(二)商品説明書中に「龍村裂(ぎれ)」と記載してこれを展示頒布していることが、少なくとも本件(D)(1)商標権の侵害に該当することは直ちに明らかである。
3 前記甲第一一号証の一によれば、本件(三)商品説明書中の原告有限会社が商標権侵害を構成するという「(龍村製)」、「龍村」の記載のうち、「(龍村製)」の記載は、前認定「紅牙瑞錦」の標題のすぐ下に、これより小さい活字で縦書きに印刷され、また、「龍村」の記載は、前認定説明文中の言葉として使われているものであつて、使用活字も特に他の言葉のそれと異なつた種類のものではなく、他の記載部分と密接に結合していることが認められるところ、右「(龍村製)」の記載は、「紅牙瑞錦」の記載やこれを標題とする前認定説明文と密接不可分のものということができないから、前認定「龍村裂(ぎれ)」の記載の場合と同様、それ自体で独立した意味をもつものとの評価が可能であるうえ、本件(三)商品説明書が前認定のように被告商品銭入に添えて展示頒布されている以上、独立の標章であつて、被告右商品銭入そのものを表彰するとともに、これにより他人の商品と区別する作用をも果しているということができるが、右「龍村」の記載自体は、それが他の記載部分と密接に結合しているうえ、これを含む説明文の末尾に前認定のように被告の商号、住所等が併記されている関係上、せいぜい「紅牙瑞錦」と題する模様の裂地を織り出したという被告を指すにすぎず、本件(三)商品説明書が広告する被告の商品そのものを指すものと読みとることは不可能であるから、
それ自体で被告の商品そのものを表彰し、これを他人の商品と区別しようとしているものとはいえない。そうすると、被告が本件(三)商品説明書中「龍村」と記載していることを捉えて、原告有限会社主張のように、商標の使用に該当し、商標権侵害と断ずることができないことは、さきに説明したところと同じである。これに対し、さきに認定したところによれば、被告は「(龍村製)」の記載を商標としてその販売する商品銭入に関する広告に附して展示頒布しているものということができるが、右「(龍村製)」の商標は、本件(B)(4)商標の「龍村製」とは、括弧がある点で相違するだけで、他は同一であるから類似であり、また、右被告の商標が附されている本件(三)商品説明書が広告する商品銭入が本件(B)(4)商標権の指定商品である前記旧第四九類商品のうちの袋物に含まれ、これと同人であることは明らかであるから、被告が本件(三)商品説明書中に「(龍村製)」と記載してこれを展示頒布していることが、少なくとも本件(B)(4)商標権の侵害に該当することも直ちに明らかである。
4 前記甲第一二号証の一によれば、本件(四)商品説明書中の原告有限会社が商標権侵害を構成するという「龍村裂(ぎれ)」の記載は、前記認定説明文中の言葉として使われているものであつて、使用活字も特に他の言葉のそれと異なつた種類のものではなく、他の記載部分と密接に結合し、なかんずく、直後に続く「天平繍華文錦」の文言と不可分の関係にあるところから、被告の販売する商品ふくさの素材として用いられている裂地を示唆するにすぎず、本件(四)商品説明書が広告する被告の商品そのものを指すものと読みとることは不可能である。そうすると、本件(四)商品説明書中の「龍村裂(ぎれ)」の記載は、それ自体で被告の商品そのものを表彰し、これを他人の商品と区別しようとしているものとはいい難いから、
これを捉えて商標の使用に該当し、商標権侵害を構成するものと論ずる余地がない。
五 各成立に争いのない甲第五、六号証、第一五号証、第一七号証、第一九号証、
第二八号証の一から七まで、第二九、三〇、三一号証、第三三号証、第三六号証、
第三八号証、第四五、四六号証、乙第一三号証、証人【E】の証言により真正に成立したものと認める甲第一四号証、証人【B】の証言により各真正に成立したものと認める乙第一四号証(一部)、第二〇号証に証人【E】、同【B】(一部)の各証言及び原告ら代表者【C】尋問の結果(一部)を綜合すれば、つぎのとおりの事実を認めることができる。
訴外人(明治九年生)は、明治二七年ころ京都において織物販売業をはじめ、織元から自己の気に入つた帯等の織物を仕入れて販売していたが、そのうち、販売だけではあき足らなくなり、同市内西陣に工場を構え、種々研究のうえ創作した九重編子 纐纈織、高浪織といわれる織物帯をはじめとする織物製品を自ら製作して販売するようにもなつたところ、これらが世間にもてはやされ、明治末期にはかなり著名な織物業者に数えられるに至つた。そして、訴外人は、その後も古今東西の著名な織物に興味を示してこれを研究複製するとともに、その成果を応用した帯等を製作することに努力し、大正八年には東京、大阪において第一回【A】織物美術展会を開催し、自己の苦心の作品である帯一〇点を展示してこれを世に問うたところ、それが古代の有名な織物の模様等をもとにして創作された優れた模様を織り出していたところから、芸術品の域に達しているとして非常な好評を博し、これが新聞にも取りあげられて全国に紹介されるに至り、日本全国にその名をはせ、大正一〇年ころにはかねて声援を受けていた美術界の著名人の後援により訴外人の復元になる古代裂、名物裂の頒布会が結成されて、優れた作品が世間に頒布され、その名声がいよいよ確固たるものとなり、大正一二年ころ以降は、当時としては破格の名誉に属する宮内省からの製品注文もたびたび受けるようになり、特に昭和四年ころには、秩父宮の御成婚に際し皇室から贈られる壁掛の製作依頼をも受けるほどで、
その名は夙に日本全国に著名となっていたが、その間、自己の作品は、製作者を明らかにする趣旨で「【A】製」、「【A】模」、「龍村製」の文字を織り込んでいたので、右表示も訴外人の手になる高級織物の誉の高い織物製品を指すものとして夙に日本全国に著名となつていた。
ところで、訴外人の長男【F】は、中学一年生のときに死亡したが、二男【G】は、昭和四年東京帝国大学文学部美学美術史科を卒業して直ちに織物研究のため外遊し、翌昭和五年九月帰国するに至つたが、訴外人は、前記のように秩父宮家に贈られる壁掛の製作に着手するに至つて、以来織物美術に関する研究については熱意を示していたものの、自己の経営する織物製品の製造販売業についてはとかく興味を失うに至つていたため、【G】は、家業を継ぐ格好で早速訴外人に代わり織物製品の製造販売業に従事し、やがて昭和九年には龍村織物美術研究所(以下「研究所」という。)を設け、訴外人とともに織物の研究に従事するとともに、従前同様自ら中心となつて織物製品の製造販売を続け、翌昭和一〇年訴外人が病臥するに至ると、訴外人の後継者として営業活動を主宰していた。ところが、そのうち戦時統制経済の時代に突入し、従来研究所において製作して来たような高級な帯をはじめとする織物製品のごときは、奢侈品としてその製造販売ができないことになつたが、幸い研究所において保持している高度な伝統技術が評価され、これが途絶えるのを惜しんだ有志の者の運動により、【G】名義で技術保存に必要な限度で特に製造が許可され、ここに研究所においては、統制品となつていた原料絹の割当配給を受けながら細々と製作を続けつつ第二次大戦の終戦を迎えた。ところで、研究所は、戦後繊維製品に対する統制が行われている経済下にもかかわらず、政府から進駐軍向け製品の大量注文を受けてその製作に追われ、営業とみに好況を呈し、これに伴い、復興金融公庫から融資を受けて京都市内にある工場等の生産設備を拡張するとともに、従業員もふやして生産を拡大して行き、かなりの利益を挙げるに至り、そのころ【G】において全国有数の高額所得者に数えられるまでにもなつたことがあつた。さて、研究所は、前記のように融資を受けるに際し、従来の個人営業を法人組織に改組することを要求されていたので、昭和二二年その支配下にあった工場、その敷地、その他の生産設備等の資産のうち織物研究のために利用しているものを除く一切を【G】において現物出資することにして龍村織物株式会社(以下「龍村織物」という。)が設立され、爾後龍村織物において研究所の営業を承継し、訴外人及び研究所の時代を通じ一貫して使用されて来た本件(A)各商標である「【A】製」の商標、本件(B)各商標である「龍村製」の商標(これらの商標がはじめ未登録であつたことは前記のとおりである。)を引続き使用して織物諸製品の製造販売に乗り出すことになつた。
ところで、訴外人の三男【B】は、昭和八年東京大学経済学部を卒業し、紡績会社に勤務していたが、【G】が兵役に就かなければならなくなつたのを契機に、昭和一五年暮右会社を辞めて家業の研究所の仕事に就くようになり、特に翌一六年以降終戦のときまでの間は応召不在となつた【G】に代つて研究所の生産活動に従事し、また四男【C】(原告ら代表者)は、早稲田大学理工学部機械科を卒業し、会社勤めをしていてそのうち兵役に就いたが、昭和一八年一時除隊したことがあつたときに研究所の仕事を手伝つたことから、戦後復員すると家業に戻り、五男【H】は、終戦後間もなく家業を手伝うようになり、こうして、戦後は、【G】を中心にして【B】、【C】、【H】らの兄弟が相寄り研究所の営業を続けていたところ、
龍村織物の発足に伴い、【G】においてその発行株式四〇〇、〇〇〇株のうち三七四、〇〇〇株を引受けてその代表取締役に就任し、【B】において、一、〇〇〇株を引受けてその取締役の一員に就任した。そして、龍村織物は、当初研究所時代と同様順調に営業を続けていたが、間もなく戦後の異常なインフレーシヨン鎮圧のためとられることになつた、世にドツヂラインの呼名で有名な政府の財政緊縮政策の影響を受け、従来あつた政府からの大量の受注が一時に完全に杜絶するとともに、
そのころ繊維製品に対する統制が一挙に撤廃されるに至つて営業活動がたちまち沈滞に向い、早くも昭和二四年には三億円を超す負債を抱えて経営が行き詰まり、融資先金融機関からは、人員整理による営業規模の縮少を迫られるに至つた。
こうした事態に直面し、【B】は、金融機関からの指示もあつて、【G】が中心になり研究所において行つている美術面に関する研究活動は、直接生産活動に結びついていないとして、経営建直しのためには、まず研究所の人員を大幅に削減し、今後は少人数で技術の保存、研究を行うことにしなければならない旨主張するとともに、【C】も非生産的な立場にある人物として会社から排除すべきことを主張して【G】及び【C】らと激しく衝突し、同人らの離反に会うに至つた。そこで、
【B】は、独り残つて龍村織物の財政建直しをはかつたが、成功せず、間もなくこれを見捨て、昭和二五年一二月二九日東京に織物製品の製造販売を目的とする前記龍村商工を設立し、翌昭和二六年四月一日【G】との間に、手織により製作する高級な帯を中心とする美術織物の製造販売を【G】において行い、機械により製作する主として広幅の織物の製造販売を【B】において行う旨の取決めをして製品の製造販売を行い、その後前記のように昭和四五年四月二〇日龍村商工の販売部門を担当するものとしての被告を設立したうえ、これに製品を供給し、昭和四六年龍村商工が事実上倒産するに至ると、個人で右製品の製作に当つたうえ、これを被告に供給し今日に至つている。
他方、【G】、【C】及びこれに同調した【H】らは、【B】と衝突して以来、
訴外人を擁し、研究所によつて営業を続けていたが、龍村織物を事実上承継する恰好で、昭和二九年三月五日原告有限会社を設立し、【C】においてその代表取締役に就任して織物諸製品の製造販売をはじめ、その利益をもつて龍村織物の負債の返済もはじめたが、【C】は、会社の資産と営業活動との分離を目指して、昭和三〇年一二月三日原告有限会社の営業部門を承継する形式をとつて、京都に本店を置く原告株式会社を設立し、訴外人及び【G】を技術顧問として迎えて研究及び技術者の養成に当らせるとともに、自らは代表取締役に就任のうえ、原告有限会社が京都市内に保有する生産設備をそのまま使用して製品の製造に当るとともに、販売する製品には引続き訴外人から通常使用権の許諾を受けた本件(A)各商標、本件(B)各商標を附し、これらの営業活動により挙がる利益のうちから龍村織物の負債を返済して行つたところ、その後営業は順調に発展し、各種織物の製造販売へと取扱商品も増大し、東京にも支店を設けるようになり、製品の優秀さから京都の龍村として各種の書籍にも紹介されるまでに有名になつたが、その間前記のとおり昭和三二年四月一八日には一旦訴外人から本件(A)各商標権、本件(B)各商標権を譲り受け使用していたが、昭和四一年八月三日これを、その間自ら取得した本件(D)各商標権とともに原告有限会社に譲渡したうえ、通常使用権の許諾を受け、
あるいは、その後原告有限会社において取得した本件(C)商標権、本件(E)商標権についても通常使用権の許諾を受けた。
しかしながら、【B】と【C】とは、前記訣別以来財産の帰属等をめぐつて裁判にも及ぶ争いを繰り返し、今日に至つている。
以上の事実が認められるのであつて、右認定の事実によれば、本件(A)各商標である「【A】製」の商標及び本件(B)各商標である「龍村製」の商標は、西陣織の産地としても著名な京都にあつて、織物美術家として夙に令名をはせていた訴外人がその製作販売する帯、壁掛をはじめとする高級な美術織物に附していたため、かねて訴外人の商品たることを示す商標として日本全国に著名であつたところ、訴外人経営の事業がその後内部的に漸次訴外人の事実上の長男ともいうべき【G】を中心としてその兄弟により京都を本拠として運営される研究所に承継されて行くに従い、訴外人の商品であることを示す商標から研究所の商品であることを示す著名商標へと自然に転化して行つたが、親族相寄り京都を本拠として運営される個人企業としての研究所の営業活動が歴史を重ね、かつ、その間製品の優秀さに支えられて、隆昌に向うに従い、研究所の商品であることを示す商標からさらに訴外人の一族が京都を本拠として製造のうえ販売している織物商品であることを示す商標に変質するに至つたので、右「【A】製」の商標及び「龍村製」の商標は、研究所の事業がその実体には変更がないまま龍村織物に改組されると、龍村織物の商品たることを示す商標として著名となり、また、龍村織物が事実上倒産し、
【C】、訴外人らにおいてこれを事実上承継する恰好で京都を本拠として運営される原告有限会社を設立して織物製品の製造販売をはじめると、同原告の商品たることを示す商標として著名となり、さらに、同原告の営業活動を承継することにして同原告が京都に保有する生産設備を使用して織物製品の製造販売を行う原告株式会社が前同人らにより設立され、その営業が開始されると、ほどなく同原告の商品たることを示す商標として全国に著名となつたものと認めることができる。なお、前記乙第一四号証、証人【B】の証言、原告ら代表者【C】尋間の結果中、右認定に反する部分は措信できない。
しかしながら、本件(C)商標、本件(E)商標である「たつむら」の商標及び本件(D)各商標である「龍村製」の商標は、原告株式会社のどのような商品に、
どのような状態で、どの程度附されていたかも明らかでないうえ、かりにそれが原告株式会社の商品に附されていたとしても、本件(C)商標権、本件(D)各商標権、本件(E)商標権の登録は、前記のように極く最近のことであるうえ、その使用し得る指定商品の範囲も概して限られたものであることに徴すれば、たとえ、商標中の「龍村」部分が前認定のように著名となつている「【A】製」、「龍村製」の商標の「龍村」部分と同一であるとしても、未だ原告株式会社の商品たることを示す商標として著名になつているとは認め難く、甲第四四号証及び証人【I】の証言中、右認定に反する部分は措信し難い。また、原告株式会社が京都の龍村として著名であることはさきに認定したところから明らかであるが、さりとて右「龍村」だけで同原告の商品たることを表示し、しかも、それが著名であると認めるに足りる確証はない。かえつて、成立に争いのない甲第四三号証、本件口頭弁論の全趣旨により真正に成立したものと認める同第四九号証によれば、前記原告有限会社、龍村商工をはじめとして「龍村」の文字を含む商号の織物商品を扱う会社は複数あつて、単に「龍村」というだけでは、必ず原告株式会社を指すとは限らないことが窺われるのであるから、「たつむら」にしても同じことであるが、「龍村」をもつて原告株式会社の著名な商品表示と認めるのは困難である。なお、前記甲第一五号証中には、「龍村」といえば、原告株式会社の商品帯を示すかのごとき記載があるが、右記載は、前後の記載からみて不用意なそれであり、これをもつて「龍村」の表示が原告株式会社の署名な商品表示であると認めることはできない。そして、以上の認定を左右し、「龍村裂」、「たつむら」、「龍村」の表示が原告株式会社の著名な商標ないし商品表示であることを認めるに足りる資料はない。
七 さて、本件(一)パンフレツト中の「たつむら」の記載文字、本件(二)商品説明書中の「龍村裂(きれ)」の記載文字、本件(三)商品説明書中の「(龍村製)」の記載文字は、商標と認められるのに対し、本件(一)パンフレツト中の「【A】」、「龍村製」、「龍村」、「龍村特製」の記載文字、本件(三)商品説明書中の「龍村」の記載文字、本件(四)商品説明書中の「龍村裂(ぎれ)」の記載文字が、商標に該当しないことについてはさきに認定したとおりであるところ、
後者の各記載文字が商標に該当しないというのであれば、被告の商品たることを示す表示にも該当しないことはいうまでもないことであるから、これらの記載文字を捉えて原告株式会社主張のように不正競争行為を云々することができないのもまたいうまでもないことである。
そこで、以下被告において、前認定のように、その販売する帯をはじめとする各種織物製品を広告宣伝するため、本件(一)パンフレツト中に「たつむら」の記載をし、その販売する商品札入を広告説明するため、本件(二)商品説明書中に「龍村裂(ぎれ)」の記載をし、その販売する商品銭入を広告説明するため、本件(三)商品説明書中に「(龍村製)」の記載をしていることが、前認定原告株式会社の帯をはじめとする織物製品を示す周知商標である「【A】製」、「龍村製」と同一又は類似のものを使用し、彼我商品の混同を生じさせている行為等に該当するか否かについて検討する。
まず、本件(三)商品説明書中の「(龍村製)」の記載文字は、原告株式会社の前記周知商標「龍村製」と類似であることは、さきに述べたように明らかであるから、被告においてこのような記載のある本件(三)商品説明書を前認定のように、
その販売する商品銭入に添えて展示頒布している以上、被告の商品銭入が、前記のように競争関係にある原告株式会社の商品であるかのごとく誤認混同されるおそれのあることはいうまでもないことであるし、また、そうとすれば、原告株式会社がこれにより営業上の不利益を被るおそれのあることも明らかである。もつとも、本件(三)商品説明書の末尾に被告の商号、住所等が明記されていることは前認定のとおりであるが、被告の商号は、原告株式会社の商号と同様「龍村」の文字を含むところ、原告株式会社は、前認定のように京都の龍村として著名であるうえ、東京にも支店を構えているのであるから、右被告の商号、住所等の記載によつては、彼我商品の出所を示す営業主体の混同を来し、ひいては、彼我商品の混同に拍車をかけるおそれこそあれ、被告商品を原告株式会社の商品と区別する作用を営むとは考えられない。
つぎに、本件(一)パンフレツト中の「たつむら」の記載は、原告株式会社の著名商標「【A】製」、「龍村製」のうちの「龍村」部分と類似であるということができるが、さきに認定したように、原告株式会社の商品表示として「龍村」だけが使用され、しかも、それが著名であるとまではいうことができないことからも窺われるごとく、原告株式会社の右周知商標は、省略のない全体で表現している独特の観念をもつた商標としてのみ意義があると認められるのであるから、両者の商標は、「龍村」部分において称呼を共通にする程度の類似点を有しているとしても、
全体としては互いに区別が十分可能であり、ひいては、本件(一)パンフレツト中の「たつむら」の記載により、原告株式会社主張のように、被告の商品と原告株式会社の商品とが混同し、あるいは、これにより原告株式会社において営業上の不利を被るに至るようなおそれがあるものとは考えられないし、また、他に右認定を左右し、原告株式会社の右主張を肯定し得るに足りる証拠もない。もつとも、本件(一)パンフレツト中の「たつむら」の記載は、単に商品を表示するに止まらず、
出所を表示する機能をも果し得ると考えられるので、この点において被告が前記のように京都の「龍村」として著名な原告株式会社と誤認混同されるおそれがないとはいい難いが、これは、本訴において問題とされていないことに属する。
また、本件(二)商品説明書中の「龍村裂(ぎれ)」の記載文字は、原告株式会社の前記周知商標と「龍村」部分において同一であるが、これのみによつては、両者の商標が類似し、これにより彼我商品の誤認混同を来し、原告株式会社において営業上の不利益を被るようなおそれがあるものといえないことは、すでに述べたところから明らかであろう。
七 以上のとおりとすれば、被告が本件(一)パンフレツト中に「たつむら」と、
本件(二)商品説明書中に「龍村裂(ぎれ)」と各記載してこれらを展示頒布していることは、原告有限会社の有する前記商標権の侵害に該当し、また、被告が本件(三)商品説明書中に「(龍村製)」と記載してこれを展示頒布していることは、
原告有限会社の有する前記商標権侵害に該当するとともに、原告株式会社に対する不正競争防止法第1条第1項第1号所定の不正競争行為にも該当するから、被告による前記のような所為は許されず、ひいては、本件(一)パンフレツト中の「たつむら」の記載部分、本件(二)商品説明書中の「龍村裂(ぎれ)」の記載部分、本件(三)商品説明書中の「(龍村製)」の記載部分は、商標権侵害の関係においては、侵害行為を組成したものとして、また、不正競争防止法違反の関係においては、侵害行為の停止を実行あらしめるために抹消する等の方法により廃棄されなければならないところ、被告は、原告らの本訴請求は、権利の濫用に該当し許されない旨主張するので、この点について検討を加えると、なるほど、さきに認定したところによれば、原告らの本訴請求が、被告主張のように、原告らの代表取締役である【C】と被告の取引先である【B】との間の長年にわたる兄弟紛争に関係がないということはできないが、さりとて、これから直ちに原告らの本訴請求をもつて権利の濫用に該当するものということはできないし、他に被告主張のように原告らの本訴請求が権利の濫用に該当し、許さないものであることを肯定し得るに足りる事情は見当らない。
八 よつて、原告らの本訴請求は、主文第一、二項記載の限度においては理由があるからこれを認容しなければならないが、その余は失当として棄却を免れず、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第89条第92条本文、第93条第1項但書を適用して主文のとおり判決する。
裁判官 高林克巳
裁判官 小酒禮
裁判官 清永利亮
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